以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、トナー像形成手段たる作像ユニットとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の4つの作像ユニット1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するための作像ユニット1Yを例にすると、これは図2に示されるように、プロセスユニット2Yと現像ユニット25Yとを有している。これらユニットは、図3に示されるように作像ユニット1Yとしてプリンタ本体に対して一体的に着脱される。プリンタ本体から取り外した状態では、図4に示されるように現像ユニット25Yを図示しないプロセスユニット(図3の2Y)に対して着脱することができる。
図2において、プロセスユニット2Yは、潜像担持体たるドラム状の感光体3Y、ドラムクリーニング装置4Y、図示しない除電装置、帯電装置20Yなどを有している。
帯電装置20Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体3Yの表面を一様帯電せしめる。同図においては、図示しない電源によって帯電バイアスが印加されながら、図中反時計回りに回転駆動される帯電ローラ21Yを感光体3Yに接触又は接近させることで、感光体3Yを一様帯電せしめる方式の帯電装置20Yを示した。帯電ローラ21Yの代わりに、帯電ブラシを接触又は接近させるものを用いてもよい。また、スコロトロンチャージャーやコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体3Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。
帯電ローラ21Yの表面がトナーによって汚れると、その汚れの箇所における帯電能力が低下して、感光体3Yを狙いの電位に帯電させることが困難になる。そこで、帯電ローラ21Yには、その表面に付着したトナーを除去するためのクリーニングローラ22Yを当接させている。このクリーニングローラ22Yとしては、回転可能に支持される回転軸部材に繊維を静電植毛した植毛ローラや、回転軸部材の回りにメラミン樹脂をローラ上に配したメラミンローラ等を用いることができる。クリーニングローラ22Yと帯電ローラ21Yとの間で、スリップが発生すると、トナーを帯電ローラ21Y表面に擦りつけてフィルミングを発生させ易くなるので両者の線速は同じに設定することが望ましい。より好ましくは、クリーニングローラ22Yを従動ローラとして帯電ローラ21Yに連れ回らせるようにする。
帯電装置20Yによって一様帯電せしめられた感光体3Yの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像手段たる現像ユニット25Yは、第1搬送スクリュウ28Yが配設された第1剤収容部26Yを有している。また、透磁率センサーからなるトナー濃度センサー29Y、第2搬送スクリュウ30Y、現像ロール31Y、ドクターブレード34Yなどが配設された第2剤収容部27Yも有している。これら2つの剤収容部内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュウ28Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、第1剤収容部26Y内のY現像剤を図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。そして、第1剤収容部26Yと第2剤収容部27Yとの間の仕切壁に設けられた図示しない連通口を経て、第2剤収容部27Y内に進入する。
第2剤収容部27Y内の第2搬送スクリュウ30Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、Y現像剤を図中奥側から手前側へと搬送する。搬送途中のY現像剤は、第1剤収容部27Yの底部に固定されたトナー濃度センサー29Yによってそのトナー濃度が検知される。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュウ30Yの図中上方には、現像ロール31Yが第2搬送スクリュウ30Yと平行な姿勢で配設されている。
現像ロール31Yは、図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる現像スリーブ32Yにマグネットローラ33Yを内包している。第2搬送スクリュウ30Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラ33Yの発する磁力によって現像スリーブ32Y表面に汲み上げられる。そして、現像部材たる現像スリーブ32Yと所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード34Yによってその層厚が規制された後、感光体3Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体3Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体3Y上にYトナー像が形成される。
現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール31Yの現像スリーブ32Yの回転に伴って第2搬送スクリュウ30Y上に戻される。そして、図中手前端まで搬送されると、図示しない連通口を経て第1剤収容部28Y内に戻る。
トナー濃度センサー29YによるY現像剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。Y現像剤の透磁率は、Y現像剤のYトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサー29はYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。上記制御部はRAMを備えている。この中にトナー濃度センサー29Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像ユニットに搭載されたC,M,K用のトナー濃度センサーからの出力電圧の目標値であるC用Vtref、M用Vtref、K用Vtrefのデータを格納している。
Y用の現像ユニット25Yについては、トナー濃度センサー29Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナーの消費によってYトナー濃度を低下させたY現像剤に対し、第1剤収容部26Yで適量のYトナーが供給される。このため、第2剤収容部27Y内のY現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用のプロセスユニット(1C,M,K)内における現像剤についても、同様のトナー供給制御が実施される。
感光体3Y上に形成されたYトナー像は、後述する中間転写ベルトに中間転写される。プロセスユニット2Yのドラムクリーニング装置4Yは、中間転写工程を経た後の感光体3Y表面に残留したトナーを除去する。これによってクリーニング処理が施された感光体3Y表面は、図示しない除電装置によって除電される。この除電により、感光体3Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
図1において、他色用の作像ユニット1C,M,Kでも、Y用の作像ユニット1Yと同様にして感光体3C,M,K上にC,M,Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト61上に重ね合わせて転写される。
作像ユニット1Y,C,M,Kの図中下方には、光書込ユニット40が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット40は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、各作像ユニット1Y,C,M,Kの感光体3Y,C,M,Kに照射する。これにより、感光体3Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット40は、光源から発したレーザー光Lを、モーターによって回転駆動されるポリゴンミラー41によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,C,M,Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
光書込ユニット40の下方には、第1給紙カセット51、第2給紙カセット52が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録部材たる記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pには、第1給紙ローラ51a、第2給紙ローラ52aがそれぞれ当接している。第1給紙ローラ51aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第1給紙カセット51内の一番上の記録紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路53に向けて排出される。また、第2給紙ローラ52aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第2給紙カセット52内の一番上の記録紙Pが、給紙路53に向けて排出される。
給紙路53内には、複数の搬送ローラ対54が配設されており、給紙路53に送り込まれた記録紙Pは、これら搬送ローラ対54のローラ間に挟み込まれながら、給紙路53内を図中下側から上側に向けて搬送される。
給紙路53の末端には、レジストローラ対55が配設されている。レジストローラ対55は、記録紙Pを搬送ローラ対54から送られてくる記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
作像ユニット1Y,C,M,Kの図中上方には、無端移動体たる中間転写ベルト61を張架しながら図中反時計回りに無端移動せしめる転写ユニット60が配設されている。転写手段たる転写ユニット60は、中間転写ベルト61の他、ベルトクリーニングユニット62、第1ブラケット63、第2ブラケット64などを備えている。また、4つの1次転写ローラ65Y,C,M,K、駆動ローラ66、クリーニング裏打ちローラ67、補助ローラ68、従動ローラ69なども備えている。中間転写ベルト61は、これら8つのローラに張架されながら、クリーニング裏打ちローラ67の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
4つの1次転写ローラ65Y,C,M,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト61を感光体3Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト61の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト61は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト61上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
駆動ローラ66は、中間転写ベルト61のループ外側に配設された2次転写ローラ70との間に中間転写ベルト61を挟み込んで2次転写ニップを形成している。先に説明したレジストローラ対55は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト61上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト61上の4色トナー像は、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ70と駆動ローラ66との間に形成される2次転写電界や、ニップ圧の影響により、2次転写ニップ内で記録紙Pに一括2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト61には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット62によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット62は、クリーニングブレード62aを中間転写ベルト61のおもて面に当接させており、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
転写ユニット60の第1ブラケット63は、図示しないソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ68の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第1ブラケット63を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ68の回転軸線を中心にしてY,C,M用の1次転写ローラ65Y,C,Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト61をY,C,M用の感光体3Y,C,Mから離間させる。そして、4つの作像ユニット1Y,C,M,Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY,C,M用の作像ユニットを無駄に駆動させることによるそれら作像ユニットの消耗を回避することができる。
2次転写ニップの図中上方には、定着ユニット80が配設されている。この定着ユニット80は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ81と、定着ベルトユニット82とを備えている。定着ベルトユニット82は、定着部材たる定着ベルト84、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ83、テンションローラ85、駆動ローラ86、図示しない温度センサー等を有している。そして、無端状の定着ベルト84を加熱ローラ83、テンションローラ85及び駆動ローラ86によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト84は加熱ローラ83によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト84の加熱ローラ83掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ81がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ81と定着ベルト84とが当接する定着ニップが形成されている。
定着ベルト84のループ外側には、図示しない温度センサーが定着ベルト84のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト84の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサーによる検知結果に基づいて、加熱ローラ83に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ81に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。これにより、定着ベルト84の表面温度が約140[°]に維持される。
上述した2次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト61から分離した後、定着ユニット80内に送られる。そして、定着ユニット80内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト84によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着せしめられる。
このようにして定着処理が施された記録紙Pは、排紙ローラ対87のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ本体の筺体の上面には、スタック部88が形成されており、排紙ローラ対87によって機外に排出された記録紙Pは、このスタック部88に順次スタックされる。
転写ユニット60の上方には、Y,C,M,Kトナーを収容する4つのトナーカートリッジ100Y,C,M,Kが配設されている。トナーカートリッジ100Y,C,M,K内のY,C,M,Kトナーは、作像ユニット1Y,C,M,Kの現像ユニット25Y,C,M,Kに適宜供給される。これらトナーカートリッジ100Y,C,M,Kは、作像ユニット1Y,C,M,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
図5は、転写ユニット60をその周囲構成とともに示す拡大構成図である。同図において、ベルト部材としての中間転写ベルト61のループ内側に配設された従動ローラ69は、中間転写ベルト61の裏面に接触しながら、中間転写ベルト61の無端移動に伴って従動回転する。従動回転する従動ローラ69の線速は、中間転写ベルト61の線速と同じである。この従動ローラ69の回転軸部材や軸受けには、ロータリーエンコーダー202が取り付けられている。このロータリーエンコーダー202は、従動ローラ69が所定の角度だけ回転する毎にパルス信号を出力する。ベルト速度検知手段たるロータリーエンコーダー202から発せられるパルス信号の周波数は、従動ローラ69の回転速度と相関する。そして、従動ローラ69の回転速度は、中間転写ベルト61の移動速度と相関する。よって、ロータリーエンコーダー202から発せられるパルス信号の周波数に基づいて、中間転写ベルト61の移動速度を把握することが可能である。通常のプリントモードにおいては、従動ローラ69が標準速度で移動する中間転写ベルト61に連れ回ることで、ロータリーエンコーダー202から発せられるパルス信号の周波数が基準周波数になる。
中間転写ベルト61のおもて面の周方向における全域のうち、駆動ローラ66に対する掛け回し位置を通過した直後の領域に対しては、トナー像検知センサー201が所定の間隙を介して対向している。このトナー像検知センサー201は、反射型フォトセンサーからなり、発光素子から発した光をベルトおもて面で反射させて得た反射光を、受光素子で受光する。受光素子による受光量の増減に基づいて、中間転写ベルト61上のトナー像を検知することができる。
図6は、実施形態に係るプリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、メイン制御部250は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などからなり、プリンタ全体の機器の制御や各種の演算処理を司っている。また、共用駆動モーター251は、中間転写ベルト(61)を無端移動させる駆動ローラ(66)の駆動源である。また、カラー駆動モーター252は、Y,C,M用の感光体(1Y,C,M)を回転駆動させるための駆動源である。また、共用モーター制御部253は、共用駆動モーター251の駆動制御を司るものであり、共用駆動モーター251の回転速度を自由に変化させることができる。また、カラーモーター制御部254は、カラー駆動モーター252の駆動制御を司るものであり、カラー駆動モーター252の回転速度を自由に変化させることができる。
共用モーター制御部253には、上述したロータリーエンコーダー202が電気的に接続されている。共用モーター制御部254は、通常のプリントモードにおいて、共用駆動モーター251を概ね標準速度で駆動する。但し、ロータリーエンコーダー202から出力されるパルス信号の周波数が標準周波数から増減した場合に、その増減分に応じて共用駆動モーター251の駆動速度を標準速度から減増させるFB制御を実施する。このFB制御により、駆動ローラ66が偏心していても、中間転写ベルト61をほぼ標準の速度で無端移動させることができる。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図7は、本プリンタにおける転写ユニット60や感光体3Y,C,M,Kに関連する駆動伝達系を示す概略構成図である。同図において、感光体3Y,C,M,Kや、駆動ローラ66は、点線で描かれているが、実際には、同図において実線で描かれている部材よりも図の紙面に直交する方向における手前側に存在している。
Y,C,M,K用の感光体3Y,C,M,Kの回転軸部材には、感光体ギヤ151Y,C,M,Kが図示しないカップリングによって軸線方向で連結せしめられている。これにより、感光体3Y,C,M,Kは、感光体ギヤ151Y,C,M,Kと同一の回転軸線上で一体となって回転する。K用の感光体1Kの感光体ギヤ151Kには、駆動源たる共通駆動モーター251のモーター軸に固定されたモーターギヤ251aが噛み合っている。共用駆動モーター251は、定速性に優れたDCブラシレスモーター、ステッピングモーター等から構成される。共通駆動モーター251のモーターギヤ251aからK用の感光体ギヤ151Kに伝達された駆動力は、第1中継ギヤ164、第2中継ギヤ165、同心ギヤ166を順次経由して、駆動ローラギヤ167に伝達される。駆動ローラギヤ167は、中間転写ベルト61を無端移動させる駆動ローラ66の回転軸部材上に固定されており、駆動ローラ66と一体となって回転する。このように駆動力が伝わることで、共通駆動モーター251の発する駆動力により、K用の感光体3Kと、駆動ローラ66とが回転駆動される。そして、駆動ローラ66の回転駆動によって中間転写ベルト61が無端移動せしめられる。なお、第2中継ギヤ165と同心ギヤ166とは、互いに一体形成されており、互いに回転軸線方向のずれた位置で一体となって回転する。
このように、本プリンタにおいては、潜像担持体たるK用の感光体3Kと、駆動ローラ66とで駆動源としての共用駆動モーター251を共用することで、低コスト化や省スペース化を図ることができる。
カラー駆動モーター252のモーター軸に固定されたモーターギヤ252aは、C用の感光体ギヤ151C及びM用の感光体ギヤ151Mに噛み合っている。これにより、カラー駆動モーター252の回転駆動力がC用の感光体3CやM用の感光体3Mに伝えられる。また、C用の感光体ギヤ151Cには、第3中継ギヤ162が噛み合っており、この第3中継ギヤ162はY用の感光体ギヤ151Yにも噛み合っている。これにより、カラー駆動モーター252の回転駆動力がY用の感光体3Yにも伝えられる。
図8は、駆動伝達系の一部を、中間転写ベルト61、K用の感光体3K、及び共用モーター制御部253とともに示す拡大構成図である。同図において、メイン制御部250には、トナー像検知センサー201が電気的に接続されている。また、共用モーター制御部253には、ロータリーエンコーダー202の他に、ホームポジションセンサー(以下、HPセンサーという)203が電気的に接続されている。回転姿勢検知手段としてのHPセンサー203は、センサー部203aと、被検知部材203bとを具備している。そして、被検知部材203bは、駆動ローラ66の回転軸部材に固定された状態で、回転軸部材とともに一体的に回転する。これに対し、センサー部203aは、転写ユニット60の図示しない側板に固定されている。駆動ローラ66の回転角度姿勢が所定のホームポジション角度姿勢になると、被検知部材203bの周方向の先端部がセンサー部203aとの対向領域に進入する。すると、反射型フォトセンサーからなるセンサー部203aがその先端部を検知する。より詳しくは、センサー部203aの受光素子による受光量が急激に上昇して受光素子からの出力電圧が急激に立ち上がる。以下、このように急激に立ち上がる出力電圧を、HP検知信号という(出力電圧が急激に立ち上がる瞬間)。なお、HPセンサー203は、共用モーター制御部253だけでなく、メイン制御部250にも接続されている。
メイン制御部250は、所定時間経過毎や所定枚数プリント毎などといった所定のタイミングで、駆動速度パターン把握処理を実施する。この駆動速度パターン把握処理では、図9に示されるように、まず、共用モーター制御部253に対して、中間転写ベルト61を目標速度で安定化させるように共用駆動モーター251を駆動させるFB制御を実施させるための命令を行う(S1)。これにより、共用モーター制御部253は、共用駆動モーター251をFB制御で回転駆動して、中間転写ベルト61を目標速度で等速に無端移動させる。次に、メイン制御部250は、K用の作像ユニット1Kの駆動を制御しながら、K用の感光体3K上において、テストパターン像の形成を開始した後(S2)、時間差Thpnを記憶する(S3)。時間差Thpnは、テストパターン像における先頭のテストトナー像Ttのための光書込(潜像書込)を開始してから、上述したHP検知信号が出力されるまでの時間差である。
駆動速度パターン把握処理で形成されるテストパターン像は、図10に示されるように、副走査方向に並ぶ複数のテストトナー像Ttを具備するものである。なお、副走査方向は同図における矢印の方向であり、これは感光体3Kの表面移動方向と同じである。K用の感光体3K上に形成されたテストパターン像は、中間転写ベルト61上に転写される。メイン制御部250は、駆動速度パターン把握処理を実施しているときには、図示しない2次転写電源に対し、2次転写バイアスの代わりに、逆バイアスの出力を命令する(図9のS4)。この逆バイアスは、2次転写バイアスとは逆極性であって、且つトナーの帯電極性と同極性のバイアスである。このため、駆動速度パターン把握処理の実施中には、2次転写ローラ70に対して逆バイアスが印加される。中間転写ベルト61上に転写されたテストパターン像は、2次転写ニップに進入しても、逆バイアスによって形成される逆電界によって中間転写ベルト61の表面上に付着したまま、2次転写ニップを通過する。そして、トナー像検知センサー201との対向位置である検知位置DPに進入して、テストパターン像に具備される複数のテストトナー像Ttがトナー像検知センサー201に順次検知される。
メイン制御部250は、図9に示されるように、2次転写電源に対して逆バイアスの出力を命令した後に(S4)、検知位置DPにおける先頭のテストトナー像Ttの検知タイミングを記憶する。更に、その後の各テストトナー像Ttの検知時間間隔をサンプリングして記憶する(S5)。駆動速度パターン把握処理において、K用の感光体3Kや中間転写ベルト61の線速に全く変動がない場合には、図10に示されるように、テストパターン像における複数のテストトナー像Ttが副走査方向において等間隔に形成される。しかしながら、駆動速度パターン把握処理では、共用駆動モーター251をFB制御していることから、中間転写ベルト61のK用の1次転写ニップにおける線速はほぼ一定であるものの、K用の感光体3Kの線速が変動する。このため、図11に示されるように、複数のテストトナー像Ttの副走査方向における間隔が変動する。より厳密には、間隔だけでなく、テストトナー像Ttの副走査方向における大きさも変動(伸縮)する。そして、トナー像検知センサー201によるテストトナー像Ttの検知時間間隔も変動する。
メイン制御部250は、上記S5の工程にて、複数のテストトナー像Ttの検知時間間隔の変動パターンを記憶するのである。検知時間間隔の変動パターンを記憶することは、テストトナー像Ttの副走査方向における伸縮パターンを記憶していることと同意である。検知時間間隔の変動は、駆動ローラ66の偏心に起因して駆動ローラ回転周期で発生するベルト速度変動を抑えるためのFB制御に起因して発生するものである。このため、駆動ローラ66が所定の回転角度姿勢になったタイミングで伸び(検知時間間隔の長期化)を開始し、その後、駆動ローラ66が1回転する間に、伸び縮みを1セット出現させるパターンになる。標準的な検知時間間隔をグラフの中心軸にすると、駆動ローラ66の1回転あたりに、その中心軸を中心値としてサインカーブ状の時間間隔変動が発生するパターンである。このようなパターンに基づいて、検知時間間隔の変動(トナー像の伸縮)を発生させないようにする共用駆動モーター251の駆動速度パターンを構築することが可能である。
その理由について詳述する。
図5において、K用の感光体3Kに対する光書込は、K用の感光体3Kの回転移動軌道における書込位置SPで行われる。K用の感光体3Kの線速が変動すると、書込位置SPにおける感光体3Kの単位時間あたりの移動量が変動することから、書き込まれる静電潜像に伸縮が発生する。その後、書込位置SPで書き込まれた静電潜像は、現像装置によって現像されたKトナー像になった後、K用の一次転写ニップにおける転写位置TPで中間転写ベルト61上に一次転写される。この際、中間転写ベルト61とK用の感光体3Kとに線速差があると、Kトナー像が転写前の状態よりも伸縮して中間転写ベルト61に1次転写される。このように、像の伸縮(乱れ)は、書込位置SPで発生するものと、転写位置TPで発生するものとがある。
本発明者らは、共用駆動モーター251の駆動速度を、FB制御するのではなく、中間転写ベルト61の速度の検知結果とは無関係に単純に増減する制御を実施する際には、転写位置TPでのトナー像の伸縮を発生させないことを見出した。具体的には、共用駆動モーター251の駆動速度を意図的に増減すると、その増減に応じて中間転写ベルト61及びK用の感光体3Kの両方の線速がそれぞれ増減する。このため、その意図的な増減によっては、転写位置TPでは中間転写ベルト61と感光体3Kとに線速差を発生させないことから、意図的な増減によってはトナー像の伸縮(乱れ)が発生しないのである。但し、ギヤの減速比で決まる感光体3Kと中間転写ベルト61との線速差の影響は微少であるので無視するものとする。また、書込位置SPでは、感光体3Kの線速が変動すると、それに応じて、感光体3Kに書き込まれる静電潜像に伸縮が発生する。このことは、共用駆動モーター251の駆動速度を意図的に変動させることで、静電潜像の形状を所望の伸縮パターンで自由に伸縮させ得ることを意味している。よって、複数のテストトナー像Ttの検知時間間隔の変動パターンを検知した結果に基づいて、その変動(トナー像の伸縮)を発生させないようにする共用駆動モーター251の駆動速度パターンを構築することが可能なのである。
メイン制御部250は、検知時間間隔の変動パターンのデータ(以下、パターン間隔データという)を用いて、周期変動成分を抽出する。予め用意された変動推定行例(駆動ローラ66の径、テストトナー像の数、標準回転数等によって定められる)によって、パターン間隔データに含まれる周期変動成分の同相成分Iと直交成分Qとを直交検波処理によって算出する。そして、直交検波処理にて得られた同相成分I及び直交成分Qに基づいて、次式のようにして、各成分の振幅Amp、及び位相Pheを算出する。
パターン間隔データを等間隔に補正するには、それを相殺する速度変動を感光体3Kに与えればよい。感光体3Kの線速変動と、中間転写ベルト61の線速変動とは同じ量であることから、駆動ローラ66の駆動源になっている共用駆動モーター251の駆動速度をその量に応じた分だけ逆位相で変動させればよい。中間転写ベルト61の線速は次式で表される。
この式において、Vb
nは、中間転写ベルト61の線速[mm/s]を表している。また、Vb
defは、中間転写ベルト61の平均線速[mm/s]を表している。また、ω
nは、駆動ローラ66におけるn変動成分の角速度[rad/s]を表している。また、α
bnは、n変動成分の変動振幅を表している。また、β
bnは、n変動成分の変動位相(HPセンサ基準)を表している。この式において、中間転写ベルト61の線速変動(=感光体線速変動)が発生した場合のテストトナー像位置変動△P
bnは、この式の第2項における変動成分の積分となるので次式で表される。
この式において、Cは積分定数を表している。この式において、テストトナー像位置変動をTe[sec]時間毎に形成された隣接テストトナー像間隔に変換する。N番目とN−1番目のテストトナー像の間隔変動△P
bNnは、次式で表される。
この式において、Teは、複数のテストトナー像の光書込時における書込時間間隔[sec]を表している。また、この式において、テストトナー像の検知時間間隔は、トナー像番号(N)に応じて変化する。その変化のパターンを示す波形の振幅(Amp
n)、位相(Phe
n)がパターン間隔データの波形と反転の関係(逆位相の関係)であれば、トナー像の伸縮を駆動速度の増減で相殺することができる。従って、このような相殺を実現し得る中間転写ベルト61の線速変動の振幅(α
bn)と位相(β
bn)は、次式で表される。
これらの式に対し、反転関係となる位相差(π)を与え、さらに、FB制御の目標値に換算するための処理や、上述した時間差Thp
nを考慮すると、次式が得られる。
これらの式において、Thpnは、テストパターン像における先頭のテストトナー像Ttのための光書込(潜像書込)を開始してから、HP検知信号が出力されるまでの時間差[sec]を表している。また、Encは、ロータリーエンコーダー202から送られてくる従動ローラ69の1回転あたりのパルス数[ppr]を表している。また、Rfは、従動ローラ69の半径[mm]を表している。
メイン制御部250は、このようにして、振幅(αbn)及び位相(βbn)を算出して、算出結果を記憶した後(S6)、その結果を共用モーター制御部253に転送する(S7)。そして、各種の機器の駆動を停止させた後(S8)、駆動速度パターン把握処理を終了する。一方、共用モーター制御部253は、ユーザーの命令に基づく画像形成動作の実施中には、共用駆動モーター251の駆動速度をFB制御するとともに、HP検知信号の発生タイミングを基準にして振幅(αbn)及び位相(βbn)に基づいてFF制御する。これにより、トナー像の乱れを抑えることができる。
図12は、共用駆動モーター251をFB制御だけで駆動した場合と、FB制御及びFF制御で駆動した場合とにおける中間転写ベルト61の線速の経時変化を示すグラフである。FB制御だけの場合においては、中間転写ベルト61を目標速度で安定化させるように共用駆動モーター251の駆動を制御していることから、図示のように、中間転写ベルト61の線速変動は殆ど見られない。これに対し、FB制御に加えてFF制御を実施すると、中間転写ベルト61に正弦波状の特性の線速変動が発生する。このときのFB制御は、前述のFB制御とは異なり、中間転写ベルト61を目標速度で安定化させるようにするのではなく、FF制御で用いる駆動速度パターンに従った速度変動パターンで中間転写ベルト61の線速を変動させるようにするものである。このため、図示のように、中間転写ベルト61の速度に正弦波状の波形を描く変動特性が現れる。その正弦波状の波形の1周期は、駆動ローラ66の1回転周期と同期している。以下、中間転写ベルト61の線速を目標速度で安定化させるためのFB制御を等速FB制御という。これに対し、FF制御で用いる駆動速度パターンに従った速度変動パターンで中間転写ベルト61の線速を変動させるようにするFB制御を変動FB制御という。
図13は、共用駆動モーター251を等速FB制御だけで駆動した場合と、変動FB制御及びFF制御で駆動した場合とにおける感光体3Kの線速の経時変化を示すグラフである。図示のように、等速FB制御だけの場合には、感光体3Kの線速には正弦波状の変動が見られる。この正弦波の1周期は駆動ローラ66の1回転周期と同期している。FF制御では、等速FB制御だけの場合における線速の変動波形に対して振幅が約2倍で且つ位相が逆になるような速度変動が加えられる。これにより、変動FB制御にFF制御を加えた場合には、等速FB制御だけの場合の変動波形をほぼ逆転させたような変動波形の線速変動が感光体3Kに発生する。
このように、変動FB制御及びFF制御を実施すると、中間転写ベルト61及び感光体3Kの両方に、駆動ローラ66の回転周期に同期した線速変動が発生するが、形成されるトナー像の副走査方向における伸縮は、等速FB制御だけの場合に比べて大幅に改善された。
なお、ユーザーの命令に基づく通常のプリント動作を実施しているときとは別のタイミングで駆動速度パターン把握処理を実施する例について説明したが、通常のプリント動作と並行して駆動速度パターン把握処理を実施することも可能である。この場合、テストパターン像を、中間転写ベルト61のベルト幅方向の端部であって、通常のプリント時には使用しない領域に、テストパターン像を形成しつつ、ユーザーの命令に基づく画像をベルト幅方向の通常の画像形成領域に形成すればよい。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
上述したように、変動FB制御及びFF制御を実施すると、中間転写ベルト61に、駆動ローラ66の回転周期に同期した線速変動を発生させる。かかる構成において、Y,M,C用の感光体3Y,M,Cの駆動源になっているカラー駆動モーター252を等速で駆動してそれら感光体の線速を一定に制御すると、中間転写ベルト61の線速変動に起因するY,M,Cトナー像の乱れを発生させてしまう。そこで、実施例に係るプリンタにおいては、カラー駆動モーター252を、共用駆動モーター251とは異なる駆動速度パターンでFF制御することで、共用駆動モーター251をFF制御することに起因するY,M,Cトナー像の乱れを抑えるようになっている。
具体的には、上記数8の式によって求められた振幅(α
bn)や、上記9の式によって求められた位相(β
bn)に基づけば、Y,M,Cトナー像の位置ずれ量を把握することが可能である。それらの位置ずれ量は、共用駆動251のFF制御によって感光体3Y,M,Cの線速を変動させてしまうことに起因して生ずるものである。そして、それらの位置ずれ量については、その位置ずれ量を相殺し得る線速変動を感光体3Y,M,Cに発生させる駆動速度パターンでカラー駆動モーター252を駆動することで、その発生をほぼ解消することができる。感光体3Y,M,Cの線速を変動させることに起因するトナー像の位置変動も考慮すると、前述の位置ずれ量を相殺し得る線速変動の振幅αfcや位相βfcは、次の数10や数11に示される式によって求めることができる。なお、数10におけるkや、数11におけるθは、感光体3Y,M,Cの表面上の書込位置SPと転写位置TPとのなす角度によって定まる所定の定数を表している。また、FGは、カラー駆動モーター252から送られてくるFG信号のモーター1回転あたいのパルス数を表している。また、Grは、カラー駆動モーター252を基準にしたカラー駆動モーターから感光体3Y,M,Cまでの減速比を表している。また、Rdは、感光体3Y,M,Cの直径を表している。なお、実施例に係るプリンタでは、全ての感光体の径は互いに同じである。
図14は、実施例に係るプリンタのメイン制御部250によって実施される駆動速度パターン把握処理の処理フローを示すフローチャートである。この処理フローにおいて、S1〜S5やS7の工程は、図9の処理フローにおけるS1〜S5やS7の工程と同様である。また、図14の処理フローにおいて、S6の工程は、図9の処理フローにおけるS6の工程と実質的に同じである。図14におけるS6の工程において、第1駆動速度パターンと記されているものは、図9のS6の工程における駆動速度パターンと同じである。
メイン制御部250は、振幅(αbn)及び位相(βbn)の算出結果を共用モーター制御部253に転送した後(S7)、次のような処理を行う。即ち、上記数10や数11に基づいて、Y,M,C用の駆動速度パターンである第2駆動速度パターンの振幅(αfc)及び位相(βfc)を算出する(S8)。そして、その算出結果を、カラーモーター制御部254に転送する(S10)。そして、各種の機器の駆動を停止させた後(S11)、駆動速度パターン把握処理を終了する。
一方、カラーモーター制御部254は、ユーザーの命令に基づく画像形成動作の実施中には、カラー駆動モーター252の駆動速度を、HP検知信号の発生タイミングを基準にして振幅(αfc)及び位相(βfc)に基づいてFF制御する。これにより、Y,M,Cトナー像の乱れを抑えることができる。
図15は、共用駆動モーター251をFB制御だけで駆動し、且つ、カラー駆動モーター252を等速で駆動した場合におけるKトナー像やYトナー像の位置ずれ量と、感光体3Kや感光体3Yの表面移動距離との関係を示すグラフである。共用駆動モータ251のFB制御によって中間転写ベルト61の線速を安定させることで、図示のように、Yトナー像の位置ずれの発生をはぼ無くすことができる。しかしながら、共用駆動モーター251のFB制御によって感光体3Kに線速変動を発生させることで、図示のように、感光体3Kの表面移動に伴ってKトナー像の位置ずれをサインカーブ状の変動特性で発生させてしまう。そのサインカーブの位相は、感光体3Kの線速変動の位相と同期している。なお、同図では、Yトナー像、Mトナー像、及びCトナー像のうち、Yトナー像についての位置ずれだけを示しているが、Mトナー像やCトナー像においても、Yトナー像と同様に、位置ずれをほぼ無くすことができる。
図16は、共用駆動モーター251を変動FF制御及びFB制御で駆動し、且つ、カラー駆動モーター252を等速で駆動した場合におけるKトナー像やYトナー像の位置ずれ量と、感光体3Kや感光体3Yの表面移動距離との関係を示すグラフである。共用駆動モーター251を変動FB制御及びFF制御で駆動することにより、図示のように、Kトナー像の位置ずれをほぼ無くすことができる。しかしながら、共用駆動モーター251のFB制御に起因する中間転写ベルト61の速度変動に起因して、Yトナー像に位置ずれを発生させてしまう。この位置ずれは、図示のように、感光体3Yの表面移動に伴って位置ずれ量をサインカーブ状の特性で変動させるものである。そのサインカーブの位相は、中間転写ベルト61の線速変動の位相と同期している。なお、同図では、Yトナー像、Mトナー像、及びCトナー像のうち、Yトナー像についての位置ずれ量の変動特性だけを示しているが、Mトナー像やCトナー像においても、Yトナー像と同様の変動特性で位置ずれ量が変動する。
図17は、共用駆動モーター251を変動FF制御及びFB制御で駆動し、且つ、カラー駆動モーター252をFF制御で駆動した場合におけるKトナー像やYトナー像の位置ずれ量と、感光体3Kや感光体3Yの表面移動距離との関係を示すグラフである。なお、共用駆動モーター251の変動FF制御については、振幅αbn及び位相βbnに基づいて行っている。また、カラー駆動モーター252のFF制御については、振幅αfc及び位相βfcに基づいて行っている。図示のように、共用駆動モーター251を変動FB制御及びFF制御で駆動することに加えて、カラー駆動モーター252をFF制御することで、Kトナー像及びYトナー像の両方についてそれぞれ位置ずれをほぼ無くすことができる。同図では、Yトナー像、Mトナー像、及びCトナー像のうち、Yトナー像についての位置ずれだけを示しているが、Mトナー像やCトナー像においても、Yトナー像と同様に、位置ずれをほぼ無くすことができる。本発明者らは、実施例に係るプリントと同様の構成のプリンタを試作してテストプリントを行ったところ、図17に示されるグラフと同様に、4色のトナー像の全てについて、位置ずれをほぼ無くすことができた。
なお、駆動ローラ66の偏心に起因するトナー像の乱れだけに着目したが、駆動ローラ66とは異なるベルト張架ローラの偏心に起因するベルト速度変動によるトナー像の乱れについても、同様の駆動制御によって抑えることができる。この場合、直交検波演算による周波数解析を行い易くするために、駆動ローラ66を含む全てのベルト張架ローラ(例えば1次転写ローラ)の径を互いに異ならせて1回転周期を互いに異ならせることが望ましい。
次に、実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した具体例のプリンタについて説明する。具体例に係るプリンタにおいては、Y,M,C用の感光体3Y,M,Cを、それぞれ互いに異なる専用の駆動モーターで駆動するようになっている。そして、Y,M,C,K用の駆動モーターをそれぞれ、HP検知信号の発生タイミングを基準にして、振幅αfc及び位相βfcに基づいてFF制御する。かかる構成においても、実施例に係るプリンタと同様に、全てのトナー像の乱れを抑えることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、潜像担持体(例えば感光体3K)と、前記潜像担持体の無端移動する表面に潜像を書き込む潜像書込手段(例えば光書込ユニット40)と、前記表面上の潜像を現像してトナー像を得る現像手段(例えば現像ユニット25K)と、前記表面上のトナー像を無端移動する無端状のベルト部材(例えば中間転写ベルト61)のおもて面、又は前記おもて面に保持されている記録部材、に転写する転写手段(例えば1次転写ローラ65K)と、自らの回転駆動に伴って前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動ローラ(例えば駆動ローラ66)と、前記駆動ローラの駆動力を発揮する駆動源(例えば共用駆動モーター251)と、前記ベルト部材の移動速度を検知するベルト速度検知手段(例えばロータリーエンコーダー202)と、前記ベルト速度検知手段による検知結果を前記駆動源の駆動速度にフィードバックして前記ベルト部材の移動速度の安定化を図るフィードバック制御を実施する制御手段(例えばメイン制御部250及び共用モーター制御部253)とを備える画像形成装置において、前記駆動源を前記駆動ローラ及び前記潜像担持体で共用する共用駆動源として用い、前記駆動ローラの回転角度姿勢を検知する回転姿勢検知手段(例えばHPセンサー203)を設け、前記ベルト部材の移動速度を目標速度で安定化させる前記フィードバック制御を実施した状態で、前記ベルト部材の表面移動方向に並ぶ複数のテストトナー像からなるテストパターン像を前記ベルト部材に形成し、それら複数のテストトナー像を検知するトナー像検知手段による検知結果に基づいてそれら複数のテストトナー像の前記表面移動方向における伸縮パターンを把握した結果に基づいて、前記表面移動方向におけるトナー像の伸縮を抑制する前記共用駆動源の駆動速度パターンを把握する駆動速度パターン把握処理を所定のタイミングで実施し、且つ、ユーザーの命令に基づくトナー像を形成する際に、前記回転姿勢検知手段による検知結果と前記駆動速度パターンとに基づいて前記共用駆動源の駆動速度を制御するフィードフォワード制御と、前記ベルト部材の移動速度を前記駆動速度パターンに従った速度変動パターンにする前記フィードバック制御とを実施するように前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記駆動速度パターン把握処理にて、前記伸縮パターンを相殺する前記共用駆動源の駆動速度パターンを把握するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記ベルト速度検知手段として、前記ベルト部材のループ内側で自らの表面に前記ベルト部材を掛け回すように配設されて前記ベルト部材の無端移動に伴って従動回転する従動ローラの回転速度を検知するものを用いるとともに、
前記駆動ローラと前記従動ローラとの組み合わせとして、互いに径の異なる組み合わせを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、従動ローラの偏心成分を駆動ローラの偏心成分に重畳してしまうことなく、駆動ローラの偏心に起因するベルト部材の速度変動を精度良く検出することができる。
[態様D]
態様A又Bにおいて、潜像担持体を複数設け、前記複数の潜像担持体のうち、第1潜像担持体(例えば感光体3K)を前記共用駆動源で駆動する一方で、他の潜像担持体(例えば感光体Y,M,C)を前記共用駆動源とは異なる他の駆動源で駆動し、前記駆動パターン把握処理にて、前記駆動速度パターンである第1駆動速度パターンに基づいて、前記他の駆動源を駆動するための駆動速度パターンである他の駆動速度パターンを把握する処理を実施し、且つ、ユーザーに基づくトナー像を形成する際に、前記フィードフォワード制御を第1フィードフォワード制御として実施する一方で、前記回転姿勢検知手段による検知結果と前記他の駆動速度パターンとに基づいて前記他の駆動源の駆動速度を制御する他のフィードフォワード制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、共用駆動源をフィードフォワード制御することに起因する、他のトナー像(他の潜像担持体に形成されるトナー像)の乱れの発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Dにおいて、前記他の潜像担持体を複数設けるとともに、前記他の駆動源として、複数の前記他の潜像担持体にそれぞれ個別に対応する複数のものを設け、それぞれの他の駆動源を前記他のフィードフォワード制御で駆動する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、他の潜像担持体を1つの他の駆動源で駆動する場合と同様に、全てのトナー像の乱れを抑えることができる。
[態様F]
態様D又はEにおいて、前記ベルト部材を張架する全てのベルト張架ローラについて、それぞれの径を異ならせたことを特徴とするものである。かかる構成においては、全てのベルト張架ローラについて、それぞれ駆動ローラと同様にそれぞれの偏心に起因するベルト速度変動を抑えるように、それぞれのHP検知信号に基づいて共用駆動源や他の駆動源の駆動を制御する場合に、次の効果が得られる。即ち、駆動速度パターン把握処理において、直交検波処理におけるそれぞれのベルト張架ローラの周波数解析を行い易くすることができる。
[態様G]
態様Gは、態様A〜Fの何れかにおいて、ユーザーの命令に基づくトナー像を形成している最中に、前記ベルト部材のおもて面におけるベルト幅方向の端部に前記テストパターン像を形成しながら前記駆動速度パターン把握処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーの命令に基づく通常の画像形成動作中であっても、駆動速度パターン把握処理を実施することができる。