JP5211416B2 - 層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物 - Google Patents
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Description
層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、平均1次粒径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.1μm以上、通常30μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。また、平均2次粒径は通常1μm以上、好ましくは4μm以上、通常50μm以下、好ましくは40μm以下である。さらに、該リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、BET比表面積が、通常0.1m2/g以上8.0m2/g以下、好ましくは0.2m2/g以上6.0m2/g以下である。1次粒子の大きさは、焼成温度、焼成時間等の製造条件等により制御することが可能であり、これらの1つ以上を増加させることにより、1次粒子の粒子径を大きくすることができる。
2次粒子の粒子径は、例えば、後述する噴霧乾燥工程における気液比等の噴霧条件等の製造条件により制御することが可能である。比表面積は1次粒子の粒径および2次粒子の粒径により制御することが可能であり、1次粒子の粒径及び/又は2次粒子の粒径を大きくすることにより減少する。上記範囲以下のあまり小さい比表面積では、1次粒子が大きすぎて電池特性が不良である一方、上記範囲以上のあまり大きい比表面積では、これを用いて二次電池を作製する場合の電極作製が困難になる。又、粉体充填密度は、タップ密度(200回タップ後)で、通常は0.5g/cm 3 以上、好ましくは0.6g/cm 3 以上、さらに好ましくは0.8g/cm 3 以上である。粉体充填密度は高ければ高いほど単位容積あたりのエネルギー密度を大きくすることができるが、現実的には通常3.0g/cm 3 以下であり、特に2.5g/cm 3 以下である。
原料として使用するリチウム源としては、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキルリチウム、リチウムハロゲン化物等の各種のリチウム化合物を挙げることができる。より具体的には、例えば、Li2CO3、LiNo3、LiOH・LiOH・H2O、LiCl、LiI、酢酸Li、Li2O等を挙げることができる。これらリチウム原料の中で好ましいのは、Li2CO3、LiNO3、LiOH・H2O、酢酸Li等の水溶性のリチウム化合物である。これらの水溶性化合物は、例えば、分散媒として水を使用したスラリー中に溶解させることによって容易に良好な特性を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることができる。また、焼成処理の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子を含有しないリチウム化合物が好ましい。最も好ましいリチウム原料は、水溶性でもあり、また窒素原子や硫黄原子を含有しない、LiOH・H2Oである。無論、リチウム源として複数種のものを使用してもよい。
具体的なアルミニウム源としては、例えば、AlOOH、Al2O3、Al(OH)3、AlCl3、Al(NO3)3・9H2O及びAl2(SO4)3等の各種のアルミニウム化合物を挙げることができる。中でも、焼成工程の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、AlOOH、Al2O3及びAl(OH)3が好ましく、さらに好ましくは、工業的に安価に入手できる点及び反応性が高い点でAlOOHである。無論複数のアルミニウム化合物を使用することもできる。
これらリチウム源、ニッケル源、マンガン源及び置換元素源は、乾式で混合して焼成の原料として用いてもよく、また、湿式(即ちスラリー中)で混合後これを乾燥して焼成の原料としてもよい。以下、スラリー中での混合及び乾燥方法について記す。
スラリー全体の重量に対する、リチウム源、ニッケル源、マンガン源及び置換元素源の総重量比は、通常10重量%以上、好ましくは12.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下である。重量比が上記範囲以下の場合は、スラリー濃度が極端に希薄なため噴霧乾燥により生成した球状粒子が必要以上に小さくなったり破損しやすくなったりする一方で、上記範囲以上となると、スラリーの均一性が保ちにくくなる。
結晶欠陥が少ない層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物を得るためには、焼成反応後、ゆっくりと冷却することが好ましく、例えば5℃/min.以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
なお、本発明においては、スラリー中の固形分の平均粒子径、噴霧乾燥後の造粒粒子の平均粒子径、及び層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物の平均粒子径は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。この方法の測定原理は下記の通りである。すなわち、スラリー又は粉体を分散媒に分散させ、該試料溶液にレーザー光を照射し、粒子に入射されて散乱(回折)した散乱光をディテクタで検出する。検出された散乱光の散乱角θ(入射方向と散乱方向の角度)は、大きい粒子の場合は前方散乱(0<θ<90°)となり、小さい粒子の場合は側方散乱又は後方散乱(90°<θ<180°)となる。測定された角度分布値から、入射光波長及び粒子の屈折率等の情報を用いて粒子径分布を算出する。更に得られた粒子径分布から平均粒子径を算出する。測定の際に用いる分散媒としては、例えば0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を挙げることができる。
このような正極層は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、バインダー及び必要に応じて導電剤等を溶媒でスラリー化したものを正極集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。
正極層中の活物質の割合は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。多すぎると電極の機械的強度が劣る傾向にあり、少なすぎると容量等電池性能が劣る傾向にある。
正極に使用する集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が用いられ、好ましくはアルミニウムである。集電体の厚さは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜500μm程度である。厚すぎるとリチウム二次電池全体としての容量が低下し、薄すぎると機械的強度が不足することがある。
二次電池の負極に使用される負極の活物質としては、リチウムやリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金であっても良いが、より安全性が高く、リチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が好ましい。
なお、これらの中から選ばれる2種以上の混合物を負極活物質として用いてもよい。
有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。これらの代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
<比較例1>
LiOH・H2O、Ni(OH)2、Mn2O3をそれぞれ最終的な層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Ni:Mn=1.05:0.50:0.50(モル比)となるように秤量し、これに純水を加えて固形分濃度12.5重量%のスラリーを調整した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機(シンマルエンタープライゼス社製:ダイノーミルKDL−A型)を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.30μmになるまで粉砕した。300mlポットを用い、粉砕時間は6時間であった。このスラリーの粘度をBM型粘度計(トキメック社製)により測定した。測定は室温大気中で行い、特定の金属製ローターを装置本体の回転軸に固定し、該ローターをスラリー液面下に浸し、回転軸を回転させてローターにかかる抵抗力(捻れの力)により粘度を算出した。その結果、初期粘度は1510mPa・sであった。
なお、スラリー中の固形分の平均粒子径、及び得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物の平均粒子径・最大粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製:LA−920型粒度分布測定装置)を用いて求めた。具体的には、室温大気中で、スラリー又は焼成物粉末を0.1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波分散及び攪拌により分散させ、透過率を70%〜95%の間に調節し、測定される粒度分布より平均粒径及び最大粒径を求めた。
この粉末5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、0.9g/cm 3 であった。
<実施例1>
LiOH・H2O、Ni(OH)2、Mn2O3、AlOOHをそれぞれ最終的な層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Ni:Mn:Al=1.05:0.45:0.45:0.10(モル比)となるように秤量した以外は、比較例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<実施例2>
LiOH・H2O、Ni(OH)2、Mn2O3、Co(OH)2をそれぞれ最終的な層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Ni:Mn:Al=1.05:0.45:0.45:0.10(モル比)となるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<電池評価試験例>
以下の方法で本発明の実施例及び比較例の電池評価を行った。
A.正極の作製と容量確認及びレート試験
実施例1〜2及び比較例1で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を75重量%、アセチレンブラック20重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は約8mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
B.負極の作製と容量確認
負極活物質としての平均粒径約8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
C.コインセルの組立
コイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶の上に正極(12mmφ)を置き、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた後、非水電解液溶液として、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶をのせ電池を封口した。この時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ
正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]=(Qf/1.2)/Qs(C)‘
となるように設定した。なお、この際のQs(C)‘は上限電圧4.3V、下限電圧3.0Vでの値である。
D.サイクル試験
このように得られた電池の高温特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを
1C[mA]=Qs(D)×正極活物質重量[g]
と設定し、以下の試験を行った。
まず室温で定電流0.2C充放電2サイクル及び定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充電上限は4.2V、下限電圧は3.0Vとした。
P[%]={Qh(100)/Qh(1)}×100
とし、この値で電池の高温特性を比較した。
表−1に、前記実施例1〜3及び比較例1で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を用いた電池の対極リチウム電流密度0.2mA/cm2の初期放電容量Qs(D)mAh/gと11mA/cm2の放電容量Qa(D)mAh/gを充放電の上下限電圧と共に示し、表−2に、サイクル試験における100サイクル時の放電容量Qh(100)mAh/gとサイクル容量維持率P[%]をそれぞれ示す。
Claims (4)
- 層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物において、ニッケル及びマンガンサイトの一部が他の元素で置換されており、層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物の原料化合物を湿式粉砕した後、噴霧乾燥したものであって、マンガン原料としてMn 2 O 3 及び/又はMn 3 O 4 を用いたことを特徴とする下記一般式(I)で表される菱面体晶の層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物。
[化1]
LiXNiYMnZQ(1−Y−Z)O2 (I)
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、0.9≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.25の関係を満たし、QはAl、Co、Fe、Mg、及びCaからなる群から選ばれる少なくとも一種を表す。ただし、置換元素としてアルミニウムを使用した場合は、0.8≦Ni/Mn≦1.2とする。)
- 請求項1に記載の菱面体晶の層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極材料。
- 請求項2に記載のリチウム二次電池用正極材料とバインダーとを含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
- 請求項1に記載の菱面体晶の層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物を使用した正極と、負極と、電解質とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
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