JP4851626B2 - 高強度高導電銅合金圧延板及びその製造方法 - Google Patents

高強度高導電銅合金圧延板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、析出熱処理工程を含む工程によって作られた高強度高導電銅合金圧延板及びその製造方法に関する。
従来から、銅板は、その優れた電気・熱の伝導性を活かし、コネクタ、電極、接続端子、ターミナル、リレー、ヒートシンク、バスバー材として様々な産業分野に使用されている。ところがC1100、C1020を始めとする純銅は、強度が低いので、強度を確保するためには単位面積当たりの使用量が多くなってコスト高となり、また重量も大きくなる。
また、高強度、高導電銅合金として溶体化−時効・析出型合金のCr−Zr銅(1%Cr−0.1%Zr−Cu)が知られている。しかし、この合金による圧延板は一般的に熱間圧延した後に材料を再び950℃(930〜990℃)に加熱し、その直後に急冷する溶体化処理を施し、そして時効するという熱処理プロセスを経て製造される。又は、熱間圧延後に熱間圧延材を熱間又は冷間鍛造等で塑性加工し、950℃に加熱し、急冷、そして時効するという熱処理プロセスを経て製造される。このように、950℃という高温のプロセスを経ることは、大きなエネルギを必要とするばかりでなく、大気中で加熱すれば酸化ロスが生じ、また、高温のために拡散が容易になるので材料間にへばりつきが生じ、酸洗工程が必要になる。
そのために、不活性ガス、又は真空中において950℃で熱処理されるので、コストが高くなり、また、余分なエネルギも必要となる。さらに、不活性ガス中等での熱処理により酸化ロスは防げるものの、へばりつきの問題は解決しない。また、特性上も高温に加熱されるので、結晶粒が粗大化し、疲労強度等に問題が生じる。一方、溶体化処理を行なわない熱間圧延プロセス法では、鋳塊を溶体化温度に加熱しても、熱間圧延中に材料の温度低下が起こり、熱間圧延に時間が掛かるため、非常に乏しい強度しか得られない。またCr−Zr銅は溶体化の温度条件の温度範囲が狭いために特別な温度管理が必要であり、冷却速度も速くしなければ溶体化しない。一方、薄板に用いる場合、溶体化処理を薄板の段階で連続焼鈍設備を用いて行なう方法、或いは、最終打ち抜き製品等で行なう方法がある。しかし、溶体化処理を連続焼鈍設備で行なう場合、急冷状態にするのが困難であり、さらに900℃や950℃のような高温に材料を曝すと結晶粒が粗大化し、特性が却って悪くなる。最終打ち抜き製品等で行なうと、生産性の問題や余分なエネルギも必要となる。また、多くの活性なZr、Crを含むので溶解鋳造の条件に制約を受ける。結果的に、特性は優れるもののコストが高くなる。
これらの銅板が使用される自動車の分野では、燃費向上のために車体重量の軽量化が求められる一方で、自動車の高度情報化、エレクトロニクス化、及びハイブリッド化(電装部品等増)により、接続端子、コネクタ、リレー、バスバー等の数が増え、また、搭載される電子部品の冷却のためのヒートシンク等が増えるので、使用される銅板には薄肉高強度化が益々要求される。元々、家電製品等に比べて自動車用の使用環境は、エンジンルームはもとより、夏季には車内も高温になり、過酷な状態であったのが、さらに高電流になるので、特に接続端子、コネクタ等の用途においては応力緩和特性を低くする必要がある。この応力緩和特性が低いとは、例えば100℃の使用環境において、コネクタ等のばね性や接触圧力が低下しないことを意味する。なお、本明細書では、後述する応力緩和試験において、応力緩和率が小さいものを応力緩和特性が「低い」「良い」といい、応力緩和率が大きいものを応力緩和特性が「高い」「悪い」という。銅合金圧延板においては応力緩和率が小さいことが好ましい。自動車と同様に、太陽光発電や風力発電等に使われるリレー、端子、コネクタ等の接続金具は、大電流が流れるので高導電が求められ、使用環境も100℃に達することがある。
また、高信頼性の要求から、重要な電気部品の接続ははんだではなく、ろう付けを用いることが多くなっている。ろう材には、例えば、JIS Z 3261に記載されているBag−7等の56Ag−22Cu−17Zn−5Sn合金ろうがあり、そのろう付け温度は650〜750℃の高温が推奨されている。このために、接続端子などの銅板には、例えば約700℃の耐熱性が要求される。
さらに、例えばパワーモジュール等の用途で、銅板はヒートシンク又はヒートスプレッダとしてベース板であるセラミック等と接合して使用される。その接合ははんだ付けが採用されているが、はんだにおいてもPbフリー化が進み、Sn−Cu−Ag等の高融点のはんだが使われている。また、ヒートシンク、ヒートスプレッダ等の実装において、単に軟化しないだけでなく、変形やそりが無いことが要求され、軽量化と経済的な点から薄肉化の要望がある。このために銅板は高温に曝されても変形し難い、すなわち例えばPbフリーはんだの融点より約100℃高い温度である約350℃でも高い強度を保持し、変形に対する耐性を持つことが要求される。
本発明は、コネクタ、電極、接続端子、ターミナル、リレー、ヒートシンク、バスバー、パワーモジュール、発光ダイオード、照明器具部品、太陽電池の部材等の用途であって、電気・熱伝導性に優れ、薄肉化すなわち高強度化を実現するものである。加えて、コネクタ等では、曲げ加工性が良いことが必要であり、曲げ加工性等の延性を備えなければならない。また、前述のように応力緩和特性が良好であることも必要である。単に強度を増すだけであれば、冷間圧延し加工硬化させればよいが、トータルの冷間圧延率が、40%以上、特に50%以上になると、曲げ加工性を始めとする延性が悪くなる。また、圧延率が高くなると応力緩和特性も悪くなる。一方、前述したコネクタ等の用途は薄板であり、厚みが4mm又は3mm以下さらには1mm以下が一般的であって、熱間圧延材の厚みは、10〜20mmであるので、60%以上、一般的には70%以上のトータルの冷間圧延が必要である。その場合、冷間圧延の途中で焼鈍工程を入れることが一般的である。ところが、焼鈍工程で温度を上げて再結晶させると延性は回復するが、強度は低くなる。また、部分的に再結晶させると、後の冷間圧延率との関係もあるが、延性が乏しいか、強度が低いか、のいずれかとなる。本願の発明では、冷間圧延後の析出熱処理時に、後述するCo、P等の析出物を析出させ、材料を強化すると同時に、部分的に、元の結晶粒界を中心に微細な再結晶粒、又は転位密度が低く、再結晶粒とは形態が少し異なる結晶(以下、この結晶粒を本明細書では微細結晶といい、微細結晶の詳細については、後述する)を生成させることにより、マトリックスの強度の低下を最小限に抑え、延性を大幅に向上させる。そして、延性、及び応力緩和特性を損なわない程度の圧延率の冷間圧延により、加工硬化させ、最終の回復熱処理のこれら一連のプロセスにより、高い強度、高い電気・熱伝導性、優れた延性を備える。
また、0.01〜1.0mass%のCoと、0.005〜0.5mass%のPとを含み残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金が知られている(例えば特開平10−168532号公報参照)。しかしながら、このような銅合金においては、強度、導電性が共に不十分である。
本発明は、上記問題を解消するものであり、高い強度、高い電気・熱伝導性、及び優れた延性を備えた高強度高導電銅合金圧延板及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、高強度高導電銅合金圧延板において、0.14〜0.34mass%のCoと、0.046〜0.098mass%のPと、0.005〜1.4mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.0≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦5.9の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程と、を含む製造工程によって製造され、トータル冷間圧延率が70%以上であり、最終の析出熱処理工程後において、再結晶率が45%以下であって、再結晶部分の再結晶粒の平均結晶粒径が0.7〜7μmであり、金属組織中に円形、又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒径が2.0〜11nm、又は全ての析出物の90%以上が25nm以下の大きさの微細析出物であって該析出物が均一に分散しており、最終の析出熱処理後、又は最終の冷間圧延後の金属組織中に圧延方向に伸びた繊維状の金属組織において、EBSP解析結果においてIPF(Inverse Pole Figure)マップ及びGrain Boundaryマップから観察される長/短の比率の平均が2以上15以下である、焼鈍双晶を有さない微細結晶が存在し、前記微細結晶の平均粒径が0.3〜4μmであって観察面における該微細結晶の金属組織全体に対する面積の割合が0.1〜25%であり、又は、前記微細結晶と再結晶粒との両部を合わせた平均粒径が0.5〜6μmであって、観察面における該微細結晶と再結晶粒との両部の金属組織全体に対する面積の割合が0.5〜45%であるものである。
本発明によれば、Co及びPの微細な析出物と、Snの固溶と、微細結晶とによって、高強度高導電銅合金圧延板の強度、導電率及び延性が向上する。
0.16〜0.33mass%のCoと、0.051〜0.096mass%のPと、0.005〜0.045mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.2≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦4.9の関係を有することが望ましい。これにより、Snの量が組成範囲内での下限寄りとなるので、高強度高導電銅合金圧延板の導電率がさらに向上する。
また、0.16〜0.33mass%のCoと、0.051〜0.096mass%のPと、0.32〜0.8mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.2≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦4.9の関係を有することが望ましい。これにより、Snの量が組成範囲内での上限寄りとなるので、高強度高導電銅合金圧延板の強度がさらに向上する。
また、0.14〜0.34mass%のCoと、0.046〜0.098mass%のPと、0.005〜1.4mass%のSnと、を含有し、かつ0.01〜0.24mass%のNi、又は0.005〜0.12mass%のFeのいずれか1種以上を含有し、Coの含有量[Co]mass%とNiの含有量[Ni]mass%とFeの含有量[Fe]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.0≦([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.0090)≦5.9、及び0.012≦1.2×[Ni]+2×[Fe]≦[Co」の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程、を含む製造工程によって製造され、トータル冷間圧延率が70%以上であり、最終の析出熱処理工程後において、再結晶率が45%以下であって、再結晶部分の再結晶粒の平均結晶粒径が0.7〜7μmであり、金属組織中に円形、又は楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒径が2.0〜11nm、又は全ての析出物の90%以上が25nm以下の大きさの微細析出物であって該析出物が均一に分散しており、最終の析出熱処理後、又は最終の冷間圧延後の金属組織中に圧延方向に伸びた繊維状の金属組織において、EBSP解析結果においてIPF(Inverse Pole Figure)マップ及びGrain Boundaryマップから観察される長/短の比率の平均が2以上15以下である、焼鈍双晶を有さない微細結晶が存在し、前記微細結晶の平均粒径が0.3〜4μmであって観察面における該微細結晶の金属組織全体に対する面積の割合が0.1〜25%であり、又は、前記微細結晶と再結晶粒との両部を合わせた平均粒径が0.5〜6μmであって、観察面における該微細結晶と再結晶粒との両部の金属組織全体に対する面積の割合が0.5〜45%であることが望ましい。これにより、Ni及びFeによってCo、P等の析出物が微細となることと、Snの固溶と、微細結晶とによって、高強度高導電銅合金圧延板の強度及び導電率が向上する。
0.002〜0.2mass%のAl、0.002〜0.6mass%のZn、0.002〜0.6mass%のAg、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.1mass%のZrのいずれか1種以上をさらに含有することが望ましい。これにより、Al、Zn、Ag、Mg、Zrは銅材料のリサイクル過程で混入するSを無害化し、中間温度脆性を防止する。また、これらの元素は、合金をさらに強化するので、高強度高導電銅合金圧延板の延性及び強度が向上する。
導電率が45(%IACS)以上で、導電率をR(%IACS)、引張強度をS(N/mm)、伸びをL(%)としたとき、(R1/2×S×(100+L)/100)の値が4300以上であることが望ましい。これにより、強度と導電性が良好となり、強度と導電性のバランスに優れるので、圧延板を薄くし低コストにすることができる。
熱間圧延を含む製造工程で製造され、熱間圧延後の圧延材の平均結晶粒径が、6μm以上、50μm以下、又は、熱間圧延の圧延率をRE0(%)とし、熱間圧延後の結晶粒径をDμmとしたときに5.5×(100/RE0)≦D≦70×(60/RE0)であり、その結晶粒を圧延方向に沿った断面で観察したときに、該結晶粒の圧延方向の長さをL1、結晶粒の圧延方向に垂直な方向の長さをL2とすると、L1/L2の平均が1.02以上4.5以下であることが望ましい。これにより、延性、強度、導電率が良好となり、強度と延性と導電性のバランスに優れるので、圧延板を薄くし低コストにすることができる。
350℃での引張強度が300(N/mm)以上であることが望ましい。これにより、高温強度が高くなるので、高温で変形し難く、高温状態で使用することができる。
700℃で30秒加熱後のビッカース硬度(HV)が100以上、又は前記加熱前のビッカース硬度の値の80%以上、又は加熱後の金属組織において再結晶率が45%以下であることが望ましい。これにより、耐熱特性に優れたものになるので、素材から製品製造するときの工程を含め、高温状態に晒される環境で使用することができる。
高強度高導電銅合金圧延板の製造方法であって、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程と、回復熱処理工程と、を含み、熱間圧延開始温度が830〜960℃であり、熱間圧延の最終パス後の圧延材温度、又は圧延材の温度が650℃のときから350℃までの平均冷却速度が2℃/秒以上であり、冷間圧延の前後、又は冷間圧延の間に350〜540℃で2〜24時間の析出熱処理であって熱処理温度をT(℃)、保持時間をth(h)、該析出熱処理前の冷間圧延の圧延率をRE(%)としたときに、265≦(T−100×th−1/2−110×(1−RE/100)1/2)≦400の関係を満たす析出熱処理、又は最高到達温度が540〜770℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜5分の熱処理であって、最高到達温度をTmax(℃)とし、保持時間をtm(min)としたときに、340≦(Tmax−100×tm−1/2−100×(1−RE/100)1/2)≦515の関係を満たす析出熱処理が施され、最後の冷間圧延後に最高到達温度が200〜560℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.03〜300分の熱処理であって最後の析出熱処理後の冷間圧延の圧延率をRE2(%)としたときに、150≦(Tmax−60×tm−1/2−50×(1−RE2/100)1/2)≦320の関係を満たす回復熱処理が施されることが望ましい。これにより、製造条件によってCo及びPの析出物が微細に析出するので、高強度高導電銅合金圧延板の強度、導電率、延性及び耐熱性が向上する。
本発明の実施形態に係る高性能銅合金圧延板の製造工程のフロー図。 (a)は同高性能銅合金圧延板の再結晶部の金属組織写真、(b)は同高性能銅合金圧延板の微細結晶部の金属組織写真。 同高性能銅合金圧延板の析出物の金属組織写真。
本発明の実施形態に係る高強度高導電銅合金圧延板(以下、高性能銅合金圧延板と略す)について説明する。また、本明細書では、コイル状、或いはトラバース状に巻かれる所謂「条」も板の中に含める。本発明では、請求項1乃至請求項5に係る高性能銅合金圧延板における合金組成の合金(以下、それぞれを第1発明合金、第2発明合金、第3発明合金、第4発明合金、第5発明合金という)を提案する。合金組成を表すのに本明細書において、[Co]のように括弧付の元素記号は当該元素の含有量値(mass%)を示すものとする。また、この含有量値の表示方法を用いて、本明細書において複数の計算式を提示するが、それぞれの計算式において、当該元素を含有していない場合は0として計算する。また、第1乃至第5発明合金を総称して発明合金とよぶ。
第1発明合金は、0.14〜0.34mass%(好ましくは0.16〜0.33mass%、より好ましくは0.18〜0.33mass%、最適には0.18〜0.29mass%)のCoと、0.046〜0.098mass%(好ましくは0.051〜0.096mass%、より好ましくは0.054〜0.096mass%、最適には0.054〜0.0.092mass%)のPと、0.005〜1.4mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、
X1=([Co]−0.007)/([P]−0.009)
として、X1が3.0〜5.9、好ましくは、3.1〜5.2、より好ましくは3.2〜4.9、最適には3.4〜4.2の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成である。
第2発明合金は、0.16〜0.33mass%(好ましくは0.18〜0.33mass%、最適には0.18〜0.29mass%)のCoと、0.051〜0.096mass%(好ましくは0.054〜0.094mass%、最適には0.054〜0.0.092mass%)のPと、0.005〜0.045mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、
X1=([Co]−0.007)/([P]−0.009)
として、X1が3.2〜4.9(最適には3.4〜4.2)の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成である。
第3発明合金は、0.16〜0.33mass%(好ましくは0.18〜0.33mass%、最適には0.18〜0.29mass%)のCoと、0.051〜0.096mass%(好ましくは0.054〜0.094mass%、最適には0.054〜0.0.092mass%)のPと、0.32〜0.8mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、
X1=([Co]−0.007)/([P]−0.009)
として、X1が3.2〜4.9(最適には3.4〜4.2)の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成である。
第4発明合金は、Co、P、Snの組成範囲が第1発明合金と同一であり、かつ0.01〜0.24mass%(好ましくは0.015〜0.18mass%、より好ましくは0.02〜0.09mass%)のNi、又は0.005〜0.12mass%(好ましくは0.007〜0.06mass%、より好ましくは0.008〜0.045mass%)のFeのいずれか1種以上を含有し、Coの含有量[Co]mass%とNiの含有量[Ni]mass%とFeの含有量[Fe]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、
X2=([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.009)
として、X2が3.0〜5.9、好ましくは、3.1〜5.2、より好ましくは3.2〜4.9、最適には3.4〜4.2の関係を有し、かつ、
X3=1.2×[Ni]+2×[Fe]
として、X3が0.012〜[Co]、好ましくは、0.02〜(0.9×[Co])、より好ましくは0.03〜(0.7×[Co])の関係を有し、かつ、残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成である。
第5発明合金は、第1発明合金、乃至第4発明合金の組成に、0.002〜0.2mass%のAl、0.002〜0.6mass%のZn、0.002〜0.6mass%のAg、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.1mass%のZrのいずれか1種以上をさらに含有した合金組成である。
次に、高性能銅合金圧延板の製造工程について説明する。製造工程は、熱間圧延工程と冷間圧延工程と析出熱処理工程と回復熱処理工程を有している。熱間圧延工程では鋳塊を830〜960℃に加熱して熱間圧延を行ない、熱間圧延終了後の材料温度、又は熱間圧延材の温度が650℃のときから350℃までの冷却速度を2℃/秒以上にする。これらの熱間圧延条件により、Co、P等は、以下に述べる冷間圧延以降のプロセスを有効に使用できる固溶状態になる。冷却後の金属組織の平均結晶粒径は6〜50μmである。この平均結晶粒径は、最終の板材に影響を与えるので重要である。熱間圧延工程の後に冷間圧延工程と析出熱処理工程が行なわれる。析出熱処理工程は冷間圧延工程の前後や冷間圧延工程の間に行なわれ、複数回行なってもよい。析出熱処理工程は350〜540℃で2〜24時間の熱処理であって、熱処理温度をT(℃)、保持時間をth(h)、その析出熱処理工程の前の冷間圧延の圧延率をRE(%)としたときに、265≦(T−100×th−1/2−110×(1−RE/100)1/2)≦400の関係を満たす析出熱処理、又は540〜770℃で0.1〜5分の熱処理であって、保持時間をtm(min)としたときに、340≦(T−100×tm−1/2−100×(1−RE/100)1/2)≦515の関係を満たす析出熱処理である。この計算式での圧延率RE(%)は、計算の対象とする析出熱処理工程の前の冷間圧延の圧延率を用いる。熱間圧延−冷間圧延−析出熱処理−冷間圧延−析出熱処理と行なわれた場合の2回目の析出熱処理工程を対象とするときは、2回目の冷間圧延の圧延率を用いる。
本明細書では、熱間圧延後から最終の析出熱処理の間に行われる全ての冷間圧延を総合した圧延率をトータル冷間圧延率という。最終の析出熱処理以降の冷間圧延の圧延率は含めない。例えば、熱間圧延で板厚20mmまで圧延し、その後に冷間圧延で板厚10mmに圧延して析出熱処理を行ない、さらに冷間圧延で板厚1mmに圧延して析出熱処理を行ない、その後に冷間圧延で板厚0.5mmに圧延し、回復熱処理を行なった場合のトータル冷間圧延率は95%である。
回復熱処理は最後の冷間圧延後に最高到達温度が200〜560℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.03〜300分の熱処理であって最後の析出熱処理後の冷間圧延の圧延率をRE2(%)としたときに、150≦(Tmax−60×tm−1/2−50×(1−RE2/100)1/2)≦320の関係を満たす熱処理である。
高性能銅合金圧延板の製造工程の基本原理について説明する。高強度・高導電を得る手段として、時効・析出硬化、固溶硬化、結晶粒微細化を主体とする組織制御の方法がある。ところが、高導電性に関しては、マトリックスに添加元素が固溶されると一般に導電性が阻害され、元素によっては著しく導電性が阻害される。本発明に用いるCo、P、Feは、著しく導電性を阻害する元素である。例えば、純銅にCo、Fe、Pを0.02mass%単独添加しただけで、電気伝導性が約10%損なわれる。さらに、時効析出型合金においても、マトリックスに固溶残存させずに完全に添加元素を効率よく析出させることは不可能である。本発明では、添加元素Co、P等を所定の数式に従って添加すれば、固溶したCo、P等を後の析出熱処理において、強度、延性、他諸特性を満たしながらほとんどを析出させることができることが特長であり、このことにより高い高導電性を確保することができる。
一方、Cr−Zr銅以外の時効硬化性銅合金として有名なコルソン合金(Ni、Si添加)やチタン銅は、完全溶体化、時効処理をしても、本発明と比してNi、Si又は、Tiがマトリックスに多く残留し、その結果、強度が高いものの導電性が阻害される欠点がある。また、一般に完全溶体化、時効析出のプロセスで必要な高温での溶体化処理、例えば、代表的な溶体化温度の800〜950℃で数十秒、時には数秒以上加熱すると結晶粒は、約100μmに粗大化する。結晶粒粗大化は、様々な機械的性質に悪影響を与える。また、完全溶体化、時効析出のプロセスは製造に生産性や量的な制約を受け、大幅なコスト増に繋がる。一方、組織制御は結晶粒微細化が主として採用されているが、添加元素量が少ない場合はその効果も小さい。
本発明では、Co、P等の組成と、熱間圧延プロセスでCo、P等を固溶させることと、冷間圧延後の析出熱処理プロセスにおいて、Co、P等を微細析出させると同時に微細な再結晶粒又は微細結晶を生成させてマトリックスの延性を回復させることと、冷間圧延による加工硬化とを組み合わせる。これにより、高導電であって高強度と高延性を得ることができる。発明合金は、前記のように熱間加工プロセス時に添加元素を固溶させることができるだけでなく、Cr−Zr銅を始めとする時効硬化型の析出合金よりも溶体化感受性が低いことを利用する。従来の合金では、熱間圧延終了後に元素が固溶する高温、すなわち溶体化状態から急冷しないと十分に溶体化しないし、又は、熱間圧延に時間を要して熱間圧延中に材料の温度低下が起こると十分に溶体化しないが、発明合金は溶体化感受性が低いので、一般的な熱間圧延プロセスでの冷却速度でも十分に溶体化する事が特徴である。なお、本明細書においては、高温で固溶している原子が、熱間圧延中の温度低下があっても、熱間圧延に時間が掛かっても、また、熱間圧延後の冷却中の冷却速度が遅くても析出し難いことを「溶体化感受性が低い」といい、熱間圧延中に温度低下が起こると、又は、熱間圧延後の冷却速度が遅いと析出し易いことを「溶体化感受性が高い」という。
次に各元素の添加理由について説明する。Coの単独の添加では、高い強度・電気伝導性等は得られないが、P、Snとの共添加により熱・電気伝導性を損なわずに、高い強度、高い耐熱特性、高い延性が得られる。単独の添加では、強度が多少向上する程度であり顕著な効果はない。Coの量が発明合金の組成範囲の上限を超えると効果が飽和する。また、Coはレアメタルであるので、高コストになる。また、電気伝導性が損なわれる。Coの量が発明合金の組成範囲の下限より少ないと、Pと共添加しても高強度の効果が発揮できない。Coの下限は、0.14mass%であって、好ましくは、0.16mass%であり、より好ましくは、0.18mass%であり、さらには、0.20mass%である。上限は、0.34mass%であり、好ましくは、0.33mass%であり、さらに好ましくは、0.29mass%である。
PをCo、Snと共添加することにより熱・電気伝導性を損なわずに、高い強度、高い耐熱性が得られる。単独の添加では、湯流れ性と強度を向上させ、結晶粒を微細化させる。組成範囲の上限を超えると、上記の湯流れ性と強度と結晶粒微細化の効果が飽和する。また、熱・電気伝導性が損なわれる。また、鋳造時や、熱間圧延時に割れが生じ易くなる。また、延性、特に曲げ加工性が悪くなる。Pの量が組成範囲の下限より少ないと、高強度にならない。Pの上限は、0.098mass%であり、好ましくは0.096mass%であり、より好ましくは0.092mass%である。下限は、0.046mass%であり、好ましくは0.051mass%であり、より好ましくは0.054mass%である。
Co、Pを上記した組成範囲で共添加することにより強度、導電性、延性、応力緩和特性、耐熱性、高温強度、熱間変形抵抗、変形能が良くなる。Co、Pの組成が一方でも少ない場合、上記いずれの特性も顕著な効果を発揮しないばかりか導電性が頗る悪い。多い場合は同様に導電性が頗る悪く、各々の単独添加と同様の欠点が生じる。Co、Pの両元素は、本発明の課題を達成するための必須元素であり、適正なCo、P等の配合比率によって電気・熱伝導性や延性を損なわずに、強度、耐熱性、高温強度、応力緩和特性を向上させる。Co、Pが発明合金の組成範囲内で上限に近づくにつれてこれらの諸特性が向上する。基本的には、Co、Pが結合して強度に寄与する量の超微細な析出物を析出させる。Co、Pの共添加は、熱間圧延中の再結晶粒の成長を抑制し、熱間圧延の先端から後端にまで高温にも拘らず細かな結晶粒のままに維持させる。析出熱処理中においても、Co、Pとの共添加は、マトリックスの軟化・再結晶を大幅に遅らせる。但し、その効果も、発明合金の組成範囲を超えると、ほとんど特性の向上は認められなくなり、却って上述したような欠点が生じ始める。
Snの含有量は0.005〜1.4mass%が良いが、強度を多少落としても高い電気・熱伝導性を必要とする場合は、0.005〜0.19mass%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.095mass%であり、特に高い電気・熱伝導性を必要とするときは、0.005〜0.045mass%が良い。なお、他の元素の含有量にもよるが、Snの含有量を0.095mass%以下、0.045mass%以下にしておくと、導電率は、各々66%IACS以上又は70%IACS以上、72%IACS以上又は75%IACS以上の高電気伝導性が得られる。逆に、高強度とする場合は、CoとPの含有量との兼ね合いもあるが、0.26〜1.4mass%が好ましく、より好ましくは0.3〜0.95mass%であり、最も好ましい範囲は、0.32〜0.8mass%である。
Co、Pの添加だけでは、すなわちCoとPを主体とする析出硬化だけでは、静的・動的再結晶温度が低いので、マトリックスの耐熱性が不十分で、安定しない。Snは0.005mass%以上の少量で熱間圧延時の再結晶温度を高め、熱間圧延時に生じる結晶粒を細かくする。析出熱処理時においては、Snは、マトリックスの軟化温度や再結晶温度を高めることができるので、再結晶の開始温度を高くし、再結晶した場合は、再結晶粒を微細化させる。また、再結晶化の直前の段階で、転位密度の低い微細結晶を形成させる。これにより、すなわちSnの添加は、熱間圧延時の材料温度が低下しても、また熱間圧延に時間を要しても、Co、Pの析出を抑制する作用を持つ。これらの効果や作用により、析出熱処理時において高い圧延率の冷間圧延が施されていても、マトリックスの耐熱性が上がっているので再結晶の直前の段階で、Co、P等を多量に析出させることができる。
すなわち、Snは、熱間圧延段階においてはCo、P等の多くを固溶状態にさせ、その後の工程において特別な溶体化処理を必要とせず、冷間圧延と析出熱処理工程との組み合わせによってコスト、労力を多く掛けずにCo、P等を固溶状態にする。そして、析出熱処理時においては、再結晶前からCo、P等を多く析出させる役目を果たす。つまり、Snの添加は、Co、P等の溶体化感受性を低くし、特別な溶体化工程を必要とせずにCoとPを主体とする析出物をさらに微細に均一分散させる。また、70%以上のトータル冷間圧延率の冷間圧延が行なわれた場合、析出熱処理時に再結晶化が開始する前後で析出が最も活発に起こり、析出による硬化と軟化・再結晶化による延性の大幅な改善が同時にできるので、Snの添加によって、高い強度を維持しつつ、高い導電性、高い延性を確保することができる。
また、Snは、導電性、強度、耐熱性、延性(特に曲げ加工性)、応力緩和特性、耐摩耗性を向上させる。特に、高電流が流れる自動車や太陽電池等の端子・コネクタ等の接続金具やヒートシンクは、高度な導電性、強度、延性(特に曲げ加工性)、応力緩和特性が求められるので、本発明の高性能銅合金圧延板が最適である。また、ハイブリッドカー、電気自動車、コンピューター等に用いられるヒートシンク材は、高い信頼性を必要とするのでろう付けされるが、ろう付け後も高い強度を示す耐熱性が重要であり、本発明の高性能銅合金圧延板が最適である。さらに、発明合金は高い高温強度と耐熱性を有しているので、ヒートシンク材、ヒートスプレッダ材等としてPbフリーはんだ実装において、薄肉化してもそりや変形が無く、これらの部材に最適である。
一方、強度が必要な場合は、Snの0.26mass%以上の添加による固溶強化により、導電性を若干犠牲にしながら強度を向上させることができる。Snの0.32mass%以上の添加でその効果は一層発揮される。また、耐磨耗性は硬さや強度に依存するので、耐磨耗性にも効果がある。これらのことから、Snの下限は、0.005mass%、好ましくは0.008mass%以上であり、強度、マトリックスの耐熱特性、曲げ加工特性を得るために必要である。Snによる固溶強化よりも導電性を優先すれば、Snの添加は0.095mass%以下、又は0.045mass%以下で十分に効果は発揮される。Snが上限の1.4mass%を超えると、熱・電気伝導性が低下し、熱間変形抵抗が高くなり、熱間圧延時に割れが生じやすくなる。また、Snが1.4mass%を超えると却って再結晶温度が下がり、Co、P等の析出とのバランスが崩れ、Co、P等が析出せずにマトリックスが再結晶してしまう。この観点からも、1.3mass%以下がよく、好ましくは0.95mass%以下、最適には、0.8mass%以下である。なお、Snの添加が0.8mass%以下であれば導電率は、50%IACS以上になる。
Co、P、Fe、Niの含有量は、次の関係を満足しなければならない。Coの含有量[Co]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Feの含有量[Fe]mass%と、Pの含有量[P]mass%との間に、
X1=([Co]−0.007)/([P]−0.009)
として、X1が3.0〜5.9、好ましくは、3.1〜5.2、より好ましくは3.2〜4.9、最適には3.4〜4.2である。
また、Ni、Fe添加の場合には、
X2=([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.0090)
として、X2が3.0〜5.9、好ましくは、3.1〜5.2、より好ましくは3.2〜4.9、最適には3.4〜4.2である。X1、X2の値が上限を超えると、熱・電気伝導性、強度、耐熱性が低下し、結晶粒成長を抑制できず、熱間変形抵抗も増す。下限より小さいと、熱・電気伝導性の低下を招き、耐熱性、応力緩和特性が低下し、熱間・冷間での延性が損なわれる。また、高度な熱・電気導電性と強度との関係が得られず、さらには、延性とのバランスが悪くなる。また、X1、X2の値が上限及び下限の範囲外になると、目的とする析出物の化合形態やその大きさが得られないので、高強度・高導電材料が得られない。
本発明の課題である高い強度、高い電気・熱伝導性を得るには、CoとPの割合が非常に重要になる。組成、熱間圧延の加熱温度、熱間圧延後の冷却速度等の条件が揃えば、析出熱処理によりCoとPは、概ねCo:Pの質量濃度比が約4:1から約3.5:1になる微細な析出物を形成する。析出物は、例えばCoP、又はCo2.aP、Co等の化合式で表され、略球状、又は略楕円形で粒径が数nm程度の大きさである。具体的には、平面で表される析出物の平均粒径で定義すれば2.0〜11nm(好ましくは2.0〜8.8nm、より好ましくは2.4〜7.2nm、最適には、2.5〜6.0nm)であり、又は析出物の大きさの分布から見れば、析出物の90%、好ましくは95%以上が0.7〜25nm又は2.5〜25nmであり、それらが均一に析出することにより、金属組織との組み合わせで高強度を得ることができる。この「0.7〜25nm又は2.5〜25nm」の記述での0.7nm及び2.5nmは、超高圧電子顕微鏡(TEM)を用い、それぞれ75万倍及び15万倍で観察し、専用のソフトを使ったときの識別・寸法測定可能な限界サイズである。したがって、「0.7〜25nm又は2.5〜25nm」の範囲は「25nm以下」と同一の意味を示す(以下、同様)。
析出物は、均一微細に分布し、大きさも揃い、その粒径が細かいほど再結晶部の粒径、強度、高温強度、延性に影響を与える。なお、析出物には、鋳造段階で生じる晶出物は当然含まれない。なお、析出物の均一分散に関して敢えて定義するとすれば、15万倍のTEMで観察した時、後述する顕微鏡観察位置(極表層等特異な部分を除いて)の任意の500nm×500nm領域において、少なくとも90%以上の析出粒子の最隣接析出粒子間距離が、200nm以下好ましくは150nm以下、又は平均粒子径の25倍以内である、又は、後述する顕微鏡観察位置の任意の500nm×500nm領域において、析出粒子が少なくとも25個以上好ましくは50個以上存在すること、すなわち標準的な部位においてどのミクロ的な部分をとっても特性に影響を与える大きな無析出帯がないこと。すなわち、不均一析出帯がないと定義できる。なお、平均粒径が概ね7nm未満は、75万倍、概ね7nm以上は15万倍で測定する。測定限界以下は、平均粒径の算出に入れない。なお、上述したように15万倍での粒径の検出限界は、2.5nmとし、75万倍での粒径の検出限界は、0.7nmとした。
TEMでの観察は、冷間加工を施した最終の材料では転位が多く存在するため、最終の析出熱処理後の再結晶部、及び、又は微細結晶部で調査した。当然、最終の析出熱処理以降、析出物が成長するような熱が材料に加わっていないので、析出物の粒径はほとんど変わらない。なお、析出物は、再結晶粒の生成、成長に伴って、大きくなる。析出物の核生成、成長は、温度、時間に依存し、特に温度が上がるに従って成長の度合いが大きくなる。再結晶粒の生成、成長も温度に依存するものであるので、再結晶の生成と成長と析出物の生成と成長がタイミングよく行なわれるかが、強度、導電性、延性、応力緩和特性、耐熱性に大きな影響を与える。再結晶部の析出物の大きさも含め、平均粒径で11nmを超えると強度への寄与が少なくなる。一方、前工程の熱間圧延条件等とSnの少量の添加のもと、CoとPが化合することにより、強度に大きく寄与する微細な析出物が生成し、再結晶直前の状態にまで熱を加えられると、析出物は平均粒径で2.0nm以上になる。一方、過剰に熱が加えられ、再結晶部の占める割合が過半を超え、多数になると、析出物は大きくなり、平均粒径で、約12nm以上になり、粒径が25nm程度の析出物も多くなる。析出物が2.0nm未満の場合は、析出量が不十分な状態であり、導電性に劣り、また、2.0nmよりも小さいと、強度的にも飽和する。さらに、強度面から、析出物は、8.8nm以下が良く、より好ましくは7.2nm以下であり、最適には、導電性との関係から2.5〜6.0nmが良い。また、平均粒径が小さくても、粗大な析出物の占める割合が大きいと、強度に寄与しない。すなわち、25nmを超える大きな析出粒子はほとんど強度に寄与しないので、粒径が25nm以下の析出物の割合が、90%以上や95%以上であることが好ましい。さらには、析出物が均一分散していないと強度は低い。析出物に関し、平均粒径が小さいこと、粗大な析出物がないこと、均一に析出していることの3つの条件を満たすことが最も好ましい。
本発明において、CoとPが理想的な配合であっても、また、理想的な条件で析出熱処理しても、全てのCo、Pが析出物を形成することはない。本発明で工業的に実施できるCoとPの配合及び析出熱処理条件で析出熱処理すると、Coの概ね0.007mass%、Pの概ね0.009mass%は、析出物形成にあたらず、マトリックスに固溶状態で存在する。従って、Co、Pの質量濃度から各々0.007mass%及び0.009mass%を差引いて、Co、Pの質量比を決定する必要がある。すなわち、単に[Co]と[P]との比率を決定するのでは不十分であり、([Co]−0.007)/([P]−0.009)の値が3.0〜5.9(好ましくは、3.1〜5.2、より好ましくは3.2〜4.9、最適には3.4〜4.2)が必要不可欠な条件となる。([Co]−0.007)と([P]−0.009)が最適な比率であるならば、目的とする微細な析出物が形成され、高導電、高強度材になるための大きな条件が満たされる。なお、目的とする析出物は、前述の如く、CoP、又はCo2.aP、Co等の化合式で表される。一方、上述した比率の範囲から離れると、Co、Pのどちらかが析出物形成にあたらずに固溶状態になり、高強度材が得られないばかりか、導電性が悪くなる。また、化合比率の目的と異なった析出物形成され、析出粒子径が大きくなったり、強度に余り寄与しない析出物であったりするので、高導電、高強度材に成りえない。
このように微細な析出物が形成されるので、少量のCo、Pで十分高い強度の材料を得ることができる。そして前述のように、Snは析出物を直接形成するわけではないが、Snの添加により、熱間圧延時の再結晶化を遅らせ、すなわち再結晶温度を高めることにより、熱間圧延段階で十分な量のCo、Pを固溶させることができる。そして、後の工程の冷間圧延と析出熱処理との組み合わせで高強度・高導電の圧延板を得ることができる。また、高い加工度の冷間圧延がなされた場合、Snの添加はマトリックスの再結晶温度を高めるので、マトリックスの軟化、微細結晶の形成と一部再結晶化による延性の回復と同じ時期にCo、P等の微細析出物を多量に析出させることができる。当然、析出より再結晶が先行するとマトリックスの大部分が再結晶するので、強度が低くなる。逆にマトリックスが再結晶しないままに析出が先行すると、延性に大きな問題が生じる。又は、再結晶状態にまで熱処理条件を上げると、析出物の粗大化と析出物の数の減少のために析出硬化が発揮できない。
次にNiとFeについて説明する。本件の主題である高い強度、高い電気伝導性を得るには、Co、Ni、FeとPの割合が非常に重要になる。CoとPの場合は、概ねCo:Pの質量濃度比が約4:1又は約3.5:1になる微細な析出物が形成される。しかし、ある濃度条件でNi、Feは、Coの機能を代替するもので、Ni、Feが有る場合には析出処理により基本のCoP、又はCo2.aP、Cob.cPのCoの一部をNi又はFeに置き換えたCo、Ni、Fe、Pとの析出物、例えばCoNi、CoFe等の化合形態になる。その析出物は略球状、又は略楕円形で粒径が数nm程度であり、平面で表される析出物の平均粒径で定義すれば2.0〜11nm、(好ましくは2.0〜8.8nm、より好ましくは、2.4〜7.2nm、最も好ましくは、2.5〜6.0nm又は析出物の90%好ましくは95%以上が0.7〜25nm又は2.5〜25nm(上述したように25nm以下と同意)であり、それらが均一に析出することにより、金属組織との組み合わせで高い強度と高い導電性を得ることができる。
一方、銅に元素を添加すると電気伝導性が悪くなる。例えば、一般に純銅にCo、Fe、Pを0.02mass%単独添加しただけで、熱・電気伝導性が約10%損なわれる。しかし、Niは0.02mass%単独添加しても約1.5%しか低下しない。
上述した数式([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)において、[Ni]の0.85の係数と、[Fe]の0.75の係数は、CoとPとの結合の割合を1とした場合の、NiとFeがPと結合する割合を表したものである。なお、CoとP等の配合比が最適範囲からずれていくと、析出物の化合状態が変わり、析出物の微細化、均一分散が損なわれ、又は、析出に与らないCo又はP等がマトリックスに過分に固溶し、再結晶温度が低下する。これにより、析出とマトリックスの回復とのバランスが崩れ、本発明の課題の諸特性が具備できなくなるばかりでなく電気伝導性が悪くなる。なお、Co、P等が適正に配合され、微細な析出物が均一分布すれば、Snとの相乗効果により、曲げ加工性等の延性等においても著しい効果を発揮する。なお、上述したように、Coは概ね0.007mass%、Pは概ね0.009mass%は、析出物形成にあたらずマトリックスに固溶状態で存在するので、電気伝導率は、89%IACS以下であり、Sn等の添加元素を考慮すると、概ね約87%IACS程度又はそれ以下となり、又は、熱伝導率で表すと、355W/m・K程度、又はそれ以下となる。但し、これらの数値は、Pを0.025%含む純銅(りん脱酸銅)と同等、又は同等以上の高い水準の電気伝導性を示す数値である。
Fe、Niは、CoとPとの結合をより効果的に行なわせる働きを持つ。これらの元素の単独の添加は、電気伝導性を低下させ、耐熱性、強度等の諸特性向上に余り寄与しない。Niは、Co、Pとの共添加のもと、Coの代替機能を持つほか、固溶しても導電性の低下量が少ないので、([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.009)の値が3.0〜5.9の中心値からずれても、電気伝導性の低下を最小限に留める機能を持つ。また、析出に寄与しない場合においては、コネクタに要求される応力緩和特性を向上させる。またコネクタのSnめっき時のSnの拡散防止もする。しかし、Niを0.24mass%以上や数式(1.2×[Ni]+2×[Fe]≦[Co])を超えて過剰に含有すると、析出物の組成が変化し、強度向上に寄与しないばかりか、熱間変形抵抗が増大し、電気伝導性、耐熱性が低下する。なお、Niの上限は、0.24mass%であり、好ましくは0.18mass%であり、より好ましくは、0.09mass%である。下限は、0.01mass%であり、好ましくは0.015mass%であり、より好ましくは、0.02mass%である。
Feは、CoとPとの共添加のもと、微量の添加で、強度の向上、未再結晶組織の増大、再結晶部の微細化に繋がる。Co、Pとの析出物形成に関しては、NiよりFeの方が強い。ただし、Feを0.12mass%以上や数式(1.2×[Ni]+2×[Fe]≦[Co])を超えて過剰に添加すると、析出物の組成が変化し、強度向上に寄与しないばかりか、熱間変形抵抗が増大し、延性や電気伝導性、耐熱性も低下する。また、数式([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.009)において、計算値が4.9を超えた場合、Feの多くが固溶し、導電性を悪くする。以上から、Feの上限は、0.12mass%であり、好ましくは0.06mass%であり、より好ましくは、0.045mass%である。下限は、0.005mass%であり、好ましくは0.007mass%であり、より好ましくは、0.008mass%である。
Al、Zn、Ag、Mg、Zrは、電気伝導性をほとんど損なわずに中間温度脆性を低減させ、リサイクル過程で生じて混入するSを無害化し、延性、強度、耐熱性を向上させる。そのためには、Al、Zn、Ag及びMgは、それぞれ0.002mass%以上含有する必要があり、Zrは、0.001mass%以上含有する必要がある。Znは、さらにはんだ濡れ性、ろう付け性を改善する。一方で、Znは、製造された高性能銅合金圧延板が真空溶解炉等でろう付けを行なわれる場合や真空下で使用される場合や、高温下で使用する場合等は、少なくとも0.045mass%以下、好ましくは0.01mass%未満である。上限を超えると、上記した効果が飽和するばかりか、電気伝導が低下し始め、熱間変形抵抗が大きくなり、熱間変形能が悪くなる。なお導電性を重視する場合、Snの添加量は、好ましくは0.095mass%以下、最適には、0.045mass%以下にするとともに、AlとMgは、0.095mass%以下、さらには0.045mass%以下、ZnとZrは、0.045mass%以下、Agは、0.3mass%以下、さらには、0.095mass%以下にするのが好ましい。
次に製造工程について図1を参照して説明する。図1は、製造工程の例を示す。製造工程Aは、鋳造、熱間圧延、シャワー水冷を行ない、シャワー水冷の後に冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、回復熱処理を行なう。製造工程Bはシャワー水冷の後に析出熱処理、冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、回復熱処理を行なう。製造工程Cはシャワー水冷の後に冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、回復熱処理を行なう。製造工程Dは製造工程Cと同様にシャワー水冷の後に冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、析出熱処理、冷間圧延、回復熱処理を行なうが析出熱処理の方法が異なる。工程A、B、Cでは、中厚板、薄板を製造し、工程Dでは薄板を製造する。工程A、B、C、及びDにおいては、圧延板の要求される表面性状に応じて、面削工程や酸洗工程を適宜行なう。本明細書では最終製品の厚みが約1mm以上を中厚板とし、約1mm未満を薄板とするが、中厚板と薄板を区分する厳密な境界はない。
これらの製造工程A乃至Dは、主に薄板を製造するのでトータル冷間圧延率が高い工程である。冷間圧延すると材料は加工硬化し、強度は高くなるが延性に乏しくなる。一般には、焼鈍という手段で再結晶させてマトリックスを軟らかくし、延性を回復させる。ところが完全に再結晶させるとマトリックスの強度が大きく低下するだけでなく、析出粒子が大きくなって強度に寄与しなくなり、応力緩和特性が悪くなる。強度面から、析出粒子の大きさを、まず小さく保つことがポイントになる。完全に再結晶させた後、次の工程で冷間圧延しても、析出物が粗大化して、析出硬化が喪失しているので、高い強度は得られない。他方、加工硬化によって生じた加工歪を少なくし、高強度を得つつ、延性、冷間での曲げ加工性を如何に高めるかがポイントになる。発明合金の場合、マトリックスが再結晶し始める直前の状態か、少し再結晶させる析出熱処理条件で熱処理することにより、延性を高める。再結晶率が低いのでマトリックスの強度は高く、析出物が微細な状態であるので、高い強度が確保されている。発明合金は、再結晶直前の熱処理条件に加熱すると、転位密度の低い微細結晶が生成し、一般的な銅合金と異なり、延性が大幅に向上する。そのためには、トータル冷間圧延率が70%以上(好ましくは、80%以上、90%以上、より好ましくは94%以上)が必要である。マトリックスが再結晶直前又は45%以下、好ましくは20%以下、特に10%以下の再結晶化する温度条件で析出熱処理を行なうと、金属顕微鏡では、圧延組織の一種にしか見えないが、微細結晶が生成する。再結晶率が約10%の試料の金属組織をEBSP(Electron Back Scattering diffraction Pattern)で観察すると、主として圧延方向に伸びた元の結晶粒界を中心に、圧延方向に長く伸びた楕円形状であって平均結晶粒径0.3〜4μmの微細な粒が確認できる。EBSP解析結果においてIPF(Inverse Pole
Figure)マップ及びGrain Boundaryマップによると、この微細結晶は、ランダムな方位を持つ、転位密度の低い、歪の少ない結晶である。この微細結晶は、転位密度が低く、歪の少ない結晶であることから再結晶の範疇にあると考えるが、再結晶との大きな相違は、焼鈍双晶が観察されないことである。この微細結晶が、加工硬化した材料の延性を大きく改善し、応力緩和特性をほとんど損なわない。微細結晶が生成するためには、微細結晶の核生成サイトの関係から、トータル冷間圧延率70%以上の冷間圧延(加工)と、再結晶直前の状態、又は、再結晶率45%以下の状態にする熱処理条件が必要である。より粒径の小さな微細結晶が生成する条件は、トータル冷間圧延率が高いことと、再結晶率が低いことである。再結晶率が高くなると、微細結晶が再結晶粒に変化し、微細結晶の割合が少なくなる。冷間圧延率が例えば90%又は94%を超える場合、途中で、析出熱処理工程を入れ、微細結晶及び一部再結晶からなる金属組織にし、冷間圧延後、再度析出熱処理工程を入れるとよい。微細結晶を含む材料を冷間圧延し、再結晶率が45%以下、好ましくは20%以下の条件で、析出熱処理すると、微細結晶の生成がさらに促進される。このように微細結晶の生成は、トータル冷間圧延率に依存する。
微細結晶を顕微鏡で観察すると、エッチングのされ方は異なるが、熱処理前の冷間圧延組織と同様、圧延方向に延びた繊維状の金属組織に見える。ところが、EBSPでこれを観察すると、転位密度の低い、微細な結晶粒が確認できる。その微細化された結晶粒には、銅合金の再結晶現象で特有の双晶が見当たらない。微細結晶の分布、形状は、強加工された圧延方向に伸びた結晶間に、それらを分断するかのように圧延方向に沿って生成している。また、圧延集合組織の方位以外の結晶方位を持った粒が多く観察できる。微細結晶と再結晶粒の相違点を次に示す。一般的な再結晶粒は、銅合金特有の双晶が観察でき、正6角形や正8角形のように円形に近いので、結晶粒の長辺と短辺の比の平均が1に近く、少なくともその比が2未満である。一方、微細結晶は、双晶はなく、形状的に圧延方向に伸びたものであり、結晶粒の長辺と短辺の長さの比の平均が、2〜15であり、平均粒径も、再結晶粒より概ね小さい。この様に、双晶の有無と結晶粒の長短の比から、微細結晶と再結晶粒との区別が可能である。共通点は、再結晶粒も微細結晶も、熱を加えることによって生成するものであり、強い加工歪を受けた元の結晶粒界を中心に結晶の核が生成し、共に転位密度が低く、冷間加工による歪の多くが開放された結晶である。
微細結晶の大きさは、平均で0.3〜4μmで、最終の冷間圧延後も良好な延性を確保するためには、微細結晶の占める割合が、0.1%以上必要であり、上限は25%以下である。また、トータル冷間圧延率が高いほど、また再結晶率が低いほど、微細結晶の大きさは小さい。応力緩和特性、強度の点からすれば、微細結晶の大きさが限定範囲内で小さい方が良く、延性の点からはこの範囲内で大きい方が良い。従って好ましくは、0.5〜3μmであり、より好ましくは0.5〜2μmである。このように、再結晶直前又は、再結晶率が45%以下、さらには20%以下、特に10%以下の状態で、この微細結晶が出現するので、析出粒子が小さいままであり、強度、応力緩和特性が保たれながら延性が回復する。また、この微細結晶の生成と同時に析出物の析出が一層進むので導電性も良くなる。なお、再結晶率が高いほど、導電性、延性は良くなるが、上限の範囲を超えると、析出物が粗大化することとマトリックスの強度が低くなることによって、材料の強度が低くなり、応力緩和特性も低くなる。なお、微細結晶と再結晶粒の区別がつき難い場合、微細結晶と再結晶粒を併せて、評価してもよい。何故なら微細結晶は、熱によって新たに生成した転位密度の低い結晶で、再結晶粒の範疇に属するからである。すなわち微細結晶と再結晶粒を併せて、金属組織中にそれらの占める割合を0.5%以上、45%以下、好ましくは、3〜35%、より好ましくは、5〜20%とし、それら結晶粒の平均粒径は、0.5〜6μm、好ましくは、0.7〜5μmとしても良い。
次に、熱間圧延について説明する。例えば、熱間圧延に用いられる鋳塊は、厚みは100〜400mmで、幅300〜1500mm、長さが500〜10000mm程度である。鋳塊は、830〜960℃に加熱され、薄板又は中厚板用の冷間圧延材を得るために、一般に、厚み10mmから20mmまで熱間圧延が行なわれる。その熱間圧延が終了するまでには、100〜500秒程度時間が掛かる。熱間圧延中、圧延材の温度は低下していき、特に厚みが25mm又は18mm以下になると、厚みの影響と圧延材の長さが長くなって圧延に時間を要することから、圧延材の温度低下は著しくなる。温度の低下が少ない状態で熱間圧延される方が当然好ましいが、熱間圧延段階ではCo、P等の析出速度が遅いので、熱間圧延直後の温度、又は650℃から350℃までの平均冷却速度が2℃以上の条件により、工業上十分な溶体化ができる。熱間圧延後の板厚が薄い場合、最終の熱間圧延材の温度が低下し、圧延板の長さが長くなるので一様に冷却、溶体化させることは難しい。この状態でも発明合金は、冷却中、Co、P等の析出物が一部形成されるが、多くは均一に固溶した状態にある。すなわち、熱間圧延後に最初に冷却される部分と最後に冷却される部分との特性において、最終製品後の導電率、引張強さ等機械的性質において、大きな差のないことが特徴である。
鋳塊の加熱温度は、830℃未満の温度では、Co、P等が十分に固溶・溶体化しない。そして、発明合金は、高い耐熱性を持つので、熱間圧延時の圧延率との関係もあるが、完全に鋳物の組織が破壊されず、鋳物の組織が残留する畏れがある。一方、960℃を超えると溶体化は概ね飽和し、熱間圧延材の結晶粒の粗大化を引き起こし、材料特性に悪影響を与える。好ましくは、鋳塊加熱温度は、850〜950℃で、より好ましくは885〜930℃である。さらに圧延中の鋳塊(熱間圧延材)の温度低下を考慮に入れると、圧延速度を大きくとり、1パスの圧下量(圧延率)を大きくとり、具体的には5パス以降の平均圧延率を20%以上にして回数を減らすと良い。これは、再結晶粒を細かくし、結晶成長を抑制することができる。また、歪速度を上げると、再結晶粒が小さくなる。圧延率を高くし、歪速度を上げることにより、Co、Pはより低温まで、固溶状態を維持する。
発明合金は、熱間圧延プロセスの中で、約750℃に静的及び動的再結晶するかどうかの境界温度を有している。そのときの熱間圧延率、歪速度、組成等にもよるが、約750℃を超える温度では、静的・動的再結晶化により、大部分が再結晶化し、約750℃より低い温度になると再結晶率は低下し、670℃又は700℃ではほとんど再結晶しない。加工度を高くとるほど、また短時間で強歪を与えるほど、境界温度は低温側に移行する。境界温度の低下は、Co、P等をより低温側まで固溶状態にさせ、後の析出熱処理時の析出量を多くし、かつ微細なものにすることができる。したがって、熱間圧延終了温度は、670℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましく、720℃以上であることがさらに好ましい。なお、加熱温度や圧延条件にもよるが、熱間圧延組織は、熱間圧延材の厚みが20mm以下、又は15mm以下の場合、最終の圧延段階で温間圧延状態になる。熱間圧延材の金属組織が、本プロセスでは後の工程の析出熱処理等で、完全に再結晶組織にならないので、薄板になっても残留し、薄板の特性、特に延性や強度に影響を与える。、したがって、この熱間圧延段階での平均結晶粒径等の金属組織も重要である。平均結晶粒径が50μmを超えると、曲げ加工性や延性が悪くなり、6μm未満であると、溶体化の状態が不十分であり、析出熱処理時に、マトリックスの再結晶化を早める。平均結晶粒径は、6μm以上、50μm以下であり、7〜45μmが好ましく、8〜35μmがより好ましく、最適には10〜30μmである。又は、熱間圧延の圧延率をRE0(%)とし、熱間圧延後の結晶粒径をDμmとした時、5.5×(100/RE0)≦D≦75×(60/RE0)である。上限は、熱間圧延率が60%でほぼ完全に鋳塊組織が破壊され、再結晶組織になり、圧延率が増すに従って、その再結晶粒が小さくなるので、60/RE0を乗じている。下限側は逆に、圧延率が低いほど、再結晶粒が大きくなるので、100/RE0を乗じている。この数式でより好ましい平均結晶粒径は、7×(100/RE0)≦D≦60×(60/RE0)であり、最も好ましい範囲は、9×(100/RE0)≦D≦50×(60/RE0)と表すことができる。
そして、熱間圧延後の結晶粒を圧延方向に沿った断面で観察し、結晶粒の圧延方向の長さをL1、結晶粒の圧延方向の垂直の長さをL2としたとき、平均のL1/L2の値が、1.02≦L1/L2≦4.5を満足することが重要である。熱間圧延時の金属組織の影響が最終の板材においても残る。前記のように熱間圧延の後半には未再結晶粒の出現や、温間圧延状態になることがあり、結晶粒は圧延方向にやや延びた形状を呈する。温間圧延状態にある結晶粒は、転位密度が低いので十分な延性を有するが、トータル冷間圧延率70%以上の冷間圧延を行う発明合金の場合、熱間圧延段階ですでに結晶粒の長短比(L1/L2)が平均で4.5を超えていると、板の延性が乏しくなる。また、再結晶温度が下がり、マトリックスの再結晶が析出より先行するため、強度が低くなる。L1/L2の値の平均が3.9以下であることが好ましく、より好ましくは、2.9以下であり、最適には1.9以下である。一方、L1/L2の値の平均が1.02未満になることは、ある一部の結晶粒が成長して、混粒状態になることを示し、薄板の延性、又は強度が乏しくなる。より好ましくは、L1/L2の値の平均が、1.05以上である。
発明合金は、Co、P等を溶体化すなわちマトリックスに固溶させるために、熱間圧延時、鋳塊を少なくとも830℃以上、より好ましくは885℃以上の温度に加熱しなければならない。溶体化状態にある鋳塊が、熱間圧延中の温度の低下と同時に、熱間圧延に時間も掛かり、温度低下と圧延時間を鑑みれば、熱間圧延材は、もはや溶体化状態ではないと考えられるが、これらにも拘わらず、発明合金の熱間圧延材は工業上十分な溶体化状態にある。例えば、発明合金は約15mmの厚みまで熱間圧延されるが、その時の材料の温度は、溶体化温度又は、圧延開始温度より少なくとも100℃以上低い約700℃にまで低下し、圧延に要する時間も100〜500秒かかるが、発明合金の熱間圧延材は工業上十分な溶体化状態にある。そして最終熱間圧延材は、材料長さが10m〜50mになり、次いで冷却されるが、一般的なシャワー水冷では、一度に圧延材を冷却することができない。
このように、水冷開始の先端から水冷を終了する末端にかけて水冷時の温度差や時間差があっても、本発明合金は、最終の板においてほとんど特性差が生じない。このような溶体化感受性を低くさせている要因の1つが、Co、P等に加え、微量のSn含有であるが、後述する冷間加工、熱処理条件等の一連のプロセスにより、Co、P等の析出物を均一で微細に析出させ、微細粒の生成や微細な再結晶粒の生成により、発明合金は、均一で、優れた延性、強度、導電性を備えることができる。Cr-Zr銅を始め他の析出型銅合金は、最終の冷却の温度差や時間差は勿論のこと、熱間圧延材の温度が溶体化温度より100℃以上も低い状態になり、その間100秒以上掛かると、工業上十分な溶体化状態は得られない。すなわち析出硬化はほとんど期待できず、微細粒等の生成もないので、本発明合金とは区別される。
熱間圧延後の冷却においては、発明合金はCr−Zr銅等に比べ遥かに溶体化感受性が低いので、冷却中の析出を防ぐための、例えば、100℃/秒を超えた冷却速度を特に必要としない。しかし、当然、より多くのCo、P等を固溶状態にしておく方が良いので、熱間圧延後に数℃/秒以上の冷却速度で、冷却するのが良い。具体的には熱間圧延終了後の圧延材温度、又は圧延材温度が650℃から350℃の温度領域までの材料の平均冷却速度が2℃/秒以上、好ましくは3℃/秒以上、より好ましくは5℃/秒以上、最適には、10℃/秒以上で冷却されるのが良い。少しでも多くのCo、Pを固溶させ、析出熱処理で微細な析出粒子を多く析出させるとより高い強度が得られる。
そして、熱間圧延後、冷間圧延されるが、冷間圧延後に析出熱処理を行なうと、温度が上がるに従ってマトリックスが軟化し始めると同時に、5nm以下の微細な析出物が析出する。冷間圧延率が70%以上の圧延された板材の場合、析出熱処理条件の温度を上げ、再結晶粒が生成する直前の状態にすると、条件によっては微細結晶が生成し始め、析出物の析出量もかなり増える。再結晶粒が生成する直前まで高い強度を維持している。なぜなら、マトリックスは、軟化し始めているが、析出物が微細で、析出量も増え、析出硬化しているので、それらが相殺され、析出熱処理前後で概ね同等の強度を有しているからである。この段階ではCo、P等はまだマトリックスに固溶しているので、導電性は低い。再結晶粒が生成し始める析出熱処理条件にすると、さらに析出が促進されるので導電性は向上し、さらにマトリックスの延性も大幅に向上する。ところで、高い圧延率で冷間圧延が行なわれると、マトリックスの軟化現象は低温側にシフトし、再結晶が起こる。さらに拡散が容易になるので、析出も低温側に移行する。マトリックスの再結晶温度の低温側へのシフトの方が上回るので、優れた強度、導電性、延性のバランスをとるのが困難になる。発明合金においても、析出熱処理温度が後述する適正温度条件より低い場合、冷間加工による加工硬化により強度は確保されるが延性が悪く、また、析出が少ないために析出硬化分が少なく、導電性が悪い。析出熱処理温度が適正温度条件より高い場合、マトリックスの再結晶化が進むので延性に優れるが、冷間加工による加工硬化が享受できなくなる。また、析出が進むので最高の導電性が得られるが、再結晶化が進むにつれて析出粒子が急成長し、析出物による強度への寄与が低くなる。また、応力緩和特性が悪くなる。
析出熱処理の条件と析出状態、硬さ、金属組織との関係について述べると、適正な熱処理後の圧延材の状態は、すなわち具体的な析出熱処理後の状態は、マトリックスの軟化、微細結晶の生成、一部再結晶化による強度の低下とCo、P等の析出による硬化が相殺され、高い圧延率を施した冷間加工状態より強度的に少し低いレベルにする。例えば、ビッカース硬度で、数ポイントから50ポイント低い状態に留めるのが良い。マトリックスの状態は、具体的には、再結晶率45%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、強度を重視すれば再結晶直前の状態から再結晶率10%以下の金属組織状態にする。再結晶率が10%以下であっても、再結晶率が高いものに比べ析出がやや不十分なので導電性が少し劣るが、析出粒子が微細であるので析出硬化が寄与し、一方で再結晶直前の段階であるので良好な延性が得られ、さらに最終冷間加工を施しても延性が保持される。また、再結晶率が45%を超えるとさらに導電性、延性が向上するが、マトリックスの更なる軟化と析出物の粗大化により、高強度材は得られず、応力緩和特性も悪くなる。なお、導電性を重視する場合は、熱間圧延と冷間圧延の間に、析出熱処理を行ない、予め析出物を析出させておくと、冷間圧延後に行なう析出熱処理時の析出を促進し導電性を向上させる効果がある。
トータル冷間圧延率が90%以上や94%以上であるか、又は板厚が1mm、又は0.7mm以下の薄板の場合、冷間圧延によりかなりの加工歪を受けるので、2回以上の析出熱処理を施すことが好ましい。この場合、マトリックスに固溶するCo、P等を一度に析出させるのではなく、1回目の熱処理時でCo、Pの析出余力を残し、2回にわたって析出熱処理を施すと、導電性、強度、延性、応力緩和特性等トータル的な諸特性に優れたものにでき上がる。析出熱処理の時間が同じであれば、1回目の析出熱処理温度は、2回目の析出熱処理温度より高い方が良い。何故なら、未再結晶状態で2回目の圧延が行なわれるので、微細結晶や再結晶粒の核生成サイトが多くなること、そして、1回目の析出熱処理により析出余力が少なくなっているからである。一方、発明合金は、析出物が微細であるため、他の銅合金に比べ冷間圧延による導電性の低下が大きい。最終冷間圧延後に回復熱処理を施すことにより原子レベルの移動が起きるので、圧延前の導電性を確保でき、応力緩和特性、ばね特性、延性が向上する。
析出熱処理は、バッチ方式で行なわれる長時間析出熱処理、又は所謂APライン(連続焼鈍洗浄ライン)で行なわれる短時間析出熱処理とで行なわれる。バッチ方式で行なわれる長時間析出熱処理の場合、熱処理時間が短ければ当然温度を高くし、冷間加工度が高ければ析出サイトが増えるので、熱処理温度を低くするか、又は保持時間を短くする。長時間熱処理の条件は、350〜540℃で2〜24h、好ましくは370〜520℃で2〜24hであって、熱処理温度をT(℃)、保持時間をth(h)、冷間圧延の圧延率をRE(%)とし、
熱処理指数It1=(T−100×th−1/2−110×(1−RE/100)1/2
とすると、265≦It1≦400、好ましくは、295≦It1≦395、最適には315≦It1≦385の関係を満たすことである。熱処理時間が長くなる温度条件は低温側に移行するが、温度への影響は、概ね時間の平方根の逆数で与えられる。また、圧延率が増すに連れて析出サイトが増え、かつ原子の移動が増して析出し易くなるので、熱処理温度は低温側へ移行する。温度への影響は、概ね圧延率の平方根が与えられる。なお、最初に例えば、500℃、2時間の熱処理を行ない、その後炉冷して480℃、2時間等の熱処理を行なう2段階の熱処理は、特に導電性向上に効果がある。薄板製造工程の中間プロセスで用いられる長時間析出熱処理や、複数回析出熱処理する場合の最初の析出熱処理は、最適には320≦It1≦400であり、複数回析出熱処理する場合の最終の析出熱処理は、最適には275≦It1≦375である。このように2回目以降に行う析出熱処理条件は、最初の析出熱処理条件よりIt1の値が少し低い。なぜなら、最初又は前の析出熱処理で、Co、P等が既にある程度析出しており、また、マトリックスの一部は、再結晶している、又は微細結晶が生成しているので、2回目以降の析出熱処理では、析出、再結晶又は微細結晶の生成が低い熱処理条件で起こるからである。但し、2回目以降の析出熱処理条件は、前の析出熱処理時の、Co、P等の析出状態や再結晶率に依存する。なお、これら析出熱処理条件は、熱間圧延の溶体化状態、Co、P等の固溶状態にも関係しており、例えば熱間圧延の冷却速度が速いほど、また熱間圧延の開始又は終了温度が高いほど、前記不等式において、最適条件は、上限側に移行する。
一方、短時間析出処理は、エネルギ的にも生産性の観点からも短時間であるので有利であり、長時間析出熱処理と同等の効果がえられ、特に薄板の中間プロセスで有効である。短時間熱処理の条件は、最高到達温度が540〜770℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜5分であり、好ましくは、最高到達温度が560〜720℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜2分であって、最高到達温度をTmax(℃)、保持時間をtm(min)、冷間圧延の圧延率をRE(%)とし、
熱処理指数It2=(Tmax−100×tm−1/2−100×(1−RE/100)1/2
とすると、340≦It2≦515、好ましくは、360≦It2≦500の関係を満たすことである。当然であるが析出熱処理条件の上限を超えるとマトリックスの再結晶率が上がり、最終の板材の強度が低くなる。重要なことは、温度が高く時間が長いほど、析出粒子は成長して強度に寄与しなくなるばかりでなく、一旦、大きくなると基本的には小さくならないことである。また、析出熱処理条件の下限以下では、マトリックスが軟らかくならないので延性が問題となり、析出が進行しないので析出熱処理の効果はない。
一般的な析出硬化型銅合金では、溶体化状態にある時に短時間であっても700℃に加熱すると、析出物は粗大化する、又は、析出に時間が掛かり目的とするサイズや量の析出物が得られない、或いは一旦生成した析出物が再度消滅し、固溶することから、最終的に高強度で高導電材を得ることはできない。後の工程で特別な溶体化処理をしない限り、この700℃の加熱が中間の析出熱処理であっても、析出物は一旦粗大化してしまうと、析出物は小さくならない。一般の析出型合金の最適な析出条件は、数時間、数十時間かけて行われるものであるが、高温で約1分の程度の短時間で析出熱処理を行なえることは、発明合金の大きな特徴である。
また、本合金は、析出と同時にマトリックスの延性が回復し、未再結晶状態であっても、必須の用途である曲げ加工性を顕著に向上させることができる。当然に幾らか再結晶させると、さらに延性は向上する。すなわち、この性質を利用して次の2つのタイプに作り分けることができる。
1.高強度を最優先とし、導電性、延性を良程度に留める。
2.強度を多少犠牲にし、導電性と延性により優れた材料を提供する。
1のタイプの製造方法は、析出熱処理温度をやや低めに設定し、途中及び最終の析出処理熱処理での再結晶率を25%以下、好ましくは10%以下にする。そして、微細結晶がより多く存在するようにしておく。マトリックスの状態は、再結晶率が低いが、延性を確保できる状態にする。この析出熱処理条件ではCo、P等が析出しきっていないために、導電率は僅かに低い状態にある。このときの再結晶部の平均結晶粒径は、0.7〜7μmが良く、再結晶率が低いので好ましくは0.8〜5.5μmが良い。微細結晶の占める割合は、0.1%から25%が良く、好ましくは、1%から20%で、その平均粒径は、0.3〜4μmが良く、好ましくは0.3〜3μmが良い。なお、EBSPにおいても、再結晶粒と微細結晶が区別し難い場合がある。この場合、再結晶粒と微細結晶とを合わせた金属組織中に占める割合は0.5〜45%が良く、好ましくは1〜25%が良い。再結晶粒と微細結晶とを合わせた平均粒径は、0.5〜6μmが良く、好ましくは0.6〜5μmが良い。
2のタイプの製造方法は、微細な再結晶粒が形成される条件で析出熱処理を行なう。従って、再結晶率は、3〜45%が良く、好ましくは5〜35%が良い。このときの再結晶部の平均結晶粒径は0.7〜7μmが良く、好ましくは0.8〜6μmが良い。微細結晶の占める割合は、再結晶率が高いので、必然的に上記の1のタイプに比べて低く、0.1〜10%が良く、平均粒径も1のタイプに比べて大きくなり0.5〜4.5μmが良い。再結晶粒と微細結晶とを合わせた金属組織中に占める割合は3〜45%が良く、好ましくは10〜35%が良い。再結晶粒と微細結晶とを合わせた平均粒径は、0.5〜6μmが良く、好ましくは0.8〜5.5μmが良い。マトリックスは、再結晶粒と微細結晶と未再結晶とで構成されており、再結晶化が進んでいるのでさらに析出が進み、析出粒径が大きくなっている。上記の1のタイプに比べて強度や応力緩和特性は少し低下するが、延性はさらに向上し、Co、P等の析出がほとんど終了するので、導電率も向上する。
具体的な好ましい熱処理条件は、1のタイプには、長時間熱処理の場合、350〜510℃で2〜24時間であって、280≦It1≦375であり、短時間熱処理の場合、最高到達温度が540〜770℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜5分であって、350≦It2≦480である。
2のタイプには、長時間熱処理の場合、380〜540℃で2〜24時間であって、320≦It1≦400であり、短時間熱処理の場合、最高到達温度が540〜770℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜5分であって、380≦It2≦500である。
析出熱処理をした場合、再結晶化、又は銅合金の再結晶時の特徴である双晶の形成とともに再結晶部にある析出粒子は大きくなる。析出粒子が大きくなるにつれ、析出による強化が少なくなり、すなわち強度に余り寄与しなくなる。一旦、析出物が析出すると、その粒の大きさは、溶体化処理−析出熱処理する以外に、基本的には小さくならない。再結晶率を規定することにより、析出物の大きさを制御することができる。析出粒子が大きくなると、応力緩和特性も悪くなる。
これらの結果、得られる析出物は平面状で略円形又は略楕円形状であり、平均粒径で2.0〜11nm(好ましくは2.0〜8.8nm、より好ましくは2.4〜7.2nm、最適には2.5〜6.0nm)、又は析出物の90%以上、さらに好ましくは95%以上が0.7〜25nm又は2.5〜25nmの微細析出物が均一分散していることを特徴とする。この「0.7〜25nm又は2.5〜25nm」の記述での0.7nm及び2.5nmは、上述したように電子顕微鏡での測定下限なので、「0.7〜25nm又は2.5〜25nm」の範囲は「25nm以下」と同一の意味を示す。
この高性能銅合金圧延板の製造工程内での析出熱処理後の金属組織は、マトリックスを完全な再結晶組織とせず、再結晶率が0〜45%(好ましくは0.5〜35%、さらに好ましくは3〜25%)であることが望ましい。冷間圧延を挟んで前後に2つ以上の析出熱処理がある場合、初めの析出熱処理時の再結晶率は後の析出熱処理時の再結晶率と比べて、同等か、又は高いほうが好ましい。例えば、2回の析出熱処理がある場合、初めの再結晶率が0〜45%(好ましくは5〜40%)、後の再結晶率が、0〜35%(好ましくは3〜25%)である。
従来の銅合金は、高い圧延率、例えば50%を超えると冷間圧延により加工硬化し延性が乏しくなる。そして、焼鈍することによって金属組織を完全な再結晶組織にすると軟らかくなり、延性は回復する。しかし、焼鈍において未再結晶粒が残留すると、延性の回復は不十分であり、未再結晶組織の割合が50%以上になると特に不十分になる。ところが発明合金の場合、このような未再結晶組織の割合が55%以上残留しても、また、未再結晶組織が55%以上残るような状態で冷間圧延と焼鈍を繰り返し実施しても、良好な延性を備えるのが特徴である。
最終の板厚が薄い板の場合、仕上げの冷間圧延の後に最終に回復熱処理を施すことが基本的に必要である。但し、回復熱処理は、最終に析出熱処理をする場合、最終の冷間圧延率が10%以下で低い場合、又は、ろう付けや、はんだめっき等により、圧延材及びその加工材に再度熱を加える場合、最終の板材にはんだやろう付け等さらに熱を加える場合、及び板材を製品形状にプレスで打ち抜いてから回復処理を行う場合等は、必ずしも必要ではない。また、製品によっては、ろう付け等の熱処理後も回復熱処理を施すこともある。回復熱処理の意義は以下の通りである。
1.材料の曲げ加工性・延性を高める。冷間圧延で生じた歪をミクロ的に減少させ、伸びを向上させる。曲げ試験で生じる局部変形に対して、クラックが発生し難い効果を持つ。
2.弾性限を高め、また縦弾性係数を高めるので、コネクタに必要なばね性を向上させる。
3.自動車用途等で、100℃に近い使用環境において、応力緩和特性を良くする。この応力緩和特性が悪いと、使用中に永久変形し、所定の応力が生じない。
4.導電性を向上させる。最終圧延前の析出熱処理において、微細な析出物が多くある場合、再結晶組織材を冷間圧延した場合より、導電性の低下が著しい。最終圧延によって、ミクロ的な空孔の増大や、Co、P等の微細析出物近傍の原子の乱れ等により導電性が低下しているが、この回復熱処理により、前工程の析出熱処理に近い状態にまで戻る原子レベルでの変化が生じ、導電性が向上する。なお、再結晶状態のものを圧延率40%で冷間圧延すると導電率の低下は、1〜2%に過ぎないが、再結晶率が10%以下の発明合金では、導電率が約4%低下する。回復熱処理によって約3%の導電率が回復するが、この導電率の向上は、高導電材にとって顕著な効果である。
5.冷間圧延によって生じた残留応力を開放する。
回復熱処理の条件は、最高到達温度Tmax(℃)が200〜560℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間tm(min)が0.03〜300分であって、最後の析出熱処理後の冷間圧延の圧延率をRE2(%)とし、
熱処理指数It3=(Tmax−60×tm−1/2−50×(1−RE2/100)1/2
とすると、150≦It3≦320、好ましくは170≦It3≦295の関係式を満たさなければならない。この回復熱処理では析出はほとんど起こらない。原子レベルの移動により、応力緩和特性、導電性、ばね特性、延性が向上する。上述した不等式の析出熱処理条件の上限を超えるとマトリックスが軟化し、場合によっては再結晶化し始め、強度が低くなる。前述のように再結晶直前、又は再結晶化が始まると、析出粒子は成長し、強度に寄与しなくなる。下限を下回ると、原子レベルでの移動が少ないので、応力緩和特性、導電性、ばね特性、延性が向上しない。
これらの一連の熱間圧延プロセスで得られた高性能銅合金圧延板は、導電性と強度に優れ、導電率が45%IACS以上で、導電率をR(%IACS)、引張強度をS(N/mm)、伸びをL(%)、としたとき、(R1/2×S×(100+L)/100)の値(以下、性能指数Isという)が4300以上であり、4600以上にもなる。なお、Sn添加量が0.095%以下の場合は66%IACS以上、0.045%以下の場合は、72%IACS以上の高導電板を得ることができる。また、同時に曲げ加工性と応力緩和特性に優れる。さらにはその特性において、同一の鋳塊より製造された圧延板内での特性のバラツキが小さい。熱処理後の材料、又は最終の板の引張強度において、同一の鋳塊より製造された圧延板内での(最小の引張強度/最大の引張強度)の比が0.9以上であり、0.95以上にもなる。導電率においても、同一の鋳塊より製造された圧延板内での(最小の導電率/最大の導電率)の比が、0.9以上であり、0.95以上にもなる。このように同一の鋳塊より製造された圧延板内で均一な機械的性質と導電性を有する。
また、本発明に係る高性能銅合金圧延板は耐熱性に優れるので、350℃での引張強度が300(N/mm)以上である。また、700℃で30秒加熱後のビッカース硬度(HV)が100以上、又は加熱前のビッカース硬度の値の80%以上、又は加熱後の金属組織において再結晶率が45%以下である。
まとめると、本発明の高性能銅合金圧延板は、組成とプロセスとの組み合わせによって達成されるものである。まず、熱間圧延プロセスの中で、Co、P等が、目的とする溶体化(固溶)状態にあり、金属組織は、最終の熱間圧延温度の低下により圧延方向に流れているものの、歪の少ない結晶粒で構成される。次に冷間圧延と析出熱処理の最適な組み合わせにより、加工硬化したマトリックスが微細結晶の生成と部分的な再結晶化によって延性が回復し、同時に溶体化状態にあったCo、P等が微細に析出し、最後に、仕上げ冷間圧延と回復熱処理を行なうことによって、高い強度、高い導電性、良好な曲げ加工性、応力緩和特性が得られる。好適な圧延と析出熱処理の組み合わせは、最終厚みが1〜4mmで厚い場合は、トータル冷間加工度が70%〜90%程度なので、1回の析出熱処理工程によって再結晶生成の直前の状態から再結晶率45%の状態になるよう析出熱処理すれば、最終的に強度、導電性、延性、応力緩和特性のバランスがとれた材料になる。高導電性を得る場合、再結晶率を高くとるか、又は熱間圧延後に析出熱処理工程を入れると良い。最終厚みが約1mm以下、さらには0.7mm以下の厚みの場合は、2回の析出熱処理を実施し、最初の析出熱処理において、析出余力を残しながらも、導電性の向上、延性の回復を主眼に置いた金属組織状態にする。そして、2回目の析出熱処理において、未析出状態のCo、Pの析出と、トータル冷間圧延率が高くなることにより、容易に微細結晶が形成され、一部再結晶化により、マトリックスの強度低下を最小限に留めながら、良好な延性が得られる。そして仕上げ圧延による加工硬化と最終回復熱処理により、良好な曲げ加工性を維持し、高い強度、高い導電性、良好な応力緩和特性を備えた銅合金材になる。
上述した第1発明合金乃至第5発明合金及び比較用の組成の銅合金を用いて高性能銅合金圧延板を作成した。表1は、高性能銅合金圧延板を作成した合金の組成を示す。

Figure 0004851626

合金は、第1発明合金の合金No.11と、第2発明合金の合金No.21、22と、第3発明合金の合金No.31と、第4発明合金の合金No.41〜43と、第5発明合金の合金No.51〜57と、比較用合金として発明合金に近似した組成の合金No.61〜68と、従来のCr−Zr銅の合金No.70とし、任意の合金から複数の工程によって高性能銅合金圧延板を作成した。
表2、3は、製造工程の条件を示す。表2の工程に続いて表3の工程が行なわれた。

Figure 0004851626
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製造工程は、工程A、B、C、Dにおいて本発明の製造条件の範囲内と範囲外に変化させて行なった。各表において、変化させた条件毎にA1、A11のように工程の記号の後に番号を付けた。このとき、本発明の製造条件の範囲を外れる条件には番号の後にA13Hのように記号Hを付けた。
工程Aは、内容積10トンの中周波溶解炉で原料を溶解し、半連続鋳造で断面が厚み190mm、幅630mmの鋳塊を製造した。鋳塊は、長さ1.5mに切断し、その後、熱間圧延―シャワー水冷―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―回復熱処理を行なった。工程A1は最終板厚を0.4mmとし、他の工程は最終板厚を2.0mmとした。熱間圧延開始温度は905℃とし、厚み13mm又は18mmまで熱間圧延した後、シャワー水冷した。本明細書では、熱間圧延開始温度と鋳塊加熱温度とは同一の意味としている。熱間圧延後の平均冷却速度は、最終の熱間圧延後の圧延材温度、又は、圧延材の温度が650℃のときから350℃までの冷却速度とし、圧延板の後端において測定した。測定した平均冷却速度は3〜20℃/秒であった。
シャワー水冷は次のように行った(工程B乃至Dも同様)。シャワー設備は、熱間圧延時に圧延材を送る搬送ローラ上であって熱間圧延のローラから離れた個所に設けられている。圧延材は、熱間圧延の最終パスが終了すると、搬送ローラによってシャワー設備に送られ、シャワーが行われている個所を通過しながら先端から後端にかけて順に冷却される。そして、冷却速度の測定は次のように行った。圧延材の温度の測定個所は、熱間圧延の最終パスにおける圧延材の後端の部分(正確には圧延材の長手方向において、圧延先端から圧延材長さの90%の位置)とし、最終パスが終了しシャワー設備に送られる直前と、シャワー水冷が終了した時点で温度を測定し、このときの測定温度と測定を行った時間間隔に基づいて冷却速度を算出した。温度測定は放射温度計によって行った。放射温度計は高千穂精機株式会社の赤外線温度計 Fluke−574を用いた。このために、圧延材後端がシャワー設備に到達し、シャワー水が圧延材にかかるまでは空冷の状態となり、そのときの冷却速度は遅くなる。また、最終板厚が薄いほどシャワー設備に到達するまでの時間がかかるので、冷却速度は遅くなる。後述する諸特性を調査した試験片は前記熱間圧延材の後端部分でありシャワー水冷の後端部分に相当する部位から採取した。
工程A13Hは、熱間圧延後に900℃で30分の加熱を行ない水冷した。熱間圧延後の冷間圧延は、工程A1は0.7mmに、他の工程は3.2mmに圧延した。冷間圧延の後に、340〜510℃で6時間の析出熱処理を行なった。析出熱処理の後に、冷間圧延を行ない、工程A1は0.4mmに、他の工程は2.0mmに圧延した。その後に工程A1、A12は高温短時間の回復熱処理を行ない、他の工程は300℃で60分の回復熱処理を行なった。工程Aにおいて、工程A14H、A15Hは、析出熱処理の熱処理指数It1が本発明の製造条件から外れている。工程A18Hは、熱間圧延開始温度が製造条件から外れている。
工程Bは、工程Aと同様にして鋳造、切断し、その後、熱間圧延―シャワー水冷―析出熱処理―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―回復熱処理を行なった。工程B1は最終板厚を0.4mmとし、工程B11は最終板厚を2.0mmとした。熱間圧延開始温度は905℃とし、厚み13mmまで熱間圧延した後、3℃/秒でシャワー水冷した。水冷した後に450℃、8時間の析出熱処理を行ない、その後に0.7mm及び3.2mmに冷間圧延した。冷間圧延の後に、410℃、又は430℃で6時間の析出熱処理を行ない、その後に0.4mm又は2mmに冷間圧延し、460℃、0.2分、又は300℃、60分の回復熱処理を行った。
工程Cは、工程Aと同様にして鋳造、切断し、その後、熱間圧延―シャワー水冷―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―回復熱処理を行なった。最終板厚を0.4mmとした。熱間圧延の開始温度は810〜965℃の条件で行なった。シャワー水冷の冷却速度は1.5〜10℃/秒とした。最初の析出熱処理は440〜520℃で5〜6時間とした。2回目の析出熱処理は380〜505℃で2〜8時間とした。回復熱処理は、460℃、0.2分と、300℃、60分と、回復熱処理無しの3条件とした。工程C7H、C8Hは、熱間圧延開始温度が本発明の製造条件から外れている。工程C9Hは、最初の析出熱処理の熱処理指数It1が本発明の製造条件から外れている。工程C10Hは、熱間圧延後の冷却速度が本発明の製造条件から外れている。工程C11H、C13Hは、2回目の析出熱処理の熱処理指数It1が本発明の製造条件から外れている。工程C12Hは、回復熱処理を行っていないことが本発明の製造条件から外れている。
工程Dは、工程Aと同様にして鋳造、切断し、その後、工程Cと同様に熱間圧延―シャワー水冷―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―析出熱処理―冷間圧延―回復熱処理を行なったが、析出熱処理の一部又は全部を短時間熱処理で行った。最終板厚は0.4mmとした。熱間圧延の開始温度は905℃の条件で行なった。シャワー水冷の冷却速度は3℃/秒と10℃/秒とした。最初の析出熱処理は585〜700℃で0.2〜2.2分の短時間熱処理とした。2回目の析出熱処理は410℃で6時間の長時間熱処理と580℃で0.25〜1.5分の高温短時間熱処理とした。回復熱処理は、460℃、0.2分と、300℃、60分とした。工程D6Hは、2回目の析出熱処理の熱処理指数It2が本発明の製造条件から外れている。
また、ラボテストとして工程LC1、LC6、LD3を次のように行なった。製造工程C1等の鋳塊から厚み40mm、幅80mm、長さ190mmのラボ試験用鋳塊を切り出した。その後、工程LC1は工程C1に、工程LC6は工程C6に、工程LD3は工程D3に準じた条件で試験設備によって行なった。ラボテストにおいて、APライン等の短時間析出熱処理や回復熱処理に相当する工程は、ソルトバスに圧延材を浸漬することにより代用とし、最高到達温度をソルトバスの液温度とし、浸漬時間を保持時間とし、浸漬後空冷した。なお、ソルト(溶液)は、BaCl、KCl、NaClの混合物を使用した。
上述した方法により作成した高性能銅合金圧延板の評価として、引張強度、ビッカース硬度、伸び、曲げ試験、応力緩和特性、導電率、耐熱性、350℃高温引張強度、を測定し、また、金属組織を観察して再結晶部の再結晶率と平均粒径とを測定し、また、微細結晶部の微細結晶率と平均粒径とを測定した。ここで、微細結晶率とは金属組織に占める微細結晶部の面積率をいう。また、析出物の平均粒径と、全ての大きさの析出物の中で粒径が所定の値以下の析出物の個数の割合を測定した。さらに、熱間圧延材においては、結晶粒の圧延方向の長さL1、結晶粒の圧延方向に垂直な方向の長さL2を測定し、最終の析出熱処理材において、微細粒の長辺と短辺の測定も行った。
引張強度の測定は、次のように行なった。試験片の形状は、JIS Z 2201に規定される、5号試験片で実施した。
曲げ試験(W曲げ、180度曲げ)は、次のように行なった。厚みが2mm以上の場合は、180度曲げをした。曲げ半径は、材料の厚さの1倍(1t)とした。厚みが0.4、0.5mmのものについては、JISで規定されているW曲げで評価した。R部のRは、材料の厚さとした。サンプルは、いわゆるBad Wayと言われる方向で圧延方向に対して垂直に行った。曲げ加工性の判定は、クラックなしを評価Aとし、クラックが開口又は破壊には至らない小さなクラックが発生したものを評価B、クラックが開口又は破壊したものを評価Cとした。
応力緩和試験は、次のように行なった。供試材の応力緩和試験には片持ち梁ねじ式治具を使用した。試験片の形状は、板厚t×幅10mm×長さ60mmとした。供試材への負荷応力は0.2%耐力の80%とし、150℃の雰囲気中に1000時間暴露した。応力緩和率は、
応力緩和率=(開放後の変位/応力負荷時の変位)×100(%)
として求めた。応力緩和率が25%以下を評価A(優れる)とし、25%超え35%以下を評価B(可)とし、35%を超えるものを評価C(不可)とした。
導電率の測定は、日本フェルスター株式会社製の導電率測定装置(SIGMATEST D2.068)を用いた。なお、本明細書においては、「電気伝導」と「導電」の言葉を同一の意味に使用している。また、熱伝導性と電気伝導性は強い相関があるので、導電率が高い程、熱伝導性が良いことを示す。
耐熱特性は、板厚×20mm×20mmの大きさに切断し、700℃の塩浴(NaClとCaClを約3:2に混合したもの)に30秒浸漬し、冷却後にビッカース硬度、及び導電率を測定した。700℃で30秒保持の条件は、例えば、ろう材BAg−7を使用したとき、人の手によるろう付けの条件と概ね一致している。
350℃高温引張強度の測定は、次のように行なった。350℃で30分保持後、高温引張試験をした。標点距離は50mmとし、試験部は外径10mmに旋盤で加工した。
再結晶粒の平均粒径と再結晶率の測定は、500倍、200倍及び100倍の金属顕微鏡写真で結晶粒の大きさに応じ、適宜倍率を選定し、JIS H 0501における伸銅品結晶粒度試験方法の比較法に準じて測定した。熱間圧延材において、L1/L2が2.0以上の場合の平均結晶粒度は、JIS H 0501における伸銅品結晶粒度試験方法の求積法で求めた。また、熱間圧延材において、その結晶粒を圧延方向に沿った断面で金属組織を観察した時、任意の結晶粒20個において、結晶粒の圧延方向の長さをL1、結晶粒の圧延方向に垂直な方向の長さをL2を測定し、各々の結晶粒のL1/L2を求め、その平均値を算出した。再結晶率の測定は、未再結晶粒と再結晶粒を区分し、再結晶部を画像処理ソフト「WinROOF」により2値化し、その面積率を再結晶率とした。金属顕微鏡から判断が困難なものは、FE−SEM−EBSP(Electron Back Scattering diffraction Pattern)法によって求めた。そして、解析倍率3000倍又は5000倍の結晶粒界マップから、15°以上の方位差を有する結晶粒界から成る結晶粒をマジックで塗り潰し、画像解析ソフト『WinROOF』により2値化し再結晶率を算出した。微細結晶の平均粒径と微細結晶率の測定は、上述した再結晶粒の平均粒径と再結晶率の測定と同様にして行なった。このとき、長辺と短辺の比率が2未満の結晶を再結晶粒とし、双晶を含まず、長辺と短辺の比率が2以上の結晶を微細結晶とした。測定限界は、概ね0.2μmであり、0.2μm以下の微細結晶が存在しても、計測値には入れていない。微細結晶と再結晶粒の測定位置は、表面、裏面の両面から板厚の1/4の長さ入った2箇所とし、2箇所の測定値を平均した。図2(a)は再結晶粒(黒く塗りつぶした部分)の例を示し、図2(b)は微細結晶(黒く塗りつぶした部分)の例を示す。
析出物の平均粒径は次のようにして求めた。図3は析出物を示す。750,000倍及び150,000倍(検出限界はそれぞれ、0.7nm、2.5nm)のTEMによる透過電子像を画像解析ソフト「Win ROOF」を用いて析出物のコントラストを楕円近似し、長軸と短軸の相乗平均値を視野内の中の全ての析出粒子に対して求め、その平均値を平均粒子径とした。なお、75万倍、15万倍の測定で、粒径の検出限界をそれぞれ0.7nm、2.5nmとし、それ未満のものは、ノイズとして扱い、平均粒径の算出には含めなかった。なお、平均粒径が、6〜8nmを境にしてそれ以下のものは、750,000倍で、それ以上のものは、150,000倍で測定した。透過型電子顕微鏡の場合、冷間加工材では転位密度が高いので析出物の情報を正確に把握することは難しい。また、析出物の大きさは、冷間加工によっては変化しないので、今回の観察は、最終冷間加工前の析出熱処理後の再結晶部分又は微細結晶部分を観察した。測定位置は、表面、裏面の両面から板厚の1/4の長さ入った2箇所とし、2箇所の測定値を平均した。
上述した各試験の結果について説明する。表4、5は、各合金の工程C1での結果を示す。なお、試験を行なった同一試料を、後述する試験結果の各表において、異なる試験No.として記載している場合がある(例えば、表4、5の試験No.1の試料と表18、19の試験No.1の試料は同じ)。

Figure 0004851626
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発明合金は熱間圧延後の結晶粒径が20μm位で、Cr−Zr銅と同様の大きさであるが、他の比較用合金に比べ小さい。発明合金は、最終の微細結晶率が5%程あり、微細結晶の平均粒径が約1μmであったが、比較用合金やCr−Zr銅では微細結晶が発生していない。また、発明合金は、比較用合金やCr−Zr銅と比べて、最終の再結晶率が低く、再結晶の平均粒径も小さい。また、発明合金は、比較用合金やCr−Zr銅と比べて、最終の析出熱処理後での微細結晶率と再結晶率とを合わせた値が低く、微細結晶と再結晶粒の平均粒径も小さい。また、発明合金は、比較用合金と比べて、析出物の平均粒径が小さく、25nm以下の割合が高い。また、発明合金は、引張強度、ビッカース硬度、曲げ試験、応力緩和特性、導電率、性能指数においても比較用合金やCr−Zr銅より優れた結果となっている。
表6乃至表13は、各合金の工程LC1、D3、LD3、A11での結果を示す。

Figure 0004851626
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各工程において、発明合金は比較用合金やCr−Zr銅と比べて、工程C1と同様の結果を示す。また、耐熱性を評価した表12、13の工程A11では、発明合金は、比較用合金と較べて、結晶粒径が小さく、再結晶率が低く、ビッカース硬度と導電率が高かった。
上述した工程C1、LC1、D3、LD3、A11から次のような結果となった。発明合金の組成範囲よりもCoが少ない合金No.61や、Pが少ない合金No.62や、CoとPのバランスが悪い合金No.64の圧延板は強度、導電性、耐熱性、高温強度が低く、応力緩和特性が低い。また、性能指数が低い。これは、析出量が少なく、Co又はPの片方の元素が過分に固溶しているためや析出物が本発明で規定している形態と異なるためと思われる。
発明合金の組成範囲よりもSnの量が少ない合金No.63やNo.68の圧延板では、マトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのために、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されない。その結果、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が低く、また耐熱性も低いと思われる。
発明合金の組成範囲よりもSnの量が多い合金No.67の圧延板では、マトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのために、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されない。その結果、導電率が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が低いと思われる。
Fe、Niの量が多く、1.2×[Ni]+2×[Fe]>[Co]となっている合金No.65やNo.66の圧延板では析出物が本発明の所定の形態とならず、また、析出に与らない元素が過分に固溶しているために、マトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのために、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されない。その結果、強度が低く、性能指数が低く、導電性もやや低く、応力緩和特性が低いと思われる。
工程A11について、圧延先端部分についても調査した(表12、13の試験No.10〜13)。合金No.21、41、51、52ともに先端部分の圧延終了温度は705℃で平均冷却速度は5℃/秒であった。先端部分の再結晶率は後端部分とほぼ同一なので後端部分とほぼ同一の特性が得られ、先端から後端にかけて均一な特性の圧延材であることが確認できた。このように、析出熱処理を1回しか行なっていない最も単純な製造工程である工程Aにおいて、先端部分と後端部分とで特性の差が少ないので、析出熱処理を2回以上行なう製造工程においても先端部分と後端部分とで特性の差は少ないと推定される。
表14、15は、発明合金を用いて工程Aの条件を変化させた結果を示す。

Figure 0004851626
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本発明の製造条件を満足している工程A11、A12、A16、A17の圧延板は良好な結果を示す。熱間圧延の後に900℃、30分の溶体化処理を行なった工程A13Hの圧延板は曲げ加工性と伸びが悪い。これは、溶体化処理によって結晶粒が粗大化したためと思われる。また、析出熱処理の温度が高い工程A14Hの圧延板は導電性が良いが、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が低い。これは、マトリックスの再結晶が進み、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されず、かつ析出が概ね完了するためと思われる。また、析出処理の温度が低い工程A15Hの圧延板は曲げ加工性と伸びと導電率が低い。これは、熱処理指数It1の値が小さいため、再結晶粒や微細結晶が生成しないので、マトリックスの延性が回復しないためと思われる。また、析出せずに固溶しているために導電率が低いと思われる。工程A18Hの圧延板は、導電性がよく、強度は高いが、伸びが低く、曲げ加工性が悪い。これは、熱間圧延温度が高いため熱間圧延材の結晶粒径が大きくなり、その結晶粒径が特性に影響していると思われる。
表16、17は、発明合金を用いた工程A1において、板厚0.4mmの圧延板を製造した結果を示す。

Figure 0004851626
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上述した工程A11等では板厚2.0mmの圧延板を製造したが、この表16、17の試験No.1、2のように、板厚0.4mmでも本発明の製造条件を満足した工程A1では良好な結果が得られた。
表18、19は、発明合金を用いた工程Cにおいて、熱間圧延の開始温度を変化させた結果を示す。

Figure 0004851626
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熱間圧延の開始温度が低い工程C7Hの圧延板は、強度、性能指数が低く、応力緩和特性も低い。これは、熱間圧延開始温度が低いために、Co、P等が十分固溶せずに析出余力が小さくなっており(析出物を形成するCo、P等が少ない)、マトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのため、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されないためと思われる。また、熱間圧延材の結晶粒が圧延方向に延びていること(L1/L2の値が大きい)も影響していると思われ、曲げ加工性、伸びが少し悪いのも、熱間圧延時の結晶粒の形状が影響しているものと思われる。熱間圧延の開始温度が高い工程C8Hの圧延板は、伸びが低く、曲げ加工性が悪い。これは、熱間圧延温度が高いために、熱間圧延段階で結晶粒が大きくなっているためと思われる。
表20、21は、発明合金を用いた工程Cにおいて、熱間圧延後の冷却速度を変化させた結果を示す。

Figure 0004851626
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冷却速度が遅い工程C10Hの圧延板は、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が低い。これは、熱間圧延後の冷却過程でP、Co等の析出が起こって析出余力が小さくなっているので、析出熱処理時にマトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのため、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細結晶が形成されないためと思われる。冷却速度が速い工程C6、C61の圧延板は、強度が高く、性能指数も高い。これは、熱間圧延後の冷却過程でP、Co等が多く固溶したままなので、析出熱処理時にマトリックスの再結晶と析出が良いタイミングで起こる。そのため、再結晶率が低く、微細結晶の生成が促進され、析出物が小さくなり高い強度になるためと思われる。
表22、23は、発明合金を用いた工程Cにおいて、析出熱処理の条件を変化させた結果を示す。

Figure 0004851626
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熱処理指数が適正な範囲より大きい工程C9H、C13Hの圧延板は、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が低い。これは、析出熱処理時にマトリックスの再結晶が進み、そのために再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなり、微細粒が形成されないためと思われる。また、工程C9Hのように析出熱処理を2回行なう工程で最初の析出熱処理の熱処理指数が大きいと、析出物が成長して大きくなり、後の析出熱処理で細かくならないので、強度、応力緩和特性が低いと思われる。熱処理指数が適正な範囲より小さい工程C11Hの圧延板は、伸び、曲げ加工性が悪く、性能指数が低く、応力緩和特性が低い。これは、析出熱処理時に、再結晶粒、微細結晶が生成しないので、マトリックスの延性が回復せず、また、析出が不十分なためと思われる。
表24、25は、発明合金を用いた工程Cにおいて、回復工程を行なった場合と行なわなかった場合の結果を示す。

Figure 0004851626
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回復熱処理を行なわなかった工程C12Hの圧延板は、強度は高いが曲げ加工性と応力緩和特性が悪く、導電率が低い。これは、回復熱処理を行なっていないので、マトリックス中に歪が残留しているためと思われる。
表26、27は、発明合金を用いた工程Dの条件を変化させた結果を示す。

Figure 0004851626
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工程D1は、2回の析出熱処理のいずれも短時間析出熱処理で行なっている。工程D4は熱間圧延後の冷却速度を早くしている。工程D6Hは、2回目の析出熱処理での熱処理指数が低い。工程D1乃至工程D5の圧延板は、いずれも良好な結果となっているが、工程D6Hの圧延板は、伸び、曲げ加工性が悪く、性能指数が低く、応力緩和特性が低い。これは、析出熱処理時に、再結晶粒、微細結晶が生成しないので、マトリックスの延性が回復せず、また、析出が不十分なためと思われる。
表28、29は、発明合金を用いた工程Bの結果を工程A11の結果と共に示す。

Figure 0004851626
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最終の板厚が工程A11と工程B11は2mmであり、工程B1は0.4mmである。工程B11と工程B1は、本発明の製造条件を満たしており、いずれの工程の圧延板も良好な結果となっている。板厚2mmのB11は、2回析出熱処理を行なっているので、A11に比べ導電率が高い。
上述した各実施例において、トータル冷間圧延率が70%以上であり、最終の析出熱処理工程後において、再結晶率が45%以下であって再結晶粒の平均結晶粒径が0.7〜7μmであり、金属組織中に略円形、又は略楕円形の析出物が存在し、該析出物の平均粒径が2.0〜11nmであって均一に分散しており、微細結晶の平均粒径が0.3〜4μmであって微細結晶率が0.1〜25%である高性能銅合金圧延板が得られた(表4,5の試験No.1〜7、表6,7の試験No.1〜14、表8,9の試験No.1〜7、表10,11の試験No.1〜4、表12,13の試験No.1〜7、表28,29の試験No.2,3,5,7,8等参照)。
導電率が45(%IACS)以上であって、性能指数が4300以上である高性能銅合金圧延板が得られた(表4,5の試験No.1〜7、表6,7の試験No.1〜14、表8,9の試験No.1〜7、表10,11の試験No.1〜4、表12,13の試験No.1〜7、表28,29の試験No.2,3,5,7,8等参照)。
350℃での引張強度が300(N/mm)以上である高性能銅合金圧延板が得られた(表12,13の試験No.1,3〜6、表14,15の試験No.1,11等参照)。
700℃で30秒加熱後のビッカース硬度(HV)が100以上、又は前記加熱前のビッカース硬度の値の80%以上、又は加熱後の金属組織において再結晶率が40%以下である高性能銅合金圧延板が得られた(表12,13の試験No.1,3〜6、表14,15の試験No.1,11等参照)。
上述したことを以下にまとめる。
熱間圧延での冷却速度が速いほど、終了温度が高いほど、マトリックスの再結晶と析出が良いタイミングで起こる。そのために、再結晶率が低く、析出物が小さくなり高い強度になる。
熱延での冷却速度が遅いと、熱延の冷却過程で析出が起こり、析出余力が小さくなっているのでマトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのために、再結晶率が高くなって、析出粒子が大きくなる。その結果、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和性が悪い。また耐熱性も低い。
熱延開始温度が低いと、Co、P等が十分固溶せず、析出余力が小さくなっているので、マトリックスの再結晶が析出より早く起こる。そのため、再結晶化率が高くなって、析出粒子が大きくなる。その結果、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が悪い。また耐熱性も低い。
熱間圧延温度が高いと、結晶粒が大きくなり、最終の板材での曲げ加工性が悪い。
適正な析出熱処理温度条件の上限を超えると、マトリックスの再結晶が進む。そのため、再結晶率が高くなって、析出は概ね完了して導電性が良いが析出粒子が大きくなる。その結果、強度が低く、性能指数が低く、応力緩和特性が悪い。また耐熱性も低い。
適正な析出熱処理温度条件の下限を下回ると、再結晶粒が生成しないのでマトリックスの延性が回復せず、伸び、曲げ加工性が悪い。また析出が不十分なので、応力緩和特性が悪い。また、析出熱処理は、短時間でも高導電、高強度と良好な延性が得られる。
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば工程の任意のところで、金属組織に影響を与えない機械加工や熱処理を行なってもよい。
産業上の利用の可能性
上述したように本発明に係る高性能銅合金圧延板は次のような用途に使用することができる。
中厚板:。主として高導電、高熱伝導でかつ常温の強度も高く、高温強度の高い特性が求められるものでヒートシンク(ハイブリッドカー、電気自動車、コンピューターの冷却等)、ヒートスプレッダ、パワーリレー、バスバー、及びハイブリッド、太陽光発電、発光ダイオードに代表される大電流用途材料。
薄板:高度にバランスされた強度と導電性とを必要とするもので自動車用の各種機器部品、情報機器部品、計測機器部品、家電機器部品、熱交換器、コネクタ、端子、接続端子、スイッチ、リレー、ヒューズ、ICソケット、配線器具、照明器具接続金具、パワートランジスター、バッテリー端子、コンタクトボリュウム、ブレーカー、スイッチ接点等。
本出願は、日本国特許出願2009−003666に基づいて優先権主張を行う。その出願の内容の全部が参照によって、この出願に組み込まれる。

Claims (10)

  1. 0.14〜0.34mass%のCoと、0.046〜0.098mass%のPと、0.005〜1.4mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.0≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦5.9の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程と、を含む製造工程によって製造され、
    トータル冷間圧延率が70%以上であり、
    最終の析出熱処理工程後において、再結晶率が45%以下であって、再結晶部分の再結晶粒の平均結晶粒径が0.7〜7μmであり、金属組織中に円形、又は楕円形の析出物が存在し、
    該析出物の平均粒径が2.0〜11nm、又は全ての析出物の90%以上が25nm以下の大きさの微細析出物であって該析出物が均一に分散しており、
    最終の析出熱処理後、又は最終の冷間圧延後の金属組織中に圧延方向に伸びた繊維状の金属組織において、焼鈍双晶を有さず、EBSP解析結果においてIPF(Inverse Pole Figure)マップ及びGrain Boundaryマップから観察される長/短の比率の平均が2以上15以下である微細結晶が存在し、
    前記微細結晶の平均粒径が0.3〜4μmであって観察面における該微細結晶の金属組織全体に対する面積の割合が0.1〜25%であり、又は、前記微細結晶と再結晶粒との両部を合わせた平均粒径が0.5〜6μmであって、観察面における該微細結晶と再結晶粒との両部の金属組織全体に対する面積の割合が0.5〜45%であることを特徴とする高強度高導電銅合金圧延板。
  2. 0.16〜0.33mass%のCoと、0.051〜0.096mass%のPと、0.005〜0.045mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.2≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦4.9の関係を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  3. 0.16〜0.33mass%のCoと、0.051〜0.096mass%のPと、0.32〜0.8mass%のSnと、を含有し、Coの含有量[Co]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.2≦([Co]−0.007)/([P]−0.009)≦4.9の関係を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  4. 0.14〜0.34mass%のCoと、0.046〜0.098mass%のPと、0.005〜1.4mass%のSnと、を含有し、かつ0.01〜0.24mass%のNi、又は0.005〜0.12mass%のFeのいずれか1種以上を含有し、Coの含有量[Co]mass%とNiの含有量[Ni]mass%とFeの含有量[Fe]mass%とPの含有量[P]mass%との間に、3.0≦([Co]+0.85×[Ni]+0.75×[Fe]−0.007)/([P]−0.0090)≦5.9、及び0.012≦1.2×[Ni]+2×[Fe]≦[Co」の関係を有し、かつ残部がCu及び不可避不純物からなる合金組成であり、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程、を含む製造工程によって製造され、
    トータル冷間圧延率が70%以上であり、
    最終の析出熱処理工程後において、再結晶率が45%以下であって、再結晶部分の再結晶粒の平均結晶粒径が0.7〜7μmであり、金属組織中に円形、又は楕円形の析出物が存在し、
    該析出物の平均粒径が2.0〜11nm、又は全ての析出物の90%以上が25nm以下の大きさの微細析出物であって該析出物が均一に分散しており、
    最終の析出熱処理後、又は最終の冷間圧延後の金属組織中に圧延方向に伸びた繊維状の金属組織において、焼鈍双晶を有さず、EBSP解析結果においてIPF(Inverse Pole Figure)マップ及びGrain Boundaryマップから観察される長/短の比率の平均が2以上15以下である微細結晶が存在し、
    前記微細結晶の平均粒径が0.3〜4μmであって観察面における該微細結晶の金属組織全体に対する面積の割合が0.1〜25%であり、又は、前記微細結晶と再結晶粒との両部を合わせた平均粒径が0.5〜6μmであって、観察面における該微細結晶と再結晶粒との両部の金属組織全体に対する面積の割合が0.5〜45%であることを特徴とする高強度高導電銅合金圧延板。
  5. 0.002〜0.2mass%のAl、0.002〜0.6mass%のZn、0.002〜0.6mass%のAg、0.002〜0.2mass%のMg、0.001〜0.1mass%のZrのいずれか1種以上をさらに含有したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  6. 導電率が45(%IACS)以上で、導電率をR(%IACS)、引張強度をS(N/mm)、伸びをL(%)としたとき、(R1/2×S×(100+L)/100)の値が4300以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  7. 熱間圧延を含む製造工程で製造され、熱間圧延後の圧延材の平均結晶粒径が、6μm以上、50μm以下、又は、熱間圧延の圧延率をRE0(%)とし、熱間圧延後の結晶粒径をDμmとしたときに5.5×(100/RE0)≦D≦70×(60/RE0)であり、その結晶粒を圧延方向に沿った断面で観察したときに、該結晶粒の圧延方向の長さをL1、結晶粒の圧延方向に垂直な方向の長さをL2とすると、L1/L2の平均が1.02以上4.5以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  8. 350℃での引張強度が300(N/mm)以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  9. 700℃で30秒加熱後のビッカース硬度(HV)が100以上、又は前記加熱前のビッカース硬度の値の80%以上、又は加熱後の金属組織において再結晶率が45%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の高強度高導電銅合金圧延板の製造方法であって、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、析出熱処理工程と、回復熱処理工程と、を含み、
    熱間圧延開始温度が830〜960℃であり、
    熱間圧延の最終パス後の圧延材温度、又は圧延材の温度が650℃のときから350℃までの平均冷却速度が2℃/秒以上であり、
    冷間圧延の前後、又は冷間圧延の間に350〜540℃で2〜24時間の析出熱処理であって熱処理温度をT(℃)、保持時間をth(h)、該析出熱処理前の冷間圧延の圧延率をRE(%)としたときに、265≦(T−100×th−1/2−110×(1−RE/100)1/2)≦400の関係を満たす析出熱処理、又は最高到達温度が540〜770℃で「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.1〜5分の熱処理であって、最高到達温度をTmax(℃)とし、保持時間をtm(min)としたときに、340≦(Tmax−100×tm−1/2−100×(1−RE/100)1/2)≦515の関係を満たす析出熱処理が施され、
    最後の冷間圧延後に最高到達温度が200〜560℃で、「最高到達温度−50℃」から最高到達温度までの範囲での保持時間が0.03〜300分の熱処理であって最後の析出熱処理後の冷間圧延の圧延率をRE2(%)としたときに、150≦(Tmax−60×tm−1/2−50×(1−RE2/100)1/2)≦320の関係を満たす回復熱処理が施されることを特徴とする高強度高導電銅合金圧延板の製造方法。
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