JP4461685B2 - 正極活物質複合化粒子、並びにそれを用いた電極及びリチウム二次電池 - Google Patents

正極活物質複合化粒子、並びにそれを用いた電極及びリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に用いられる正極活物質複合化粒子、並びに該複合化粒子を用いた電極及びリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、エネルギー密度及び出力密度等に優れ、小型化・軽量化できるため、ノート型パソコン、携帯電話及びハンディビデオカメラ等の携帯機器の電源として急激な伸びを示している。また、電気自動車や電力のロードレベリング等の電源としても注目されている。
【0003】
リチウム二次電池に用いられる正極は、通常、集電体、並びにその表面に形成される正極活物質、導電剤及び結着剤を含有する正極活物質層から構成されている。正極活物質としては、リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物又はリチウム・ニッケル複合酸化物等のリチウムとマンガン、コバルト又はニッケル等の遷移金属との複合酸化物が高性能の電池特性が得られるため注目されている。これらのリチウム系複合酸化物を用いたリチウム二次電池は、高い電圧を得ることが可能であり、高い出力が得られるという利点を有する。現在、複合酸化物の安定性、電池の高容量化、高温時での電池特性の改良を目的とした研究が活発に行われている。
【0004】
特開平11−154515号公報には、リチウム系複合酸化物、この複合酸化物の各粒子表面を被覆する第1の導電剤及び複合酸化物の各粒子間に介在し比表面積が第1の導電剤よりも小さい第2の導電剤を含む正極活物質が記載されている。
また、特開2000−123876号公報には、リチウム系複合酸化物、導電剤及び結着剤を混ぜ合わせながら、加圧力及び剪断応力を加えてリチウム系複合酸化物の表面に導電剤と結着剤とを付着させて複合化処理する正極材料の製造方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、本発明者等の検討によると、これらのリチウム系複合酸化物、特にリチウム・ニッケル系複合酸化物を用いたリチウム二次電池は、高容量を有する一方で、低温雰囲気下での出力が低下するという問題を内在することが判明した。
また、二次電池では、常にサイクル寿命が重要視されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温雰囲気下での出力とサイクル寿命とを高いレベルで両立させたリチウム二次電池を与える正極活物質複合化粒子、並びに該複合化粒子を用いた正極及びリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物、(B)活性炭及び(C)カーボンブラックからなる混合物に圧縮剪断応力を加える処理を施して製造される正極活物質複合化粒子を用いて作製したリチウム二次電池が、低温雰囲気下での出力とサイクル寿命とに優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物、(B)活性炭及び(C)カーボンブラックからなる混合物に圧縮剪断応力を加える処理を施して製造されることを特徴とするリチウム二次電池正極活物質複合化粒子に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る正極活物質複合化粒子を構成する(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物は、リチウム及びニッケルのほかに、更に他の元素を含有していてもよい。この複合酸化物としては、基本組成がLiNiO、LiNiO、LiNi及びLiNi等で表されるもの、並びにこれらのニッケルの一部を他の元素で置換したものが挙げられる。このうち、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【0010】
【化2】
LiNi (I)
(式中、aは0.9以上1.2以下、bは0.5以上1.2以下、b+cは0.9以上1.2以下の数であり、MはBe、B、Mg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn及びGaよりなる群から選択される元素を示す。)
式(I)において、aが1.2を超え、かつb+cが0.9未満になると結晶のニッケルサイトをリチウムが多く交換するため、電池容量が低下してしまう。また、aが0.9未満であり、かつb+cが1.2以上となると、電池の充放電に関与できるリチウムが減少するため、電池容量が低下してしまう。したがって、aの上限としては1.1以下、特に1.05以下が好ましく、下限としては0.95以上が好ましい。また、b+cの下限としては0.95以上が好ましく、上限としては1.1以下、特に1.05以下が好ましい。bの下限としては0.5以上、特に0.55以上が好ましく、上限としては1.1以下、特に1.05以下が好ましい。なお、Mは必須成分ではないのでcは0であってもよく、上限としては0.6以下、特に0.5以下が好ましい。
【0011】
Mは、好ましくはB、Mg、Al、Ca、Cr、Mn、Fe及びCoよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であるが、特にB、Al、Cr、Mn及びCoよりなる群から選ばれたものが好ましい。このうち、Al及び/又はCoが好ましく、Coが最も好ましい。
本発明において、(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物としては、通常はSEM観察により測定した平均一次粒子径が0.01μm以上30μm以下のものを用いる。平均一次粒子径の下限は0.02μm以上、特に0.1μm以上が好ましく、上限は5μm以下、特に2μm以下が好ましい。
【0012】
また、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した平均二次粒子径(平均粒子径)は、通常は1μm以上50μm以下である。平均二次粒子径の下限は4μm以上が好ましく、上限は40μm以下、特に30μm以下が好ましい。
更に、BET式粉体比表面積測定装置を用い、ASTM D3037に準拠したBET法(窒素表面積法)により測定した比表面積は、通常は0.1m/g以上10.0m/g以下である。比表面積の上限は5.0m/g以下、特に2.0m/g以下が好ましく、下限は0.5m/g以上が好ましい。
【0013】
(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物は、リチウム源化合物及びニッケル源化合物、並びに所望の他の元素源化合物を配合し、乾式法又は湿式法により処理して、粉体として調製することができる。
好ましくは、水等の媒体に上記の各元素源化合物を加え媒体攪拌式粉砕機等の湿式粉砕機により粉砕・混合して調製したスラリー、又は乾式粉砕機により粉砕した各元素源化合物を水等の媒体中で混合して調製したスラリーを噴霧乾燥させた後、焼成する方法が挙げられる。なかでも湿式粉砕器で粉砕・混合する湿式法によるのが好ましい。
【0014】
湿式法において、スラリー中の固形分濃度は、通常10質量%以上50質量%以下である。10質量%未満では、噴霧乾燥処理で形成される粉体の粒子径が好ましい範囲に収まらない。また、50質量%を超えると、均一なスラリーを得ることができない。スラリー中の固形分濃度は、12.5質量%以上、35質量%以下とするのが好ましい。
【0015】
スラリー中の元素源化合物の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した値として、通常2μm以下0.01μm以上であるのが好ましい。2μmを超えると、焼成時の反応性が低くなり、高嵩密度のものを得ることができない。また、0.01μm未満にまで粉砕するのは、経済的ではない。平均粒子径の上限は1μm以下、特に0.5μm以下が好ましく、下限は0.05μm以上、特に0.1μm以上が好ましい。
【0016】
スラリーの粘度は、BM型粘度計により測定した値として、通常50mPa・秒以上3000mPa・秒以下である。50mPa・秒未満では、噴霧乾燥処理で形成される粉体粒子径が好ましい範囲に収まらない。3000mPa・秒を超えると、スラリーが取扱いづらくなる。粘度の下限は100mPa・秒以上、特に200mPa・秒以上が好ましく、上限は2000mPa・秒以下、特に1600mPa・秒以下が好ましい。
【0017】
リチウム・ニッケル系複合酸化物のリチウム源化合物又はニッケル源化合物としては、それぞれの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩や蓚酸塩等のカルボン酸塩、アルキル化物及びハロゲン化物等が挙げられる。
リチウム源化合物としては、LiO、LiOH、LiOH・HO、LiCO、LiNO、LiOCOCH、(LiOCO)、LiCH、LiC、LiCl、LiI及びクエン酸リチウム等が挙げられる。このうち、LiOH・HO、LiCO、LiNO又はLiOCOCH、特にLiOH・HOが好ましい。
【0018】
ニッケル源化合物としては、NiO、Ni(OH)、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、NiC・2HO、Ni(OCOCH及びNiCl等が挙げられる。このうち、NiO、Ni(OH)、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO又はNiC・2HO、特にNiO、Ni(OH)又はNiOOHが好ましい。
【0019】
(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物に含まれていてもよい他の元素の原料化合物としては、それぞれの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩、酢酸塩や蓚酸塩等のカルボン酸塩、アルキル化物、ハロゲン化物及び炭化物等が挙げられる。以下にそのいくつかを例示する。
マグネシウム源化合物としては、MgO、Mg(OH)、Mg(NO・6HO、MgSO、MgC・2HO、Mg(OCOCH・4HO及びMgCl等が挙げられる。このうち、MgO又はMg(OH)、特にMg(OH)が好ましい。
【0020】
アルミニウム源化合物としては、Al、Al(OH)、AlOOH、Al(NO・9HO、Al(SO及びAlCl等が挙げられる。このうち、Al、Al(OH)又はAlOOH、特にAlOOHが好ましい。
カルシウム源化合物としては、CaO、Ca(OH)、CaCO、Ca(NO・4HO、CaSO・2HO、CaC・HO、Ca(OCOCH・HO及びCaCl等が挙げられる。このうち、CaO、Ca(OH)又はCaCO、特にCa(OH)が好ましい。
【0021】
クロム源化合物としては、CrO、CrO、Cr、Cr(OH)、Cr・nHO、CrSO・7HO、Cr(SO、Cr(OCOCH・2HO、Cr(OCOCH、CrCl及びCrCl等が挙げられる。このうち、CrO、CrO、Cr、Cr(OH)又はCr・nHO、特にCrO、CrO又はCrが特に好ましい。
【0022】
マンガン源化合物としては、MnO、Mn、Mn、MnOOH、MnCO、Mn(NO、MnSO、Mn(OCOCH、Mn(OCOCH、MnCl、MnC 及びクエン酸マンガン等が挙げられる。このうち、MnO、Mn、Mn又はMnOOH、特にMnO、Mn又はMnが好ましい。
【0023】
鉄源化合物としては、Fe、Fe、FeOOH、Fe(NO・9HO、FeSO・7HO、Fe(SO・nHO、FeC・2HO、FeCl及びFeCl等が挙げられる。このうち、Fe、Fe又はFeOOH、特にFe、FeOOHが好ましい。
コバルト源化合物としては、CoO、Co、Co、Co(OH)、Co(NO・6HO、Co(SO・7HO、Co(OCOCH・4HO及びCoCl等が挙げられる。このうち、CoO、Co、Co又はCo(OH)、特にCo(OH)が好ましい。
【0024】
スラリーの噴霧乾燥は、公知のいずれの方法でも行うことができる。好ましいのは、ノズルの先端から加圧気体を用いてスラリーを噴射させる方法である。ノズルとしては、任意のものを用いることができる。例えば、特許第2797080号公報に記載されているような中心と外周から加圧気体を噴射し、内周からリング状にスラリーを噴射する三重管構造のノズルが好ましい。この加圧気体としては、空気、窒素等が好ましい。ガス線速は、通常100m/秒以上1000m/秒以下である。200m/秒以上、特に300m/秒以上が好ましい。乾燥用ガスとしては、通常50℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の加熱空気又は窒素等を、上部から下部に向けてダウンフローさせるのが好ましい。特に好ましいのは、ノズルからスラリーを水平方向に噴射させ、これに直行するように乾燥用ガスをダウンフローさせる方法である。
【0025】
噴霧乾燥により、球状の粉体が得られる。粉体の平均粒子径は、噴霧方法、ノズル形状、加圧気体噴射速度、スラリー供給速度及び加熱気体流温度等によって制御することができる。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した値として、通常は粒径が4μm以上50μm以下の粉体が得られるようにする。5μm以上30μm以下の粒径の粉体が得られるようにするのが好ましい。
【0026】
この粉体を箱型炉、管状炉、トンネル炉又はロータリーキルン等の装置内で、空気等の酸素含有ガス若しくは酸素ガス雰囲気下、又は窒素若しくはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、加熱することにより焼成し、リチウム・ニッケル系複合酸化物とする。酸素含有ガス又は酸素ガス雰囲気下で加熱するのが好ましい。
焼成は、通常700℃以上1050℃以下で行う。700℃未満では、複合酸化物への反応性が低下してしまう。一方、1050℃を超えると、複合酸化物の層状構造に欠陥が生じてしまう。焼成温度の下限は750℃以上、特に800℃以上が好ましく、上限は1000℃以下、特に950℃以下が好ましい。
【0027】
加熱時間としては、0.5〜50時間が好ましい。
加熱処理後は、5℃/分以下の速度で徐冷するのが好ましい。
(B)活性炭としては、任意のものを使用することができる。通常は平均粒子径が1μm以上30μm以下であるものを用いる。また、BET法による比表面積は、500m/g以上3000m/g以下であるものが好ましい。500m/g未満では、電池の低温雰囲気下における出力の向上効果が低下し、一方、3000m/gを超えると、正極活物質含有層の嵩密度が低下し、体積あたりの容量が低下する。比表面積の下限は600m/g以上、特に800m/g以上が好ましい。最も好ましいのは、1000m/g以上である。上限は、2800m/g以下、特に2600m/g以下が好ましい。
【0028】
(C)カーボンブラックとしては、導電性を有するものであれば任意のものを用いることができる。単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの平均粒子径は、一次粒子径として、通常1nm以上500nm以下のものを用いる。1nm未満では製造上の面から好ましくない。一方、500nmを超えると正極活物質含有組成物に導電性を付与しにくくなる。平均粒子径の下限としては5nm以上が好ましく、上限としては100nm以下が好ましい。
【0029】
カーボンブラックの具体例としては、市販されているアセチレンブラック、「ケッチェンブラック」(ケッチェンブラックインターナショナル社製)として市販されている特殊ファーネスブラック、及び「三菱導電性カーボンブラック」又は「三菱カーボンブラック」(三菱化学社製)として市販されているその他カーボンブラックなどが挙げられる。
【0030】
本発明に係る正極活物質複合化粒子は、上述の(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物、(B)活性炭及び(C)カーボンブラックの各成分を含有する混合物に圧縮剪断応力を加える処理を行うことにより製造されるものである。
この混合物の組成としては、(A):75質量%以上99.8質量%以下、(B):0.1質量%以上15質量%以下、及び(C):0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0031】
(A)の下限としては82質量%以上、特に87質量%以上が好ましい。上限としては97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。
(B)が0.1質量%未満では、低温時の特性が低下する。一方、15質量%を超えると、体積あたりの電池容量が低下する。下限としては2質量%以上、特に3質量%以上が好ましい。上限としては12質量%以下、特に8質量%以下が好ましい。
【0032】
(C)が0.1質量%未満では、十分な出力向上効果が得られない。一方、10質量%を超えると、複合化粒子の抵抗が増加するため低温での出力を阻害する。下限としては1質量%以上、特に2質量%以上が好ましい。上限としては6質量%以下、特に5質量%以下が好ましい。
また、(B)と(C)とを合わせた炭素成分において、(B)が25質量%以上95質量%以下とするのが好ましい。(B)が25質量%未満では、低温特性の改善効果が低下する。一方、(B)が95質量%を超えると、高温サイクル寿命が低下する。(B)の下限としては40質量%以上、特に50質量%以上が好ましく、上限としては90質量%以下、特に80質量%以下が好ましい。
【0033】
圧縮剪断応力を加える処理とは、(A)、(B)及び(C)の各成分を所定の比率で配合したものに、特開平11−154515号公報や特開2000−123876号公報に記載されている方法と同じく、圧縮及び剪断応力を加える操作をいう。これにより圧縮された配合物は一体化されると共に、一体化したものの一部が剪断応力により削られて微粉となり、これが再び一体化された粒子に結合されるという、いわゆるメカノフュージョンが発現されるものと考えられる。この処理は、例えば、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン社製)、又は「ハイブリダイゼーションシステム」(奈良機械製作所社製)等を用いて行うことができる。
【0034】
上記のメカノフュージョン処理で得られたリチウム二次電池正極活物質複合化粒子に、(D)導電剤及び(E)結着剤を加えて混合することにより、リチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物を調製する。
(D)導電材としては、リチウム二次電池に用いられることが知られているいずれのものも用いることができる。例えば、カーボンブラック及び黒鉛等が挙げられる。
【0035】
(E)結着剤としては、リチウム二次電池に用いられることが知られているいずれのものも用いることができる。例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリエチレン等の樹脂;スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム等のゴム;ポリ酢酸ビニル及びセルロース等の高分子物質などが挙げられる。
【0036】
リチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物としては、複合化粒子を70質量%以上98.9質量%以下、(D)導電材を1質量%以上10質量%以下、(E)結着剤を0.1質量%以上20質量%以下で含有するものが好ましい。
複合化粒子が70質量%未満では、電池容量等の電池特性を十分に確保することが困難となる。一方、98.9質量%を超えると、電極としての機械的強度を確保することが困難となる。複合化粒子は75質量%以上、特に80質量%以上含有するのが好ましく、上限は97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。
【0037】
(D)導電剤が1質量%未満では良好なサイクル寿命を得ることが困難である。一方、10質量%を超えると体積電池容量が低下する。(D)の下限は2質量%以上、特に3質量%以上が好ましく、上限は10質量%以下、特に5質量%以下が好ましい。
(E)結着剤が0.1質量%未満では、電極としての機械的強度を確保することが困難である。一方、20質量%を超えると、電池容量や導電性等の電池特性を十分に確保することができない。(E)の下限は3質量%以上、特に5質量%以上が好ましく、上限は15質量%以下、特に10質量%以下が好ましい。
【0038】
なお、このリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物中に、更にLiFePO等のリチウムイオンを吸蔵・放出し得る他の正極活物質を含有させてもよい。
得られたリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物を溶媒に分散させて調製した塗布液を、集電体表面に塗布し乾燥させた後、一軸プレスやロールプレス等による圧密化処理を行うことにより、集電体表面にリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物からなる層を有するリチウム二次電池の正極を製造する。
【0039】
溶媒としては、エチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル及びアクリル酸メチル等のエステル系溶媒;ジエチルトリアミン及びN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒;並びに水等が挙げられる。
【0040】
正極の集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が挙げられる。その厚みは、通常1〜1000μmである。5〜500μm、特に5〜100μmが好ましい。正極の集電体としては、アルミニウム箔が好ましい。
集電体表面のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物層は、通常厚みが1〜1000μmとなるように製造する。10〜200μmの厚みのものが好ましい。
【0041】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、負極活物質を結着剤と共に溶媒に分散させて調製した塗布液を集電体表面に塗布し、乾燥させ、一軸プレスやロールプレス等による圧密化処理を行う方法が挙げられる。
負極活物質としては、リチウム、リチウムアルミニウム合金;黒鉛、石炭系又は石油系コークスの炭化物、石炭系又は石油系ピッチの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂又は結晶セルロース等の炭化物、ファーネスブラック又はアセチレンブラック等のカーボンブラック;SnO、SnO、Sn1−x O(式中、MはHg、P、B、Si、Ge又はSbを表し、xは0<x<1の数を表す。)、Sn(OH)、Sn3−x (OH)(式中、MはMg、P、B、Si、Ge、Sb又はMnを表し、xは0<x<3の数を表す。)、LiSiO、SiO又はLiSnO等が挙げられる。
【0042】
結着剤としては、リチウム二次電池に用いられることが知られているいずれのものも用いることができる。例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリエチレン等の樹脂;スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、弗素ゴム等のゴム;ポリ酢酸ビニル及びセルロース等の高分子物質などが挙げられる。
【0043】
溶媒としては、エチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル及びアクリル酸メチル等のエステル系溶媒;ジエチルトリアミン及びN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒;並びに水等が挙げられる。
【0044】
負極の集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の箔が挙げられ、このうち銅箔が好ましい。
電解質としては、リチウム二次電池に用いられることが知られているいずれのものも用いることができる。例えば、有機電解液に用いられる電解質、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等が挙げられる。このうち有機電解液に用いられる電解質が好ましい。
【0045】
有機電解液に用いられる電解質としては、LiCl、LiBr、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF及びLiC(SOCF等が挙げられる。
【0046】
有機溶媒としては、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類;4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等の脂肪酸エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン系化合物類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0047】
これらのうち、25℃における比誘電率が20以上の高誘電率溶媒が好ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート、並びにこれらの水素原子がハロゲン原子又はアルキル基等で置換された化合物が好ましい。有機溶媒全体に占める高誘電率溶媒の割合は、通常20質量%以上である。30質量%以上、特に40質量%以上とするのが好ましい。
【0048】
リチウム二次電池の正極と負極の間には、セパレータを介在させてもよい。セパレータとしては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、セルロース及びセルロースアセテート等の高分子の微多孔性フィルム;これらの高分子繊維やガラス繊維等の不織布フィルター等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン微多孔性フィルムが好ましい。ポリエチレンとしては、分子量50万以上500万以下のものが好ましい。50万未満では、高温での形状維持性を確保するのが困難となる。一方、500万を超えると、高温での微多孔の閉塞性を確保するのが困難となる。分子量の下限は100万以上、特に150万以上が好ましく、上限は400万以下、特に300万以下が好ましい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例においては、(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物、(B)活性炭、(C)カーボンブラック、(D)導電材、及び(E)結着剤は、以下のものを用いた。
【0050】
また、リチウム二次電池正極活物質複合化粒子は、メカノフュージョンシステム「AM−20FS」(ホソカワミクロン社製)を用い、回転数2600rpmで20分間圧縮剪断応力を加えることにより製造した。
(A)リチウム・ニッケル系複合酸化物
A−1:平均二次粒子径9μm、BET法による比表面積0.7m/gのLi1.05Ni0.80Co0.15Al0.05で表される層状リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物
A−2:平均二次粒子系7μm、BET法による比表面積0.5m/gのLi1.05Ni0.80Co0.15Al0.05で表される層状リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物。
【0051】
(B)活性炭
平均粒子径6μm、BET法による比表面積1000m/gの活性炭。
(C)カーボンブラック
平均一次粒子系30nm、BET法による比表面積1280m/gのケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製)。
【0052】
(D)導電材
D−1:平均一次粒子系30nm、BET法による比表面積800m/gのケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製)
D−2:平均一次粒子径35nm、BET法による比表面積39m/gのアセチレンブラック(電気化学工業社製)。
【0053】
(E)結着剤
ポリビニリデンフルオライド「PVDF#1100」(呉羽化学工業製)。
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示す組成で(A)、(B)及び(C)を用いてリチウム二次電池正極活物質複合化粒子を製造した。
【0054】
【表1】
Figure 0004461685
【0055】
また、表2に示す組成で上記で得られた複合化粒子、(D)及び(E)を用いて、リチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物を製造した。
なお、比較例1は、(A)及び(C)の混合物に圧縮剪断応力を加える処理を施して得られたリチウム二次電池正極活物質複合化粒子に、(B)及び(E)を加えて製造したリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物を用いた。
【0056】
【表2】
Figure 0004461685
【0057】
各リチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物をN−メチル−2ピロリドンに分散して得られたスラリーを、厚さ20μmのアルミ箔の片面に塗布し乾燥させた後、直径12mm(12φ)の円形に打ち抜き、これをプレスして正極とした。正極中の活物質量は約13mgであった。
この正極塗布膜を9φに打ち抜いたものを試験極とし、Li金属を対極としてコインセルを組み、これに0.2mA/cmの定電流で上限4.2V下限3.2Vで充放電する試験を実施し、正極活物質単位質量当たりの初期充電容量〔Qs(mAh/g)〕、初期放電容量〔Qd1(mAh/g)〕を測定した。
【0058】
また、平均粒子径8〜12μmの黒鉛粉末92.5質量部とポリビニリデンフルオライド「PVDF#1300」(呉羽化学工業製)7.5質量部とを、N−メチルピロリドンに分散させて調製したスラリーを厚さ20μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥させた後、直径12mmの円形に打ち抜き、プレスして負極とした。
【0059】
この負極を試験極とし、リチウム金属を対極としてコインセルを組み、これに0.2mA/cmの定電流で負極にリチウムイオンを吸蔵させる反応を下限0Vで行ったときの、負極活物質単位質量当たりの初期吸蔵容量〔Qf(mAh/g)〕を測定した。
正極缶の上に正極を載置し、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを載置し、ポリプロピレン製ガスケットで押さえ、その上に負極を載置し、更に厚み調整用のスペーサーを載置した。これに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比3:7)に六弗化燐酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を加えて十分に滲み込ませた後、負極缶を載置し、封口することによりコインセルを作製した。なお、正極活物質質量/負極活物質質量={〔Qf(mAh/g)〕/1.2}/〔Qc(mAh/g)〕となるように設定した。
【0060】
コインセルについて、コンディショニング電流値〔I(mA)〕=〔Qd1(mAh/g)〕×正極活物質質量/5で、充電上限電圧4.1V、放電下限電圧3.0Vとして、充放電2サイクルの初期コンディショニングを行い、2サイクル目における正極活物質単位質量当たりの放電容量〔Qd2(mAh/g)〕を測定した。
【0061】
電池を十分緩和した後、1時間率電流値〔1C(mA)〕=〔Qd2(mAh/g)×正極活物質質量として、定電流1/(3C)で72分間充電を行い、1時間静置した。次いで、−30℃の低温雰囲気下で1時間以上静置した後、定電流2.5Cで4秒間放電を行った。このときの放電直前のOCV(Open Circuit Voltage)と放電4秒後のOCVとの差(ΔV)を測定することにより、クロノポテンショメトリーを測定した。結果を表に示した。ΔVが小さい程、電池の抵抗が小さく大電力の取り出しが可能であり、低温雰囲気下での出力が向上していることを意味する。
【0062】
また、初期コンディショニング後のコインセルを、60℃雰囲気下で、定電流1C、充電上限電圧4.1V、放電下限電圧3.0Vとして、充放電を100サイクル繰り返した。引き続き0.2mAの充放電を2回繰り返し、サイクル後の容量を確認した。サイクル後2回目の放電容量をサイクル後のQd2としてクロノポテンショメトリーの測定を実施した。結果を表3に示した。
【0063】
【表3】
Figure 0004461685
【0064】
【発明の効果】
本発明に係るリチウム二次電池正極活物質複合化粒子を含有する組成物を用いることにより、低温雰囲気下での出力及びサイクル寿命に優れたリチウム二次電池を作製することができる。

Claims (10)

  1. (A)リチウム・ニッケル系複合酸化物:75質量%以上99.8質量%以下、(B)活性炭:0.1質量%以上15質量%以下、及び(C)カーボンブラック:0.1質量%以上10質量%以下からなる混合物に圧縮剪断応力を加える処理を施して製造されることを特徴とするリチウム二次電池正極活物質複合化粒子。
  2. リチウム・ニッケル系複合酸化物が、下記一般式(I)で表される複合酸化物であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子。
    【化1】
    LiNi (I)
    (式中、aは0.9以上1.2以下、bは0.5以上1.2以下、b+cは0.9以上1.2以下の数であり、MはBe、B、Mg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn及びGaよりなる群から選択される元素を示す。)
  3. Mが、B、Al、Cr、Mn及びCoよりなる群から選択される元素であることを特徴とする請求項記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子。
  4. 活性炭が、BET法による比表面積が500m/g以上3000m/g以下のものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子。
  5. (B)活性炭と(C)カーボンブラックとを合わせた炭素成分において、(B)活性炭が25質量%以上95質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子。
  6. (A)リチウム・ニッケル系複合酸化物、(B)活性炭及び(C)カーボンブラックを混合した後、圧縮剪断応力を加える処理を施すことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の複合化粒子の製造方法。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子、導電材及び結着剤を含有することを特徴とするリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物。
  8. リチウム二次電池正極活物質複合化粒子:70質量%以上98.9質量%以下、導電剤:1質量%以上10質量%以下及び結着剤:0.1質量%以上20質量%以下からなるものであることを特徴とする請求項記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物。
  9. 集電体表面に請求項又は記載のリチウム二次電池正極活物質複合化粒子含有組成物からなる層を有することを特徴とする正極。
  10. 請求項記載の正極、負極及び電解液を有することを特徴とするリチウム二次電池。
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