JP4934255B2 - 耐光性熱変色体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐光性熱変色体に関する。更に詳細には、熱変色層の表裏両面に酸素ガスバリヤー層を配した、熱変色層の耐光堅牢性を顕著に向上させた耐光性熱変色体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、熱変色材の耐光堅牢性を向上させようとする試みは、幾つか開示されている。
例えば、特公平4−18543号公報等には、紫外線吸収剤や酸化防止剤等を含有させた合成樹脂層を熱変色層に積層する試みが開示されている。
又、別の試みとして、熱変色層の上層に光反射層、或いは光吸収層を設けて紫外線や可視光線を吸収或いは反射させることにより、下層の熱変色層への到達を抑制しようとする試みがある。更に、別の試みとして、着色フィルターを適用する試みがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記提案において、熱変色材が電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物との間の電子授受反応による系にあっては、前記紫外線吸収剤等による紫外線のカット手段のみでは前記電子供与性呈色性有機化合物の光劣化を完全に防止することはでき難い。又、前記光反射層を設ける系において、所期の光劣化を防ぐためには、該層は白っぽくなり、下層にある熱変色層の色変化を十分に視覚させ難い。一方、光吸収層を設ける系では、前記層が濃色であるか、黒っぽい色になり、下層にある熱変色層の色変化の視覚を妨げる。又、着色フィルター、例えば黄色着色層を配する系では、熱変色層が青色を呈しているときは、電子供与性呈色性有機化合物は黄色光を吸収して青色光を反射するため、黄色着色層の影響により緑色に視覚される。次いで、熱変色層が無色に変化すると、前記電子供与性呈色性有機化合物は全ての可視光線を反射するため、黄色着色層から反射される黄色光のみが視覚されて黄色に視覚され、緑色←→黄色の可逆的色変化を呈する。
このように有色(1)から有色(2)の、可逆的色変化を視覚させるとしても有色←→無色の可逆的色変化を視覚させることができない。
本発明者は、耐光性が劣るとされる蛍光色や前記した電子授受反応による発色系等の特殊な色材の光劣化を防ぐ手段について検討を進める過程で、前記蛍光色の色材には効果はないが、ロイコ染料等の電子供与性有機化合物と電子受容性化合物との電子授受反応による熱変色性色材にあっては、光劣化の過程において酸素の存在が大きく関与しており、無酸素雰囲気では光を照射しても劣化し難くなり、酸素を排除できれば耐光性(特に太陽の直射光)を顕著に向上させることができ、紫外線により励起された酸素分子により光劣化するという知見を得て、紫外線のカットよりも酸素カットの方が効率的且つ効果が絶大なことを実証して本発明を完成させた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色材料をカプセルに内包した熱変色性顔料を含む熱変色層の少なくとも表裏両面に酸素透過度が0〜600ml/(m 2 ・d・MPa)の酸素ガスバリヤー層を設けてなり、前記熱変色層の表面側の酸素ガスバリヤー層が金属及び金属酸化物の蒸着フイルムであり、前記熱変色層の表面側の酸素ガスバリヤー層に紫外線吸収剤を含む、或いは、熱変色層の表面側に紫外線吸収剤を含む層を設けたことを特徴とする耐光性熱変色体を要件とする。
更には、熱変色層の下層には、酸化チタン顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた下地層が形成されてなること、熱変色層は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色材料をカプセルに内包した熱変色性顔料をバインダー樹脂中に分散状態に固着された層であること、等を要件とするものである。
【0005】
熱変色層は、ロイコ染料等の電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物との電子授受反応による色材であり、更に、具体的には、電子供与性呈色性化合物、電子受容性化合物、及び前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を必須とする熱変色材料を挙げることができる。
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、従来より公知のジフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、ジフェニルメタンアザフタリド類、インドリルフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、スチリノキノリン類、ピリジン系化合物等が挙げられる。
又、電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して、電子供与性化合物を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、更にその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
又、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド等の従来より汎用の反応媒体を挙げることができる。
前記熱変色性材料の更に具体例としては、本出願人が提案した、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載のものが利用できる。前記提案は、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変色点以上の温度域で消色状態、変色点未満の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。
即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔHA=1〜7℃)を有する加熱消色型の熱変色性組成物を挙げることができ、ΔHAが3℃以下の系〔特公平1−29398号公報に示す、3℃以下のΔT値(融点−曇点)を示す脂肪酸エステルを(ハ)成分として適用〕にあっては、温度変化に鋭敏に感応して高感度の加熱消色性を示し、ΔHA が4〜7℃程度の系では変色後、緩徐に元の様相に戻り、変色視認効果を高めることができる。
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、t1以下の低温域での発色状態、又はt4以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で互変的に記憶保持できる色彩記憶保持型の熱変色性組成物を適用することができる。
前記における低温側変色点は、−30℃〜25℃の範囲から選ばれる任意の温度に設定でき、高温側変色点は、27℃〜60℃の範囲から選ばれる任意の温度に設定でき、前記低温側変色点と高温側変色点の間の任意の温度域で、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の各変色状態を互変的に記憶保持させることができる。
尚、前記実質的二相保持温度域は、常温域(例えば、15〜35℃)を含むものが汎用的であるが、前記温度範囲に特定されない。
又、加熱発色型の熱変色性組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)による、(ロ)電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号)を挙げることができる。
【0006】
前記熱変色性材料は、通常、微小カプセルに内包させて、マイクロカプセル形態の熱変色性顔料として適用できる。
前記熱変色性顔料は、バインダー樹脂を含む水性又は油性ビヒクル中に所定量を分散させてインキ又は塗料となし、従来より汎用の印刷乃至塗布手段により、熱変色層を形成できる。ここで、熱変色性顔料は、バインダー樹脂100重量部に対して、20〜400重量部の割合でブレンドされる。20重量部未満では、鮮明な熱変色性を示さない。一方、400重量部を越えると消色時における色残りが発生しがちであり、好適には50〜350重量部の範囲内で適用される。
又、熱変色層は、熱変色性顔料を熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂中に0.5〜40重量%、好ましくは、1〜30重量%を含有させて分散状態に固着させた、任意の外観形状の成形体であって、その表面を熱変色層とするもの、前記熱変色性顔料を一体的に溶融ブレンドして、フイルム状、或いはシート状となした形態のものであってもよい。
又、熱変色層は、層中に一種の熱変色性顔料を含有させたものに限らず、相異なる変色点を有する複数の熱変色性顔料を含有させて多段変色させるものが有効である。
又、熱変色層の形態として、変色点、色調、濃度、或いは変色特性を異にする熱変色性顔料を含む複数の熱変色層を重ね刷りして多層構成となしたもの等を挙げることができる。
【0007】
熱変色性顔料を固着させるバインダー樹脂としては、従来より汎用の樹脂、例えば、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、天然ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリビニルアルキルエーテル、ロジン、ロジンエステル、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、油溶性フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、シェラック、環化ゴム、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、酢酸セルローズ、硝酸セルローズ、エチルセルローズ等を挙げることができ、水や有機溶剤等の適宜の溶剤に溶解または分散させて、水性又は油性ビヒクルとして適用される。
【0008】
酸素ガスバリヤー層は、熱変色層の少なくとも表裏両面に設けることを必須要件とするものであり、一方の面のみに設けたとしても、実質的な効果は奏し得ない。ここで、熱変色層は周辺を含めて全面が完全に前記酸素ガスバリヤー層で覆われていることが望ましい。通気個所が存在すれば、当該個所及びその周辺が酸素ガスバリヤー機能を果たさず、周辺の熱変色層の耐光堅牢性を低下させるからである。
前記酸素ガスバリヤー層のうち、熱変色層の表面側は保護層として、熱変色層の裏面側は、支持体自体として機能させたものであってもよい。
前記酸素ガスバリヤー層は、酸素透過度が600ml/(m2・d・MPa)以下の基材、例えば、ガラス、金属箔や金属蒸着フイルム等の実質的に酸素非透過性の基材や、特定の樹脂被膜等を挙げることができる。ここで、前記酸素ガスバリヤー層の表裏両面は同一の基材或いは異種の組み合わせが有効である。
前記特定の樹脂皮膜としては、ポリエステル樹脂(アルキッド樹脂を含む)、ポリアミド樹脂、アルギン酸ナトリウム、プルラン等多糖類、ポリビニルアルコール、エチレン−ポリビニルアルコール(EVOH)、硬質塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合樹脂、弗化ビニリデン樹脂、エチレン−マレイン酸共重合樹脂、ビニルメチルエーテル−マレイン酸共重合樹脂等による塗膜、或いはフイルム等が例示できる。
【0009】
具体的手段としては、熱変色層の表裏両面への酸素透過係数の小さい樹脂フイルムの接合、酸素透過係数の小さい樹脂のコーティング、吹き付けや、印刷手段により形成した樹脂皮膜が効果的であり、熱変色層の表裏両面に密接状に配設される。
尚、前記した酸素透過係数が小さい基材に限定されず、肉厚状となすことにより、前記の酸素透過度の範囲を満たす基材であれば有効である。
【0010】
前記において、印刷手段による系では、任意の形状、大きさの樹脂皮膜を比較的簡易に形成させて、酸素ガスバリヤー層として機能させることができるので効果的である。中でも、少なくとも50重量%以上がポリビニルアルコール成分を有する樹脂、例えば、部分鹸化ポリビニルアルコール(鹸化度88%)、カルボニル基含有ポリビニルアルコール(カルボニル基を約3.0%含有)、耐水型ポリビニルアルコール(完全鹸化型、水素結合による耐水性付与)、完全鹸化ポリビニルアルコールをベースとする樹脂を含む系が有効である。
前記カルボニル基含有ポリビニルアルコールの硬化手段としては、カルボニル基の反応性を利用して、エポキシ、アミン類、ヒドラジン類、オキサゾリン類等を用いて架橋することにより耐水性を向上させることができる。
【0011】
更には、前記ポリビニルアルコール系樹脂皮膜の上層及び/又は下層には、トップコート層又はアンカーコート層を設けることができ、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂等を適用することができる。
【0012】
更には、熱変色層の下層に、酸化チタン顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた下地層を設けることができ、酸素ガスの影響を完全に排除し、前記下地層を形成しない系に比較し、耐光堅牢性を顕著に向上させることができる(実施例3参照)。
【0013】
尚、本発明の酸素ガスバリヤー層による耐光堅牢性付与手段にあって、従来より汎用の耐光性向上手段、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤の併用を妨げるものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明熱変色体は、酸素ガスバリヤー層が熱変色層の表裏両面に形成された形態であれば、総て有効であり、実施例に限定されない。
尚、実施例中、部とあるは、重量部を示す。
【0015】
【実施例】
参考例1
熱変色体の形成
(1)熱変色性インキ
3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.0部,1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン5.0部,ステアリルアルコール50.0部、エポキシ樹脂10.0部を均一に溶解し、8%ゼラチン水溶液100部に8〜10μmになるよう乳化した。次いで、70℃にて10%ジエチレントリアミン水溶液を滴下し、90℃に昇温し、5時間攪拌した。遠心分離により単離し、熱変色性マイクロカプセル(60℃以上にて無色,60℃未満にて青色を呈する)を得た。
前記熱変色性マイクロカプセル40部を、エチレン酢酸ビニルエマルジョン55部に分散し、増粘剤4.0部、消泡剤1.0部を加え、熱変色性印刷インキを得た。
(2)支持体(裏面ガスバリヤー層)
下記15種の支持体を用意した。( )内の数字は、酸素透過度〔ml/(m2・d・MPa〕を示し、JIS K7126B法(等圧法)に基づき測定して得られた。以下の各実施例における( )も同様である。
支持体として、PS−12μm(140000)、PP−20μm(60000)、PP−35μm(35000)、PC−50μm(15000)、PET−12μm(1200)、Ny−12μm(940)、PET−16μm(900)、PET−25μm(576)、PET−50μm(288)、PET−100μm(144)、酸化珪素をPET12μmフイルムに蒸着したフイルム(5)、PVA−16μm(20)、EVOH−12μm(10)、ガラス(0)、金属箔(0)を適用した。
ここで、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエステル)、Ny(ナイロン)、PVA(ビニロンフイルム)、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)の略称である。
(3)熱変色層の形成
前記熱変色性印刷インキを用いて、前記各支持体上に100Meshスクリーン版を用いて55g/m2の塗布量に調整して、厚みが30〜40μmの熱変色層を形成した。
(4)保護層(表面ガスバリヤー層)
前記熱変色層の上にPET(50μm)をラミネートし、フェードメーターによる耐光性試験(67℃)を行なった。
【0016】
耐光試験の評価法
(1)色濃度の測定
色濃度の測定は,ミノルタカメラ(株)製色彩色差計CR−241によって測定し、Y値をもって色濃度とした。濃度の残存率は下式によって求めた。
残存率(%)=(測定サンプルの色濃度−劣化後の色濃度)/(未試験サンプルの色濃度−劣化後の色濃度)×100
(2)耐光性試験
耐光性試験は,フェードメ−ター(スガ試験機株式会社製、ロングライフカーボンアーク適用)及び屋外暴露(スガ試験機株式会社製、屋外暴露台に直射光を照射)により評価した。
【0017】
耐光性試験結果
支持体の相違による熱変色体のフェードメーターによる光照射時間と色濃度の残存率の関係を表1に示し、支持体の相違による熱変色体の直射光(6〜7月)の照射による色濃度の残存率の関係を表2に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
前記表1、表2に示す如く、酸素透過度が1200ml/(m2・d・MPa)以下、中でも、600ml/(m2・d・MPa)以下の系では、顕著に色濃度の残存率が大であり、耐光堅牢性を向上させることが実証された。
【0021】
参考例2
支持体として下記11種を用意した。合成紙(9200)の表面に、EVA40%エマルジョンのスクリーン印刷により乾燥膜厚50μm(8000)、アクリル樹脂40%エマルジョンのドクターコートにより、乾燥膜厚50μm(7000)、PS樹脂の20%溶液のドクターコートにより、乾燥膜厚50μm(7000)、ウレタン樹脂20%溶液のスクリーン印刷により、乾燥膜厚50μm(6000)、PET樹脂の20%溶液のドクターコートにより、乾燥膜厚100μm(1000)、アルキッド樹脂35%溶液のスプレー塗装により、乾燥膜厚40μm(600)、アルギン酸ナトリウム10%水溶液のスクリーン印刷により、乾燥膜厚10μm(250)、エチレンマレイン酸樹脂10%水溶液のグラビヤ印刷により、乾燥膜厚10μm(100)、プルラン(水溶性天然由来樹脂)10%水溶液のスクリーン印刷により、乾燥膜厚10μm(50)、PVA10%水溶液のグラビヤ印刷により、乾燥膜厚3.0μm(30)、EVOH20%IPA/水溶液のグラビヤ印刷により、乾燥膜厚3.0μm(50)、をそれぞれ積層形成し、支持体を構成した。
尚、支持体の( )内の数字は、酸素透過度〔ml/(m2・d・MPa)〕を示す。
【0022】
耐光性試験結果
支持体の相違による熱変色体のフェードメーターの照射による色濃度の残存率を表3に示し、支持体の相違による熱変色体の直射光(6〜7月)の照射による色濃度の残存率を表4に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
前記表3、表4に示す如く、酸素透過度が1000ml/(m2・d・MPa)以下、中でも、600ml/(m2・d・MPa)以下、更には250ml/(m2・d・MPa)以下の系では、顕著に色濃度の残存率が大であり、顕著に耐光堅牢性を向上させていることが実証される。
【0026】
実施例1
PET12μm/アルミ箔8μm/アクリロニトリル(厚み30μm)からなる積層フィルムに対してポリエステル用白インキ(酸化チタン顔料がポリエステル系樹脂を含むビヒクルに分散されてなる)を印刷して下地層〔酸素透過度は、実質的に0ml/(m2・d・MPa〕を形成し、次いで、参考例1の熱変色性インキを印刷して熱変色層を形成した。
これとは別に、酸化珪素蒸着ポリエステルフィルム(厚み12μm)にアクリル系粘着剤(油性系, 固形分30重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤2.5%含有)を20g/m2になるよう塗布して、ラミネートフイルム〔酸素透過度は1ml/(m2・d・MPa)〕となし、前記熱変色層上に貼り合わせて熱変色体を構成した。
前記熱変色体は、酸素の影響をほぼ完全に排除することができ、紫外線吸収効果と相まって、耐光堅牢性を顕著に向上させており、フェードメーターにて500時間照射しても褪色,褐変等の劣化は認められなかった。
【0027】
比較例1
実施例1の酸化チタンを含む下地層の形成を除き、実施例1と同様にして、熱変色体を構成し、フェードメーターによる耐光試験を行ったところ、200時間程度の照射により、褪色、褐変等の光劣化が認められた。
【0028】
実施例2
コート紙にグラビア印刷機を用いて、ポリビニルアルコール20重量%水溶液を15g/m2に調整して印刷し、乾燥膜厚2.5μm〔酸素透過度:20ml/(m2・d・MPa)〕のベースコート層(ガスバリヤー層)を形成した。
次いで、参考例1の熱変色性インキを用いて同様に印刷して熱変色層を形成し、EVOH樹脂を用いたトップコートインキ(油性系、固形分20重量%、紫外線吸収剤を1.0重量%含有する)をスクリーン印刷により20g/m2になるよう印刷し、4.0μmの乾燥塗膜〔酸素透過度:20ml/(m2・d・MPa)〕によるトップコート層(ガスバリヤー層)を形成した。
前記熱変色体は、ベースコートとトップコートによる酸素バリヤー層の形成により、酸素及び紫外線がカットされているため、フェードメーターによる400時間、直射光90日間の照射において、褪色、褐色等の光劣化も認められなかった。
【0029】
比較例2
実施例2のポリビニルアルコールによるベースコート層の形成を省略した以外は、同じ構成にて熱変色性印刷物を作成した。
前記熱変色性印刷物は、トップコート層により、紫外線がカットされているとしても、コート紙からの酸素の透過があり、フェードメーター30時間の照射にて劣化を示し、直射光の照射にあっては、5日間にて劣化し、実用に供し難い。
【0030】
実施例3
以下の(1)〜(4)のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(固形分20重量%)を用い、実施例2と同様にして、上質紙に対してグラビヤ印刷機を用いて印刷し、それぞれの樹脂皮膜(酸素ガスバリヤー層)を形成した。〔 〕内に樹脂皮膜の特性を示す。
(1)部分鹸化(鹸化度88%)ポリビニルアルコール〔乾燥膜厚2.5μm、酸素透過度50mI/(m2・d・MPa)〕
(2)カルボニル基含有(約3%含有)ポリビニルアルコール〔乾燥膜厚2.5μm、酸素透過度30mI/(m2・d・MPa)〕
(3)耐水型ポリビニルアルコール(完全鹸化型、水素結合により耐水性を改良)〔乾燥膜厚2.5μm、酸素透過度20mI/(m2・d・MPa)〕
(4)完全鹸化ポリビニルアルコール(乾燥膜厚2.5μm、酸素透過度20ml/(m2・d・MPa)〕
次いで、参考例1の熱変色性インキを用い、同様にして印刷し、熱変色層を形成した後、再度、同じ樹脂溶液を用いてグラビヤ印刷機により、前記(1)〜(4)のポリビニルアルコール系樹脂による樹脂皮膜(酸素ガスバリヤー層)をそれぞれ形成した。
得られた各熱変色体は、フェードメーターにおいて、200時間程度の照射に耐えることができたが、それ以上の照射により光劣化した。
一方、前記酸素ガスバリヤー層の上層にアクリル系トップコートインキ(油性、固形分25重量%、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤1.5重量%含有)をスクリーン印刷により塗布し、トップコート層を形成した系にあっては、耐水性の付与と耐光性の更なる改良がみられ、フェードメーター400時間の照射において、何らの光劣化を起こさなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の熱変色体は、前記した耐光性試験結果にみられる如く、耐光堅牢性を顕著に向上させており、熱変色層の変色機能を永続させることができ、従来汎用の示温、装飾、玩具要素等の熱変色性品質性能を長期間持続させることができることは勿論、直射光に対する耐光性を顕著に向上させているので、屋外での広告媒体や示温、装飾要素としての新たな展開を可能となすものである。
又、酸素透過係数の小さい基材をガスバリヤー層として適用した系では、薄肉シート状積層体、或いは印刷体の形態の熱変色体としての適用に加えて、他の基材や物品に前記熱変色体を接合させて活用できる利便性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の耐光性熱変色体の一実施例の縦断面図である。
【図2】 本発明の耐光性熱変色体の他の実施例の縦断面図である。
【図3】 本発明の耐光性熱変色体の他の実施例の縦断面図である。
【図4】 本発明の耐光性熱変色体の他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
1 耐光性熱変色体
2 熱変色層
3 ガスバリヤー層
Claims (3)
- 電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色材料をカプセルに内包した熱変色性顔料を含む熱変色層の少なくとも表裏両面に酸素透過度が0〜600ml/(m 2 ・d・MPa)の酸素ガスバリヤー層を設けてなり、前記熱変色層の表面側の酸素ガスバリヤー層が金属及び金属酸化物の蒸着フイルムであり、前記熱変色層の表面側の酸素ガスバリヤー層に紫外線吸収剤を含む、或いは、熱変色層の表面側に紫外線吸収剤を含む層を設けたことを特徴とする耐光性熱変色体。
- 熱変色層の下層には、酸化チタン顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた下地層が形成されてなる請求項1記載の耐光性熱変色体。
- 熱変色層は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色材料をカプセルに内包した熱変色性顔料をバインダー樹脂中に分散状態に固着された層である請求項1又は2記載の耐光性熱変色体。
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