JP6003886B2 - 非水系二次電池用炭素材、該炭素材を用いた負極及び非水系二次電池 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明の趣旨は、下記に存する。
<1>
黒鉛粒子が非晶質炭素で被覆された複層構造炭素材であり、かつ下記条件(1)〜(3)を満たす非水系二次電池用炭素材。
(1)下記式1で表されるラマンR値が0.01以上1以下である
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA
(2)下記式2で表されるN/Cが0.05%以上2%以下である
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(3)下記式3で表されるS/Cが0.05%以上2%以下である
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
<2>
黒鉛粒子が天然黒鉛を含む上記<1>に記載の非水系二次電池用炭素材。
<3>
黒鉛粒子の下記式1で表されるラマンR値が0.05以上1以下である上記<1>または<2>に記載の非水系二次電池用炭素材。
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA
<4>
黒鉛粒子のタップ密度が0.7g/cm3以上1.20g/cm3以下である上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の非水系二次電池用炭素材。
<5>
黒鉛粒子(A)と有機化合物(B)を混合し、
有機化合物(B)の炭素化処理を行う非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法であって、
有機化合物(B)のキノリン不溶分が1質量%以上であり、かつ
有機化合物(B)を1000℃焼成炭化した後、高速振動型サンプルミルにて、大気中にて30秒間粉砕処理して得られた炭素粉末が下記条件(I)〜(IV)を満たす非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法。
(I)下記式2で表されるN/Cが0.27%以上2%以下
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(II)下記式3で表されるS/Cが0.02%以上2%以下
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(III)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が0.345nm以上0.36nm以下
(IV)結晶子サイズLc(004)が0.1nm以上20nm以下
<6>
有機化合物(B)のトルエン不溶分が16質量%以上である上記<5>に記載の非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法。
<7>
集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、該活物質層が、上記<1>〜<4>のいずれか1に記載の非水系二次電池用炭素材を含有する、非水系二次電池用負極。
<8>
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が、上記<7>に記載の非水系二次電池用負極である、リチウムイオン二次電池。
また、本明細書において“質量%”と“重量%”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、以下のような特性を持つ。
非水系二次電池用炭素材のラマンR値は、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出して定義する。つまり、ラマン値は下記式1で表される。
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA
ラマンR値は0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上である。また1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
非水系二次電池用炭素材の表面官能基量(N/C)は下記式2にて定義する。
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
非水系二次電池用炭素材の表面官能基量(S/C)は下記式3にて定義する。
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
非水系二次電池用炭素材の表面官能基量(O/C)は、下記式4にて定義する。
式4:
O/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
S/CとN/Cの和は、通常0.3%以上、好ましくは0.32%以上、より好ましくは0.33%以上であり、通常4%以下、好ましくは3.8%以下、より好ましくは3.7%以下である。S/CとN/Cの和が小さすぎると負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、大電流充放電特性が低下する傾向があり、S/CとN/Cの和が大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く傾向がある。
非水系二次電池用炭素材の表面官能基量(N/O)は、下記式5にて定義する。
式5:
N/O(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度〕 × 100
非水系二次電池用炭素材の表面官能基量(S/O)は、下記式6にて定義する。
式6:
S/O(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度〕 × 100
非水系二次電池用炭素材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、通常0.337nm以下、通常結晶子サイズ(Lc(004))が90nm以上である。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)、結晶子サイズ(Lc(004))が前記範囲内であることは、非水系二次電池用炭素材の粒子の表面を除く大部分の結晶性が高いということであり、非晶質炭素材に見られるような不可逆容量が大きいことによる低容量化を生じない高容量電極となる炭素材であることを示す。
非水系二次電池用炭素材のタップ密度は、通常0.7g/cm3以上であり、1.3g/cm3以下が好ましい。
タップ密度が小さすぎると、特に高密度に圧延された電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、大電流充放電特性が低下する傾向がある。タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる傾向がある。
非水系二次電池用炭素材のBET法による比表面積は通常0.5m2/g以上、好ましくは1.0m2/g以上である。また通常8m2/g以下、より好ましくは7m2/g以下である。比表面積が大きすぎると電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く虞があり、比表面積が小さすぎると充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加、大電流充放電特性低下の傾向がある。
非水系二次電池用炭素材の水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、通常5ml/g以下、好ましくは、3ml/g以下、より好ましくは2ml/g以下であり、通常、0.01ml/g以上、好ましくは、0.05ml/g以上、より好ましくは0.1ml/g以上であり、250〜2500nmの範囲の細孔容積は、通常、0.001ml/g以上、好ましくは0.002ml/g以上、より好ましくは0.005ml/g以上であり、通常1ml/g以下、好ましくは0.9ml/g以下、より好ましくは、0.7ml/g以下である。細孔量が大きすぎると、細孔に起因した比表面積が増加し、電解液との反応が過剰に発生して、不可逆容量が増加する傾向があり、少なすぎると、大電流充放電特性が低下する傾向がある。
非水系二次電池用炭素材の平均粒径(d50)は通常40μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは25μm以下であり、通常、3μm以上、好ましくは、4μm以上、より好ましくは5μm以上である。平均粒径が大きすぎるとこの粒径範囲を超えて極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出ることが多く、また、この粒径範囲を下回ると、表面積が大きくなりすぎ電解液との活性を抑制することが難しくなる傾向がある。
広角X線回折測定により得られる、非水系二次電池用炭素材の格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R(=I(110)/I(004))が通常0.5以下、好ましくは、0.4以下、より好ましくは0.3以下であり、通常、0.05以上、好ましくは、0.1以上、より好ましくは0.15以上である。粉体配向比が上記範囲を下回ると、電池充電時の電極の膨張が大きくなり、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下しやすくなる傾向がある。一方、粉体配向比が上記範囲を上回ると、プレスにより電極の活物質充填密度を上げ難くなる場合がある。
非水系二次電池用炭素材の粒径10μm〜40μmの範囲の粒子について測定した下記式で与えられる円形度(=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長)が通常0.85以上、好ましくは、0.9以上、より好ましくは0.93以上である。平均円形度がこの範囲を下回ると、大電流充放電特性の低下が生じる傾向がある。
非水系二次電池用炭素材の製造方法は、ラマンR値が0.01以上1以下、N/Cが0.05%以上2%以下、及びS/Cが0.05%以上2%以下であることを満たす非水系二次電池用炭素材が製造されれば特に制限はない。
なお、好ましい態様として、黒鉛粒子に特定条件の有機化合物を混合させ、特定の温度条件で焼成させることで黒鉛粒子に非晶質炭素物を被覆させる製造方法を下記に記載するが、非水系二次電池用炭素材はこれに限定されるものではない。
黒鉛粒子は非水系二次電池用炭素材を製造するに際し、核となる原料である。
本発明における黒鉛粒子は以下の物性を示すものが好ましい。なお、本発明における測定方法は特に制限はないが、特段の事情がない限り実施例に記載の測定方法に準じる。
黒鉛粒子の表面官能基量(O/C)は下記式7にて定義する。
式7:
O/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕 × 100
黒鉛粒子の粒径については特に制限が無いが、使用される範囲として、d50が通常50μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。また通常1μm以上、好ましくは4μm以上、更に好ましくは10μm以上である。この粒径範囲を超えると極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出ることが多く、また、これ以下であると、表面積が大きくなりすぎ電解液との活性を抑制することが難しくなる。
黒鉛粒子のBET法で測定した比表面積については、通常4m2/g以上、好ましくは5m2/g以上である。また通常11m2/g以下、好ましくは9m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下である。比表面積がこの範囲を下回ると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性出力特性に劣り、一方、比表面積がこの範囲を上回ると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造できない可能性がある。
黒鉛粒子のX線構造解析(XRD)から得られる、Rhombohedral(菱面体晶)に対するHexagonal(六方体晶)の結晶の存在比(3R/2H)は0.2以上であることが好ましい。3R/2Hがこの範囲を下回ると、高速充放電特性の低下を招く虞がある。
黒鉛粒子のタップ密度は、通常0.7g/cm3以上、1g/cm3以上が好ましい。また、通常1.20g/cm3以下、1.1g/cm3以下が好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる場合がある。
黒鉛粒子のラマンR値は、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出して定義する。その値は、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.20以上である。また1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。また、通常1以下、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く虞がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く虞がある。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
黒鉛粒子は、その原料として、黒鉛化されている炭素粒子であれば特に限定はないが、天然黒鉛、人造黒鉛、並びにコークス粉、ニードルコークス粉、樹脂の黒鉛化物の粉体等が挙げられる。この中でも商業的にも容易に入手可能であるという点、他の負極活物質を用いた場合よりも、高電流密度での充放電特性の改善効果が著しく大きい点で黒鉛が好ましい。これらのうち、天然黒鉛が好ましく、中でも球形化処理を施した球状黒鉛が特に好ましい。
有機化合物は、下記に示す条件を満たすことが好ましい。本発明における有機化合物とは、上記黒鉛粒子に非晶質炭素物又は黒鉛質物を被覆する際に用いる原料をいう。
有機化合物の種類としては、焼成によって黒鉛化又は非晶質化が可能な炭素質であれば特に限定はなく、タール、軟ピッチから硬ピッチまでの石油系及び石炭系の縮合多環芳香族類が好ましく用いられる。具体的には、含浸ピッチ、コールタールピッチ、石炭液化油等の石炭系重質油、アスファルテン等の直留系重質油、エチレンヘビーエンドタール等の分解系重質油等の石油系重質油等が挙げられる。
本発明において、有機化合物は以下の物性を満たすことが好ましい。
(1)有機化合物の表面官能基量(N/C、S/C、O/C)
有機化合物の表面官能基量(N/C、S/C、O/C)は、該有機化合物を1000℃焼成炭化した後、CNT製高速振動型サンプルミル(TI−100型)にて、大気中にて30秒間粉砕処理して得られた炭素粉末を分析したとき、下記に示す条件を満たすことが好ましい。
有機化合物の下記式8で表される表面官能基量(N/C)は、通常0.05%以上、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.27%以上、更に好ましくは0.40%以上であり、通常6%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。N/Cが小さすぎると、負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、大電流充放電特性が低下する虞があり、大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く虞がある。
式8:
N/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
有機化合物の表面官能基量(N/C)はX線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
有機化合物の下記式9で表される表面官能基量(S/C)は、通常0.01%以上、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.07%以上であり、通常6%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。S/Cが小さすぎると負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、大電流充放電特性が低下する虞があり、大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く傾向がある。
式9:
S/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
有機化合物の表面官能基量(S/C)はX線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
有機化合物の表面官能基量(O/C)は、通常0.1%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは4.1%以上である。また通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましく5%以下である。この表面官能基量O/Cが小さすぎると、負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、大電流充放電特性が低下する虞があり、大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く虞がある。
式10:
O/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
本発明における表面官能基量(O/C)はX線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
有機化合物中のS/CとN/Cの和は、通常0.3%以上、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.5%以上であり、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。S/CとN/Cの和が小さすぎると負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、大電流充放電特性が低下する虞があり、大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く傾向がある。
有機化合物を黒鉛化処理して得られた炭素粉末のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が好ましくは0.3357nm以上、より好ましくは0.3358nm以上、さらに好ましくは0.3359nm以上、好ましくは0.340nm以下、より好ましくは0.338nm以下、さらに好ましくは0.337nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、非水系二次電池用炭素材が結晶性の低い粒子となって充放電容量が低下する場合があり、d002が小さすぎると充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加、大電流充放電特性低下の虞がある。
有機化合物を黒鉛化処理して得られた炭素粉末の学振法によるX線回折で求めた有機化合物の結晶子サイズ(Lc(004))が、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
この範囲を上回ると、非水系二次電池用炭素材が結晶性の低い粒子となって充放電容量が低下する場合があり、この範囲を下回ると、充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加、大電流充放電特性低下の虞がある。
この範囲を上回ると、非水系二次電池用炭素材が結晶性の低い粒子となって充放電容量が低下する場合があり、この範囲を下回ると、充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加、大電流充放電特性低下の虞がある。
有機化合物の軟化点が通常400℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。この範囲を下回ると、黒鉛粒子と混合・捏合する際に、均一に混合することが困難になり、且つ高温でとり行う必要が生じるため生産性に欠ける場合がある。下限は特に制限されないが、通常40℃以上である。
有機化合物はキノリン不溶分が、通常0.6質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
有機化合物はトルエン不溶分が通常16質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。また通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
キノリン不溶分(QI)、トルエン不溶分(TI)がこの範囲を上回ると、非水系二次電池用炭素材が結晶性の低い粒子となって充放電容量が低下してしまう可能性があり、この範囲を下回ると、充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加、大電流充放電特性低下の虞がある。
非水系二次電池用炭素材の製造方法は、下記条件(1)〜(3)を満たす非水系二次電池用炭素材が製造されれば特に制限は無い。
(1)下記式1で表されるラマンR値が0.01以上1以下である
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA
(2)下記式2で表されるN/Cが0.05%以上2%以下である。
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(3)下記式3で表されるS/Cが0.05%以上2%以下である
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
好ましい態様としては、上述した条件を満たす黒鉛粒子及び有機化合物を原料として用いる製造する方法が挙げられる。
例えば、黒鉛粒子と有機化合物を混合する際に、(i)非晶質炭素被覆部分又は黒鉛質被覆部分を得るための有機化合物をそのまま用いて、有機化合物と黒鉛粒子との混合物を加熱処理して非水系二次電池用炭素材を得る方法、(ii)前述の有機化合物を一部炭素化した非晶質炭素粉体を予め作製しておき、黒鉛粒子と混合し、加熱処理して複合化する方法、(iii)前述の非晶質炭素粉体を予め作製しておき、黒鉛粒子と非晶質炭素粉体と有機化合物とを混合し、加熱処理して複合化する方法等が採用可能である。なお、後二者の予め非晶質炭素粉体を用意しておく方法では、平均粒子径が黒鉛粒子の平均粒径の10分の1以下の非晶質炭素を用いることが好ましい。また、予め作製した非晶質炭素と黒鉛粒子を粉砕等の力学的エネルギーを加えることで、一方に他方が巻き込まれた構造や、静電的に付着した構造にする方法も採用が可能である。
本発明の非水系二次電池用炭素材を得るためのより詳細な製造工程は、以下の3工程に分けられる。
充放電容量の増加とプレス性の改良のために、炭素質粒子と有機化合物の混合に際し、黒鉛化触媒を添加しても良い。黒鉛化触媒としては、鉄、ニッケル、チタン、ケイ素、ホウ素等の金属及びこれらの炭化物、酸化物、窒化物等の化合物が挙げられる。なかでも、ケイ素、ケイ素化合物、鉄、鉄化合物が好ましく、ケイ素化合物のなかでは炭化珪素、鉄化合物のなかでは酸化鉄が特に好ましい。黒鉛化触媒としてケイ素やケイ素化合物を用いた場合、加熱により生成する炭化ケイ素が2800℃以上の温度ですべて熱分解して結晶性の極めて良好な黒鉛を成長させ、且つケイ素が揮散する時に黒鉛結晶間に細孔が形成されるので、粒子内部のリチウムイオンの電荷移動反応と拡散とを助長し電池性能を向上させることができる。また、黒鉛化触媒として鉄又はその化合物を用いた場合、炭素の触媒への溶解、析出の機構により結晶性の良好な黒鉛を成長させ、ケイ素と同様な効果を発現することができる。これらの黒鉛化触媒の添加量は、原料としての炭素質一次粒子に対して通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。黒鉛化触媒が多すぎると、黒鉛化が進みすぎ、リチウムイオン二次電池製造時の特性、特に浸液性が充分でないといった問題が生じる場合がある。同時に、非水系二次電池用炭素材内に細孔を生成させるためか、粒子の強度が低下し、その結果極板作製時のプレス工程において表面が平滑化し、イオンの移動を阻害する場合もある。一方、黒鉛化触媒が少なすぎると、黒鉛化が不十分で非水系二次電池にした時の充放電容量の低下の問題があり、また、極板作製時のプレス工程において高圧力を必要とし高密度化するのが困難となる場合もある。更に、非水系二次電池用炭素材内に適量の細孔が存在しないためか、粒子の強度が高くなりすぎ、集電体に塗布された活物質層を所定の嵩密度にプレス成形するときに高圧力を必要とし、負極活物質層を高密度化するのが困難となる場合がある。
成形方法は形状を保持することが可能であれば特に制限はなく、押し出し成形、金型成形、静水圧成形等を採用することができる。このうち、成形体内で粒子が配向し易い押し出し成形に比べ、粒子の配向がランダムに保たれる金型成形、静水圧成形が好ましい。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、何れか一種を単独で、又は二種以上を任意の組成及び組み合わせで併用して、リチウムイオン二次電池の負極材として好適に使用することができる。本発明の非水系二次電池用炭素材一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上のその他炭素材と混合し、これを非水系二次電池、好ましくはリチウムイオン二次電池の負極材として用いても良い。
天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛や球形化した黒鉛を用いることができる。天然黒鉛の体積基準平均粒径は、通常8μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、通常3.5m2/g以上、好ましくは、4.5m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下の範囲である。
本発明の非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、活物質層は少なくとも本発明の非水系二次電池用炭素材とを含有することを特徴とする。更に好ましくはバインダを含有する。
ここでいうバインダとは、非水系二次電池用負極を作成する際に、活物質同士の結着、及び活物質層を集電体に保持することを目的として添加するバインダを意味し、本明細書でいう有機化合物とは異なるものである。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
このスラリーを、集電体である厚さ18μmの銅箔上に、負極材料が14.5±0.3mg/cm2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾を行った。更に110℃で30分乾燥後、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.7±0.03g/cm3になるよう調整し電極シートを得た。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、通常5μm以上、好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは75μm以下である。活物質層が薄すぎると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に欠け、厚すぎると、高密度の電流値に対する十分なLiの吸蔵・放出の機能が得られにくい。
本発明の非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極としては、上述した本発明の負極を用いる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、SUSなどが用いられるが、何ら限定されない。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
上述のように作製した電池は以下の様な性能を示すものである。
(測定方法)
(1)表面官能基量
表面官能基量はX線光電子分光法(XPS)を用いて測定する。
X線光電子分光法測定としてX線光電子分光器(アルバック・ファイ社製ESCA)を用い、測定対象(黒鉛材料)を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280〜300eV)とN1s(390〜410eV)のスペクトルを測定し、C1sとN1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、CとNの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのNとCの表面原子濃度を用いて、式11にてN/Cを算出した。
式11:
N/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕 × 100
X線光電子分光法測定としてX線光電子分光器(アルバック・ファイ社製ESCA)を用い、測定対象(黒鉛材料)を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280〜300eV)のスペクトルとS2p(160〜175eV)のスペクトルを測定し、C1sのスペクトルのピーク面積、及び160〜175eVの範囲に存在するS2pに対応するスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、CとSの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのSとCの表面原子濃度を用いて、式12にてS/Cを算出した。
式12:
S/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕 × 100
X線光電子分光法測定としてX線光電子分光器(アルバック・ファイ社製ESCA)を用い、測定対象(黒鉛材料)を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを測定する。得られたC1sのピークトップを284.3eVとして帯電補正し、C1sとO1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、CとOの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのOとCの表面原子濃度を用いて、式13にてO/Cを算出した。
式13:
O/C(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕 × 100
上記と同様の方法にて、O1s(525〜545eV)とN1s(390〜410eV)のスペクトルを測定し、O1sとN1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、OとNの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのNとOの表面原子濃度を用いて、式14にてN/Oを算出した。
式14:
N/O(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/XPS分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度〕 × 100
上記と同様の方法にて、O1s(525〜545eV)のスペクトルとS2p(160〜175eV)のスペクトルを測定し、O1sのスペクトルのピーク面積、及び160〜175eVの範囲に存在するS2pに対応するスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、OとSの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのSとOの表面原子濃度を用いて、式15にてS/Oを算出した。
式15:
S/O(%)=〔X線光電子分光法(XPS)分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/XPS分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度〕 × 100
(2)粒径
粒径の測定方法は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「HORIBA製LA−920」に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明におけるd50と定義する。
BET比表面積の測定方法は、例えば大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。具体的には、試料(炭素材)0.4gをセルに充填し、350℃に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素30%、He70%のガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測し、得られた結果から、通常のBET法により比表面積を算出した。
X線構造解析(XRD)の測定方法は、0.2mmの試料板に炭素材を配向しないように充填し、X線回折装置(例えば日本電子製、JDX−3500)で、CuKα線にて出力30kV、200mAで測定する。得られた43.4°付近の3R(101)、及び44.5°付近の2H(101)の両ピークからバックグラウンドを差し引いた後、強度比3R(101)/2H(101)を算出する。
タップ密度は、粉体密度測定器である(株)セイシン企業社製「タップデンサーKYT−4000」を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
ラマンスペクトルは、ラマン分光器:「日本分光社製ラマン分光器」で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
非水系二次電池を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の不可逆容量・放電容量を測定した。
本発明の炭素材を負極材料として用い、活物質層密度1.70±0.03g/cm3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材料20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
上記方法で作製した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、A:エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容量比=3:7)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液、B:エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(容量比=2:4:4)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液、C:エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(容量比=1:5:4)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液(表中ではそれぞれ電解液A、B、Cと表す)を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、A〜Cの電解液を使用した2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
(1)黒鉛粒子
本実施例では、黒鉛粒子として以下の天然黒鉛の材料を使用する。
黒鉛粒子(a):前記測定法で測定した、粒径d50、タップ密度、比表面積、ラマンR値がそれぞれ21μm、0.91g/cm3、4.6m2/g、0.20である球状天然黒鉛粒子
黒鉛粒子(b):前記測定法で測定した、粒径d50、タップ密度、比表面積、ラマンR値がそれぞれ25μm、1.05g/cm3、4.3m2/g、0.22である球状天然黒鉛
本実施例では、有機化合物として以下の材料を使用する。
コールタールピッチ(a):キノリン不溶分が7質量%、トルエン不溶分が30質量%、H/Cが0.04、残炭率25質量%、1000℃焼成後、CNT製高速振動型サンプルミル(TI−100型)にて大気中にて30秒間粉砕処理して得られた炭素粉末の、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が0.3467nm、Lc(004)が17nm、X線光電子分光法分析により求めたO/C、N/C、S/C、N/C+S/Cがそれぞれ、4.86、0.42、0.08、0.51であるコールタールピッチ。
黒鉛粒子(a)とコールタールピッチ(a)とを混合し、不活性ガス中で1300℃の熱処理を施し焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛粒子の表面に非晶質炭素が被覆された複層構造炭素材を得た。焼成収率から、得られた複層構造炭素材は、黒鉛重量部に対して3重量部の非晶質炭素で被覆されていることが確認された。
コールタールピッチ(a)から石油系重質油(b)に変えた以外は、実施例1と同様に行い複層構造炭素材を得た。これについて、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
黒鉛粒子(a)について、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
黒鉛粒子(a)を、濃硫酸中で4時間攪拌した後、純水で洗浄し、300℃にて6時間保持した。ここで得られたサンプルを、不活性ガス中において1000℃で熱処理を施して得られた黒鉛粒子について、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
黒鉛粒子(a)に不活性ガス中において3000℃で熱処理を施し、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
黒鉛粒子(a)を黒鉛粒子(b)に変えた以外は、実施例1と同様に行い複層構造炭素材を得た。これについて、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
コールタールピッチ(a)を石油系重質油(b)に変えた以外は、実施例2と同様に行い複層構造炭素材を得た。これについて、実施例1と同様の方法で物性、及び電池特性の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
Claims (8)
- 黒鉛粒子が非晶質炭素で被覆された複層構造炭素材であり、かつ下記条件(1)〜(3)を満たす非水系二次電池用炭素材。
(1)下記式1で表されるラマンR値が0.01以上1以下である
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA
(2)下記式2で表されるN/Cが0.05%以上2%以下である
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(3)下記式3で表されるS/Cが0.05%以上2%以下である
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100 - 黒鉛粒子が天然黒鉛を含む請求項1に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 黒鉛粒子の下記式1で表されるラマンR値が0.05以上1以下である請求項1または2に記載の非水系二次電池用炭素材。
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPBの強度IB/1580cm−1付近のピークPAの強度IA - 黒鉛粒子のタップ密度が0.7g/cm3以上1.20g/cm3以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 黒鉛粒子(A)と有機化合物(B)を混合し、
有機化合物(B)の炭素化処理を行う非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法であって、
有機化合物(B)のキノリン不溶分が1質量%以上であり、かつ
有機化合物(B)を1000℃焼成炭化した後、高速振動型サンプルミルにて、大気中にて30秒間粉砕処理して得られた炭素粉末が下記条件(I)〜(IV)を満たす非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法。
(I)下記式2で表されるN/Cが0.27%以上2%以下
式2:
N/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるN1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたN原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(II)下記式3で表されるS/Cが0.02%以上2%以下
式3:
S/C(%)=〔X線光電子分光法分析におけるS2sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたS原子濃度/X線光電子分光法分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度〕×100
(III)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が0.345nm以上0.36nm以下
(IV)結晶子サイズLc(004)が0.1nm以上20nm以下 - 有機化合物(B)のトルエン不溶分が16質量%以上である請求項5に記載の非水系二次電池用複合黒鉛粒子(C)の製造方法。
- 集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、該活物質層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材を含有する、非水系二次電池用負極。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が、請求項7に記載の非水系二次電池用負極である、リチウムイオン二次電池。
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