JP2008056561A - リチウムニッケルマンガン複合酸化物、並びにこれを用いたリチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウム二次電池用の正極材料として、下記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であって、六方晶(a=2.87Å(±5%)、c=14.13Å(±5%)、空間群R3(−)m)を基本構造として仮定した場合に、等価な3つの[110]方向のうち1方向に3倍あるいは2倍の長周期性を有する結晶構造を有するものを使用する。 LiXNiYMnZQ(1-Y-Z)O2 (I)(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、1≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.5の関係を満たす数を表す。Qはニッケル及びマンガンと異なる1つ以上の元素を表す。)
【選択図】図1
Description
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等のリチウム複合酸化物が提案され、研究が盛んに行われている。これらの中でも、合成の容易性、作動電圧、放電容量等の観点より、LiCoO2が主に用いられている。しかし
Coは資源的に乏しく高価な元素であるという問題がある。それに対し、LiMn2O4は埋蔵量が豊富であるため魅力的であるが、実用化のためには高温でのサイクル特性、保存特性の解決が必要である。また、LiNiO2はCoと比較して原料のコスト面で優れ、
LiCoO2を上回る放電容量が得られる可能性があるため期待がもたれているが、焼成
および保存時の雰囲気制御や安全性の面で改良が必要とされている。
≦0.5)による改良も行われているが、Mn置換量を増やすと十分な容量が得られないという問題が生じている。さらに、第41回電池討論会2D20(2000)では、x=0.5に相当するNi:Mn=1:1の層状構造をもつ結晶性の高い単一相を共沈法により合成したとの報告がある。
J.Mater.Chem. 6(1996) p.1149、J.Electrochem. Soc. 145(1998)p.1113
ンダムに占有するのではなく、規則的に周期性をもって占有させることにより長周期性が生じた結晶構造とすることにより上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、1≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.5の関係を満たす数を表す。Qはニッケル及びマンガンと異なる1つ以上の元素を表す。)
また、本発明の第2の要旨は、下記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であって、以下の条件でX線回折測定を行なった場合の、2θ=18.60゜(±0.30゜)のピーク強度Aと、2θ=20.58゜(±0.17°)のピーク強度Bとの強度比B/Aが0.01以上であることを特徴とするリチウムニッケルマンガン複合酸化物、に存する。
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、1≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.5の関係を満たす数を表す。Qはニッケル及びマンガンと異なる1つ以上の元素を表す。)
測定条件X線源:CuKα線(CuKα1=1.5406Å、CuKα2=1.5444Å、CuKα2除去なし)
発散スリット:0.25°
散乱スリット:0.25°
ステップ幅:0.02°
さらに本発明の第3の要旨は、これらリチウムニッケルマンガン複合酸化物を用いた正極材料、正極及びリチウム二次電池に存する。
考え得るのは、MnとNiの組成の長周期的なゆらぎや原子位置の長周期的な変位等である。これらの結晶構造の特性が、リチウム二次電池正極材として用いた際に、充放電によるリチウムイオンのドープ、脱ドープにおける結晶構造の安定性と関連があり、サイクル特性や初期効率の改良につながっていると予想される。
LiXNiYMnZQ(1-Y-Z)O2 (I)
ここで、式(I)中、Xは0<X≦1.2、好ましくは0<X≦1.1の範囲の数を表わす。Xが大きすぎると、異相の生成、結晶構造の不安定化、これを使用したリチウム二次電池の電池容量低下といった問題が生じる。Y及びZは、0≦Y+Z≦1を満たす数であり、また1≦Y/Z≦9の範囲の数を表す。
容易に固溶し、単一相のリチウム遷移金属複合酸化物として合成することができる。更に、Co、Alに関しては、得られるリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池が高性能な電池特性、特に繰り返し充放電を行った際の放電容量維持率について良好な性能を示す。元素Qは複数の元素から構成されていてもよい。
本発明のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、六方晶(a=2.87Å(±5%)c=14.13Å(±5%) 空間群R3(−)m)を基本構造として仮定した場合に、等価な3つの[110]方向のうち1方向に3倍あるいは2倍の長周期性を有する結晶構造を有する。このような長周期構造は、例えば、下記(1)又は(2)のようにして測定することができる。
この場合、解析に適した対称性の良好な電子線回折パターンを得るために、透過型電子顕微鏡の試料傾斜装置を用い、結晶に対する電子線の入射方向を調整するのが好ましい。また、長周期性を有する構造を示す回折強度は相対的に弱いため、電子線回折を撮影する際には、露出量を十分に大きくする必要がある。これを六方晶、a=2.87Å(±5%)、c=14.13Å(±5%)、空間群R3(−)mの結晶構造を仮定して解釈し、長周期の有無および周期を測定する。また、望ましくは回折パターンを撮影した1次粒子が不純物ではないことを確認する目的でエネルギー分散型X線分光装置などで組成分析も併用する。
この場合、CuKα(Kα1:1.5406Å、Kα2:1.5444Å,Kα2除去な
し)を用いて測定した場合に2θ=20.58Å(±0.30°)に比較的弱い強度のピークが観測され、このピークは[110]方向の3倍周期に該当する(1/3,1/3,0)に帰属できる。前記長周期性は、この2θ=20.58゜(±0.17°)のピーク強度Bの2θ=18.60゜(±0.30゜)のピーク強度Aに対する強度比B/Aが0.01以上であることで確認することができる。なお、XRDの測定時の発散スリットは0.25°、散乱スリットは0.25°、ステップ幅は0.02°とする。上記強度比B/Aは、好ましくは0.015以上、さらに好ましくは0.02以上、最も好ましくは0.025以上であり、また好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.07以下、最も好ましくは0.05以下である。上記強度比が小さすぎると前記長周期性が弱く容量やサイクル特性の向上が顕著でなくなることがあり、一方大きすぎると本来の単位格子が乱れてリチウムの拡散が阻害されるおそれがある。
リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粉体充填密度(200回タップ後のタップ密度)は通常0.7g/cm2以上、2.8g/cm3以下である。粉体充填密度が低すぎると電極の体積当たり容量が低いため、電池としての容量が低下する傾向にある。一方、高すぎると多孔度が減少しやすく高電流密度での容量が低下する傾向にある。粉体充填密度は、置換元素の置換量やニッケルとマンガンとのモル比等の正極活物質の組成の外、乾燥条件、焼成条件等の製造条件により制御可能である。
cm3以上である。比表面積が高すぎると重量当たり一定量の導電剤を加える際に導電マ
トリックスが形成し難いという問題が生じ、低すぎると粗大粒子化して高電流密度での容量が低下する。比表面積は、置換元素の置換量やニッケルとマンガンとのモル比等の正極活物質の組成の外、乾燥条件、焼成条件等の製造条件により制御可能である。
本発明のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、例えば、リチウムとニッケルとマンガンと置換元素とを含む原料を焼成することによって製造することができる。
、LiOH・H2O、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アル
キルリチウム、リチウムハロゲン化物等の各種のリチウム化合物を挙げることができる。より具体的には、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、LiCl、LiI、酢酸リチウム、Li2O等を挙げることができる。これらリチウム原料の中
で好ましいのは、Li2CO3、LiNO3、LiOH・H2O、酢酸リチウム等の水溶性のリチウム化合物である。これらの水溶性化合物は、例えば、分散媒として水を使用したスラリー中に溶解させることによって容易に良好な特性を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることができる。また、焼成処理の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子を含有しないリチウム化合物が好ましい。最も好ましいリチウム原料は、水溶性でもあり、また窒素原子や硫黄原子を含有しない、LiOH・H2Oである。無論、リチウム源として複数種のものを使用してもよい。
NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル、及びニッケルハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。この中でも、焼成処理の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子を含有しない、Ni(OH)2、
NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O4・2H2Oのようなニッケル化合物が好ましい。また、さらに工業原料として安価に入手できる観点、及び反応性が高いという観点から、特に好ましいのはNi(OH)2、NiO、NiOOH
である。
無論、ニッケル源として複数種のものを使用してもよい。
ンオキシ水酸化物、マンガン水酸化物、又はマンガンハロゲン化物を挙げることができる。これらマンガン原料の中でも、Mn2O3、Mn3O4は、最終目的物である複合酸化物のマンガン酸化数に近い価数を有しているため好ましい。さらに工業原料として安価に入手できる観点、及び反応性が高いという観点から、特に好ましいのはMn2O3である。マンガン源は、マンガン化合物がスラリー中で電離して生成したマンガンイオンでもよい。無論、マンガン源として複数種のものを使用してもよい。
置換元素がアルミニウムを含む場合、具体的なアルミニウム源としては、例えば、AlOOH、Al2O3、Al(OH)3、AlCl3、Al(NO3)3・9H2O及びAl2(SO4)3等の各種のアルミニウム化合物を挙げることができる。中でも、焼成工程の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、AlOOH、Al2O3及びAl(OH)3が好ましく、さらに好ましくは、工業的に安価に入手できる点及び反応性が高い点で
AlOOHである。無論複数のアルミニウム化合物を使用することもできる。
)2・6H2O、及びCo(SO4)2・7H2O等の各種のコバルト化合物を挙げることが
できる。中でも、焼成工程の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、Co(OH)2、CoO、Co2O3、Co3O4が好ましく、さらに好ましくは、工業的に安
価に入手できる点及び反応性が高い点でCo(OH)2である。無論複数のコバルト化合
物を使用することもできる。
g(NO3)2・6H2O、及びMgSO4等の各種のマグネシウム化合物を挙げることができる。中でも、焼成工程の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、Mg(OH)2、MgOが好ましく、さらに好ましくは、工業的に安価に入手できる点及び反
応性が高い点でMg(OH)2である。無論複数のマグネシウム化合物を使用することも
できる。
ルシウム化合物を挙げることができる。中でも、焼成工程の際にNOx及びSOx等の有害物質を発生させない点で、Ca(OH)2、CaO、CaCo3が好ましく、さらに好ましくは、工業的に安価に入手できる点及び反応性が高い点でCa(OH)2である。無論
複数のカルシウム化合物を使用することもできる。
これらリチウム源、ニッケル源、マンガン源及び置換元素源の混合方法及び焼成条件は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の前記長周期構造の有無に大きな影響を与える。後述するように、長周期構造の生成は焼成条件と特に密接な関係にあり、例えば焼成温度が低すぎたり焼成時間が短すぎると周期性がみられるような高い結晶性が得られず、その一方焼成温度が高すぎたり焼成時間が長すぎると長周期構造が失われ、LiNiO2本来の周期構造のみとなるという傾向にある。
スラリー全体の重量に対する、リチウム源、ニッケル源、マンガン源及び置換元素源の総重量比は、通常10重量%以上、好ましくは12.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下である。重量比が上記範囲以下の場合は、スラリー濃度が極端に希薄なため噴霧乾燥により生成した球状粒子が必要以上に小さくなったり破損しやすくなったりする一方で、上記範囲以上となると、スラリーの均一性が保ちにくくなる。
焼成時の雰囲気は、製造する化合物の組成や構造に応じて、空気等の酸素含有ガス雰囲気や、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができるが、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の場合、ニッケルは原料の2価から目的生成物の3価へ酸化される必要があることから、好ましくは空気、酸素富化空気又は酸素である。
焼成に使用する加熱装置は、上記の温度、雰囲気を達成できるものであれば特に制限はなく、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。
このような正極層は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、バインダー及び必要に応じて導電剤等を溶媒でスラリー化したものを正極集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。
のリチウムイオンを吸蔵・放出しうる活物質をさらに含有していてもよい。
正極層中の活物質の割合は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。多すぎると電極の機械的強度が劣る傾向にあり、少なすぎると容量等電池性能が劣る傾向にある。
り、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。バインダーの割合が低すぎると、活物質を十分に保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、一方高すぎると電池容量や導電性を下げることがある。
正極に使用する集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が用いられ、好ましくはアルミニウムである。集電体の厚さは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜500μm程度である。厚すぎるとリチウム二次電池全体としての容量が低下し、薄すぎると機械的強度が不足することがある。
二次電池の負極に使用される負極の活物質としては、リチウムやリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金であっても良いが、より安全性が高く、リチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が好ましい。
、GeまたはSb、ただし0≦x<1)、Sn3O2(OH)2 、Sn3-xMxO2(OH)2(M=Mg、P、B、Si、Ge、Sb又はMn、ただし0≦x<3)、LiSiO2、
SiO2又はLiSnO2等を挙げることができる。
なお、これらの中から選ばれる2種以上の混合物を負極活物質として用いてもよい。
正極と負極との間にセパレーターを使用する場合は、微多孔性の高分子フィルムが用いられ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子を用いることができる。また、ガラス繊維等の不織布フィルターや、ガラス繊維と高分子繊維との不織布フィルターを用いることもできる。セパレータの化学的及び電気化学的安定性は重要な因子である。この点からポリオレフィン系高分子が好ましく、電池セパレータの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが望ましい。
有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。これらの代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO3CF3)2等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種以上のものを用いることができる。また、CO2 、 N2O、CO、SO2 等のガスやポリサルファイドSx 2-など負極表面にリチウムイオンの効率
よい充放電を可能にする良好な皮膜を生成する添加剤を任意の割合で上記単独又は混合溶媒に添加してもよい。
ガラスや0.45LiI−0.37Li2S−0.26B2S3,0.30LiI−0.4
2Li2S−0.28SiS2等の硫化物ガラス等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種以上のものを用いることができる。
LiOH・H2O、Ni(OH)2、Mn2O3をそれぞれ最終的な層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Ni:Mn=1.05:0.50:0.50(モル比)となるように秤量し、これに純水を加えて固形分濃度16重量%のスラリーを調整した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機(シンマルエンタープライゼス社製:ダイノーミルKDL−A型)を用いて、2時間粉砕した。このスラリーの粘度をBM型粘度計(トキメック社製)により測定した。測定は室温大気中で行い、特定の金属製ローターを装置本体の回転軸に固定し、該ローターをスラリー液面下に浸し、回転軸を回転させてローターにかかる抵抗力(捻れの力)により粘度を算出した。その結果、初期粘度は1150mPa・sであった。
乾燥により得られた造粒粒子を900℃で10時間空気中で焼成することにより、ほぼ仕込みのモル比組成のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
(2)長周期構造の測定
得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物の長周期構造の測定を行った。
%)、c=14.13Å(±3%)、空間群R3(−)m により解釈され、各回折スポットの結晶格子面の指数付けもされたが、それらに加えてこの結晶構造そのままでは解釈できない回折スポットが出現していることが確認された。これを詳細に解析したところ、六方晶の等価な3方向の110方向のうち1方向のみ、3分の1(誤差±3%)の位置に回折点が加わっていることが判明した。これを明確に示す電子線回折パターンと上記六方晶を基本にした解釈結果を図1と図2とに示す。この現象から、本発明の結晶が上記六方晶の[110]方向のうちの1方向について3倍の大きさの長周期構造を有していることが分かる。また、粒子によっては2倍周期をもつもの、3倍周期と2倍周期が混在していると解釈されるものも測定された。
ークは[110]方向の3倍周期に該当する(1/3,1/3,0)に帰属できた。(003)の回折ピークに帰属される18.60゜のピーク強度をA、20.58゜のピーク強度をBとすると、B/A=0.03であった。
上記得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を用いてリチウム二次電池を作製し、性能を評価した。
リチウムニッケルマンガン複合酸化物75重量%、アセチレンブラック20重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は約8mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
ボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶をのせ電池を封口した。
これに、0.2mA/cm2の定電流充電、即ち正極からリチウムイオンを放出させる
反応を上限4.3Vで行い、ついで0.5mA/cm2の定電流放電、即ち正極にリチウ
ムイオンを吸蔵させる反応を下限3.0Vで行った際の正極活物質単位重量当たりの初期充電容量QcmAh/g、初期放電容量をQd1mAh/gを測定した。その結果Qc=16
3.7mAh/g、Qd1=144mAh/gであった。
負極活物質としての平均粒径約8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
なお、この負極を試験極とし、Li金属を対極として電池セルを組み、0.2mA/cm2の定電流で負極にLiイオンを吸蔵させる試験を下限0Vで行った際の負極活物質単
位重量当たりの初期吸蔵容量をQfmAh/gとした。
コイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶の上に正極(12mmφ)を置き、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた後、非水電解液溶液として、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶をのせ電池を封口した。この時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ
正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]=(Qf/1.2)/Qc‘
となるように設定した。
(5)サイクル試験
このように得られた電池の高温特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを
と設定し、以下の試験を行った。
まず室温で定電流0.2C充放電2サイクル及び定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充電上限は4.2V、下限電圧は3.0Vとした。
とし、この値で電池の高温特性を比較した。その結果、P(50)=94.8(%)であった。以上の結果を表−1にまとめる。
<比較例1>
硝酸マンガン6水和物、硝酸ニッケル6水和物をモル比でMn/Ni=1/1となるよう秤量し、両者の総重量の9倍量の水に溶解させた。この水溶液を60℃に加熱し、撹拌しながら水酸化リチウム水溶液を滴下した。水酸化リチウムの量は中和に必要な量の1.02倍とし、水酸化リチウム水溶液は7wt%とした。滴下終了後さらに3hr撹拌を続け、室温に冷却した後濾過し、50℃で24hr乾燥した。
得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物のXRDと、実施例1と同様にして評価とを、それぞれ図4及び表−1に示す。なお、図4において、20.80゜にピークが観測されているが、このピークはリチウムマンガン酸化物の213相に帰属されるものであり、本発明で規定する前記長周期構造に帰属されるものではない。
Claims (5)
- 下記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であって、六方晶(a=2.87Å(±5%)、c=14.13Å(±5%)、空間群R3(−)m)を基本構造として仮定した場合に、等価な3つの[110]方向のうち1方向に3倍あるいは2倍の長周期性を有する結晶構造を有することを特徴とするリチウムニッケルマンガン複合酸化物。
LiXNiYMnZQ(1-Y-Z)O2 (I)
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、1≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.5の関係を満たす数を表す。Qはニッケル及びマンガンと異なる1つ以上の元素を表す。) - 下記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であって、以下の条件でX線回折測定を行なった場合の、2θ=18.60゜(±0.30゜)のピーク強度Aと、2θ=20.58゜(±0.17°)のピーク強度Bとの強度比B/Aが0.01以上であることを特徴とするリチウムニッケルマンガン複合酸化物。
LiXNiYMnZQ(1-Y-Z)O2 (I)
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数を表す。Y及びZは、1≦Y/Z≦9、及び、0<(1−Y−Z)≦0.5の関係を満たす数を表す。Qはニッケル及びマンガンと異なる1つ以上の元素を表す。)
測定条件X線源:CuKα線(CuKα1=1.5406Å、CuKα2=1.5444Å、CuKα2除去なし)
発散スリット:0.25°
散乱スリット:0.25°
ステップ幅:0.02° - 請求項1又は2に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極材料。
- 請求項1又は2に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物とバインダーとを含有するリチウム二次電池用正極。
- 請求項1又は2に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を使用した正極と、負極と、電解質とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007232959A JP2008056561A (ja) | 2007-09-07 | 2007-09-07 | リチウムニッケルマンガン複合酸化物、並びにこれを用いたリチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 |
Applications Claiming Priority (1)
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