JP6070016B2 - 非水系二次電池用複合炭素材及びその製造方法、負極並びに非水系二次電池 - Google Patents
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Description
特許文献2においては、潰れ易さが等しく、粉体の吸油量及び円形度が異なる二種類の黒鉛粉末を混合することにより、高密度でも浸液性に優れ、サイクル特性に優れた非水系二次電池負極用炭素材料が得られることが開示されている。
鱗片状天然黒鉛由来の黒鉛が多く存在する部分に於いて、高密度電極ではLiイオンの移動が遅くなり、且つラマンR値に特段の規定がないため、Liの受入れ性(反応性)に劣り、活物質層の高密度化、電池の高容量化が困難であり、大電流充放電特性が不十分であった。更にまた、二種類の材料を別々に製造するために、製造法が煩雑であるという課題があった。
即ち、本発明の趣旨は、球状天然黒鉛を非晶質炭素で被覆した、表面に凹凸構造を有する複合炭素材であって、次の(A)、(B)及び(C)の要件を満たすことを特徴とする非水系二次電池用複合炭素材。
(A)DBP吸油量が0.82mL/g以上、1mL/g以下である。
(B)比表面積が0.5m2/g以上、6.5m2/g以下である。
(C)ラマンR値が0.2以上、0.6以下である。
<複合炭素材の物性>
本発明における複合炭素材の物性は、少なくとも以下の3つの条件を満たすことが特徴である。
(A)DBP吸油量が0.55mL/g以上、1mL/g以下である。
(B)比表面積が0.5m2/g以上、6.5m2/g以下である。
(C)ラマンR値が0.2以上、0.6以下である。
以下に、代表的な物性値を記載する。
(A:DBP吸油量)
本発明の複合炭素材のDBP吸油量は、0.55mL/g以上、好ましくは0.6mL/g以上、更に好ましくは0.65mL/g以上である。また、1mL/g以下、好ましくは0.95mL/g以下、更に好ましくは0.9mL/g以下である。
DBP吸油量の測定はJIS K6217に準拠し、測定材料を40g投入し、滴下速度4ml/min、回転数125rpmとし、トルクの最大値が確認されるまで測定を実施し、測定開始から最大トルクを示す間の範囲で、最大トルクの70%のトルクを示した時の滴下油量から算出された値(負極材1g当たりのDBP滴下油量)によって定義される。
本発明の複合炭素材の比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、0.5m2 /g以上、好ましくは1m2 /g以上、更に好ましくは1.3m2 /g以上、特に好ましくは1.5m2 /g以上であり、また、6.5m2 /g以下、好ましくは6m2 /g以下、更に好ましくは5.5m2 /g以下、特に好ましくは5m2 /g以下である。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明の負極材の比表面積と定義する。
本発明の複合炭素材のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、0.2以上、好ましくは0.23以上、更に好ましくは0.25以上であり、また、0.6以下であり、好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.45以下、特に好ましくは0.4以下である。
また、リチウムの受入れ性が高い材料とは、電解液との接触面積が広い材料で、反応面積が大きく、且つ、負極粒子表面の結晶性が低い(黒鉛の層間が広い、La・Lcが小さい)材料と考えられ、すなわち、DBP吸油量が高く、比表面積が大きく、ラマンR値が高い材料がリチウムの受入れ性が高いと考えられる。
つまり、本発明は負極材のDBP吸油量を高い範囲に維持したまま、比表面積を低い範囲に抑え、且つ、ラマンR値をある特定の範囲とすることで、リチウムイオンの挿入脱離を早くすると共に、非水系電解液との反応性を抑制し、負極電荷移動抵抗が極端に小さく、放電レート特性に優れ、初期効率が高い負極材を得ることができるのである。
)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の負極活物質のラマンR値と定義する。
・固体レーザー波長 :532nm
・試料上のレーザーパワー :約20mW
・分解能 :約10cm−1
・測定範囲 :約1100cm−1〜1700cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
本発明の複合炭素材のその他の物性としては、以下の物性を有するものであることが望ましい。
本発明の黒鉛粒子の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm-1以上、好ましくは15cm-1以上であり、また、通常100cm-1以下、好ましくは80cm-1以下、更に好ましくは60cm-1以下、特に好ましくは40cm-1以下である。
得られたラマンスペクトルの1580cm-1付近のピークPA の半値幅を測定し、これ
を本発明の負極活物質のラマン半値幅と定義する。
本発明の複合炭素材の表面官能基O/Cは、下記式(1)で表される。表面官能基O/Cは通常0.1%以上、好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上であり、特に好ましくは0.5%以上であり、通常3.0%以下、好ましくは2.5%以下、更に好ましくは1.5%以下である。
式(1)
O/C(%)=X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度 × 100/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度
本発明の複合炭素材の表面官能基O/Cは、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
本発明の複合炭素材の細孔容積Viは、水銀圧入法(水銀ポロシメトリー)を用いて測定した値であり、通常0.1mL/g以上、好ましくは0.12mL/g以上、更に好ましくは0.14mL/g以上であり、また、通常0.3mL/g以下であり、好ましくは0.28mL/g以下、更に好ましくは0.25mL/g以下である。
細孔容積Vi=全細孔容積−細孔容積Vp
細孔容積Viは黒鉛粒子の内部空隙量を主に反映していると考えられ、細孔容積Viが大きいほど粒子内部に空隙が多いと推定される。一方、細孔容積Vpは主に粒子間の空隙を反映していると考えられる。
本発明の複合炭素材の全細孔容積は、前記水銀圧入法(水銀ポロシメトリー)を用いて測定した値であり、通常0.48mL/g以上、好ましくは0.5mL/g以上、更に好ましくは0.52mL/g以上であり、また、通常0.95mL/g以下、好ましくは0.93mL/g以下、更に好ましくは0.9mL/g以下である。
本発明の複合炭素材のタップ密度は、通常0.7g・cm-3以上、好ましくは0.8g・cm-3以上、更に好ましくは0.9g・cm-3以上であり、また、通常1.25g・cm-3以下、好ましくは1.2g・cm-3以下、更に好ましくは1.18g・cm-3以下、特に好ましくは1.15g・cm-3以下である。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
本発明の複合炭素材の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の負極材の体積基準平均粒径と定義する。
本発明の複合炭素材の学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)、(La)は、それぞれ30nm以上であることが好ましく、中でも100nm以上であることが更に好ましい。結晶子サイズがこの範囲であれば、負極材に充電可能なリチウ
ム量が多くなり、高容量を得易いので好ましい。
本発明の複合炭素材の粉体の配向比は、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.015以上であり、また、通常0.67以下、好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下である。配向比が小さすぎる、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する傾向場合がある。なお、上記範囲の通常の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・ スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
本発明の複合炭素材の形態は、特に限定はされないが、球状、楕円状、塊状、板状、多角形状などが挙げられ、中でも球状、楕円状、塊状、多角形状が負極とした時に粒子の充填性を向上することができるので好ましい。
また、本発明の複合炭素材の表面形態は、特に限定はされないが、後述の図1のSEM写真に示す様に凹凸構造を有することが好ましい。凹凸構造としては、例えば、(1)球状や楕円状などの粒子表面に穴が開いた凹部構造や、(2)球状や楕円状などの粒子表面に微粒子が結着した凸部構造などが挙げられる。粒子表面に凹凸構造を有すると、高密度の負極とした場合でも非水系電解液の浸入可能な空隙が確保できるので、サイクル特性の向上が期待できる。
本発明の複合炭素材の製造方法は、特に限定はされないが、次の(I)、(II)に示す方法などが挙げられる。なお、本発明の複合炭素材は、黒鉛が炭素質物で複合化された複合炭素材であり、中でも非晶質炭素が被覆された複合炭素材が好ましく、より好ましくは、原料黒鉛と炭素前駆体を混合し、焼成することで得られる非晶質炭素が被覆された複合炭素材が好ましい。
以下に、好ましい製造方法の一態様として、炭素質物が被覆された複合炭素材の製造方法を記載するが、本発明の複合炭素材を限定するものではない。
前記複合炭素材の形態(1)及び/又は(2)を形成する方法としては、少なくとも原料黒鉛を粗面化させる工程と、粗面化した原料黒鉛と原料有機物を混合する工程と、800℃以上、2200℃以下の温度で焼成する工程とからなる製造方法が挙げられる。
(製造方法(II))
前記黒鉛粒子の形態(2)を主に形成する方法としては、球状や楕円状などの核となる大粒子と、板状や鱗片状などの核粒子表面に結着し凸部構造を形成する微粒子からなる二種類以上の複数の原料黒鉛(混合物)を用い、少なくとも原料黒鉛と原料有機物を混合する工程と、800℃以上、2200℃以下の温度で焼成する工程とからなる製造方法が挙げられる。
前記(I)、(II)の製造方法の中で、製造方法(I)が凹凸構造を形成し易く好ましい。
前記原料黒鉛は、黒鉛化されている(若しくは2300℃以上の温度で焼成することにより黒鉛化する)炭素粒子であれば特に限定はないが、天然黒鉛、人造黒鉛、並びにコークス粉、ニードルコークス粉、樹脂の黒鉛化物(若しくは黒鉛化可能な炭素物)の粉体等が挙げられる。これらのうち、天然黒鉛は加工がし易いので好ましい。
としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を粒子に与える装置を用いることができる。具体的にはジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ターボミル、パルベライザーなどが挙げられる。
前記原料黒鉛の体積基準平均粒径は、特に限定はされないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
また、黒鉛粒子の製造方法(II)で用いられる板状、鱗片状、塊状などの微粒子の場合、体積基準平均粒径は通常1μm以上、好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、また通常20μm以下、好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
原料黒鉛の粒径がこの範囲にあれば、複合炭素材とした場合に、粒子表面に凹凸構造を形成し易く好ましい。
前記原料黒鉛の粗面化工程とは、原料黒鉛の表面に凹凸構造を付与する工程を指す。粗面化工程で用いられる方法は、原料黒鉛の表面に凹凸構造を付与されれば、特に限定はされないが、例えば、原料黒鉛に圧縮、摩擦、せん断力等の機械的エネルギー(例えば粉砕)を加えることにより、表面に凹凸構造を付与する方法などがあり、乾式状態で行なっても湿式状態で行なっても構わない。下記により具体的な例として、原料黒鉛の表面に凹凸構造を付与する方法を列挙する。
乾式状態での粗面化を行う方法としては、例えば、ピンミル(槇野産業社製)、ターボミル(ターボ工業社製)、クリプトロンオーブ(アーステクニカ社製)、ジェットミル(日本ニューマチック社製)などの粉砕装置を用いることができる。中でもローターとステーターからなるターボミル等の粉砕装置を用いるのが生産性を向上できるので好ましい。
使用する粉砕装置のローター及び/又はステーターは、上記周速度を設定できるものであれば具体的な形状は特に限定されないが、ローターとしてはブレードを有するものが、ステーターとしては溝があるものが好ましい。
粉砕速度が速すぎると微粉が多く発生する可能性があり、粗面化した原料黒鉛と原料有機物を混合し、800℃以上の温度で焼成しても、得られた複合炭素材の比表面積が大きくなり易く、電解液との反応性が抑制できなくなり、初期効率やサイクル特性が悪化する虞がある。また、この粉砕速度よりも遅すぎると粗面化の効果が現れ難く、初期効率やサイクル特性を向上し難い傾向がある。
投入速度が速すぎると機械的エネルギーが原料黒鉛に付与され難くなり、粗面化の効果が現れ難く、初期効率やサイクル特性を向上し難い傾向がある。また、この投入速度よりも遅すぎると生産性が低下する虞がある。
湿式状態での粗面化を行う方法としては、具体的には、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄器などが挙げられる。
原料黒鉛の分散媒としては、水、アルコール類が量産の点で好ましく、適宜、粉砕助剤粒子などを混合することもよい。さらに、撹拌翼でせん断力を与えるような機械的エネルギーと組み合わせるとより有効である。
超音波照射を施す際に、短時間に泡の発生と消滅を発生させるように行うことが好ましい。
出力は、通常10W以上、好ましくは20W以上、より好ましくは30W以上、また通常30000W以下、好ましくは20000W以下、より好ましくは16000W以下である。
原料黒鉛とイオン交換水の混合において、質量比1:1.1から1:30が好ましい。好ましくは1:20、さらに好ましくは1:10である。1:30よりも希薄となると、生産性が低下する傾向がある。逆に1:1.1以下の濃厚液となると、攪拌することが困難である。
乾燥は、棚乾燥が簡便であるが、攪拌しながら乾燥可能な機種や、焼成炉を使用することもできる。
乾燥温度は、110℃以上であればよく、必要に応じて選択できる。
炭素材に対して、改質処理を施してもよい。例えば、コールタールピッチ、樹脂などを被覆して熱処理するか、単に熱処理することも有効である。また、追加工程として、再粉砕処理を施すことも有効である。
前記原料有機物は、焼成によって炭素化が可能な炭素質であれば特に限定はなく、石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機物などが挙げられる。また、原料有機物は混合時の粘度を調整するため、低分子有機溶媒に溶解させて用いてもよい。
また、低分子有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等が好ましい。
前記製造方法に於ける原料黒鉛と原料有機物を混合する方法は、特に限定はされないが、一般的な混合装置を用いることができる。具体的にはミキサー、ニーダー、二軸混練機などが挙げられる。混合工程では、前述の通り、混合時の粘度を調整する為に低分子有機溶媒で溶解、若しくは希釈した原料有機物を用いてもよいし、加熱することにより原料有機物の粘度を調節してもよい。また、原料黒鉛と原料有機物の混合比(質量比)は、使用する原料黒鉛や原料有機物の種類によって適宜選択されるものであり、原料黒鉛100質量部に対する原料有機物の量は特に制限されないが、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
前記製造方法に於ける原料黒鉛と原料有機物の混合物を焼成する方法は、特に限定はされないが、800℃以上、2200℃以下の温度で焼成する工程とからなる。
焼成工程としては、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、より好ましくは1300℃以上で、通常2200℃以下、好ましくは1800℃以下、より好ましくは1500℃以下の温度で、通常0.1時間〜10時間行う。加熱は、酸化を防止するために、通常、窒素、アルゴン等不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材料を間隙に充填した非酸化性雰囲気で行う。
前記焼成物を必要に応じて粉砕、解砕、磨砕、分級処理等の粉体加工をする。粉砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
上述した本発明の非水系二次電池用複合炭素材は、何れか一種を単独で、又は二種以上を任意の組成及び組み合わせで併用して、非水系二次電池の負極材として好適に使用することができるが、一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上のその他炭素材料と混合し、これを非水系二次電池、好ましくは非水系二次電池の負極材料として用いてもよい。
天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛や球形化した黒鉛を用いることができる。天然黒鉛の体積基準平均粒径は、通常8μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、通常3.5m2/g以上、好ましくは、4.5m2/g以上、また、通常8m2/g
以下、好ましくは6m2/g以下の範囲である。
非晶質被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質前駆対を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質をCVDにより被覆した粒子を用いることができる。
非水系二次電池用負極材とその他炭素材料との混合に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬形混合機、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pugmill型
混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
本発明の非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、
集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、活物質層は少なくとも本発明の非水系二次電池用負極材とを含有することを特徴とする。更に好ましくはバインダーを含有する。
ここでいうバインダーとは、非水系二次電池用負極を作製する際に、活物質同士の結着、及び活物質層を集電体に保持することを目的として添加するバインダーを意味し、黒鉛化可能なバインダーとは異なるものである。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダーも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダーと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダーに対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダーの混合比率は、通常150質量%以下、好ましくは120質量%以下の範囲である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダーの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
スラリーを集電体上に塗布した後、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
なお、本発明の非水系二次電池用負極は後述する実施例の作成方法にて、作成することができる。
本発明の非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極としては、上述した本発明の負極を用いる。
正極は、正極活物質及びバインダーを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
ナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物などの遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物、NiPS3、FePS3等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe2、NbSe3などの遷移金属のセレン化合物、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2などの遷移金属の複合酸化物、LiCoS2、LiNiS2
などの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、TiS2、V2S5、Cr0.25V0.75S2、Cr0.5V0.5S2などが好ましく、特に好ましいのはLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4や、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物であ
る。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダーを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、SUSなどが用いられるが、何ら限定されない。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
鉛相間へ共挿入することにより黒鉛系負極活物質の層間剥離劣化がおこり、十分な容量が得られなくなる問題がある。
ハロゲン酸塩、LiPF6、LiBF4、LiAsF6などの無機フッ化物塩などの無機リ
チウム塩、LiCF3SO3、LiC4F9SO3などのパーフルオロアルカンスルホン酸塩
、Liトリフルオロスルフォンイミド((CF3SO2)2NLi)などのパーフルオロア
ルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられ、この中でも
LiClO4、LiPF6、LiBF4、が好ましい。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
なお、各物性の測定方法は、上述した測定方法に準じるものとする。
<初期効率の測定方法>
非水系二次電池(2016型コイン電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の初期効率を測定した。
mVの一定電圧で充電容量値が350mAh/gになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放
電を行なった。引き続き2、3回目は、同電流密度でcc−cv充電にて10mV、0.005Ccutにて充電し、放電は、全ての回で0.04Cで1.5Vまで放電した。この計3サイクルの充電容量と放電容量の差の和を不可逆容量として算出した。また、3サイクル目の放電容量を本材料の放電容量、3サイクル目の放電容量/(3サイクル目の放電容量+3サイクルの充電容量と放電容量の差の和)を初期効率とした。
非水系二次電池(2016型コイン電池)を用いて、下記の測定方法で電池放電時のレート特性を測定した。前記初期効率を測定した電池をそのまま用い、0.16mA/cm2電流密度でcc−cv充電にて10mV、0.005Ccutにて充電し、0.2Cの定電流で1.5Vまで放電した。更に同条件にて充電し、2Cの定電流で1.5Vまで放電した。この0.2C放電容量と2C放電容量の比から放電レート特性を次式によって算出した。
放電レート特性=2C放電容量÷0.2C放電容量×100
非水系二次電池(2016型コイン電池)を用いて、下記の測定方法で電池充電時の負極電荷移動抵抗を測定した。0.16mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で充電容量値が350mAh/gになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なった。さらに2サイクル、0.16mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で0.016mA/cm2の電流密度になるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なった。その後、さらに2サイクル、0.16mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で0.016mA/cm2の電流密度になるまで充電し、負極中にリチウムをドープし、Ar雰囲気下にて2個の電池を解体して2枚の負極を取り出し、2枚の負極と、両負極の間にエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(容量比=3:7)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液30μlを含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、負極対向セルを作製した。10-2から105Hzの周波数帯で複素インピ
ーダンス測定を行い、負極電荷移動抵抗(Rct)を測定した。この際、低周波部分の因子の影響を避ける為に、アーガンドプロットを行った際に現れる、負極抵抗成分の円弧の
一部を半円で外挿し、前記パラメータの数値を求めた。また、該数値はコイン型セル2個の結果の平均値とした。
本発明の負極材を用い、活物質層密度1.60±0.03g/cm3の活物質層を有す
る極板を作製した。具体的には、負極材20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
を行った。更に110℃で30分乾燥後、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm3になるよう調製し電極シートを得た
。
上記方法で作製した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、電解液:エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF6を1
mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池を作製した。
原料黒鉛として体積基準平均粒径が20μmの球状天然黒鉛を用い、粗面化工程としてローターとステーターからなる粉砕装置を用い、ローターの周速度120m/sec、投入速度200kg/hrで粉砕し、表面に凹凸構造を有した黒鉛を得た。その得られた黒鉛100質量部に対して原料有機物の重質油を21質量部の割合でミキサーを用いて混合した。得られた混合物を容器に入れ、不活性雰囲気1300℃で焼成、炭素化した。得られた炭素を粗砕、微粉砕処理し、複合炭素材からなる粉末サンプルを得た。このサンプルについて、前記測定法でDBP吸油量、比表面積、ラマンR値、タップ密度、平均粒径を測定した。また、粒子表面のSEM観察から凹凸構造の有無を判断した。
その結果、及び、前記測定法に従い、初期効率、負極電荷移動抵抗、放電レート特性を測定した結果を表1に示す。また、図1にSEM観察写真例を示す。SEM観察の結果、粒子表面に凹凸構造が形成されているのが観察された。
原料黒鉛として体積基準平均粒径が28μmの球状天然黒鉛を用い、粗面化工程としてローターとステーターからなる粉砕装置を用い、ローターの周速度126m/secとした以外は実施例1と同様に行ない複合炭素材からなる粉末サンプルを得た。これについて、実施例1と同様な方法で物性、電池特性の評価、SEM観察を行った。結果を表1に示す。SEM観察の結果、粒子表面に凹凸構造が形成されているのが観察された。
実施例1の原料である20μmの球状天然黒鉛をそのまま用い、粗面化処理を行なわない以外は実施例1と同様に行ない粉末サンプルを得た。これについて、実施例1と同様な方法で物性、及び電池特性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、図2にSEM観察写真例を示す。SEM観察の結果、粒子表面に凹凸構造は観察されなかった。
原料黒鉛として体積基準平均粒径が17μmの球状天然黒鉛を用い、粗面化工程としてローターとステーターからなる粉砕装置を用い、ローターの周速度130m/sec、投入速度200kg/hrで粉砕し、表面に凹凸構造を有した黒鉛を得た。これについて、実施例1と同様な方法で物性、及び電池特性の評価を行った。結果を表1に示す。また、SEM観察の結果、粒子表面に凹凸構造が形成されているのが観察された。
比較例1は、原料黒鉛を粗面化する工程を行っておらず、(B)比表面積と(C)ラマンR値が本発明の範囲内であるが、(A)DBP吸油量が0.50mL/gと本発明の規定範囲外となり、その結果、負極電荷移動抵抗が高く、高い放電レート特性が得られなかった。
これらに対して、実施例1〜2の本発明の負極材は、(A)DBP吸油量と(B)比表面積と(C)ラマンR値の全ての要件を満たしている。そして、このような極材を用いると、初期効率が高く、負極電荷移動抵抗が極端に小さく、放電レート特性に優れた高性能な電池が得られる。
Claims (6)
- 球状天然黒鉛を非晶質炭素で被覆した、表面に凹凸構造を有する複合炭素材であって、次の(A)、(B)及び(C)の要件を満たすことを特徴とする非水系二次電池用複合炭素材。
(A)DBP吸油量が0.82mL/g以上、1mL/g以下である。
(B)比表面積が0.5m2/g以上、6.5m2/g以下である。
(C)ラマンR値が0.2以上、0.6以下である。 - 複合炭素材のタップ密度が0.7g/cm3以上、1.2g/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用複合炭素材。
- 請求項1又は2に記載の非水系二次電池用複合炭素材の製造方法であって、原料黒鉛を粗面化する工程、粗面化した原料黒鉛と有機物とを混合する工程、及び該混合物を800℃以上、2200℃以下の温度で焼成する工程とを含むことを特徴とする非水系二次電池用複合炭素材の製造方法。
- 球状若しくは楕円状の原料黒鉛を周速度50m/sec以上の回転速度で粗面化する工程、粗面化した原料黒鉛と有機物とを混合する工程、及び該混合物を焼成する工程とを含むことを特徴とする請求項3に記載の非水系二次電池用複合炭素材の製造方法
- 集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、該活物質層が、請求項1又は2に記載の非水系二次電池用複合炭素材を含有することを特徴とする非水系二次電池用負極。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が、請求項5に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする、非水系二次電池。
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