JP5130956B2 - 車両用シートの連結装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用シートの連結装置に関する。詳しくは、二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置に関する。
従来、車両用シートにおいて、シートバックがリクライニング装置を介してシートクッションと連結されており、その背凭れ角度の調整操作が可能とされた構成が知られている。ここで、下記特許文献1には、上記したリクライニング装置の構成が開示されている。この開示では、リクライニング装置は、シートバックの骨格部に一体的に連結される円盤状のラチェットと、シートクッションの骨格部に一体的に連結される円盤状のガイドとが、互いに回転可能に支え合うように軸方向に組み付けられた構成となっている。
そして、このラチェットとガイドとの間には、これらの相対回転をロックすることのできるポールが配設されている。このポールは、ガイドに対して半径方向の内外方にのみ移動可能となるように支えられている。そして、ポールは、その外周面に形成された外歯部を、ラチェットの円筒状に突出した筒部の内周面に形成された内歯部に噛合させることで、ラチェットとガイドとの間の相対回転をロックするようになっている。
特開2002−177083号公報
しかし、上記開示の従来技術では、ポールの外歯部は、ラチェットの内歯部に対する噛合や解除の動作がスムーズに行われるように、その両端側の構成歯が内歯部とは噛合しない切り欠かれた歯形形状に形成されている。このため、リクライニング装置が回転ロックされた状態で、車両衝突が発生するなどしてラチェットに強制的な回転変位力がかけられると、このラチェットの強制変位力を受け止めるための噛合強度が十分に発揮されなくなってしまうことがある。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートのリクライニング装置のように二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する連結装置にその回転ロック時に強制的な回転変位力が入力されても、かかる負荷応力を分散させて作用させられるようにすると共に高い支持強度でもってこれを受け止められるようにすることにある。
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの連結装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置であって、二つの連結部材とロック部材とを有する。二つの連結部材は、二つの対象部材の一方側或いは他方側にそれぞれ一体的に連結されて、互いに相対回転可能に組み付けられる。ロック部材は、二つの連結部材の間に挟み込まれて配置されており、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として、他方側の連結部材に形成された受け歯部に当て歯部を押し当てて噛合させることで両連結部材間の相対回転をロックすることのできる構成となっている。受け歯部と当て歯部との噛合は、各歯部を構成する円周方向に複数並ぶ構成歯同士が噛合して行われる。当て歯部における円周方向の少なくとも一方側の端部に形成された構成歯の歯形は、両歯部の噛合状態において、その円周方向の端部に向かう方向とは反対側の傾斜した歯面がこの歯面に噛合対応する受け歯部の構成歯の傾斜した歯面から円周方向に離間する切り欠かれた形状に形成されており、かつ、この切り欠き形成された構成歯の円周方向の端部に向かう方向側の傾斜した歯面がこの歯面に噛合対応する受け歯部の構成歯の傾斜した歯面と当接する歯形とされている。
この第1の発明によれば、他方側の連結部材に形成された受け歯部にロック部材の当て歯部を噛合させることにより、両連結部材の相対回転がロックされた状態となる。そして、この回転ロック状態で、車両衝突が発生するなどして、両連結部材の間に互いを相対回転させる強制的な回転力が入力されることにより、他方側の連結部材がロック部材との噛合力に抗して強制的に回転変位する。このとき、ロック部材の当て歯部は、他方側の連結部材が回転する回転方向側の端部に形成された切り欠き形状の構成歯を、他方側の連結部材の強制的な回転変位が進行してから、受け歯部の構成歯と当接させて噛合させる。したがって、他方側の連結部材の強制変位によって、ロック部材との噛合が途切れる円周方向の境界部分にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、複数の構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。また、この切り欠き状に形成された当て歯部の構成歯の歯形は、その切り欠き状の歯面とは反対側(端部に向かう方向側)の歯面が受け歯部の歯面と当接する歯幅のある形状とされている。したがって、かかる負荷応力を複数の構成歯に分散させて作用させることができると共に、切り欠き状に形成された構成歯にも高い支持強度を持たせて、高い支持強度でもってこれを受け止められるようにすることができる。
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、当て歯部における円周方向の少なくとも一方側の端部からその端部に向かう円周方向とは反対側に連続する複数の構成歯の歯形が、切り欠き形状に形成されている。
この第2の発明によれば、当て歯部の端部から連続する複数の構成歯が切り欠き形状に形成されていることにより、他方側の連結部材とロック部材との噛合が途切れる円周方向の境界部分にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、より多くの構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。
次に、第3の発明は、上述した第2の発明において、切り欠き形状に形成された当て歯部の各構成歯とこれら各構成歯に噛合対応する受け歯部の各構成歯との円周方向の離間幅が、端側の構成歯に向かうに従って漸次広がって形成されている。
この第3の発明によれば、切り欠き形成された当て歯部の各構成歯と受け歯部の各構成歯との円周方向の離間幅が、端側に向けて漸次広がるように形成されていることにより、他方側の連結部材の強制的な回転変位に伴う負荷応力を、より段階的に複数の構成歯にタイミングを遅らせて分散させて作用させることができる。
次に、第4の発明は、上述した第1から第3のいずれかの発明において、当て歯部の円周方向の両方側の端部から数える少なくとも一個ずつの構成歯の歯形が切り欠き形状に形成されている。
この第4の発明によれば、当て歯部の円周方向の両端部の構成歯が切り欠き形状に形成されていることにより、他方側の連結部材の双方向の強制的な回転変位に対して、ロック部材との間にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、複数の構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
始めに、実施例1の車両用シートの連結装置の構成について、図1〜図8を用いて説明する。ここで、図2には、本実施例の車両用シート1の概略構成が示されている。この車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2が、その両サイドの下部位置に配設された左右一対のリクライニング装置4,4によって、着座部となるシートクッション3と連結されている。ここで、リクライニング装置4,4が本発明の車両用シートの連結装置に相当する。
これらリクライニング装置4,4は、互いのロック解除の切換え操作を行う操作軸4c,4cが、連結ロッド4rによって互いに一体的に連結されて構成されている。これにより、各リクライニング装置4,4は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態と、この固定状態を解除してシートバック2の背凭れ角度調整を行える状態にする解除状態とに、互いの作動状態の切換えが同期して行われるようになっている。ここで、各リクライニング装置4,4は、常時はロックした作動状態に附勢によって保持されている。
そして、各リクライニング装置4,4は、シートクッション3の側部位置に設けられた操作レバー5の引き上げ操作を行うことにより、それらのロック状態が一斉に解除操作される。これにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれるため、その背凭れ角度の調整操作が行える状態となる。そして、シートバック2の背凭れ角度を調整した後に、操作レバー5の解除操作をやめれば、各リクライニング装置4,4は再び附勢によってロック状態に戻されるため、シートバック2をその調整した背凭れ角度位置に固定することができる。
ここで、シートバック2は、シートクッション3との間に掛着された図示しない附勢ばねの附勢力によって、常時は前倒しの回動方向に附勢されている。したがって、車両用シート1が着座使用されていない状態で、上述した各リクライニング装置4,4のロック状態を解除することにより、シートバック2は附勢によって前倒しされて、シートクッション3の上面部に畳み込まれることとなる。
このとき、各リクライニング装置4,4は、通常、シートバック2が背凭れとして使用される角度領域にある時には、操作レバー5の解除操作をやめることによって、附勢によってロック状態に戻される。しかし、各リクライニング装置4,4の回転角度領域には、上記した解除操作をやめた際に附勢によってロック状態に戻されるロックゾーンと、解除操作をやめてもロック状態には戻されないフリーゾーンとが設定されている。
前者のロックゾーンは、通常、シートバック2が背凭れ使用される角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から後方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。そして、後者のフリーゾーンは、シートバック2が背凭れ使用されることのない前倒れ姿勢の角度領域、具体的にはシートバック2が直立姿勢となる角度位置から前方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。
したがって、シートバック2を前倒しする操作時には、各リクライニング装置4,4のロック状態を解除して、シートバック2が直立姿勢から少しでも前に傾けば、あとは解除操作をやめてしまっても、シートバック2はシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで自然と倒し込まれていく。以下、リクライニング装置4,4の構成について詳しく説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いに左右対称の構成となっているが、実質的には同じ構成となっている。したがって、以下ではこれらを代表して、図2の紙面向かって右側に示されているリクライニング装置4の構成についてのみ説明をする。
このリクライニング装置4は、図1に示されるように、円盤形状のラチェット10及びガイド20と、これらの円盤面の間に挟まれて配置される上下一対のポール30,30及びスライドカム40と、このスライドカム40をスライド操作するためのヒンジカム50と、このヒンジカム50を回動附勢するための附勢ばね60と、ラチェット10及びガイド20を互いに板厚方向(軸方向)に挟み込んだ状態に保持するための保持部材70とが1つに組み付けられて構成されている。ここで、ガイド20が本発明の一方側の連結部材に相当し、ラチェット10が本発明の他方側の連結部材に相当し、ポール30,30が本発明のロック部材に相当する。
詳しくは、ラチェット10には、その円盤部11の外周縁において、板厚方向に円筒状に突出する円筒部12が形成されている。この円筒部12は、円盤部11の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。そして、この円筒部12の内周面には、内歯部12aと突出平面12bとが形成されている。この突出平面12bは、円筒部12の軸対称となる二箇所の位置に設定されており、それぞれ、内周面が内歯部12aよりも半径方向内方側に突出した平坦な湾曲面とされて形成されている。
そして、この突出平面12bがいずれのポール30,30とも干渉しない円周方向の回転角度領域が、内歯部12aが各ポール30,30と噛合することのできるロックゾーンとして設定されている。そして、突出平面12bがポール30,30と干渉して噛合が阻止される回転角度領域がフリーゾーンとして設定されている。このラチェット10は、図3に示されるように、その円盤部11の外盤面が、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fの板面と接合されることによって、シートバック2と一体的に連結されている。ここで、バックフレーム2fが本発明の二つの対象部材の一方側に相当する。
ここで、ラチェット10の円盤部11には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ13a・・やDダボ13bが形成されている。これらダボ13a・・やDダボ13bは、円盤部11のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並べて配置形成されている。このうち、Dダボ13bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ13a・・とは形状が区別されるようになっている。
一方、バックフレーム2fには、上述したダボ13a・・やDダボ13bを嵌合させることのできるダボ孔2a・・やDダボ孔2bが貫通形成されている。したがって、これらダボ13a・・やDダボ13bを、バックフレーム2fに形成されたダボ孔2a・・やDダボ孔2bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ラチェット10がバックフレーム2fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
そして、このラチェット10の円盤部11の中心には、リクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔14が形成されている。そして、バックフレーム2fにも、この貫通孔14と同軸線上の位置に、同じ目的で貫通孔2cが形成されている。
次に、図1に戻って、ガイド20の構成について説明する。このガイド20は、ラチェット10よりもひとまわり大きな外径をもった円盤形状に形成されている。このガイド20の円盤部21の外周縁には、ラチェット10への組み付け方向となる板厚方向に円筒状に突出する円筒部22が形成されている。この円筒部22は、円盤部21の外周縁が板厚方向に半抜き加工されて形成されている。この円筒部22は、図5に示されるように、ラチェット10の円筒部12を外周側から囲い込むことのできる大きさに形成されている。
この円筒部22の筒内にラチェット10の円筒部12が組み付けられた状態では、ガイド20とラチェット10とは、互いの円筒形状を嵌合させた状態として、互いに摺動し合って相対回転することのできる状態とされる。このガイド20は、図4に示されるように、その円盤部21の外盤面が、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fの板面と接合されることによって、シートクッション3と一体的に連結されている。ここで、クッションフレーム3fが本発明の二つの対象部材の他方側に相当する。
ここで、ガイド20の円盤部21には、その外盤面から円筒状に突出する複数のダボ24a・・やDダボ24bが形成されている。これらダボ24a・・やDダボ24bは、円盤部21のより外周縁に近い位置で、円周方向に等間隔に並べて配置形成されている。このうち、Dダボ24bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ24a・・とは形状が区別されるようになっている。
一方、クッションフレーム3fには、上述したダボ24a・・やDダボ24bを嵌合させることのできるダボ孔3a・・やDダボ孔3bが貫通形成されている。したがって、これらダボ24a・・やDダボ24bを、クッションフレーム3fに形成されたダボ孔3a・・やDダボ孔3bにそれぞれ嵌合させて、これら嵌合部を溶着して接合することにより、ガイド20がクッションフレーム3fに対して強固に一体的に連結されている(図5参照)。
そして、このガイド20の円盤部21の中心には、リクライニング装置4のロック解除の切換え操作を行う操作軸4c(図2参照)を挿通するための貫通孔25が形成されている。そして、クッションフレーム3fにも、この貫通孔25と同軸線上の位置に、同じ目的で貫通孔3cが形成されている。この貫通孔3cは、後述する附勢ばね60もその孔内部に収め入れられるように形状が大きく形成されている。
そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、その内盤面が板厚方向に「十」符号状に凹んだガイド溝23が形成されている。このガイド溝23は、円盤部21が「十」符号状に板厚方向に半抜き加工されることによって形成されている。ここで、前述したダボ24a・・やDダボ24bは、このガイド溝23が形成された外盤面上の位置にそれぞれ突出して形成されている。このガイド溝23は、その図示向かって上側と下側の溝部が、後述する各ポール30,30をそれぞれ内部に収め入れることのできるポール溝23a,23aとして形成されている。
これらポール溝23a,23aは、図7に示されるように、その左右両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21bや案内壁21c,21dの形状により、ポール30,30をその溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示上下方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。そして、ガイド溝23の横方向に延びる図示向かって右側と左側とその間の溝部が、後述するスライドカム40を内部に収め入れることのできるスライドカム溝23bとしてひとつなぎに形成されている。
このスライドカム溝23bは、その上下両サイドに側壁となって形成される案内壁21a,21cや案内壁21b,21dの形状により、スライドカム40をその溝形状に沿ってガイド20の半径方向の内外方(図示左右方向)にのみスライドさせられるようにガイドする。そして、図1に戻って、ガイド20の円盤部21には、外盤面からピン形状に突出するばね掛部26,26が形成されている。これらばね掛部26,26は、後述する附勢ばね60(巻きばね)の外端62を掛着させるための機能部品となっており、その掛着位置を選択できるように円周方向の二箇所に形成されている。
次に、ポール30,30の構成について説明する。これらポール30,30は、前述したガイド20に形成された各ポール溝23a,23aの内部にスライド可能な状態に収容される駒形状に形成されている。これらポール30,30は、互いに上下対称な形状に形成されている。具体的には、各ポール30,30は、その外周縁が、前述したラチェット10の円筒部12の内周面と合致する円弧状に湾曲した形状に形成されている。そして、この円弧状に湾曲した外周面には、上記したラチェット10の内歯部12aと噛合可能な外歯部30a,30aが形成されている。ここで、内歯部12aが本発明の受け歯部に相当し、外歯部30a,30aが本発明の当て歯部に相当する。
したがって、各ポール30,30は、図6に示されるように、後述するスライドカム40に押圧されて半径方向外方側にスライドすることにより、各外歯部30a,30aがラチェット10の内周面に形成された内歯部12aと噛合する。これにより、各ポール30,30とラチェット10とは、互いの噛合力によって、円周方向に一体的な状態となる。しかし、各ポール30,30は、ガイド20との関係においては、案内壁21a,21cや案内壁21b,21dによるガイドによって半径方向の内外方にしかスライドできないようになっている。
したがって、ラチェット10は、各ポール30,30を介してガイド20に対する相対回転が規制された状態となる。これにより、リクライニング装置4が回転ロックされた状態となる。このリクライニング装置4の回転ロック状態は、図7に示されるように、各ポール30,30が半径方向内方側に引き込まれて、ラチェット10との噛合状態から外されることによって解除される。
ここで、各ポール30,30を半径方向の内外方にスライドさせる操作は、ポール30,30の間に配設されたスライドカム40のスライド動作によって行われる。このスライドカム40は、図1に示されるように、前述したガイド20に形成されたスライドカム溝23bの内部に収容される駒形状に形成されている。このスライドカム40は、上下対称な形状に形成されており、その図示上下側の縁部に、各ポール30,30を半径方向外方側に押し出すための肩部42,42と、各ポール30,30を半径方向内方側に引き込むためのフック44,44とが形成されている。
ここで、前述したポール30,30は、その半径方向内方側の形状が一部肉抜きされた門型形状に形成されている。そして、各ポール30,30は、その門型の両脚をなす脚部32,32をそれぞれスライドカム40の上縁側と下縁側の面部とに当接させることにより、スライドカム40によって半径方向外方側に押圧操作されるようになっている。具体的には、図6に示されるように、各ポール30,30は、スライドカム40が図示左方側にスライドした状態では、各脚部32,32をスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げさせた状態として半径方向外方側に押し出された状態に保持される。
これにより、各ポール30,30は、常時は各外歯部30a,30aをラチェット10の内歯部12aに噛合させた状態として保持されている。そして、各ポール30,30は、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されることにより、その門型の内側に形成された各掛部31,31にスライドカム40の各フック44,44が引掛けられて、半径方向内方側に引き込まれる。これにより、各ポール30,30の脚部32,32が、スライドカム40の肩部42,42に乗り上げていた位置から、その左脇位置にある溝部43,43の内部へと引き込まれて、各ポール30,30とラチェット10との噛合状態が解除される。
これら溝部43,43は、各肩部42,42から滑らかに凹み込む形状に形成されており、スライドカム40が図6に示されるように右方側にスライドすることで、各ポール30,30の脚部32,32が各溝部43,43の形状に案内されて各肩部42,42に乗り上げた状態となる。ここで、スライドカム40を図示左右方向にスライドさせる操作は、スライドカム40の中央部に貫通形成されたカム孔41内に組み付けられたヒンジカム50の回転動作によって行われる。
このヒンジカム50は、図1に示されるように、スライドカム40の中心部に貫通形成されたカム孔41内に回動可能に組み付けられている。このヒンジカム50は、ガイド20との間に掛着された附勢ばね60(巻きばね)の附勢力によって、常時は図1に示される時計回り方向に回動附勢されている。ここで、附勢ばね60は、図4に示されるように、予め捩り込まれた状態として、その内端61がヒンジカム50のばね掛部51に掛着されており、外端62がガイド20のばね掛部26に掛着されている。
これにより、ヒンジカム50は、図6に示されるように、常時はその外周部に突出形成された操作突起52によって、スライドカム40をカム孔41の内周面側から押圧して図示左方側にスライドさせるようになっている。そしてこれにより、各ポール30,30は、各脚部32,32をスライドカム40の各肩部42,42に乗り上げさせた状態として、ラチェット10と噛合した状態に保持される。
このヒンジカム50は、図2において前述した操作軸4cと一体的に連結されている。これにより、ヒンジカム50は、操作レバー5(図2参照)の引き上げ操作に伴って、図1に示される附勢ばね60の附勢に抗した図示反時計回りに回動操作されるようになっている。すなわち、ヒンジカム50は、上記した操作によって、図6の時計回り方向に回動操作される。これにより、図7に示されるように、スライドカム40が図示右方側にスライド操作されて、各ポール30,30が、ラチェット10との噛合状態から外される。
次に、図1に戻って、保持部材70について説明する。この保持部材70は、薄い鋼板がリング状に打ち抜かれて形成されており、更に軸方向に半抜き加工されることによって、図示奥側の一端に軸方向に面を向けたフランジ状の当てがい面71を有する円筒型形状に形成されている。この保持部材70は、図5に示されるように、その円筒内部に前述したラチェット10とガイド20とが組み付けられてから、その他端がかしめられて半径方向内方側に折り曲げられることにより、ガイド20の外盤面側に軸方向に面を当てがうことのできるフランジ状の当てがい面72が形成されるようになっている。
そして、保持部材70が上記のように組み付けられることにより、ラチェット10とガイド20とが各当てがい面71,72によって軸方向に挟み込まれた状態として保持されるようになっている。詳しくは、保持部材70は、ラチェット10の円筒部12の外盤面と当てがい面71との間に軸方向に僅かな隙間を設けた状態として組み付けられる。これにより、保持部材70が、ラチェット10とガイド20との間の相対回転を阻害しない状態となって組み付けられている。
ここで、図1に示されるように、ラチェット10の円筒部12に当てがわれる当てがい面71には、その周方向の複数箇所に、内盤側の面から軸方向に突起状に突出する突部71a・・が形成されている。これにより、ラチェット10の円筒部12は、突部71a・・によって当てがい面71に対して点で接触するようになっており、その回転時の接触に伴う摺動抵抗の影響が小さく抑えられるようになっている。
ところで、図6に示されるように、前述した各ポール30,30の外歯部30a,30aは、それらの円周方向に並ぶ各構成歯のうち、それぞれ両端側から数える各二個ずつ(計四個ずつ)の構成歯の歯形が、他の構成歯の歯形に対して切り欠かれた形状に形成されている。ここで、図8には、図6に示された一点鎖線の円で囲われた四つの領域のうち、向かって右上側に示されたVIII領域部分の拡大図が示されている。
すなわち、各ポール30,30の外歯部30a,30aのそれぞれ両端側から数える各二個ずつの構成歯の歯形は、図8に示されるように、それらの山形の歯面のうち端側とは反対側(図8では左側)の傾斜した歯面が、これらに噛合対応する内歯部12aの各構成歯の傾斜した歯面から、円周方向に離間するように切り欠かれた形状に形成されている。より詳しくは、これらの円周方向の離間幅(隙間幅)は、端側(図8においては右端側)の構成歯における離間幅の方が、その端から二番目の構成歯における離間幅よりも広くなるように設定されている。
なお、上記した端側の構成歯の切り欠き形状は、図6において一点鎖線の円で囲われた四つの領域で示されている各外歯部30a,30aの両端側領域部において同じように形成されている。すなわち、切り欠き状に形成された各構成歯の円周方向の離間幅(隙間幅)は、端側の構成歯における離間幅の方が、端から二番目の構成歯における離間幅よりも広くなるように設定されている。
したがって、上記構成のリクライニング装置4は、例えば各ポール30,30の外歯部30a,30aがラチェット10の内歯部12aに噛合した回転ロック状態において、車両衝突が発生するなどして、シートバック2にその衝突の弾みに伴う異常な大荷重が入力されると、ラチェット10が各ポール30,30との噛合力に抗して強制的に回転変位することで入力される負荷応力を、次のように分散して受け止める。すなわち、図6において例えばラチェット10が図示時計回り方向に回転する強制力が入力された場合には、各ポール30,30の外歯部30a,30aは、ラチェット10が回転する図示時計回り方向側の端部に形成された端から二番目の構成歯と端側の構成歯を、ラチェット10の強制回転の進行に伴って、他の構成歯から遅れたタイミングで順次内歯部12aの各構成歯と当接させて噛合させる。
したがって、ラチェット10の強制回転時に、ラチェット10と各ポール30,30との噛合が途切れる円周方向の境界部分(各ポール30,30の図示時計回り方向側の境界端部)にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、切り欠き状に形成された複数の構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。また、このような構成歯の切り欠き形状は、各外歯部30a,30aの両端側の各構成歯に同じように設定されているため、ラチェット10がどちらの方向に強制回転しても、かかる負荷応力を同じように複数の構成歯に分散させて作用させることができる。
なお、上述した各外歯部30a,30aの両端側と端から二番目の構成歯の歯形は、図8に示されるように、それらの山形の図示右側の傾斜した歯面が、これらに噛合対応する内歯部12aの各構成歯の傾斜した歯面に当接して噛合するように形成されている。これにより、切り欠き状に形成された各構成歯に可能な限りの歯幅が持たされており、各構成歯の支持強度が維持されている。
このように、本実施例の車両用シートの連結装置であるリクライニング装置4によれば、ラチェット10に形成された内歯部12aに各ポール30,30の外歯部30a,30aを噛合させることにより、ラチェット10とガイド20との相対回転がロックされた状態となる。そして、この回転ロック状態で、車両衝突が発生するなどして、ラチェット10とガイド20との間に互いを相対回転させる強制的な回転力が入力されることにより、ラチェット10が各ポール30,30との噛合力に抗して強制的に回転変位する。このとき、各ポール30,30の外歯部30a,30aは、ラチェット10が回転する回転方向側の端部に形成された切り欠き形状の構成歯を、ラチェット10の強制的な回転変位が進行してから、内歯部12aの構成歯と当接させて噛合させる。したがって、ラチェット10の強制変位によって、各ポール30,30との噛合が途切れる円周方向の境界部分にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、複数の構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。
また、この切り欠き状に形成された外歯部30a,30aの構成歯の歯形は、その切り欠き状の歯面とは反対側(端部に向かう方向側)の歯面が内歯部12aの歯面と当接する歯幅のある形状とされている。したがって、かかる負荷応力を各外歯部30a,30aの複数の構成歯に分散させて作用させることができると共に、切り欠き状に形成された構成歯にも高い支持強度を持たせて、高い支持強度でもってこれを受け止められるようにすることができる。
また、各ポール30,30の外歯部30a,30aの各端部から連続する複数の構成歯が切り欠き形状に形成されていることにより、ラチェット10と各ポール30,30との噛合が途切れる円周方向の境界部分にかかる円周方向の引張応力(負荷応力)を、より多くの構成歯にタイミングを遅らせて漸次分散させて作用させることができる。また、切り欠き形成された外歯部30a,30aの各構成歯と内歯部12aの各構成歯との円周方向の離間幅が、端側に向けて漸次広がるように形成されていることにより、ラチェット10の強制的な回転変位に伴う負荷応力を、より段階的に複数の構成歯にタイミングを遅らせて分散させて作用させることができる。
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、本発明の車両用シートの連結装置を、シートバック2をシートクッション3に対して背凭れ角度調整可能に連結するリクライニング装置4として適用したものを示した。しかし、この連結装置は、傾動式シートバックを車体フロアに対して連結する用途にも適用することができる。
また、連結装置を、シート本体を車体フロアに対して旋回方向に回転させられるように連結する用途にも適用することができる。また、連結装置を、着座者の下腿部を下方側から持ち上げて支持するいわゆるオットマン装置をシートクッションや車体フロアに対して傾動可能に連結する用途にも適用することができる。
また、各ポール30,30の外歯部30a,30aは、その両端側の構成歯と端から二番目の構成歯のみが切り欠き状に形成されたものを示したが、両端側の一つずつの構成歯のみが切り欠き状に形成されたものや、三番目以降の構成歯も切り欠き状に形成されたものであってもよい。また、片端側における構成歯のみが切り欠き状に形成されたものであってもよい。但しこの場合には、ラチェット10の一方側の強制回転に対してしか負荷応力の分散機能が働かないことに留意が必要である。
実施例1のリクライニング装置の分解斜視図である。 車両用シートの概略構成を表した斜視図である。 リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。 リクライニング装置の組み付け状態を表した斜視図である。 図4のV-V線断面図である。 リクライニング装置のロック状態を表した図3のVI-VI線断面図である。 図6の状態からリクライニング装置のロック状態を解除した状態を表した断面図である。 図6のVIII部拡大図である。
符号の説明
1 車両用シート
2 シートバック
2f バックフレーム(二つの対象部材の一方側)
2a ダボ孔
2b Dダボ孔
2c 貫通孔
3 シートクッション
3f クッションフレーム(二つの対象部材の他方側)
3a ダボ孔
3b Dダボ孔
3c 貫通孔
4 リクライニング装置(車両用シートの連結装置)
4c 操作軸
4r 連結ロッド
5 操作レバー
10 ラチェット(他方側の連結部材)
11 円盤部
12 円筒部
12a 内歯部(受け歯部)
12b 突出平面
13a ダボ
13b Dダボ
14 貫通孔
20 ガイド(一方側の連結部材)
21 円盤部
21a〜21d 案内壁
22 円筒部
23 ガイド溝
23a ポール溝
23b スライドカム溝
24a ダボ
24b Dダボ
25 貫通孔
26 ばね掛部
30 ポール(ロック部材)
30a 外歯部(当て歯部)
31 掛部
32 脚部
40 スライドカム
41 カム孔
42 肩部
43 溝部
44 フック
50 ヒンジカム
51 ばね掛部
52 操作突起
60 附勢ばね
61 内端
62 外端
70 保持部材
71 当てがい面
71a 突部
72 当てがい面

Claims (4)

  1. 二つの対象部材を互いに相対回転可能に連結する車両用シートの連結装置であって、
    前記二つの対象部材の一方側或いは他方側にそれぞれ一体的に連結されて互いに相対回転可能に組み付けられる二つの連結部材と、
    該二つの連結部材の間に挟み込まれて配置され、一方側の連結部材に組み付けられて円周方向に支えられた状態として他方側の連結部材に形成された受け歯部に当て歯部を押し当てて噛合させることにより当該両連結部材間の相対回転をロックすることのできるロック部材とを有し、
    前記受け歯部と前記当て歯部との噛合は当該各歯部を構成する円周方向に複数並ぶ構成歯同士が噛合して行われ、該当て歯部における円周方向の少なくとも一方側の端部に形成された構成歯の歯形は当該両歯部の噛合状態においてその円周方向の端部に向かう方向とは反対側の傾斜した歯面が該歯面に噛合対応する前記受け歯部の構成歯の傾斜した歯面から円周方向に離間する切り欠かれた形状に形成されており、かつ、該切り欠き形成された構成歯の円周方向の端部に向かう方向側の傾斜した歯面が該歯面に噛合対応する前記受け歯部の構成歯の傾斜した歯面と当接する歯形とされていることを特徴とする車両用シートの連結装置。
  2. 請求項1に記載の車両用シートの連結装置であって、
    前記当て歯部における円周方向の少なくとも一方側の端部からその端部に向かう円周方向とは反対側に連続する複数の構成歯の歯形が前記切り欠き形状に形成されていることを特徴とする車両用シートの連結装置。
  3. 請求項2に記載の車両用シートの連結装置であって、
    前記切り欠き形状に形成された当て歯部の各構成歯と該各構成歯に噛合対応する前記受け歯部の各構成歯との円周方向の離間幅が端側の構成歯に向かうに従って漸次広がって形成されていることを特徴とする車両用シートの連結装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートの連結装置であって、
    前記当て歯部の円周方向の両端部から数える少なくとも一個ずつの構成歯の歯形が前記切り欠き形状に形成されていることを特徴とする車両用シートの連結装置。
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