JP4061157B2 - 可逆熱変色性積層体及びそれを用いた可逆熱変色性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は可逆熱変色性積層体及びそれを用いた可逆熱変色性物品に関する。更に詳細には耐光性に優れた可逆熱変色性積層体及びそれを用いた可逆熱変色性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、透明性支持体の下層に、バインダー樹脂中に電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色性組成物を分散してなる可逆熱変色層を設けた熱変色性玩具が開示されている(特開2000−84264号公報)。
前記熱変色性玩具は、可逆熱変色層が内面に位置するため、擦過により該層が剥離することを防止でき、耐久性に優れた玩具を形成できる利点を有するものの、前記可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性組成物は光に長期間曝されると発色しなくなったり、或いは、消色状態で残色を生じる等の不具合を生じる虞がある。
前記した問題を解消する方法として、可逆熱変色層中に紫外線吸収剤や酸化防止剤等の光安定剤を添加して耐光性を向上させる方法が考えられるものの、その効果は十分ではなく、更に、前記可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性組成物がマイクロカプセルに内包された形態として存在する系においては、カプセルの壁膜中に光安定剤を添加する方法が考えられるものの、変色感度の鈍化や発色濃度の淡色化といった熱変色機能の低下を生じる虞がある。
よって、熱変色機能を阻害することなく、耐光性をより向上させた積層体が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この種の可逆熱変色性積層体の熱変色効果について更に追求し、可逆熱変色層の色変化を永続して視認させる耐光性を備えると共に、耐久性に優れ、実用性を満足させる可逆熱変色性積層体を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、可逆熱変色性積層体の熱変色機能を阻害することなく、耐光性を向上させる方法について鋭意検討した結果、透明性支持体と可逆熱変色層の間に光安定剤を含有した透明性樹脂層を設けて、可逆熱変色層と光安定剤を含む層を独立して存在させることによって、熱変色機能を阻害することがなく、しかも、光に曝される側に透明性樹脂層が位置するため十分な耐光性向上効果を有し、実用性を満足させる可逆熱変色性積層体が得られる知見を得た。
即ち、本発明は光に曝される透明性支持体の下層に、バインダー樹脂中に光安定剤を分散させた透明性樹脂層、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料をバインダー樹脂中に分散させた可逆熱変色層を順次積層してなり、前記可逆熱変色層の下層に光遮蔽層を設けてなる可逆熱変色性積層体を要件とする。更には、前記可逆熱変色性積層体の層間又は可逆熱変色層の下層に非変色層を設けてなること、前記光遮蔽層がプラスチックフィルムであること、可逆熱変色層の下層に透明性プラスチックフィルムを積層してなること等を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性積層体を物品に固着させた可逆熱変色性物品を要件とする。
【0005】
前記透明性支持体としては、透明又は着色透明性を有する樹脂製の支持体が好適である。
前記樹脂の材質としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体のほか、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体などのエチレン系共重合体、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド等を例示できる。
前記樹脂は1種、又は2種以上を混合して用いてもよい。
更に、前記樹脂には、本発明の目的を損なわなければ、他の樹脂や慣用の添加剤(酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、耐侯性安定剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、充填剤等)が配合されたものを用いることもできる。
なお、前記支持体の形状は平面形状に限らず、立体形状であってもよい。
【0006】
次に、透明性樹脂層を構成するバインダー樹脂について説明する。
前記バインダー樹脂は、前記透明性支持体に対する適性、即ち、密着性や屈曲性等を有しなければならない。
かかる観点から、本発明における透明性樹脂層を形成する樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合樹脂から選ばれる樹脂が好適に用いられる。
前記樹脂は、固形、或いは、水や有機溶剤等に溶解、分散したもの、或いはエマルジョン等の形態で使用される。
更に、前記樹脂は、本発明の目的から逸脱するものでなければ、変性、或いは適宜架橋を行って、塗膜物性を改良しても良く、必要により慣用の添加剤(消泡剤、レベリング剤、増粘剤、耐光性付与剤等)を配合してもよい。
【0007】
前記透明性樹脂層中に分散される光安定剤のうち、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる 酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤等が挙げられる。
前記光安定剤は透明性樹脂層中に0.5〜40重量%、好ましくは2〜30重量%添加される。
0.5重量%未満では、所望の耐光性向上効果が得られ難く、40重量%を越えると光安定剤が透明性樹脂層から析出する虞がある。
【0008】
前記可逆熱変色層を構成するバインダー樹脂としては、前記透明性樹脂を形成する樹脂と同様のものが用いられる。
【0009】
前記可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性組成物としては、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物が用いられる。具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、、特公昭51−44708号、特公昭52−7764号、特公平1−29398号公報、特開平7−186546号公報等に記載のものが挙げられる。前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
【0010】
また、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性組成物も有効である。
【0011】
前記した可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料として使用することが好ましい。
これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定なマイクロカプセル顔料を構成でき、粒子径0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmの範囲が実用性を満たす。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0012】
前記可逆熱変色層は、前記可逆熱変色性組成物又は前記組成物を内包したマイクロカプセル顔料、樹脂、必要により添加剤を溶剤中に分散、溶解し、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、等の手段により透明性樹脂層上に形成される。
【0013】
なお、透明性支持体と透明性樹脂層の間、透明性樹脂層と可逆熱変色層の間に非変色性インキにより適宜非変色像を設けたり、可逆熱変色層の下層に前記非変色性インキにより非変色層(非変色像)を設けて、色変化による様相変化を多様にすることもできる。
また、前記可逆熱変色層の下層に酸化チタン、金属粉、パール顔料等を含む光遮蔽層を設けたり、透明性プラスチックフィルムを設けることもできる。
【0014】
前記のようにして得られる可逆熱変色性積層体は、透明性支持体の下層に透明性樹脂層と可逆熱変色層が順次積層させてなるため、光に曝される側に透明性支持体を位置させて実用に供することにより、透明性樹脂層中に含まれる光安定剤の効果によって可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性組成物の光劣化を抑制でき、熱変色機能を永続させることができる。
また、上層に透明性支持体が位置するため、擦過等により透明性樹脂層や可逆熱変色層が剥離することなく、耐久性も満足する。
更に、前記可逆熱変色層の下層に光遮蔽層を設けることにより、前記積層体を単体で使用したり、或いは、透明性の基材に貼着して用いる系にあっても、下層からの光を遮断して可逆熱変色層の光劣化を防止することができるため、応用性を広げることができる。
前記光遮蔽層としては光遮蔽性を有するプラスチックフィルムが好適に用いられる。
また、前記積層体を固着させる物品が光遮蔽性を有する場合、可逆熱変色層の下層には透明性を有するプラスチックフィルムを設けてもよい。
前記したプラスチックフィルムを設けることにより、適用される物品の材質や使用場所による可逆熱変色層の劣化を防止できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の可逆熱変色性積層体は、透明性支持体の下層に透明性樹脂層、ついで、可逆熱変色層を設け、必要により可逆熱変色層の下層に光遮蔽層を設けて得られる。
前記可逆熱変色性積層体の製造方法としては、例えば、透明性支持体に、媒体中にバインダー樹脂と光安定剤を含む透明性インキ、及び、媒体中にバインダー樹脂と可逆熱変色性組成物を含む可逆熱変色インキを順次塗布して各層を形成する場合、各層間に接着層を設けることなく積層体は得られるため、生産性に優れると共に、接着層の介在による鮮明な色変化の視認を妨げたり、変質を生じることもない。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を示す。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性積層体の作成(図1参照)
透明性支持体2として透明の軟質オレフィンフィルム(厚み200μm)に、バインダー樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂100部中に、光安定剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール10部を分散させた厚み約10μmの透明性樹脂層3を設けた。
更に、前記透明性樹脂層3上に、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ステアリルアルコール25部及びラウリン酸ステアリル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径8μmのマイクロカプセル顔料を分散させた厚み約40μmの可逆熱変色層4を積層して可逆熱変色性積層体1を得た。
【0017】
前記積層体は、40℃以上で無色、37℃以下で青色の色変化が視覚された。また、前記積層体は光に曝される側に透明性支持体を位置させて実用に供することによって耐光性に優れ、蛍光灯により積算照度36万lux・hrの光量に曝された後も殆ど褪変は見られず、更に追加して36万lux・hr(合計72万lux・hr)の光量に曝しても、前記した熱変色機能を損なうことなく、明瞭な色変化を永続して視覚できた。
なお、積算照度は、照度(lux)×時間(hr)で示される。
【0018】
実施例2
可逆熱変色性積層体の作成(図2参照)
実施例1の可逆熱変色層4の下層に、アクリル樹脂中に酸化チタンを分散させた光遮蔽層5を設けて可逆熱変色性積層体1を得た。
【0019】
前記積層体は、実施例1と同様の可逆熱変色性を示し、光に曝される側に透明性支持体を位置させた場合においても背面からの光が光遮蔽層により遮蔽されるため、より優れた耐光性能が得られると共に、明瞭な色変化を永続して視覚できた。
【0020】
実施例3
可逆熱変色性積層体の作成
実施例1の可逆熱変色層の下層に、白色塩化ビニルフィルム(厚み200μm)からなる光遮蔽層を貼り合わせて可逆熱変色性積層体を得た。
【0021】
前記積層体は、実施例1と同様の可逆熱変色性を示し、更に実施例2と同様に光に曝される側に透明性支持体を位置させた場合においても背面からの光が光遮蔽層により遮蔽されるため、より優れた耐光性能が得られると共に、明瞭な色変化を永続して視覚できた。
また、前記白色塩化ビニルフィルムが擦過によって可逆熱変色層が摩耗することを防止するため、積層体の耐久性を向上させることができる。
【0022】
実施例4
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として透明ポリプロピレンフィルム(厚み20μm)に、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂100部中に、光安定剤として2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール5部を分散させた厚み5μmの透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ラウリルアルコール25部及びパルミチン酸ブチル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径4μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層〔「食べ頃」〕の文字を設けた。
更に前記透明性樹脂層、及び可逆熱変色層上の全面にラミネート用アンカーコートを積層した後、透明ポリエチレン樹脂を溶融させコーティングし、可逆熱変色性積層体を得た。
【0023】
可逆熱変色性物品の作成
前記積層体を光に曝される側に透明性支持体を位置させるように製袋加工してアイスクリーム用ラップを得た。
前記アイスクリーム用ラップは、室温下では無色を示し、0℃以下になると青色の「食べ頃」の文字が視認され、再度、室温に放置すると再び消色し、元の無色に戻った。
前記アイスクリーム用ラップは、蛍光灯が設置された冷凍ストッカー内に保管されても長期間褪色は見られず、前記の色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0024】
実施例5
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として半透明の軟質ポリオレフィンフィルム(厚み200μm)に、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂100部中に、光安定剤として2−ヒドロキシベンゾフェノン10部、3,8−ジアザ−2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサジスピロ[5.2.11.1]ヘニコサン−7−オン5部を分散させた厚み10μmの透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂中に、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン3部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、セチルアルコール25部及びラウリン酸ステアリル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径10μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層〔卵の図柄〕を設けた。
ついで、前記可逆熱変色層上に非熱変色性インキにて非変色層〔恐竜の図柄〕を設け、更に、白色ベタ柄の光遮蔽層を全面に設けて、可逆熱変色性積層体Aを得た。
次に、前記可逆熱変色性積層体Aの非熱変色インキによる恐竜の図柄を蛇の図柄に替えた以外は同様の方法により可逆熱変色性積層体Bを得た。
【0025】
可逆熱変色性物品の作成
前記可逆熱変色性積層体AとBの各透明性支持体を外側にして重ね合わせ、その間に弾性材としてウレタンフォームを挟み込んだ後、高周波溶着加工を行い、熱変色性絵本として実用に供した。
前記絵本は、室温下では絵本両面に黒い卵の図柄が視認されており、35℃以上になると片面には恐竜の図柄が、もう片面には蛇の図柄がそれぞれ視認される。
前記絵本は、風呂場の蛍光灯下に曝されても長期間褪色は見られず、前記色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0026】
実施例6
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として透明ポリプロピレンフィルム(厚み20μm)に、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂100部中に、光安定剤としてイソオクチル−3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート30部を分散させた厚み5μmの透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ミリスチルアルコール25部及びカプリン酸ステアリル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径4μmのマイクロカプセル顔料と、6−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕−フルオラン1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、セチルアルコール25部及びカプリン酸ステアリル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径4μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて全面にベタ柄の可逆熱変色層を設けた。
ついで、前記可逆熱変色層上にラミネート用アンカーコートを積層した後、光遮蔽層として白色ポリエステルフィルム(厚み50μm)をラミネートし、可逆熱変色性積層体を得た。
【0027】
可逆熱変色性物品の作成
前記積層体を断裁加工して光に曝される側に透明性支持体を位置させるようにして水槽用温度インジケーターとして実用に供した。
前記水槽用温度インジケーターは、24℃以下の水温では紫色、26℃の水温ではピンク色を示し、30℃以上の水温では無色となった。
前記水槽用温度インジケーターは、水槽内の蛍光灯、及び室内間接光に曝されても長期間褪色は見られず、前記の色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0028】
実施例7
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として透明ポリプロピレンフィルム(厚み100μm)に、バインダー樹脂として塩素化ポリプロピレン樹脂100部中に、光安定剤としてイソオクチル−3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート30部、及び、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート5部を分散させた厚み10μmの透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ミリスチルアルコール25部及びミリスチン酸デシル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径10μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層(星の図柄)を設けると共に、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂中に、6−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕−フルオラン1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ステアリルアルコール25部及びラウリン酸ステアリル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径10μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層(ハートの図柄)を前記星柄と併設し、更にバックコート層を全面に積層して可逆熱変色性積層体を得た。
【0029】
可逆熱変色性物品の作成
前記積層体を光に曝される側に透明性支持体を位置させるようにして白色ポリプロピレン樹脂製カップにインサート成型加工して実用に供した。
前記カップは、室温下でピンク色のハート柄が視認され、湯を注いで40℃以上になると白色無地となり、室温に戻ると再びピンク色のハート柄が視認できた。
更に、前記カップに冷水を注いで15℃以下になるとピンク色のハート柄の横に青色の星柄が視認できるようになり、室温に戻ると再度青色の星柄が消え、ピンク色のハート柄のみが視認された。
前記カップは、通常使用される室内の間接光や蛍光灯に曝されても長期間褪色は見られず、前記の色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0030】
実施例8
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として透明ポリスチレンフィルム(厚み60μm)に、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂100部中に、光安定剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール10部を分散させた厚み5μmの透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−(2−メチル−プロピリデン)ビスフェノール6部、ミリスチルアルコール25部及びミリスチン酸デシル25部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径4μmのマイクロカプセル顔料を分散させた可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層(「冷」の文字)を設けた後、可逆熱変色層が内側になるように筒状に接着加工して可逆熱変色性積層体を得た。
【0031】
可逆熱変色性物品の作成
前記積層体を光に曝される側に透明性支持体を位置させるようにして清涼飲料水入りPETボトルに被せ、加熱処理してシュリンクラップとして実用に供した。
前記シュリンクラップは、室温下では無色を示し、冷蔵ストッカーで冷却し清涼飲料水の飲み頃である15℃以下になると青色の「冷」の文字が視認され、再度、室温に放置すると再び消色し、元の無色に戻った。
前記シュリンクラップは、蛍光灯が設置された冷蔵ストッカー内に保管されても長期間褪色は見られず、前記の色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0032】
実施例9
可逆熱変色性積層体の作成
透明性支持体として透明ポリエステルフィルム(厚み50μm)に、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂100部中に、光安定剤として2−ヒドロキシベンゾフェノン10部を分散させた厚み20μmの半透明性樹脂層をベタ柄で全面に設けた。
更に、前記透明性樹脂層上に、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂中に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、4,4′−デシリデンビスフェノール6部、ステアリン酸シクロヘキシルメチル50部の相溶体からなる可逆熱変色組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によるカプセル化で得られた平均粒子径8μmのマイクロカプセル顔料と、非変色性ピンク顔料とを分散させてなる可逆熱変色性インキを用いて可逆熱変色層(丸の図柄)を設けた後、更に粘着層を設けて可逆熱変色性積層体を得た。
【0033】
可逆熱変色性物品の作成
前記積層体をラベルとして、光に曝される側に透明性支持体を位置させるようにして食品加熱用樹脂製容器の蓋に貼着して加温チェック用として実用に供した。
前記樹脂容器は、冷蔵庫で冷却し15℃以下になるとラベル部は紫色の丸柄を示し、室温下でも前記状態を維持した。前記容器に食品を入れ、電子レンジ等で加熱し40℃以上になるとラベル部がピンク色の丸柄となり、食品が加温済みであることを認識させた。この容器を室温に放置してもラベルは加温済みを示すピンク色の丸柄が視認され、不必要な加温を防ぐことができた。同容器は、再度15℃以下に冷却するとラベル部が紫色の丸柄となり、繰り返し加温チェックを行うことができた。
前記樹脂製容器は、通常使用される室内間接光に曝されても長期間褪色は見られず、前記の色変化の様相を永続して繰り返し行うことができた。
【0034】
比較例
実施例1の透明性樹脂層中から光安定剤を除いた以外は、実施例1と同様の方法で可逆熱変色性積層体を得た。
前記積層体は実施例1と同様の色変化を示すものの、蛍光灯下において積算照度36万lux・hrの光量に曝された後はかなり褪色が見られ、更に追加して36万lux・hr(合計72万lux・hr)の光量に曝すと、完全に褪変して熱変色の機能を失っていた。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、可逆熱変色層の色変化を永続して視認できる耐光性を備えると共に、耐久性と熱変色機能に優れ、示温、装飾、玩具分野等、多様な分野に適用性を有する実用性を満足する可逆熱変色性積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆熱変色性積層体の一実施例の縦断面説明図である。
【図2】本発明の可逆熱変色性積層体の他の実施例の縦断面説明図である。
【符号の説明】
1 可逆熱変色性積層体
2 透明性支持体
3 透明性樹脂層
4 可逆熱変色層
5 光遮蔽層
Claims (5)
- 光に曝される透明性支持体の下層に、バインダー樹脂中に光安定剤を分散させた透明性樹脂層、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなる熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料をバインダー樹脂中に分散させた可逆熱変色層を順次積層してなり、前記可逆熱変色層の下層に光遮蔽層を設けてなる可逆熱変色性積層体。
- 前記可逆熱変色性積層体の層間又は可逆熱変色層の下層に非変色層を設けてなる請求項1記載の可逆熱変色性積層体。
- 前記光遮蔽層がプラスチックフィルムである請求項1記載の可逆熱変色性積層体。
- 可逆熱変色層の下層に透明性プラスチックフィルムを積層してなる請求項1又は2記載の可逆熱変色性積層体。
- 請求項1乃至4のいずれかの可逆熱変色性積層体を物品に固着させた可逆熱変色性物品。
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