JP5159141B2 - インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、平版印刷版の作製方法及び平版印刷版 - Google Patents
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Description
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。また、高感度化は、とくにインクジェット記録用インクにより形成された画像の強度を向上させ、特に、平版印刷版の形成に応用した場合、画像部の硬化強度が高まることになり、高耐刷性が得られることになる。
また、本発明の他の目的は、保存安定性に優れ、放射線の照射により高感度で硬化可能なインク組成物を用いて得られた印刷物、平版印刷版、及び、平版印刷版の作製方法を提供することにある。
<1> (A)下記一般式(a)から一般式(e)のいずれかで表され、(i)低求核性の酸基とヒンダードアミン構造とを含むアニオン部位及び(ii)光分解性のカチオン部位からなるオニウム塩化合物、(B)活性放射線反応性カチオン重合開始剤、(C)カチオン重合性モノマー、及び、(D)着色剤を含有するインク組成物。
R1は、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアリーレン基、パーフルオロアラルキレン基、シクロアルキレン基、又は、パーフルオロシクロアルキレン基を表す。
R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロアラルキル基、シクロアルキル基、又は、パーフルオロシクロアルキル基を表す。ここで、R2、R3は互いに結合して環構造を形成してもよく、また、R1の一部とR2、R3のいずれかにより環構造を形成していてもよい。
RNは、アミン基を表す。
<3> (i)<1>又は<2>に記載のインク組成物を被記録媒体上に吐出する工程と、(ii)吐出されたインク組成物に放射線を照射してインク組成物を硬化する工程と、を含むインクジェット記録方法。
<4> <3>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
<6> <5>に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
また、保存安定性に優れ、放射線の照射により高感度で硬化可能な、本発明のインク組成物を用いて得られた印刷物は高画質であり、画像部の強度に優れる。また、本発明のインク組成物を用いることで、高耐刷、高画質の平版印刷版を、デジタルデータに基づき作製することができる。
本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により硬化可能であり、(A)後述する一般式(a)から一般式(e)のいずれかで表され、(i)低求核性の酸基とヒンダードアミン構造とを含むアニオン部位及び(ii)光分解性のカチオン部位からなるオニウム塩化合物(以下、適宜、特定オニウム塩と称する)、(B)活性放射線反応性カチオン重合開始剤、(C)カチオン重合性モノマー、及び、(D)着色剤を含有することを特徴とする。
以下、本発明のインク組成物に含まれる各成分について順次説明する。
本発明における特徴的な成分である特定オニウム塩は、分子内に(i)低求核性の酸基とヒンダードアミン構造とを含むアニオン部位及び(ii)光分解性のカチオン部位を有する化合物であり、後述する一般式(a)から一般式(e)のいずれかで表される化合物である。ここで、低求核性の酸基とは、アニオン部において酸基が立体的に遮蔽された構造を有するために、カチオン末端との相互作用が低く、反応を阻害しにくい酸基を意味する。
求核性の酸基としては、周囲との位置関係においてこのような遮蔽された構造で存在するものであれば、酸基自体には特に制限はなく、具体的には、結合価数が3または4と大きく、遮蔽構造をとりやすい、窒素原子、または炭素原子に電子吸引性基が付加した構造をアニオン中心としたものが好ましい。このような酸基として、例えば、炭素原子または窒素原子上に形式荷電を有する酸基が挙げられ、具体的には、カルバミド酸、ジスルホンアミド、トリスルホニルメタンなどが挙げられる。
従って、硬化性のインク組成物中に(A)特定オニウム塩を添加すると(A)が活性放射線に対する安定剤として働き、例えば、エネルギー付与に光照射を用いた場合、反射光などの意図しない露光が起こった際に、僅かに発生したプロトンはヒンダードアミン部の塩基性窒素によって速やかにトラップされるため、インク組成物の保存安定性を改善できる。一方、インク組成物を硬化させるための通常のエネルギー付与時には、大量のプロトンが発生し、硬化を生起、進行させるが、露光によって分解した分子は、分子内塩を形成するため感度低下を引き起こさず、且つ、露光により分解せず残存した分子も、塩基部がヒンダードアミンのため生長反応を阻害することなく、良好な感度で硬化することができるものと考えられる。
ここで、ヒンダードアミン部位における塩基性窒素原子は、カチオン末端との反応性を下げるために十分な立体障害をもたなければならない。本発明に係る特定オニウム塩におけるヒンダードアミン構造の塩基性窒素原子の周りには分子が多く存在することにより立体障害が起こり、カチオン重合反応を阻害する要因が軽減される。中でも、感度維持の観点から、立体障害の大きい三級アミンが特に好ましい。一級、二級のアミンでは、十分な立体障害を得ることは難しく、系内の連鎖移動により硬化膜内で生成するポリマーの重合度が低下するため、感度低下に繋がると考えられる。
ここでアリール基は置換基を有するものであることが好ましく、アリール基に導入される置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルキレン基、アルキルオキシ基、などが挙げられ、分解性と安定性の観点から、具体的には電子吸引性のハロゲン原子などを置換基として有するものが好ましく、このような電子吸引性置換基をもつ置換アリール基を3つ有するトリアリールスルホニウム、このような置換アリール基を2つ有するジアリールヨウドニウムなどがさらに好ましい。
R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロアラルキル基、シクロアルキル基、又は、パーフルオロシクロアルキル基を表す。ここで、R2、R3は互いに結合して環構造を形成してもよく、また、R1の一部とR2、R3のいずれかにより環構造を形成していてもよい。
上記1価或いは2価の基は、さらに置換基を有するものであってもよく、導入可能な好ましい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
R1は、酸基の酸性度と安定性の観点から、アルキレン基、または環状アルキレン基であることが好ましく、同様の観点から、R2、R3としては、アルキル基、または環状アルキル基であることが好ましい。なお、ここで、R2、R3が互いに結合して環構造を形成してもよい。
これらのなかでも、特に後述するアミン構造の近傍に位置するR1、R2、R3の場合には、分岐構造や環構造などを有する嵩高い置換基であることが効果の観点から好ましい。
このようなヒンダードアミン構造としては、2、6位に置換基が2個ずつ導入されたピペリジン骨格を有する構造、或いは、3級アミンに結合する置換基として、分岐構造を有するアルキル基やフルオロアルキル基、環構造を有するアリール基、シクロヘキシル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロシクロヘキシル基など嵩高い置換基を有する構造が好ましい。
以下に、本発明に使用しうる特定オニウム塩の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−26)〕を示すが、本発明はこれに制限されるものではない。
なお(A)特定オニウム塩の選択に際しては、反応性の観点からは、後述する(B)カチオン重合開始剤と同じ構造のカチオン母核構造を有するものを選択すること、具体的には、スルホニウム骨格を有する(A)特定オニウム塩とスルホニウム骨格を有する(B)開始剤との組合せ、或いは、ヨードニウム骨格を有する(A)特定オニウム塩とスルホニウム骨格を有する(B)開始剤との組合せなどを選択することが、インク組成物中での塩交換の影響による感度低下防止の観点からより好ましい。
インク組成物における(A)特定オニウム塩の含有量は、固形分換算で、0.01〜15質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜6質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のインク組成物には、活性放射線の照射により後述する(C)カチオン重合性化合物の硬化反応を生起、促進させる開始種、具体的には、酸を発生する化合物を含有する。活性放射線としては、一般に光が使用されることから、以下、本明細書中においては、(B)活性放射線反応性カチオン重合開始剤を「光酸発生剤」と称することがある。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
X−は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4 −、PF6 −、SbF6 −や以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
Rc1で表される有機基としては、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は、水素原子、又はアルキル基を表す。
Rc3、Rc4、又はRc5で表される有機基として、好ましくは、Rc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としては、アルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R201〜R203で表される芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の有機基である。
R201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
R201〜R203表されるアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
R201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
化合物(b1−3)とは、以下の一般式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
R1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc−は、非求核性アニオンを表し、前記一般式(b1)においてX−で表される非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
Rx及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとで表されるアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
R204〜R207で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207で表されるシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3〜15)、アリール基(例えば、炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば、炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
一般式(b5)及び(b6)中、R206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
一般式(b5)中、Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
インク組成物中の(B)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
本発明に用いられる(C)カチオン重合性化合物は、前記(B)光酸発生剤から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインク組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
Ra5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF3)2、又は、C(CH3)2を表す。
Ra6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基を表し、nは0〜2000の整数である。
Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
インク組成物中の(C)カチオン重合性化合物の含有量は、インク組成物の全固形分に対し、10〜95質量%が適当であり、好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%の範囲である。
本発明のインク組成物は着色剤を含有する。着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、必ずしも添加する必要はないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からはこのような用途であっても着色剤を用いることが好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記(C)カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(C)カチオン重合性化合物を用い、なかでも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著"New Instrumental Methods in Electrochemistry"(1954年, Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著"Electrochemical Methods"(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著"電気化学測定法"(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)と、で作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著"電気化学測定法"(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
以下に、必要に応じて用いられる種々の添加剤について述べる。
<紫外線吸収剤>
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%程度である。
本発明のインク組成物には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光酸発生剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
次に、本発明に好適に採用され得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、上記した本発明のインク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出する工程、及び、放射線を照射して射出された当該インク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする。
本発明のインク組成物を適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物は、硬化時の熱収縮が少なく、基材(被記録媒体)との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
本発明のインク組成物の好適な応用例として、平版印刷版への使用が挙げられる。
本発明のインク組成物をインクジェット記録装置などを用いて、親水性支持体上に射出した後、放射線を照射して当該インク組成物を硬化させて疎水性領域を形成することで、親水性支持体表面に画像様に疎水性のインク受容性領域が形成される。ここに、印刷用インクと水性成分を供給すると、水性成分が親水性支持体の露出している領域に保持され、印刷用インクが疎水性領域に保持されて、そのまま印刷工程を実施することができる。
本発明のインク組成物は、放射線照射により優れた硬化性を示すことから、これを応用した本発明の平版印刷版は、耐刷性に優れた画像部を有することになる。また、画像部を形成するのにインクジェット記録装置を用いて、デジタルデータにより直接、高精細な平版印刷版の画像部を形成することができる。
平版印刷版の作製に用いられるインク組成物は、前記した本発明のインク組成物をそのまま適用すればよい。
本発明の平版印刷版を作製するにあたって好ましく使用される支持体について説明する。
本発明の平版印刷版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の支持体であればよい。支持体を構成する材料が表面親水性を有するものであれば、そのまま用いてもよく、また、支持体を構成する板状材料の表面に親水化処理を行って用いてもよい。
支持体を構成する材料としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。
本発明に用いられる親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウムなどの水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
《顔料分散物の調製》
下記に記載の、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各顔料分散物1を調製した。なお、分散条件は、各顔料粒子の平均粒径が0.2〜0.3μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて、分散条件を適宜調整して行、次いで加熱下でフィルター濾過を行って調製した。
C.I.ピグメントイエロー12 10質量部
高分子分散剤(Zeneca社製Solsperseシリーズ) 5質量部
3−エチル−3―オキセタンメタノール 85質量部
(マゼンタ顔料分散物1)
C.I.ピグメントレッド57:1 15質量部
高分子分散剤(Zeneca社製Solsperseシリーズ) 5質量部
3−エチル−3―オキセタンメタノール 80質量部
(シアン顔料分散物1)
C.I.ピグメントブルー15:32 0質量部
高分子分散剤(Zeneca社製Solsperseシリーズ) 5質量部
3−エチル−3―オキセタンメタノール 75質量部
(ブラック顔料分散物1)
C.I.ピグメントブラック72 0質量部
高分子分散剤(Zeneca社製Solsperseシリーズ) 5質量部
3−エチル−3―オキセタンメタノール 75質量部
下記の成分を混合し、フィルターによって濾過し、各色インクを調製した。
(イエローインク1)
・(C)カチオン重合性化合物;
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35g
OXT−221(オキセタン化合物:東亜合成(株)製) 55g
・(B)光酸発生剤;
化合物例(b−27)/(b−32)=1/2 5g
・(A)特定オニウム化合物成分;
化合物例(A−1) 0.5g
・(D)着色剤(前記顔料分散物);
イエロー顔料分散物1 5g
・(C)カチオン重合性化合物;
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35g
OXT−221(オキセタン化合物:東亜合成(株)製) 55g
・(B)光酸発生剤;
化合物例(b−3) 5g
・(A)特定オニウム化合物成分;
化合物例(A−1) 0.3g
・(D)着色剤(前記顔料分散物);
マゼンタ顔料分散物1 5g
・(C)カチオン重合性化合物;
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35g
OXT−221(オキセタン化合物:東亜合成(株)製) 55g
・(B)光酸発生剤;
化合物例(b−75) 5g
・(A)特定オニウム成分;
化合物例(A―1) 0.03g
・(D)着色剤(前記顔料分散物);
シアン顔料分散物1 5g
・(C)カチオン重合性化合物;
セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35g
OXT−221(オキセタン化合物:東亜合成(株)製) 55g
・(B)光酸発生剤;
化合物例(b−10) 5g
・(A)特定オニウム成分;
化合物例(A−1) 0.3g
・(D)着色剤(前記顔料分散物);
ブラック顔料分散物1 5g
・増感剤;
・9,10−ジメトキシアントラセン 0.5g
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV−A光を露光面照度100mW/cm2、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
《インクの調製》
下記の成分を混合し、フィルターによって濾過し、2〜10のインク組成物(マゼンタインク2−1〜2−9)を調製した。また、実施例10のインク組成物において、(A)特定オニウム塩を含有しない他は、実施例10と同様にして比較例1のインク組成物(マゼンタインク2−10)を得た。また、(A)特定オニウム塩に代えて、塩基性化合物として、以下の比較化合物1、比較化合物2,及び、比較化合物3をそれぞれ等量用いた他は実施例10と同様にして比較例2〜4のインク組成物(マゼンタインク2−12〜2−13)を得た。
・(C)カチオン重合性化合物(表1、表2に記載の化合物) 90g
・(B)光酸発生剤(表1、表2に記載の化合物) 5g
・(A)特定オニウム成分又は比較化合物(表1、表2に記載の化合物) 0.03g
・(D)着色剤(前記マゼンタ顔料分散物1) 5g
・増感剤:9,10−ジメトキシアントラセン 0.5g
カチオン重合性化合物(1):
セロキサイド2021(エポキシ:ダイセルUCB(株)製)/OXT−221(オキセタン:東亜合成(株)製)=35/55混合物
カチオン重合性化合物(2):
セロキサイド3000(エポキシ:ダイセルUCB(株)製)/OXT−211(オキセタン:東亜合成(株)製)=50/40混合物
カチオン重合性化合物(3):
ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル/OXT−221(オキセタン:東亜合成(株)製)=40/50混合物
また、表2に記載の比較化合物1〜2(塩基性化合物)の構造は以下に示す通りである。比較化合物3としては、ジメチルドデシルアミンを使用した。
以上のようにして調製した実施例2〜10及び比較例1〜4を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像印字を行った。
次いで、各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、硬化に必要な感度、保存安定性、市販の再生紙における浸透性、砂目立てしたアルミニウム支持体でのインク滲み、密着性の評価を行った。
紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
作製したインク組成物を、75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で表した。粘度が変化せず1.0に近いほうが保存安定性良好であり、1.5を超えると射出時に目詰まりを起こす場合があり好ましくない。
支持体からの反射光に対するインクのヘッドノズルでの吐出安定性を評価するために、下記の条件でピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により60分連続吐出におけるノズルロス個数の評価を行った。実験は、PET基板上に吐出して露光(露光量:1000mW/cm2)を行った場合と、露光せず吐出のみ行った場合(括弧内に記載)のそれぞれのノズルロス数(ノズルが詰まってしまった数)を数えた。
チャンネル数:318/ヘッド
駆動周波数:4.8kHz/dot
インク滴:7滴、42pl
温度:45℃
市販の再生紙に対し印字した画像について、下記の基準に従い浸透性の評価を行った。
○:殆ど浸透せず、残留モノマー臭もしない
△:僅かに浸透し、残留モノマー臭も僅かに認められる
×:明らかにインクが裏面側に浸透し、残留モノマー臭も強い
砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像について、下記の基準に従いインク滲みの評価を行った。
○:隣接するドット間の滲みが無い
△:僅かにドットが滲む
×:ドットが滲み、明らかに画像がぼやける
上記作成した印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JISK5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像あるいは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロハンテープでの剥がれが認められる
上記で作製した砂目立てしたアルミニウム支持体上に、実施例及び比較例のインク組成物で印字し、画像形成した。これを平版印刷版として、画像及び耐刷性の評価を行った。
実施例及び比較例のインク組成物を用いて作製した平版印刷版を、ハイデルKOR−D機に掛け、インク〔枚葉用VALUES−G紅(大日本インク(株)製)〕と湿し水〔Ecolity2(富士写真フイルム(株)製)〕とを供給して印刷を行った。100枚印刷後の印刷物を目視で以下の基準により評価した。
○:画像部の白ヌケ、及び、非画像部の汚れのない画像が得られた。
△:画像部に僅かな白ヌケ、及び/又は、非画像部に僅かな汚れが観察された。
×:画像部の白ヌケ、及び/又は、非画像部の汚れが観察され、実用上問題のあるレベルであった。
そのまま印刷を継続し、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(比較例1を100とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
これらの評価結果を表1に示す。
他方、塩基性化合物を含まない比較例1は保存安定性に劣り、分解性のオニウム塩構造を有していても、酸基の求核性が高い比較化合物1を用いた比較例2、アミン構造における窒素原子の求核性が高い比較例化合物2を用いた比較例3,及び、一般的な塩基性化合物であるジメチルドデシルアミンを用いた比較例4のいずれもが硬化感度が不十分であった。
また、インクジェット記録方法を適用することで、非吸収性の被記録媒体上にインク組成物を射出した場合においても、高感度で硬化し、強度の高い画像部領域をデジタルデータに基づき直接形成しうる。従って、本発明のインク組成物は平版印刷版、特に、A2版以上の大面積の平版印刷版、の作製にも好適に使用され、これにより得られた平版印刷版は耐刷性に優れたものとなる。
Claims (6)
- (A)下記一般式(a)から一般式(e)のいずれかで表され、(i)低求核性の酸基とヒンダードアミン構造とを含むアニオン部位及び(ii)光分解性のカチオン部位からなるオニウム塩化合物、(B)活性放射線反応性カチオン重合開始剤、(C)カチオン重合性モノマー、及び、(D)着色剤を含有するインク組成物。
Xは分解性スルホニウム、又は、分解性ヨードニウムを表す。
R 1 は、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロアリーレン基、パーフルオロアラルキレン基、シクロアルキレン基、又は、パーフルオロシクロアルキレン基を表す。
R 2 、R 3 は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロアラルキル基、シクロアルキル基、又は、パーフルオロシクロアルキル基を表す。ここで、R 2 、R 3 は互いに結合して環構造を形成してもよく、また、R 1 の一部とR 2 、R 3 のいずれかにより環構造を形成していてもよい。
R N は、アミン基を表す。 - (A)前記一般式(a)から一般式(e)のいずれかで表され、(i)低求核性の酸基とヒンダードアミン構造とを含むアニオン部位及び(ii)光分解性のカチオン部位からなるオニウム塩化合物の添加量が0.01質量%〜15質量%の範囲であり、インクジェット記録用に用いられる請求項1に記載のインク組成物。
- (i)請求項1又は請求項2に記載のインク組成物を被記録媒体上に吐出する工程と、(ii)吐出されたインク組成物に放射線を照射してインク組成物を硬化する工程と、を含むインクジェット記録方法。
- 請求項3に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
- (i−2)請求項1又は請求項2に記載のインク組成物を親水性支持体上に吐出する工程と、(ii−2)吐出されたインク組成物に放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程と、を含む平版印刷版の製造方法。
- 請求項5に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
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