以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型の画像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。
[実施形態1]
まず、本発明の一実施形態(実施形態1)に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、トナー像形成手段として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Bkと記す。)用の4つのユニット状の画像形成部(画像形成ユニット)としてのプロセスユニット1Y,M,C,Bkを備えている。プロセスユニット1Y,M,C,Bkは、画像を形成するための画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Bkトナーを用いるが、それ以外は互いに同様の構成になっている。
本実施形態に係るプリンタは、装置内で記録媒体としての記録紙Pを水平方向に搬送しながら、その記録紙Pに画像を形成する。
タンデム型の画像形成部としてのタンデムトナー像形成部10は、Y、M、C、Bkの各色トナー像を形成するための4つのプロセスユニット1Y,M,C,Bkを有している。また、転写手段である転写ユニット20は、被転写体としての無端状の中間転写体である中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、二次転写対向ローラ24、4つの一次転写部材としての一次転写ローラ25Y,M,C,Bk、二次転写部材としての二次転写ローラ26などを有している。
中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ22、従動ローラ23及び二次転写対向ローラ24に掛け回されている。中間転写ベルト21は、例えば、カーボン分散ポリイミドベルトであり、その厚さは60[μm]、体積抵抗率は約1×109[Ω・cm](三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450を用い印加電圧100[V]での測定値)、引張り弾性率は2.6[GPa]である。そして、図示しない駆動装置によって駆動ローラ22が回転駆動され、その駆動ローラ22を介して、中間転写ベルト21が図中時計回り方向に無端移動するように回転駆動される。中間転写ベルト21のループ内側には、駆動ローラ22、従動ローラ23、及び二次転写対向ローラ24の他に、4つの一次転写ローラ25Y,M,C,Bkも配設されている。なお、中間転写ベルト21は、一次転写部において転写ニップを形成するニップ形成部材としても機能する。
タンデムトナー像形成部10は、4つのプロセスユニット1Y,M,C,Bkを中間転写ベルト21の上張架面に沿って水平方向に並べる姿勢で、転写ユニット20の上方に配設されている。プロセスユニット1Y,M,C,Bkは、図中反時計回り方向に回転駆動される像担持体としてのドラム状の感光体2Y,M,C,Bkと、現像手段としての現像装置3Y,M,C,Bkと、帯電部材としての帯電ローラ4Y,M,C,Bkを有する帯電手段としての帯電装置と、を備えている。感光体2Y,M,C,Bkは、それぞれ中間転写ベルト21の上張架面に当接してY,M,C,Bk用の一次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。
Yトナー像を生成するためのプロセスユニット1Yを例にすると、帯電装置は、感光体2Yに対して接触あるいは近接するように配設された帯電ローラ4Yを有しており、帯電ローラ4Yは図示しない駆動手段によって回転駆動される。この帯電ローラ4Yに対しては、帯電電源80Yによって所定の帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yと感光体2Yとの間で放電を発生させることで、感光体2Yの表面をトナーの正規帯電極性と同極性に一様に帯電させる。このような方式の帯電装置に代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
感光体2Yは、例えば、表面に有機感光層を被覆した直径60[mm]のドラムからなり、静電容量が9.5×10−7[F/m2]に調整されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。帯電ローラ4Yによって一様に帯電された感光体2Yの表面は、図示されない光書込ユニットから発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像装置3Yは、Yトナーと磁性キャリアとを含有する図示しない二成分系の現像剤を収容している。現像剤は、例えば、磁性キャリアとポリエステル系の材料からなる重合トナーで構成されている。現像装置3Yのケーシングには開口が形成されており、この開口からは現像剤担持体としての筒状の現像スリーブにおける周面の一部が露出して感光体2Yの表面に対向している。現像スリーブは、自らと連れ回らないように内部に固定された図示しない磁界発生手段としてのマグネットローラの発する磁力により、ケーシング内の現像剤を担持する。そして、自らの回転駆動に伴って、現像剤を自らと感光体2Yとが対向する現像領域に搬送する。現像領域では、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体2Yの静電潜像との間に、マイナス極性のYトナーをスリーブ側から感光体側に移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Yの非画像部との間に、マイナス極性のYトナーを感光体側から現像スリーブ側に移動させる非画像ポテンシャルが作用する。現像剤中のYトナーは、現像領域において、前述した現像ポテンシャルの作用によって感光体2Yの静電潜像に転移する。これにより、感光体2Y上の静電潜像が現像されてYトナー像になる。
現像装置3Yは、内部の現像剤のトナー濃度を測定する図示しないトナー濃度センサを有している。このトナー濃度センサによる検知結果は、電圧信号として図示しない制御手段としての制御部に送られる。制御部はCPUやROMなどのほかデータ記憶手段としてのRAMを備えており、この中にトナー濃度センサからの出力電圧の目標値を記憶している。そして、トナー濃度センサからの出力電圧の値と前記目標値とを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナー消費によってYトナー濃度を低下させた現像剤に対し、適量のYトナーが供給される。このため、現像装置3Y内の現像剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用の現像装置(3M,C,Bk)における現像剤に対しても、同様のトナー供給制御が実施される。
なお、Y用のプロセスユニット1Yについて詳しく説明したが、他色用のプロセスユニット1M,C,Bkも同様の構成になっており、感光体2M,C,Bk上にM,C,Bkトナー像が形成される。現像装置3Y,M,C,Bkによって現像されてY,M,C,Bkトナー像になる。
タンデムトナー像形成部10の上方には、図示しない潜像形成手段としての光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、帯電ローラ4Y,M,C,Bkによって例えば−520[V]に一様帯電された感光体2Y,M,C,Bkの表面に対し、走査光Lによる光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。なお、ベタ画像時における静電潜像の電位Vlは、例えば約−40[V]である。感光体2Y,M,C,Bkに形成された静電潜像は、現像装置3Y,M,C,Bkによって負極性(帯電量が例えば約−25[μC/g])トナーで反転現像されてY,M,C,Bkトナー像(ベタ画像時におけるトナー付着量M/Aで例えば約0.43[mg/cm2])になる。これらY,M,C,Bkトナー像は、上述したY,M,C,Bk用の一次転写ニップにて、中間転写ベルト21のおもて面に重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
本プリンタの下方には、図示されていない記録媒体収容手段としての給紙カセットが配設されている。給紙カセット内には、記録媒体(記録部材)としての記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、給紙カセットに配設されている給紙ローラによって給紙路に向けて排出される。給紙路に送り込まれた記録紙Pは、図中下側から上側に向けて搬送される。なお、感光体2Y,M,C,Bkや中間転写ベルト21の線速であるプロセス線速は、例えば約350[mm/sec]に設定されている。
給紙路の末端には、レジストローラ対32が配設されている。レジストローラ対32は、記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの下方に配設された転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、ベルトループ内に配設された一次転写ローラ25Y,M,C,Bk、従動ローラ23、二次転写対向ローラ24などを有している。また、ベルトループ内に配設された二次転写ローラ26、ベルトクリーニング装置28なども有している。
4つの転写部材としての一次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、無端移動する中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Bkに押し付けるようにして配置される。これにより、中間転写ベルト21と感光体2Y,M,C,bKとが当接するY,M,C,Bk用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、例えば、金属製の回転軸部材である芯金の周面に、導電性スポンジローラ部を設けたものである。また、一次転写ローラ25Y,M,C,Bkの外径は例えば16[mm]であり、心金の径は例えば10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、一次転写ローラの心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、初期概ね1.4×107[Ω]であり、この金属製の回転軸部材(芯金)を、感光体2Y,M,C,Bkの回転軸の直下(重力方向)に配設している。なお、本実施形態のプリンタで数十万枚印刷した後の、ある劣化した一次転写ローラの抵抗を測定したところ、約5.6×107[Ω]であった。
また、一次転写ローラ25Mには、一次転写ローラ25Mの抵抗を測定するための、一次転写ローラ25Mの回転に従動するように当接される例えば直径8[mm]のステンレス(SUS304)からなる導電性ローラ101と、スイッチ100とが配設されている。通常の画像形成動作中は、スイッチ100はOFFであり、導電性ローラ(ステンレスローラ)101は電気的に浮いた状態とされるが、抵抗を測定する際は、スイッチ100はONとなり、導電性ローラ(ステンレスローラ)101は接地される。そして、非画像形成動作時に、一次転写ローラ25を含め、その他のプロセスや部材が回転や移動をしていない状態で、転写バイアス印加手段としての一次転写電源81Mから例えば5[μA]の一定電流が印加され、その際の印加電圧から、オームの法則に基づいて抵抗の値を算出する。
中間転写ベルト21は、前述のように、ベルトループ内に配設された各ローラに掛け回されて張架された状態で、少なくとも何れか1つのローラ(図示の例では駆動ローラ22)の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動するように回転駆動される。
一次転写ローラ23Y,M,C,Bkにはそれぞれ、転写バイアス印加手段としての一次転写電源81Y,M,C,Bkにより、トナーの帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。これにより、一次転写ニップ内には、感光体2Y,M,C,Bk上のトナー像を感光体側からベルト側に引き寄せる転写電界が形成される。中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、その表面(おもて面)に感光体2Y,M,C,Bk上のY,M,C,Bkトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
ベルトループ内側に配設された二次転写対向ローラ24は、ベルトループ外側に配設された二次転写ローラ26との間に中間転写ベルト21を挟み込むように配設されている。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、二次転写ローラ26とが当接する二次転写ニップがベルトの図中右側方に形成されている。先に説明したレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ローラ26には、トナーとは逆極性の二次転写バイアスが印加される。中間転写ベルト21上の4色トナー像は、二次転写バイアスやニップ圧の作用により、二次転写ニップ内で記録紙Pに一括して二次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置28によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニング装置28は、クリーニングローラを中間転写ベルト21のおもて面に当接させており、クリーニングローラによってベルト上の転写残トナーを除去するものである。
二次転写ニップの上方には、記録紙P上の4色トナー像を定着させる定着手段としての定着ユニット40が配設されている。この定着ユニット40は、例えば、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接によって定着ニップを形成している。二次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト21から分離した後、定着ユニット40内に送られる。そして、定着ユニット40内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ローラ41によって加熱されたり、押圧されたりして、4色トナー像(フルカラートナー像)が定着される。
このようにして定着処理が施された記録紙Pは、定着ユニット40を出た後、図示しない排紙ローラ対を経て機外へと排出される。
図2は、本実施形態のプリンタにおける制御系の要部構成の一例を示すブロック図である。同図において、制御手段としての制御部200は、例えば、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit)200a、各種のデータを記憶することができデータの書き込み及び読み出しを自在に行うことができる一時記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)200c、制御プログラムなどが記憶され電源を切っても消去されない記憶手段としての不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)200b等を有している。制御部200は、装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、それら機器の一部だけを示している。制御部200は、ROM200bやRAM200c内に記憶している制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。また、一次転写ローラの抵抗情報に基づいて、画像形成時のY,M,C,Bkの一次転写電流の目標値を決定し、決定した一次転写電流の目標値となるように、Y,M,C,Bk用の一次転写電源81Y,M,C,Bkを制御する。
また、制御部200は、一次転写電源81Y,M,C,Bkとともに転写電流出力手段として機能したり、後述のアルゴリズムに基づいて一次転写バイアスの目標値を決定する目標値決定手段や後述のアルゴリズムを変更する手段として機能したりする。また、制御部200は、スイッチ100及び導電性ローラ101とともに、一次転写ローラ25Y,M,C,Bkの抵抗を検知する検知手段として機能する。
なお、一次転写電源81Y,M,C,Bkからの一次転写電流の出力の目標値は、例えば、制御部200からPWM信号として出力されて、一次転写電源81Y,M,C,Bkに入力される。
また、制御部200は、図示しないメイン電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、位置ズレ量補正処理を実施するようになっている。そして、この位置ズレ量補正処理において、中間転写ベルト21に、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる位置ズレ検知用画像を形成する。
図2に示した光学センサユニット86は、その発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト21の表面で反射させ、その反射光を自らの受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が光学センサユニット86の直下を通過する際には、光学センサユニット86の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、制御部200は、中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。このように、光学センサユニット86は、制御部200との組合せによってトナー像検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては,多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
制御部200は、中間転写ベルト21に形成したシェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における副走査方向(ベルト移動方向)の位置を検出する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Bkの各色のトナー像を主走査方向(レーザ光が感光体表面上で走査する方向)から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について,Bkトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、図紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Bkトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているBk,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるBkとの検出時間差tky,tkc,tkmについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ち位置ズレ量を求める。そして、その位置ズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングを補正して、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する各色トナー像の位置ズレを低減する。
Y,M,C,Bk用の4つの一次転写ニップのうち、中間転写ベルト移動方向の最上流側に位置するY用の一次転写ニップでは、トナー像を転写していない状態の中間転写ベルト21に対して感光体2Y上のYトナー像が転写される。つまり、Y用の一次転写ニップでは、重ね合わせ転写のない第1転写工程が実施される。これに対し、M,C,Bk用の一次転写ニップでは、既に中間転写ベルト21上に転写されているトナー像に対して、感光体2M,C,Bk上のトナー像を重ね合わせて転写する第2転写工程が実施される。
被転写体としてのニップ形成部材としての中間転写ベルト21に対して、Y,M,C,Bk用の一次転写ローラ25Y,M,C,Bkを介して転写バイアスを印加する一次転写電源81Y,M,C,Bkは、それぞれ所定の目標値と同じ値の転写電流を出力する。一次転写電源81Y,M,C,Bkからの出力される転写電流の目標値は、一次転写ローラ25Mの抵抗情報に基づいて決定される。
次に、本発明者が行った実験について説明する。
本発明者は、図1に示した実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。そして、一次転写ローラ25Mについては、抵抗が1.4×107[Ω]の新品と、抵抗が5.6×107[Ω]の劣化品と使って、1つのテスト画像をそれぞれ出力して一次転写電流と一次転写電圧と一次転写の転写率と逆転写率との関係を調べる実験を行った。
具体的には、副走査方向に6[mm]及び主走査方向に14.85[mm]のマゼンタ画像(画像面積率5%)と、副走査方向に6[mm]及び主走査方向に282.15[mm]のシアン画像(画像面積率95%)とを横(主走査方向)に並べ、さらに、副走査方向に6[mm]のスペースを空けて、副走査方向に6[mm]及び主走査方向に14.85[mm]のマゼンタ画像(画像面積率5%)と、副走査方向6[mm]及び主走査方向に14.85[mm]のシアン画像(画像面積率5%)とを並べた構造が繰り返されるテスト画像を、M、C用の一次転写電源81M,Cを定電圧制御にしてプリントした。そして、それぞれのプリントにおいて、各画像領域に対して流れる一次転写電源81M,Cからの出力電流値を測定した。
また、C用の一次転写ニップを進入する前のC用の感光体2Cにおける単位面積あたりのトナー付着量MA(C)1と、C用の一次転写ニップを通過した後の感光体2Cにおける単位面積あたりのトナー付着量MA(C)2とを測定した。そして、前者のトナー付着量の測定値MA(C)1から後者のトナー付着量の測定値MA(C)2を差し引いた差分ΔMA(=MA(C)1−MA(C)2)が、実質的に中間転写ベルト21に転写された単位面積あたりのトナー付着量である。この差分ΔMAの前者のトナー付着量MA(C)1に対する割合を、一次転写の「転写率」として求めた。
また、C用の一次転写ニップを通過する前における中間転写ベルト21上のMトナーの付着量MA1(M)と、C用の一次転写ニップを通過した後における感光体2Cの非画像部に逆転移したMトナーの付着量MA2(M)とを測定した。そして、前者のC用の一次転写ニップを通過する前のMトナーの付着量MA1(M)に対する、後者の感光体2Cに逆転移したMトナーの付着量MA2(M)の割合を、Mトナーの「逆転写率」として求めた。
なお、感光体2C上に転写されずに残ったCトナーや感光体2Cに逆転写したMトナーの付着量については、エス・ディ・ジー株式会社製の反射分光濃度計X−Rite938による分光測定結果に基づいて測定した。中間転写ベルト21上のMトナーの付着量や転写前の感光体2C上のCトナーの付着量については、Trek社の吸引式小型帯電量測定装置Model210−HSで吸引した、単位面積当たりのトナーの質量から算出した。
図4及び図5はそれぞれ、上記実験により一次転写ローラ25Mが新品の場合(抵抗が1.4×107[Ω])及び劣化した場合(抵抗が5.6×107[Ω])における転写率及び逆転写率と一次転写電源から出力される転写バイアスの電流との関係を示す特性を測定した測定結果を示すグラフである。図中の横軸は、一次転写電源から出力される転写バイアスの電流の測定値である。また、図中の「M5%」、「C5%」及び「C95%」はそれぞれ、画像面積率5%のマゼンタ画像、画像面積率5%のシアン画像及び画像面積率95%のシアン画像を示している。なお、これらの特性はM用のプロセスユニット(Mステーション)1Mで評価しているが、これらの特性にステーション間での際はほとんどない。また、図4、5ではトナーや感光体は新品にしており、両者の差異が一次転写ローラ25Mの抵抗の差のみに起因することを他の実験やシミュレーションで確認している。
図4及び図5を参照すると、新品の一次転写ローラ25M(抵抗:1.4×107[Ω])の場合の逆転写率は、転写バイアスの電流が15[μA](=1.5E−05[A])付近から増加し始めている。一方、劣化した一次転写ローラ25M(抵抗:5.6×107[Ω])の場合の逆転写率は、転写バイアスの電流が18[μA](=1.8E−05[A])付近から増加し始めている。また、C95%画像の逆転写率が5%に達する電流は、新品の一次転写ローラ25M(抵抗:1.4×107[Ω])の場合は22μA付近であるのに対し、劣化した一次転写ローラ25M(抵抗:5.6×107[Ω])の場合は、28μA付近であることがわかる。一方、図7、図8中の二つの転写率カーブが交わる点は、画像面積率に対して最も安定した転写率を実現できる電流値といえるが、この値は、新品の一次転写ローラ25M(抵抗:1.4×107[Ω])では44μA、劣化した一次転写ローラ25M(抵抗:5.6×107[Ω])では38μAである。さらにC95%画像の逆転写率が5%に達する電流値における、C5%画像の転写率は、それぞれ91%、94%程度と見積もられる。
このように、一次転写ローラの抵抗によって、転写率や逆転写率の電流依存性と、画像面積率との関係が変化することがわかったため、これらの傾向から、各色のプロセスユニット(ステーション)で印加する転写バイアスの電流と一次転写ローラの抵抗との関係を、以下のように設定した。
まず、最上流のY用の一次転写ローラ25Yに印加する転写バイアスの電流に関しては、Y用のプロセスユニット1Y(Yステーション)において上流ステーションで転写された中間転写ベルト21上のトナーが次の色のステーションの感光体へ付着する現象、所謂「逆転写」を気にする必要はないため、図4及び図5中の二つの転写率の曲線が交わる点が、画像面積率に対して最も安定した転写率を実現できる電流値となる。すなわち、一次転写ローラ25Yの抵抗が1.4×107[Ω]のときは一次転写ローラ25Yに印加する転写バイアスの電流を44[μA]とし、一次転写ローラ25Yの抵抗が5.6×107[Ω]のときは当該転写バイアスの電流を38[μA]で制御すればよい。これらの値に基づいて、Y用のプロセスユニット1Y(Yステーション)における一次転写ローラ25Yの抵抗Rと一次転写ローラ25Yに印加する一次転写バイアスの電流Iとを関係づける一次式を、第1アルゴリズムとして、次の(1)式のように設定している。
I=−1.43×10−13×R+4.65×10−5 ・・・(1)
すなわち、Y用のプロセスユニット1Y(Yステーション)の一次転写バイアスの電流Iは、一次転写ローラ25Mの抵抗Rが高くなるほど、小さくなるように制御される。
次に、M、C、Bk用のプロセスユニット1M、C、Bk(M、C、Bkステーション)それぞれの一次転写バイアスの電流と一次転写ローラ25Mの抵抗との関係について説明する。これらの色のプロセスユニット(ステーション)では逆転写を考慮して電流を設定する。逆転写率が高くなると、特に高面積率画像の場合に廃トナーが多くなり、最終画質も悪くなる。具体的な全ベタのレッド画像などはオレンジになり、グリーンは黄緑となる。
そこで、本実施形態では、Cの画像面積率が95%というほぼ全ベタに近い画像での逆転写率が5%に達する電流を、一次転写ローラに印加される一次転写バイアスの電流の目標値として決定している。すなわち、図4及び図5の測定結果から、一次転写ローラ25M、C、Bkの抵抗が1.4×107[Ω]のときは一次転写バイアスの電流を22[μA]とし、一次転写ローラ25M、C、Bkの抵抗が5.6×107[Ω]のときは一次転写バイアスの電流を[28μA]にする。このような一次転写バイアスの電流でも、転写率は91%〜94%が実現でき、良好な画像を提供できる。
図6は、M、C、Bk用のプロセスユニット1M、C、Bk(M、C、Bkステーション)の一次転写電源81Y、M、C、Bkから一次転写ローラ25M、C、Bkそれぞれに印加される一転写バイアスの電流Iと、一次転写ローラ25Mの抵抗Rとの関係の一例を示すグラフである。
図6に示すように、M、C、Bk用のプロセスユニット1M、C、Bk(M、C、Bkステーション)における一次転写バイアスの電流は、一次転写ローラ25Mの抵抗が高くなるほど、大きくなるように制御される。
ただし、一次転写ローラの抵抗Rが高くなるほど、低面積率画像は低い一次転写バイアスの電流で転写されるようになるため、ある程度抵抗が高くなれば、抵抗の一次関数で電流を増加させるのは必須ではない。また、一次転写ローラの抵抗が低くなると逆転写が発生し易くなるが、一次転写バイアスの電流を下げすぎると、低面積率画像の転写率が90%を切り、画像濃度が薄くなるため、一次転写バイアスの電流はある一定レベル以下にしないことが好ましい。
そこで、本実施形態では、図7のように、M、C、Bk用の一次転写バイアスの電流値IM、IC、IBkそれぞれに上限値及び下限値を設け、その範囲内においてのみ、一次転写ローラの抵抗Rの増加に応じて一次転写バイアスの電流IM、IC、IBkを増加させている。この場合の一次転写ローラの抵抗Rと一次転写バイアスの電流I(=IM、IC、IBk)とを関係づける一次式を、第2アルゴリズムとして、次の(2)式に示すように設定している。
I=1.43×10−13×R+2.00×10−5
(ただし、2.1×10−5≦I≦3.0×10−5) ・・・(2)
なお、M,C,Bkの転写ニップで印加する一次転写バイアスの電流IM、IC、IBkを最上流のYの転写ニップに印加する電流IYより高くするメリットは無いので、M,C,Bkの転写ニップで印加する一次転写バイアスの電流IM、IC、IBkは必ず、Yの一次転写バイアスの電流IYと同じか、それより低くする。
また、中間転写ベルト移動方向における下流のプロセスユニット(ステーション)になるほど、中間転写ベルト21上に存在するトナーの量は多くなり、逆転写を発生しやすくなるため、例えば、一次転写電源81C、Bkに関しては、図8のように一次転写バイアスの電流IC,IBkを設定してもよい。また、前述の(1)式と同様に一次転写ローラの抵抗Rに関する一次転写バイアスの電流Iの傾きを負にすることも可能である。
なお、上述の実施形態では、直径8[mm]のステンレス(SUS304)からなる抵抗検知用部材としての導電性ローラ101を一次転写ローラ25Mに当接させ、ステンレスローラ101を接地した状態で、一次転写ローラ25Mに一次転写バイアスを印加した際に流れる電流から、一次転写ローラM25の抵抗を予測し、これに基づいて全てのプロセスユニット(ステーション)における画像面積率と一次転写バイアスの電流との関係を決定しているが、一次転写ローラの抵抗を検知するのはM用のプロセスユニット1M(Mステーション)だけに限るものではない。例えば、導電性ローラ101を全ての一次転写ローラ25Y,M,C,Bkに対して設け、個々の一次転写ローラ25Y、M、C,Bkの抵抗Rを測定し、この測定結果に基づいて、各一次転写ローラ25Y、M、C,Bkに印加する一次転写バイアスの電流の目標値を決定してもよい。
また、一次転写ローラ25Y、M、C,Bkに当接する前記抵抗検知用部材の形状はローラに限らず、ブラシやブレードなど、種々の形状で構わない。また、前記抵抗検知用部材の材質についても導電性があれば特に限定されないが、一次転写ローラ25Y、M、C,Bkの抵抗Rより抵抗が低い必要がある。そのため、前記抵抗検知用部材に樹脂層などを設けた場合は、その樹脂層の厚さと体積抵抗率の積を1×102[Ωm2]以下とすることが望ましい。
また、ステンレスローラ101等の抵抗検知用部材のような一次転写ローラ25Y、M、C,Bkの抵抗を直接測定する機構を設けずに、一次転写ローラ25Y、M、C,Bkや感光体2Y、M、C,Bkを回動させた状態で、一次転写電源81Y,M,C,Bkから一次転写ローラ25Y、M、C,Bkに一定の電流を印加した際の電圧値に基づいて、各一次転写ローラ25Y、M、C,Bkに印加する一次転写バイアスの電流の目標値を決定してもよい。この場合は、前記抵抗検知用部材がなくなり、コストや省スペースの点で優れる。
図9及び図10はそれぞれ、一次転写ローラの抵抗が1.4×107[Ω]及び5.6×107[Ω]の場合の一次転写ローラでのI−V特性を示すグラフである。
例えば、感光体2Y,M,C,Bkの帯電電位が−520[V]の全面非画像部に対して、一次転写バイアスの電流として30[μA]を流した際の、各一次転写電源81Y,M,C,Bkの出力電圧をV[V]としたとき、一次転写ニップ部の抵抗Rnip[Ω]を次の(3)式に示すアルゴリズムで見積もられ、得られたRnip[Ω]に基づいて、一次転写バイアスの電流の目標値を決定する。
Rnip=4.94×104×V−1.32×107 ・・・(3)
ただし、上記一次転写ニップ部の抵抗Rnip[Ω]の値を使わずに、各一次転写電源81Y,M,C,Bkの出力電圧Vの値から、直接、画像形成動作時に一次転写ローラ25に印加する一次転写バイアスの電流の目標値を求めてもよい。
さらに、中間転写ベルト21の抵抗が一次転写ローラ25Y、M、C,Bkの抵抗より十分に低いとみなせる場合は、上記(3)式で得られた一次転写ニップ部の抵抗Rnipを、前述の(1)式や(2)のRとして代入しても構わない。
例えば、図1の実施形態の構成の場合は、一次転写ローラ25Mの抵抗Rが1.4×107[Ω]の条件で、中間転写ベルト21の体積抵抗率を倍にしても、V−I特性は殆ど変化しないことを確認しているので、一次転写ニップ部の抵抗Rnip(=一次転写ローラと中間転写ベルト21の合成抵抗)のうち、中間転写ベルト21の占める割合は1/10以下と見積もられる。そのため、一次転写ニップ部の抵抗Rnipは上記(1)式及び(2)式に代入できる。この場合は、画像形成動作時に一次転写ローラ25Yと一次転写ローラ25M、C、Bkとにそれぞれ印加する一次転写バイアスの電流の目標値は、次の(4)式及び(5)式で示す第2アルゴリズムで決定される。
I=−1.43×10−13(4.94×104×V−1.32×107)+4.65×10−5 ・・・(4)
I=1.43×10−13(4.94×104×V−1.32×107)+2.00×10−5 (ただし、2.1×10−5≦I≦3.0×10−5) ・・・(5)
一方、一次転写ニップ部の抵抗Rnipをより正確に見積もりたい場合は、一条件での電流と電圧との関係から見積もるのではなく、図9及び図10のようにいくつかの異なる電流を一次転写ローラ25Y,M,C,Bkに印加して、各電流での一次転写電源81Y,M,C,Bkの出力電圧Vを測定して、得られたI−V曲線の傾きや近似曲線から抵抗を見積もるのがよい。その際、感光体2Y,M,C,Bk上の画像は全面非画像部に限らず、例えば全ベタ画像でも構わない。
なお、上記I−V特性を取得するには、非画像形成動作時に行う必要があるが、一条件で、一定電流での電圧値を取得するだけであれば、画像形成動作中に行うことも可能である。特に記録紙の先端部の余白(非画像部)で一定電流を印加した際の電圧情報に基づいて制御するのが望ましい。このようにすればダウンタイムが発生しないメリットがある。ちなみに、I−V特性や転写率、逆転写率の特性は、一次転写ローラ25Y,M,C,Bkの抵抗Rだけでなく、感光体2Y,M,C,Bkの画像部と非画像部の電位差や、トナーの帯電量変化の影響も受けるため、上記(1)式、(2)式、(4)式、(5)式などのアルゴリズムに、感光体2Y,M,C,Bkの非画像部電位、画像部電位、トナー帯電量、線速などの変数を加えることが望ましい。
また、一次転写バイアスの電流の目標値を決定するアルゴリズムを、式で扱うのではなく、例えば非画像部にして一定の電流を印加した時の電源電圧と、非画像部電位差と、各画像面積率で印加する電流値の対応表をアルゴリズムとして予め調査しておき、この対応表に基づいて画像形成動作時の一次転写バイアスの電流の目標値を決定して制御しても構わない。
以上、本実施形態によれば、環境や劣化によって一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗Rが変化しても、従来にない、安定した最終画質の提供が可能となる。
従来、一次転写バイアスの制御方式としては、一般的な定電流方式、一般的な定電圧方式などの他に、ATVC(Active Transfer Voltage Control)方式や、PTVC(Programmable Transfer Voltage Control)方式が知られている。ATVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平2−123385号公報に記載のものが知られている。また、PTVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平5−181373号公報に記載のものが知られている。
従来のATVC方式やPTVC方式は何れも、基本的には、一次転写バイアスの出力電圧を所定の目標値にするように出力電流を制御する定電圧制御である。一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗R(電気抵抗値)が環境変動によって変化すると、それに伴って出力電圧の望ましい値が変化することから、一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗値Rを所定のタイミング毎に測定した結果に応じて、一次転写バイアスの出力電圧の目標値を変化させる点が、一般的な定電圧制御と異なっている。一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗Rを測定するときに、ATVC方式では電流を定電流制御するのに対し、PTVCでは定電圧制御する。何れの方式においても、従来では、1色目と2色目以降とで出力電圧の目標値として同じ値を採用しているので、2色目以降の一次転写ニップで中間転写ベルト21上のトナーを感光体の地肌部に逆転写させてしまう。また、一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗値Rの測定値に基づく一次転写バイアスの出力電圧の目標値の補正については、所定のタイミング毎に実施するが、急激な環境変動によって抵抗値が急激に変化してしまう場合には、補正した値が実情にそぐわなくなってしまう。
これに対し、定電流制御の場合は、多少一次転写ローラ25Y、M、C、Bkの抵抗Rが変化しても、少なくとも全ベタ画像については、画像濃度変動が無いに等しい、安定した出力画像を提供できる。さらに、本実施形態のように、一次転写ローラ25Y、M、C、Bkや一次転写ニップの抵抗を考慮した定電流制御では、より安定した最終画像の提供が可能となる。
[実施形態2]
図11は、本発明を適用可能な他の実施形態(実施形態2)に係るプリンタを示す概略構成図である。なお、本実施形態2のプリンタにおける一次転写バイアスの制御については前述の実施形態1と同様な構成を適用することが可能であるので、ここでは、前述の一次転写バイアスの制御を適用可能な本実施形態2のプリンタ全体の構成及び動作について説明する。
本実施形態2のプリンタは、トナー像形成手段として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Bkと記す。)用の4つのプロセスユニット1Y,M,C,Bkを備えている。プロセスユニット1Y,M,C,Bkは、画像を形成するための画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Bkトナーを用いるが、それ以外は互いに同様の構成になっている。
以下、Yトナー像を生成するためのプロセスユニット1Yを例示して説明する。プロセスユニット1Yは、像担持体としての感光体2Y、現像手段としての現像装置3Y、帯電手段としての帯電装置、像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置5Yなどを1つのユニットとして共通の保持体に保持しており、プリンタ本体に対して一体的に着脱される。
帯電装置は、感光体2Yに対して接触あるいは近接するように配設された帯電ローラ4Yを有しており、帯電ローラ4Yは図示しない駆動手段によって回転駆動される。この帯電ローラ4Yに対しては、図示しない帯電電源によって所定の帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yと感光体2Yとの間で放電を発生させることで、感光体2Yの表面をトナーの正規帯電極性と同極性に一様に帯電させる。このような方式の帯電装置に代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
感光体2Yは、例えば、表面に有機感光層を被覆した直径30[mm]のドラムからなり、静電容量が9.5×10−7[F/m2]に調整されている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる。帯電装置によって一様に帯電された感光体2Yの表面は、後述する光書込ユニット90から発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像装置3Yは、Yトナーと磁性キャリアとを含有する図示しない現像剤を収容している。現像装置3Yのケーシングには開口が形成されており、この開口からは筒状の現像スリーブにおける周面の一部が露出して感光体2Yの表面に対向している。現像スリーブは、自らと連れ回らないように内部に固定された図示しないマグネットローラの発する磁力により、ケーシング内の現像剤を担持する。そして、自らの回転駆動に伴って、現像剤を自らと感光体2Yとが対向する現像領域に搬送する。現像領域では、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体2Yの静電潜像との間に、マイナス極性のYトナーをスリーブ側から感光体側に移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Yの地肌部との間に、マイナス極性のYトナーを感光体側からスリーブ側に移動させる非画像ポテンシャルが作用する。現像剤中のYトナーは、現像領域において、前述した現像ポテンシャルの作用によって感光体2Yの静電潜像に転移する。これにより、感光体2Y上の静電潜像が現像されてYトナー像になる。
現像装置3Yは、内部の現像剤のトナー濃度を測定する図示しないトナー濃度センサを有している。このトナー濃度センサによる検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。制御部はRAMを備えており、この中にトナー濃度センサからの出力電圧の目標値を記憶している。そして、トナー濃度センサからの出力電圧の値と前記目標値とを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナー消費によってYトナー濃度を低下させた現像剤に対し、適量のYトナーが供給される。このため、現像装置3Y内の現像剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用の現像装置(3M,C,Bk)における現像剤に対しても、同様のトナー供給制御が実施される。
以上、Y用のプロセスユニット1Yについて詳しく説明したが、他色用のプロセスユニット1M,C,Bkも同様の構成になっており、感光体2M,C,Bk上にM,C,Bkトナー像が形成される。現像装置3Y,M,C,Bkによって現像されてY,M,C,Bkトナー像になる。なお、感光体上に全面ベタ画像を形成したときの単位面積あたりのトナー付着量は0.45[mg/cm2]程度である。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの下方には、潜像形成手段としての光書込ユニット90が配設されている。光書込ユニット90は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、感光体2Y,M,C,Bkの一様帯電した表面に照射する。感光体2Y,M,C,Bkにおけるレーザー露光部の電位は減衰して、周囲の地肌部よりも電位が低い状態になる。このような状態になった箇所がY,M,C,Bkの静電潜像となる。なお、光書込ユニット90は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラーによって偏向させながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体2Y,M,C,Bkに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの上方には、被転写体としての無端状の中間転写ベルト21を図中反時計回りに無端移動させながら、その下部張架面を感光体2Y,M,C,Bkに当接させてY,M,C,Bk用の一次転写ニップを形成する転写ユニット20が配設されている。感光体2Y,M,C,Bk上に形成されたY,M,C,Bkトナー像は、各色の一次転写ニップにおいて中間転写ベルト21上に重ね合わせて一次転写される。
Y,M,C,Bk用の一次転写ニップを通過した後の感光体2Y,M,C,Bkの表面に付着している転写残トナーは、感光体クリーニング装置5Y,M,C,Bkによって感光体表面から除去される。
光書込ユニット90の下方には、記録媒体収容手段としての給紙カセット95が配設されている。給紙カセット95内には、記録媒体(記録部材)としての記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pには、給紙ローラ95aが当接している。給紙ローラ95aが図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動すると、給紙カセット95内の一番上の記録紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路に向けて排出される。給紙路に送り込まれた記録紙Pは、図中下側から上側に向けて搬送される。なお、感光体2Y,M,C,Bkや中間転写ベルト21の線速であるプロセス線速は、例えば120[mm/sec]に設定されている。
給紙路の末端には、レジストローラ対32が配設されている。レジストローラ対32は、記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの上方に配設された転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、ベルトループ内に配設された一次転写ローラ25Y,M,C,Bk、従動ローラ23、二次転写対向ローラ24などを有している。また、ベルトループ内に配設された二次転写ローラ26、ベルトクリーニング装置28なども有している。
中間転写ベルト21は、例えば、カーボンを分散した導電性ポリアミドイミド樹脂からなるベルト基体を有する厚さ80[μm]の無端状のベルトであり、その体積抵抗率は1×109[Ω・cm]に調整されている。この体積抵抗率の値は、三菱化学製ハイレスターUP MCP HT450にて100[V]の電圧印加条件で測定した値である。そして、中間転写ベルト21は、ベルトループ内に配設された各ローラに掛け回されて張架された状態で、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動するように回転駆動される。なお、中間転写ベルト21は、一次転写部において転写ニップを形成するニップ形成部材としても機能する。
4つの一次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、無端移動する中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Bkに押し付けるようにして配置される。これにより、中間転写ベルト21と感光体2Y,M,C,Bkとが当接するY,M,C,Bk用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、例えば、金属製の回転軸部材の周面に、イオン導電剤を分散せしめた樹脂からなる導電性スポンジローラ部を設けたものである。導電性スポンジローラ部の体積抵抗率は5×108[Ω・cm]程度である。金属製の回転軸部材を、感光体の回転軸に対してベルト移動方向の下流側に3[mm]ずらした位置に配設している。
一次転写ローラ23Y,M,C,Bkには、転写バイアス印加手段としての一次転写電源81Y,M,C,Bkにより、トナーの帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。これにより、一次転写ニップ内には、感光体2Y,M,C,Bk上のトナー像を感光体側からベルト側に引き寄せる転写電界が形成される。中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、その表面(おもて面)に感光体2Y,M,C,Bk上のY,M,C,Bkトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
中間転写ベルと21のベルトループ内側に配設された二次転写対向ローラ24は、ベルトループ外側に配設された二次転写ローラ26との間に中間転写ベルト21を挟み込むように配設されている。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、二次転写ローラ26とが当接する二次転写ニップがベルトの図中右側方に形成されている。先に説明したレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ローラ26には、トナーとは逆極性の二次転写バイアスが印加される。中間転写ベルト21上の4色トナー像は、二次転写バイアスやニップ圧の作用により、二次転写ニップ内で記録紙Pに一括して二次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置28によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニング装置28は、クリーニングローラを中間転写ベルト21のおもて面に当接させており、ベルト上の転写残トナーをクリーニングローラに静電転移させて除去するものである。
二次転写ニップの上方には、定着手段としての定着ユニット40が配設されている。この定着ユニット40は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接によって定着ニップを形成している。二次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト21から分離した後、定着ユニット40内に送られる。そして、定着ユニット40内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ローラ41によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着される。このようにして定着処理が施された記録紙Pは、定着ユニット40を出た後、図示しない排紙ローラ対を経て機外へと排出される。
[実施形態3]
図12は、本発明を適用可能な更に他の実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。なお、本実施形態3のプリンタにおける一次転写バイアスの制御については前述の実施形態1と同様な構成を適用することが可能であるので、ここでは、前述の一次転写バイアスの制御を適用可能な本実施形態3のプリンタ全体の構成及び動作について説明する。
本実施形態3のプリンタは、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Bkに当接させている点が、前述の実施形態1に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録媒体(記録部材)としての記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の一次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,Bk上のY,M,C,Bkトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
[実施形態4]
図13は、本発明を適用可能な更に他の実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。なお、本実施形態4のプリンタにおける一次転写バイアスの制御については前述の実施形態1と同様な構成を適用することが可能であるので、ここでは、前述の一次転写バイアスの制御を適用可能な本実施形態4のプリンタ全体の構成及び動作について説明する。
本実施形態4のプリンタは、1つの像担持体としての感光体2の周囲に、Y,M,C,Bk用の現像手段としての現像装置3Y,M,C,Bkを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電手段4によって一様に帯電させた後、感光体2の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザー光Lを照射して、感光体2の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置3Yによって現像してYトナー像を得た後、これを被転写体としての中間転写体である中間転写ベルト21上に一次転写する。その後、感光体2の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置5によって除去した後、感光体2の表面を帯電手段4によって再び一様に帯電させる。次に、感光体2の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光Lを照射して、感光体2の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置3Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト21上のYトナー像に重ね合わせて一次転写する。以降、同様にして、感光体2上でCトナー像、Bkトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて一次転写していく。これにより、中間転写ベルト21上に4色トナー像を形成する。
その後、中間転写ベルト21上の4色トナー像を、二次転写ニップで記録紙の表面に一括二次転写して、記録紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置40によって記録紙にフルカラー画像を定着させた後、記録紙を機外に排出する。
本実施形態3のような周回方式による重ね合わせ転写を行う構成において、1色目(1周目)の転写工程では、前述の実施形態1におけるY用と同様のアルゴリズムを用いて一次転写バイアスの目標値を決定する。これに対し、2色目以降(2〜4周目)の転写工程では、前述の実施形態1におけるM用と同様のアルゴリズムを用いて一次転写バイアスの目標値を決定する。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体2Y,M,C,Bkなどの像担持体と、前記像担持体上にトナー像を形成する帯電ローラ4Y,M,C,Bkや現像装置3Y,M,C,Bkなどのトナー像形成手段と、前記像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト21などの被転写体に転写するために前記像担持体に対向するように設けられた一次転写ローラ25Y,M,C,Bkなどの転写部材と、所定の目標値に基づいて前記転写部材に転写バイアスを印加する一次転写電源81Y,M,C,Bkなどの転写バイアス印加手段と、前記転写部材の抵抗を検知する導電性ローラ101などの検知手段と、前記転写部材の抵抗の値と前記目標値との関係を示す所定のアルゴリズムと、前記検知手段の検知結果とに基づいて、前記目標値を決定する制御部200等の目標値決定手段と、を備え、トナー像を転写されていない状態の前記被転写体に対して前記像担持体上のトナー像を転写する第1転写工程と、既にトナー像が転写されている状態の前記被転写体に対して前記像担持体上のトナー像を転写する第2転写工程とを実施可能なカラープリンタなどの画像形成装置である。これによれば、上記実施形態について説明したように、転写部材の抵抗の値と転写バイアスの目標値との関係を示す所定のアルゴリズムと、転写部材の抵抗を検知する検知手段の検知結果とに基づいて、転写バイアスの目標値を決定することにより、環境や劣化によって転写部材の抵抗が変化した場合でも、像担持体と転写部材とが対向する転写部に所定の転写電界を形成することができるため、良好な最終画像を安定して提供することができる。
ここで、本発明者らによる実験及び検討により、被転写体に転写されるトナー像の画像面積率に対して印加されるべき最適な転写バイアスの値は、転写部材の抵抗によって変化することが明らかになった。具体的には、被転写体に転写済みのトナー像のトナーが像担持体側に逆転写されるのを防止するための転写バイアスは転写部材の抵抗が高くなるほど高い側にシフトすることが明らかになった。
そこで、本態様Aのおいて、目標値決定手段は、既にトナー像が転写されている状態の被転写体に対して像担持体上のトナー像を転写する第2転写工程における前記所定のアルゴリズムとして、転写部材の抵抗値の増加に伴って転写バイアスの目標値を増加させるアルゴリズムを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、第2転写工程において低逆転写率を確保することができるため、複数のトナー像を被転写体上に重ね合わせて画像を形成する場合でも、転写部材の抵抗に基づいて転写バイアスの制御目標値を適切に決定し、環境や劣化によって転写部材の抵抗が変化しても被転写体から像担持体への逆転写のない良好な画像を形成できる。
(態様B)
本発明者らによる実験及び検討により、画像面積率の低いトナー像について高い転写率を得るための転写バイアスは転写部材の抵抗が高くなるほど低い側にシフトすることが明らかになった。
そこで、上記態様Aにおいて、前記目標値決定手段は、前記第1転写工程における前記所定のアルゴリズムとして、前記転写部材の抵抗値の増加に伴って前記目標値を減少させるアルゴリズムを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、トナー像を転写されていない状態の被転写体に対して像担持体上の低画像面積率のトナー像を転写する第1転写工程において高い転写率を確保することができる。
(態様C)
感光体2Y,M,C,Bkなどの像担持体と、前記像担持体上にトナー像を形成する帯電ローラ4Y,M,C,Bkや現像装置3Y,M,C,Bkなどのトナー像形成手段と、前記像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト21などの被転写体に転写するために前記像担持体に対向するように設けられた一次転写ローラ25Y,M,C,Bkなどの転写部材と、所定の目標値に基づいて前記転写部材に転写バイアスを印加する一次転写電源81Y,M,C,Bk転写バイアス印加手段と、前記転写バイアス印加手段から前記転写部材に一定の電流を印加したときの前記転写バイアス印加手段の出力電圧の値、又は前記一定の電流の値と前記出力電圧の値とを用いて算出した抵抗値と、前記出力電圧の値又は前記抵抗値と前記目標値との関係を示す所定のアルゴリズムととに基づいて、前記目標値を決定する制御部200等の目標値決定手段と、を備え、トナー像を転写されていない状態の前記被転写体に対して前記像担持体上のトナー像を転写する第1転写工程と、既にトナー像が転写されている状態の前記被転写体に対して前記像担持体上のトナー像を転写する第2転写工程とを実施可能な画像形成装置であって、前記目標値決定手段は、前記第2転写工程における前記所定のアルゴリズムとして、前記出力電圧の値又は前記抵抗値の増加に伴って前記目標値を増加させるアルゴリズムを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、第2転写工程において低逆転写率を確保することができるため、複数のトナー像を被転写体上に重ね合わせて画像を形成する場合でも、転写部材の抵抗に基づいて転写バイアスの制御目標値を適切に決定し、環境や劣化によって転写部材の抵抗が変化しても被転写体から像担持体への逆転写のない良好な画像を形成できる。
(態様D)
上記態様Cにおいて、前記目標値決定手段は、前記第1転写工程における前記所定のアルゴリズムとして、前記出力電圧の値又は前記抵抗値の増加に伴って前記目標値を減少させるアルゴリズムを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、トナー像を転写されていない状態の被転写体に対して像担持体上の低画像面積率のトナー像を転写する第1転写工程において高い転写率を確保することができる。
(態様E)
上記態様Dにおいて、画像形成動作時に、前記転写部材へ一定電流を印加した状態で、前記転写部材と前記像担持体との間の電位差の情報を取得し、前記電位差の情報に基づいて前記アルゴリズムを変更する手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、画像形成動作時に、転写部材へ一定電流を印加した状態で取得した転写部材と像担持体との間の電位差の情報に基づいて、前記目標値の決定に用いるアルゴリズムをタイムリーに変更させることができる。しかも、このアルゴリズムの変更を画像形成動作中に行うことにより、画像形成装置のダウンタイムが発生しない。
(態様F)
上記態様Dにおいて、非画像形成動作時に、前記転写部材及び前記像担持体を駆動させた状態で、前記転写部材と前記像担持体との間に二種類以上の電位差を設け、各電位差を設けたときに前記転写バイアス印加手段から前記転写部材に印加される電流の情報を取得し、前記電位差の情報と前記電流の情報とに基づいて前記アルゴリズムを変更する手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、非画像形成動作時に、単なる一点の電圧情報ではなく転写バイアスの電流−電圧特性を取得することができ、その転写バイアスの電流−電圧特性に基づいてより適切なアルゴリズムを設定することができる。
(態様G)
上記態様B又は態様Dにおいて、前記第2転写工程で決定される前記転写バイアスの目標値が、前記第1転写工程で決定される前記転写バイアスの目標値以下である。これによれば、上記実施形態について説明したように、第2転写工程で決定される転写バイアスの目標値が第1転写工程で決定される転写バイアスの目標値よりも大きい場合に発生する著しい逆転写の発生を回避することができる。
(態様H)
上記態様A乃至態様Gのいずれかにおいて、前記転写バイアス印加手段は、所定の目標値に基づいて前記転写部材に転写バイアスの電流を印加し、前記所定の目標値は、前記転写バイアスの電流の目標値である。これによれば、上記実施形態について説明したように、第2転写工程において低逆転写率を確保することができるため、複数のトナー像を被転写体上に重ね合わせて画像を形成する場合でも、転写部材の抵抗に基づいて転写バイアスの電流の制御目標値を適切に決定し、環境や劣化によって転写部材の抵抗が変化しても被転写体から像担持体への逆転写のない良好な画像を形成できる。