JP5210344B2 - ポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品に関する。
ポリプロピレン樹脂は、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されており、要求される性能に応じて種々の添加剤が配合されている。特に自動車部品用途においては、ポリプロピレン樹脂にα−オレフィン共重合ゴムとタルクのような無機充填剤を配合した組成物が、その成形品の剛性と耐衝撃性とのバランスに優れているため、大量に使用されている。
自動車内外装部品は、その生産性から射出成形によって成形されることが多い。上記ポリプロピレン樹脂組成物を用いて射出成形を行なうと、射出成形品表面の流動方向と交わる方向にフローマークやタイガーマークと呼ばれる複数の周期的な縞模様が発生し、目立つ。成形品表面に発生したフローマークが目立つと成形品の外観を損なうので、必要に応じて塗装等を行なってフローマークを消すことが実施されている。このようなポリプロピレン樹脂組成物から得られる成形品のフローマークを解消したり、目立たなくしたりする方法としては、金型温度が可変の金型を用いて、高温に保持した金型に樹脂を射出する等の方法が採用されている。しかしながら、この方法では、特殊な金型が必要であるし、成形サイクルが長くなる等の生産面での問題がある。
また、自動車用内装部品は、その表面の加飾や、表面光沢を下げるために、表面にシボと呼ばれる模様が付けられる。このシボは、射出成形用金型内表面に形成された模様を、射出成形時に成形品表面に転写することによって形成される。上記ポリプロピレン樹脂組成物を用いて射出成形を行なうと、金型内面の表面に形成されたシボの転写性が悪くて光沢が下がらなかったり、金型のゲート付近とゲートから遠い位置によって転写性が異なり、そのために光沢の差が発生する等の問題がある。
射出成形においては、固体の樹脂組成物ペレットを加熱シリンダー中で加熱溶融(可塑化)し、溶融した樹脂を金型内(キャビティ)に射出充填する。次の成形サイクルで射出成形品を成形するのに使用される樹脂の加熱溶融は、射出充填終了後の冷却時間中に行われる。射出成形品の成形サイクルを短縮するためには、冷却時間の短縮が必要である。短縮した冷却時間中に、次の射出充填に必要な樹脂の加熱溶融が終了すればよいが、冷却時
間中に加熱溶融が終了しないと、次の射出充填ができないため、冷却時間を短縮できなくなる。上記ポリプロピレン樹脂組成物は、加熱溶融時間(可塑化時間)が長く、冷却時間を短縮することができず、したがって、成形サイクルを短縮できないという問題がある。
また、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、プロピレン系ブロック共重合体)とα−オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物は、特開平10−1573号公報に記載の組成物として知られている。しかしながら、メタロセン触媒で製造されたポリプロピレン樹脂は、その製造時に1%程度の割合で1,3−挿入または2,1−挿入を生じるため、結晶化度が低くなり、したがって、その融点は150℃付近となり、チタン系触媒で製造されたポリプロピレン樹脂の融点160数℃に比べて低い。また、メタロセン触媒で製造されたポリプロピレン樹脂は、チタン系触媒で製造されたポリプロピレン樹脂に比し、引張強度特性、曲げ強度特性、剛性等も劣っている。この結果、メタロセン触媒で製造されたポリプロピレン樹脂とα−オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物は、チタン系触媒で製造されたポリプロピレン樹脂とα−オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物に比べて、機械強度特性が劣るため、実用に供されていなかった。
本願発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究し、特定のメタロセン触媒で製造されたプロピレン単独重合体、プロピレン系ブロック共重合体がプロピレンの1,3−挿入または2,1−挿入が殆どなく、したがって、融点が高く、その成形品の剛性、引張強度特性、曲げ強度特性に優れていることが分かり、かつ、そのプロピレン単独重合体またはプロピレン系ブロック共重合体を用いたポリプロピレン樹脂組成物が自動車部品用組成物として優れた性能を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の目的は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、フローマークが改善され外観に優れ、しかも、シボの転写性の良好な自動車部品、特に射出成形品の自動車部品を提供することある。
本発明の他の目的は、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れた自動車部品、特に射出成形品の自動車部品を提供することにある。
本発明に係る第1のポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品は、
プロピレン単独重合体(A1)30〜80重量%と、エラストマー(B)15〜40重量%と、無機充填剤(C)5〜30重量%とを含有してなるポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品であって、
該プロピレン単独重合体(A1)は、
(i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が20〜300g/10分の範囲にあり、
(ii)13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下であり、
(iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3である
ことを特徴としている。
また、本発明に係る第2のポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品は、
プロピレン単独重合体部とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体(A2)と、無機充填剤(C)と、必要に応じてエラストマー(B)とを含有してなるポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品であって、
該プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部は、
(i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が20〜300g/10分の範囲にあり、
(ii)13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下であり、
(iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であり、
該プロピレン系ブロック共重合体(A2)、該エラストマー(B)および該無機充填剤(C)の合計量100重量%に対して、該ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部の含有量が30〜80重量%、該プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部と該エラストマー(B)の合計含有量が15〜40重量%、かつ、該該無機充填剤(C)の含有量が5〜30重量%であることを特徴としている。
本発明に係る第1および第2のポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品において、前記エラストマー(B)としては、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)および水素添加ブロック共重合体(B−4)から選ばれる少なくとも1種のエラストマーが好ましい。
前記無機充填剤(C)としては、特にタルクが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂組成物のクロス分別クロマト(CFC)測定において、オルトジクロロベンゼン100〜135℃溶出成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあることが好ましい。
前記自動車部品が射出成形品であって、この射出成形品の流動末端から50mm〜150mmの位置において、流動方向に対し5mm間隔にて反射率(入射角90°、反射角90°、測定面積4mmφ)を測定した場合に、隣接した測定個所の反射率差が、次式
Δ反射率差≦0.5
を満たしていることが特に好ましい。
以下、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品について具体的に説明する。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物からなる自動車部品は、プロピレン単独重合体(A1)とエラストマー(B)と無機充填剤(C)とを、またはプロピレン系ブロック共重合体(A2)と無機充填剤(C)と必要に応じてエラストマー(B)とを含有してなるポリプロピレン樹脂組成物からなる。
プロピレン単独重合体(A1)
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A1)は、下記の特性を有する結晶性ポリプロピレン樹脂である。
(i)メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、20〜300g/10分、好ましくは20〜250g/10分、より好ましくは30〜220g/10分、特に好ましくは40〜200g/10分の範囲にあり、
(ii)13C−NMRスペクトルから求められる全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下、好ましくは0.1%以下、特に0.05%以下であり、
(iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1〜2.3の範囲にある。
また、このプロピレン単独重合体(A1)は、さらに以下の(iv)、(v)、(vi)の特性を有していることが好ましい。
(iv)n−デカン可溶分量(プロピレン単独重合体をn−デカンで150℃、2時間処理した後に室温に戻し、n−デカンに溶解した重量%)が2重量%以下、好ましくは1重量%以下であり、
(v)13C−NMRスペクトル測定から求められるペンタッド(pentad)アイソタクティシティが90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上である。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、13C−NMRを使用して測定されるプロピレン系ブロック共重合体(A)分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。
(vi)示差走査型熱量計(DSC)により測定される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)は、通常155〜170℃、好ましくは157〜165℃、より好ましくは158〜163℃の範囲にあることが望ましい。
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A1)は、たとえば特定のメタロセン触媒を用いて調製される。このようなメタロセン触媒を形成するメタロセン化合物触媒成分は、下記一般式(1)または(2)で表わされる。
Figure 0005210344
(式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1ないしR12で示される基のうち、隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(1)の場合はR1、R4、R5、およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
また、本発明で用いられる他のメタロセン化合物触媒成分としては、下記一般式(1a)または(2a)で表わされるメタロセン化合物が挙げられる。
Figure 0005210344
(式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
一般式(1a)で示される化合物であって、R3がtert−ブチル基またはトリメリルシリル基であり、R13およびR14が同時にメチル基またはフェニル基である場合は、R6およびR11は同時に水素原子でなく、R1ないしR12で示される基のうち隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(1a)の場合はR1、R4、R5およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属であり、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
また、上記以外のメタロセン化合物触媒成分として、下記一般式(1b)または(2b)で表わされるメタロセン化合物が挙げられる。
Figure 0005210344
(式中、R21およびR22は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、R5ないしR12のうち隣接した基は、互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記炭化水素基の好ましい例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアルキルアリール基などが挙げられる。
また、R3は、イオウ、酸素などの異原子を含む環状の炭化水素基、たとえばチエニル
基、フリル基などであってもよい。
具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ナフチル、トリルなどの炭化水素基が挙げられる。
上記ケイ素含有炭化水素基の好ましい例としては、ケイ素原子数1〜4、かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基が挙げられる。
具体的には、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどの基が挙げられる。
なお、R3は、立体的に嵩高い置換基であることが好ましく、炭素原子数4以上の置換
基であることがより好ましい。
上記の一般式(1)または(2)において、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれる。好ましい炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基の具体例としては、上記と同様の基が挙げられる。
シクロペンタジエニル環に置換するR1ないしR4の隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル、2−メチルインデニル、テトラヒドロインデニル、2−メチルテトラヒドロインデニル、2,4,4−トリメチルテトラヒドロインデニルなどが挙げられる。
また、フルオレン環に置換するR5ないしR12の隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルなどが挙げられる。
さらに、フルオレン環に置換するR5ないしR12の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわち、R5とR12、R6とR11、R7とR10、R8とR9が同一の基であることが好ましく、無置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレンまたは2,3,6,7−四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環の3位、6位、2位、7位はそれぞれR7、R10、R6、R11に対応する。
上記一般式(1)または(2)において、Yは、炭素原子またはケイ素原子である。
上記一般式(1)で表わされるメタロセン化合物は、R13とR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としは、たとえば、メチレン、ジメチルメチレン、ジエチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert−ブチルメチレン、ジtert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレンまたはジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチルtert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレンなどが挙げられる。
また、上記一般式(1)で表わされるメタロセン化合物は、R1、R4、R5またはR12から選ばれる置換基と、架橋部のR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよい。
そのような構造の一例として、R1とR14が互いに結合して環を形成した場合を下記に例示する。下記一般式(1c)で表わされるメタロセン化合物では、架橋部とシクロペンタジエニル基が一体となり、テトラヒドロペンタレン骨格を形成し、下記一般式(1d)で表わされるメタロセン化合物では、架橋部とシクロペンタジエニル基が一体となり、テトラヒドロインデニル骨格を形成している。また同様に、架橋部とフルオレニル基が互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 0005210344
上記一般式(2)で表わされるメタロセン化合物において、Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、Yは、このAと結合し、シクロアルキリデン基、シクロメチレンシリレン基などを構成する。
また、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよい。
好ましい具体例としては、たとえばシクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられる。
上記一般式(1)または(2)において、Mは、周期表第4族から選ばれる金属であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
上記一般式(1)または(2)において、jは1〜4の整数である。
上記一般式(1)または(2)において、Qはハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。jが2以上のときはQは、互いに同一でも異なっていてもよい。
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基などが挙げられる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられる。
Qは、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
以下に、上記一般式(1)または(2)で表わされる、本発明に係るメタロセン化合物の具体例を示す。
まず、メタロセン化合物のMQj(金属部分)を除いたリガンド構造を、表記上、Cp(シクロペンタジエニル環部分)、Bridge(架橋部分)、Flu(フルオレニル環部分)の3つに分け、それぞれの部分構造の具体例、およびそれらの組み合わせによるリガンド構造の具体例を以下に示す。
Figure 0005210344
Figure 0005210344
Figure 0005210344
好ましいリガンド構造を有するメタロセン化合物の具体例として下記の化合物を挙げることができる。
Figure 0005210344
MQjの具体的な例示としては、ZrCl2、ZrBr2、ZrMe2、Zr(OTs)2、Zr(OMs)2、Zr(OTf)2、TiCl2、TiBr2、TiMe2、Ti(OTs)2、Ti(OMs)2、Ti(OTf)2、HfCl2、HfBr2、HfMe2、Hf(OTs)2、Hf(OMs)2、Hf(OTf)2などが挙げられる。ここでTsはp−トルエンスルホニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。
さらに、Cp環の置換基と、架橋部の置換基が互いに結合して環を形成したメタロセン化合物として、例えば下記のような化合物が挙げられる。
Figure 0005210344
上記一般式(1)または(2)で表わされる、本発明に係るメタロセン化合物としては、以下のような化合物などが好ましく例示される。
一般式(1)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3が1−メチル−1−シクロヘキシル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、R10とR11が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、R10とR11が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3が1,1−ジメチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3が1−エチル−1−メチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3が1,1,3−トリメチルブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3が1,1−ジメチルブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R3、R13、R14がフェニル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、R10とR11が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R3がトリメチルシリル、R13、R14がフェニル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、R10とR11が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13がメチル、R14がフェニル、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がエチル、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R1がメチル、R3がtert−ブチル、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12が水素、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH25−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R1がメチル、R3がtert−ブチル、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH25−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH25−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH25−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH24−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R3が1,1−ジメチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH25−であるメタロセン化合物。
一般式(2)で、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、R10とR11が互いに結合して環を形成した−(C(CH32CH2CH2C(CH32)−、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが−(CH24−であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert−ブチル、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12が水素、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がメチル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(1)で、R13、R14がフェニル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert−ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
上記のようなメタロセン化合物は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
このような粒子状担体としては、SiO2、Al23、B23、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、ZnO、SnO2、BaO、ThOなどの無機担体、ポリエチレン、プロピレン系ブロック共重合体、ポリ−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
本発明では上記メタロセン触媒の助触媒の一つとして、アルミノキサンを用いることができる。従来公知のようにアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
また、アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として、イソプレニルアルミニウムを用いることもできる。アルミノキサンの溶液または懸濁液に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。
その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。イオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
ルイス酸としては、BR3(式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトルフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
カルボラン化合物としては、4−カルバノナボラン(14)、1,3−ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
上記のようなイオン化イオン性化合物は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
また、触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のA1−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、たとえば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
(R1)mAl(O(R2))nHpXq(式中、R1およびR2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A1)は、上記したメタロセン触媒の存在下に、プロピレンを単独重合させることにより調製することができる。
プロピレン単独重合体(A1)の重合工程は、通常、約−50〜200℃、好ましくは約50〜100℃の温度で、また通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは約2〜5
0kg/cm2の圧力下で行なわれる。プロピレンの重合は、回分式、半連続式、連続式
の何れの方法においても行なうことができる。
プロピレン系ブロック共重合体(A2)
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A2)は、プロピレン単独重合体部と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部とからなるブロック共重合体である。このプロピレン系ブロック共重合体(A2)全体におけるα−オレフィンの含有量は1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A2)は、常温n−デカン不溶分を構成するプロピレン単独重合体分および必要に応じて更にポリエチレン分と、常温n−デカン可溶分を構成するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体分とからなる。
本発明で用いられるプロピレンブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部は、下記の特性を有している。
(i)このプロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、20〜300g/10分、好ましくは20〜250g/10分、より好ましくは30〜220g/10分、特に好ましくは40〜200g/10分の範囲にあり、
(ii)13C−NMRスペクトルから求められる全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下、好ましくは0.1%以下、特に0.05%以下であり、
(iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1〜2.3の範囲にある。
また、このプロピレン単独重合体部は、さらに以下の(iv)、(v)、(vi)の特性を有していることが好ましい。
(iv)n−デカン可溶分量(プロピレン単独重合体をn−デカンで150℃、2時間処理した後に室温に戻し、n−デカンに溶解した重量%)が2重量%以下、好ましくは1重量%以下であり、
(v)13C−NMRスペクトル測定から求められるペンタッド(pentad)アイソタクティシティが90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上である。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、13C−NMRを使用して測定されるプロピレン系ブロック共重合体(A2)分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。
(vi)示差走査型熱量計(DSC)により測定される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)は、通常155〜170℃、好ましくは155〜165℃、より好ましくは157〜163℃の範囲にあることが望ましい。
本発明で用いられるプロピレンブロック共重合体(A2)は、常温n−デカン可溶成分すなわちプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体分を、プロピレン系ブロック共重合体(A2)100重量%に対して、1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは5〜15重量%の量で含有していることが望ましい。
プロピレンブロック共重合体(A2)の常温n−デカン可溶成分は、プロピレン以外のα−オレフィンから導かれる単位を30〜60モル%、好ましくは35〜55モル%の量で含有していることが望ましい。
上記プロピレン以外のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素原子数2〜20のプロピレン以外のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン系ブロック共重合体(A2)のメルトフローレート(MFR:ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、通常10〜150g/10分、好ましくは20〜120g/10分、より好ましくは30〜100g/10分、特に好ましくは40〜90g/10分である。
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A2)は、たとえばプロピレン単独重合体(A1)の項で前述した特定のメタロセン触媒を用いて調製される。
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A2)は、前記メタロセン触媒の存在下に、プロピレンを重合させてプロピレン単独重合体成分を形成する工程と、エチレンとプロピレンとを共重合させてエチレン・プロピレン共重合体成分を形成する工程とを、任意の順序で行なって調製することができる。
プロピレン系ブロック共重合体(A2)の重合工程は、通常、約−50〜200℃、好ましくは約50〜100℃の温度で、また通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは約2〜50kg/cm2の圧力下で行なわれる。プロピレンの(共)重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行なうことができる。
エラストマー(B)
本発明で用いられるエラストマー(B)としては、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)、水素添加ブロック共重合体(B−4)、その他弾性重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)は、プロピレンとエチレンまたは炭素原子数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンおよびエチレンは、単独で、または2種以上組み合せて用いることができる。これらの中では、特にエチレンが好ましく用いられる。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)は、プロピレンとα−オレフィンとのモル比(プロピレン/α−オレフィン)が90/10〜55/45、好ましくは80/20〜55/45の範囲内にあることが望ましい。
また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.1g/10分以上、好ましくは0.3〜20g/10分の範囲内にあることが望ましい。
前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合せて用いることができる。これらの中では、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく用いられる。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)は、エチレンとα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)が95/5〜60/40、好ましくは90/10〜70/30の範囲内にあることが望ましい。
また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.1g/10分以上、好ましくは0.3〜20g/10分の範囲内にあることが望ましい。
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとのランダム共重合体ゴムである。
炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、前記と同じα−オレフィンが挙げられる。
非共役ポリエンとしては、具体的には、
5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;
1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状の非共役ジエン;
2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン等のトリエンなどが挙げられる。これらの中では、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましく用いられる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)は、エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとのモル比(エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン)が90/5/5〜30/45/25、好ましくは80/10/10〜40/40/20の範囲内にあることが望ましい。
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.05g/10分以上、好ましくは0.1〜20g/10分の範囲内にあることが望ましい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
前記水素添加ブロック共重合体(B−4)は、ブロックの形態が下記の式(1)または(2)で表わされるブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加率が90モル%以上、好ましくは95モル%以上の水素添加ブロック共重合体である。
X(YX)n ・・・(1)
(XY)n ・・・(2)
(式中、Xは、モノビニル置換芳香族炭化水素から導かれるブロック重合単位であり、
Yは、共役ジエンから導かれるブロック重合単位であり、
nは、1〜5の整数である。)
上記式(1)または(2)のXで示される重合ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上組み合せて使用することもできる。
上記式(1)または(2)のYで示される重合ブロックを構成する共役ジエンとしては、具体的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上組み合せて使用することもできる。nは1〜5の整数、好ましくは1または2である。
水素添加ブロック共重合体(B−4)の具体例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン・プロピレン系ブロック共重合体(SEP)等のスチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
水素添加前のブロック共重合体は、たとえば不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、ブロック共重合を行なわせる方法により製造することができる。この詳細な製造方法は、たとえば特公昭40−23798号公報などに記載されている。
また、ブロック共重合体の水素添加処理は、不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行なうことができる。この詳細な方法は、たとえば特公昭42−8704号、同43−6636号、同46−20814号などの公報に記載されている。
共役ジエンモノマーとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量の割合は、20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%であることが望ましい。
水素添加ブロック共重合体(B−4)として市販品を使用することもできる。具体的には、クレイトンG1657(シェル化学(株)製、商標)、セプトン2004(クラレ(株)製、商標)、タフテックH1052(旭化成(株)製、商標)などが挙げられる。
上記のようなエラストマー(B)は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
無機充填剤(C)
本発明で用いられる無機充填剤(C)としては、具体的には、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス織維などが挙げられる。これらの中では、タルク、炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましい。タルクの平均粒径は、1〜5μm、好ましくは1〜3μmの範囲内にあることが望ましい。無機充填剤(B)は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
ポリプロピレン樹脂組成物
前記プロピレン単独重合体(A1)含有のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(A1)、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量%に対して、プロピレン単独重合体(A1)を30〜80重量%、好ましくは40〜78重量%、より好ましくは42〜75重量%、さらに好ましくは45〜70重量%の割合で含有し、エラストマー(B)を15〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは17〜35重量%、さらに好ましくは20〜35重量%の割合で含有し、無機充填剤(C)を5〜30重量%、好ましくは7〜25重量%、より好ましくは8〜23重量%、さらに好ましくは10〜20重量%の割合で含有してなる。
また、前記プロピレン系ブロック共重合体(A2)含有のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン系ブロック共重合体(A2)および無機充填剤(C)の合計、またはプロピレン系ブロック共重合体(A2)、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量%に対して、プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部を30〜80重量%、好ましくは40〜78重量%、より好ましくは42〜75重量%、さらに好ましくは45〜70重量%の割合で含有し、プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部とエラストマー(B)とを合計量で15〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは17〜35重量%、さらに好ましくは20〜35重量%の割合で含有し、無機充填剤(C)を5〜30重量%、好ましくは7〜25重量%、より好ましくは8〜23重量%、さらに好ましくは10〜20重量%の割合で含有してなる。プロピレン系ブロック共重合体(A2)におけるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部(常温n−デカン可溶成分)は、前記したように、プロピレン系ブロック共重合体(A2)100重量%に対して、1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは5〜15重量%の量で含有していることが望ましい。またエラストマー(B)は、プロピレン系ブロック共重合体(A2)、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量%に対して、0〜39.7重量%、好ましくは0〜33.8重量%、より好ましくは0〜32.9重量%、さらに好ましくは9.5〜32.8重量%の割合で含有していることが望ましい。
これらのポリプロピレン樹脂組成物では、クロス分別クロマト(CFC)測定において、オルトジクロロベンゼン100〜135℃溶出成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1〜3、好ましくは1〜2.5の範囲にあることが望ましい。この比(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、フローマークの発生を防止することができ、シボ転写性の良好な射出成形品を得ることができる。また、可塑化時間が短くなるため、冷却時間を短縮することができ、成形サイクルの短縮が可能である。
上記した成分(A)、成分(B)および成分(C)を上記割合で配合して得られる、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、成形時の流動性に優れ、しかも、曲げ弾性率、耐衝撃性、硬度および脆化温度等の物性バランスに優れる成形品を提供することができる。このため、本発明の樹脂組成物は、射出成形用の樹脂原料として好適に利用することができ、フローマークの発生を防止することができ、シボ転写性の良好な射出成形品を得ることができる。また、本発明の樹脂組成物は、可塑化時間が短いため、冷却時間を短縮することができるので、射出成形サイクルを短縮することも可能である。
なお、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物には、上記ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体(A1)またはプロピレン系ブロック共重合体(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の他に、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
上記酸化防止剤としては、従来公知のフェノール系、イオウ系またはリン系のいずれの酸化防止剤でも配合することができる。
また、酸化防止剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂((A1)または(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
上記耐光安定剤としては、たとえばヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や紫外線吸収剤を挙げることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量=847)、
アデカスタブLA−52〔分子量=847、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート〕、
アデカスタブLA−62(分子量=約900)、
アデカスタブLA−67(分子量=約900)、
アデカスタブLA−63(分子量=約2000)、
アデカスタブLA−68LD(分子量=約1900)(いずれも旭電化工業(株)製、商標)、
キマソーブ(CHIMASSORB)944(分子量=72500、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商標)などを挙げることができる。
また、紫外線吸収剤としては、具体的には、チヌビン326(分子量=316)、チヌビン327(分子量=357)、チヌビン120(分子量=438)(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商標)などを挙げることができる。
これらの耐光安定剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤または紫外線吸収剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂((A1)または(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.6重量部である。
上記脂肪酸金属塩は、ポリプロピレン樹脂組成物中に含まれている触媒の中和剤、およびその樹脂組成物中に配合されたフィラー(無機充填剤(C)を含む)、顔料などの分散剤として機能し、脂肪酸金属塩を配合した樹脂組成物から優れた物性、たとえば自動車内装部品として要求される強度などを備えた成形品が得られる。
脂肪酸金属塩としては、具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
脂肪酸金属塩の配合量は、ポリプロピレン樹脂((A1)または(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.05〜0.5重量部である。脂肪酸金属塩の配合量が上記範囲にある場合、中和剤および分散剤としての機能を十分に発揮させることができ、しかも、成形品からの昇華量も少なくすることができる。
上記顔料としては公知のものが使用でき、たとえば金属の酸化物、硫化物、硫酸塩等の無機顔料;フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンジジン系等の有機顔料などが挙げられる。
顔料の配合量は、ポリプロピレン樹脂((A1)または(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部とするのが望ましい。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂組成物は、前述したポリプロピレン樹脂((A1)または(A2))、エラストマー(B)および無機充填剤(C)、他の添加剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
自動車部品
本発明に係る自動車部品は、上記のようにして得られるポリプロピレン樹脂組成物からなる。
本発明に係る自動車部品が射出成形品である場合、この射出成形品の流動方向に対し5mm間隔にて射出成形品表面の光沢(反射率)(入射角90°、反射角90°、測定面積4mmφ)を測定した場合に、隣接した測定個所の反射率差(光沢差)が、次式
Δ反射率差≦0.5
を満たすことが好ましい。この反射率差が0.5以下であると、その射出成形品表面に、フローマークを視認しずらくなる。すなわち、このような射出成形品は、外観に優れ、商品価値のある自動車部品として好適である。この反射率差(光沢差)の測定方法については、実施例において後述する。
[発明の効果]
本発明によれば、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、かつフローマークが発生しにくく、発生しても目立たず、しかも成形品表面のシボ転写性が良好で、外観に優れる自動車部品(射出成形品を含む)を提供することができる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂組成物は、特定のプロピレン単独重合体(A1)または特定のプロピレン系ブロック共重合体(A2)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)とを特定の割合で含有しているので、可塑化時間が短く、そのため、射出成形品を製造する際の成形サイクルを短縮することができ、上記のような効果を有する射出成形品の自動車部品を効率よく生産することができる。
したがって、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、上記の特徴を生かして自動車部品、たとえばドアトリム、インストルメントパネル等の自動車内装部品;サイドプロテクトモール、バンパー、ソフトフェイシア、マッドガード等の自動車外装部品において好適に利用することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例A1
[メタロセン化合物の合成]
<ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドの合成>
(1)4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタンの合成
300ml容量の二口フラスコを十分に窒素置換し、AlCl338.4g(289mmol)を入れ、CH3NO280mlを加えて溶解し、これを溶液(1)とした。滴下ロートと磁気撹拌子を備えた500ml容量の三口フラスコを十分に窒素置換し、これにジフェニルメタン25.6g(152mmol)と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール43.8g(199mmol)を入れ、CH3NO280mlを加えて溶解した。撹拌しながら氷浴で冷却した。(1)の溶液を35分かけて滴下した後、反応液を12℃で1時間撹拌した。反応液を氷水500ml中に注ぎ、ヘキサン800mlで反応生成物を抽出した。その反応生成物を含む有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液600mlで洗浄し、続いてMgSO4で乾燥した。MgSO4をろ別した後、溶媒をエバポレートして得られたオイルを−78℃に冷却して固体を析出させ、それをろ過で回収し、エタノール300mlで洗浄した。減圧下で乾燥して、4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタンを得た。その収量は18.9gであった。
(2)2,2'−ジヨード−4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタンの合成
磁気撹拌子を備えた200ml容量のフラスコに、4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタン1.95(6.96mmol)とHIO40.78g(3.48mmol)、I21.55g(6.12mmol)、concH2SO40.48mlを入れた。これに酢酸17.5ml、水3.75mlを加え、撹拌しながら90℃に加熱し5時間反応させた。反応液を氷水50ml中に注ぎ、(C252Oで反応生成物を抽出した。その反応生成物を含む有機層を飽和NaHSO4水溶液100mlで洗浄し、続いてNa2CO3を添加し、撹拌後Na2CO3をろ別した。さらに有機層を水800mlで洗浄後、MgS4を加えて乾燥した。MgS4をろ別した後、溶媒を留去して黄色オイルを得た。この黄色オイルをカラムクロマトグラフィーにより精製し、2,2'−ジヨード−4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタンを得た。その収量は3.21gであった。
(3)3,6−ジ−t−ブチルフルオレンの合成
50ml容量の二口フラスコに、2,2'−ジヨード−4,4'−ジ−t−ブチルジフェニルメタン3.21g(6.03mmol)、銅粉2.89g(47.0mmol)を入れ、230℃に加熱し、撹拌しながら5時間反応させた。反応生成物をアセトンで抽出し、溶媒を留去し、赤褐色オイルを得た。この赤褐色オイルからカラムクロマトグラフィーにより薄黄色のオイルを得た。未反応原料を含むフラクションは再度カラムにかけて目的物のみ回収した。メタノールで再結晶して白色固体の3,6−ジ−t−ブチルフルオレンを得た。その収量は1.08gであった。
(4)1−tert−ブチル−3−メチルシクロペンタジエンの合成
窒素雰囲気下で、濃度2.0mol/lのtert−ブチルマグネシウムクロライド/ジエチルエーテル溶液(450ml、0.90mol)に脱水ジエチルエーテル(350ml)を加えた溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら3−メチルシクロペンテノン(43.7g、0.45mmol)の脱水ジエチルエーテル(150ml)溶液を滴下し、さらに室温で15時間撹拌した。反応溶液に塩化アンモニウム(80.0g、1.50mol)の水(350ml)溶液を、氷冷下で0℃を保ちながら滴下した。この溶液に水(2500ml)を加え撹拌した後、反応生成物を含む有機層を分離して水で洗浄した。この有機層に、氷冷下で0℃を保ちながら10%塩酸水溶液(82ml)を加えた後、室温で6時間撹拌した。この反応液の有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(乾燥剤)で乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(45〜47℃/10mmHg)することにより14.6gの淡黄色の液体(1−tert−ブチル−3−メチルシクロペンタジエン)を得た。その分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ6.31+6.13+5.94+5.87(s+s+t+d、2H)、3.04+2.95(s+s、2H)、2.17+2.09(s+s、3H)、1.27(d、9H)
(5)3−tert−ブチル−5,6,6−トリメチルフルベンの合成
窒素雰囲気下で1−tert−ブチル−3−メチルシクロペンタジエン(13.0g、95.6mmol)の脱水メタノール(130ml)溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら脱水アセトン(55.2g、950.4mmol)を滴下し、さらにピロリジン(68.0g、956.1mmol)を滴下した後、室温で4日間撹拌した。反応液をジエチルエーテル(400ml)で希釈した後、水400mlを加えた。反応生成物を含む有機層を分離し、0.5Nの塩酸水溶液(150ml×4)、水(200ml×3)、飽和食塩水(150ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(乾燥剤)で乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(70〜80℃/0.1mmHg)することにより10.5gの黄色の液体(3−tert−ブチル−5,6,6−トリメチルフルベン)を得た。その分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ6.23(s、1H)、6.05(d、1H)、2.23(s、3H)、2.17(d、6H)、1.17(s、9H)
(6)2−(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)−2−(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)プロパンの合成
3,6−ジ−tert−ブチルフルオレン(0.9g、3.4mmol)のTHF(30ml)溶液に、氷冷下でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.1ml、3.4mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で6時間撹拌した。さらに、氷冷下で、この赤色溶液に3−tert−ブチル−5,6,6−トリメチルフルベン(0.6g、3.5mmol)のTHF(15ml)溶液を窒素雰囲気下で滴下し、室温で12時間撹拌した後に水30mlを加えた。ジエチルエーテルで抽出、分離した反応生成物を含む有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去して固体を得た。この固体を熱メタノールから再結晶して1.2gの淡黄色の固体(2−(3−tertt−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)−2−(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)プロパン)を得た。その分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ7.72(d、2H)、7.18−7.05(m、4H)、6.18−5.99(s+s、1H)、4.32−4.18(s+s、1H)、3.00−2.90(s+s、2H)、2.13−1.98(t+s、3H)、1.38(s、18H)、1.19(s、9H)、1.10(d、6H)
(7)ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)
(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドの合成
氷冷下で、2−(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)−2−(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)プロパン(1.3g、2.8mmol)のジエチルエーテル(40ml)溶液にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(3.6ml、5.8mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で16時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧下で除去して赤橙色の固体を得た。この固体に−78℃でジクロロメタン150mlを加えて撹拌溶解し、次いで、この溶液を−78℃に冷却したジルコニウムテトラクロライド(THF)2錯体(1.0g、2.7mmol)のジクロロメタン(10ml)懸濁液に加え、−78℃で6時間撹拌し、室温で一昼夜撹拌した。この反応溶液から溶媒を減圧下で除去し、オレンジ色の固体を得た。さらに、この固体をトルエンで抽出、セライト濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去した後、ジエチルエーテルから再結晶し0.18gのオレンジ色の固体(ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド)を得た。その分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ7.98(dd、2H)、7.90(d、1H)、7.69(d、1H)、7.32−7.25(m、2H)、6.01(d、1H)、5.66(d、1H)、2.54(s、3H)、2.36(s、3H)、2.28(s、1H)、1.43(d、18H)、1.08(s、9H)
[シリカ担持メチルアルミノキサンの調製]
充分に窒素置換した500ml容量の反応器に、シリカ20g(旭硝子(株)製、商品名 H−121、窒素下150℃で4時間乾燥したもの)、およびトルエン200mlを仕込み、撹拌しながらメチルアルミノキサン60ml(アルベマール社製、10重量%トルエン溶液)を窒素雰囲気下で滴下した。次いで、この混合物を110℃で4時間反応させた後、反応系を放冷して固体成分を沈澱させ、上澄み溶液をデカンテーションによって取り除いた。続いて、固体成分をトルエンで3回、ヘキサンで3回洗浄し、シリカ担持メチルアルミノキサンを得た。
[プロピレン単独重合体(A1−1)の製造]
充分に窒素置換した1000ml容量の二つ口フラスコ中に、シリカ担持メチルアルミノキサンをアルミニウム換算で20mmol入れ、ヘプタン500mlに懸濁させた。次いで、その懸濁液に、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド54mg(0.088mmol)をトルエン溶液として加えた後、次いで、トリイソブチルアルミニウム(80mmol)を加え、30分攪拌して触媒懸濁液とした。
充分に窒素置換した内容積200リットルのオートクレーブに、上記の触媒懸濁液を添加し、40kgの液化プロピレン、および30Nリットルの水素を仕込み、3.0〜3.5MPaの圧力下、70℃で60分重合を行なった。重合終了後、メタノールを加えて重合を停止させ、未反応のプロピレンをパージしてプロピレン単独重合体(A1−1)を得た。これを真空下80℃で6時間乾燥した。乾燥後のプロピレン単独重合体(A1−1)の収量は17kgであった。
上記のようにして得られたプロピレン単独重合体(A1−1)は、融点(Tm)が158℃であり、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が42g/10分であり、重量平均分子量(Mw)が140,000であり、数平均分子量(Mn)が70,000であり、Mw/Mnが2.0であり、n−デカン可溶成分量が0.2重量%であった。また、この単独重合体(A1−1)の立体規則性は、mmmm分率が95.8%であり、2,1−挿入と1,3−挿入は共に検出されなかった。
[ポリプロピレン樹脂組成物の製造]
上記のようにして得られたプロピレン単独重合体(A1−1)と、プロピレン・エチレン共重合体ゴム(B−1)[PER;エチレン含量41モル%、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)=2.0g/10分]と、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム(B−2−a)[EBR;エチレン含量82モル%、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)=7g/10分]と、タルク(C−1)[無機充填剤、林化成(株)製、K−1(商標)]と、Irganox 1010(商標)[酸化防止剤(チバガイギー社製)]と、Irgafos 168(商標)[酸化防止剤(チバガイギー社製)]と、サノールLS−770(商標)[HALS系耐光安定剤(三共製薬社製)]と、チヌビン120(商標)[紫外線吸収剤(チバガイギー社製)]を表1に示した配合でタンブラー型混合機にて混合した後、二軸押出機で溶融混練してペレット化した。
このようにして得られたポリプロピレン樹脂組成物から、射出成形機[(株)名機製作所製、M−200A II−SJ−MJ]を用いて平板(100mm×350mm×2mm厚)を射出成形し、フローマークを観察した。フローマークが目立ち難いものを○、目立ち易いものを△、非常に目立つものを×で評価表示した。
また、同射出成形機、同金型を用いて、スクリュー背圧700kg/cm2に設定して可塑化時間の測定を行なった。
また、同射出成形機を用いて、表面にシボの付いた平板(140mm×360mm×3mm厚)を射出成形し、転写されたシボ面の光沢の測定を行なった(シボ面の光沢は、ASTM D523に従い、60度の光線入射角にて測定した。)。光沢測定位置は、平板中央部の上流端から80mm離れた位置(A部)および下流端から80mm離れた位置(B部)の2個所とした。
さらに、射出成形機[(株)新潟製鋼所製、NN220a)を用いて、ASTM試験片を射出成形し、各種物性を測定した。また、ポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して、射出成形品表面における光沢差(反射率差)によるフローマークの有無を調べた。これらの結果を表1に示す。
物性測定方法は次の通りである。
[引張特性]
引張特性は、ASTM D638−84に準拠して引張試験を行なって、引張伸びを下記の条件で測定した。
<試験条件>
試験片:ASTM D638−84 No.1ダンベル
チャック間距離:114mm
温度:23℃
引張速度:10mm/分および20mm/分
[曲げ特性]
曲げ特性は、ASTM D−790に準拠して、下記の条件にて曲げ試験を行なって曲げ弾性率を求めた。
<試験条件>
試験片:6.4mm(厚さ)×12.7mm(幅)×127mm(長さ)
スパン間:100mm
曲げ速度:2mm/分
測定温度:23℃
[アイゾット衝撃強度]
アイゾット衝撃強度は、ASTM D−256に準拠して、下記の条件にて衝撃試験を行なって求めた。
<試験条件>
試験片:12.7mm(幅)×6.4mm(厚さ)×64mm(長さ)
ノッチ:機械加工
測定温度:23℃、−30℃
なお、フローマーク観察、シボ転写性評価、可塑化時間測定およびASTM試験に供した試験片の射出成形条件は、次の通りである。
<射出成形条件>
フローマーク観察;樹脂温度230℃、金型温度40℃、
射出速度25%、射出圧力65%、
冷却時間20秒。
シボ転写性評価;樹脂温度220℃、金型温度40℃、
射出速度20%、射出圧力80%、
冷却時間15秒。
可塑化時間測定;樹脂温度210℃、金型温度40℃、
射出速度30%、射出圧力50%、
冷却時間20秒。
ASTM試験片;樹脂温度210℃、金型温度40℃、
射出速度40%、射出圧力40%、
冷却時間20秒。
[反射率試験]
射出成形平板(100mm×350mm×2mm厚、1点ゲート)の流動末端から50mmから150mm間の領域で、流動方向に対し5mm間隔にて反射率(測定機:日本電色工業(株)製FW−098、90°入射角)を測定した。
実施例A2
プロピレン単独重合体(A1−1)、プロピレン・エチレン共重合体ゴム(B−1)、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム(B−2−a)およびタルク(C−1)の配合比、添加剤の種類およびその配合比を表2のように変更した以外は、実施例A1と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例A1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
比較例A1
[メタロセン化合物の合成]
<ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドの合成>
Organometallics,13,954(1994)に記載の方法に従って、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドを合成した。
[プロピレン単独重合体(A1−2)の製造]
実施例A1において、メタロセン化合物として、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドを70mg用いた以外は、実施例A1と同様にして、プロピレン単独重合体(A1−2)を得た。
得られたプロピレン単独重合体(A1−2)の収量は、16.3kgであった。このプロピレン単独重合体(A1−2)は、融点(Tm)は150℃であり、MFR(ASTMD 1238,230℃、荷重2.16kg)が40g/10分であり、Mw/Mnが2.3であり、常温n−デカン可溶分量が0.6重量%であった。また、このプロピレン単独重合体(A1−2)の立体規則性は、mmmm分率が95.7%であり、2,1−挿入の割合が0.80%であり、1,3−挿入の割合が0.05%であり、2,1−挿入の割合が多かった。
このプロピレン単独重合体(A1−2)を用いて、実施例A1と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表1に示す。
比較例A2
比較例A1と同じプロピレン単独重合体(A1−2)を用いて、実施例A2と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表2に示す。
比較例A3
この比較例A3で使用する、塩化マグネシウム担持チタン触媒(チーグラー・ナッタ触媒)を用いて製造された市販のプロピレン単独重合体(A1−3)[商品名 J108、(株)グランドポリマー製]の物性は以下の通りである。
プロピレン単独重合体(A1−3)の融点(Tm)が160℃であり、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が40g/10分であり、Mw/Mnが4.4であり、常温n−デカン可溶分量が2.0重量%であり、Mw/Mnの値が大きい。また、ポリマーの立体規則性は、mmmm分率が96.5%であり、2,1−挿入と1,3−挿入は共に検出されなかった。
このプロピレン単独重合体(A1−3)を用いて、実施例A1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。結果を表1に示す。
比較例A4
比較例A3と同じプロピレン単独重合体(A1−3)を用いて、実施例A2と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0005210344
Figure 0005210344
Figure 0005210344
実施例B1
[プロピレン系ブロック共重合体(A2−1)の製造]
充分に窒素置換した1000ml容量の二つ口フラスコ中に、実施例A1に記載のシリカ担持メチルアルミノキサンをアルミニウム換算で20mmol入れ、ヘプタン500mlに懸濁させた。次いで、その懸濁液に、実施例A1に記載のジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド54mg(0.088mmol)をトルエン溶液として加えた後、次いで、トリイソブチルアルミニウム(80mmol)を加え、30分攪拌して触媒懸濁液とした。
充分に窒素置換した内容積20リットルのオートクレーブに、プロピレン5kgと水素3リットルを装入し、上記の触媒懸濁液を添加し、3.0〜3.5MPaの圧力下、70℃で40分間バルクホモ重合を行なった。
ホモ重合終了後、ベントバルブを開け、未反応のプロピレンを重合器内圧力が常圧になるまで脱圧した。脱圧終了後、引き続いてエチレンとプロピレンとの共重合を行なった。すなわち、エチレン/プロピレン混合ガス(エチレン25モル%、プロピレン75モル%)を、重合器内の圧力が1MPaとなるように重合器のベント開度を調節しながら連続的に供給し、70℃で60分間重合を行なった。少量のメタノールを添加することで重合反応を停止し、重合器内の未反応ガスをパージした。
上記のようにして得られたプロピレン系ブロック共重合体(A2−1)の収量は、2.9kgであった。この共重合体(A2−1)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が31g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部の量)が11重量%であり、常温n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.2dl/gであり、エチレン含有量が41モル%であった。
また、この共重合体(A2−1)のプロピレン単独重合体部は、融点(Tm)が158℃であり、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が42g/10分であり、重量平均分子量(Mw)が140,000であり、数平均分子量(Mn)が70,000であり、Mw/Mnが2.0であり、n−デカン可溶成分量が0.2重量%であった。さらに、プロピレン単独重合体部の立体規則性は、mmmm分率が95.8%であり、2,1−挿入と1,3−挿入は共に検出されなかった。
ここで、各段で得られた重合体の量、組成、分子量、立体規則性などの固定は、次のようにして行なった。まず、プロピレン系ブロック共重合体(A2−1)を150℃のn−デカンで2時間熱処理し、室温まで冷却した後に析出した固体成分をろ過した。このとき得られた固体成分を、1段目で得られたプロピレン単独重合体とした。また、ろ液を減圧下で濃縮・乾固して得られた成分をn−デカン可溶成分とした。それぞれの成分につき、従来の方法に従い、各種の分析を行なった。
[ポリプロピレン樹脂組成物の製造]
上記のようにして得られたプロピレン系ブロック共重合体(A2−1)と、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム(B−2−b)[EBR;エチレン含量70モル%、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)=1.8g/10分]と、タルク(C−1)[無機充填剤、林化成(株)製、K−1(商標)]と、Irganox 1010(商標)[酸化防止剤(チバガイギー社製)]と、Irgafos 168(商標)[酸化防止剤(チバガイギー社製)]と、サノール LS−770(商標)[HALS系耐光安定剤(三共製薬社製)]と、チヌビン120(商標)[紫外線吸収剤(チバガイギー社製)]を表3に示した配合でタンブラー型混合機にて混合した後、二軸押出機で溶融混練してペレット化した。
このようにして得られたポリプロピレン樹脂組成物から、射出成形機[(株)名機製作所製、M−200A II−SJ−MJ]を用いて平板(100mm×350mm×2mm厚)を射出成形し、フローマークを観察した。
また、同射出成形機、同金型を用いて、スクリュー背圧700kg/cm2に設定して可塑化時間の測定を行なった。
また、同射出成形機を用いて、表面にシボの付いた平板(140mm×360mm×3mm厚)を射出成形し、転写されたシボ面の光沢の測定を行なった。シボ面の光沢は、ASTM D523に従い、60度の光線入角度にて測定した。光沢測定位置は、平板中央部の上流端から80mm離れた位置(A部)および下流端から80mm離れた位置(B部)の2個所とした。
さらに、射出成形機[(株)新潟製鋼所製、NN220a)を用いて、ASTM試験片を射出成形し、各種物性を測定した。結果を表3に示す。
引張特性、曲げ特性およびアイゾット衝撃強度の物性測定方法は、実施例A1に記載した通りである。
なお、フローマーク観察、シボ転写性評価、可塑化時間測定およびASTM試験に供した試験片の射出成形条件も、実施例A1に記載した通りである。
実施例B2
プロピレン系ブロック共重合体(A2−1)、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム(B−2−b)およびタルク(C−1)の配合比、添加剤の種類およびその配合比を表4のように変更した以外は、実施例B1と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例B1と同様にして評価した。その結果を表4に示す。
比較例B1
[プロピレン系ブロック共重合体(A2−2)の製造]
実施例B1において、メタロセン化合物として、実施例A1に記載のジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド70mgを用いた以外は、実施例B1と同様にして、プロピレン系ブロック共重合体(A2−2)を得た。
上記のようにして得られたプロピレン系ブロック共重合体(A2−2)は、そのMFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が30g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部の量)が11.0重量%であり、常温n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.2dl/gであり、エチレン含有量が41モル%であった。
また、この共重合体(A2−2)のプロピレン単独重合体部は、融点(Tm)が150℃であり、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が40g/10分であり、重量平均分子量(Mw)が141,000であり、数平均分子量(Mn)が60,000であり、Mw/Mnが2.3であり、n−デカン可溶成分量が0.6重量%であった。さらに、プロピレン単独重合体部の立体規則性は、mmmm分率が95.9%であり、2,1−挿入の割合が0.80%であり、1,3−挿入の割合が0.05%であった。
[ポリプロピレン樹脂組成物の製造]
このプロピレン系ブロック共重合体(A2−2)を用いて、実施例B1と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表3に示す。
比較例B2
比較例B1と同じプロピレンブロック共重合体(A2−2)を用いて、実施例B2と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表4に示す。
比較例B3
この比較例B3で使用する、塩化マグネシウム担持チタン触媒(チーグラー・ナッタ触媒)を用いて製造された市販のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−3)[商品名 J707、(株)グランドポリマー製]の物性は以下の通りである。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2−3)は、そのMFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が27g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部の量)が11.5重量%であり、常温n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.8dl/gであり、エチレン含有量が41モル%であった。
また、この共重合体(A2−3)のプロピレン単独重合体部の融点(Tm)が160℃であり、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が40g/10分であり、Mw/Mnが4.4であった。また、デカン不溶部のポリマーの立体規則性は、mmmm分率が96.5%であり、2,1−挿入と1,3−挿入は共に検出されなかった。
このプロピレン系ブロック共重合体(A2−3)を用いて、実施例B1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。結果を表3に示す。
比較例B4
比較例B3と同じプロピレン系ブロック共重合体(A2−3)を用いて、実施例B2と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0005210344
Figure 0005210344

Claims (7)

  1. プロピレン単独重合体(A1)30〜80重量%と、エラストマー(B)15〜40重量%と、無機充填剤(C)5〜30重量%とを含有してなるポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品であって、
    該プロピレン単独重合体(A1)は、
    (i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が20〜300g/10分の範囲にあり、
    (ii)13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.05%以下であり、
    (iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であり、
    (vi)示差走査型熱量計(DSC)により測定される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)が155〜170℃の範囲にある
    ことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  2. プロピレン単独重合体部とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体(A2)と、無機充填剤(C)とを含有してなるポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品であって、
    該プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部は、
    (i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が20〜300g/10分の範囲にあり、
    (ii)13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.05%以下であり、
    (iii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であり、
    (vi)示差走査型熱量計(DSC)により測定される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)が155〜170℃の範囲にあり、
    該プロピレン系ブロック共重合体(A2)および該無機充填剤(C)の合計量100重量%に対して、該ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部の含有量が30〜80重量%、該プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部の含有量が15〜40重量%、かつ、該無機充填剤(C)の含有量が5〜30重量%であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  3. 前記ポリプロピレン樹脂組成物は、さらに、エラストマー(B)を含有し、前記プロピレン系ブロック共重合体(A2)、エラストマー(B)および無機充填剤(C)の合計量100重量%に対して、該ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン単独重合体部の含有量が30〜80重量%、該プロピレン系ブロック共重合体(A2)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部と該エラストマー(B)の合計含有量が15〜40重量%、かつ、該無機充填剤(C)の含有量が5〜30重量%であることを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  4. 前記エラストマー(B)が、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B−2)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(B−3)および水素添加ブロック共重合体(B−4)から選ばれる少なくとも1種のエラストマーであることを特徴とする請求項1または3に記載のポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  5. 前記無機充填剤(C)がタルクであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  6. 前記ポリプロピレン樹脂組成物のクロス分別クロマト(CFC)測定において、オルトジクロロベンゼン100〜135℃溶出成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物を射出成形して得られた自動車部品。
  7. 前記自動車部品が射出成形品であって、この射出成形品の流動末端から50mm〜150mmの位置において、流動方向に対し5mm間隔にて反射率(入射角90°、反射角90°、測定面積4mmφ)を測定した場合に、隣接した測定個所の反射率差が、次式
    Δ反射率差≦0.5
    を満たしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車部品。
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