JP2008243447A - リチウム遷移金属複合酸化物、その製造方法、および、それを用いたリチウム二次電池用正極、ならびに、それを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】
リチウム二次電池の正極材料として好適な高性能(高容量、高レート特性、抵抗特性等
)のリチウム遷移金属複合酸化物を安価に提供する。また、高性能なリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】
一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、該粒子に含有されるリチウムに起因する発光電圧の三乗根と、ニッケルに起因する発光電圧の三乗根をプロットしたとき、下記数式(1)で算出される各粒子の近似直線に対する標準偏差σdにおいて、σdが0.43以下であり、かつ、3σdから外れる粒子頻度が0.4%以下であることを特徴とする、リチウム遷移金属複合酸化物。
(近似直線はΣd2が最小になるように求めた)
【選択図】なし
Description
従来、リチウム二次電池の正極活物質としては、標準組成がLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられてきた。さらに、安全性や原料コストの観点から、LiCoO2やLiNiO2と同じ層状構造を有し、かつ、遷移金属の一部をマンガン等で置換したリチウム遷移金属複合酸化物を用いる技術、具体的には、LiNiO2のニッケルサイトの一部をマンガンで置換したLiNi1−xMnxO2(ただし0<x<1)、ニッケルサイトの一部をマンガンとコバルトで置換したLiNi1−x−yMnxCoyO2(ただし0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)が注目されていた(例えば特許文献1〜2)。
これに対して、近年では、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を正極活物質として使用することが提案されている(例えば、特許文献4)。リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物は、高価であるCoの使用量が少ないことにより、原料が安価であると共に、電池安全性を高めることができる正極活物質として用いることができる。即ち、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を用いることにより、特許文献3の技術では得られなかったコスト面でのメリットと、電池安全性が向上するというメリットとが得られるのである。
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
1.一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、該粒子に含有されるリチウムに起因する発光電圧の三乗根と、ニッケルに起因する発光電圧の三乗根をプロットしたとき、下記数式(1)で算出される各粒子の近似直線に対する標準偏差σdにおいて、σdが0.43以下であり、かつ、3σdから外れる粒子頻度が0.4%以下であることを特徴とする、リチウム遷移金属複合酸化物。
2. 下記一般式(2)で表される、前記1に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。)
3. 比表面積が0.1m2/g以上8m2/g以下である、前記1または2に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
4. タップ密度が0.8g/cm3以上3.0g/cm3以下である、前記1から3のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
5. リチウム遷移金属複合酸化物を構成する粒子のメジアン径が1μm以上20μm以下である、前記1から4のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
6. 水銀圧入法により求められる二次粒子の細孔分布曲線において、細孔半径1μmより大きい範囲にメインピークトップを有し、かつ、細孔半径0.3μm以上1μm以下にサブピークトップを有することを特徴とする、前記1から5のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
7. CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在する(018)ピークおよび65°付近に存在する(110)ピークの半価幅が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする、前記1から6のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
8. 一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、水銀圧入法により求められる該二次粒子の細孔分布曲線において、細孔半径1μmより大きい範囲にメインピークトップを有し、かつ、細孔半径0.3μm以上1μm以下にサブピークトップを有することを特徴とする、下記一般式(2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物。
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。)
9. CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在
する(018)ピークおよび65°付近の存在する(110)ピークの半価幅が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする、前記8に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
10. 前記1から9のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物を含有する、リチウム二次電池用正極。
11. 前記10に記載のリチウム二次電池用正極、負極および電解質からなることを特徴とするリチウム二次電池。
12. 原料化合物を液体媒体中で湿式粉砕混合し、次いで噴霧乾燥、焼成することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、該粒子に含有されるリチウムに起因する発光電圧の三乗根と、ニッケルに起因する発光電圧の三乗根をプロットしたとき、下記数式(1)で算出される各粒子の近似直線に対する標準偏差σdにおいて、σdが0.43以下であり、かつ、3σdから外れる粒子頻度が0.4%以下であることを特徴とする、リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
13. リチウム遷移金属複合酸化物が、下記一般式(2)で表される、前記12記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。)
14. 原料化合物のリチウムを含有する化合物が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム、ヒ酸リチウムのうちいずれか1種以上であることを特徴とする、前記12または13に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
[1.リチウム遷移金属複合酸化物]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子の形態を有しており、該粒子毎の組成のばらつきが小さく、より均一な粒子群
からなっている。より具体的には、一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、該粒子に含有されるリチウムに起因する発光電圧の三乗根と、ニッケルに起因する発光電圧の三乗根をプロットしたとき、下記数式(1)で算出される各粒子の近似直線に対する標準偏差σdにおいて、σdが0.43以下であり、かつ3σdから外れる粒子頻度が0.4%以下であることを特徴とする、リチウム遷移金属複合酸化物である。
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、具体的には下記一般式(2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。)
なお、以下適宜、上記式(2)において記号「Q」で表わされる元素を「所定元素」という。
15以下の数である。xの値が大きすぎると本発明の正極活物質の結晶構造が不安定化したり、これを使用したリチウム二次電池の電池容量の低下を招くおそれがある。また、xの値が小さすぎても、やはりこれを使用したリチウム二次電池の電池容量の低下を招くおそれがある。
また、上記式(2)中、δは0≦δ≦0.1の関係を満足する数である。詳しくは、δは、通常0以上、好ましくは0.001以上、また、通常0.1以下、好ましくは0.05以下の数である。δが大きすぎると本発明の正極活物質を用いたリチウム二次電池の容量が低下するおそれがあるため好ましくない。なお、所定元素Qとして2種以上の元素を用いる場合には、用いた所定元素Qの合計をδとし、その値が上記範囲内に収まっていることが望ましい。
また、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、比表面積が0.1m2/g以上8m2/g以下である。比表面積はNi,Mn,Coの比率や所定元素Qの添加量によって大きく変化するが、より好ましくは0.2m2/g以上6m2/g以下であり、最も好ましくは0.5m2/g以上5m2/g以下である。なお、比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定できる。本発明では、大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置を用い、吸着ガスに窒素、キャリアガスにヘリウムを使用し、連続流動法によるBET1点式法測定を行った。具体的には粉体試料を混合ガスにより150℃の温度で加熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却して窒素/ヘリウム混合ガスを吸着させた後、これを水により室温まで加温して吸着された窒素ガスを脱着させ、その量を熱伝導検出器によって検出し、これから試料の比表面積を算出した。
水銀圧入法は、多孔質粒子等の試料について、圧力を加えながらその細孔に水銀を浸入させ、圧力と圧入された水銀量との関係から、比表面積や細孔径分布等の情報を得る手法である。
−2πrδ(cosθ)=πr2P 数式(3)
Pr=−2δ(cosθ) 数式(4)
水銀の場合、表面張力δ=480dyn/cm程度、接触角θ=140°程度の値が一般的によく用いられている。これらの値を用いた場合、圧力P下で水銀が圧入される細孔の半径は以下の数式(5)で表される。
ら、得られた水銀圧入曲線に基づいて、試料の細孔半径の大きさとその体積との関係を表す細孔分布曲線を得ることができる。例えば、圧力Pを0.1MPaから100MPaまで変化させると、7500nm程度から7.5nm程度までの範囲の細孔について測定が行える。なお、水銀圧入法による細孔半径の大凡の測定限界は、下限が約3nm以上、上限が約200μm以上である。
また、本明細書において「細孔分布曲線」とは、細孔の半径を横軸に、その半径以上の半径を有する細孔の単位重量(通常は1g)あたりの細孔体積の合計を細孔半径の対数で微分した値を縦軸にプロットしたものであり、通常はプロットした点を結んだグラフとして表す。
一般的に、結晶性の尺度としてX線回折ピークの半価幅が用いられるが、結晶性と電池特性の相関について検討したところ、本発明では、前述の(018)ピークおよび(110)ピークの半価幅が、それぞれ0.2以下であるものが良好な電池特性を示すことを見出した。半価幅が大きいことは結晶性が低いことを意味し、電池特性の不良につながることから、通常は0.2以下、より好ましくは0.15以下である。
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」と
いう)は、少なくとも、原料化合物を湿式粉砕混合し噴霧乾燥して得られる焼成前駆体からなる焼成材料を焼成する工程を備える。
従って通常、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、目的とするリチウム遷移金属複合酸化物と同じ元素組成となるように、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を構成する元素を含有する原料化合物を混合し、この原料化合物の混合物(以下適宜、「原料混合物」という)を噴霧乾燥により粒子状の焼成前駆体に成形した後、この焼成前駆体を含む焼成材料を焼成することによって製造することができる。
まず、原料化合物を混合して原料混合物を調製する。
原料化合物は、本発明の正極活物質を構成する元素を含有するものであれば特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることができる。通常は、Li、NiおよびMn、並びに、Coや所定元素Q等の元素の一部または複数を含む、酸化物;炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機塩;ハロゲン化物;有機塩等の各種のものを組み合わせて用いることができる。また、所定元素Qは別途混合することが可能となる場合があり、その場合には、これらの所定元素Qを含む原料化合物は必ずしも当初に、目的とする正極活物質と同じ元素組成となるように混合することを要しない。
中でも好ましいものとしては、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O4・2H2O等が挙げられる。このような窒素および硫黄を含まないニッケル化合物は、焼成工程においてNOxおよびSOx等の有害物質を発生させないので好ましい。さらに、工業原料として安価に入手でき、かつ、焼成を行なう際に反応性が高いという観点から、特に好ましいのはNi(OH)2、NiOおよびNiOOHである。
マンガンを含有する化合物(以下適宜、「マンガン化合物」という)としては、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4、有機マンガン化合物、マンガン水酸化物、マンガンハロゲン化物等を挙げることができる。中でも好ましいものとしては、MnOOH、Mn2O3、MnO2、Mn3O4等が挙げられる。これらは、最終目的物である本発明の正極活物質のマンガン酸化数に近い価数を有しているため好ましい。
コバルトを含有する化合物(以下適宜、「コバルト化合物」という)としては、CoO、Co2O3、Co3O4、Co(OH)2、CoOOH、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4・7H2O、有機コバルト化合物、コバルトハロゲン化物等を挙げることができる。中でも好ましいものとしては、CoO、Co2O3、Co3O4、CoOOH、Co(OH)2等が挙げられる。
さらに、例えば所定元素Qを含有する化合物としては、通常は無機塩や有機塩などを用いればよい。
また、所定元素Qを含有する化合物も1種を単独で用いても良く、本発明の効果を著しく損なわない限り、2種以上の化合物を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
得られた原料混合物は、次に、造粒工程に供される。本発明においては、造粒は噴霧乾燥によって行われる。噴霧乾燥により、原料混合物の粒子状物として焼成前駆体を得ることができる。
噴霧乾燥は、生成する焼成前駆体の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能、二次粒子を効率よく形成できる等の点で優れた造粒方法である。噴霧乾燥の具体的方法に制限は無く、公知の方法により任意に行なうことができる。例えば、上記原料化合物の混合を湿式で行なった場合には、通常は原料化合物がスラリーとして得られるために、ノズルの
先端に気体流と原料混合物のスラリーとを流入させることによってノズルからスラリーを液滴として吐出させ、乾燥ガスと接触させて液滴を迅速に乾燥させる方法を用いることができる。
前記焼成前駆体は、次いで焼成工程に供される。焼成により、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
焼成の具体的な方法は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等の装置を用いて行なうことができる。
また、通常、焼成は、昇温工程、最高温度保持工程および降温工程の三工程に分けられる。ここで、最高温度保持工程は必ずしも一回とは限らず、目的に応じて二段階またはそれ以上の段階に分けて行なうようにしてもよい。
また、焼成時の条件は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、通常は、以下の条件で焼成を行なう。
また、最高温度保持工程では、焼成温度は通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは800℃以上、また、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下である。温度が低すぎると、結晶性の良い本発明の正極活物質を得るために長時間の焼成時間を要する傾向にある。反面、温度が高すぎると本発明の正極活物質が激しく焼結して焼成後の粉砕・解砕歩留まりが低下し、工業的に不利となるおそれがある。また、本発明の正極活物質に酸素欠損等の欠陥が多く生成し、本発明の正極活物質を使用したリチウム二次電池の電池容量の低下や、充放電による結晶構造の崩壊による劣化を招くおそれがある。
また、降温工程では、通常0.1℃/分〜10℃/分の降温速度で降温を行なう。あまり遅すぎても時間がかかって工業的に不利になるおそれがあり、また、あまり速すぎても
目的物の均一性に欠ける場合や、容器の劣化を早める傾向にある。
焼成により得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、適宜解砕および/または分級に処せられる。分級手法は特に限定されないが、タッピングボールによりメッシュを通す振動分級を行うと、二次粒子の形態が崩れ、粒度分布や細孔分布などに大きな変化を生じさせることがある。よって、メッシュに叩きつける力ではない分級方法、例えばメッシュ上の焼成粉体をメッシュに押し付けて通す方法、回転翼の遠心力により円筒型メッシュを通す方法などがより好ましいと考えられる。
また、上記の本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法においては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した混合(粉砕を含む)、噴霧乾燥および焼成以外の工程を備えていても良い。
例えば、得られた本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、正極活物質としてそのまま用いてもよいが、表面処理を施してから用いるようにしてもよい。表面処理の方法に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の表面処理を行なうことができる。表面処理の目的と効果はいろいろあるが、例えば、正極活物質表面の反応活性点が低減し、マンガン等の金属元素溶出を抑制することができる。この目的で用いられる手法としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物をシランカップリング剤などの有機ケイ素化合物で表面処理する方法(例えば特開2002−83596号公報参照)等が挙げられる。また、正極として用いた場合の導電性を向上させるため、例えば炭素材を機械的に複合化被覆処理する方法(例えば特開2003−137554号公報参照)等が挙げられる。
上述した本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、正極活物質として本発明のリチウム二次電池用正極(以下適宜、「本発明の正極」という)に用いられる。
本発明のリチウム二次電池用正極は、集電体(正極集電体)と、集電体上に形成された活物質層(正極活物質層)とを備える。また、適宜、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の層や部材を備えていても良い。
正極集電体の素材としては、公知のものを任意に使用することができるが、通常は金属や合金が用いられる。具体的には、正極の集電体としては、アルミニウムやニッケル、ステンレス等が挙げられる。中でも、正極の集電体としてはアルミニウムが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
場合、その開口率を変更することで重量も自在に変更可能となる。また、このような穴あけタイプの集電体の両面に活物質層を形成させた場合、この穴を通しての活物質層のリベット効果により活物質層の剥離がさらに起こりにくくなる傾向にあるが、開口率があまりに高くなった場合には、活物質層と集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなるおそれがある。
[3−2.正極活物質層]
本発明の正極の正極活物質層は、本発明の正極活物質を含有して構成された層であり、本発明の正極活物質を含有する限り、公知の任意の構成とすることができる。なお、この正極活物質層に含有させる本発明の正極活物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
バインダーは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等を考慮して選択するのが好ましい。具体例としては、シリケート、水ガラスのような無機化合物や、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等の有機化合物などを挙げることができる。なお、バインダーは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
本発明の正極は、リチウム二次電池に好適に用いられる。
[4−1.正極]
本発明のリチウム二次電池の正極としては、上述した本発明の正極を用いる。
負極としては、リチウムを吸蔵および放出可能な公知の負極を任意に用いることができる。例えば、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金などの金属箔などを用いることもできるが、通常、正極の場合と同様に、集電体(負極集電体)上に活物質層(負極活物質層)を設けた負極を用いることが好ましい。また、正極と同様に、負極も本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の層や部材を備えていても良い。
負極集電体の素材としては、公知のものを任意に使用することができるが、通常は金属や合金が用いられる。具体的には、負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等
が挙げられる。中でも、負極の集電体としては銅が好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
また、負極の集電体も、正極の集電体と同様に、予め粗面化処理しておくのが好ましい。
負極活物質層は、負極活物質を含有して構成された層である。
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な材料であれば他に制限は無く、公知の負極活物質を任意に用いることができる。ただし、通常は、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。炭素材料の例としては、天然黒鉛、熱分解炭素等が挙げられる。なお、負極活物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
負極活物質層は、通常は正極活物質層の場合と同様に、上述の負極活物質と、バインダーと、必要に応じて各種の助剤等とを含有する。バインダーや助剤の具体例としては、正極活物質層と同様のものが挙げられる。また、その製造方法も、正極活物質層と同様である。
電解質としては、リチウム塩を含む電解質であれば他に制限は無く、公知の電解質を任意に用いることができる。例えば、電解液、固体電解質、ゲル状電解質などが挙げられるが、中でも電解液が好ましく、特に非水電解液がより好ましい。
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。セパレータの材質や形状は特に制限されず本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、上述の非水系電解液に対して安定で、保液性に優れ、且つ、電極同士の短絡を確実に防止できるものが好ましい。
セパレータとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子からなる微多孔性高分子フィルム、ガラス繊維等の不繊布フィルター、ガラス繊維と高分子繊維との複合不繊布フィルターなどを挙げることができる。
Li2CO3、Ni(OH)2、Mn3O4、CoOOHをLi:Ni:Mn:Co=1.05:0.33:0.33:0.33(モル比)となるように混合し、これに純水を加え、固形分濃度18重量%のスラリーを調製した。循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.3μmになるまで粉砕した後、二流体ノズル型スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行い、メジアン径約6μmの粒子状のリチウム遷移金属複合酸化物前駆体を得た。スラリー中の固形分の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率として1.24を設定し、粒子径基準を体積基準として測定され、測定の際に用いる分散媒として、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行った。
このリチウム遷移金属複合酸化物は、CuKα線を使用した粉末X線回折パターンにより層状構造の単相であることが確認された。なお、粉末X線回折パターンは以下の装置・条件により行った。
〔測定条件〕X線出力:40kV、30mA、走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):10.0−90.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°、走査速度:3.0°/min.
スリット:DS 1°、SS 1°、RS 0.2mm
また、メジアン径は6.1μmであった。メジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、複素屈折率として実数部1.60、虚数部0.10を設定し、分散媒として、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行った。
また、この複合酸化物のBET比表面積を大倉理研製「AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置」を用いて測定した結果、1.4m2/gであった。
Co:238.892nm(Ch2) Gain=1.0
Ni:341.480nm(Ch3) Gain=1.0
Li:670.784nm(Ch4) Gain=0.8
また、得られたリチウムとニッケルの発光電圧の三乗根について、少なくとも一方の数
値が0のものと、少なくとも一方の数値が測定装置の上限電圧を超えるものについては、数式(1)における計算から除外した。
Ni(OH)2、Mn3O4、CoOOHをNi:Mn:Co=0.33:0.33:0.33(モル比)となるように混合し、これに純水を加え、固形分濃度18重量%のスラリーを調製した。循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.3μmになるまで粉砕した後、二流体ノズル型スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行い、メジアン径約6μmの粒子状のリチウム遷移金属複合酸化物前駆体を得た。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
Li2CO3の代わりにLiOHを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。メジアン径は5.6μm、タップ密度は1.2g/cm3、比表面積は1.4m2/gであった。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
Li2CO3の代わりにLiOHを用いた以外は、比較例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。メジアン径は5.5μm、タップ密度は1.6g/cm3、比表面積は0.9m2/gであった。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。メジアン径は6.5μm、タップ密度は1.4g/cm3、比表面積は1.0m2/gであった。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.7μmになるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。メジアン径は6.6μm、タップ密度は1.4g/cm3、比表面積は1.1m2/gであった。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.9μmになるまで粉砕した以外は、実施例1と同様にしてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。メジアン径は6.5μm、タップ密度は1.5g/cm3、比表面積は0.9m2/gで
あった。
リチウムとニッケルの発光電圧の測定は、実施例1と同様にして行った。
上記で得られたリチウム遷移金属複合酸化物を用いてリチウム二次電池を作製し、以下の容量で評価を行った。
A.正極の作製と容量確認およびレート試験
実施例1および比較例1〜6で得られたリチウム遷移金属複合酸化物を75重量%、アセチレンブラック20重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφ、12mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は各々約8mg、約18mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
負極活物質としての平均粒径約8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
位重量当たりの初期吸蔵容量をQf[mAh/g]とした。
C.コインセルの組立
コイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶の上に正極を置き、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた後、非水電解液溶液として、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエ
チレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶をのせ電池を封口した。なおこの時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ、
正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]=(Qf[mAh/g]/1.2)/Qs(C)[mAh/g]
となるように設定した。
得られたコインセルについて、下記数式3で表されるコンディショニング電流値I [mA]={Qs(D)[mAh/g]}×正極活物質重量M[g]/5で充電上限電圧4.1V
、放電下限電圧3.0Vとして、充放電2サイクルの初期コンディショニングを行い、その際の2サイクル目における正極活物質単位重量当たりの放電容量Qs2(D)[mAh
/g]を測定した。
A]で充電深度40%に調整し、次いで定電流0.25Cで10秒間放電を行った。この
ときの放電10秒後の電圧をV[mV]とし、放電前の電圧をV0[mV]として、その差ΔV[mV]=V[mV]−V0[mV]を算出し、放電電流0.25C[mA]を用いて抵抗R[
Ω]=ΔV[mV]/0.25C[mA]として算出した。この抵抗R[Ω]が小さい程、低温
における出力特性に優れ、急速放電に有利である等の効果が得られる。
表−1より、実施例で得られたリチウム遷移金属複合酸化物は比較例1〜6で得られたものに対して、粒子毎の組成のばらつきが少なく、殆どの粒子が効率的に充放電に関われるため、放電容量が高く、抵抗値が低い、電池性能に優れているものであることが分かる。即ち、リチウム原料としては水に難溶であるものを用い、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて原料を湿式粉砕する工程の前にリチウム原料を投入し、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.4μm以下になるまで粉砕することが、電池特性に優れたリチウム遷移金属複合酸化物を得るために重要な点であり、従来成し得なかった技術である。
Claims (14)
- 下記一般式(2)で表される、請求項1に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
(化1)
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。) - 比表面積が0.1m2/g以上8m2/g以下である、請求項1または2に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- タップ密度が0.8g/cm3以上3.0g/cm3以下である、請求項1から3のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- リチウム遷移金属複合酸化物を構成する粒子のメジアン径が1μm以上20μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- 水銀圧入法により求められる二次粒子の細孔分布曲線において、細孔半径1μmより大きい範囲にメインピークトップを有し、かつ、細孔半径0.3μm以上1μm以下にサブピークトップを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在する(018)ピークおよび65°付近に存在する(110)ピークの半価幅が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- 一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、水銀圧入法により求められる該二次粒子の細孔分布曲線において、細孔半径1μmより大きい範囲にメインピークトップを有し、かつ、細孔半径0.3μm以上1μm以下にサブピークトップを有することを特徴とする、下記一般式(2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物。
(化2)
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)
(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。) - CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在する(018)ピークおよび65°付近の存在する(110)ピークの半価幅が、それぞれ0.2以下であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム遷移金属複合酸化物。
- 請求項1から9のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物を含有する、リチウム二次電池用正極。
- 請求項10に記載のリチウム二次電池用正極、負極および電解質からなることを特徴とするリチウム二次電池。
- 原料化合物を液体媒体中で湿式粉砕混合し、次いで噴霧乾燥、焼成することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子および/またはそれらが凝集してなる二次粒子から構成されるリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物において、該粒子に含有されるリチウムに起因する発光電圧の三乗根と、ニッケルに起因する発光電圧の三乗根をプロットしたとき、下記数式(1)で算出される各粒子の近似直線に対する標準偏差σdにおいて、σdが0.43以下であり、かつ、3σdから外れる粒子頻度が0.4%以下であることを特徴とする、リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
- リチウム遷移金属複合酸化物が、下記一般式(2)で表される、請求項12記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
(化3)
LixNiαMnβCoγQδO2 (2)(式中、QはAl、Fe、Ga、Sn、V、Cr、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、B、Bi、Nb、Ta、ZrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。0.2≦α≦0.6、0.2≦β≦0.6、0≦γ≦0.5、0≦δ≦0.1、0.8≦α+β+γ+δ≦1.2、0<x≦1.2の関係を満たす数を示す。) - 原料化合物のリチウムを含有する化合物が、フッ化リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム、ヒ酸リチウムのうちいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項12または13に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
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