JP5195761B2 - 車両用シートのリクライニング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用シートのリクライニング装置に関する。詳しくは、車両用シートのシートバックをシートクッション或いはフロア等の固定体に対して背凭れ角度調整可能に連結する車両用シートのリクライニング装置に関する。
従来、車両用シートにおいて、シートバックがリクライニング装置を介してシートクッションと連結されており、その背凭れ角度の調整操作が行えるようになっているものが知られている。ここで、特開2007−130237号公報には、上述したリクライニング装置の具体的な構成が開示されている。この開示では、リクライニング装置は、シートバックの骨格部に一体的に連結される円盤形状のラチェットと、シートクッションの骨格部に一体的に連結される円盤形状のガイドとを有し、これらが互いに相対回転可能に支え合うように軸方向に組み付けられて構成されている。
そして、上述したラチェットとガイドとの間には、外周部に外歯を有したポールが配設されている。このポールは、ガイドに対して半径方向の内外方にのみ移動可能となるように支持されている。そして、ポールは、ガイドの中心部に組み付けられたスライドカムの移動操作によって半径方向の外方側に押し出されることにより、その外周歯面をラチェットに突出形成された円筒部の内周歯面に噛合させて、ラチェットとガイドとの間の相対回転をロックするようになっている。
詳しくは、上述したポールを半径方向の外方側に押し出し操作するスライドカムは、常時はポールを外側に押し出す作動方向にバネ附勢されており、係る押付け力によって、ポールをラチェットに噛合させた状態に保持するロック強度を担保するようになっている。
上記開示の従来技術では、シートバックに重量物が衝突するなどして強制的な回転変位を伴わせる大荷重が入力されると、かかる荷重は、噛合によりロック状態に保たれているラチェットを強制的に回転変位させる強制力として作用する。そして、この強制力は、ポールをラチェットとの噛合状態から抜き外したり円周方向に一緒に引き連れたりする強制力として作用する。これにより、スライドカムによるポールの支持構造が崩れてしまい、シートバックに入力された大荷重を支えるためのロック強度が十分に発揮されなくなってしまうことがある。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、リクライニング装置のロック強度を向上させることにある。
すなわち、本発明の車両用シートのリクライニング装置は、車両用シートのシートバックをシートクッション或いはフロア等の固定体に対して背凭れ角度調整可能に連結する車両用シートのリクライニング装置である。この車両用シートのリクライニング装置は、二枚の連結部材と、係合歯と、押圧カムとを有する。二枚の連結部材は、シートバック或いは固定体にそれぞれ一体的に連結されて、互いに相対回転可能に盤合わせ方向に組み付けられる円盤状部分を有する構成となっている。係合歯は、二枚の連結部材の間に挟まれて配置され、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として、他方側の連結部材に形成された内周歯面に外周歯面を噛合させることにより、両連結部材間の相対回転をロックする構成となっている。押圧カムは、係合歯を附勢による移動によって半径方向の外方側に押圧して他方側の連結部材に形成された内周歯面に噛合させるようになっている。係合歯の硬度は、押圧カムよりも高く設定されている。係合歯は、他方側の連結部材との噛合状態で、他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより、他方側の連結部材によって噛合から外される半径方向の内方側に押圧されて、押圧カムをその高められた座屈強度をもって押圧し塑性変形させるようになっている。
この発明の構成によれば、シートバックに重量物が衝突するなどして他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴わせる大荷重が入力されると、係合歯は、他方側の連結部材によって噛合から外される方向に押圧力を受ける。しかし、この押圧力は、係合歯が押圧カムを押圧して塑性変形させることによって支えられる。詳しくは、係合歯は、押圧カムよりも高い硬度をもって形成されており、座屈を伴うことなく押圧カムを塑性変形させることで、押圧カムによって支えられた状態を維持しながら大荷重を受け止めることができる。このように、係合歯が座屈を伴うことなく押圧カムによって支えられた状態を維持できる構成としたことにより、リクライニング装置のロック強度を向上させることができる。
また、本発明は、次のように構成されていてもよい。すなわち、押圧カムは、一方側の連結部材に対して係合歯の移動方向とは垂直な方向に移動可能に組み付けられている。押圧カムは、他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されて係合歯からの押圧力を受けることにより、円周方向に押し回されて一方側の連結部材を塑性変形させるようになっている。
この発明の構成によれば、押圧カムは、他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより、係合歯によって円周方向に押し回されて、一方側の連結部材を塑性変形させる。このように、押圧カムによっても一方側の連結部材を塑性変形させて上記した大荷重を受け止められる構成としたことにより、リクライニング装置のロック強度を一層向上させることができる。
また、本発明は、次のように構成されていてもよい。すなわち、係合歯は、一方側の連結部材に形成された第1の案内壁によって、特定の半径方向にのみ移動可能となるように支えられている。そして、押圧カムも、一方側の連結部材に形成された第2の案内壁によって、係合歯の移動方向とは異なる特定の半径方向にのみ移動可能となるように支えられている。他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより、係合歯が同回転方向に押し回されて、隣接する第1の案内壁を押圧して塑性変形させると共に、押圧カムが係合歯の回転移動に伴う押圧力を受けることにより、同回転方向に押し回されて、隣接する第2の案内壁を押圧して塑性変形させるようになっている。
この発明の構成によれば、他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより、係合歯がこれに隣接する第1の案内壁を押圧して塑性変形させ、更に、押圧カムがこれに隣接する第2の案内壁を押圧して塑性変形させる。このように、係合歯と押圧カムとがそれぞれに一方側の連結部材を塑性変形させて上記した大荷重を受け止める構成としたことにより、リクライニング装置のロック強度を一層向上させることができる。
また、本発明は、次のように構成されていてもよい。すなわち、係合歯は、その半径方向の内周部の形状が、一部肉抜きされた門型形状に形成されている。そして、この門型の両脚部が、押圧カムとの当接により半径方向の外方側に押圧される受圧部として形成されている。
この発明の構成によれば、係合歯は、門型に形成されていることでその両脚部が座屈しやすい構成となっているが、他方側の連結部材や押圧カムとの間の強度関係により、座屈を伴うことなく入力された大荷重を受け止めることができる。
実施例1のリクライニング装置の分解斜視図である。 車両用シートの概略構成を表した斜視図である。 リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。 リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。 図4のV-V線断面図である。 リクライニング装置のロック状態を表した図3のVI-VI線断面図である。 図6の状態からリクライニング装置のロック状態を解除した状態を表した断面図である。 図6の状態からリクライニング装置が大荷重の入力によって変形した状態を表した断面図である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
始めに、実施例1の車両用シート1のリクライニング装置4,4の構成について、図1〜図8を用いて説明する。ここで、図2には、本実施例の車両用シート1の概略構成が示されている。この車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2が、その左右両サイドの下部位置に配設された左右一対のリクライニング装置4,4によって、着座部となるシートクッション3と連結されている。これらリクライニング装置4,4は、互いのロック解除の切換え操作を行う操作軸4c,4cが連結ロッド4rによって互いに一体的に連結されて構成されている。
これにより、各リクライニング装置4,4は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態と、この固定状態を解除してシートバック2の背凭れ角度調整を行えるようにする解除状態とに一斉に切換え操作されるようになっている。ここで、各リクライニング装置4,4は、常時は附勢によってロックした作動状態に保持されている。そして、各リクライニング装置4,4は、シートクッション3の側部位置に設けられた操作レバー5の引き上げ操作を行うことにより、それらのロック状態が一斉に解除操作される。
これにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれるため、その背凭れ角度の調整操作を行える状態となる。そして、シートバック2の背凭れ角度を調整し、操作レバー5の解除操作をやめることにより、各リクライニング装置4,4が再び附勢によってロック状態に戻されるため、シートバック2がその調整された背凭れ角度位置に固定される。
ここで、シートバック2は、シートクッション3との間に掛着された図示しない附勢ばねの附勢力によって、常時は前倒しの回転方向に附勢されている。したがって、車両用シート1が着座使用されていない状態で、上述した各リクライニング装置4,4のロック状態を解除することにより、シートバック2は附勢によって前倒しされて、シートクッション3の上面部に畳み込まれることとなる。
このとき、各リクライニング装置4,4は、通常、シートバック2が背凭れとして使用される角度領域にある時には、操作レバー5の解除操作をやめることにより、附勢によってロック状態に戻される。しかし、各リクライニング装置4,4の回転角度領域には、上記した解除操作をやめることで附勢によってロック状態に戻されるロックゾーンの角度領域と、解除操作をやめてもロック状態には戻されないフリーゾーンの角度領域とが設定されている。
前者のロックゾーンは、通常、シートバック2が背凭れ使用される角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から後方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。そして、後者のフリーゾーンは、シートバック2が背凭れ使用されることのない前倒れ姿勢の角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から前方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。
したがって、シートバック2を前倒しする時には、各リクライニング装置4,4のロック状態を解除して、シートバック2が直立姿勢から少しでも前に傾けば、あとは解除操作をやめてしまっても、シートバック2はシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで自然と倒し込まれていく。以下、上述した各リクライニング装置4,4の構成について詳しく説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いに左右対称の構成となっているが、実質的には同じ構成となっている。したがって、以下ではこれらを代表して、図2の紙面向かって右側に示されているリクライニング装置4の構成についてのみ説明をする。
このリクライニング装置4は、図1に示されるように、円盤形状のラチェット10及びガイド20と、これらの円盤面の間に挟まれて配置される上下一対のポール30,30及びスライドカム40と、このスライドカム40をスライド操作するためのヒンジカム50と、このヒンジカム50を回転附勢するための附勢ばね60と、ラチェット10及びガイド20を互いに板厚方向(軸方向)に挟み込んだ状態に保持するための外周リング70とが一つに組み付けられて構成されている。
ここで、ガイド20が本発明の一方側の連結部材に相当し、ラチェット10が本発明の他方側の連結部材に相当し、ポール30,30が本発明の係合歯に相当し、スライドカム40が本発明の押圧カムに相当する。以下、上記した各部品の構成について更に詳しく説明をする。先ず、ラチェット10の構成について説明する。
すなわち、ラチェット10には、その円盤部11の外周縁において、板厚方向に円筒状に突出する円筒部12が形成されている。この円筒部12は、円盤部11の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。そして、この円筒部12の内周面には、内歯12aの形成された歯面と歯のない平坦な乗り上げ部12b,12bとが円周方向に並んで形成されている。ここで、乗り上げ部12b,12bは、円筒部12の内周面上の軸対称となる二箇所の位置に形成されており、それぞれ、内周面が内歯12aよりも半径方向内方側に突出した平坦な湾曲面とされて形成されている。
上記した乗り上げ部12b,12bは、図6に示されるように、いずれのポール30,30とも干渉しない円周方向の配置状態の時には、各ポール30,30がラチェット10の内歯12aと噛合する半径方向外方側へのロック移動を許容する。したがって、これら乗り上げ部12b,12bと各ポール30,30とが干渉しない円周方向の回転角度領域が、各ポール30,30とラチェット10の内歯12aとの噛合が許容されるロックゾーンとして設定される。
しかし、乗り上げ部12b,12bは、各ポール30,30と干渉する円周方向の配置状態となることにより、各ポール30,30がラチェット10の内歯12aと噛合しようとするロック作動が、各乗り上げ部12b,12bへの乗り上げによって阻止される。したがって、これら乗り上げ部12b,12bと各ポール30,30とが干渉する円周方向の回転角度領域が、各ポール30,30とラチェット10の内歯12aとの噛合が阻止されるフリーゾーンとして設定されることとなる。
ところで、上記したラチェット10は、図3に示されるように、その円盤部11の外盤面が、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fの板面と接合されることによって、シートバック2と一体的に連結されている。ここで、ラチェット10の円盤部11には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ13a・・やDダボ13bが形成されている。これらダボ13a・・やDダボ13bは、円盤部11のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並んで配置形成されている。
このうち、Dダボ13bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ13a・・とは形状が区別されるようになっている。一方、バックフレーム2fには、上述したダボ13a・・やDダボ13bを嵌合させることのできるダボ孔2a・・やDダボ孔2bが貫通形成されている。したがって、これらダボ13a・・やDダボ13bを、バックフレーム2fに形成されたダボ孔2a・・やDダボ孔2bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ラチェット10がバックフレーム2fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
そして、このラチェット10の円盤部11の中心には、前述したリクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔14が形成されている。そして、バックフレーム2fにも、この貫通孔14と同軸線上の位置に、同じ目的の貫通孔2cが形成されている。
次に、図1に戻って、ガイド20の構成について説明する。このガイド20は、ラチェット10よりもひとまわり大きな外径をもった円盤型形状に形成されている。そして、このガイド20の円盤部21の外周縁には、ラチェット10への組み付け方向となる板厚方向に円筒状に突出する円筒部22が形成されている。この円筒部22は、円盤部21の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。この円筒部22は、図5に示されるように、ラチェット10の円筒部12を外周側から囲い込むことのできる大きさに形成されている。
そして、この円筒部22の筒内にラチェット10の円筒部12が組み付けられた状態では、ガイド20とラチェット10とは、互いの円筒形状を内外に嵌合させた状態として、互いに摺動し合って相対回転することのできる状態とされる。このガイド20は、図4に示されるように、その円盤部21の外盤面が、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fの板面と接合されることによって、シートクッション3と一体的に連結されている。
ここで、ガイド20の円盤部21には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ24a・・やDダボ24bが形成されている。これらダボ24a・・やDダボ24bは、円盤部21のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並んで配置形成されている。このうち、Dダボ24bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒状に突出したダボ24a・・とは形状が区別されるようになっている。
一方、クッションフレーム3fには、上述したダボ24a・・やDダボ24bを嵌合させることのできるダボ孔3a・・やDダボ孔3bが貫通形成されている。したがって、これらダボ24a・・やDダボ24bを、クッションフレーム3fに形成されたダボ孔3a・・やDダボ孔3bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ガイド20がクッションフレーム3fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
そして、このガイド20の円盤部21の中心には、リクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔25が形成されている。そして、クッションフレーム3fにも、この貫通孔25と同軸線上の位置に、同じ目的の貫通孔3cが形成されている。この貫通孔3cは、後述する附勢ばね60もその孔内部に収め入れられるように形状が大きく形成されている。
そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、その内盤面が板厚方向に「十」符号状に凹んだガイド溝23が形成されている。このガイド溝23は、円盤部21が「十」符号状に板厚方向に半抜き加工されることによって形成されている。ここで、前述したダボ24a・・やDダボ24bは、このガイド溝23が形成された外盤面上の位置にそれぞれ突出して形成されている。
このガイド溝23は、その図示向かって上側と下側の溝部が、後述する各ポール30,30をそれぞれ内部に収め入れることのできるポール溝23a,23aとして形成されている。これらポール溝23a,23aは、図7に示されるように、その左右両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21bや案内壁21c,21dの形状により、各ポール30,30をそれらの溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示上下方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。
そして、ガイド溝23の横方向に延びる図示向かって右側と左側とその間の溝部は、後述するスライドカム40を内部に収め入れることのできるスライドカム溝23bとしてひとつなぎに形成されている。このスライドカム溝23bは、その上下両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21cや案内壁21b,21dの形状により、スライドカム40をその溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示左右方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。
そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、外盤面からピン形状に突出するばね掛部26,26が形成されている。これらばね掛部26,26は、後述する附勢ばね60(巻きばね)の外端62を掛着させるための機能部品となっており、その掛着位置を選択できるように円周方向の二箇所に形成されている。
次に、ポール30,30の構成について説明する。これらポール30,30は、前述したガイド20に形成された各ポール溝23a,23aの内部に半径方向にスライド可能な状態に収容される駒形状に形成されている。これらポール30,30は、熱間圧延鋼板(S28C)を一般熱処理(焼き入れ・焼き戻し)することにより、表面が耐摩耗性に優れた硬い状態に仕上げられていると共に、内部も硬く、かつ、靭性に富んだ状態に仕上げられている。
これらポール30,30は、互いに上下対称な形状に形成されている。具体的には、各ポール30,30は、それらの半径方向外方側の外周縁が、前述したラチェット10の円筒部12の内周面と合致する円弧状に湾曲した形状とされており、その湾曲した外周面には、ラチェット10の内歯12aと噛合可能な外歯30a,30aが形成されている。したがって、各ポール30,30は、図6に示されるように、後述するスライドカム40に押圧されて半径方向外方側にスライド操作されることにより、各外歯30a,30aをラチェット10の内歯12aと噛合させた状態となる。
これにより、各ポール30,30とラチェット10とは、互いの噛合によって、円周方向に一体的な状態となる。しかし、各ポール30,30は、ガイド20との関係においては、案内壁21a,21bや案内壁21c,21dによるガイドによって、半径方向の内外方にしかスライドできないようになっている。したがって、ラチェット10は、各ポール30,30を介して、ガイド20に対する相対回転が規制された状態となる。
これにより、リクライニング装置4が回転ロックされた状態となる。このリクライニング装置4の回転ロック状態は、図7に示されるように、各ポール30,30が半径方向内方側に引き込まれて、ラチェット10との噛合から外されることによって解除されるようになっている。
ここで、各ポール30,30を半径方向の外方側に押し出したり内方側に引き込んだりする操作は、ポール30,30の間に配設されたスライドカム40のスライド操作によって行われる。このスライドカム40は、図1に示されるように、前述したガイド20に形成されたスライドカム溝23bの内部に収容される駒形状に形成されている。このスライドカム40は、熱間圧延鋼板(S28C)を一般熱処理(焼き入れ・焼き戻し)することにより、表面が耐摩耗性に優れた硬い状態に仕上げられていると共に、内部も硬く、かつ、靭性に富んだ状態に仕上げられている。
しかし、スライドカム40は、その焼き戻し時の温度条件を、上述したポール30,30の焼き戻し時の温度条件とは変えることによって、ポール30,30よりは軟らかく仕上げられている。このスライドカム40は、上下対称な形状に形成されている。具体的には、スライドカム40には、その図示上下側の縁部に、各ポール30,30を半径方向外方側に押し出すことのできる肩部42,42と、各ポール30,30を半径方向内方側に引き込むことのできるフック44,44とが形成されている。
ここで、前述した各ポール30,30は、その半径方向の内周部の形状が一部肉抜きされた門型形状に形成されている。そして、各ポール30,30は、その門型の両脚をなす脚部32,32をそれぞれスライドカム40の上縁面と下縁面とに当接させた状態に組み付けられており、スライドカム40がスライド操作される動きによって、半径方向の外方側に押し出し操作されるようになっている。
具体的には、図6に示されるように、各ポール30,30は、スライドカム40が図示左方側にスライド操作されることにより、各脚部32,32がスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げる態様で半径方向外方側に押し出された状態となって保持される。これにより、各ポール30,30は、各外歯30a,30aをラチェット10の内歯12aに噛合させた状態となって保持される。
一方、各ポール30,30は、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されることにより、その門型の内周部に形成された各掛部31,31にスライドカム40の各フック44,44が引掛けられて、半径方向内方側に引き込まれる。これにより、各ポール30,30は、前述したスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げていた各脚部32,32が、その左脇位置にある溝部43,43の内部へと引き込まれて、ラチェット10との噛合状態から外される。
これら溝部43,43は、各肩部42,42から滑らかに凹み込む形状に形成されている。したがって、この図7に示された状態から、スライドカム40が図示左方側にスライド操作されることにより、各ポール30,30の脚部32,32が、各溝部43,43の形状に沿って移動して、各肩部42,42に乗り上げた状態となる(図6参照)。
ところで、前述したスライドカム40を図示左右方向にスライドさせる操作は、スライドカム40の中央部に貫通形成されたカム孔41の内部に組み付けられたヒンジカム50の回転操作によって行われる。このヒンジカム50は、図1に示されるように、スライドカム40の中心部に貫通形成されたカム孔41の内部に回転可能な状態に組み付けられている。このヒンジカム50は、ガイド20との間に掛着された附勢ばね60(巻きばね)の附勢力によって、常時は図1に示される時計回り方向に回転附勢されている。
ここで、附勢ばね60は、図4に示されるように、その内端61がヒンジカム50のばね掛部51に掛着されており、外端62がガイド20のばね掛部26に掛着されている。これにより、ヒンジカム50は、図6に示されるように、常時はその外周部に突出形成された操作突起52によって、スライドカム40をカム孔41の内周面側から押圧して図示左方側にスライドさせるようになっている。
そしてこれにより、各ポール30,30は、各脚部32,32がスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げた状態となって、ラチェット10の内歯12aと噛合ロックした状態に保持される。ここで、ヒンジカム50は、図2において前述した操作軸4cと一体的に連結されており、操作レバー5(図2参照)が引き上げ操作されることによって、図1において前述した附勢ばね60の附勢に抗した図示反時計回りに回転操作されるようになっている。
すなわち、ヒンジカム50は、上記した操作レバー5の引き上げ操作に伴って、図6の紙面内時計回り方向に回転操作される。これにより、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されて、各ポール30,30が、ラチェット10との噛合状態から外される。
次に、図1に戻って、外周リング70について説明する。この外周リング70は、薄い鋼板がリング状に打ち抜かれて軸方向に半抜き加工されることにより、図示右奥の一端側に、軸方向に面を向けたフランジ状の第1座面部71と第2座面部72とを段差状に有する円筒型形状に形成されている。ここで、図5に示されるように、第1座面部71は、外周リング70の円筒内にラチェット10を組み付けた際に、このラチェット10の円筒部12の外盤面に軸方向に対面するように形成されている。
そして、第2座面部72は、外周リング70の円筒内にガイド20を組み付けた際に、このガイド20の円筒部22の内盤面に面当接するように形成されている。そして、この第2座面部72の外周縁部からは、軸方向に円筒状に突出する円筒部が形成されており、この円筒部の先には、ラチェット10やガイド20の組み付け後に、半径方向内方側に折り曲げられてかしめ処理される折曲面部73が設定されている。
したがって、上記構成の外周リング70の円筒内にラチェット10を挿通することにより、ラチェット10は、その円筒部12の外盤面が、第1座面部71の内板面上に突出形成された各突部71a・・と点接触する位置で、外周リング70に対して軸方向の挿通位置が位置決めされた状態として組み付けられる。そして、この組み付けにより、ラチェット10は、その円筒部12の外周縁部が、外周リング70の第1座面部71と第2座面部72との繋ぎ部分である円筒部分によって囲い込まれた状態として組み付けられる。
そして次に、ラチェット10の円盤部11上にポール30,30やスライドカム40等の組み付け部品を組み付けて、次いで外周リング70の円筒内にガイド20を挿通することにより、ガイド20は、その円筒部22の内盤面が第2座面部72と面当接する位置で、外周リング70に対して軸方向の挿通位置が位置決めされた状態として組み付けられる。
そして、上記した組み付け後に、ガイド20の円筒部22の外盤面側に突出する円筒部の先(折曲面部73)を半径方向内方側に折り曲げて、円筒部22の外盤面にかしめることにより、外周リング70がガイド20に一体的に結合固定される。これにより、ラチェット10及びガイド20が、外周リング70によって軸方向に挟み込まれて外れ止めされた状態として組み付けられる。
ここで、図5を参照して、ラチェット10の円筒部12は、ポール30,30やスライドカム40等の組み付け部品を間に挟んで、ガイド20の円盤部21と外周リング70の第1座面部71との間に軸方向に僅かな隙間を有して組み付けられるようになっている。これにより、ラチェット10のガイド20に対する回転移動が外周リング70との摺動摩擦によって阻害されることなくスムーズに行えるようになっている。
上記構成のリクライニング装置4は、図6において前述したように、各ポール30,30とラチェット10とが噛合していることによって回転ロックされた状態に保たれている。この、各ポール30,30とラチェット10とが噛合ロックした状態では、シートバック2に着座者の背凭れ荷重が圧し掛けられてラチェット10に回転方向の荷重がかけられても、かかる荷重は、各ポール30,30を円周方向に支えているガイド20の案内壁21a,21b及び案内壁21c,21dの支持強度や、各ポール30,30を半径方向の内方側から支えているスライドカム40の支持強度によって支えられる。
しかし、図8に示されるように、車両後突が発生するなどして、シートバック2にその前面側や後面側に重量物の衝突に伴う大荷重が入力されると、リクライニング装置4には、ラチェット10をガイド20に対して強制的に回転変位させる大荷重が入力される。そして、これにより、ラチェット10と噛合状態となっている各ポール30,30は、ラチェット10と共に同方向に強制的に押し回されて、それらの回転方向に隣接して当てがわれている案内壁21a,21d(第1の案内壁)を押圧して塑性変形させる。
更に、各ポール30,30は、上記したラチェット10との一体的な回転変位に伴って、それらの一方の脚部32,32をスライドカム40の各肩部42,42に押し付けて、各肩部42,42を塑性変形させて凹ませる。このとき、各ポール30,30は、スライドカム40よりも高い硬度をもって形成されており、それらの脚部32,32の座屈を伴うことなくスライドカム40の各肩部42,42を押圧できるようになっている。
そして、上記した各ポール30,30からの押圧力を受けることにより、スライドカム40は、その軸対称位置に偶力を受けるかたちで押圧されて、各ポール30,30と同じ方向に強制的に押し回される。これにより、スライドカム40は、その回転方向に隣接して当てがわれている案内壁21b,21c(第2の案内壁)をそれぞれ押圧して塑性変形させる。
このように、リクライニング装置4は、ラチェット10に入力された強制的な回転変位を伴う大荷重を、各ポール30,30の脚部32,32の座屈変形を伴うことなく、各ポール30,30をガイド20の案内壁21a,21dやスライドカム40に押し付けてこれらを塑性変形させたり、スライドカム40を押し回して案内壁21b,21cに押し付けて塑性変形させたりして、支持することができる。
詳しくは、スライドカム40は、その焼き戻し時の温度条件の調整によって靭性が高められて形成されており、各ポール30,30の脚部32,32から強い押圧力の作用を受けても、亀裂を生じたり破断したりすることなく上記の押圧力を受け止められるようになっている。そして、これにより、リクライニング装置4は、ラチェット10に上記した強制的な回転方向の大荷重が入力されても、スライドカム40による各ポール30,30の脚部32,32の支持構造を崩すことなく、回転ロックした状態を維持できるようになっており、高いロック強度を備えた構成となっている。
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、リクライニング装置は、シートバックを車両フロアに対して背凭れ角度調整可能に連結する用途に用いられるものであってもよい。また、係合歯(ポール)は、一方側の連結部材(ガイド)に対する半径方向外方側への移動によって他方側の連結部材(ラチェット)の内歯と噛合するようになっていたが、一方側の連結部材(ガイド)に対する回転運動を伴った半径方向外方側への移動によって他方側の連結部材(ラチェット)の内歯と噛合する構成となっていてもよい。

Claims (4)

  1. 車両用シートのシートバックをシートクッション或いはフロア等の固定体に対して背凭れ角度調整可能に連結する車両用シートのリクライニング装置であって、
    前記シートバック或いは固定体にそれぞれ一体的に連結されて互いに相対回転可能に盤合わせ方向に組み付けられる円盤状部分を有する二枚の連結部材と、
    該二枚の連結部材の間に挟まれて配置され、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として他方側の連結部材に形成された内周歯面に外周歯面を噛合させることにより当該両連結部材間の相対回転をロックすることのできる係合歯と、
    該係合歯を附勢による移動によって半径方向の外方側に押圧して前記他方側の連結部材に形成された内周歯面に噛合させる押圧カムと、を有し、
    該係合歯の硬度は前記押圧カムよりも高く設定されており、該係合歯は前記他方側の連結部材との噛合状態で該他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより該他方側の連結部材によって噛合から外される半径方向の内方側に押圧され前記押圧カムをその高められた座屈強度をもって押圧し塑性変形させるようになっている車両用シートのリクライニング装置。
  2. 請求項1に記載の車両用シートのリクライニング装置であって、
    前記押圧カムは前記一方側の連結部材に対して前記係合歯の移動方向とは垂直な方向に移動可能に組み付けられており、該押圧カムは前記他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されて前記係合歯からの押圧力を受けることにより円周方向に押し回されて前記一方側の連結部材を塑性変形させるようになっている車両用シートのリクライニング装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのリクライニング装置であって、
    前記係合歯は前記一方側の連結部材に形成された第1の案内壁によって特定の半径方向にのみ移動可能となるように支えられており、前記押圧カムも前記一方側の連結部材に形成された第2の案内壁によって前記係合歯の移動方向とは異なる特定の半径方向にのみ移動可能となるように支えられており、前記他方側の連結部材に強制的な回転変位を伴う大荷重が入力されることにより前記係合歯が同回転方向に押し回されて隣接する前記第1の案内壁を押圧して塑性変形させると共に前記押圧カムが前記係合歯の回転移動に伴う押圧力を受けることにより同回転方向に押し回されて隣接する前記第2の案内壁を押圧して塑性変形させるようになっている車両用シートのリクライニング装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートのリクライニング装置であって、
    前記係合歯はその半径方向の内周部の形状が一部肉抜きされた門型形状に形成されており、該門型の両脚部が前記押圧カムとの当接により半径方向の外方側に押圧される受圧部として形成されている車両用シートの連結装置。
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