以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像を形成するための4組のトナー像形成部100Y,M,C,Kを備えている。また、光書込ユニット110、給紙カセット120,130、レジストローラ対140、転写装置150、ベルト定着方式の定着装置170、スタック部180等も備えている。更には、トナー搬送装置や、図示しない廃トナーボトル、電源ユニットなども備えている。なお、以下、各符号の添字Y,M,C,Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック用の部材であることを示す。
光書込ユニット110は、Y,M,C,Kの各色に対応する4つのレーザダイオードからなる光源、正六面体のポリゴンミラー、これを回転駆動するためのポリゴンモータ、fθレンズ、レンズ、反射ミラー等を有している。レーザダイオードから射出されたレーザー光Lは、ポリゴンミラーの何れか1つの面で反射してポリゴンミラーの回転に伴って偏向せしめられながら、感光体表面に到達する。そして、感光体表面をその軸線方向に光走査する。
トナー像形成部100Y,M,C,Kは、潜像担持体であり且つ像担持体であるドラム状の感光体2Y,M,C,Kを有している。これら感光体2Y,M,C,Kは、アルミ等の素管に有機感光層が被覆されたドラムと、これの両端面から突出する回転軸部材とを有しており、図示しない駆動手段によって所定の線速で図中時計回りに回転駆動せしめられる。そして、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて変調したレーザー光Lを発する上述の光書込ユニット110によって暗中にて光走査されて、Y,M,C,K用の静電潜像を担持する。
図2は、4つのトナー像形成部100Y,M,C,Kのうち、Y用のトナー像形成部100Yを、ベルト部材としての紙搬送ベルト151とともに示す拡大構成図である。なお、他のトナー像形成部(100M,C,K)は、それぞれ使用するトナーの色が異なる点の他がY用のものと同様の構成になっているので、これらの説明については省略する。同図において、Y用のトナー像形成部100Yは、プロセスユニット1Yと現像装置50Yとを備えている。プロセスユニット1Yは、感光体2Yの他、これの表面に対し、潤滑剤を塗布するブラシローラ3Y、クリーニング処理を施す揺動可能なカウンタブレード4Y、除電処理を施す除電ランプ5Yなどを有している。また、感光体2Yを一様帯電せしめる帯電ローラ10Yや、これの表面をクリーニングするローラクリーニング装置20Yなども有している。
プロセスユニット1Yにおいて、図示しない電源によって交流の帯電バイアスが印加される帯電ローラ10Yは、軸部材11Y、突き当てコロ12Y、放電部材13Yなどから構成されている。軸部材11Yは、帯電ローラ10Yの芯金となっており、これの両端部がそれぞれ図示しない軸受けによって回転自在に支持されている。軸部材11Yには、図示しない電源によってDCバイアスにACバイアスを重畳した帯電バイアスが印加される。軸部材11Yの軸線方向の中央部表面には、導電性材料の被覆による放電部材13Yが軸周方向の全周に渡って被覆されている。この帯電ローラ部材13Yを間に挟み込むように、軸部材11Yの両端付近にはそれぞれ絶縁性材料からなるリング状の突き当てコロ12Yが、圧入と接着とによって固定されている。これら突き当てコロ12Yの外径は、放電部材13Yの外径よりも数十〜100[μm]大きくなっている。帯電ローラ10Yは、かかる突き当てコロ12Yを感光体2Yに当接させながら、放電部材13Yを感光体2Yに対して所定の帯電ギャップを介して対向させている。そして、図示しない駆動手段により、その表面を感光体2Yの表面移動とは逆方向に移動させるように回転せしめられながら、放電部材13Yからの放電によって感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。このように一様帯電せしめられた感光体2Yの表面は、上述の光書込ユニット(図1の符号110)で変調及び偏向されたレーザー光Lの走査によって静電潜像を担持する。
現像装置50Yは、ケーシング51Yに設けられた開口から周面の一部を露出させる現像ロール52Yを有している。また、第1搬送スクリュウ53Y、第2搬送スクリュウ54Y、現像ドクタ55Y、トナー濃度センサ(以下、Tセンサという)56Y等も有している。
ケーシング51Yには、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとを含むY現像剤が内包されている。このY現像剤は第1搬送スクリュウ53Y、第2搬送スクリュウ54Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、現像剤担持体たる現像ロール52Yの表面に担持される。そして、現像ドクタ55Yによってその層厚が規制されてから感光体2Yと対向する現像領域に搬送され、ここで感光体2Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体2Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール52Yの表面(現像スリーブ)の回転に伴ってケーシング51Y内に戻される。一方、現像に寄与したYトナー像は、紙搬送ベルト151上の記録紙Pに転写される。なお、現像ロール52Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる現像スリーブと、これに連れ回らないように内包される図示しないマグネットローラとを有している。そして、マグネットローラの発する磁力により、現像スリーブ表面にY現像剤を引き付けて担持する。
透磁率センサからなるTセンサ56Yは、ケーシング51Yの底板に取り付けられ、第1搬送スクリュウ53Yによって搬送されるY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。現像剤の透磁率は、現像剤のトナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しないトナー補給制御部に送られる。このトナー補給制御部は、RAM等の記憶手段を備えており、この中にTセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像装置に搭載されたTセンサからの出力電圧の目標値であるM,C,K用Vtrefのデータを格納している。Y用の現像装置50Yについては、Tセンサ56Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、Y用の吸引ポンプ210Yを比較結果に応じた時間だけ駆動させる。そして、これにより、Yトナーを介して現像装置50Y内に補給する。このようにして吸引ポンプの駆動が制御(トナー補給制御)されることで、現像に伴ってYトナー濃度を低下させたY現像剤に適量のYトナーが補給され、現像装置50Y内の現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。なお、他の現像装置についても、同様のトナー補給制御が実施される。また、吸引ポンプ210Yは、図示のように現像装置50Yの真上に配設されているが、トナー像形成部100Yの構成要素ではなく、Y用のトナー搬送装置の構成要素であるので、同図では吸引ポンプ210Yを点線で示している。
先に示した図1において、プリンタ本体の下部には、2つの給紙カセット120,130が配設されている。これら給紙カセット120,130は、記録紙Pを複数枚重ねた記録紙束の状態で収容しており、一番上の記録紙Pに給紙ローラ121,131を押し当てている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ121,131を回転させて、記録紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対140が配設されており、送られてきた記録紙Pを、Yトナー像形成部100Yの感光体2Y上に形成されたYトナー像に同期させ得るタイミングで、後述の転写装置150に向けて送り出す。
図3は、転写装置150の要部構成を示す拡大構成図である。同図において、転写装置150は、ベルト部材たる紙搬送ベルト151と、複数の張架ローラとを有するベルト装置を有している。このベルト装置に搭載された張架ローラとは、具体的には、入口ローラ152、分離ローラ153、駆動ローラ154、テンションローラ155、エンコーダローラ156の5つである。転写装置150は、かかる構成のベルト装置の他、静電吸着ローラ157、4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,K、4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,K、ベルトクリーニング装置160、押圧ローラ161等を有している。また、入口ブラケット162、揺動ブラケット163、出口ブラケット164、カム165等も有している。
紙搬送ベルト151は、体積抵抗率が109〜1011[Ωcm]である高抵抗の無端状単層ベルトであり、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の材料からなる。そして、複数の張架ローラに張架されながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ154により、図中反時計回りに無端移動せしめられる。
入口ローラ152、転写バイアスローラ158Y〜K、搬送支持ローラ159Y〜K、分離ローラ153、駆動ローラ154、テンションローラ155、エンコーダローラ156は、何れも紙搬送ベルト151の裏面に接触している。これらローラのうち、図中最も右側に配設された入口ローラ152は、その近傍に配設された静電吸着ローラ157との間に紙搬送ベルト151を挟み込んでいる。この静電吸着ローラ157は、図示しない電源から印加される静電吸着バイアスによってベルトおもて面に電荷を付与することで、後述のレジストローラ対(140)から送り出されてくる記録紙Pを紙搬送ベルト151のおもて面に静電吸着させる。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kは、金属製の芯金にスポンジ等の弾性体が被覆されたローラであり、それぞれ、感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧されている。この押圧により、感光体2Y,M,C,Kと、紙搬送ベルト151のおもて面とがベルト移動方向において所定の長さで接触するY,M,C,K用の4つの転写ニップが形成されている。
転写バイアスローラ158Y,M,C,Kの芯金には、それぞれ転写バイアス電源によって定電流制御される転写バイアスが印加されている。これにより、転写バイアスローラ158Y,M,C,Kを介して紙搬送ベルト151の裏面に転写電荷が付与され、各転写ニップにおいて紙搬送ベルト151と感光体2Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、本プリンタにおいては、転写手段として転写バイアスローラ158Y,M,C,Kを設けているが、ローラに代えて、ブラシやブレード等のものを用いてもよい。また、転写チャージャなどを用いてもよい。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kのうち、Y,M,C用の3つは、それぞれ、図示しない軸受け部材を介して揺動ブラケット163に支持されている。この揺動ブラケット163は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、回動軸162aを中心に揺動可能に構成されている。4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,Kのうち、Y,M,C用の3つも、この揺動ブラケット163に支持されている。揺動ブラケット163の図中下方には、図示しない駆動手段によって回転軸165aを中心に回転駆動されるカム165が配設されている。これがそのカム面を揺動ブラケット163に突き当てる位置で回転停止されると、揺動ブラケット163が回動軸163aを中心に図中反時計回りに揺動せしめられる。そして、Y,M,C用の転写バイアスローラ158Y,M,Cが、紙搬送ベルト151を介して感光体2Y,M,Cに当接して、Y,M,C用の転写ニップが形成される。これに対し、カム165がそのカム面を揺動ブラケット163に突き当てない位置で回転停止されると、揺動ブラケット163が回動軸163aを中心に図中時計回りに揺動せしめられる。そして、Y,M,C用の転写バイアスローラ158Y,M,Cが、紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cに押し当てない位置まで移動して、Y,M,C用の転写ニップが形成されなくなる。このように、転写装置150は、揺動ブラケット163の揺動によって紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cに当接させてY,M,C用の転写ニップを形成したり、紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cから離間させたりする。
入口ローラ152、静電吸着ローラ157及びエンコーダローラ156は、それぞれ図示しない軸受け部材を介して、入口ブラケット162に支持されている。この入口ブラケット162は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、エンコーダローラ156の軸を中心にして揺動可能に構成されている。
揺動ブラケット163は、その図中左端付近にガイド穴163bを有しており、これの内部に入口ブラケット162から延びるピン162aを遊動可能に位置させている。そして、上述のカム165の回転によって図中反時計回りに揺動すると、ガイド穴162b内のピン162aを押し上げる。すると、入口ブラケット151が、揺動ブラケット163の揺動にリンクして、エンコーダローラ156の軸を中心にして図中反時計回りに揺動せしめられて、入口ローラ152、静電吸着ローラ157及びエンコーダローラ156を押し上げる。また、揺動ブラケット163が図中時計回りに揺動せしめられると、入口ブラケット151がそれにリンクして図中時計回りに揺動し、入口ローラ152、静電吸着ローラ157及びエンコーダローラ156を下方に移動させる。このような揺動ブラケット163の揺動に伴う入口ローラ61、静電吸着ローラ157及びエンコーダローラ156の移動により、紙搬送ベルト151による紙搬送面が一直線状に維持される。
転写装置150は、記録紙PにK単色のトナー像を転写する場合には、揺動ブラケット163を図中時計回りに回転させて、紙搬送ベルト151をY,M,C用の感光体2Y,M,Cから離間させる。K単色のトナー像を転写する場合には、Y,M,C用の転写ニップでのトナー像転写が行われないので、それらの転写ニップを形成しないで黒色単色のトナー像の転写を行うのである。これにより、紙搬送ベルト151やこれの駆動系に余計な負荷をかけることなく、K単色のトナー像を転写することができる。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kのうち、K用の転写バイアスローラ158Kは、図示しない軸受け部材を介して出口ブラケット164に支持されている。この出口ブラケット164は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、出口ローラ165の軸を中心に揺動可能に構成されている。4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,Kのうち、K用の搬送支持ローラ159Kも、この出口ブラケット164に支持されている。K用の転写バイアスローラ158Kは、出口ブラケット164の図中時計回りの揺動により、紙搬送ベルト151をK用の感光体2Kに押し当てない位置に移動する。この状態で上述の揺動ブラケット163が図中時計回りに揺動すると、紙搬送ベルト151が全ての感光体2Y,M,C,Kから離間する。転写装置150は、このように紙搬送ベルト151を全ての感光体から離間させた状態で、プリンタ本体に対して着脱されるようになっている。
転写装置150は、後述のフルカラー画像を記録紙Pに転写する場合には、紙搬送ベルト151を全ての感光体2Y,M,C,Kに接触させて、Y,M,C,K用の転写ニップを形成する。後述のレジストローラ対(140)から送り出された記録紙Pは、上述の静電吸着ローラ157と紙搬送ベルト151との間に挟まれる。そして、紙搬送ベルト151のおもて面に吸着されながら、Y,M,C,K用の転写ニップを順次通過していく。これにより、各感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、それぞれ転写ニップで記録紙Pに重ね合わされ、上記転写電界やニップ圧の作用を受けて記録紙P上に重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写により、記録紙P上にはフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された記録紙Pは、紙搬送ベルト151の無端移動に伴って、分離ローラ153によるベルト張架位置にさしかかる。このベルト張架位置では、分離ローラ153が紙搬送ベルト151の無端移動方向をほぼ反転させるような急激な巻き付け角で紙搬送ベルト151を巻き付けている。紙搬送ベルト151上に吸着している記録紙Pは、このような急激なベルトの移動方向の変化に追従することができず、紙搬送ベルト151から分離される。そして、図示しない定着装置に受け渡される。
テンションローラ155は、スプリングによって紙搬送ベルト151に向けて付勢されることで、紙搬送ベルト151に対して所定のテンションを付与している。このテンションローラ155と、駆動ローラ154との間におけるベルト展張箇所のおもて面には、押圧ローラ161が押し当てられている。この押し当てにより、紙搬送ベルト151がループ内側に向けて湾曲している。紙搬送ベルト151がこのように大きく湾曲することにより、駆動ローラ154に対する紙搬送ベルト151の巻き付き箇所がより大きく確保されている。そして、この巻き付き箇所のおもて面には、ベルトクリーニング装置160が当接している。分離ローラ153による張架位置で記録紙Pを定着装置に受け渡した紙搬送ベルト151のおもて面には、各感光体2Y,M,C,Kから転移してしまった汚れトナーが付着している。ベルトクリーニング装置160は、この汚れトナーを紙搬送ベルト151から除去するためのものである。
先に示した図1において、定着装置170は、加圧ローラ171、定着ベルト172、加熱ローラ173、駆動ローラ174等を有している。定着ベルト172は、加熱ローラ172と駆動ローラ174とによって張架されながら、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられる駆動ローラ174によって図中時計回りに無端移動せしめられる。加熱手段たる加熱ローラ172は、ハロゲンランプ等の熱源を内包しており、これによって定着ベルト172を裏面から加熱する。一方、当接ローラたる加圧ローラ171は、無端移動せしめられる定着ベルト172に接触しながら、接触部で表面をベルトと同様に移動させるように回転して定着ニップを形成している。転写装置150の紙搬送ベルト151から定着装置170に受け渡された記録紙Pは、その像転写面を定着ベルト172に接触させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧によって像転写面にフルカラー画像が定着せしめられながら、定着装置170を通過する。
定着装置170を通過した記録紙Pは、搬送ローラ対や反転ガイド板などを経由した後、更に搬送ローラ対を経て、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック部180に向けて排出される。
先に示した図2において、Y用の転写ニップを通過した後の感光体2Y表面は、する。図中反時計回りに回転駆動せしめられるブラシローラ3Yで所定量の潤滑剤が塗布された後、カウンタブレード4Yでクリーニングされる。そして、除電ランプ5Yから照射された光によって除電されて次の静電潜像の形成に備えられる。
帯電ローラ10Yの放電部材13Yは、感光体2Yに対して非接触になっているが、感光体2Yのトナーが静電気力によって付着することがある。付着したトナーは、放電部材13Yに接触しながら回転するローラクリーニング装置20Yによって放電部材13Y表面からクリーニングされる。
なお、プロセスユニット1Yは、感光体2Y、帯電装置、ブラシローラ3Y、カウンタブレード4Y、除電ランプ5Y等が、1つのユニットとして、プリンタ本体に対して着脱可能となるように、共通の支持体に支持されたものである。
4つのトナー像形成部100Y,M,C,Kのうち、Y用のトナー像形成部100Yについて説明してきたが、他色のトナー像形成部100M,C,Kも同様の構成になっているので説明を省略する。
本プリンタのように、各色にそれぞれ個別に対応する複数のトナー像形成部100Y,M,C,Kを、紙搬送ベルト151等のベルトの張架面に沿って並べ、これらによって形成した各色トナー像を転写体に重ね合わせて転写する方式はタンデム方式と呼ばれている。タンデム方式によらずにカラー画像を形成する方法としては、1つの感光体と、複数の現像装置とを搭載したトナー像形成部内で、互いに異なる色のトナー像を感光体に順次形成していき、これらを中間転写体に順次重ね合わせて転写する方法がある。この方法でフルカラー画像を得るには、互いに時間を分けて4色のトナー像をそれぞれ形成しなければならないため、高速な画像形成を行うのが困難である。これに対し、タンデム方式では、4色のトナー像をそれぞれ並行して形成することが可能なので、画像形成速度の高速化に有利である。
カラー画像のプリント速度の高速化が求められる近年においては、タンデム方式が主流となりつつある。タンデム方式においては、ベルト速度が変動したり、光書込ユニット内の光学系部品が温度変化によって伸縮したりすると、各色トナー像の重ね合わせ位置が相対的にずれて、いわゆる色ズレが発生してしまう。そこで、本プリンタでは、後述する位置合わせ処理を定期的に実施することで、色ズレの発生を抑えるようになっている。
図4は本プリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。同図において制御部200は、トナー像形成部100Y,M,C,K、光書込ユニット110、給紙カセット120,130、レジストモータ141、転写装置150などと電気的に接続されている。そして、CPU(Central Processing Unit)200aがRAM(Random Access Memory)200b(不揮発性)あるいはROM(Read Only Memory)200cに格納されている制御プログラムに基づいて、これらの各機器を制御するようになっている。なお、同図の転写装置150に具備されている第1光学センサ69、第2光学センサ70、第3光学センサ71、エンコーダ72、ベルト駆動モータ76、温度センサ201については後述する。
RAM200b内には、制御プログラムの他に、トナー像形成部100Y,M,C,Kに対応するY,M,C,K用現像バイアス値のデータや、Y,M,C,K用ドラム帯電電位のデータなどが格納されている。プリントプロセスにおいて、制御部200は、トナー像形成部100Y,M,C,Kにおける各帯電ローラに対して、Y,M,C,K用ドラム帯電電位に対応する値の帯電バイアスをそれぞれ個別に印加する制御を実施する。この制御により、各色の感光体2Y,M,C,Kが、Y,M,C,K用ドラム帯電電位に一様帯電せしめられる。また、制御部200は、プリントプロセス中において、各トナー像形成部100Y,M,C,Kにおける現像スリーブに、Y,M,C,K用現像バイアス値の現像バイアスを印加する制御を実施する。これにより、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、現像スリーブとの間に、トナーをスリーブ表面側から感光体側に静電移動させる現像ポテンシャルを作用させて、静電潜像を現像する。
一方、制御部200は、図示しない主電源が投入された直後に60[℃]以下の加熱ローラ温度(定着温度)を検知したときや、所定枚数以上のプリントアウトが実施されると、作像条件調整制御を実施する。そして、この作像条件調整制御において、各色の現像装置における現像ポテンシャルを調整する現像ポテンシャル調整処理と、各色のトナー像の位置ズレを検知して位置合わせを行う位置合わせ処理とを行う。なお、上記主電源が投入された直後であっても、60[℃]を超える加熱ローラ温度を検知したときには、作像条件調整制御を実施しない。よって、上記主電源のOFFからONまでの時間が数分〜数十分と比較的短い場合には作像条件調整制御を省略し、過剰に試験によってユーザーを無駄に待機させたり、電力やトナーを無駄に消費したりといった事態を解消する。
作像条件調整制御における現像バイアス調整処理では、まず、先に図1に示した感光体2Y,M,C,Kを回転させながら帯電せしめる。このときの帯電電位については、プリントプロセスにおける一様なドラム帯電電位とは異なり、値をマイナス極性側に徐々に大きくする。そして、レーザー光の走査によって階調パターン像を形成するための10個のパッチ静電潜像を各感光体2Y,M,C,Kにそれぞれ形成せしめながら、それらをY,M,C,K用の現像装置によって現像する。この現像の際、制御部200は、Y,M,C,K用の現像スリーブに印加される現像バイアスの値をマイナス極性側に徐々に大きくしていく。このような現像により、各感光体2Y,M,C,K上には、トナー付着量検知用のテストパターン画像の前駆体であるY,M,C,K階調パターン像が形成される。そして、これらは、ベルト移動方向下流側から上流側に向けてY,M,C,Kという順で並ぶように紙搬送ベルト151上に転写されて、Y,M,C,Kという4つの階調パターン像が順に並ぶトナー付着量検知用のテストパターン画像が形成される。
図5は、紙搬送ベルト(151)上に形成されるトナー付着量検知用のテストパターン画像を示す模式図である。同図に示す矢印は、図示しない紙搬送ベルトの表面移動方向を示している。テストパターン画像Pt1は、ベルト移動方向下流側から上流側に向けて順に並ぶY階調パターン像Py、M階調パターン像Pm、C階調パターン像Pc、K階調パターン像Pkを具備している。また、それぞれの階調パターン像は、ベルト移動方向に所定のピッチで並ぶ10個のパッチ像(500Y,M,C,K)を具備している。
Y,M,C,Kの各色において、それぞれ階調パターン像(Py,m,c,k)内の10個のパッチ像(500Y,M,C,K)は、例えば次の表1に示される作像条件で感光体上に作像される。なお、レーザー光の強度については、ドラム帯電電位にかかわらず、パッチ像用の静電潜像を例えば−20[V]まで減衰せしめ得るような強度とする。
表1において、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)は、階調パターン像(Py,m,c,k)のベルト移動方向先頭側から後端側にかけて、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目に形成されるパッチ像に対応している。
表1に示すように、本プリンタは、各トナー像形成部100Y,M,C,Kにおいて、それぞれドラム帯電電位と現像バイアスとをそれぞれ徐々に低い値に切り換えながら(1)〜(10)のパッチ像を形成する。これら10個のパッチ像は、後に形成されるものほど、高い現像ポテンシャル(静電潜像の電位と現像バイアスとの差)で現像されるため、画像濃度が高くなる。
表1に示した各現像バイアス値と、(1)〜(10)のパッチ像の画像濃度(単位面積当たりのトナー付着量)とには正の相関があり、2次元座標上では直線グラフが得られる。この直線グラフを示す関数(y=ax+b)を回帰式によって計算すれば、その関数に基づいて所望の画像濃度(トナー付着量)が得られる現像バイアス値を求めることが可能になる。
図6は、本プリンタにおける転写装置150を示す斜視図である。上述したように、転写装置150は、無端状の紙搬送ベルト151と、これを張架する複数の張架ローラとを具備するベルト装置を有している。このベルト装置は、複数の張架ローラによって張架されている紙搬送ベルト151のループ外側であって、ベルトを介して分離ローラ153と対向する位置に、第1光学センサ69、第2光学センサ70及び第3光学センサ71を有している。これらのうち、第1光学センサ69は、図示のように紙搬送ベルト151のベルト幅方向の一端部に対向するように配設されている。また、第2光学センサ70は、紙搬送ベルト151のベルト幅方向の中央部に対向するように配設されている。また、第3光学センサ71は、紙搬送ベルト151の他端部に対向するように配設されている。これら光学センサは、何れも周知の反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子から発した光を被検対象物の表面で反射させ、反射光を図示しない受光素子によって受光するものである。受光素子からは、受光量に応じた電圧が出力され、その信号は図示しないA/Dコンバータを介して制御部200に入力される。
トナー付着量検知用のテストパターン画像Pt1は、図示のように、紙搬送ベルト151のおもて面におけるベルト幅方向の中央部に形成される。テストパターン画像Pt1の各階調パターン像(Py,m,c,k)における各パッチ像(500Y,M,C,K)は、紙搬送ベルト151の無端移動に伴って、第2光学センサ70との対向位置を通過する。この際、第2光学センサ70の図示しない受光素子は、そのパッチ像に対する単位面積あたりのトナー付着量に応じた量の光を受光する。このため、受光素子からの出力電圧値がデジタル信号として入力される制御部200は、その出力電圧値に基づいて各パッチ像に対する単位面積あたりのトナー付着量を把握することができる。
具体的には、第2光学センサ70と紙搬送ベルト151とが対向している位置に対しては、ベルトの無端移動に伴って、パッチ像が次のような順序で通過する。即ち、Y用の階調パターン像Py内における上記(1)〜(10)のパッチ像(500Y×10個)、M用の階調パターン像Pm内における上記(1)〜(10)のパッチ像(500M×10個)、C用の階調パターン像Pc内における上記(1)〜(10)のパッチ像(500C×10個)、K用の階調パターン像Pk内における上記(1)〜(10)のパッチ像(500K×10個)という順である。そして、それら40個のパッチ像に対応する電圧値が第2光学センサ70から順次出力されて、制御部200に送られる。
制御部200は、第2光学センサ70から順次送られてくるそれら電圧信号に基づいて、各パッチ像の画像濃度(トナー付着量)を順次演算してRAM200bに格納していく。そして、Y,M,C,Kの各色について、表1に示した各現像バイアス値と、10個のパッチ像における画像濃度データとを用いて回帰分析を行い、2次元座標上で直線グラフを示す関数(回帰式)を求める。更に、この関数に画像濃度の目標値を代入することで適切な現像バイアス値を演算し、Y、M、C、K用の補正現像バイアス値としてRAM200bに格納する。
上記RAM200bには、数十通りの現像バイアス値と、それぞれに個別に対応する適切なドラム帯電電位とが予め関連付けられている作像条件データテーブルが格納されている。制御部200は、トナー像形成部100Y,M,C,Kについて、それぞれこの作像条件テーブルの中から、上記補正現像バイアス値に最も近い現像バイアス値を選び出し、これに関連付けられたドラム帯電電位を特定する。特定したドラム帯電電位については、Y、M、C、K用の補正ドラム帯電電位としてRAM200bに格納する。そして、全ての補正現像バイアス値及び補正ドラム帯電電位をRAM200bに格納し終えると、Y,M,C,K用現像バイアス値のデータを、それぞれ対応する補正現像バイアス値と同等の値に補正して格納し直す。また、Y,M,C,K用ドラム帯電電位についても、それぞれ対応する補正ドラム帯電電位と同等の値に補正して格納し直す。このような補正により、プリントプロセス時におけるトナー像形成手段100Y,M,C,Kの作像条件が、それぞれ所望の画像濃度のトナー像を形成し得る条件に補正される。
本プリンタの各現像装置におけるTセンサ(例えば図2の56Y)は、実際には、現像剤のトナー濃度を検知しているわけではなく、トナー濃度とある程度の相関を示す透磁率を検知している。そして、現像剤の透磁率はトナー濃度の他、トナーの嵩密度によっても変化し、この嵩密度は温湿度や現像剤の攪拌度合いによって変化する。このため、Tセンサからの出力値が上述の目標値Vtrefになるようにトナー補給を実施していても、温湿度等の変化に伴ってトナーの嵩密度が変化すると、トナー濃度が目標よりも高めに制御されたり、低めに制御されたりする。高めに制御されると、上述した回帰分析による直線グラフの傾きが比較的大きくなる(グラフが立ってくる)。また、低めに制御されると直線グラフの傾きが比較的小さくなる(グラフが寝てくる)。従って、直線グラフの傾きがある程度大きくなったり小さくなったりした場合には、トナーの嵩密度の変化により、目標値Vtrefが現状の現像剤に見合わなくなっていることになる。
そこで、制御部200は、直線グラフの傾きが所定値よりも大きくなったり小さくなったりした場合には、該当する現像装置(Y、M、C又はK)のTセンサの目標値Vtrefを、そのときのTセンサからの出力値と同等の値に補正して、現状の現像剤に見合うようにする。
なお、ベルトの無端移動に伴って第2光学センサ70との対向位置を通過した後のトナー付着量検知用のテストパターン画像Pt1は、先に図1に示したベルトクリーニング装置160によってベルトおもて面から除去される。
光書込ユニット110は、Y、M、C、K用の光源から発せられたレーザー光を反射させて感光体2Y,M,C,Kに導くための反射ミラーをそれぞれ個別に備えている。また、感光体2Y,M,C,Kと平行になるように配設される反射ミラーを、それぞれ個別に傾けるための図示しないミラー傾斜手段も備えている。
上記制御部200は、以上のような現像ポテンシャル調整処理によって各色用の現像ポテンシャルを調整すると、次に、各色のトナー像の位置ズレを検知して位置合わせを行う位置合わせ処理を実施する。この位置合わせ処理では、紙搬送ベルト151上に、図7に示すような位置ズレ検知用のテストパターン画像Pt2を形成する。この位置ズレ検知用のテストパターン画像Pt2は、ベルト移動方向に沿って並ぶ4つの直延パッチ像501Y,M,C,Kと、これに続いて並ぶ4つの傾斜パッチ像502Y,M,C,Kとを具備する8つのパッチ像からなるパターンが所定回数だけ繰り返されたものである。かかる構成のテストパターン画像Pt2は、図8に示すように、紙搬送ベルト151のベルト幅方向における一端部、中央部、他端部にそれぞれ形成される。そして、一端部に形成されたテストパターン画像Pt2は、ベルトの無端移動に伴って第1光学センサ69によって検知される。また、中央部に形成されたテストパターン画像Pt2は、第2光学センサ70によって検知される。また、他端部に形成されたテストパターン画像Pt2は、第3光学センサ71によって検知される。
位置ズレ検知用のテストパターン画像Pt2における直延パッチ像501Y,M,C,Kは、図7に示したように、ベルトおもて面における移動方向と直交する方向(ベルト幅方向)に真っ直ぐに延びる形状をしている。そして、これら4つの直延パッチ像501Y,M,C,Kは、距離dのピッチで並ぶような条件で形成され、ベルト移動方向の長さはそれぞれWになる。また、4つの直延パッチ像の全体としてのベルト移動方向における長さはL3になる。但し、部品の伸縮や位置ズレなどがあると、距離d、長さWにはそれぞれ誤差が生じてくる。
また、テストパターン画像Pt2における傾斜パッチ像502Y,M,C,Kは、ベルト幅方向から45[°]傾いた方向に延在する形状をしている。そして、これらはそれぞれ、ベルト移動方向の長さがAで、且つ延在方向の長さがA×√2になっている。ベルト移動方向における配設ピッチは直延パッチ像と同様に距離dである。但し、これら長さA、長さA×√2、距離dも、部品の伸縮や位置ズレなどがあると誤差が生じてくる。
図8に示したように、紙搬送ベルト151上には、かかる構成のテストパターン画像Pt2が3つ形成される。そして、光学系部品の伸縮や位置ズレがない場合には、各テストパターン画像Pt2内における直延パッチ像501Y,M,C,Kや傾斜パッチ像502Y,M,C,Kがそれぞれベルト幅方向に一直線上に並ぶように形成される。また、1つのテストパターン画像Pt2内においては、直延パッチ像501Y,M,C,Kや傾斜パッチ像502Y,M,C,Kがベルト移動方向に一直線上に並ぶように形成される。このため、本来であれば、第1光学センサ69、第2光学センサ70、第3光学センサ71は、直延パッチ像501Y,M,C,Kや傾斜パッチ像502Y,M,C,Kを互いに同じタイミングで検知する。但し、感光体2Y,M,C,Kに組み付け誤差による傾きや位置ズレが生じていたり、光書込ユニット110内におけるY、M、C、K用の反射ミラーにその長手方向の傾きが生じていたり、Y、M、C、K用のポリゴンミラーや光源の駆動タイミングが正規のタイミングからずれていたりすると、それらが一直線上に並ばなくなる。そして、3つの光学センサによる直延パッチ像501Y,M,C,Kや傾斜パッチ像502Y,M,C,Kの検知タイミングにズレが生ずる。
制御部200は、かかる検知タイミングのズレに基づいて、各色トナー像についてもスキューズレ、副走査方向(ベルト移動方向)の位置ズレ、倍率ズレを、例えば特開平2003−29546号公報に記載されている方法などによって求める。そして、スキューズレについては、光書込ユニット110の反射ミラーの角度を上述したミラー傾斜手段で調整することによって抑える。また、副走査方向への位置ズレについては、光書込ユニット100の書込開始タイミングを調整することで抑える。また、ポリゴンミラーの駆動タイミングを補正したり、反射ミラーの角度を変更したりすることで、主走査方向(感光体軸線方向)の倍率ずれを抑える。
このように、位置合わせ処理において、各色についてスキューズレや副走査方向への位置ズレなどを抑えることで、プリントプロセス時に形成する各色トナー像の位置ズレを抑えることができる。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図9は、転写装置150をその駆動系とともに示す斜視図である。同図において、紙搬送ベルト151を無端移動せしめる駆動ローラ154に対しては、駆動源であるベルト駆動モータ76の回転駆動力が駆動伝達機構77を介して伝達されている。この駆動ローラ154とは別に紙搬送ベルト151のループ内に配設されているエンコーダローラ156は、紙搬送ベルト151の無端移動に伴って従動回転する従動ローラである。そして、このエンコーダローラ156のローラ軸156aの端部は、エンコーダ72によって覆われている。
図10は、エンコーダローラ156の一端部とその周囲構成とを示す部分拡大斜視図である。同図において、エンコーダ72は、ディスク72a、内側圧入ブッシュ72b、外側圧入ブッシュ72c、透過型フォトセンサ72d等を有している。円盤状のディスク72aは格子状の外縁部を有しており、エンコーダローラ156のローラ軸156aに圧入された内側圧入ブッシュ72bと外側圧入ブッシュ72cとの間に挟まれることで、ローラ軸156aに固定されている。そして、エンコーダローラ156の回転に同期してローラと同じ角速度で回転する。ディスク72aの近傍には、図示しない支持部材によって支持される透過型フォトセンサ72dが配設されており、ディスク72aの外縁部の格子を介して自らの受光素子と発光素子とを対向させている。この格子は、円周方向に数百単位の分解能で光を透過するスリットを有しており、かかる分解能で透過型フォトセンサ72dからの出力をON/OFFさせる。回転速度検知手段としてのエンコーダ72は、このON/OFFに基づいてローラの角速度を算出してその結果を角速度信号として出力する図示しない回路部も有している。先に図4に示した制御部200は、この角速度信号に基づいて、紙搬送ベルト151の速度を把握することが可能である。
また、ベルト駆動モータ76の駆動速度、ひいては紙搬送ベルト151の速度を制御する制御部200は、ベルト駆動モータ76に出力する駆動パルス信号のパルス数を変化させることで、ベルト駆動モータ76の回転速度を調整する。より詳しくは、紙搬送ベルト151(以下、単にベルトとも言う)の速度変動としては、ベルト1周期よりも長い期間をかけてゆっくりと変化していくベルト一周あたりの平均速度の変動と、ベルト1周単位で周期的に起こる周期変動とがある。平均速度の変動は、主に、温度変化に伴う駆動ローラ154の径変動に起因するものである。また、周期変動は、駆動ローラ154の微妙な偏心や紙搬送ベルト151の厚みムラに起因するものである。このような周期変動があることから、ベルト1周期内において、単に一定のパルス数の駆動パルス信号をベルト駆動モータ76に出力するだけでは、ベルト速度を安定化させることはできない。そこで、制御部200は、エンコーダ72から送られてくる角速度信号に基づいて周期変動のパターンを把握し、そのパターンとは逆位相のパターンで出力パルス数を変動させることで、ベルトの周期変動を抑えるようになっている。逆位相のパターンについては、紙搬送ベルト151の平均速度の目標値(以下、規定速度という)に対応する制御目標角速度(制御目標値)を基準にして生成する。エンコーダ72から送られてくる角速度信号を制御目標角速度と同じにするように、駆動パルス数を制御するのである。こうすることで、ベルト速度の周期変動を抑えつつ、紙搬送ベルト151を規定速度で平均的に移動させることが可能になる。
但し、駆動ローラ154の径が温度変化に伴って変化していくと、駆動ローラ154が同じ速度で回転していても、ローラ外周面の周速が変化してしまうため、ベルトの平均速度が変化してしまう。このため、従来の画像形成装置においては、エンコーダ72から送られてくる角速度信号の平均値を所定の制御目標角速度と同じ値にするように、ベルト駆動モータ76に対する駆動パルス数を制御していた。これにより、駆動ローラ154の径変化に起因するベルトの平均速度の変化を回避することができる。
ここで、従動ローラであるエンコーダローラ156の角速度ω[rad/sec]と、ベルトの平均速度V[mm/sec]と、駆動ローラ154の半径r[mm]とには、次式の関係が成立する。
(1)Const=ω=V/r
この関係から解るように、平均速度Vと半径rとは比例の関係にある。また、平均速度Vと角速度ωとにも比例の関係が成立している。よって、平均速度Vが規定速度から変化した場合には、変化前における駆動パルス数に対して変化率の逆数を乗算し、その結果に対応する駆動パルス数を出力すれば、ベルトを再び規定速度で移動させることが可能になる。例えば、ベルトの厚みが0.2[mm]であり、且つ駆動ローラ154の直径φ1が29.8[mm]であったとする。そして、温度変化に伴って、駆動ローラ154の直径φ1が29.8[mm]から30.0[mm]に増加したとする。すると、ベルトの厚み中心位置における速度変化率は次式で表される。
(2)(15+0.1)/(14.9+0.1)×100=100.66[%]
この速度変化率は、エンコーダ72から送られてくる角速度信号の平均値に基づいて算出される。そして、ベルト駆動モータ76に対する出力駆動パルス数を次式のように変更すれば、ベルトを再び規定速度で駆動することができる。つまり、出力駆動パルス数を減少させるのである。
(3)変更後の出力駆動パルス数=変更前の出力駆動パルス数×(15/15.1)
従来の画像形成装置では、このようにして出力駆動パルス数を制御することで、ベルトの平均速度を規定速度に維持していたのである。ところが、温度変化に伴ってエンコーダローラ156の径が変化すると、エンコーダ72からの角速度信号に基づいて把握されるベルトの平均速度V’と、実際のベルトの平均速度Vとに誤差が生ずる。例えば、温度上昇に伴って、エンコーダローラ156の直径φ2が基準の14.8[mm]から15.0[mm]に増加したとする。このとき、エンコーダ72によって検知される角速度ωは、次式のように1.32[%]減少した値になる。
(4)(7.4+0.1)/(7.5+0.1)×100=98.68[%]
※0.1はベルト厚みの中心値
これにより、制御部200は、平均速度が規定速度よりも遅くなっていると誤検知し、出力駆動パルス数を次式のように変更することで、角速度ωを制御目標角速度と同じ値にする。すると、ベルトの実際の平均速度Vを規定速度よりも1.32[%]速くしてしまう。
(5)変更後の出力駆動パルス数=変更前の出力駆動パルス数×7.6/7.5
このような誤検知を回避すべく、本プリンタは、次のような特徴的な構成を備えている。即ち、先に図4に示したように、制御部200には、周知の技術によって機内温度を測定する温度センサ210が接続されている。この温度センサ210は、機内温度の検知結果をデジタル温度信号として制御部200に出力する。一方、制御部200は、機内温度と、その温度環境下におけるエンコーダローラ156の径に対応する角速度補正係数との関係を示すデータとしての第1データテーブルをROM200c内に記憶している。この第1データテーブルで示される同関係は、予めの試験によって求められたものである。
具体的には、例えば、機内温度が基準の23[℃]であるときのエンコーダローラ156の直径φ2が14.8[mm]であるのに対し、機内温度が35[℃]であるときのエンコーダローラ156の直径φ2が15.0[mm]であることが予めの試験によって解っているとする。この場合、35[℃]の環境下でエンコーダ72からの角速度信号によって示される角速度ωは、次のようになる。即ち、25[℃]の環境下に対して、駆動ローラ154の径変化に相当する分の変化量と、エンコーダローラ156の径変化に相当する分の変化量との合計が反映された値である。駆動ローラ154の径変化に相当する分については、それを出力駆動パルス数に反映させて角速度の復元を図る必要があるが、エンコーダローラ156の径変化に相当する分については、出力駆動パルス数に反映させずにその分に相当する補正を制御目標角速度に施す必要がある。エンコーダローラ156の直径φ2が14.8[mm]から15.0[mm]に増加した場合における角速度ωの誤検知量は、上述のように「−1.32%」である。そこで、第1データテーブルでは、温度35[℃]と、角速度補正係数「0.9868」とが関連付けられている。このような温度と角速度補正係数との関係が、所定の温度ピッチ(例えば1℃)で関連付けられている。
制御部200は、温度検知手段たる温度センサ201からの温度信号に対応する角速度補正係数を第1データテーブルから特定し、特定結果を所定の基本目標角速度(エンコーダローラの径変化がない場合の角速度)に乗算する。そして、その結果と同じ値にするように、制御目標角速度を補正する。
かかる構成では、温度変化に伴ってエンコーダローラ154の径が変化したことにより、エンコーダ72の角速度が変化しても、それに応じて制御目標角速度を補正することで、ベルトを規定速度で安定して駆動することができる。
なお、記憶手段としてのROM200cに記憶させておくデータとして、温度と、従動依存パラメータである角速度補正係数との関係を示すデータテーブルを採用した例について説明したが、他の従動依存パラメータを温度と関連付けてもよい。例えば、従動依存パラメータとして、エンコーダローラ156の径変化に由来するローラ周長、角速度誤検知量、ベルト速度誤検知量などを温度と関連付けて記憶させてもよい。このようなデータであっても、それに基づいて適切な角速度補正係数を算出することが可能だからである。
また、温度とエンコーダローラ150の径との関係、あるいは温度と従動依存パラメータとの関係を示すデータテーブルの代わりに、同関係を示す関数式などのアルゴリズムを記憶させてもよい。
次に、実施形態に係るプリンタのより特徴的な構成について説明する。
エンコーダローラ150の径が変化すると、それに伴って適切な制御目標角速度の値が変化することは既に述べた通りであるが、ベルトの厚みが温度変化に伴って変化しても、同様のことが起こる。
例えば、ベルトの平均厚みが何らかの要因で2倍になったとする(通常、2倍になることは考えられないが、ここでは理解を容易にするために便宜的に2倍になったと仮定する)。なお、理解を容易にするために、駆動ローラ154の半径は14.9[mm]のまま変わらず、且つ、エンコーダローラ156の半径は7.4[mm]のまま変わらない場合を想定して説明を行う。ベルトの平均厚みが2倍になると、ベルトの厚み中心値は、0.1[mm]から0.2[mm]に増加する。ベルトの厚み中心値が0.1[mm]であるときの駆動ローラ154の位置におけるベルト厚み中心部の回転半径(15.0mm)は、エンコーダローラ156の位置におけるベルト厚み中心部の回転半径(7.5mm)の2倍である。よって、ベルトの厚み中央値が初期状態の0.1[mm]である場合におけるそれぞれのローラ位置でのベルト厚み中心部の角速度比は「1:2」である(駆動ローラ154が1回転する間にエンコーダローラが2回転する)。
これに対し、ベルトの厚み中央値が0.2[mm]に増加した場合には、角速度比が変化する。具体的には、駆動ローラ154の位置におけるベルト厚み中心部の回転半径が15.1[mm]になり、且つ、エンコーダローラ156の位置におけるベルト厚み中心部の回転半径が7.6[mm]になる。このため、角速度比は「1:1.987」になる。これは、駆動ローラ154が1回転する間に、エンコーダローラ156が1.987回転しかしなくなることを示している。すると、エンコーダローラ156の角速度ωが本来よりも遅く検知される。このとき、ベルト速度は、100.66(15.1/15×100)[mm/sec]であり、目標の100[mm/sec]よりも0.66[%]速くなっている。この一方で、エンコーダローラ156は、駆動ローラ154回転あたりに1.987回転しかしなくなるため、ベルト速度が遅いと認識される。これにより、ベルト速度が次式のように更に速められてしまう。即ち、ベルト速度が目標よりも1.33[%]速くなってしまう。
(7)7.6/7.5×100=101.33[mm/sec]
そこで、実施形態に係るプリンタの制御部200は、次のようにして制御目標角速度を補正するようになっている。即ち、制御部200の記憶手段としてのROM200cには、上述した第1データテーブルの代わりに、第2データテーブルを記憶させている。この第2データテーブルは、温度と、駆動ローラ154の径と、エンコーダローラ156の径との関係を、所定の温度ピッチ(例えば1℃)で関連付けしている。また、ROM200cには、標準駆動速度たる標準駆動パルス数=6000[PPS(Pulse Per Second)]という値も記憶させている。
ここで、23[℃]の温度条件下で、ベルト駆動モータ76を標準駆動パルス数(6000PPS)で駆動させた場合に、ベルトが100[mm/sec]の規定速度Veで走行すると仮定する(ベルト厚み中心値は0.1mm)。すると、駆動ローラ154の角速度ω1は、0.667[rad/sec]となる。また、エンコーダーローラ156の角速度ω2は角速度ω1の2倍であるので、13.333[rad/sec]となる。
ROM200cには、基本目標角速度として、13.333[rad/sec]を記憶させてある。23[℃]の条件下では、ベルトの平均厚みに変化がなければ、エンコーダ72によって検知される角速度ωが13.333[rad/sec]になるようにすると、出力駆動パルス数が6000[PPS]になるのである。
温度変化に伴って、ベルトの厚みの平均値が23[℃]のときよりも大きくなったとする。ベルトの平均厚みが大きくなった場合に、エンコーダ72によって検知される角速度ωを基本目標角速度である13.333[rad/sec]にするように出力駆動パルス数を調整すると、実際のベルトの平均速度が規定速度Veよりも速くなってしまう。
角速度ωの検知結果を基本目標角速度である13.333[rad/sec]にするように出力駆動パルス数を制御するのではなく、ベルト駆動モータ76を標準駆動パルス数(6000PPS)で駆動させた場合について考えてみる。ベルトの平均厚みが大きくなっていても、駆動ローラ154はベルト厚み変化前と変わらず0.667の角速度ω1で回転する。これに対し、エンコーダローラ156はベルト厚み変化前の13.333[rad/sec]よりも遅い角速度ω2で回転する。このときの駆動ローラ154に対するエンコーダローラ156の角速度比率については、エンコーダ72による角速度ωの検知結果に基づいて、次式のように求めることができる。
(8)エンコーダローラの角速度比率=角速度ωの検知結果/6.667
例えば、エンコーダ72による角速度ωの検知結果が13.246であったとすると、駆動ローラ154に対するエンコーダローラ156の角速度比率は1.987となる(13.246/6.667)。
ベルトの平均厚みの変化に伴うベルト厚み中心値の変化分については、上記(8)の式によって得られた角速度比率に基づいて、次式のようにして求めることができる。
(9)1×(r1+t0+X)=エンコーダローラの角速度比率×(r2+t0+X)
※1はエンコーダローラに対する駆動ローラの角速度比率、r1は駆動ローラ半径、t0はベルト厚み中心の初期値(0.1mm)、r2はエンコーダローラ半径、Xはベルト厚み中心値の変化分。
また、ベルト厚み変化後にベルトを規定速度Veで走行させるための制御目標角速度については、次式に基づいて求めることが可能である。
(10)制御目標角速度ωe=Ve/(r2+t0+X)
例えば、理解を容易にするために、駆動ローラ半径r1やエンコーダローラ半径r2が変化していない場合であり、ベルト厚み中心値が0.1[mm]増加し、且つエンコーダローラ156の角速度比率が1.987であった場合を想定してみる。すると、上記(9)の式は次のようになり、ベルト厚み中心値の変化分Xは0.1[mm]であることがわかる。
(9)’(14.9+0.1)+X=1.987×(7.4+0.1+X)
・・・→X=0.1
このX=0.1[mm]を上記(10)の式に代入すると、適切な制御目標角速度ωeは次のようになる(規定速度Veが100mm/secである場合)。
(10)’ωe=100/(7.4+0.1+0.1)=13.1579
よって、制御目標角速度ωeを基本目標角速度である13.333[rad/sec]から、13.1579[rad/sec]に補正することで、ベルトを100[mm/sec]の規定速度Veで走行させることができる。実際には、ベルトの平均厚みの他、駆動ローラ半径r1や従動ローラ半径r2も変化するが、それらを温度の検知結果に基づいて上述の第2データテーブルから特定して、(9)の式に代入すればよい。
そこで、制御部200は、次のようにして制御目標角速度weを補正する。即ち、まず、所定のタイミングでベルト駆動モータ76を標準駆動パルス数(6000PPS)で駆動させながら、エンコーダ72によって角速度ωを検知する。そして、その検知結果と、標準駆動パルス数の条件下における駆動ローラ154の角速度(=6.667:予めROMに記憶してある)とを上記(8)の式に代入して、エンコーダローラ156の角速度比率を算出する。次いで、温度センサ210による検知結果に対応する駆動ローラ半径r1やエンコーダローラ半径r2を上述の第2データテーブルから特定する。そして、特定結果と、エンコーダローラ156の角速度比率の算出結果と、ベルト厚み中心初期値t0(予めROMに記憶してある)とを上記(9)の式に代入して、ベルト厚み中心値の変化分Xを算出する。更に、規定速度Ve(予めROMに記憶してある)と、エンコーダローラ半径r2の特定結果と、ベルト厚み中心初期値t0と、変化分Xとを上記(10)の式に代入して、制御目標角速度ωeを算出する。そして、それまで使用していた制御目標角速度を算出結果と同じ値に更新(補正)する。
かかる構成においては、エンコーダローラ径の変化に起因するベルト速度の誤検知を回避するとともに、ベルト厚みの変化に起因するベルト速度の誤検知をも回避することで、ベルトをより安定して規定速度で走行させることができる。
本プリンタでは、駆動ローラ154とエンコーダローラ156との組合せとして、これまで説明してきたように、互いに径の異なるものを用いている。これは、ベルトの平均厚みの変動に伴って、角速度比の変動を生じさせる目的からである。具体的には、図11に示すように、互いに径の異なる駆動ローラA(φ=29.8mm)及び従動ローラB(φ=14.8mm)の2本によってベルトCが張架されているとする。ベルトCの平均厚みが0.2[mm](厚み中央値=0.1mm)である場合、ベルトCの平均厚みが変化すると、両ローラの角速度比は次の表2に示すように変化する。
これに対し、図12に示すように、互いに直径φが29.8mmで同じである駆動ローラA及び従動ローラBにベルトCが張架されているとする。この場合、次の表3に示すように、ベルトCの平均厚みが変化しても、両ローラの角速度比は常に1のまま変わらないのである。このような理由から、本プリンタでは、駆動ローラ154、エンコーダローラ156として、互いに径の異なるものを用いているのである。
なお、理解を容易にする目的から、図11や図12では、2本のローラ(A,B)のみでベルトCを張架した例を示したが、3本以上のローラで張架しても、駆動ローラAと従動ローラBとの角速度比は、表2や表3に示したようになる。
図13は、実施形態に係るプリンタの転写装置150を4つの感光体とともに示す要部構成図である。同図に示すように、温度センサ201は、紙搬送ベルト151のループ内において、駆動ローラ154とエンコーダローラ156との間に配設されている。かかる構成では、両ローラの平均的な温度を温度センサ201に検知させることで、より何れか一方のローラに近い温度を検知させる場合に比べて、ベルトの平均速度Vをより規定速度に近づけることができる。
本プリンタでは、上述した作像条件調整処理を実施する場合には、それに先立って制御目標角速度の補正処理を行うようになっている。このときは、図示しないパソコン等から送られてくる画像情報に基づく画像形成動作を行わないのはもちろんであるが、作像条件調整処理のための上述した階調パターンやテストパターンも形成しないようになっている。かかる構成では、画像情報に基づく画像を形成している最中に制御目標角速度を補正してベルトの平均速度を変化させてしまうことによる出力画像の乱れを回避することができる。また、作像条件調整処理のための階調パターンやテストパターンを形成している最中に制御目標角速度を補正してベルトの平均速度を変化させてしまうことによる作像条件調整の不適切化を回避することもできる。
制御部200は、次に列記する条件の何れか1つでも具備されると、作像条件調整処理と、これに先立つ制御目標角速度補正処理とを実施するようになっている。
1.所定時間が経過する毎。
2.所定数のプリント(転写処理)が行われる毎。
3.前回の補正処理実施時の温度からの温度変化量が所定量に達したとき。
4.前回の補正処理実施時におけるエンコーダ72による角速度検知結果からの角速度変化量が所定量に達したとき。
5.プリンタ内部の操作スイッチ(図4の202)が押されたとき。
かかる構成では、駆動ローラ154やエンコーダローラ156の径変動に伴うベルトの平均速度の検知誤差が生じている可能性が高いタイミング(1〜4)や、サービスマンもしくはユーザーの望むタイミング(5)で、制御目標角速度を適切に補正することができる。
図14は、制御部200によって実施される制御目標角速度補正処理及び作像条件調整処理の処理フローを示すフローチャートである。同図において、作像条件調整処理の実施要件(1〜5の何れか)が具備されたと判断されると(ステップ1でY:以下、ステップをSと記す)、ベルト駆動モータ76を標準駆動パルス数で駆動しながら、エンコーダ72によって角速度ωが検知される(S2)。そして、検知結果に基づいて駆動ローラ154に対するエンコーダローラ156の角速度比率が算出された後(S3)、温度センサ201による温度の検知結果が取得される(S4)。次いで、温度検知結果に対応する駆動ローラ半径r1やエンコーダローラ半径r2が第2データテーブルから特定された後(S5)、特定結果や角速度比率などに基づいてベルト厚み中心値の変化分Xが算出される(S6)。そして、算出結果等に基づいて制御目標角速度ωeが算出された後(S7)、移行の制御目標角速度が算出結果と同じ値に更新される(S8)。この後、作像条件調整処理によって現像ポテンシャル等が調整される(S9)。
なお、本プリンタでは、ユーザーの操作により、画像形成動作を標準のプロセス線速(感光体やベルトの線速)で行う標準速度モードと、画質優先の低速モードと、速度優先の高速モードとで切り替え可能になっている。そして、各速度モードにそれぞれ対応して制御目標角速度を3つの値で切り替える処理を実施するように補正手段たる制御部200が構成されている。かかる処理を実現するために、各速度モードに対応する制御目標角速度をそれぞれRAM200bに記憶していることに加えて、上述の第2データテーブルも、それぞれ各速度モード用のものを記憶している。
これまで、紙搬送ベルト151のおもて面に保持した記録紙に感光体2Y,M,C,K上のトナー像を重ね合わせて転写する方式のプリンタについて説明したが、各感光体上のトナー像をベルト部材たる中間転写ベルトに転写した後、記録紙に一括転写する方式の画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。また、中間転写ベルトを2周以上させながら、各周回毎に感光体上のトナー像を中間転写ベルト上に転写する方式の画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、従動ローラ径たるエンコーダローラ半径r2と、駆動ローラ径たる駆動ローラ半径r1と、温度との関係を示す第2データテーブルを記憶手段たるROM200cに記憶させている。そして、駆動源たるベルト駆動モータ76を所定の標準駆動速度である標準駆動パルス数で駆動した際におけるエンコーダ72による角速度ωの検知結果に基づいて、標準駆動パルス数の条件下における駆動ローラ154に対するエンコーダローラ156の角速度比率を算出し、算出結果と、温度検知手段たる温度センサ201による検知結果に対応する駆動ローラ半径r1及びエンコーダローラ半径r2とに基づいて制御目標値たる制御目標角速度を補正するように、補正手段たる制御部200を構成している。かかる構成では、既に説明したように、エンコーダローラ径の変化に起因するベルト速度の誤検知を回避するとともに、ベルト厚みの変化に起因するベルト速度の誤検知をも回避することで、ベルトをより安定して規定速度で走行させることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、駆動ローラ154と従動ローラ156との組合せとして、互いに径の異なるものを用いている。かかる構成では、図11、図12、表2、表3等を用いて説明したように、両ローラの角速度比に基づいて、ベルトの平均厚みの変化によるベルトの平均速度V’の検知誤差を把握することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、温度センサ201を、駆動ローラ154と従動ローラ156との間に配設しているので、両ローラ間に配設しない場合に比べて、ベルトの平均速度Vをより規定速度に近づけることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、像担持体たる感光体から、ベルト部材たる紙搬送ベルト151又はこれの表面の記録部材たる記録紙へのトナー像(出力画像やパターン像)の転写を実施していないタイミングで制御目標角速度を補正する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、既に説明したように、画像情報に基づく画像を形成している最中に制御目標角速度を補正してベルトの平均速度を変化させてしまうことによる出力画像の乱れを回避することができる。また、作像条件調整処理のための階調パターンやテストパターンを形成している最中に制御目標角速度を補正してベルトの平均速度を変化させてしまうことによる作像条件調整の不適切化を回避することもできる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、上述した1〜4のタイミングのうち、何れか1つでも具備されると、制御目標角速度補正処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、駆動ローラ154やエンコーダローラ156の径変動に伴うベルトの平均速度の検知誤差が生じている可能性が高いタイミングで制御目標角速度を適切に補正することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、感光体から、紙搬送ベルト151又はこれの表面に保持されている記録紙への転写位置ズレを検知する位置ズレ検知手段としての光学センサ(69〜71)と、これによる検知結果に基づいて可視像形成手段たるプロセスユニットや光書込ユニット110の作像条件を調整する作像条件調整手段たる制御部200と、作像条件の調整実施タイミングを決定するタイミング決定手段たる制御部200とを設け、制御部200によって決定された調整実施タイミングよりも早いタイミングで、制御目標角速度補正処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、作像条件調整処理のための階調パターンやテストパターンを形成している最中に制御目標角速度を補正してベルトの平均速度を変化させてしまうことによる作像条件調整の不適切化を回避することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、画像形成速度を互いに異なる速度モードで切替可能にするとともに、各速度モードにそれぞれ対応して制御目標角速度を切り替える処理を実施させるように、制御部200を構成している。かかる構成では、角速度モードでそれぞれ制御目標角速度を適切に補正することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、操作者からの入力情報を受け付ける情報受付手段たる操作スイッチ202を設け、これによって所定の情報であるユーザースイッチ押下操作が受け付けられたことに基づいて(上記5のタイミング)、制御目標角速度を補正する処理を実施するように、制御部200を構成している。かかる構成では、サービスマンもしくはユーザーの望むタイミング(5)で、制御目標角速度を適切に補正することができる。