JP3596706B2 - 可逆性熱発色性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱記録媒体に関し、更に詳しくは、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られ、電子計算機のアウトプット、ファクシミリ、自動券売機、科学計測機のプリンター、CRT医療計測用プリンター等に広く応用されている。しかし、従来の製品はいずれもその発色が不可逆的なもので、発色と消色を交互に繰り返し行わせることができない。
【0003】
一方、特許公報等によれば発色剤と顕色剤との間の発色反応を利用した感熱記録媒体において、発色と消色を可逆的に行わせるものもいくつか提案されている。たとえば、特開昭60−193691号公報によれば顕色剤として没食子酸とフロログルシノールとの組み合わせを用いたものが示されている。このものを熱発色させて得られる発色体は、水又は水蒸気で消色するものである。しかし、この感熱記録媒体の場合、その耐水化に困難が伴う上に記録保存性に難点があり、更に発色体を消色させるための消色装置が大型になるという問題がある。
【0004】
特開昭61−237684号公報には、顕色剤にフェノールフタレン、チモールフタレイン、ビスフェノール等の化合物を用いた書き換え形光記録媒体が示されている。このものは、これを加熱後に徐冷することにより発色体を形成し、一方、発色体を発色温度よりも一旦高い温度に加熱した後、急冷することにより消色させることができる。しかし、この記録媒体の場合、その発色及び消色の工程が複雑である上、発色体を消色させて得られる消色体に未だ幾分の着色が見られ、コントラストのよい発色画像を得ることができない。
【0005】
特開昭62−140881号公報、特開昭62−138568号公報及び特開昭62−138556号公報には、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体が示されている。このものは低温で完全着色状態、高温で完全消色状態を示し、それらの中間温度で着色又は消色状態を保持されることができるもので、この媒体にサーマルヘッドで印字することにより、着色地肌(発色体)の上に白色文字(消色体)を記録することができる。したがって、この記録媒体の場合、記録される画像がネガ画像であることからその用途が限定される上、記録画像の保持のために画像を特定の温度範囲内に保持する必要がある。
【0006】
特開平2−188294号公報及び特開平2−188293号公報には、それぞれ顕色剤として顕色作用と減色作用を可逆的に行う没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩、及びビス(ヒドロキシフェニル)酢酸又は酪酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いたものが示されている。このものは、特定温度域で熱発色させ、それより高温での加熱により消色させることができるが、その顕色作用と減色作用とは競合的に起るためこれらの作用と熱的に制御することが難しく、良好な画像コントラストが得られにくい。
以上のように、発色剤と顕色剤との反応を利用した従来の可逆的感熱記録媒体は種々の問題点を含み、未だ不満足のものであった。
【0007】
我々は、先に、顕色剤として長鎖脂肪族基を持つ有機リン酸やカルボキシル化合物、フェノール化合物を用い、これを発色剤としてのロイコ化合物等と組み合わせることによって、その発色と消色を加熱のみで容易に行わせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において保持することが可能で、且つ消色温度が発色温度よりも低く、その上、画像の形成及び消去を温度変化により何度も繰り返すことのできる可逆的熱発色性組成物、及びこれを記録層に含有する可逆的感熱記録媒体を提案した。(特開平5−124360号公報)。我々が提案した前記の可逆的感熱記録媒体は、従来の可逆的感熱記録媒体とは比較にならないほど利点の多い可逆的感熱記録媒体であるが、発色状態にある該記録媒体に光が当たると発色色相が変化したり、発色温度より低温に加熱して消色させる場合に消色が円滑に進行しない等の問題が見い出された。即ち、光が当たる状態で発色した該記録媒体を保存する場合には難点があり、該記録媒体の品質に未だ問題が残されていることが判明した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発色剤と顕色剤との間の反応を利用した可逆性熱発色性組成物において、光が当たっても発色状態の色相変化を起したり消色不良が起ったりせず、耐光性に優れた可逆性感熱記録媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
我々は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、発色剤と顕色剤を主成分として含有し、加熱・溶融によって発色状態を形成すると共に、発色温度より低い温度に加熱することで消色状態を形成する可逆性感熱記録媒体において、記録層にビタミンA類、又はビタミンA類とビタミンC類、ビタミンE類等を合わせて含有させたことを特徴としている。また、これらビタミン類とともにニコチン酸又はグルタチオンの何れか又は両方を含有させたことも特徴とした可逆性感熱記録媒体、更に、ビタミンC類とニコチン酸及び/又はグルタチオンを含有させたことも特徴とした可逆性感熱記録媒体、ビタミンE類とニコチン酸及び/又はグルタチオンを含有させたことも特徴とした可逆性感熱記録媒体が提供される。
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、記録層上に酸素バリア層、保護層を順次積層し、これらの層に紫外線吸収剤を含有させて光による記録媒体の特性変化を防止した可逆性感熱記録媒体である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
而して本発明は、(1)「電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を主成分として含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる記録層を支持体上に設けた可逆性感熱記録媒体において、記録層にビタミンA類を含有させたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体」、(2)「記録層にビタミンC類又はビタミンE類の何れか又は両方を含有させたことを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(3)「電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を主成分として含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる記録層を支持体上に設けた可逆性感熱記録媒体において、記録層にビタミンC類又はビタミンE類の何れか又は両方を含有させたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体」、(4)「記録層にニコチン酸又はグルタチオンの何れか又は両方を含有させたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3のうちの何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(5)「記録層に添加するビタミン類の添加量が電子供与性呈色性化合物に対して1.0重量%以上50重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体」及び(6)「記録層上に酸素バリア層、保護層を順次積層し、該層の何れか又は両方に紫外線吸収剤を含有させたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体」が提供される。
【0011】
本発明の可逆的熱発色性組成物(以下、単に組成物ともいう)は加熱により瞬時に発色し、その発色状態は常温でも安定的に存在する。一方、発色状態にある組成物は発色温度以下の加熱で消色させることができ、その消色状態は常温でも安定的に保持されるものである。
【0012】
本発明の組成物を記録層に含有する可逆性感熱記録媒体について、その発色と消色、即ち画像形成と画像消去の原理を図1のグラフで説明する。
図1において、グラフの縦軸は発色濃度を表わし横軸は温度を表わしており、実線1は加熱による画像形成過程を、破線3は加熱による画像消去過程を示したものである。(A)は完全消去状態の濃度であり、(B)は(T1)以上の温度に加熱した時の飽和発色状態の濃度であり、(C)は完全発色状態の(T0)以下の温度における濃度であり、(D)は(T0)〜(T1)間の温度で加熱消去した時の濃度を示している。
【0013】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、(T0)以下の温度では無色の状態(A)にある。記録を行うには、サーマルヘッド等で(T1)以上の温度に加熱すればよく、発色(B)して記録画像を形成する。この記録画像は実線2に従って(T0)以下の温度に戻してもそのままの状態(C)を保ち、記録のメモリー性は失われない。
なお、記録画像形成時の発色濃度は、(T1)以上の温度において温度上昇と共に増加しB点で飽和濃度に到達する。
【0014】
次に記録画像の消去を行うには、形成された記録画像を発色温度よりも低い(T0)〜(T1)間の温度に加熱すればよく、無色の状態(D)になる。この状態は(T0)以下の温度に戻してもそのまま保持される(A)。即ち、記録画像の形成過程は実線(A)(B)(C)の経路により、(C)に至り記録が保持される。記録画像の消去過程は破線(C)(D)(A)の経路により、(A)に至り消去状態が保持される。この記録画像の形成と消去の挙動特性は可逆性を持ち、何回も繰り返し行うことができる。
【0015】
図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体による画像形成及び画像消去の一例を示した説明図であって、(4)は支持体、(5)は記録層である。画像形成工程(A)→(B)は画像形成用熱源、例えばサーマルヘッド(7)によって図1の(T1)以上の温度で記録印字を行うことによって達成される。次に画像消去工程(B)→(A)は画像消去熱源、例えば加熱ローラ(8)によって、(T0)〜(T1)間の温度に加熱することにより達成される。図2においては、(6)は発色画像を示す。
【0016】
本発明の組成物は発色剤と顕色剤とビタミンA類を必須成分とし、これにビタミンC類、ビタミンE類、ニコチン酸、グルタチオン等を添加したものである。或いは、ビタミンC類又はビタミンE類の何れか又は両方を必須成分とし、これにビタミンC類、ビタミンE類、ニコチン酸、グルタチオン等を添加したものである。該組成物の発色は、顕色剤と発色剤が加熱・溶融・混合して形成される発色体組成物を室温まで冷却して得られるものである。この発色体組成物は、溶融温度より低温側に消色温度領域を持つため、溶融発色状態から発色を保持したまま冷却して常温にするには急冷が好ましい。徐冷になると消色温度領域をとおるときに多少の消色が起き、濃度が低下することが多い。
【0017】
発色体組成物は、発色剤と顕色剤の分子が相互作用し、発色剤のラクトン環が開環して発色しているものと考えられる。溶融状態から急冷された状態の組成物は、発色体分子のほか発色体の形成には直接関与していない顕色剤分子と発色剤分子を含んでいる。本発明の可逆性感熱記録媒体において、常温時の発色体組成物はこれらの分子間に凝集力が働き固化した状態にある。また、発色体組成物の凝集構造は何らかの規則性を示すが、非常に規則性の高い場合とあまり規則性の高くない場合がある。これは、顕色剤と発色剤の組み合わせや量比あるいは冷却条件に依存する。このような凝集構造の形成は、発色体を形成している顕色剤分子の長鎖構造部分、及び発色体を形成していない過剰分の顕色剤分子の長鎖構造部分の間に働く凝集力が主に作用しているものと推定される。
【0018】
発色体組成物は、その発色状態を特定の温度領域に加熱することにより消色させることができる。この消色過程では、発色状態の凝集構造が変化し、最終的に発色体組成物から顕色剤分子が分離結晶化して顕色剤単独の結晶を作り、安定した消色状態となることがX線解析によって確認されている。
このように本発明の可逆性感熱記録媒体では、発色状態の形成とその消色過程に対し、顕色剤の長鎖部分が大きな役割を果していることが明白であり、これが本発明の可逆性感熱記録媒体に形成される発色体組成物の特徴である。
【0019】
本発明の組成物は、前記発色剤と顕色剤とビタミンA類及び/又はビタミンC類、ビタミンE類、ニコチン類、グルタチオン等を組み合わせた組成物であり、個々の顕色剤に対して好ましい発色剤が存在する。この組成物に用いる顕色剤と発色剤の組み合わせは、両者を溶融温度以上に加熱して得られる発色状態組成物を、溶融温度より低い温度へ加熱した時に起きる消色のし易さ、即ち消色性と、発色状態の色調等の特性により適当に選択される。このうち消色性については、その組み合わせで得られた発色状態組成物の示差熱分析(DTA)、又は示差走査熱量分析(DSC)における昇温過程に現われる発熱ピークの有無で判断できる。この発熱ピークは本発明を特徴づける消色現象と対応するものであり、消色性の良好な組合せを選択する基準となる。なお、本発明の組成物において前記ビタミン類、ニコチン酸、グルタチオンは専ら耐光性に関与するものであり、発色状態及び消色状態の形成に直接関与することはない。また、該組成物には第3物質が存在しても、その可逆的な消発色挙動を保つことができる。同様に、本発明の可逆性感熱記録媒体の感熱記録層に第3物質が存在してもよく、例えば高分子化合物が存在してもその可逆的消発色挙動を保つことができる。
【0020】
本発明の組成物で用いられる顕色剤は、基本的に分子内に発色剤を発色させることができる顕色能を示す構造と、分子間の凝集力を制御する炭素数5以上のアルキル鎖構造部分を併せ持つ化合物であり、炭素数12以上の脂肪族基を持つ有機リン酸類及び脂肪族カルボン酸類及びフェノール類、又は炭素数10〜18の脂肪族基を持つメルカプト酢酸の金属塩、或いは炭素数5〜8のアルキル基を持つカフェー酸のアルキルエステルである。脂肪族基には直鎖状又は分岐状のアルキル基及びアルケニル基が内包され、ハロゲン、アルコキシ基、エステル基等の置換基を持っていてもよい。
【0021】
以上に示した本発明の組成物に用いる顕色剤のうち特に好適なのは、長鎖アルキルホスホン酸、長鎖αーヒドロキシ脂肪酸、長鎖アルキルチオリンゴ酸、長鎖アルキルマロン酸等であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
また、発色剤は電子供与性を示す無色或いは淡色の染料前駆体であり、特に限定されず、従来公知のもの、例えばトリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物等が用いられる。
【0023】
上記の本発明で使用される顕色剤及び発色剤の具体例は、特開平5−124360、特開平6−8624及び特開平6−24132号公報に詳記されている。
【0024】
本発明において、耐光性向上のため熱発色性組成物に添加されるビタミンA類としては、レチノール、レチナール、レチノイック酸、3−デヒドロレチノール等、ビタミンC類としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ステアレート、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ラウリレート、L−アスコルビン酸−2,6−ジパルミテート、L−アスコルビン酸−5,6−ジステアレート等、ビタミンE類としてはα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、α−トコフェロールアセテート等が挙げられる。
【0025】
これら添加剤の耐光性向上の理由は明確ではないが、ビタミン類、グルタチオンは還元作用があるため抗酸化剤として作用しているものと推定される。
また、ニコチン酸は酸素発生を促進する金属を捕集する作用が関与しているものと推定される。
【0026】
耐光性向上のためには、前記のビタミンA類、ビタミンC類、ビタミンE類を1種又は2種以上混合して添加すればよく、その添加量は発色剤に対して1〜50重量%未満、好ましくは5〜25重量%未満であり、添加量過少では耐光性向上効果が小さく、過大の場合は発色濃度及び画像保存性が低下するうえ、50重量%以上添加しても耐光性が更に向上することはない。
【0027】
本発明の組成物において顕色剤の添加量は発色剤の1〜20モル倍、好ましくは2〜10モル倍であり、この範囲であれば顕色剤及び発色剤に単一品を使用しても2種以上の混合物を使用してもよい。しかし、この範囲より顕色剤が少なくとも、また多くても発色状態の濃度が低くなり実用上の問題となる。
【0028】
また、上記の好ましい範囲にあっても、発色剤と顕色剤の割合によって消色特性は変化し、比較的顕色剤が多い場合には消色開始温度が低くなり、比較的少ない場合には消色が温度に対してシャープになる。したがって、この割合は用途や目的に応じて適当に選択しなければならない。
【0029】
記録層に用いられるバインダー樹脂は特に限定されず、公知のバインダー樹脂はいずれも使用可能である。バインダー樹脂を具体的に例示すれば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ゼラチン、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化塩化ビニル樹脂、これらの樹脂の混合物などが挙げられる。
【0030】
また、本発明によれば、前記可逆性感熱記録媒体において、感熱記録層上に酸素バリアー層を塗布等によって形成して、記録層に酸素が進入するのを防ぐことにより、より耐光性に優れた可逆性感熱記録媒体が提供される。
酸素バリアー層には、可視部の透過率が大きく、酸素透過性が小さい高分子のフィルム等が挙げられる。これらの例としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ナイロン−6、ポリメタキシレンアジパミド、ポリアセタール、ナイロン−6,6、ポリフッ化ビニル、セロハン、ポリメタクリロニトリル等の樹脂が挙げられる。
【0031】
更に、前記可逆性感熱媒体の最表面に保護層を設けても良い。保護層は、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性及びヘッドマッチング性などを付与するもので、水溶性高分子や疎水性高分子化合物の水性エマルジョンを主体として形成された皮膜や、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂を主体として形成された皮膜等が包含される。このような保護層の形成により、有機溶媒、可塑剤、油、汗、水等が接触しても、温度変化による画像形成及び消去を安定して繰り返すことができる。
【0032】
そして本発明では、該酸素バリア層又は保護層中に紫外線吸収剤を含有させることにより更に耐光性が改善される。
紫外線吸収剤としての役割は、紫外線によるロイコ染料バインダー等の有機化合物の光分解を防ぐ働きがある。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル化合物等があり、具体的には、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−デカシルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、p−オクチルフェニルサリシレート、ドデシルフェニルサリシレートなどのサリチル酸エステル系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−オクチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、これらの紫外線吸収剤に限定するものではない。また、これらは単独又は2種類以上混合して使用される。
【0033】
記録画像の形成は、使用目的によって熱ペン、サーマルヘッド、レーザ加熱等特に限定されない。同様に記録画像の消去も加熱ローラ、面状発熱体、恒温槽、温風、サーマルヘッド等消去の温度条件が与えられるものであれば特に限定はされない。また、記録画像を消去温度に設定したサーマルヘッドにより消去しながら、同時に記録温度に設定した別のサーマルヘッドにより記録画像の形成を行なうことも可能である。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下における部及び%はいずれも重量基準である。
【0035】
実施例1〜13、参考例1〜9
下記組成物をボールミルで粒径約1〜3μmとなるように粉砕・分散し、可逆性感熱記録層形成用塗布液を調製した。
2−(oークロルアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン 3部
ドコシルホスホン酸 10部
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、
(ユニオンカーバイト社製、VYHH) 10部
添加剤
(表1に記載の実施例1〜26の添加剤と添加量)
トルエン 45部
メチルエチルケトン 45部
この塗布液を、白色PETフィルム(ルミラーE20、東レ社製)にワイヤーバーで塗布・乾燥し、膜厚約6μmmの可逆性感熱記録層を設けた。
【0036】
以上のようにして作製した可逆性感熱記録媒体を、120℃のホットプレートに約20秒間接触させて発色画像を得、マクベス社製反射濃度計RD−914で発色濃度を測定した。次に、発色させた記録媒体を85℃の恒温槽に10分間入れて画像を消去し、前記RD−914で消色濃度を測定した。また、発色画像を5キロルックス(K lux)の蛍光灯に48時間暴露した後の画像濃度、及び該画像を前記したのと同一方法で消色した時の消色濃度についても測定した。
結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
実施例において添加剤を添加しなかったもの及び従来のグアニジン誘導体を添加したものについて、実施例と同様にして可逆性感熱媒体を作製し同様の評価をした(表1−1、表1−2)。
【0038】
【表1−1】
【0039】
【表1−2】
【0040】
実施例18
実施例4で作製した記録層上に下記組成の塗布液を膜厚約2μmとなるようワイヤーバーで塗布・乾燥して酸素バリア層を積層した。
5%ポリビニルアルコール水溶液 200部
(クラレ社製;PVA−117)
紫外線吸収剤 1部
(ベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4− メトキシ−5−スルホン酸ソーダ)
【0041】
次に、前記酸素バリア層の上につぎの組成の保護層形成用塗布液をワイヤーバーで塗布・乾燥し、乾燥後に80W/cmの強さの紫外線を照射して塗布・乾燥物を硬化させ、膜厚約3μmの保護層を積層した。
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 100部
(大日本インキ化学社製;ユニディックC7−157)
酢酸エチル 50部
【0042】
実施例19
実施例10で作製した記録層上に下記組成の塗布液を膜厚約2μmとなるようワイヤーバーで塗布・乾燥して酸素バリア層を積層した。
5%ポリビニルアルコール水溶液 200部
(クラレ社製;PVA−117)
【0043】
次に、前記酸素バリア層の上につぎの組成の保護層形成用塗布液をワイヤーバーで塗布・乾燥し、乾燥後に80W/cmの強さの紫外線を照射して塗布・乾燥物を硬化させ、膜厚約3μmの保護層を積層した。
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 100部
(大日本インキ化学社製;ユニディックC7−157)
酢酸エチル 50部
紫外線吸収剤 7.5部
(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン)
【0044】
実施例20
実施例12で作製した記録層上に下記組成の塗布液を膜厚約2μmとなるようワイヤーバーで塗布・乾燥して酸素バリア層を積層した。
10%ポリビニルアルコール 100部
(日本合成化学工業社製;ゴーセノール NM−11)
【0045】
次に、前記酸素バリア層の上につぎの組成の保護層形成用塗布液をワイヤーバーで塗布・乾燥し、乾燥後に80W/cmの強さの紫外線を照射して塗布・乾燥物を硬化させ、膜厚約3μmの保護層を積層した。
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 100部
(大日本インキ化学社製;ユニディックC7−157)
酢酸エチル 50部
紫外線吸収剤 7.5部
[2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)
ベンゾトリアゾール]
【0046】
実施例21
実施例4で作製した記録層上に下記組成の塗布液を膜厚約2μmとなるようワイヤーバーで塗布・乾燥して酸素バリア層を積層した。
5%ポリビニルアルコール水溶液 200部
(クラレ社製;PVA−117)
紫外線吸収剤 0.5部
(ベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−
メトキシ−5−スルホン酸ソーダ)
【0047】
次に、前記酸素バリア層の上につぎの組成の保護層形成用塗布液をワイヤーバーで塗布・乾燥し、乾燥後に80W/cmの強さの紫外線を照射して塗布・乾燥物を硬化させ、膜厚約3μmの保護層を積層した。
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 100部
(大日本インキ化学社製;ユニディックC7−157)
酢酸エチル 50部
紫外線吸収剤 7.5部
[2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)
ベンゾトリアゾール]
【0048】
比較例2
比較例1で作製した記録層の上に実施例19で使用した酸素バリア層形成塗布液で紫外線吸収剤を除いたもの、及び保護層形成塗布液を用いて同様の方法で可逆性感熱記録シートを作製した。
【0049】
比較例3
実施例4で作製した記録層の上に比較例2と同じ組成物で酸素バリア層、保護層を積層して可逆性感熱記録シートを作製した。
以上のようにして作製した実施例19〜22、比較例2〜3の可逆性感熱記録シートについて実施例1と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
以上詳細かつ具体的に説明したように、本発明の可逆的熱発色性組成物及び可逆性感熱記録媒体は、組成物中にビタミンA、ビタミンC、ビタミンE類等やニコチン酸、グルタチオン、紫外線吸収剤等を含有させたことにより、光が当たった後でも消し残りの少ない消色状態が得られ、耐光性が改良されるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性感熱記録媒体の、発色及び消色原理を温度−発色濃度の関係グラフにより説明する図である。
【図2】画像形成工程と画像消去工程を説明する図である。
【符号の説明】
1 加熱による画像形成過程
2 冷却による画像定着過程
3 加熱による画像消去過程
4 支持体
5 可逆的感熱記録層
6 発色画像
7 サーマルヘッド
8 加熱ローラ
A 画像の完全消去状態
B 飽和発色状態
C 完全発色状態
D 加熱消去状態
Claims (5)
- 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を主成分として含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる記録層を支持体上に設けた可逆性感熱記録媒体において、記録層にビタミンA類を含有させたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
- 記録層にビタミンC類又はビタミンE類の何れか又は両方を含有させたことを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
- 記録層にニコチン酸又はグルタチオンの何れか又は両方を含有させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の可逆性感熱記録媒体。
- 記録層に添加するビタミン類の添加量が電子供与性呈色性化合物に対して1.0重量%以上50重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体。
- 記録層上に酸素バリア層、保護層を順次積層し、該層の何れか又は両方に紫外線吸収剤を含有させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体。
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