JP5110757B2 - セルロース粉末 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、医薬、食品、工業用途において使用される圧縮成形用賦形剤に適するセルロース粉末に関する。より詳細には、医薬用途において、良好な圧縮成形性を保ちながら、流動性、崩壊性にも優れる圧縮成形用賦形剤に適するセルロース及びそれからなる賦形剤に関する。
【従来の技術】
【0003】
医薬品の錠剤化は生産性が高いということのほか、輸送や使用時に取扱い易いという利点がある。そのため圧縮成形用賦形剤には、輸送や使用に際して錠剤が磨損や破壊しない程度の硬度を付与するための成形性が必要である。また医薬品用途における錠剤は、薬効の正確な発現のために1錠中の医薬品含量が均一であることが求められ、医薬品と圧縮成形用賦形剤の混合粉体を打錠して錠剤化する際には、該粉体が打錠機の臼に均一量充填される必要がある。そのため圧縮成形用賦形剤は成形性に加えて十分な流動性が必要となる。さらに医薬品錠剤はこれらの性質に加えて、服用後の速やかな薬効発現のために崩壊時間が短くなければならない。崩壊が速いほど、医薬品はそれだけ速く消化管液に溶解しやすいため、血中への移行が速くなり薬効を発現しやすくなる。そのため圧縮成形用賦形剤は、成形性、流動性に加え、速やかな崩壊性を備えている必要がある。
多くの活性成分原料は圧縮しても成形ができないために、圧縮成形用賦形剤を配合して錠剤化される。一般に、錠剤中の圧縮成形用賦形剤の配合量が多いほど錠剤硬度は高くなり、また、圧縮応力が高いほど錠剤強度は高くなる。安全性や上記観点より、圧縮成形用賦形剤としては結晶セルロースがよく使用される。
【0004】
ところが、例えば医薬分野において成形性の乏しい活性成分等を錠剤化する場合には、実用的な錠剤硬度を得るために過剰の圧縮応力をかけざるを得ず、打錠機に負担をかけるため臼杵の消耗を早め、また得られた錠剤の崩壊時間が遅延するという問題があった。薬物等の活性成分の配合量が多い場合、漢方薬等の比容積の大きな原末を配合した場合、錠剤の飲み易さを改善するために小型化する場合等では、賦形剤の配合量が著しく制限されるため、所望の錠剤硬度を得られず輸送中の磨損や破壊といった問題が生じる。また、さらには打圧感受性の活性成分、例えば酵素、抗生物質等では打圧による発熱や圧力によって活性成分が失活するため、実用硬度を得ようとすると含量が低下して錠剤化できない等の問題がある。上記の問題解決のためには、十分な流動性や崩壊性を備え、かつ少量添加でも十分な錠剤硬度を付与できる、あるいは低打圧でも十分な錠剤硬度を付与できる等の従来よりも優れた成形性を有する圧縮成形用賦形剤が必要となる。
従って医薬用賦形剤として使用されるセルロース粉末の機能としては圧縮成形性、崩壊性、流動性のいずれもが高いレベルで満足するものが望ましいのであるが、圧縮成形性と他の崩壊性、流動性とは相反する性質であるため、成形性が高いにもかかわらず崩壊性、流動性にも優れるセルロース粉末は知られていなかった。
【0005】
従来セルロース粉末としては結晶セルロース、粉末セルロースが知られており、医薬、食品、工業用途で使用されてきた。
特公昭40−26274号公報には平均重合度が15〜375、見掛け比容積が1.84〜8.92cm/g、粒度が300μm以下の結晶セルロースが記載されている。また特公昭56−2047号公報には平均重合度が60〜375、見掛け比容積が1.6〜3.1cm/g、見掛け密比容積が1.40cm/g以上、200メッシュ以上が2−80重量%であり、安息角が35−42°である結晶セルロースが記載されている。またDE2921496号公報には流動可能な非繊維性、水不溶性のセルロース粉末としてセルロース物質を酸加水分解し、固形分濃度を30−40重量%とし、次いで140−150℃で棚段乾燥することによって平均重合度150のセルロース粉末を製造するという記載がある。さらにはRU2050362号公報には粉末セルロースの安定なゲル生成を目的として、セルロースを含む原料に鉱酸又は酸性塩の溶液を含浸させて、高温で加水分解を行うと同時に原料層を10−1000s−1の剪断速度で1−10分間攪拌することにより平均重合度が400以下の粉末セルロースを得るという方法について記載がある。しかしこれらの公報に具体的に開示されている結晶セルロース、粉末セルロースでは乾燥後の75μm以下の粒子の平均L/D、見掛け比容積、見掛けタッピング比容積が小さく圧縮成形性に劣るという課題があった。
【0006】
また特開昭63−267731号公報には特定の平均粒径(30μm以下)、比表面積が1.3m/g以上であるセルロース粉末が記載されているが、粉砕工程を経るために75μm以下の粒子の平均L/Dが小さく成形性が不十分であり、また粒子が小さく軽質なため流動性が悪く、さらには見掛けタッピング比容積が小さくなりすぎて崩壊性が著しく悪いという課題があった。
また、特開平1−272643号公報には特定の結晶形(セルロースI型)を有し、直径0.1μm以上の細孔の気孔率が20%以上で、かつ350メッシュ以上が90%以上であるセルロース粉末について、特開平2−84401号公報には結晶形がI型で、比表面積が20m/g以上、直径0.01μm以上の細孔の全容積が0.3cm/g以上、平均粒径が大きくとも100μmであるセルロース粉末について記載がある。しかしこれらは成形性が比較的高いものの乾燥粉体のL/Dが2.0未満であり本発明のものと異なる。また粒子の窒素比表面積が大きすぎるため、圧縮時に導水管が減少してしまい、崩壊性が悪くなり好ましくない。さらに該発明のセルロース粉末は加水分解後、乾燥前のスラリー媒体として有機溶媒を使用し噴霧乾燥したものであるが、有機溶媒を使用するため防爆構造の乾燥機や有機溶媒の回収システムが必要になる等、コスト高となり実用化されていない。
【0007】
また特開平6−316535号公報には、セルロース質物質を酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる平均重合度100−375、酢酸保持率280%以上、かつ、定数a及びbがそれぞれ0.85−0.90、0.05−0.10の川北の式で表される圧縮特性を有する結晶セルロースであって、見掛け比容積が4.0−6.0cm/g、見掛け密比容積が2.4cm/g以上、比表面積が20m/g未満であり、実質的に355μm以上の粒子がなく平均粒径が30−120μmである結晶セルロースについての記載がある。該公報の結晶セルロース粉末は成形性と崩壊性のバランスに優れるものとの記載があるが、具体的に開示されている、最もバランスに優れる実施例について安息角を実測すると55°を超えており流動性は十分満足のいくものではない。また該公報の結晶セルロースでは、特に高打圧下で成形した場合に高硬度を付与できるものの、乾燥後の粒子の水蒸気比表面積が低く錠剤中の導水管が減少しているため、崩壊が遅延するという問題や、流動性の不良な活性成分が多く配合される処方等では、流動性に劣るために錠剤重量の変動係数が大きくなり薬物の含量均一性に影響を及ぼすという課題があった。
【0008】
さらに特開平11−152233号公報には平均重合度が100−375、75μm篩を通過し38μm篩上に残留する粒子が全重量の70%以上で、かつ、粒子のL/D(長径短径比)の平均値が2.0以上である結晶セルロースについての記載がある。しかし該公報の結晶セルロースは安息角の記載がなく、具体的に開示されている、特開平6−316535号公報の結晶セルロースを篩分する結晶セルロースでは特開平6−316535号公報の結晶セルロースよりもさらに一層流動性、崩壊性が悪くなるという欠点を有していた。また特開昭50−19917号公報には精製パルプを前処理によって平均重合度が450−650になるまで解重合させ、見掛けタッピング比容積が1.67−2.50cm/g、200メッシュ篩を50%以上が通過する粒度にまで機械的粉砕処理を行う錠剤成形用添加剤の製造方法が記載されている。しかし該公報のセルロース粉末では重合度が高く繊維性が発現するために、75μm以下の粒子の平均L/Dや見掛け比容積が大きくなりすぎて、崩壊性、流動性に劣るという欠点があった。また見掛け比容積のわりに見掛けタッピング比容積が小さいことも圧縮した錠剤の崩壊性を悪化させる原因である。
【0009】
以上のように従来のセルロース粉末では、成形性、流動性、崩壊性の諸性質をバランス良く併せ持つものは知られていなかった。
また、医薬品は活性成分の安定性改善、薬物放出速度の調整、味のマスキング、あるいは腸溶化を目的としてコーティングを施した顆粒や細粒剤等の粒剤、あるいはコーティング剤と薬物を混合して他の成分と造粒したマトリックスタイプの粒剤の形態をとることが多い。この粒剤が1mm程度以下の大きさの場合は取扱い易さの観点からカプセル剤とすることがほとんどであったが、コストや服用性の観点から賦形剤と混合して圧縮成形した錠剤とする方が好ましい。しかし、徐放性コーティング顆粒、苦味マスキング顆粒、腸溶性コーティング顆粒等のコーティング皮膜を有する顆粒を圧縮して錠剤にすると、圧縮応力によってコーティング皮膜が損傷を受け、口腔内、胃腸内において溶出速度が増加してしまうために、期待した薬効の発現が達成されないという問題があった。この問題の解決として、特開昭53−142520号公報には結晶セルロースを用いる方法、特開昭61−221115号公報には錠剤に対して約10−50%の結晶セルロースを用いる方法、特開平3−36089号公報には平均粒径30μm以下、比表面積が1.3m/g以上である結晶セルロースを用いる方法、特開平5−32542号公報には直径が0.01μm以上の細孔容積が0.3cm/g以上の多孔構造を有し、比表面積が20m/g以上である結晶セルロースを用いる方法、特開平8−104650号公報には平均重合度が150−220、見掛け比容積が4.0−6.0cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4cm/g以上、比表面積が20m/g未満、酢酸保持率が280%以上、355μm以上の粒子が5重量%未満で、かつ平均粒子径が30−120μmの粒度分布を有し、定数a及びbがそれぞれ0.85−0.90、0.05−0.10の川北の式で表される圧縮特性を有し、500mgを10MPaで10秒間圧縮するときに得られる底面積が1cmの円柱状成型体が、直径方向の破壊強度が10kg以上(SI単位系換算値100N以上)でかつ崩壊時間が100秒以内となる圧縮成形特性をもつ結晶セルロースを用いる方法が記載されている。
【0010】
しかし特開昭53−142520号公報、及び特開昭61−221115号公報の方法では結晶セルロースの圧縮成形性が低いために実用硬度を得るためには圧縮応力をかけざるを得ず、コーティング被膜の損傷を十分に抑えることができないという欠点があった。特開平3−36089号公報の方法では結晶セルロースの流動性が悪いため、錠剤調製時に顆粒と分離偏析を起こしやすいという問題があった。また特開平5−32542号公報の結晶セルロースは有機溶媒を使用して調製されるため、コスト高となり実用的でないという欠点があった。顆粒強度が低い場合等、圧縮応力をかけられない場合には圧縮応力低減のため結晶セルロース含有量を増す必要があるが、その場合特開平8−104650号公報の結晶セルロースでは、崩壊が著しく悪くなり使用が制限されるという欠点があった。
【0011】
また多くの医薬品活性成分は微粒子化して使用することが多く、流動性が著しく悪いため直接圧縮法(直打法)による圧縮成形は容易ではない。特に医薬品活性成分の添加量が多くなるほど圧縮成形が困難となる。上記特開平8−104650号公報には漢方薬粉末又は生薬粉末に対して、上述の通りの結晶セルロースと流動化剤、崩壊剤とを用いると直接打錠法に供することのできる程度の流動性を確保することができ、成形性と崩壊性のバランスに優れた錠剤が得られることについて記載されている。しかし漢方粉末又は生薬粉末に限らず、成形性の乏しい医薬品活性成分についてその製剤中の含有量が増した時には十分な流動性が得られない、また崩壊剤が十分量でないと崩壊遅延や溶出率の低下を起こす等の問題があった。また医薬品活性成分粉末は圧縮成形性に乏しく賦形剤の添加なしには成型物が得られないため、医薬品活性成分に賦形剤を加えて湿式又は乾式の公知の方法を用いて顆粒化する工程を経ることで圧縮成形性、崩壊性、流動性を確保した後に圧縮成形する顆粒圧縮法を用いることが汎用される。また顆粒製造時に顆粒内部とは別に、顆粒外にも賦形剤を添加することにより賦形剤の添加効果を高める手段として、後末法が用いられることも多い。特公平5−38732号公報には、平均粒径30μm以下、比表面積が1.3m/g以上である結晶セルロースを用いる方法、特開平8−104650号公報にも特定の結晶セルロースを用いて顆粒圧縮法により錠剤化する方法について記載されている。しかしこれらの結晶セルロースでは圧縮応力が増した時の崩壊遅延や溶出率の低下を起こす等の問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形性、流動性、崩壊性の諸機能をバランスよく併せ持つセルロース粉末を提供することを目的とする。また、このセルロース粉末を含有することで、特に高打圧下で成形した場合に高硬度であり、かつ崩壊遅延を助長しない錠剤や、圧縮成形したときに顆粒の破壊、顆粒の被膜の損傷が少なく薬物放出特性の変化が少ない顆粒含有錠剤、さらには薬物含有量が多い場合においても錠剤重量にばらつきを生じることなく、硬度崩壊のバランスのとれた錠剤を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した現状に鑑み鋭意検討した結果、セルロース粉末の粉体物性を特定範囲に制御することに成功し、成形性、流動性、崩壊性の諸性質のバランスに優れるセルロース粉末を見出し、本発明を達成したものである。即ち本発明は、下記の通りである。(1)平均重合度が150−450、75μm以下の粒子の平均L/D(長径短径比)が2.0−4.5、平均粒子径が20−250μm、見掛け比容積が4.0−7.0cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4−4.5cm/g、安息角が55°以下であるセルロース粉末、
(2)平均重合度が230−450である(1)のセルロース粉末、
(3)平均重合度がレベルオフ重合度ではない(1)又は(2)のセルロース粉末、
(4)安息角が54°以下である(1)〜(3)のいずれかのセルロース粉末、
(5)水蒸気吸着による比表面積が85m/g以上である(1)〜(4)のいずれかのセルロース粉末、
(6)セルロース粉末0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が170N以上であって、その崩壊時間が130秒以下である(1)〜(5)のいずれかのセルロース粉末、
(7)セルロース粉末と乳糖との等量混合物0.5gを80MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が150N以上であって、その崩壊時間が120秒以下である(1)〜(6)のいずれかのセルロース粉末、
【0014】
(8)i)天然セルロース質物質の加水分解反応工程又はその後の工程における溶液攪拌力を制御することにより、a)平均重合度が150−450、かつb)湿潤状態の平均L/Dが3.0−5.5であるセルロース粒子を含むセルロース分散液を得る工程、ii)得られたセルロース分散液を品温100℃未満で噴霧乾燥する工程、を含むセルロース粉末の製造方法、
(9)平均重合度が230−450である(8)のセルロース粉末の製造方法、
(10)平均重合度がレベルオフ重合度ではない(8)又は(9)のセルロース粉末の製造方法、
(11)乾燥工程が品温が100℃未満の条件下で噴霧乾燥する工程である(8)〜(10)のいずれかのセルロース粉末の製造方法、
(12)(8)〜(11)のいずれかの製造方法により得られ得るセルロース粉末、
(13)(1)〜(7)及び(12)のいずれかのセルロース粉末からなる賦形剤、(14)(1)〜(7)及び(12)のいずれかのセルロース粉末又は(13)の賦形剤を含む成型体、
(15)成型体が1つ以上の活性成分を含む錠剤である(14)の成型体、
(16)活性成分を30重量%以上含む(15)の成型体、
(17)圧縮に弱い活性成分を含む(14)〜(16)のいずれかの成型体、
(18)活性成分が被覆されている(17)の成型体、
(19)成型体が速崩壊性である(14)〜(18)のいずれかの成型体、
(20)流動化剤を含む(14)〜(19)のいずれかの成型体。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明のセルロース粉末は、その平均重合度が150−450,好ましくは200−450、さらに好ましくは230−450である必要がある。平均重合度が150未満だと成形性が不足するので好ましくなく、また450を超えると繊維性が強く現れるため粉体の流動性及び崩壊性が低下するので好ましくない。平均重合度が230−450の場合は成形性、崩壊性、流動性のバランスが特に優れるので好ましい。また平均重合度はレベルオフ重合度ではないことが好ましい。レベルオフ重合度まで加水分解させてしまうと製造工程における攪拌操作で粒子L/Dが低下しやすく成形性が低下するので好ましくない。本発明でいうレベルオフ重合度とは2.5N塩酸、沸騰温度、15分の条件で加水分解した後、粘度法(銅エチレンジアミン法)により測定される重合度をいう。セルロース質物質を温和な条件下で加水分解すると、酸が浸透しうる結晶以外の領域、いわゆる非晶質領域を選択的に解重合させるため、レベルオフ重合度といわれる一定の平均重合度をもつことが知られており(INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY,Vol.42,No.3,p.502−507(1950))、その後は加水分解時間を延長しても重合度はレベルオフ重合度以下にはならない。従って乾燥後のセルロース粉末を2.5N塩酸、沸騰温度、15分の条件で加水分解した時、重合度の低下がおきなければレベルオフ重合度に達していると判断でき、重合度の低下が起きれば、レベルオフ重合度でないと判断できる。
【0016】
レベルオフ重合度からどの程度重合度を高めておく必要があるかということについては、5〜300程度であることが好ましい。さらに好ましくは10〜250程度である。5未満では粒子L/Dを特定範囲に制御することが困難となり成形性が低下して好ましくない。300を超えると繊維性が増して崩壊性、流動性が悪くなって好ましくない。
本発明のセルロース粉末は250μm篩に残留する粒子の割合が50重量%以下であることが好ましい。250μmを超える粒子は造粒され緻密な構造となるので、50重量%を超えて存在すると、成形性低下、崩壊悪化の原因となるので好ましくない。好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
本発明のセルロース粉末の平均粒径は20−250μmである必要がある。20μm未満だと付着凝集性が増してハンドリングが悪く、さらに流動性も悪くなり、また250μmを超えると活性成分との分離偏析が起こり、製剤の含量均一性を悪化させる恐れがあるので好ましくない。好ましくは、20−120μmである。
本発明のセルロース粉末は75μm以下の粒子の平均L/Dが2.0−4.5である必要があり、好ましくは2.2−4.2である。75μm以下の粒子の平均L/Dが2.0未満だと、塑性変形性及び成形性が低下し好ましくない。4.5を超えると流動性、崩壊性が悪化するので好ましくない。また繊維性が現れ弾性回復しやすくなるためか、成形性を損なう傾向にある。
【0017】
粉体の塑性変形性の指標として平均降伏圧があり、この値が低いほど塑性変形性が良く、圧縮成形性に優れる。本発明の高成形性賦形剤は、該粉体0.5gを10MPaまで圧縮したときの平均降伏圧が35MPa以下であることが好ましい。平均降伏圧が35MPaを超えると、成形性が低下し好ましくなく、特に好ましくは30MPa以下である。
本発明のセルロース粉末は見掛け比容積が4.0−7.0cm/gである必要がある。見掛け比容積が4.0cm/g未満であると成形性が低下し、7.0cm/gを超えると崩壊性、流動性が低下するので好ましくない。また繊維性が現れ弾性回復しやすくなるためか、成形性を損なう傾向にある。好ましくは4.0−6.5cm/g、特に好ましくは4.2−6.0cm/gである。
見掛けタッピング比容積は2.4−4.5cm/gである必要がある。好ましくは2.4−4.0cm/g、特に好ましくは2.4−3.5cm/gである。見掛け比容積が4.0−7.0cm/gの範囲にあっても、見掛けタッピング比容積が2.4cm/g未満であると、錠剤にしたときに圧密化されすぎて崩壊性が悪化するので好ましくない。
【0018】
また、本発明のセルロース粉末は安息角が55°以下である必要がある。セルロース粉末では安息角が55°を超えると、流動性が著しく悪くなる。特に流動性の乏しい活性成分を多量に加えて錠剤化する際には、圧縮成形用賦形剤の流動性が悪いと錠剤の重量変動が大きくなって実用に供さない。好ましくは54°以下、さらに好ましくは53°以下である。特に好ましくは52°以下である。本発明でいう安息角とは粉体水分を3.5〜4.5%に調整した後、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)で測定した安息角である。このような優れた流動性を付与するためには、特定範囲の圧縮度[%](=100×(見掛けタッピング密度[g/cm]−見掛け密度[g/cm])/見掛けタッピング密度[g/cm])を有していることが好ましく、圧縮度がおおよそ30−50%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは30−49%、特に好ましくは30−47%である。
但し、本発明でいう見掛けタッピング密度及び見掛け密度とはそれぞれ本発明で定義した見掛けタッピング比容積の逆数及び見掛け比容積の逆数である。
また、本発明のセルロース粉末は、水蒸気吸着による比表面積が85m/g以上であることが好ましい。85m/g未満だと粒子中への水侵入面積が小さいために、錠剤にした時の導水管量も小さくなって崩壊性が低下するため好ましくない。この値の上限は特に限定しないが、乾燥によって減少する値と考えられることから、未乾燥物の値が一応の目安とするとおよそ200m/g程度である。
【0019】
また本発明のセルロース粉末は、窒素吸着法による比表面積が0.5−4.0m/gの範囲にあることが好ましい。0.5m/g未満では成形性が低下して好ましくない。4.0m/gを超えると崩壊性が著しく悪化するので好ましくない。好ましくは0.8−3.8m/g、さらに好ましくは0.8−3.5m/gである。
窒素比表面積が増すと、圧縮時に粒子間隙(導水管)の潰れが起こり崩壊が悪くなる傾向にあるが、一定範囲内であればこの値が高くとも水蒸気比表面積を一定量以上に制御すれば導水管量を維持でき、崩壊性を損なわないようにすることができる。成形性を示す実用的な物性値は成型体の硬度であり、この値が大きいほど圧縮成形性に優れる。また、崩壊性を示す実用的な物性値は成型体の崩壊時間であり、この時間が短いほど崩壊性がよい。一般に硬度が高いほど崩壊性が悪化すること、医薬品等の活性成分は成形性の乏しいものが多く、高打圧で圧縮せざるを得ないことを考慮すると、高打圧で圧縮した成型体の錠剤硬度と崩壊時間のバランスが実用的に重要である。
本発明のセルロース粉末0.5gを20MPaで10秒間圧縮することによって得られる直径1.13cmの円柱状成型体は直径方向の破壊荷重が170N以上であることが好ましい。さらに好ましくは180N以上である。特に好ましくは190N以上である。またその崩壊時間(37℃純水溶液、ディスクあり)は130秒以下であることが好ましい。さらに好ましくは120秒以下である。特に好ましくは100秒以下である。また、本発明のセルロース粉末と乳糖(DMV社製,Pharmatose 100M)との等量混合粉体0.5gを80MPaで10秒間圧縮することによって得られる直径1.13cmの円柱状成型体は直径方向の破壊荷重が150N以上であることが好ましい。さらに好ましくは170N以上である。特に好ましくは180N以上である。またその崩壊時間(37℃純水溶液、ディスクあり)は120秒以下であることが好ましい。さらに好ましくは110秒以下である。特に好ましくは90秒以下である。
【0020】
また、本発明のセルロース粉末は、該粉体0.05gを90MPaで10秒間圧縮することによって得られる直径0.8cmの円柱状成形体が、アセトニトリル溶媒浸漬処理後、下式(1)の吸着特性を有することが好ましい。
ln[θe/(θe−θ)]=Ka・t (1)
(但しKa≧0.0200min−1であり、θeは相対湿度55%RH下での錠剤の飽和水蒸気吸着率[%]、θは水蒸気吸着時間t[分]における相対湿度55%RH下での錠剤の水蒸気吸着率[%]を表す。)
本発明でいうアセトニトリル溶媒浸漬処理とは円柱状成形体をアセトニトリル溶媒が十分浸透するよう48時間浸漬した後、25℃、窒素気流下、相対湿度が0%RHになるまで乾燥することをいう。操作の過程で吸湿や吸着が考えられる場合、例えば(1)式の直線性が低い場合には加熱真空乾燥してセルロース表面を清浄する必要がある。Ka値が0.0200min−1未満であると水の吸着速度が遅く、崩壊時間が長くなる傾向にあるため好ましくない。アセトニトリル溶媒浸漬処理の効果は以下のように推定している。セルロース粉末の圧縮では粒子間水素結合の増大と、粒子内ミクロ空隙(導水管)の潰れが起こるが、高密度に圧縮された円柱状成形体をアセトニトリルに浸漬すると、アセトニトリルは粒子間水素結合部位には入らず、粒子内ミクロ空隙(導水管)に侵入し、導水管径を拡大する作用があるようである。
すなわち、セルロース粉末中の粒子内ミクロ空隙(導水管)を圧縮後に多く残している錠剤ほど、アセトニトリル溶媒が浸透してその導水管径を広げるために、その後の水蒸気吸着速度が速くなるものと思われる。そしてこのような錠剤ほど水を速く吸収するため水中崩壊時間が短くなるものと思われる。また、Ka値の上限については特に定めていないが、この値が大きいほど崩壊時間が短くなる傾向があり、好ましくは0.0400min−1以下であることが好ましい。Ka値の好ましい範囲は0.0210−0.0400min−1、さらに好ましくは0.0220−0.0400min−1である。
【0021】
本発明のセルロース粉末の製造方法は、i)天然セルロース質物質の加水分解反応工程又はその後の工程における溶液攪拌力を制御することにより、a)平均重合度が150−450、かつb)湿潤状態の平均L/Dが3.0−5.5であるセルロース粒子を含むセルロース分散液を得る工程、ii)得られたセルロース分散液を品温100℃未満で噴霧乾燥する工程、を含む必要がある。
本発明でいう天然セルロース質物質とは、木材、竹、コットン、ラミー等、セルロースを含有する天然物由来の植物性繊維質物質であり、セルロースI型の結晶構造を有しているものであることが好ましい。製造収率の観点からはこれらを精製したパルプであることが特に好ましく、α−セルロース含量が85%以上であることが望ましい。
平均重合度が150−450のセルロース分散液を得るための条件は、例えば20−60℃、0.1−4Nの塩酸水溶液中の温和な条件下で加水分解することが挙げられる。しかし、セルロース質物質をレベルオフ重合度まで加水分解してしまうと、製造工程における攪拌操作で粒子L/Dが低下しやすく成形性が低下するので好ましくない。
また、乾燥前のセルロース分散液中の粒子は、湿潤状態で篩過(JIS標準篩使用)したとき、75−38μm篩に残留する粒子の平均L/Dが3.0−5.5の範囲にあることが好ましい。好ましくは3.2−5.2である。セルロース分散液の粒子は乾燥により凝集し、L/Dが小さくなるので、乾燥前の粒子の平均L/Dを一定範囲に保つことで高成形性でかつ崩壊性の良好なセルロース粉末が得られる。乾燥前の粒子の平均L/Dを一定範囲に保つには、加水分解反応中又はその後の工程における溶液攪拌力を特定の強さに制御することにより達成できる。
【0022】
反応中又はその後工程における攪拌は、セルロース繊維を短くする作用があり、攪拌が強すぎると粒子の平均L/Dが小さくなって十分な成形性を得られないので、粒子の平均L/Dが3.0以上となるように攪拌力を抑制する必要がある。また攪拌が弱すぎると繊維性が強くなりかえって成形性が低下し、また崩壊が著しく悪くなるので、粒子の平均L/Dが5.5を超えないように攪拌力を維持するのが好ましい。
攪拌力の大きさは例えば以下の経験式(2)により、求められるP/V(kg・m−1・sec−3)値を参考にして制御することができる。しかしながらP/V値は攪拌槽の大きさ、形状、攪拌翼の大きさ、形状、回転数、邪魔板数等に依存するので絶対的な数値ではない。乾燥前の各工程におけるP/Vの最大値は0.01〜10000の範囲内にあり、攪拌槽、攪拌翼の種類毎に回転数を制御することによって上記範囲内で下限、上限値を決定できる。例えばNp=8、V=0.03、d=0.3ではP/Vは0.3〜80の範囲に、Np=2.2、V=0.07、d=0.05では0.01〜5の範囲に、Np=2.2、V=1、d=1ではP/Vを1〜10000の範囲にする等、使用する攪拌漕、攪拌翼の回転数を変えた時のP/Vの値と75μm〜38μmの粒子の平均L/Dの大きさを比較して適宜決定すればよい。
P/V=(Np×ρ×n×d)/V (2)
ここでNp(−)は動力数、ρ(kg/m)は液密度、n(rps)は攪拌翼の回転数、d(m)は攪拌翼の径、V(m)は液の体積である。
【0023】
上記操作により得られたセルロース分散液は乾燥によって粉末にする必要がある。反応後、洗浄、pH調整した乾燥前のセルロース分散液のIC(電気伝導度)は200μS/cm以下であることが好ましい。200μS/cmを超えると、粒子の水中での分散性が悪くなり崩壊が悪くなる。好ましくは150μS/cm、さらに好ましくは100μS/cm以下である。セルロース分散液を調製する際には水の他、本件発明の効果を損なわない範囲であれば、有機溶媒を少量含む水であってもよい。
成形性、流動性、崩壊性のバランスがよいセルロース粉末を得るためには、品温が100℃未満で噴霧乾燥を行うことが好ましい。本発明でいう品温とは、噴霧乾燥時の入口温度ではなく排風温度のことである。噴霧乾燥では反応後のセルロース分散液中の凝集粒子が全方向からの熱収縮応力によって圧密され、緻密化(重質化)して流動性が良好なものとなり、また凝集粒子間の水素結合が弱いために崩壊性が良好なものになる。乾燥前のセルロース粒子分散液濃度は25重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは20重量%以下である。セルロース分散液濃度が高すぎると乾燥中に粒子が凝集しすぎてしまい、乾燥後の粒子の平均L/Dが低下し、嵩密度が増大するために成形性が低下して好ましくない。またセルロース分散液濃度の下限は1重量%以上であることが好ましい。1重量%未満では流動性が悪化するため好ましくない。また生産性の観点からもコスト高となり好ましくない。
【0024】
品温が100℃未満で噴霧乾燥を行う本発明の乾燥方法に比べて、特開平6−316535号公報、特開平11−152233号公報に記載されたセルロース分散液を100℃以上の温度で加熱後、噴霧乾燥する又はドラム乾燥する方法、あるいは加熱せずに薄膜状態で乾燥する方法では凝集粒子間の水素結合が強固に形成されてしまうため崩壊性が低下して好ましくない。このような乾燥方法ではたとえ乾燥前の粒子のL/Dが特定範囲下限未満であっても、スラリー中のセルロース粒子が粒子の長軸方向に揃った状態で凝集しやすいために、乾燥による粒子のL/D低下を抑制することができ良好な成形性を付与することができるものの、同時に崩壊性、流動性を同時に付与することはできない。成形性に加えて流動性、崩壊性の良好なものを得るためには、乾燥前に粒子のL/Dを特定範囲に制御しておき、品温が100℃未満で噴霧乾燥することによって初めて達成される。乾燥前の粒子のL/Dを特定範囲に制御するためには、上述したように平均重合度がレベルオフ重合度とならない条件で加水分解することが好ましい。
また、ドラム乾燥、薄膜乾燥で得られるセルロース粉末では、所望の粉体物性を与えるためには乾燥後に粉砕することが必須であるが、全ての粒子を粉砕してしまうと、粒子表面が緻密でなくなり凹凸が生じるためか、粒子同士の摩擦による静電気の発生量が多いことも流動性が悪くなる要因であり好ましくない。但し、本発明の効果を損なわない程度に、乾燥後に粉砕することは可能である。
【0025】
乾燥前スラリーを有機溶媒により全置換又は必要以上に置換後に乾燥する方法では、有機溶媒が粒子間隙から蒸発する際の毛細管力が水に比較して低くなり、粒子間水素結合の形成を抑制するため、窒素比表面積が増大しすぎて崩壊性が低下して好ましくない。有機溶媒の添加はスラリー溶媒の50重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。また有機溶媒を大量に使用する場合には乾燥設備の防爆化、有機溶媒回収設備等、設備が大がかりとなりコスト高になる観点からも好ましくない。
また本発明のセルロース粉末は乾燥減量が8%以下の範囲にあることが好ましい。8%を超えると成形性が悪くなり好ましくない。
本発明でいう賦形剤とは、医薬、食品、工業用途において、活性成分を公知の方法を用いて製剤化する際に、結合剤、崩壊剤、造粒助剤、充填剤、流動化剤等の目的で使用されるものをいう。好ましくは圧縮成形性、崩壊性、流動性のバランスに特に優れる圧縮成形用賦形剤である。
本発明でいう成型体とは、本発明のセルロース粉末を含み、混合、攪拌、造粒、打錠、整粒、乾燥等の公知の方法を適宜選択して加工した成型物をいう。成型物の例としては、医薬品に用いる場合、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、パップ剤の固形製剤等が挙げられる。医薬品に限らず、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒等に利用されるものも本発明に含まれる。
本発明でいう成型体は、本発明のセルロース粉末を含有していればよく、その量は特に限定しないが、好ましくは成型体重量に対して1重量%以上必要である。1重量%未満では成型体が磨損、破壊するなどして十分な物性を付与できない。好ましくは、3重量%以上、好ましくは5重量%以上である。
【0026】
さらに、本発明でいう成型体は、本発明のセルロース粉末の他に、必要に応じて活性成分、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤等の他の添加剤を含有することも自由である。
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン等が挙げられる。
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖などの糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、コンニャクマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機類等が挙げられる。
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等が挙げられる。矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントールなどが挙げられる。
【0027】
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等が挙げられる。着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィリンナトリウム、酸化チタン、リボフラビンなどが挙げられる。甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等が挙げられる。界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
また本発明でいう活性成分とは、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤等をいい、粉体状、結晶状、油状、溶液状などいずれの形状でもよい。また溶出制御、苦味低減等の目的でコーティングを施したものであってもよい。
例えば医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。
本発明の成型体に含まれる活性成分の量は成型体重量に対して0.01〜99重量%である。活性成分が0.01重量%未満では十分な薬効が期待できない。また99重量%以上では賦形剤量が十分でなく成型体が磨損、破壊するなどして満足する物性を付与できない。
【0028】
また本発明のセルロース粉末は、成型体中の活性成分含量が多い場合に使用すると、高打圧下でも崩壊遅延を助長せず十分な成形性を付与できる、あるいはセルロース粉末の添加量を低減でき成型体を小型化できる、あるいは摩損度が低く瓶充填時や運搬時の錠剤の粉化、割れかけの発生が少ない等の利点があり特に有効である。成型体中の活性成分の含量が5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上の場合に有効である。
本発明のセルロース粉末は、圧縮成形性に優れるため、少量の配合量又は低い圧縮力で成型することが可能であり、活性成分の錠剤化に極めて適している。成形性に乏しい医薬品活性成分の錠剤化をはじめ、漢方薬、生薬、風邪薬、ビタミン剤等の大型錠剤の小型化、さらには口腔内速溶解錠、顆粒含有錠等の調製が可能となる。
本発明でいう錠剤とは、本発明のセルロース粉末と、必要に応じて他の添加剤を含んだものであって、直接打錠法、顆粒圧縮法、後末法のいずれかで得られ得る成型体をいう。直接打錠により得られた錠剤が特に好ましい。
医薬品薬効成分が成形性の乏しい場合に本発明のセルロース粉末を使用すると、高打圧下での崩壊遅延を助長せずに打錠できる等の利点があり特に有効である。成形性が乏しいか否かは、医薬品活性成分0.5gを臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、底面積が1cmの平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)で圧力が100MPaになるまで圧縮した時(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1A等の静的圧縮機を使用し、圧縮速度は20−30cm/min程度)の錠剤硬度により判別できる。医薬品活性成分の錠剤硬度が100N未満、好ましくは50N未満、さらに好ましくは10N未満のものに対して特に有効である。そのような薬物としてはフェナセチン、アセトアミノフェン、エテンザミド等が挙げられる。
【0029】
また本発明のセルロース粉末を流動化剤、崩壊剤と併用すると、錠剤製造時の流動性を損なうことなく成形性、崩壊性の特に優れた錠剤を製造することが可能となる。崩壊剤としては少量添加でも効果を発揮するという観点から、クロスカルメロースナトリウム(「Ac−Di−Sol」、FMC製等)等のスーパー崩壊剤の使用が好ましい。流動化剤としては特に軽質無水ケイ酸が好ましく、「アエロジル」(日本アエロジル(株)製)、「カープレックス」(塩野義製薬製)、「サイロイド」(富士デヴィソン製)、「アドソリダー」(フロイント産業製)等を挙げることができる。特に限定しないが、本発明の結晶セルロースが1〜99重量%、崩壊剤が0.5〜20重量%、流動化剤が0.1〜5重量%程度が好適な例として挙げることができる。
また活性成分と流動化剤をはじめに予備混合しておいた後に、本発明のセルロース粉末と崩壊剤、必要に応じて他の添加剤を混合してから錠剤化する方が、錠剤中の全成分を一括混合する場合に比較して流動性、成形性に優れるので好ましい。活性成分の流動性が悪いほど、活性成分の配合量が多いほど、流動化剤の添加順序の効果が顕著となる。
本発明の成型体は、速崩壊性が要求される場合には、低打圧で十分な硬度が得られることから成型体を厚くすることができ、従って成型体中に導水管を多く残すことが可能なために特に有効である。速崩壊性とは、成型体が水、人口胃液、人口腸液、唾液等の媒体中で1分以内に崩壊する性質をいう。このような特徴を有する製剤としては口腔内速溶解錠、口腔内速崩壊錠等が挙げられる。
【0030】
また本発明のセルロース粉末はコーティング皮膜を有する顆粒等の錠剤化にも極めて適している。コーティング顆粒と本発明のセルロース粉末と、必要に応じてその他の添加剤を混合して錠剤化すると、圧縮応力を大幅に低減しても実用硬度を得ることができるため、圧縮応力によるコーティング皮膜の損傷を抑えることができ、期待する溶出特性を顆粒に持たせたまま錠剤化することが可能である。
本発明でいう圧縮に弱い活性成分とは、圧縮応力や熱によって失活する活性成分あるいは活性成分に施した被覆部分が圧力によって損傷を受けることにより期待した溶出特性が発揮できない活性成分等をいう。
本発明の活性成分が被覆された成型体とは、粉末、粒剤(細粒、顆粒等)等の上記に定義した成型体の形態を持ち、1つ以上の活性成分を含有したものであって、活性成分そのものがフィルムコーティングされたもの、活性成分とその他の添加剤で造粒した粒子がフィルムコーティングされたもの、活性成分とコーティング剤を混合して造粒することにより活性成分を被覆したもの、あるいはこれらを組み合わせたもの等をいう。コーティング剤は味のマスキング、徐放性、腸溶性、防湿等の目的に使用され、例えばセルロース系コーティング剤(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(オイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、シェラック、シリコン樹脂等が挙げられ、これらを単独又は2つ以上組み合わせて用いてもよい。これらのコーティング剤の使用方法は公知の方法を用いることができる。コーティング剤は有機溶媒に溶解しても、水に懸濁させてもよい。水に懸濁させた状態で医薬品活性成分や他の成分とともに造粒することも自由である。
【0031】
本発明の活性成分が被覆された成型体中に含まれる本発明のセルロース粉末の配合量は多いほどコーティング皮膜損傷の抑制に効果があり、1〜90重量%であることが好ましい。1重量%未満だと十分な効果が得られず、90重量%を超えると活性成分量が不十分となり好ましくない。さらに好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは5〜70重量%である。
また本発明のセルロース粉末は、糖衣錠においては糖衣の補強剤、押出造粒における押出性改善剤、破砕造粒、流動層造粒、高速攪拌造粒、転動流動造粒等における造粒助剤等の目的で湿式造粒においても使用することができ、顆粒剤や打錠用の顆粒を調製することが可能である。打錠用顆粒の調製には乾式造粒法を用いてもよい。さらにこのように公知の方法で得られた打錠用顆粒に本発明のセルロース粉末を添加して圧縮成型する方法(後末法)で錠剤化することも可能である。本発明のセルロース粉末は吸水性が高く、水溶解度の高い医薬品活性成分を造粒する場合にも造粒速度を遅くできるために粗大粒子の発生を低減して造粒収率を高めることに寄与する。また本発明のセルロース粉末は粒子密度が低いため造粒物が嵩高く、圧縮成形性の高い打錠用顆粒を得ることにも寄与する。またブロッキング防止、流動性改善等の目的で散剤に配合したり、充填性改善の目的等でカプセル剤に配合することも可能である。
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。なお、実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
1)平均重合度
第13改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された銅エチレンジアミン溶液粘度法により測定した値。
2)乾燥前粒子のL/D
乾燥前のセルロース分散液中の粒子の平均L/Dは以下のように測定した。セルロース分散液をJIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、75μm篩を通過し38μm篩に残留する粒子について、粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、装置:Hyper700,ソフトウエア:Imagehyper)、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を粒子のL/Dとした。粒子の平均L/Dとしては少なくとも粒子100個の平均値を用いた。
3)乾燥減量[%]
粉末1gを105℃、3時間乾燥し、重量減少量を重量百分率で表した。
4)250μm篩に残留する粒子の割合[%]
目開き250μmのJIS標準篩(Z8801−1987)を用い、ロータップ式篩振盪機(平工製作所製シーブシェーカーA型)で試料10gを10分間篩分し、250μm篩に残留する粒子の重量を全重量に対する重量百分率で表した。
5)75μm以下の粒子の平均L/D
エアージェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)を用い、JIS標準篩75μmで篩過した粒子について、粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、装置:Hyper700,ソフトウエア:Imagehyper)、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を粒子のL/Dとした。粒子の平均L/Dとしては少なくとも粒子400個の平均値とした。
但し、個々の粒子は絡まりがないように予めばらけた状態にして測定する必要がある。
【0033】
6)見掛け比容積[cm/g]
100cmのガラス製メスシリンダーに粉体試料を定量フィーダーなどを用い、2−3分かけて粗充填し、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平にならし、その容積を読みとり、これを粉体試料の重量で除した値である。粉体の重量は容積が70−100cm程度になるように適宜決定する。
7)見掛けタッピング比容積[cm/g]
市販粉体物性測定機(ホソカワミクロン製、パウダーテスターT−R型)を用い、10
0cmカップに粉体を充填し、180回タッピングした後、カップの体積を、カップに充填されて残る粉体層の重量で除して求めた。
8)安息角[°]
粉体水分(赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−220型、1g、105℃)で測定する。)を3.5−4.5%に調整した後、市販粉体物性測定機(ホソカワミクロン製、パウダーテスターT−R型)でオリフィス径0.8cmの金属製ロート(静電気の発生しない材質であること)、振動目盛1.5の条件で粉体を落下させ、粉体の作る山の稜線角度(2稜線角度測定、測定間隔3°)を測定した。3回測定の平均値で示した。
9)圧縮度[%]
圧縮度は上記で定義した見掛け比容積、見掛けタッピング比容積を用いて、下式(3)より求めた。
圧縮度=100×[(1/見掛けタッピング比容積)−(1/見掛け比容積)]/(1/見掛けタッピング比容積) (3)
【0034】
10)平均粒径[μm]
粉体試料の平均粒径はロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより粒度分布を測定し、累積重量50%粒径として表した。
11)水蒸気比表面積[m/g]
動的水蒸気吸着装置DVS−1(Surface Measurement Systems Ltd.製)を用い、吸着ガスとして水蒸気を使用し、以下の測定ステップに従って0−30%RHの範囲において試料の水蒸気吸着量を求め、BET法により算出した。水の分子占有面積は8.1Åとして計算した。試料はセルロース粉末約0.10gを5cmサンプル管に入れ100℃、3時間真空乾燥し、試料中の水分を除去したものを0.01−0.02g上記装置に入れて測定を行った。
(測定ステップ)
試料を下記の各相対湿度下に下記の測定時間だけ放置し試料の水蒸気吸着量を測定した。
相対湿度 測定時間
0%RH 200分以下
3%RH 150分以下
6、9、12、15、18、21、24、27、30%RH 100分以下
【0035】
12)窒素吸着比表面積[m/g]
島津製作所(株)製フローソーブII2300を用い、吸着ガスとして窒素を使用しBET法により測定した。
13)平均降伏圧[MPa]
粉体の水分(赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−220型、1g、105℃)で測定する。)を3.5−4.5%に調整した後、粉体試料0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、底面積が1cmの平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)で圧力が10MPaになるまで圧縮する(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用し、圧縮速度は1cm/分とした)。応力Pとその時の粉体層高さh[cm]をデータ取り込み速度0.02秒でコンピュータに取り込み記録する。
応力Pとその時の粉体層体積V[cm]から計算されるln[1/(1−D)]の関係を図示し、応力P[MPa]が2−10MPaの範囲について、最小自乗法で直線回帰し、その傾きkの逆数を平均降伏圧とした。但しV[cm]は平面杵の底面積(1cm)と応力Pにおける粉体層の高さh(cm)の積で表され、粉体層の高さhは圧縮機の系の歪み(臼杵、ロードセル、プランジャー等の合計の歪み)がない状態で測定しなければならない。また、Dは以下の(4)式より計算した。
D=[(0.5×(1−W/100))/V]/1.59 (4)
ここでDは錠剤の充填率、Wは赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−220型、1g、105℃)で測定した水分[%]、1.59は空気比較式比重計(ベックマン社製、ピクノメーター930)で測定した時のセルロース粉末の真密度[g/cm]である。
【0036】
14)錠剤の水蒸気吸着速度 Ka[1/分]
試料0.05gを90MPaで10秒間圧縮することによって得られる直径0.8cmの円柱状成形体(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用し、圧縮速度は29cm/minとした。)を、アセトニトリル(液体クロマトグラフ用)で48時間浸漬処理した後、動的蒸気吸着測定装置((株)マイクロテック・ニチオン製、DVS−1型)に入れ、25℃、窒素気流下、相対湿度を0%RHに設定し、錠剤重量が十分平衡に達する(5分間の重量変動率が0.0015%/分以下)まで乾燥させる。その後相対湿度を55%RHに設定し、平衡に達する(5分間の重量変動率が0.0015%/分以下)まで1分ごとに錠剤重量を記録する。水蒸気吸着時間tとln「θe/(θe−θ)]の関係を図示し、20−100分の範囲について最小自乗法で直線回帰し、その傾きをKaとする。但し相対湿度55%RHにおける錠剤の飽和水蒸気吸着率θe[%],水蒸気吸着時間tでの相対湿度55%RHにおける錠剤の水蒸気吸着率θ[%]はそれぞれ以下のように求める。
θe=100×ms/m[%] (5)
θ=100×mt/m[%] (6)
ここでmは相対湿度0%RHで十分平衡に達した時の錠剤重量[g]、mtは水蒸気吸着時間tでの相対湿度55%RHにおける錠剤の重量[g]、msは相対湿度55%RHで十分平衡に達したときの錠剤重量[g]である。
【0037】
15)硬度[N]
円柱状成形体あるいは錠剤をシュロインゲル硬度計(フロイント産業(株)製、6D型)を用いて、円柱状成形体あるいは錠剤の直径方向に荷重を加え、破壊したときの荷重を測定した。試料5個の数平均で示した。セルロース粉末100%の円柱状成型体及びセルロース粉末と乳糖の等量混合物の円柱状成型体は以下のようにして作製した。試料0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)で圧縮した。セルロース粉末100%の場合には20MPaで圧縮し、その応力を10秒間保持し円柱状成形体を作製した(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用し、圧縮速度は10cm/分程度とした)。また、セルロース粉末と乳糖の等量混合物の場合には80MPaで圧縮し、その応力を10秒間保持し円柱状成形体を作製した(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用し、圧縮速度は25cm/分程度とした)。
16)崩壊時間[秒]
第13改正日本薬局方、一般試験法、錠剤の崩壊試験法に準じて崩壊試験を行った。円柱状成形体あるいは錠剤について、崩壊試験機(富山産業(株)製、NT−40HS型、ディスクあり)で、37℃純水中における崩壊時間として求めた。試料6個の数平均で示した。
【0038】
17)錠剤のCV値[%]
錠剤10個を精秤した時の錠剤重量の変動係数とした。
18)錠剤の摩損度[%]
錠剤20個の重量(Wa)を測定し、これを錠剤摩損度試験器(PTFR−A、PHARMA TEST製)に入れ、25rpm、4分間回転した後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再度重量を測定し(Wb)、(7)式より計算した。
摩損度 = 100×(Wa−Wb)/Wa (7)
19)薬物の溶出率[%]
自動溶出試験機DT−610(日本分光工業(株)製)を使用し、パドル法で測定した。試験液は第13改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法の試験液第1液を用いた。測定は3回行いその平均値をとった。
【0039】
【実施例】
実施例1(参考例)
市販SPパルプ(重合度1030、レベルオフ重合度は220)2kgを細断し、4N塩酸水溶液30L中に入れ、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)で攪拌(攪拌速度10rpm)しながら、60℃、72時間加水分解した。得られた酸不溶解残渣はヌッチェを使用して濾過し、ろ過残渣をさらに70Lの純水で4回洗浄し、アンモニア水で中和後、90Lのポリバケツに入れ純水を加え、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、翼径約5cm)で攪拌(攪拌速度100rpm)しながら濃度10%のセルロース分散液とした(pH;6.7、IC;45μS/cm)。
これを噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)してセルロース粉末A(乾燥減量3.5%)を得た。セルロース粉末Aの物性及びセルロース粉末A100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Aと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0040】
実施例2
パルプを市販SPパルプ(重合度790、レベルオフ重合度は220)、加水分解条件を4N、40℃、48時間、セルロース分散液濃度を8%、pHを6.0、ICを35μS/cmとする以外は実施例1と同様に操作しセルロース粉末B(乾燥減量4.2%)を得た。得られたセルロース粉末Bの物性及びセルロース粉末B100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Bと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
実施例3
反応中の攪拌速度を5rpm、セルロース分散液濃度を12%(この時の攪拌速度50rpm)、pHを6.5、ICを40μS/cm、とする以外は実施例2と同様に操作しセルロース粉末C(乾燥減量3.8%)を得た。得られたセルロース粉末Cの物性及びセルロース粉末C100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Cと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
実施例4
セルロース分散液濃度を16%、pHを6.9、ICを65μS/cmとする以外は実施例2と同様に操作しセルロース粉末D(乾燥減量3.2%)を得た。得られたセルロース粉末Dの物性及びセルロース粉末D100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Dと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0041】
実施例5
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、40時間、セルロース分散液濃度を8%、pHを6.3、ICを38μS/cmとする以外は実施例2と同様に操作しセルロース粉末E(乾燥減量4.0%)を得た。得られたセルロース粉末Eの物性及びセルロース粉末E100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Eと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
実施例6
パルプを市販SPパルプ(重合度870、レベルオフ重合度は220)、加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、24時間、反応中の攪拌速度を15rpm、セルロース分散液濃度を8%、pHを5.7、ICを30μS/cmとする以外は実施例1と同様に操作しセルロース粉末Fを得た。得られたセルロース粉末Fの物性及びセルロース粉末F100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Fと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
実施例7
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、20時間、反応中の攪拌速度を20rpm、セルロース分散液濃度を6%、pHを7.1、ICを180μS/cmとする以外は実施例1と同様に操作しセルロース粉末Gを得た。得られたセルロース粉末Gの物性及びセルロース粉末G100%を圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Gと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0042】
比較例1
市販SPパルプ(重合度790、レベルオフ重合度は220)を3N塩酸水溶液30L、105℃、30分、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)で攪拌(攪拌速度30rpm)しながら加水分解し、得られた酸不溶解残渣はヌッチェを使用して濾過し、ろ過残渣をさらに70Lの純水で4回洗浄し、アンモニア水で中和後、90Lのポリバケツに入れ純水を加え、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、翼径約5cm)で攪拌(攪拌速度500rpm)しながら、濃度17%のセルロース分散液(pH;6.4、IC;120μS/cm)を得た。
これをドラム乾燥機(楠木製作所KDD−1型、スチーム圧力0.35MPa、ドラム表面温度136℃、ドラム回転数2rpm、溜め部分散体温度100℃)で乾燥後、ハンマーミルで粉砕し、目開き425μmの篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末H(乾燥減量3.9%、特開平6−316535号公報記載の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Hの物性及びセルロース粉末Hを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Hと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0043】
比較例2
市販SPパルプ(重合度1030、レベルオフ重合度は220)2kgを細断し、0.14N塩酸水溶液30L、121℃、1時間の条件で、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)で攪拌(攪拌速度30rpm)しながら加水分解した。得られた酸不溶解残渣はヌッチェを使用して濾過し、ろ過残渣をさらに70Lの純水で4回洗浄し、アンモニア水で中和後、90Lのポリバケツに入れ、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、翼径約5cm)で攪拌(攪拌速度500rpm)しながら濃度17%のセルロース分散液を得た(pH;6.4、IC;64μS/cm)。
これを噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温度180〜220℃、出口温度70℃)後、325メッシュ篩で粗大粒子を除きセルロース粉末I(乾燥減量4.1%、特公昭40−26274号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Iの物性及びセルロース粉末Iを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Iと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0044】
比較例3
針葉樹、広葉樹混合溶解用パルプシート(α−セルロース90.5%、β−セルロース4.7%、銅安相対粘度4.70、白色度93)を解砕後、有効塩素1.6g/lの次亜塩素酸ナトリウム溶液12L中に浸漬してpHを10.9として60℃で310分間処理した。処理後のパルプを十分水洗して遠心脱水後105℃で送風乾燥した。このパルプを振動ボールミルで30分間粉砕してから100メッシュ篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末J(乾燥減量2.0、特開昭50−19917公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉末Jの物性及びセルロース粉末Jを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Jと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
比較例4
市販KPパルプ(重合度840、レベルオフ重合度145)を0.7%塩酸水溶液中で、125℃、150分間加水分解した後、加水分解残渣を中和、洗浄、濾過して湿ケークとし、ニーダー中で十分磨砕した後、容積比で1倍のエタノールを加え、圧搾濾過した後風乾した。乾燥粉末はハンマーミルで粉砕し40メッシュ篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末K(乾燥重量3.0%、特開昭56−2047号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉末Kの物性及びセルロース粉末Kを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Kと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0045】
比較例5
比較例2のセルロース粉末Iを気流式粉砕機((株)セイシン企業製,シングルトラックジェットミルSTJ−200型)で粉砕し、目開き75μm篩で粗大粒子を除きセルロース粉末L(乾燥減量4.1%、特開昭63−267731号公報の実施例1に相当)を得た。得られたセルロース粉体Lの物性及びセルロース粉末Lを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Lと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
比較例6
実施例5のセルロース粉末Eを磁性ボールミルで12時間粉砕し,セルロース粉末M(乾燥減量5.1%)を得た。得られたセルロース粉体Mの物性及びセルロース粉末Mを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Mと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
比較例7
加水分解条件を7%塩酸水溶液、105℃、20分とする以外は比較例2と同様に操作し濾過、洗浄した後脱水し、イソプロピルアルコールを加え、日本精機製作所(株)製ゴーリンホモジナイザー15M型で分散させた。10%固形分濃度に調整した分散液を噴霧乾燥し、目開き250μm篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末N(乾燥減量3.5%、特開平2−84401号公報の実施例2に相当)を得た。得られたセルロース粉体Nの物性及びセルロース粉末Nを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。
また、セルロース粉末Nと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0046】
比較例8
比較例1のセルロース粉末Hをエアジェットシーブを使用して75μm篩で粗大粒子を除き、38μm篩で微細粒子を除いてセルロース粉末O(乾燥減量4.0%、特開平11−152233号公報の実施例に相当)を得た。得られたセルロース粉末Oの物性及びセルロース粉末Oを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。
また、セルロース粉末Oと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
比較例9
実施例5で得られたセルロース分散液をTKホモミキサーで攪拌(攪拌速度4000rpm)し、これを噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)してセルロース粉末P(乾燥減量3.8%)を得た。得られたセルロース粉末Pの物性及びセルロース粉末Pを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Pと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
比較例10
市販SPパルプ(重合度790、レベルオフ重合度220)を細断し、10%塩酸水溶液中で105℃で5分間加水分解して得られた酸不溶解残渣を濾過、洗浄、pH調整、濃度調整を行い、固形分濃度17%、pH6.4、電気伝導度120μS/cmのセルロース粒子分散液を得た。これをドラム乾燥機(楠木機械製作所(株)製、KDD−1型、スチーム圧力0.35MPa、ドラム表面温度136℃、ドラム回転速度2rpm、溜め部分散液温度100℃)で乾燥後、ハンマーミルで粉砕し、目開き425μmの篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末Q(乾燥減量4.5%、特開平6−316535号公報の比較例8に相当)を得た。得られたセルロース粉末Qの物性及びセルロース粉末Qを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Qと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
【0047】
比較例11
細断した市販SPパルプ(重合度1030、レベルオフ重合度220)10gを0.25N塩酸のイソプロピルアルコール溶液10gで含浸した後、原料層の剪断速度が10s−1となるように攪拌しながら90℃で10分間加水分解した後、40℃、24時間棚段乾燥しセルロース粉末R(乾燥減量2.5%、RU2050362号公報の実施例8に相当)を得た。得られたセルロース粉末Rの物性及びセルロース粉末Rを圧縮して得られた円柱状成形体の物性を表1に示す。また、セルロース粉末Rと乳糖の等量混合物を圧縮して得られた円柱状成型体の物性を表2に示す。
実施例8
実施例3のセルロース粉末C20重量%、乳糖(DMV社製、Pharmatose100M)19.5重量%、エテンザミド(岩城製薬(株)製)60重量%、軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)0.5重量%とをポリエチレンバッグ中で3分間充分に混合し、混合粉体の総重量に対して0.5重量%のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。この混合粉体の安息角を表3に示す。
該混合粉体をロータリー打錠機((株)菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.6cm、11Rの杵を用いてターンテーブル回転速度24rpm、圧縮力3000Nで打錠し、重量100mgの錠剤を作製した。その錠剤物性を表3に示す。
【0048】
実施例9
セルロース粉末として実施例5のセルロース粉末Eを用いた他は実施例8と同様に操作し混合粉体及び錠剤を調製した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表3に示す。
比較例12
セルロース粉末として比較例1のセルロース粉末Hを用いた他は実施例8と同様に操作し混合粉体及び錠剤を調製した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表3に示す。
比較例13
セルロース粉末として比較例2のセルロース粉末Iを用いた他は実施例8と同様に操作し混合粉体及び錠剤を調製した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表3に示す。
実施例10
アセトアミノフェン(吉富ファインケミカル(株)製、微粉タイプ)60重量%、軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)0.5重量%とをポリエチレンバッグ中で3分間混合して予め薬物の流動性を改善した後、実施例3のセルロース粉末C30重量%、コーンスターチ(日澱化学(株)製)9.5重量%を加えてポリエチレンバッグ中で3分間充分に混合し、混合粉体の総重量に対して0.5重量%のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。この混合粉体の安息角を表4に示す。
該混合粉体をロータリー打錠機((株)菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.6cm、11Rの杵を用いてターンテーブル回転速度53rpm、圧縮力5000Nで打錠し、重量100mgの錠剤を作製した。その錠剤物性を表4に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。また錠剤中の薬物の溶出率はパドル回転数100rpmとした時の値を記載した。
【0049】
実施例11
実施例3のセルロース粉末C30重量%、クロスポビドン(コリドンCL、BASF製)9.5重量%、アセトアミノフェン(吉富ファインケミカル(株)製、微粉タイプ)60重量%、軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)0.5重量%とをポリエチレンバッグ中で3分間一括混合し、混合粉体の総重量に対して0.5重量%のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。この混合粉体の安息角を表5に示す。
該混合粉体をロータリー打錠機((株)菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.6cm、11Rの杵を用いてターンテーブル回転速度53rpm、圧縮力5000Nで打錠し、重量100mgの錠剤を作製した。その錠剤物性を表4に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
実施例12
アセトアミノフェン(吉富ファインケミカル(株)製、微粉タイプ)60重量%、軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)0.5重量%とをポリエチレンバッグ中で3分間混合して予め薬物の流動性を改善した後、実施例3のセルロース粉末C30重量%、クロスポビドン(コリドンCL、BASF製)9.5重量%を加えてポリエチレンバッグ中で3分間充分に混合し、混合粉体の総重量に対して0.5重量%のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。この混合粉体の安息角を表5に示す。
該混合粉体をロータリー打錠機((株)菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.6cm、11Rの杵を用いてターンテーブル回転速度53rpm、圧縮力5000Nで打錠し、重量100mgの錠剤を作製した。その錠剤物性を表4に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
【0050】
実施例13
セルロース粉末を実施例5のセルロース粉末Eとする他は実施例12と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表5に示す。
実施例14
アセトアミノフェン(吉富ファインケミカル(株)製、微粉タイプ)70重量%、軽質無水ケイ酸(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)0.5重量%とをポリエチレンバッグ中で3分間混合して予め薬物の流動性を改善した後、実施例3のセルロース粉末C25重量%、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol、FMC社製造、旭化成(株)販売)4.5重量%を加えてポリエチレンバッグ中で3分間充分に混合し、混合粉体の総重量に対して0.5重量%のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。この混合粉体の安息角を表6に示す。該混合粉体をロータリー打錠機((株)菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.8cm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転速度53rpm、圧縮力10000Nで打錠し、重量180mgの錠剤を作製した。その錠剤物性を表6に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
実施例15
セルロース粉末を実施例5のセルロース粉末Eとする他は実施例14と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表6に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
【0051】
比較例14
セルロース粉末を比較例1のセルロース粉末Hとする以外は実施例10と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表4に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。また錠剤中の薬物の溶出率はパドル回転数100rpmとした時の値を記載した。
比較例15
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとする以外は実施例10と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表4に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。また錠剤中の薬物の溶出率はパドル回転数100rpmとした時の値を記載した。
比較例16
セルロース粉末を比較例1のセルロース粉末Hとする以外は実施例11と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表5に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
比較例17
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとする以外は実施例11と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表5に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
【0052】
比較例18
セルロース粉末を比較例1のセルロース粉末Hとする以外は実施例12と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表5に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
比較例19
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとする以外は実施例12と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表5に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
比較例20
セルロース粉末を比較例1のセルロース粉末Hとする以外は実施例14と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表6に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
比較例21
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとする以外は実施例14と同様に操作した。混合粉体の安息角、錠剤物性を表6に示す。錠剤の崩壊時間はディスクなしの値を記載した。
【0053】
実施例16
(核粒子の調製)
マレイン酸トリメブチン(住友ファインケム(株)製)0.7kgを転動流動コーティング装置((株)パウレック製、「マルチプレックス」MP−01型、サイドエアー付きワースターカラム使用)に仕込み、ヒロドキシプロピルメチルセルロース(TC−5E、信越化学工業(株)製)5重量%結合液をマレイン酸トリメブチンに対して固形分として3重量%となるまでスプレーし(スプレーエアー圧:0.13MPa、スプレーエア流量:35L/min、サイドエアー圧:0.10MPa、給気温度:75℃、排気温度:37℃、風量:40m/hr、結合液供給速度:7g/min)、予備造粒した。予備造粒物を目開き250μmの篩を用いて粗大粒子を除去し、このうち0.7kgを同コーティング装置に仕込み、エチルセルロース水分散液(「Aquacoat」ECD−30、固形分濃度30重量%、FMC社製造、旭化成(株)販売)38.1重量%、トリアセチン2.9重量%、マンニトール15重量%水溶液38.1重量%、水20.9重量%の割合からなるフィルムコーティング液を、マレイン酸トリメブチン予備造粒物に対して、固形分として30重量%となるまでスプレー(スプレーエアー圧:0.10MPa、スプレーエア流量:30L/min、サイドエアー圧:0.02MPa、給気温度:70℃、排気温度:36℃、風量:40m/hr、結合液供給速度:8g/min)し、コーティング顆粒を得た。コーティング顆粒は40℃で30分間棚段乾燥後、80℃、60分間棚段乾燥によりキュアリング(加熱成膜)処理し核粒子Aとした。核粒子A中のマレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
(核粒子含有錠剤の調製)
実施例2のセルロース粉末B59重量%、核粒子A26重量%、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol、FMC社製造、旭化成(株)販売)15重量%からなる試料0.2gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径0.8cmの平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)で圧縮した。圧縮応力は1400N、その応力を10秒間保持して核粒子含有錠剤Aを得た。圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した。核粒子含有錠剤Aの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
【0054】
実施例17
実施例2のセルロース粉末B59重量%、核粒子A26重量%、コーンスターチ10重量%、クロスカルメロースナトリウム5重量%とし、圧縮応力を1500Nとした以外は実施例16と同様に操作し核粒子含有錠剤Bを得た。核粒子含有錠剤Aの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
実施例18
実施例2のセルロース粉末B59重量%、核粒子A26重量%、部分アルファー化デンプン(「PCS」PC−10、旭化成(株)製)10重量%、クロスカルメロースナトリウム5重量%とした以外は実施例16と同様に操作し核粒子含有錠剤Cを得た。核粒子含有錠剤Cの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
【0055】
実施例19
(核粒子の調製)
球形核(旭化成(株)製、「セルフィア」CP−305)を転動流動コーティング装置((株)パウレック製、「マルチプレックス」MP−25型)に仕込み、リボフラビン10部、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、Lタイプ)2重量%、水88重量%の薬物被覆液を噴霧し、リボフラビンが2重量%含有するレイヤリング顆粒を得た。レイヤリング顆粒1.5kgを転動流動コーティング装置((株)パウレック製、「マルチプレックス」MP−01型)に仕込み、エチルセルロース水分散液(「Aquacoat」ECD−30、固形分濃度30重量%、FMC社製造、旭化成(株)販売)32.0重量%、クエン酸トリエチル2.4重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース10重量%水溶液30重量%、水35.6重量%の割合からなるフィルムコーティング液を、レイヤリング顆粒に対して、固形分として50重量%となるまでスプレーし(スプレーエアー圧:0.16MPa、スプレーエア流量:40L/min、給気温度:75℃、排気温度:36℃、風量:75m/hr、結合液供給速度:21g/min)、コーティング顆粒を得た。コーティング顆粒は50℃で30分間棚段乾燥後、80℃で60分間キュアリング(加熱成膜処理)し核粒子Bとした。核粒子B中のリボフラビンの30分後の溶出率を表8に示す。
(核粒子含有錠剤の調製)
実施例2のセルロース粉末B50部、核粒子B45部、クロスカルメロースナトリウム5部とし、圧縮応力を2200Nとした以外は実施例16と同様に操作して核粒子含有錠剤Dを得た。核粒子含有錠剤Dの錠剤硬度、リボフラビンの30分後の溶出率を表8に示す。
【0056】
比較例22
セルロース粉末を比較例1のセルロース粉末Hとした以外は実施例16と同様に操作し核粒子含有錠剤Eを得た。核粒子含有錠剤Eの錠剤硬度を表7に示す。なお核粒子含有錠剤Eは溶出試験において崩壊が悪くマレイン酸トリメブチンの溶出率を測定することができなかった。
比較例23
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとし、圧縮応力を1700Nとした以外は実施例16と同様に操作し核粒子含有錠剤Fを得た。核粒子含有錠剤Fの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
比較例24
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとし、圧縮応力を2000Nとした以外は実施例17と同様に操作し核粒子含有錠剤Gを得た。核粒子含有錠剤Gの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
比較例25
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとし、圧縮応力を1800Nとした以外は実施例18と同様に操作し核粒子含有錠剤Hを得た。核粒子含有錠剤Hの錠剤硬度、マレイン酸トリメブチンの1分後の溶出率を表7に示す。
比較例26
セルロース粉末を比較例2のセルロース粉末Iとし、圧縮応力を3300Nとした以外は実施例19と同様に操作し核粒子含有錠剤Iを得た。核粒子含有錠剤Iの錠剤硬度、リボフラビンの30分後の溶出率を表8に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0005110757
【0058】
【表2】
Figure 0005110757
【0059】
【表3】
Figure 0005110757
【0060】
【表4】
Figure 0005110757
【0061】
【表5】
Figure 0005110757
【0062】
【表6】
Figure 0005110757
【0063】
【表7】
Figure 0005110757
【0064】
【表8】
Figure 0005110757
【0065】
【発明の効果】
本発明のセルロース粉末は、良好な圧縮成形性を保ちながら、流動性、崩壊性にも優れているので、特に高打圧下で成形した場合であっても、高硬度であってかつ崩壊遅延を助長しない錠剤を提供することができる。さらには薬物含有量が多い場合においても錠剤重量のばらつきを損なうことなく、硬度と崩壊性とのバランスのとれた錠剤を提供することが可能となる。そのため、本発明のセルロース粉末は、比容積の大きな活性成分を含む錠剤又は活性成分配合量の多い錠剤等の小型化にも大変有用であり、また、被覆した活性成分を含む顆粒含有錠剤においては、圧縮成形したときに顆粒の破壊、顆粒の被膜の損傷が少なく薬物放出特性の変化が少ないという効果も奏する。

Claims (16)

  1. 天然セルロース質物質の加水分解によって得られるセルロース粉末であって、平均重合度が150−450、75μm以下の粒子の平均L/D(長径短径比)が2.0−4.5、平均粒子径が20−250μm、見掛け比容積が4.0−7.0cm3/g、見掛けタッピング比容積が2.4−4.5cm3/g、安息角が54°以下のセルロース粉末であり、該平均重合度が、該セルロース粉末を塩酸2.5N、15分間煮沸して加水分解させた後、粘度法により測定されるレベルオフ重合度より5〜300高いことを特徴とするセルロース粉末。
  2. 平均重合度が230−450である請求項1に記載のセルロース粉末。
  3. 水蒸気吸着による比表面積が85m/g以上である請求項1又は請求項2に記載のセルロース粉末。
  4. セルロース粉末0.5gを20MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が170N以上であって、その崩壊時間が130秒以下である請求項1〜のいずれか一項に記載のセルロース粉末。
  5. セルロース粉末と乳糖との等量混合物0.5gを80MPaで圧縮した錠剤の破壊荷重が150N以上であって、その崩壊時間が120秒以下である請求項1〜のいずれか一項に記載のセルロース粉末。
  6. i)天然セルロース質物質の加水分解反応工程又はその後の工程における溶液攪拌力を制御することにより、
    a)平均重合度が150−450
    b)湿潤状態の平均L/Dが3.0−5.5
    であるセルロース粒子を含むセルロース分散液を得る工程、
    ii)得られたセルロース分散液を品温100℃未満で噴霧乾燥する工程、
    を含むセルロース粉末であり、該平均重合度が、該セルロース粉末を塩酸2.5N、15分間煮沸して加水分解させた後、粘度法により測定されるレベルオフ重合度より5〜300高いことを特徴とするセルロース粉末の製造方法。
  7. 平均重合度が230−450である請求項記載の方法。
  8. 請求項又は請求項に記載の製造方法により得られ得るセルロース粉末。
  9. 請求項1〜及び請求項のいずれか一項に記載のセルロース粉末からなる賦形剤。
  10. 請求項1〜及び請求項のいずれかに記載のセルロース粉末又は請求項の賦形剤を含む成型体。
  11. 成型体が1つ以上の活性成分を含む錠剤である請求項10に記載の成型体。
  12. 活性成分を30重量%以上含む請求項11に記載の成型体。
  13. 圧縮に弱い活性成分を含む請求項1012のいずれか一項に記載の成型体。
  14. 活性成分が被覆されている請求項13に記載の成型体。
  15. 成型体が速崩壊性である請求項1014のいずれか一項に記載の成型体。
  16. 流動化剤を含む請求項1015のいずれか一項に記載の成型体。
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