JP4913616B2 - トノカバー装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車内の荷置き用フロアを覆うためのトノカバー装置に関する。
従来より、自動車のリアシートとバックドア間にある荷物室(荷置き用フロア)前側に配置した巻取りケースからカバーシートを荷物室の後方に引き出すことにより、荷物室を覆う巻取り式トノカバーが知られている(特許文献1参照。)。
従来のトノカバーを備えた車両の荷物室に荷物の出し入れを行なう場合、車両のバックドアを開放し、カバーシートを巻取りケースの引っ張り力によって巻取りケース内に収容し、かかるシートの収容により確保した空間において荷物の出し入れを行い、荷物の出し入れを終えた後はカバーシートの把手部材を車両の後方へスライドさせてカバーシートで荷物室を覆い、その後、バックドアを閉じる。この結果、収容した荷物を外部から確認されることを防ぐことができる。
特許第3227640号公報
上記のように荷物の出し入れを行なう場合、荷物の出し入れの度にバックドアの開閉作業を必要としていた。しかし、バックドアの開閉には大きなカと車外後方の大きな空間が必要であるため、荷物を出し入れするために逐一バックドアの開閉を行うことはユーザにとって非常に面倒であった。
このようなバックドアの開閉作業の煩雑さへの対策として、バックドアにガラスハッチを設け、このガラスハッチを開けることにより車外から荷物室へ荷物を収納する手法が考えられる。しかし、このようなガラスハッチを設けた場合であっても、従来のトノカバーを採用した場合は次のような課題があった。つまり、荷物室に荷物を収容するとき、バックドアのガラスハッチを開け、荷物室を覆っているカバーシートを巻取りケースの引っ張り力によって同巻取りケース内に収容することになるが、この巻取りケースは、通常ユーザがガラスハッチの外から手を車内に伸ばしても届かない位置に設置されている。従って、巻き取られたカバーシートによって再び荷物室を覆うには、バックドアを開け、巻取りケースのある位置まで車内に入ってカバーシートを引き出さなければならず、ガラスハッチを使用しつつも結局バックドアの開閉という大きな動作も省略できなかった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、車両内に形成された荷置き用フロアに対して従来よりも少ない労力にて荷物を出し入れすることが可能であって、特に、バックドアを開けることなく当該バックドアに形成されたガラスハッチを介して荷物を出し入れする場合に採用して好適なトノカバー装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のトノカバー装置は、車両内の後方に形成された荷置き用フロアを覆う。トノカバー装置は、荷置き用フロアを覆うためのトノカバーと、所定の引っ張り力によって上記トノカバーを巻き取り収容可能な収納ケースと、上記トノカバーの略先端に取り付けられた板状部材と、上記板状部材に形成された係合部を上記トノカバーの引き出し方向に略沿ってスライド移動せしめるレールとを備える。そして、上記レールは、少なくとも、上記係合部と係合することにより上記板状部材の位置を、板状部材の面を上記荷置き用フロアのフロア面と略平行にした状態で固定する横係合形状部と、上記係合部と係合することにより板状部材の位置を、板状部材の面を上記フロア面およびトノカバーに対してそれぞれ所定の角度をもって立たせた状態で固定する縦係合形状部とを形成している。
当該構成においては、トノカバーの係合部をレールの横係合形状部に係合させれば、上記フロアをトノカバーと板状部材とによって覆うことができる。一方、係合部を縦係合形状部に係合させれば、板状部材が上記フロア面に対して所定の角度をもって立った状態となるため、上記フロアのうち一部がトノカバーによって覆われていない状況となる。その結果、トノカバーによって覆われていない空間を介して、荷置き用フロアへ荷物を収容したり、荷置き用フロアから荷物を出すことができる。
上記係合部は、板状部材の縁から上記レールが形成されている車両内の壁面に向かって突出した突出片であり、上記レールは、突出片を内部に受け入れてスライド移動せしめる溝としてもよい。また、縦係合形状部は、レールの途中箇所においてレールの延伸方向と略垂直な方向に溝の側面を一段階掘り下げることにより形成した、板状部材の面と略平行な方向における突出片の幅を収容可能な大きさの段部と、当該段部の一部範囲をさらに堀り下げることにより形成した、板状部材の厚み方向における突出片の幅に略対応した幅の縦溝とからなるとしてもよい。当該構成においては、板状部材を上記フロア面に対して略平行の状態でスライド移動させながらその突出片(係合部)をレール途中の縦係合形状部に係止させるときに、まず、突出片を段部に収容し、その上で板状部材を徐々に立ち上がらせつつ、突出片を段部よりもさらに掘り下げられている縦溝内に収容する。
なお、上記突出片は、周囲が面取りされた形状であるとともに、上記トノカバーが引っ張られる方向に向かってテーパ状となっているとしてもよい。
また、上記各係合形状部は、係合部がスライド移動する方向と略垂直な方向に掘られた凹部を備え、上記板状部材は、係合部がいずれかの係合形状部と係合したときに上記凹部内に進入可能な凸部を係合部の略先端に備えるとともに、所定の操作を受けることにより凹部に対する凸部の進入および凹部からの凸部の退出を切り替え可能なスイッチを備えるとしてもよい。かかる構成においては、上記スイッチによる切り替えによって、係合部の略先端から凸部を係合形状部の凹部に対して出し入れすることができる。そして、凸部を凹部に進入させたときには、板状部材は係合対象の係合形状部の位置においてから強固に固定され、一方、凸部を凹部から退出させたときには、板状部材は係合対象の係合形状部からある程度外れ易い状態となる。
上記板状部材は、種々の付加的機能を備えることができる。一例として、板状部材は、係合部が縦係合形状部と係合したときに車両の後方を向く面の所定位置に、当該面から所定の角度をもって開閉可能な開閉板部材を形成したものであってもよい。
また、上記板状部材は、上記後方を向く面の所定位置に、荷物の保持及び又は荷物の引っ掛けに使用可能なアクセサリを形成したものであってもよい。
また、上記板状部材は、上記後方を向く面において開口する収納空間を内部に形成するとともに、当該開口を開閉する扉を当該面に形成したものであってもよい。
以上説明したように本発明によれば、板状部材を縦係合形状部に係合させて板状部材を立たせることにより、トノカバーが荷置き用フロアを覆っていない所定広さの空間を介して、荷置き用フロアに荷物を出し入れすることができる。特に、車両のバックドアのガラスハッチを開けたときに、板状部材を横係合形状部から縦係合形状部に移動させれば、移動先の位置で板状部材が止まりかつ立つので、トノカバー下の荷置き用フロアへの荷入れ等が容易に可能となり、荷入れ等が終わったら、板状部材を縦係合形状部から横係合形状部に移動させることで、再度トノカバーにより荷置き用フロアを覆うことができる。すなわち従来のように、ガラスハッチを開けて荷置き用フロアを使用するときにトノカバー全体を収納ケースに収納してしまい、後からバックドアを開けてトノカバーを再び収納ケースから引き出さなければならなかった、という不都合を回避できる。
また、縦係合形状部を段部と縦溝とによる2段構造としたため、単にレール途中に縦溝を形成した場合と比較して、板状部材の係合部を縦溝に滑らかに導くことができ、縦溝に係合させやすい。また、板状部材に荷物が衝突する等して負荷が加えられたときに、縦溝に嵌っている係合部が段部に乗り上がり、その結果、板状部材の縦係合形状部に対する固定が解かれやすい構造となっているため、上記負荷によって係合部が破損する等の被害を防ぐことができる。
また、係合部をその周囲が面取りされた形状とし、かつトノカバーが引っ張られる方向に向かってテーパ状とすることで、各係合形状部に対してより滑らかに係合させ易く、かつ、上記負荷が加えられたときに係合形状部に対する固定が解かれ易くなる。
また、上記スイッチの切り替えを行なうことで、必要に応じて板状部材を係合対象の係合形状部に対して強固に固定できる。
また、板状部材を縦係合形状部に係合させた状態で、トノカバーが覆っていない空間に任意の荷物を置いたときに、上記開閉板部材を開いて荷物に対する支えとすることができる。
また、板状部材を縦係合形状部に係合させた状態において、上記アクセサリに小物を収納したり荷物を引っ掛けることができる。
また、板状部材を縦係合形状部に係合させた状態において、上記収納空間に荷物を収納することができる。
以下の順序に従って、本発明の好ましい実施形態を図を用いながら説明する。
(1)トノカバー装置の概略構成
(2)ボードの固定態様
(3)変形例
(1)トノカバー装置の概略構成
図1は、本発明のトノカバー装置1を備えた車両の内部を斜視図により表している。トノカバー装置1は、車両内のラゲージフロアFに形成されている。ラゲージフロアFとは、車両の座席(不図示)と車両のバックドア50(図1では不図示)とによって前後を挟まれ、デッキサイド60およびピラー70によって左右を挟まれた荷置き用の領域であり、特許請求の範囲に言う荷置き用フロアに該当する。ただし同図では、車両の左右のデッキサイド60およびピラー70のうち、右側のものだけ示している。
トノカバー装置1は、概略、トノカバー10と、ボード20と、収容ケース30と、ボード20を車両の前後方向に誘導せしめるレール40とからなる。トノカバー装置1は、車両の後部座席の後方に設けられることが好ましい。ボード20は、特許請求の範囲に言う板状部材に該当する。
トノカバー10は、ゲージフロアFを覆うためのシート状の部材であり、その素材は特に限定されないが、収容ケース30内において容易に巻いて収容できる柔軟な素材が好ましい。例えば、一般的に広く使われる塩化ビニルレザーや軟質ポリ塩化ビニルなどが考えられる。
収容ケース30は、不図示の座席の後方に配設されており、内部に備えた付勢手段(ばね等)による所定の引っ張り力によってトノカバー10を常時車両の前方に引っ張っている。
ボード20は、トノカバー10の車両後方を向く端部(先端)に取り付けられている。ボード20の素材は硬質なものが好ましく、硬質な樹脂製とすることが考えられる。またボード20は、その略中央位置に把手部21を形成するとともに、左右の縁に車両の左右の壁面を向く突出片(係合部)22を形成している。
把手部21は、ボード20を貫く孔であり、ユーザは把手部21を持ってボード20およびトノカバー10を前後方向にスライド移動させることが可能である。左右の突出片22は、ボード20がスライド移動するときに左右のレール40内を移動する。
レール40は、トノカバー10の左右両側の車両内の壁面においてトノカバー10の引き出し方向に略沿って形成された溝である。本実施形態では、レール40は左右のピラー70に形成されている。左右のピラー70間の距離は左右のデッキサイド60間の距離よりも狭くなっており、トノカバー10の左右両側の壁面のうちかかるピラー70が出現する位置から車両後方に向かってレール40は形成されている。
左右のレール40は対称の形状をしており、それぞれの経路上の複数箇所に突出片22と係合するための係合形状部を形成している。レール40は、本実施形態では少なくとも、横係合形状部41と縦係合形状部42とを形成している。
トノカバー10が収容ケース30内に収容されている状態においては、ユーザは、ボード20を収容ケース30の位置から引っ張り、ピラー70の位置まで引っ張ったら突出片22をレール40内に入れて更に移動させ、任意の係合形状部に対して突出片22を係止させることにより、ボード20を当該任意の係合形状部の位置に固定することができる。
(2)ボードの固定態様
図2は、レール40内における突出片22の位置等を示している。また同図では、レール40に対する、バックドア50の車両内側の面(2点鎖線)およびバックドア50の一部であるガラスハッチ51(2点鎖線)の位置関係を示している。ガラスハッチ51は、バックドア50のガラス窓を開閉可能とすることにより形成された扉である。
レール40は、車両前方を向いた入口43から略水平に車両後方に向かって延伸するとともに、最後端において略上方に進路を変更し、この上方に延伸した先においてさらに、突出片22を略収容できる程度の長さ分だけ、その進路を車両前方に戻して延ばしている。本実施形態では、この車両前方に戻った溝部分を横係合形状部41としている。
さらにレール40は、入口43から略水平に車両後方に向かって延伸している途中箇所に縦係合形状部42を形成している。縦係合形状部42は、レール40の溝を形成する側面40aをレール40の延伸方向と略垂直な方向(同図の場合は下方向)に一段階掘り下げることにより形成した段部42aと、段部42aの一部範囲をさらに堀り下げることにより形成した縦溝42bとから成る。本実施形態では、縦係合形状部42を横係合形状部41よりも車両前方側に形成している。
同図では、レール40内における突出片22の先端の位置を2点鎖線で示しており、突出片22が横係合形状部41に係止している状態を表している。つまり、ボード20の面を略水平状態としたまま突出片22がレール40の最後端に来るまで引っ張るとともに、ボード20を若干上方に持ち上げて突出片22を横係合形状部41まで案内し、横係合形状部41に嵌合させる。その結果、収納ケース30の引っ張り力を受けているボード20は、突出片22を横係合形状部41に嵌合させた位置で固定される。ただし図2(および後述の図4,5)ではトノカバー10の図示は省略している。
図3は、図2のように横係合形状部41に突出片22を係止させた状態のボード20およびトノカバー10を示している。以下では、横係合形状部41に突出片22を係止させた状態を通常固定状態と呼ぶ。本実施形態では、横係合形状部41は、ボード20の面を略水平としたときの突出片22と嵌合する形状となっている。従って、通常固定状態においては、ボード20の面はトノカバー10と同様に略水平であり、かかるボード20およびトノカバー10によって下方のラゲージフロアFが覆われる。このとき、ボード20の先端23は、図2からも判るように、バックドア50に非常に接近しているため、ラゲージフロアFは外部からはほぼ完全に隠された状態となる。
図4および図5は、縦係合形状部42に突出片22を係止させる様子を示している。
例えば、通常固定状態からボード20を縦係合形状部42の位置に移動させる場合、ボード20の突出片22を横係合形状部41から脱出させてそのままレール40に沿って入口43に向かって突出片22を誘導する。そして、段部42aが形成されている位置でボード20を若干下方に移動させ、突出片22を段部42a内に収容する。段部42aは、ボード20の面と略平行な方向における突出片22の幅を収容可能な大きさに形成されている。そのため、ボード20の面を略水平としたまま突出片22を段部42aに収容することができる(図4参照)。
段部42aに突出片22を収容したら、次に、突出片22を縦溝42bに嵌合させる。縦溝42bの入口の幅は、ボード20の厚み方向における突出片22の幅に略対応した大きさに形成されている。また、突出片22は、ボード20の厚み方向における幅よりもボード20の面と略平行な方向における幅の方が大きく形成されている。そのため、突出片22を縦溝42bに嵌合させる際には、ボード20の先端23が上方を向くようにボード20の面を立てながら突出片22を縦溝42b内に嵌入させていく。その結果、突出片22が縦溝42bと嵌合し、ボード20は縦係合形状部42の位置で固定される。このとき、ボード20の面は略水平ではなく、ラゲージフロアFの面に対して所定の角度をもって立った状態となる(図5参照)。
図6は、縦係合形状部42に突出片22を係止させた状態のボード20およびトノカバー10を示している。以下では、縦係合形状部42に突出片22を係止させた状態を縦固定状態と呼ぶ。同図に示すように縦固定状態においては、ボード20は、通常固定状態のときよりもバックドア50から遠い位置にてその面を立たせた状態で固定されている。
つまり、縦固定状態とすることで、ラゲージフロアFの一部が覆われていない状態となり、その結果生じた間口B(図5参照)を介して、ラゲージフロアFに荷物を入れたり、同フロアFから荷物を出すことができる。また、ボード20を横係合形状部41から車両前方に所定距離スライド移動させた位置において立てて固定することにより、横係合形状部41から同じ距離だけスライドさせてボード20の面を略水平のまま固定する場合と比べて、上記間口Bが広く確保されて荷物の出し入れが容易となる。
このような本実施形態の構成は、ガラスハッチ51を介した荷物の出し入れの際に特に有効であると言える。つまり、ラゲージフロアFの全体がトノカバー10とボード20によって覆われている状態でガラスハッチ51を開けたとき、そのとき横係合形状部41に係止されているボード20を移動させて、縦係合形状部42に対して係止することができる。そして、ガラスハッチ51付近に生じた間口Bを介して荷物の出し入れを行い、荷物の出し入れが終了したら、ボード20の位置を縦係合形状部42から横係合形状部41へと変更し、縦固定状態から通常固定状態に戻す。
つまり、従来のトノカバーの構成であれば、通常固定状態が解かれたボード20は、ガラスハッチ51から手を車内に入れても届かない位置にある収納ケース30まで同ケース30の引っ張り力によって引き戻されていた。本発明によれば、通常固定状態を解いたボード20を収納ケース30まで戻さずに、ユーザの手の届く縦係合形状部42に留めておくことができる。そのため、後からバックドア50を開けて収納ケース30の位置からボード20を再度引き出す必要が無くなり、ガラスハッチ51の開け閉めと、ボード20の横係合形状部41と縦係合形状部42との間での位置変更によって、ラゲージフロアFに対する荷入れ荷出しを行うことが可能となる。
なお、ユーザによるボード20の移動のし易さを考慮すると、バックドア50の内側の面から縦係合形状部42までの距離は、最長でも30cm程度であることが望ましい。
本実施形態では、ボード20を硬質な素材としているため、通常固定状態においてはボード20上にいくらかの荷物を載せることも可能である。また、トノカバー10を比較的硬い素材で構成すれば、軽い荷物をトノカバー10上に載せることも可能であるし、縦固定状態とした場合には、トノカバー10上に載せた荷物の落下をボード20によって防止できる。つまり、荷物の収納スペースとしてトノカバー10の下部と上部の2箇所を提供することが可能となる。
縦固定状態としたときのボード20の面の角度は、通常固定状態のときのボード20の面に対して垂直であってもよいし、ある程度斜めであってもよい。例えば、通常固定状態のボード20の面に対して、縦固定状態のボード20の面がなす角度は60度から120度の間のいずれかとする。かかる角度の調整は、縦溝42bを掘る方向や突出片22の形状を調整することにより可能である。
1本のレール40には、横係合形状部41と縦係合形状部42とを1つずつ形成するだけにとどまらず、いずれのタイプの係合形状部をどれだけ増設してもよい。またこれら2種類の係合形状部のみならず、ボード20をラゲージフロアFに対して横係合形状部41および縦係合形状部42とは異なる角度で固定する別の係合形状部を設けても良い。
なお上記では、縦固定状態においてボード20の先端23を上方(車両の天井方向)に向かせた場合を例に説明しているが、逆に先端23を下方(ラゲージフロアFの方向)に向かせた態様を採ってもよい。
本実施形態では、突出片22を係合形状部に係止する際の作業のし易さおよび、係止されている突出片22のその係止の解除のし易さ、という点に関して種々の工夫を行っている。
上述したように、縦係合形状部42は段部42aと縦溝42bとによる2段構造になっている。よって、ボード20をスライド移動させて突出片22を縦溝42bまで導こうとする場合、ボード20の面の角度を略水平に維持したまま突出片22を段部42aに収容して突出片22の位置をおよそ決め、その上で、突出片22を回転軸とするようにボード20の面を徐々に立たせながら、突出片22を縦溝42b内に導くことができる。すなわち上記2段構造とすることにより、レール40の途中箇所にいきなり縦溝42bを形成する場合よりも、滑らかかつ容易に突出片22を縦溝42bに導いてボード40を縦固定状態とすることができる。
また、縦固定状態となっているボード20に重い荷物をぶつけてしまった場合等に縦固定状態が外れ難い状態であると、突出片22に非常に大きな負荷がかかり、場合によっては突出片22が破損してしまう恐れもある。そこで本実施形態では、上記2段構造を採ることにより、ボード20が外部からの衝撃を受けたときに縦固定状態を解除し易くしている。つまり、縦溝42bとレール40の側面40aとの間には段部42aが存在するため、縦溝42bに嵌っている突出片22は、ボード20がある程度の衝撃を受けたときに段部42aに乗り上がり易くなっている。例えば、ボード20の先端23付近に図5に矢印で示す方向の負荷が加わったとき、突出片22は、ボード20が倒れるにつれて徐々に縦溝42bから脱出するとともに段部42aに乗り上がり、図5の状態から図4の状態へと変化する。そして、ボード20は常に収容ボックス30の方向へ引っ張り力を受けているため、突出片22が側面40aから見て浅い窪みである段部42aに収容されているだけのボード20は、上記引っ張り力によって容易く縦係合形状部42から脱出できる。このように、負荷を受けた際には、縦係合形状部42によるボード20の固定が解除され易くなっているため、衝撃によって突出片22が破損してしまうことを防止できる。なお、段部42aの深さ位置から縦溝42bの最深の位置までの長さよりも突出片22のボード20の面と平行な方向における幅を長くしておけば、突出片22はより段部42aに乗り上がり易くなる。
さらに、突出片22自体の形状に工夫を加えることで、各係合形状部への係止のし易さや、係止の解除のし易さを実現可能である。例えば、突出片22の形状については、その周囲を面取りした形状とすることができる。つまり、角を滑らかに削った形状とすれば、各係合形状部に対する係止および係止の解除の各動作が滑らかになる。
さらに、突出片22の形状をトノカバー10が引っ張られる方向に向かってテーパ状としてもよい。より具体的には、突出片22の部位のうち、トノカバー10側の端部を先細りの形状としている。つまり、ボード20は常に収容ボックス30の方向へ引っ張り力を受けているため、突出片22のトノカバー10側の端部を先細りにしておけば、横係合形状部41や縦係合形状部42の縦溝42bに対して突出片22を嵌める作業がより容易となる。
(3)変形例
上記では、係合形状部からの突出片22の解除のし易さという観点について説明を行なったが、逆に、係合形状部に対して突出片22をより強固に固定することが望まれる場合もある。そこで、突出片22に進退可能な凸部を設け、この凸部をレール40内に形成した凹部に進入させることによって突出片22の固定を強固にするとしてもよい。
図7は、そのような構成を実現するための一例を示している。同図では、レール40について図2のA‐A線で切断したときの断面と、横係合形状部41に対して嵌合している左側の突出片22などを示している。同図に示すように、突出片22の先端には、ボード20のスライド方向と垂直な方向に進退可能な凸部22aを形成している。一方、横係合形状部41側には、突出片22の先端と相対する面に、上記凸部22aが進出する方向に向かって掘った凹部44が形成されている。凹部44はその内部に凸部22aを受け入れ可能な大きさに形成されている。図示しない右側の突出片とレールにも、上記凸部と凹部が形成される。
ボード20には、ユーザによって操作可能なスイッチ21aが所定位置に備えられている。スイッチ21aは、例えば把手部21の内周に形成すると操作しやすい。スイッチ21aと凸部22aはボード20内および突出片22内を通過する連結部材21bによって連結されており、スイッチ21aの切り替え操作が行なわれることにより、凸部22aの進出と後退とを切り替えることができるようになっている。よって、突出片22を横係合形状部41に係止したときに、スイッチ21aを操作することにより、凸部22aを突出片22の先端から相対する凹部44内に進出させることができる。凸部22aを凹部44に挿入することで、横係合形状部41の位置においてボード20を強固に固定でき、車両の振動の弾みなどでボード20が横係合形状部41から外れることを防止できる。かかる強固な固定を解除するには、スイッチ21aを操作して凹部44から凸部22aを退出させればよい。むろん、凹部44は、突出片22を縦係合形状部42に係止したときに突出片22の先端と相対する縦溝42bの構成面にも形成可能である。また、各係合形状部以外のレール40の任意の位置にも凹部44を形成することにより、レール40上の任意の位置でボード20を固定できるようにしてもよい。また、突出片22の先端から凸部22aを進退可能とするのではなく、突出片22自体をボード20の縁から進退可能としてもよい。
さらに、縦固定状態としたときのボード20の有効利用という観点から、ボード20に各種工夫を施すことができ、例えば、ラゲージフロアFに収容した荷物を支える部材をボード20に備えるとしてもよい。
図8は、縦固定状態としたボード20の車両後方を向く面(面24と呼ぶ。)の一例を示している。同図においては、面24に支え板(開閉板部材)24aを形成している。支え板24aは一端をヒンジ(不図示)によって回転可能に面24に固定されており、面24に対して略垂直に開くことができる。また、略垂直に開いたときの支え板24aの面は、車両の左右の壁面と略平行となる。かかる構成においてボード20を縦固定状態とし、ラゲージフロアFからの高さがトノカバー10までの高さを超えるような背の高い荷物Pを上記間口Bから入れたとき、同図に示すように開いた開閉板24aによって荷物Pを支えることができる。なお、支え板24a以外にも、面24には各種凸凹やリブといったものを形成し、収容した背の高い荷物の支えとすることができる。
図9は、面24の他の例を示している。同図では、面24において、荷物を引っ掛け可能なフック24bを固着している。フック24bは、特許請求の範囲に言うアクセサリの一例である。フック24bは、上から見た際に略円形の部材がその一部を欠いた形状となっている。そしてこの欠けた部分の両端には、円の半径方向に鉛直な方向に伸びた引っ掛け用凸部24b1が形成されている。この引っ掛け用凸部24b1が引っ掛かりとなり、フック24bに買い物袋などを吊るすことが可能となる。また、フック24bは飲料水の容器等のホルダとしても使用可能である。この場合は、フック24bの直径と収容される容器等の大きさとの関係から、フック24bだけでは支えきれずに容器等が落下することが考えられる。そのため、面24にはフック24bの下方に、上記図8の支え板24aとは開く方向が90度異なる別の支え板24cを形成しておき、フック24b内に収容した容器等の底をこの支え板24cによって支えることとする。
図10は、面24の他の例を示している。同図では、面24において開口する収納空間24dをボード20内部に形成している。収容空間24dを形成する場合にはボード20にある程度の厚みを持たせることが必要である。かかる構成とすれば、ボード20を縦固定状態としたときに、小物をあえてラゲージフロアFに収容せずに、ガラスハッチ51からより手の届きやすいボード20の収容空間24dに収容でき便利である。また同図に示すように、収容空間24dの開口を覆うための蓋体24eを備えてもよい。蓋体24eは、開口を開け閉めできるものであればよく、例えば、上記支え板24aや支え板24cと同じ構成のものを採用してもよい。上記図7〜10において説明した各種構成は、それ単独で採用してもよいし、全てあるいは一部を同時に採用してもよい。
トノカバー装置を備えた車両内部の斜視図。 レールの横係合形状部に突出片が係止した状態を示した図。 ボードを通常固定状態としたときの車両内部の斜視図。 レールの縦係合形状部に突出片を係止させる過程を示した図。 レールの縦係合形状部に突出片が係止した状態を示した図。 ボードを縦固定状態としたときの車両内部の斜視図。 横係合形状部に形成した凹部と突出片に形成した凸部とを示した図。 ボードに形成した支え板を示した斜視図。 ボードに形成したフック等を示した斜視図。 ボードに形成した収納空間等を示した斜視図。
符号の説明
1…トノカバー装置、10…トノカバー、20…ボード、21…把手部、21a…スイッチ、22…突出片(係合部)、22a…凸部、23…先端、24…面、24a,24c…支え板、24b…フック、24d…収納空間、24e…蓋体、30…収納ケース、40…レール、40a…側面、41…横係合形状部、42…縦係合形状部、42a…段部、42b…縦溝、44…凹部、50…バックドア、51…ガラスハッチ、60…デッキサイド、70…ピラー

Claims (7)

  1. 車両内の後方に形成された荷置き用フロアを覆うためのトノカバー装置であって、
    上記荷置き用フロアを覆うためのトノカバーと、
    所定の引っ張り力によって上記トノカバーを巻き取り収容可能な収納ケースと、
    上記トノカバーの略先端に取り付けられた板状部材と、
    上記板状部材に形成された係合部を上記トノカバーの引き出し方向に略沿ってスライド移動せしめるレールとを備え、
    上記レールは少なくとも、上記係合部と係合することにより上記板状部材の位置を、板状部材の面を上記荷置き用フロアのフロア面と略平行にした状態で固定する横係合形状部と、上記係合部と係合することにより板状部材の位置を、板状部材の面を上記フロア面およびトノカバーに対してそれぞれ所定の角度をもって立たせた状態で固定する縦係合形状部とを形成したことを特徴とするトノカバー装置。
  2. 上記係合部は、板状部材の縁から上記レールが形成されている車両内の壁面に向かって突出した突出片であり、上記レールは、突出片を内部に受け入れてスライド移動せしめる溝であり、上記縦係合形状部は、レールの途中箇所においてレールの延伸方向と略垂直な方向に溝の側面を一段階掘り下げることにより形成した、板状部材の面と略平行な方向における突出片の幅を収容可能な大きさの段部と、当該段部の一部範囲をさらに堀り下げることにより形成した、板状部材の厚み方向における突出片の幅に略対応した幅の縦溝とからなることを特徴とする請求項1に記載のトノカバー装置。
  3. 上記突出片は、周囲が面取りされた形状であるとともに、上記トノカバーが引っ張られる方向に向かってテーパ状となっていることを特徴とする請求項2に記載のトノカバー装置。
  4. 上記各係合形状部は、係合部がスライド移動する方向と略垂直な方向に掘られた凹部を備え、上記板状部材は、係合部がいずれかの係合形状部と係合したときに上記凹部内に進入可能な凸部を係合部の略先端に備えるとともに、所定の操作を受けることにより凹部に対する凸部の進入および凹部からの凸部の退出を切り替え可能なスイッチを備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のトノカバー装置。
  5. 上記板状部材は、係合部が縦係合形状部と係合したときに車両の後方を向く面の所定位置に、当該面から所定の角度をもって開閉可能な開閉板部材を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のトノカバー装置。
  6. 上記板状部材は、係合部が縦係合形状部と係合したときに車両の後方を向く面の所定位置に、荷物の保持及び又は荷物の引っ掛けに使用可能なアクセサリを形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のトノカバー装置。
  7. 上記板状部材は、係合部が縦係合形状部と係合したときに車両の後方を向く面において開口する収納空間を内部に形成するとともに、当該開口を開閉する扉を当該面に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のトノカバー装置。
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