JP4463446B2 - ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、自動車部品用材料として好適に利用できるポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリオレフィン樹脂、たとえばプロピレン系ブロック共重合体は、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されており、要求される性能に応じて種々の添加剤が配合されている。特に自動車部品用途においては、プロピレン系ブロック共重合体にα- オレフィン共重合ゴムとタルクあるいは硫酸バリウムのような無機充填剤を配合した組成物は、その成形品の剛性と耐衝撃性とのバランスが優れているため、大量に使用されている。しかしながら、上記プロピレン系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物は、成形時にフローマークが発生し易い。
【0003】
また、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系ブロック共重合体とα- オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物は、特開平10−1573号公報において既に提案されている。しかしながら、メタロセン触媒で製造されたプロピレン系ブロック共重合体は、その製造時に1%程度の割合で1,3−挿入または1,2−挿入を生じるため、結晶化度が低くなり、したがって、その融点は150℃付近となり、チタン系触媒で製造されたプロピレン系ブロック共重合体の融点160数℃に比べて低い。また、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系ブロック共重合体は、結晶化度が低いため、チタン系触媒で製造されたプロピレン系ブロック共重合体に比し、引張強度特性、曲げ強度特性、剛性等も劣っている。この結果、メタロセン触媒で製造されたプロピレン系ブロック共重合体とα- オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物は、チタン系触媒で製造されたプロピレン系ブロック共重合体とα- オレフィン共重合ゴムと無機充填剤とを配合した組成物に比べて、機械強度特性が劣るため、実用に供されていなかった。
【0004】
さらに、ポリプロピレンに造核剤を配合することにより、ポリプロピレンの剛性を向上させることができることは、特開平9−71695号公報等により知られている。しかしながら、本願発明者らは、一般の造核剤を上記組成物に配合しても、その向上効果は小さく、かつ、耐衝撃性を損なう傾向にあることを確認した。
【0005】
本願発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究し、メタロセン触媒を用いて調製される、メルトフローレートおよび分子量分布(Mw/Mn)が特定の範囲内にあるプロピレン単独重合体部とプロピレン・α- オレフィン共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体と、無機充填剤と、エラストマーと、ロジン酸系造核剤とを含有する特定のポリオレフィン樹脂組成物から、フローマークのない外観に優れた射出成形品が得られること、特に上記プロピレン系ブロック共重合体において、プロピレンの1,3−挿入または2,1−挿入が殆どない場合には、融点が高く、その成形品の剛性、引張強度特性、曲げ強度特性に優れていること、そして、そのプロピレン系ブロック共重合体を用いた樹脂組成物が自動車部品用組成物として優れた性能を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
【発明の目的】
本発明の目的は、上記のような従来技術に伴う問題を解消しようとするものであって、フローマークのない成形品(たとえば自動車部品として用いられる射出成形品)を調製することができるプロピレン系ブロック共重合体を用いたポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れた成形品を調製することができるポリオレフィン樹脂組成物、特に自動車部品用ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、
メタロセン触媒を用いて調製された、プロピレン単独重合体部とプロピレン・α- オレフィンランダム共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体(A)と、
無機充填剤(B)と、
エラストマー(C)と、
ロジン酸系造核剤(D)と
を含有してなり、
該プロピレン系ブロック共重合体(A)のプロピレン単独重合体部は、
(i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が0.01〜1000g/10分の範囲にあり、
(ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であり、
該共重合体(A)と該無機充填剤(B)との含有量は、重量比[(A)/(B)]で50/50〜98/2であり、
該エラストマー(C)の含有量は、共重合体(A)および無機充填剤(B)の合計量100重量%に対して70重量%以下の量であり、
該ロジン酸系造核剤(D)の含有量は、プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して0.001〜5重量部である
ことを特徴としている。
【0009】
前記プロピレン系ブロック共重合体(A)のプロピレン単独重合体部は、13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1-挿入あるいは1,3-挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下であることが好ましい。
前記メタロセン触媒を形成するメタロセン化合物触媒成分としては、下記一般式(4)または(5)で表わされるメタロセン化合物が好ましい。
【0010】
【化2】
Figure 0004463446
【0011】
(式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1ないしR12で示される基のうち、隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(4)の場合はR1、R4、R5およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
前記無機充填剤(B)としては、特にタルクが好ましい。
【0012】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、成形性たとえば射出成形性に優れ、自動車部品用に特に好適に用いられる。
【0013】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、プロピレン系ブロック共重合体(A)、無機充填剤(B)、エラストマー(C)およびロジン酸系造核剤(D)を含有している。
【0014】
プロピレン系ブロック共重合体(A)
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)は、メタロセン触媒を用いて調製されるブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部と、プロピレン・α- オレフィンランダム共重合体部とからなる。このプロピレン系ブロック共重合体(A)全体のα- オレフィンの含有量は1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
【0015】
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)は、常温n−デカン不溶分を構成するプロピレン単独重合体分および必要に応じて更にポリエチレン分と、常温n−デカン可溶分を構成するプロピレン・α- オレフィンランダム共重合体分とからなる。
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)のプロピレン単独重合体部は、下記の特性を有している。
(i)このプロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分、特に好ましくは0.1〜100g/10分の範囲にあり、
(ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1〜2.3の範囲にある。
【0016】
また、このプロピレン単独重合体部は、さらに以下の(iii)の特性を有していることが好ましい。
(iii)13C−NMRスペクトルから求められる全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1-挿入あるいは3,1-挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。
【0017】
このプロピレン単独重合体部は、上記の(i)〜(iii)の特性を有するだけでなく、さらに以下の(iv)〜(vi)の特性を有することが特に好ましい。
(iv)n−デカン可溶分量(プロピレン単独重合体をn−デカンで150℃、2時間処理した後に室温に戻し、n−デカンに溶解した重量%)が2重量%以下、好ましくは1重量%以下であり、
(v)13C−NMRスペクトル測定から求められるペンタッド(pentad)アイソタクティシティが90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上である。
【0018】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、13C−NMRを使用して測定されるプロピレン系ブロック共重合体(A)分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。
(vi)示差走査型熱量計(DSC)により測定される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)は、通常153〜165℃、好ましくは155〜165℃、より好ましくは157〜165℃の範囲にある。
【0019】
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)は、常温n−デカン可溶成分すなわちプロピレン・α- オレフィンランダム共重合体分を60〜3重量%、好ましくは50〜3重量%、より好ましくは40〜3重量%、さらに好ましくは30〜3重量%の量で含有していることが望ましい。
プロピレン系ブロック共重合体(A)の常温n−デカン可溶成分は、プロピレン以外のα- オレフィンから導かれる単位を30〜60モル%、好ましくは35〜50モル%の量で含有していることが望ましい。
【0020】
上記プロピレン以外のα- オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、4-メチル-1- ペンテン等の炭素原子数2〜20のプロピレン以外のα- オレフィンが挙げられる。
プロピレン系ブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、通常5〜150g/10分、好ましくは10〜100g/10分、特に好ましくは20〜80g/10分である。
【0021】
上記特性を有するプロピレン系ブロック共重合体(A)は、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製される。
メタロセン触媒としては、従来から使用されている公知のメタロセン系触媒が制限なく使用でき、たとえばチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属を有するメタロセン化合物(a)と有機アルミニウムオキシ化合物(b)とからなる触媒、およびメタロセン化合物(a)とイオン性化合物(c)とからなる触媒等が挙げられる。
【0022】
上記メタロセン化合物(a)としては、具体的には、下記一般式(1)で表わされる遷移金属化合物などが挙げられる。
MLx ・・・(1)
一般式(1)中、Mは周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属原子であり、具体的には、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、xは遷移金属の原子価である。
【0023】
一般式(1)中、Lは、遷移金属に配位する配位子であり、これらのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、たとえば
シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基等のアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基、さらに
インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0024】
一般式(1)で示される化合物が、配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていることが望ましい。
【0025】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLとしては、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3a)[ここで、Raはアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、またはハロゲン原子もしくはアルキル基で置換されたアリール基である。]、ハロゲン原子または水素原子などが挙げられる。
【0026】
炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、
メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどのアルキル基、
シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、
フェニル、トリルなどのアリール基、
ベンジル、ネオフィルなどのアラルキル基が挙げられる。
【0027】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。
アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられ、
スルホン酸含有基(−SO3a )としては、メタンスルホナト基、p-トルエンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基、p-クロルベンゼンスルホナト基などが挙げられる。
【0028】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記式(1)で表わされるメタロセン化合物(a)は、たとえば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には、下記式(2)で表わされる。
2 k3 l4 m5 nM ・・・(2)
一般式(2)中、Mは、一般式(1)のMと同様の遷移金属であり、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3、R4およびR5は、それぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有する基または一般式(1)中のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0029】
本発明においては、またメタロセン化合物(a)として下記一般式(3)で表わされる遷移金属化合物を用いることができる。
【0030】
【化3】
Figure 0004463446
【0031】
一般式(3)中、Mは周期律表第IVB族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
一般式(3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、具体的には、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチル等のアルキル基;
ビニル、プロぺニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基;
ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基;
フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル等のアリール基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基;
前記炭化水素基にハロゲン原子が置換したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリル、フェニルシリル等のモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリル等のジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリル等のトリ炭化水素置換シリル、トリメチルシリルエーテル等の炭化水素置換シリルのシリルエーテル、トリメチルシリルメチル等のケイ素置換アルキル基、トリメチルシリルフェニル等のケイ素置換アリール基、などのケイ素含有基;
ヒドロオキシ基;
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシ等のアリローキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシ等のアリールアルコキシ基などの酸素含有基;
前記酸素含有基の酸素がイオウに置換した置換基などのイオウ含有基;
アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノ等のアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などの窒素含有基;
ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノ等のフォスフィノ基などのリン含有基などである。
【0032】
一般式(3)において、R1は、炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。またR2は、水素原子または炭化水素基が好ましく、特に水素原子またはメチル、エチルもしくはプロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
【0033】
一般式(3)中、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、R3、R4、R5およびR6のうち、R3を含む2個の基がアルキル基であることが好ましく、R3とR5、またはR3とR6がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。また、このアルキル基はハロゲン原子、ケイ素含有基等で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、前記R1、R2で例示した置換基等が挙げられる。
【0034】
一般式(3)において、R3、R4、R5およびR6で示される基のうち、アルキル基以外の基は水素原子であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチル等の鎖状アルキル基および環状アルキル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、トリルメチル等のアリールアルキル基などが挙げられ、2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
【0035】
また、一般式(3)中、R3、R4、R5およびR6から選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成してもよい。
一般式(3)中、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示し、具体的には、前記R1およびR2と同様のハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基等が例示できる。
【0036】
イオウ含有基としては、前記R1、R2と同様の基、およびメチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート等のスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート等のスルフィネート基などが例示できる。
【0037】
一般式(3)中、Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR7−、−P(R7)−、−P(O)(R7)−、−BR7−またはAlR7−[ただし、R7は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基]を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2- エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-ジクロヘキシレン等のアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2- エチレン等のアリールアルキレン基などの炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基;
クロロメチレン等の上記炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p−トリル)シリレン、ジ(p−クロロフェニル)シリレン等のアルキルシリレン基、アルキルアリールシリレン基、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2- ジシリレン、テトラフェニル-1,2- ジシリレン等のアルキルジシリレン基、アルキルアリールジシリレン基、アリールジシリレン基などの2価のケイ素含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をスズに置換した2価のスズ含有基置換基などであり、
7は、前記R1、R2と同様のハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基などである。
【0038】
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基であることが好ましく、さらに2価のケイ素含有基であることが好ましく、このうち特にアルキルシリレン基、アルキルアリールシリレン基、アリールシリレン基であることが好ましい。
また、一般式(3)において、R1〜R6の組合せが、R1が炭化水素基、R3が炭素原子数6〜16のアリール基、R2、R4、R5およびR6が水素原子であるものが好ましい。この場合、X1、X2としてはハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
上記R1の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルの炭素原子数1〜4の炭化水素基が好ましい。また、上記R3の炭素原子数6〜16のアリール基としては、具体的には、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル(ペリナフテニル)、アセアントリレニルなどの基が挙げられる。これらのうちでは、フェニル、ナフチルのアリール基が好ましい。これらのアリール基は、前記R1と同様のハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基等で置換されていてもよい。
【0040】
本発明で好ましく用いられる、プロピレン単独重合体部における全プロピレンモノマーの2,1-挿入と1,3-挿入とがいずれも0.2%以下である特定のプロピレン系ブロック共重合体(A)は、たとえば下記一般式(4)または(5)で表わされるメタロセン化合物を触媒成分とするメタロセン触媒を用いることにより製造することができる。
【0041】
【化4】
Figure 0004463446
【0042】
(式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1ないしR12で示される基のうち、隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(4)の場合はR1、R4、R5およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
また、本発明で用いられる他のメタロセン化合物触媒成分としては、下記一般式(1a)または(2a)で表わされるメタロセン化合物が挙げられる。
【0043】
【化5】
Figure 0004463446
【0044】
(式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
一般式(1a)で示される化合物であって、R3がtert-ブチル基またはトリメリルシリル基であり、R13およびR14が同時にメチル基またはフェニル基である場合は、R6およびR11は同時に水素原子でなく、R1ないしR12で示される基のうち隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(1a)の場合はR1、R4、R5およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属であり、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
また、上記以外のメタロセン化合物触媒成分として、下記一般式(1b)または(2b)で表わされるメタロセン化合物が挙げられる。
【0045】
【化6】
Figure 0004463446
【0046】
(式中、R21およびR22は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、R5ないしR12のうち隣接した基は、互いに結合して環を形成してもよく、
Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
jは、1〜4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記炭化水素基の好ましい例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアルキルアリール基などが挙げられる。
【0047】
また、R3は、イオウ、酸素などの異原子を含む環状の炭化水素基、たとえばチエニル基、フリル基などであってもよい。
具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1-エチル-1- メチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、sec-ブチル、tert- ブチル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1-メチル-1- シクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、2-メチル-2- アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2-フェニルエチル、1-テトラヒドロナフチル、1-メチル-1- テトラヒドロナフチル、フェニル、ナフチル、トリルなどの炭化水素基が挙げられる。
【0048】
上記ケイ素含有炭化水素基の好ましい例としては、ケイ素原子数1〜4、かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基が挙げられる。
具体的には、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどの基が挙げられる。
なお、R3は、立体的に嵩高い置換基であることが好ましく、炭素原子数4以上の置換基であることがより好ましい。
【0049】
上記の一般式(4)または(5)において、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれる。好ましい炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基の具体例としては、上記と同様の基が挙げられる。
【0050】
シクロペンタジエニル環に置換するR1ないしR4の隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル、2-メチルインデニル、テトラヒドロインデニル、2-メチルテトラヒドロインデニル、2,4,4-トリメチルテトラヒドロインデニルなどが挙げられる。
【0051】
また、フルオレン環に置換するR5ないしR12の隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルなどが挙げられる。
さらに、フルオレン環に置換するR5ないしR12の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5とR12、R6とR11、R7とR10、R8とR9が同一の基であることが好ましく、無置換フルオレン、3,6-二置換フルオレン、2,7-二置換フルオレンまたは2,3,6,7-四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環の3位、6位、2位、7位はそれぞれR7、R10、R6、R11に対応する。
【0052】
上記一般式(4)または(5)において、Yは、炭素原子またはケイ素原子である。
上記一般式(1)で表わされるメタロセン化合物は、R13とR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としは、たとえば、メチレン、ジメチルメチレン、ジエチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert-ブチルメチレン、ジtert-ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレンまたはジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチルtert-ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレンなどが挙げられる。
【0053】
また、上記一般式(4)で表わされるメタロセン化合物は、R1、R4、R5またはR12から選ばれる置換基と、架橋部のR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよい。そのような構造の一例として、R1とR14が互いに結合して環を形成した場合を下記に例示する。下記一般式(1c)で表わされるメタロセン化合物では、架橋部とシクロペンタジエニル基が一体となり、テトラヒドロペンタレン骨格を形成し、下記一般式(1d)で表わされるメタロセン化合物では、架橋部とシクロペンタジエニル基が一体となり、テトラヒドロインデニル骨格を形成している。また同様に、架橋部とフルオレニル基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0054】
【化7】
Figure 0004463446
【0055】
上記一般式(5)で表わされるメタロセン化合物において、Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、Yは、このAと結合し、シクロアルキリデン基、シクロメチレンシリレン基などを構成する。
また、Aは、Yと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0056】
好ましい具体例としては、たとえばシクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられる。
【0057】
上記一般式(4)または(5)において、Mは、周期表第4族から選ばれる金属であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
上記一般式(4)または(5)において、jは1〜4の整数である。
上記一般式(4)または(5)において、Qはハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。jが2以上のときはQは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0058】
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基などが挙げられる。
【0059】
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられる。
Qは、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0060】
以下に、上記一般式(4)または(5)で表わされる、本発明に係るメタロセン化合物の具体例を示す。
まず、メタロセン化合物のMQj(金属部分)を除いたリガンド構造を、表記上、Cp(シクロペンタジエニル環部分)、Bridge(架橋部分)、Flu(フルオレニル環部分)の3つに分け、それぞれの部分構造の具体例、およびそれらの組み合わせによるリガンド構造の具体例を以下に示す。
【0061】
【化8】
Figure 0004463446
【0062】
【化9】
Figure 0004463446
【0063】
【化10】
Figure 0004463446
【0064】
好ましいリガンド構造を有するメタロセン化合物の具体例として下記の化合物を挙げることができる。
【0065】
【化11】
Figure 0004463446
【0066】
MQjの具体的な例示としては、ZrCl2、ZrBr2、ZrMe2、Zr(OTs)2、Zr(OMs)2、Zr(OTf)2、TiCl2、TiBr2、TiMe2、Ti(OTs)2、Ti(OMs)2、Ti(OTf)2、HfCl2、HfBr2、HfMe2、Hf(OTs)2、Hf(OMs)2、Hf(OTf)2 などが挙げられる。ここでTsはp-トルエンスルホニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。
【0067】
さらに、Cp環の置換基と、架橋部の置換基が互いに結合して環を形成したメタロセン化合物として、例えば下記のような化合物が挙げられる。
【0068】
【化12】
Figure 0004463446
【0069】
上記一般式(4)または(5)で表わされる、本発明に係るメタロセン化合物としては、以下のような化合物などが好ましく例示される。
一般式(4)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0070】
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3が1-メチル-1-シクロヘキシル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、R10とR11が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0071】
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、R10とR11が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0072】
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3が1,1-ジメチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3が1-エチル-1-メチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0073】
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3が1,1,3-トリメチルブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3が1,1-ジメチルブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0074】
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R3、R13、R14がフェニル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、R10とR11が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0075】
一般式(4)で、R3がトリメチルシリル、R13、R14がフェニル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、R10とR11が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0076】
一般式(4)で、R13がメチル、R14がフェニル、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がエチル、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0077】
一般式(5)で、R1がメチル、R3がtert-ブチル、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12が水素、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)5-であるメタロセン化合物。
一般式(5)で、R1がメチル、R3がtert-ブチル、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)5-であるメタロセン化合物。
【0078】
一般式(5)で、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素、R6、R11がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)5-であるメタロセン化合物。
一般式(5)で、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)5-であるメタロセン化合物。
【0079】
一般式(5)で、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)4-であるメタロセン化合物。
一般式(5)で、R3が1,1-ジメチルプロピル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)5-であるメタロセン化合物。
【0080】
一般式(5)で、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R8、R9、R12が水素、R6とR7が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、R10とR11が互いに結合して環を形成した-(C(CH3)2CH2CH2C(CH3)2)-、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2、Aが-(CH2)4-であるメタロセン化合物。
【0081】
一般式(4)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0082】
一般式(4)で、R1、R13、R14がメチル、R3がtert-ブチル、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12が水素、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
一般式(4)で、R13、R14がメチル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
【0083】
一般式(4)で、R13、R14がフェニル、R3がトリメチルシリル、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12が水素、R7、R10がtert-ブチル、Mがジルコニウム、Yが炭素、Qが塩素、jが2であるメタロセン化合物。
上記のようなメタロセン化合物は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0084】
このような粒子状担体としては、SiO2 、Al23 、B23 、MgO、ZrO2 、CaO、TiO2 、ZnO、SnO2 、BaO、ThOなどの無機担体、ポリエチレン、プロピレン系ブロック共重合体、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
【0085】
本発明では上記メタロセン触媒の助触媒の一つとして、アルミノキサンを用いることができる。従来公知のようにアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0086】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert- ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0087】
アルミノキサンの溶液または懸濁液に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。
【0088】
その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。イオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0089】
ルイス酸としては、BR3 (式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトルフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0090】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0091】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
カルボラン化合物としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0092】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
また、触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
【0093】
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、たとえば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
(R1)m Al(O(R2))nHpXq(式中、R1およびR2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
本発明で用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)は、上記したメタロセン触媒の存在下に、プロピレンを重合させてプロピレン単独重合体成分を形成する工程と、プロピレンとプロピレン以外のα- オレフィンたとえばエチレンととを共重合させてプロピレン・α- オレフィン共重合体成分を形成する工程とを、任意の順序で行なって調製することができる。
【0094】
プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合工程は、通常、約−50〜200℃、好ましくは約50〜100℃の温度で、また通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは約2〜50kg/cm2の圧力下で行なわれる。プロピレンの重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行なうことができる。
無機充填剤(B)
本発明で用いられる無機充填剤(B)としては、具体的には、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中では、タルク、炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましい。タルクの平均粒径は、1〜5μm、好ましくは1〜3μmの範囲内にあることが望ましい。無機充填剤(B)は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0095】
エラストマー(C)
本発明で用いられるエラストマー(C)としては、プロピレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−1)、エチレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−2)、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−3)、水素添加ブロック共重合体(C−4)、その他弾性重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0096】
前記プロピレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−1)は、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数2〜20のα- オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。
プロピレン以外の炭素原子数2〜20のα- オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα- オレフィンは、単独で、または2種以上組み合せて用いることができる。これらの中では、特にエチレンが好ましく用いられる。
【0097】
プロピレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−1)は、プロピレンとα- オレフィンとのモル比(プロピレン/α- オレフィン)が90/10〜55/45、好ましくは80/20〜55/45の範囲内にあることが望ましい。
また、プロピレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.1g/10分以上、好ましくは0.3〜20g/10分の範囲内にあることが望ましい。
【0098】
前記エチレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−2)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα- オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。
炭素原子数3〜20のα- オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα- オレフィンは、単独で、または2種以上組み合せて用いることができる。これらの中では、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく用いられる。
【0099】
エチレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−2)は、エチレンとα- オレフィンとのモル比(エチレン/α- オレフィン)が95/5〜60/40、好ましくは90/10〜70/30の範囲内にあることが望ましい。
エチレン・α- オレフィンランダム共重合体(C−2)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.1g/10分以上、好ましくは0.3〜20g/10分の範囲内にあることが望ましい。
【0100】
前記エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−3)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンとのランダム共重合体ゴムである。
炭素原子数3〜20のα- オレフィンの具体例としては、前記と同じα- オレフィンが挙げられる。
【0101】
非共役ポリエチレンとしては、具体的には、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-プロピリデン-5- ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、ノルボルナジエン等の非環状ジエン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,5- ヘプタジエン、6-メチル-1,5- ヘプタジエン、6-メチル-1,7- オクタジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン等の鎖状の非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン等のトリエンなどが挙げられる。これらの中では、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2- ノルボルネンが好ましく用いられる。
【0102】
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−3)は、エチレンとα- オレフィンと非共役ポリエンとのモル比(エチレン/α- オレフィン/非共役ポリエン)が90/5/5〜30/45/25、好ましくは80/10/10〜40/40/20の範囲内にあることが望ましい。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−3)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.05g/10分以上、好ましくは0.1〜10g/10分の範囲内にあることが望ましい。
【0103】
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−3)の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
前記水素添加ブロック共重合体(C−4)は、ブロックの形態が下記の式(1)または(2)で表わされるブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加率が90モル%以上、好ましくは95モル%以上の水素添加ブロック共重合体である。
【0104】
X(YX)n ・・・(1)
(XY)n ・・・(2)
(式中、Xは、モノビニル置換芳香族炭化水素から導かれるブロック重合単位であり、
Yは、共役ジエンから導かれるブロック重合単位であり、
nは、1〜5の整数である。)
上記式(1)または(2)のXで示される重合ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、具体的には、スチレン、α- メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0105】
上記式(1)または(2)のYで示される重合ブロックを構成する共役ジエンとしては、具体的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。nは1〜5の整数、好ましくは1または2である。
水素添加ブロック共重合体(C−4)の具体例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン・プロピレン系ブロック共重合体(SEP)等のスチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0106】
水素添加前のブロック共重合体は、たとえば不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、ブロック共重合を行なわせる方法により製造することができる。この詳細な製造方法は、たとえば特公昭40−23798号公報などに記載されている。
また、ブロック共重合体の水素添加処理は、不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行なうことができる。この詳細な方法は、たとえば特公昭42−8704号、同43−6636号、同46−20814号などの公報に記載されている。
【0107】
共役ジエンモノマーとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量の割合は、20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%であることが望ましい。
水素添加ブロック共重合体(C−4)として市販品を使用することもできる。具体的には、クレイトンG1657(シェル化学(株)製、商標)、セプトン2004(クラレ(株)製、商標)、タフテックH1052(旭化成(株)製、商標)などが挙げられる。
【0108】
上記のようなエラストマー(C)は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
ロジン酸系造核剤(D)
本発明で用いられるロジン酸系造核剤(D)としては、周知のロジン酸系造核剤を使用することができる。
【0109】
ロジン酸系造核剤(D)としては、ロジン酸金属塩、たとえばロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩またはロジン酸マグネシウム塩などが挙げられる。
なお、本明細書において、ロジン酸金属塩(広義)とは、ロジン酸と金属化合物との反応生成物であって、ロジン酸金属塩と未反応のロジン酸との混合物(ロジン酸部分金属塩)、および未反応のロジン酸を含まないロジン酸金属塩(狭義のロジン酸金属塩)の両方を意味する。
【0110】
ロジン酸(ロジン系樹脂酸)としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;前記天然ロジンの精製物、前記変性ロジンの精製物などを例示できる。なお、前記α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンの調製に用いられる不飽和カルボン酸としては、たとえばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0111】
ロジン酸としては、天然ロジン、変性ロジンおよびこれらの精製物からなる群より選ばれる少なくとも1種のロジン酸が好ましく、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種のロジン酸がより好ましく、下記一般式(Ia)で表わされるロジン酸[化合物(Ia)]および下記一般式(Ib)で表わされるロジン酸[化合物(Ib)]から選ばれる少なくとも1種のロジン酸が特に好ましい。
【0112】
【化13】
Figure 0004463446
【0113】
これらの式において、R1、R2およびR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基である。
アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチルなどの炭素原子数が1〜8のアルキル基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
【0114】
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどの炭素原子数が5〜8のシクロアルキル基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
アリール基としては、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基などの炭素原子数が6〜10のアリール基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
【0115】
これら一般式で表わされる化合物(Ia)および化合物(Ib)のうちでは、R1 、R2 およびR3 がそれぞれ、同一または異なるアルキル基である化合物が好ましく、R1がイソプロピル基であり、R2およびR3がメチル基である化合物がより好ましい。
化合物(Ia)としては、具体的にはデヒドロアビエチン酸およびその誘導体などが挙げられ、化合物(Ib)としては、具体的にはジヒドロアビエチン酸およびその誘導体などが挙げられる。
【0116】
このような化合物(Ia)および化合物(Ib)のうちで、たとえば前記一般式(Ia)で表わされるデヒドロアビエチン酸は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジンを不均化または脱水素化し、次いで、精製することにより得られる。
なお、天然ロジンには、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などの樹脂酸が、通常複数種含まれている。
【0117】
前記ロジン酸と反応して金属塩を形成する金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属元素;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属元素;亜鉛などの12族の金属元素;アルミニウムなどの13族の金属元素などの金属元素を有し、かつ、前記ロジン酸と造塩する化合物が挙げられる。具体的には、前記金属の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0118】
前記化合物(Ia)の金属塩としては、具体的には、下記式(IIa)で表わされる化合物[化合物(IIa)]が挙げられ、前記化合物(Ib)の金属塩としては、具体的には、下記式(IIb)で表わされる化合物[化合物(IIb)]が挙げられる。
【0119】
【化14】
Figure 0004463446
【0120】
式(IIa)および(IIb)中、R1、R2およびR3は、前記式(Ia)および(Ib)と同様である。
Mは、1〜3価の金属イオンであり、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属イオン;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属イオン;亜鉛などの12族の金属イオン;アルミニウムなどの13族の金属イオンなどが挙げられる。これらのうち、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンであることがより好ましい。
【0121】
nは、前記金属イオンMの価数と同一の整数であり、1〜3の整数である。
化合物(IIa)および化合物(IIb)のなかでは、R1、R2およびR3がそれぞれ、同一もしくは異なるアルキル基である化合物、または、Mがアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンである化合物が好ましく、R1 がi-プロピル基であり、R2およびR3がメチル基である化合物、または、Mがナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンもしくはカルシウムイオンである化合物がより好ましく、R1がi-プロピル基であり、R2およびR3がメチル基であり、かつ、Mがナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンもしくはカルシウムイオンである化合物が特に好ましい。このような化合物は、特に結晶化速度の向上効果が優れる。
【0122】
化合物(IIa)としては、具体的には、デヒドロアビエチン酸リチウム、デヒドロアビエチン酸ナトリウム、デヒドロアビエチン酸カリウム、デヒドロアビエチン酸ベリリウム、デヒドロアビエチン酸マグネシウム、デヒドロアビエチン酸カルシウム、デヒドロアビエチン酸亜鉛、デヒドロアビエチン酸アルミニウム等のデヒドロアビエチン酸金属塩などが挙げられ、デヒドロアビエチン酸ナトリウム、デヒドロアビエチン酸カリウム、デヒドロアビエチン酸マグネシウムが好ましく用いられる。
【0123】
化合物(IIb)としては、具体的には、ジヒドロアビエチン酸リチウム、ジヒドロアビエチン酸ナトリウム、ジヒドロアビエチン酸カリウム、ジヒドロアビエチン酸ベリリウム、ジヒドロアビエチン酸マグネシウム、ジヒドロアビエチン酸カルシウム、ジヒドロアビエチン酸亜鉛、ジヒドロアビエチン酸アルミニウム等のジヒドロアビエチン酸金属塩などが挙げられ、ジヒドロアビエチン酸ナトリウム、ジヒドロアビエチン酸カリウム、ジヒドロアビエチン酸マグネシウムが好ましく用いられる。
【0124】
上述したようなロジン酸金属塩(広義)の製造方法としては、従来公知の方法が採用でき、たとえば前記ロジン酸に、前記金属化合物を、溶媒の存在下または不存在下に直接反応させる方法などが挙げられる。なお、得られたロジン酸金属塩(狭義)または部分金属塩は、必要に応じて溶媒を除去した後、微粒子化して使用することが好ましい。
【0125】
金属塩を微粒子化する方法は、特に制限がなく各種の微粒化方法を採用することができる。たとえば、(1)ロジン酸金属塩の固形物に機械的シェアーを加えて湿式または乾式にて粉砕処理する方法、(2)前記反応が終了した後、有機溶剤を留去することなく、溶液状態にて水、ならびに必要に応じて界面活性剤および/または水溶性高分子を添加し、次いで、機械的シェアーを加えて乳化分散を行なった後、水および有機溶剤を留去する方法を例示することができる。
【0126】
本発明では、ロジン酸系造核剤(D)として、上記したようなロジン酸金属塩を単独で用いることができるし、また、2種以上のロジン酸金属塩を用いることもできる。この2種以上のロジン酸金属塩は、ロジン酸が同一であり金属が異なるロジン酸金属塩を少なくとも2種含んでいてもよく、ロジン酸が異なり金属が同一であるロジン酸金属塩を少なくとも2種含んでいてもよく、ロジン酸が異なり金属が異なるロジン酸金属塩を少なくとも2種含んでいてもよい。少なくとも2種のロジン酸金属塩中には、ロジン酸金属塩(狭義)が、ロジン酸金属塩(狭義)およびロジン酸の合計100重量%に対して、5〜100重量%、好ましくは10〜100重量%の割合で含有されることが好ましい。ただし、ここにおけるロジン酸の量は、0重量%となる場合がある。
【0127】
2種以上のロジン酸金属塩中のロジン酸金属塩の量比は任意であるが、少なくとも2種のロジン酸金属塩中のロジン酸金属塩の合計量に対して、1種のロジン酸金属塩が0モル%を超え、好ましくは5〜95モル%、他の1種以上のロジン酸金属塩が100モル%未満、好ましくは95〜5モル%の割合となるように組み合せることが望ましい。
【0128】
2種以上のロジン酸金属塩の組み合せとしては、ロジン酸カリウム塩と、ロジン酸ナトリウム塩またはロジン酸マグネシウム塩との組み合せが好ましい。さらに、2種のロジン酸金属塩中のロジン酸金属塩の合計量100モル%に対し、ロジン酸カリウム塩が20モル%以上、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは45〜80モル%、ロジン酸ナトリウム塩またはロジン酸マグネシウム塩が80モル%以下、好ましくは60〜5モル%、より好ましくは55〜20モル%の割合となるように組合せることが望ましい。
【0129】
このような2種以上の金属を含むロジン酸金属塩は、1種の金属のみを含有するロジン酸金属塩に比べ、プロピレン系ブロック共重合体(A)の分散性に優れる。
ポリオレフィン樹脂組成物
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、プロピレン系ブロック共重合体(A)および無機充填剤(B)の合計100重量%に対して、プロピレン系ブロック共重合体(A)が50〜98重量%、好ましくは55〜96重量%、さらに好ましくは60〜94重量%、無機充填剤(B)が2〜50重量%、好ましくは4〜45重量%、さらに好ましくは6〜40重量%、エラストマー(C)が70重量%以下、通常1〜65重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜55重量%の割合で含まれ、さらにロジン酸系造核剤(D)がプロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜4重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部の割合で含まれている。
【0130】
上記のような組成を有する、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、成形時の流動性に優れ、しかも、曲げ弾性率、耐衝撃性、硬度および脆化温度などの物性のバランスに優れた射出成形品等の成形品を提供することができる。このため、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、射出成形用の樹脂原料として好適に利用することができ、この場合、射出成形時に非常に良好な流動性を示し、射出成形品を容易に成形することができる。また、得られる射出成形品は、表面にフローマークが認められず外観に優れている。
【0131】
なお、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中に、前記(A)〜(D)成分の他に、必要に応じて、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、塩酸吸収剤、軟化剤、分散剤、無機充填剤(B)以外の充填剤、着色剤、滑剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0132】
上記酸化防止剤としては、従来公知のフェノール系、イオウ系またはリン系のいずれの酸化防止剤でも配合することができる。
また、酸化防止剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の配合量は、プロピレン系ブロック共重合体(A)、無機充填剤(B)およびエラストマー(C)の合計100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
【0133】
上記塩酸吸収剤としてステアリン酸カルシウムを使用する場合、ロジン酸系造核剤(D)の添加量を増加させなければ造核剤の効果が低下するため、塩酸吸収剤としてはハイドロタルサイトを用いることが好ましい。
耐光安定剤としては、たとえばヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0134】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、
テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジン)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート(分子量=847)、
アデカスタブLA−52〔分子量=847、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジン)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート〕、
アデカスタブLA−62(分子量=約900)、
アデカスタブLA−67(分子量=約900)、
アデカスタブLA−63(分子量=約2000)、
アデカスタブLA−68LD(分子量=約1900)(いずれも旭電化工業(株)製、商標)、
キマソーブ(CHIMASSORB)944(分子量=72500、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商標)などを挙げることができる。
【0135】
また、紫外線吸収剤としては、具体的には、チヌビン326(分子量=316)、チヌビン327(分子量=357)、チヌビン120(分子量=438)(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商標)などを挙げることができる。
これらの耐光安定剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0136】
ヒンダードアミン系光安定剤または紫外線吸収剤の配合量は、ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.6重量部である。
上記脂肪酸金属塩は、プロピレン系ブロック共重合体(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物中に含まれている触媒の中和剤、およびその樹脂組成物中に配合されたフィラー(無機充填剤(B)を含む)、顔料などの分散剤として機能し、脂肪酸金属塩を配合した樹脂組成物から優れた物性、たとえば自動車内装部品として要求される強度などを備えた成形品が得られる。
【0137】
脂肪酸金属塩としては、具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
脂肪酸金属塩の配合量は、プロピレン系ブロック共重合体(A)、無機充填剤(B)およびエラストマー(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.05〜0.5重量部である。脂肪酸金属塩の配合量が上記範囲にある場合、中和剤および分散剤としての機能を十分に発揮させることができ、しかも、成形品からの昇華量も少なくすることができる。
【0138】
上記顔料としては公知のものが使用でき、たとえば金属の酸化物、硫化物、硫酸塩等の無機顔料;フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンジジン系等の有機顔料などが挙げられる。
顔料の配合量は、ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部とするのが望ましい。
【0139】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、前述したプロピレン系ブロック共重合体(A)、無機充填剤(B)、エラストマー(C)、ロジン酸系造核剤(D)および必要により配合する他の添加剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
【0140】
【発明の効果】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、特定のプロピレン系ブロック共重合体(A)、無機充填剤(B)を特定割合で含有し、さらにエラストマー(C)とロジン酸系造核剤(D)を含有しているので、耐衝撃性に優れ、かつ、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、しかも、表面にフローマークがほとんど発生しない射出成形品等の成形品を提供することができる。また、この組成物は、ウェルドラインが目立ちづらく、シボ加工性が良好なので、外観が美麗な成形品を提供することができる。
【0141】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、上記の特徴を生かして自動車用部品、たとえばドアトリム、インストルメントパネル等の自動車内装部品;サイドプロテクトモール、バンパー、ソフトフェイシア、マッドガード等の自動車外装部品において利用することができる。
【0142】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
【0143】
【実施例1】
[メタロセン化合物の合成]
<ジメチルメチレン(3-tert-ブチル−5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドの合成>
(1)4,4’-ジ-t-ブチルジフェニルメタンの合成
300ml容量の二口フラスコを十分に窒素置換し、AlCl338.4g(289mmol)を入れ、CH3NO280mlを加えて溶解し、溶液(1)とした。滴下ロートと磁気撹拌子を備えた500ml容量の三口フラスコを十分に窒素置換し、これにジフェニルメタン25.6g(152mmol)と2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール43.8g(199mmol)を入れ、CH3NO280mlを加えて溶解した。撹拌しながら氷浴で冷却した。(1)の溶液を35分かけて滴下した後、反応液を12℃で1時間撹拌した。反応液を氷水500ml中に注ぎ、ヘキサン800mlで反応生成物を抽出した。その反応生成物を含む有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液600mlで洗浄し、続いてMgSO4で乾燥した。MgSO4をろ別した後、溶媒をエバポレートして得られたオイルを−78℃に冷却して固体を析出させ、それをろ過で回収し、エタノール300mlで洗浄した。減圧下で乾燥して、4,4'-ジ-t-ブチルジフェニルメタンを得た。その収量は18.9gであった。
(2)2,2'-ジヨード-4,4'-ジ-t-ブチルジフェニルメタンの合成
磁気撹拌子を備えた200ml容量のフラスコに、4,4'-ジ-t-ブチルジフェニルメタン1.95(6.96mmol)とHIO40.78g(3.48mmol)、I21.55g(6.12mmol)、concH2SO40.48mlを入れた。これに酢酸17.5ml、水3.75mlを加え、撹拌しながら90℃に加熱し5時間反応させた。反応液を氷水50ml中に注ぎ、(C252Oで反応生成物を抽出した。その反応生成物を含む有機層を飽和NaHSO4水溶液100mlで洗浄し、続いてNa2CO3を添加し、撹拌後Na2CO3をろ別した。さらに有機層を水800mlで洗浄後、Mg2SO4を加えて乾燥した。Mg2SO4をろ別した後、溶媒を留去して黄色オイルを得た。この黄色オイルをカラムクロマトグラフィーにより精製し、2,2'-ジヨード-4,4'-ジ-t-ブチルジフェニルメタンを得た。その収量は3.21gであった。
(3)3,6-ジ-t-ブチルフルオレンの合成
50ml容量の二口フラスコに、2,2'-ジヨード-4,4'-ジ-t-ブチルジフェニルメタン3.21g(6.03mmol)、銅粉2.89g(47.0mmol)を入れ、230℃に加熱し、撹拌しながら5時間反応させた。反応生成物をアセトンで抽出し、溶媒を留去し、赤褐色オイルを得た。この赤褐色オイルからカラムクロマトグラフィーにより薄黄色のオイルを得た。未反応原料を含むフラクションは再度カラムにかけて目的物のみ回収した。メタノールで再結晶して白色固体の3,6-ジ-t-ブチルフルオレンを得た。その収量は1.08gであった。
(4)1-tert-ブチル-3-メチルシクロペンタジエンの合成
窒素雰囲気下で、濃度2.0mol/lのtert-ブチルマグネシウムクロライド/ジエチルエーテル溶液(450ml、0.90mol)に脱水ジエチルエーテル(350ml)を加えた溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら3-メチルシクロペンテノン(43.7g、0.45mmol)の脱水ジエチルエーテル(150ml)溶液を滴下し、さらに室温で15時間撹拌した。反応溶液に塩化アンモニウム(80.0g、1.50mol)の水(350ml)溶液を、氷冷下で0℃を保ちながら滴下した。この溶液に水(2500ml)を加え撹拌した後、反応生成物を含む有機層を分離して水で洗浄した。この有機層に、氷冷下で0℃を保ちながら10%塩酸水溶液(82ml)を加えた後、室温で6時間撹拌した。この反応液の有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(乾燥剤)で乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(45〜47℃/10mmHg)することにより14.6gの淡黄色の液体(1-tert-ブチル-3-メチルシクロペンタジエン)を得た。その分析値を以下に示す。
【0144】
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ6.31+6.13+5.94+5.87(s+s+t+d、2H)、
3.04+2.95(s+s、2H)、2.17+2.09(s+s、3H)、
1.27(d、9H)
(5)3-tert-ブチル-5,6,6-トリメチルフルベンの合成
窒素雰囲気下で1-tert-ブチル-3-メチルシクロペンタジエン(13.0g、95.6mmol)の脱水メタノール(130ml)溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら脱水アセトン(55.2g、950.4mmol)を滴下し、さらにピロリジン(68.0g、956.1mmol)を滴下した後、室温で4日間撹拌した。反応液をジエチルエーテル(400ml)で希釈した後、水400mlを加えた。反応生成物を含む有機層を分離し、0.5Nの塩酸水溶液(150ml×4)、水(200ml×3)、飽和食塩水(150ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(乾燥剤)で乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(70〜80℃/0.1mmHg)することにより10.5gの黄色の液体(3-tert-ブチル-5,6,6-トリメチルフルベン)を得た。その分析値を以下に示す。
【0145】
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ6.23(s、1H)、6.05(d、1H)、2.23(s、3H)、
2.17(d、6H)、1.17(s、9H)
(6)2-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)-2-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)プロパンの合成
3,6-ジ-tert-ブチルフルオレン(0.9g、3.4mmol)のTHF(30ml)溶液に、氷冷下でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.1ml、3.4mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で6時間撹拌した。さらに、氷冷下で、この赤色溶液に3-tert-ブチル-5,6,6-トリメチルフルベン(0.6g、3.5mmol)のTHF(15ml)溶液を窒素雰囲気下で滴下し、室温で12時間撹拌した後に水30mlを加えた。ジエチルエーテルで抽出、分離した反応生成物を含む有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去して固体を得た。この固体を熱メタノールから再結晶して1.2gの淡黄色の固体(2-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)-2-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)プロパン)を得た。その分析値を以下に示す。
【0146】
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ7.72(d、2H)、7.18−7.05(m、4H)、6.18−5.99(s+s、1H)、4.32−4.18(s+s、1H)、3.00−2.90(s+s、2H)、2.13−1.98(t+s、3H)、1.38(s、18H)、1.19(s、9H)、1.10(d、6H)
(7)ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドの合成
氷冷下で、2-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)-2-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)プロパン(1.3g、2.8mmol)のジエチルエーテル(40ml)溶液にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(3.6ml、5.8mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で16時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧下で除去して赤橙色の固体を得た。この固体に−78℃でジクロロメタン150mlを加えて撹拌溶解し、次いで、この溶液を−78℃に冷却したジルコニウムテトラクロライド(THF)2錯体(1.0g、2.7mmol)のジクロロメタン(10ml)懸濁液に加え、−78℃で6時間撹拌し、室温で一昼夜撹拌した。この反応溶液から溶媒を減圧下で除去し、オレンジ色の固体を得た。さらに、この固体をトルエンで抽出、セライト濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去した後、ジエチルエーテルから再結晶し0.18gのオレンジ色の固体(ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド)を得た。その分析値を以下に示す。
【0147】
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)
δ7.98(dd、2H)、7.90(d、1H)、7.69(d、1H)、
1.32−7.25(m、2H)、6.01(d、1H)、5.66(d、1H)、2.54(s、3H)、2.36(s、3H)、2.28(s、1H)、1.43(d、18H)、1.08(s、9H)
<ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドの合成>
Organometallics,13,954(1994)に記載の方法に従って、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドを合成した。
[プロピレン系ブロック共重合体(A−1)の製造]
ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドが2重量%、およびメチルアルミノキサンが38重量%担持されたシリカ担持触媒0.33gを、充分に窒素置換した100ml容量の二つ口フラスコ中に入れ、ヘプタン40mlに懸濁させた。次いで、その懸濁液に、トリイソブチルアルミニウム(1ミリモル)を加え、30分攪拌して触媒懸濁液とした。
【0148】
次いで、充分に窒素置換した内容積20リットルのオートクレーブに、プロピレン5kgと水素3リットルを装入し、上記の触媒懸濁液を添加し、3.0〜3.5MPaの圧力下、70℃で40分バルクホモ重合を行なった。
ホモ重合終了後、ベントバルブを開け、未反応のプロピレンを重合器内圧力が常圧になるまで脱圧した。脱圧終了後、引き続いてエチレンとプロピレンとの共重合を行なった。すなわち、エチレン/プロピレン混合ガス(エチレン25モル%、プロピレン75モル%)を、重合器内の圧力が1MPaとなるように重合器のベント開度を調節しながら連続的に供給し、70℃で60分間重合を行なった。その後メタノールを加えて重合を停止し、重合器内の未反応ガスのプロピレンをパージした後、真空下80℃で6時間乾燥してプロピレン系ブロック共重合体(A−1)を得た。
【0149】
得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−1)の収量は2.9kgであった。この共重合体(A−1)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が42g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量が11重量%であり、n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.2dl/gであり、エチレン含有量が41モル%であった。
【0150】
また、このプロピレン系ブロック共重合体(A−1)のプロピレン単独重合体部(常温n−デカン不溶成分)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が60g/10分であり、Mw/Mnが2.0であり、常温n−デカン可溶成分量が0.2重量%であり、融点(Tm)が158℃であった。さらに、プロピレン単独重合体部の立体規則性は、mmmm分率が95.8%であり、2,1-挿入と1,3-挿入は共に検出されなかった。
【0151】
ここで、各段で得られた重合体の量、組成、分子量、立体規則性などの固定は、次のようにして行なった。まず、プロピレン系ブロック共重合体(A−1)を150℃のn−デカンで2時間熱処理し、室温まで冷却した後に析出した固体成分をろ過した。このとき得られた固体成分を、1段目で得られたプロピレン単独重合体とした。また、ろ液を減圧下で濃縮・乾固して得られた成分をn−デカン可溶成分とした。それぞれの成分につき、従来の方法に従い、各種の分析を行なった。
[ポリオレフィン樹脂組成物の製造]
上記のようにして得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−1)と、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(C−1)[EBR;エチレン含量=80モル%、MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)=7g/10分]と、タルク(B−1)[無機充填剤、富士タルク工業(株)製、K−1(商標)、平均粒子径2μm]と、ロジン酸系造核剤として荒川化学工業(株)製のパインクリスタルKM1510(商品名)と、Irganox 1010(商標)[フェノール系酸化防止剤、チバガイギー社製]と、Irgafos 168(商標)[リン系酸化防止剤、チバガイギー社製]と、ステアリン酸マグネシウムと、塩酸吸収剤としてハイドロタルサイトと、サノール LS-770(商標)[HALS系耐光安定剤;三共製薬社製)]と、チヌビン 120(商標)[紫外線吸収剤(チバガイギー社製)]とを表1に示した配合割合でタンブラー型混合機にて混合した後、二軸押出機で溶融混練してペレット化した。
【0152】
このようにして得られたポリオレフィン樹脂組成物から、射出成形機[(株)名機製作所製、M−200A II−SJ−MJ]を用いて平板(100mm×350mm×2mm厚)を射出成形し、フローマークを目視にて観察した。
フローマークが目立たないものを○、目立ちやすいものを△、非常に目立つものをXで評価、表示した。
【0153】
また、射出成形機[(株)東芝機械製、IS100]を用いて、ASTM試験片を射出成形し、各種物性を測定した。結果を表1に示す。
物性の測定方法は次の通りである。
[引張特性]
引張特性は、ASTM D638-84に準拠して引張試験を行なって引張伸びを下記の条件で測定した。
<試験条件>
試験片:ASTM D638−84 No.1ダンベル
チャック間距離:114mm
温 度:23℃
引張速度:10mm/分
[曲げ特性]
曲げ特性は、ASTM D−790に準拠して、下記の条件にて曲げ試験を行なって曲げ弾性率を求めた。
<試験条件>
試験片:6.4mm(厚さ)×12.7mm(幅)×127mm(長さ)
スパン間:100mm
曲げ速度:2mm/分
測定温度:23℃
[アイゾット衝撃強度]
アイゾット衝撃強度は、ASTM D−256に準拠して、下記の条件にて衝撃試験を行なって求めた。
<試験条件>
試験片:12.7mm(幅)×6.4mm(厚さ)×64mm(長さ)
ノッチ:機械加工
測定温度:23℃、−30℃
なお、フローマーク観察およびASTM試験に供した試験片の射出成形条件は、次の通りである。
<射出成形条件>
フローマーク観察;樹脂温度190℃、金型温度40℃、射出速度8%、射出圧力65%、冷却時間20秒
ASTM試験片;樹脂温度190℃、金型温度40℃、射出速度25%、射出圧力30%、冷却時間20秒
【0154】
【実施例2】
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(C−1)およびタルク(B−1)の配合比を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0155】
【比較例1】
実施例1において、ロジン酸系造核剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0156】
【比較例2】
実施例2において、ロジン酸系造核剤を用いなかった以外は、実施例2と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例2と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0157】
【比較例3】
実施例1において、ロジン系造核剤の代わりにリン系造核剤として多用されているアデカスタブNA11(商標)[旭電化工業(株)製]を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0158】
【比較例4】
実施例2において、ロジン系造核剤の代わりにリン系造核剤として多用されているアデカスタブNA11(商標)[旭電化工業(株)製]を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例2と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0159】
【実施例3】
[プロピレン系ブロック共重合体(A−2)の製造]
実施例1において、メタロセン化合物としてジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド70mgを用いた以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)を得た。
【0160】
上記のようにして得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−2)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が40g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量が11.0重量%であり、n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.2dl/gであり、エチレン含有量が41モル%であった。
【0161】
また、このプロピレン系ブロック共重合体(A−2)のプロピレン単独重合体部(常温n−デカン不溶成分)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が58g/10分であり、Mw/Mnが2.3であり、常温n−デカン可溶成分量が0.6重量%であり、融点(Tm)が148℃であった。さらに、プロピレン単独重合体部の立体規則性は、mmmmが95.9%であり、2,1-挿入の割合が0.80%であり、1,3-挿入の割合が0.05%であり、2,1-挿入の割合が多かった。また、融点(Tm)が148℃であった。
【0162】
ここで、各段で得られた重合体の量、組成、分子量、立体規則性などの固定は、実施例1と同様にして行なった。
[ポリオレフィン樹脂組成物の製造]
実施例1において、このプロピレン系ブロック共重合体(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0163】
【実施例4】
実施例2において、プロピレン系共重合体(A−1)の代わりにプロピレン系共重合体(A−2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例2と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0164】
【比較例5】
[チーグラーナッタ触媒により製造したプロピレン系ブロック共重合体の物性]塩化マグネシウム担持チタン触媒により得られた市販のプロピレン系ブロック共重合体(A−3)[商品名:J708、(株)グランドポリマー製]の物性を以下に示す。
【0165】
このプロピレン系ブロック共重合体(A−3)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が40g/10分であり、常温n−デカン可溶成分量が11重量%であり、n−デカン可溶成分の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.5dl/gであり、エチレン含有量が40モル%であった。
また、このプロピレン系ブロック共重合体(A−3)のプロピレン単独重合体部(常温n−デカン不溶成分)は、MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が60g/10分であり、Mw/Mnが4.4であり、常温n−デカン可溶成分量が2.0重量%であり、融点(Tm)が160℃であった。さらに、プロピレン単独重合体部の立体規則性は、mmmmが96.5%であり、2,1-挿入と1,3-挿入は共に検出されなかった。
[ポリオレフィン樹脂組成物の製造]
実施例1において、このプロピレン系ブロック共重合体(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を製造し、その物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0166】
【比較例6】
実施例2において、プロピレン系共重合体(A−1)の代わりにプロピレン系共重合体(A−3)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。この組成物を実施例2と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0167】
【表1】
Figure 0004463446
【0168】
【表2】
Figure 0004463446

Claims (5)

  1. メタロセン触媒を用いて調製された、プロピレン単独重合体部とプロピレン・α- オレフィンランダム共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体(A)と、
    無機充填剤(B)と、
    エラストマー(C)と、
    ロジン酸系造核剤(D)とを含有してなり、
    該プロピレン系ブロック共重合体(A)のプロピレン単独重合体部は、
    (i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が0.01〜1000g/10分の範囲にあり、
    (ii)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であり、
    該共重合体(A)と該無機充填剤(B)との含有量は、重量比[(A)/(B)]で50/50〜98/2であり、
    該エラストマー(C)の含有量は、共重合体(A)および無機充填剤(B)の合計量100重量%に対して70重量%以下の量であり、
    該ロジン酸系造核剤(D)の含有量は、プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して0.001〜5重量部であることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物からなる射出成形品
  2. 前記プロピレン系ブロック共重合体(A)のプロピレン単独重合体部は、13C−NMRスペクトルから求められる、全プロピレン構成単位中のプロピレンモノマーの2,1-挿入あるいは1,3-挿入に基づく位置不規則単位の割合がいずれも0.2%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物からなる射出成形品
  3. 前記メタロセン触媒を形成するメタロセン化合物触媒成分が、下記一般式(4)または(5)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物からなる射出成形品
    Figure 0004463446
    (式中、R3は、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
    1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
    1ないしR12で示される基のうち、隣接した基は互いに結合して環を形成してもよく、一般式(4)の場合はR1、R4、R5およびR12から選ばれる基とR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよく、
    Aは、不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
    Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
    Mは、周期表第4族から選ばれた金属を示し、
    jは、1〜4の整数であり、
    Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、jが2以上のときはQは互いに同一でも異なっていてもよい。)。
  4. 前記無機充填剤(B)がタルクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物からなる射出成形品
  5. 自動車部品用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物からなる射出成形品
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