JP4782383B2 - ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(a)温度310℃及び剪断速度1216sec−1の条件下で測定した溶融粘度が3〜2000Pa・s、
(b)水/アセトン(容量比=2:1)混合溶媒中で測定したpHが7.5〜11.5、
(c)温度340℃での溶融状態から10℃/分の速度で降温させる過程で測定した結晶化温度が165〜220℃、
(d)ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、室温プレスにより固化してシートを作製し、得られたシートを150℃/30分間アニーリングして結晶化シートを作製し、この結晶化シートを試料とし、測定に先立って標準白色板により校正を行った色彩色差計を用いて、標準光C、反射光測定法により、各試料について3点ずつ色調の測定を行い、その平均値を白色度(WH)としたときの白色度が70〜85、
(e)310℃で5分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 1 に対する、310℃で30分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 2 の比MV 2 /MV 1 が0.80〜1.0、
を有し、かつ、有機アミド溶媒中でアルカリ金属水硫化物を含む硫黄源とジハロ芳香族化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で重合させて得られたポリアリーレンスルフィドであることを特徴とするポリアリーレンスルフィドが提供される。
(f)ポリマー10gに、抽出用溶媒としてクロロホルム50mlを用いてソックスレー抽出を6時間行い、抽出終了後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させ、60℃で2時間の真空乾燥を行った後、フラスコ内に残った抽出物の重量を測定し、該重量と抽出に使用したポリマーの重量とに基づいて算出した低分子量成分の含有量が5.0重量%以下、
を更に有することが望ましい。
(I)有機アミド溶媒とアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを含む混合物を加熱し、蒸留により水を系外へ排出する脱水工程、
(II)アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源1モル当たり1.00〜1.09モルのアルカリ金属水酸化物が存在するように、各成分の仕込み量を調整する仕込み工程、
(III)有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で重合させる重合工程、
(IV)重合工程で生成したポリマーを水、親水性有機溶媒またはこれらの混合液からなる洗浄液で2回以上繰り返して洗浄し、その際、最終洗浄段階で、水または混合液からなる洗浄液を用いて洗浄し、かつ、洗浄後の洗浄液のpHが8.0〜11.0の範囲内となるように洗浄条件を制御する洗浄工程、及び、
(V)洗浄液からポリマーを分離し、乾燥し回収する回収工程であって、下記特性(a)〜(e):
(a)温度310℃及び剪断速度1216sec−1の条件下で測定した溶融粘度が3〜2000Pa・s、
(b)水/アセトン(容量比=2:1)混合溶媒中で測定したpHが7.5〜11.5、
(c)温度340℃での溶融状態から10℃/分の速度で降温させる過程で測定した結晶化温度が165〜220℃、
(d)ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、室温プレスにより固化してシートを作製し、得られたシートを150℃/30分間アニーリングして結晶化シートを作製し、この結晶化シートを試料とし、測定に先立って標準白色板により校正を行った色彩色差計を用いて、標準光C、反射光測定法により、各試料について3点ずつ、色調の測定を行い、その平均値を白色度(WH)としたときの白色度が70〜85、
(e)310℃で5分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 1 に対する、310℃で30分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 2 の比MV 2 /MV 1 が0.80〜1.0、
を有するポリマーを回収する回収工程、
を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
前記(I)の脱水工程として、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物、及びアルカリ金属水硫化物1モル当たり0.95〜1.05モルのアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して反応させ、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程を採用し、
前記(II)の仕込み工程として、系内に残存する混合物に、アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)1モル当たり、1.00〜1.09モルのアルカリ金属水酸化物と0.5〜2.0モルの水が存在するように、必要に応じて、アルカリ金属水酸化物と水を添加する仕込み工程を採用し、
前記(III)の重合工程として、混合物にジハロ芳香族化合物を添加し、有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とを170〜270℃の温度で重合反応させて、ジハロ芳香族化合物の転化率が50〜98%のプレポリマーを生成させる前段重合工程、及び前段重合工程後、仕込み硫黄源1モル当たり2.0〜10モルの水が存在する状態となるように反応系内の水量を調整すると共に、245〜290℃に加熱して、重合反応を継続する後段重合工程を含む重合工程を採用し、
前記(IV)の洗浄工程として、重合工程で生成したポリマーを水、親水性有機溶媒またはこれらの混合液からなる洗浄液で2回以上繰り返して洗浄し、その際、最終洗浄段階で、水または混合液からなる洗浄液を用いて洗浄し、かつ、洗浄後の洗浄液のpHが8.0〜11.0の範囲内となるように洗浄条件を制御する洗浄工程を採用する前記の製造方法が望ましい。
本発明では、硫黄源として、一般に、アルカリ金属水硫化物を使用する。アルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属水硫化物は、無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよい。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、水硫化ナトリウム及び水硫化リチウムが好ましい。また、水溶液などの水性混合物(すなわち、流動性のある水との混合物)として用いることが処理操作や計量などの観点から好ましい。
本発明で使用されるジハロ芳香族化合物は、芳香環に直接結合した2個のハロゲン原子を有するジハロゲン化芳香族化合物である。ジハロ芳香族化合物の具体例としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、ジハロジフェニルケトン等が挙げられる。
生成PASに特定構造の末端を形成したり、あるいは重合反応や分子量を調節する等のために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)を併用することができる。分岐または架橋重合体を生成させるために、3個以上のハロゲン原子が結合したポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物等を併用することも可能である。分岐・架橋剤としてのポリハロ化合物として、好ましくはトリハロベンゼンが挙げられる。
本発明では、脱水反応及び重合反応の溶媒として、非プロトン性極性有機溶媒である有機アミド溶媒を用いる。有機アミド溶媒は、高温でアルカリに対して安定なものが好ましい。有機アミド溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物またはN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。これらの有機アミド溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、重合反応を促進させ、高重合度のPASを短時間で得るために、必要に応じて各種重合助剤を用いることができる。重合助剤の具体例としては、一般にPASの重合助剤として公知の有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらの中でも、有機カルボン酸金属塩が安価であるため、特に好ましい。重合助剤の使用量は、用いる化合物の種類により異なるが、仕込み硫黄源1モルに対し、一般に0.01〜10モルとなる範囲である。
重合工程の前工程として、脱水工程を配置して反応系内の水分量を調節する。脱水工程は、望ましくは不活性ガス雰囲気下、有機アミド溶媒とアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを含む混合物を加熱し、蒸留により水を系外へ排出する方法により実施する。
本発明では、脱水工程後、系内に残存する混合物に、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物とを含む硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当たり、1.00〜1.09モルのアルカリ金属水酸化物と0.5〜2.0モルの水が存在するように、必要に応じて、アルカリ金属水酸化物と水を添加することが好ましい。ここで、仕込み硫黄源の量は、[仕込み硫黄源]=[総仕込み硫黄モル]−[脱水後の揮散硫黄モル]の式により算出される。仕込み硫黄源の量は、「有効S」量と呼ぶことがある。
重合工程は、脱水工程終了後の混合物にジハロ芳香族化合物を仕込み、有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物を加熱することにより行われる。脱水工程で用いた反応槽とは異なる重合槽を使用する場合には、重合槽に脱水工程後の混合物とジハロ芳香族化合物を投入する。脱水工程後、重合工程前には、必要に応じて、有機アミド溶媒量や共存水分量などの調整を行ってもよい。また、重合工程前または重合工程中に、重合助剤その他の添加物を混合してもよい。
(A)有機アミド溶媒と硫黄源とジハロ芳香族化合物と所定モル比のアルカリ金属水酸化物とを含有する反応混合物を、仕込み硫黄源1モルに対して0.5〜2.0モルの水の存在下に、170〜270℃に加熱して重合反応を行い、ジハロ芳香族化合物の転化率50〜98%でプレポリマーを生成させる前段工程;及び
(B)仕込み硫黄源1モル当たり2.0〜10モルの水が存在する状態となるように反応系内の水量を調整すると共に、245〜290℃に加熱して、重合反応を継続する後段重合工程;
を含む少なくとも2段階の重合工程により重合反応を行う。前段重合工程において、温度310℃、剪断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が0.5〜30Pa・sのプレポリマーを生成させることが望ましい。
重合工程後の後処理工程として、一般に、重合反応により生成したPASを含む反応混合液(スラリー)からPASを分離し、洗浄し、乾燥する工程がある。乾燥後に、製品としてのPASが回収される。
本発明のPASは、構造式[−Ar−S−](式中、Arは、アリーレン基である。)で表わされるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーである。[−Ar−S−]を1モル(基本モル)と定義すると、本発明のPASは、この繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有するポリマーである。アリーレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基などが好ましい。
ポリマーの収率は、脱水工程後の反応缶中に存在する有効硫黄成分の全てがポリマーに転換したと仮定したときのポリマー重量(理論量)を基準値とし、この基準値に対する実際に回収したポリマー重量の割合(重量%)を算出した。
乾燥ポリマー約20gを用いて、東洋精機製キャピログラフ1−Cにより溶融粘度を測定した。この際、キャピラリーは、1mmφ×10mmLのフラットダイを使用し、設定温度は、310℃とした。ポリマー試料を装置に導入し、5分間保持した後、剪断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
前記の溶融粘度の測定法に従って、
310℃でのポリマー試料の加熱時間を5分間と30分間としたこと以外は、前記の溶融粘度の測定法に従って、ポリマーの溶融粘度を測定し、その比を算出した。すなわち、ポリマー試料を310℃で5分間保持した後、剪断速度1216sec−1で溶融粘度(MV1)を測定した。同じポリマー試料について、310℃で30分間保持した後、剪断速度1216sec−1で溶融粘度(MV2)を測定した。そして、これらの測定値に基づいて、比(MV2/MV1)を求めた。この比は、溶融粘度の保持率とも呼ばれ、大きいほど、ポリマーの溶融安定性が高いことを示す。
ポリマー約10gに、抽出用溶媒としてクロロホルム50mlを用いてソックスレー抽出を行った。抽出時間は、6時間とした。抽出終了後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させ、60℃で2時間の真空乾燥を行った後、フラスコ内に残った抽出物の重量を測定し、該重量と抽出に使用したポリマーの重量とに基づいて、ポリマー中に含まれていた低分子量成分の含有率を算出した。
ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、室温プレスにより固化してシートを作製した。得られたシートを150℃/30分間アニーリングして結晶化シートを作製した。この結晶化シートを試料とし、MINOLTA製「色彩色差計CR−200」を用いて、標準光C、反射光測定法により色調の測定を行った。測定に先立ち、標準白色板により校正を行った。各試料について3点ずつ測定を行い、その平均値を算出した。色調は、白色度(WH)で示した。
ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、急冷して非晶シートを作製した。この非晶シートから約10mgを測定試料として採取し、Perkin−Elmer製「示差走査熱量計DSC7」を用いて降温条件下での結晶化温度(Tmc)を測定した。より具体的には、試料を窒素ガス雰囲気中(20ml/分)、340℃まで昇温し、その温度で1分間保持した後、10℃/分の速度で降温する条件で結晶化温度を測定した。
室温(約20℃)にて、ポリマー試料約6g、アセトン15ml、及び精製水〔関東化学(株)製〕30mlを三角フラスコに入れ、振とう機を用いて30分振とうした後、分液ロートで濾過した。その上澄み液のpHをpHメーターで測定した。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値63.44重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1951g〔硫黄分(S)として22.08モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が61.86重量%(21.53モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.55モル含まれることになる。〕、74.78重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1151g(NaOH分として21.52モル)をN−メチル−ピロリドン(以下、「NMP」と略記)6701gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。水硫化ナトリウムと硫化ナトリウムとからなる硫黄源を「S」と表記すると、脱水前のNaOH/NaSHは、1.00(モル/モル)となり、NaOH/Sは、0.97(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、21.68モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(以下「pDCB」と略記)3267g〔pDCB/有効S=1.025(モル/モル)〕、NMP2284g、及び水114g〔缶内の合計水量/有効S=1.50(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内NaOH/有効S=1.054(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH16.12gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.78モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で1時間反応させ、その後30分間で230℃に昇温し、230℃で1.5時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約92%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水441.5gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=2.63(モル/モル)〕、255℃に昇温して4.0時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、室温付近まで冷却した反応混合物を2154.3gサンプリングし、100メッシュのスクリーンを使用して篩分し、ウエット状態(含水率60重量%)の粒状ポリマーを回収した。ウエット状態の粒状ポリマーに、1528gのアセトンと80gのイオン交換水を加えて、30分間攪拌洗浄した。このときの洗浄液の量は、理論ポリマー回収量に対して5倍量であり、また、洗浄液の含水率は、5重量%である。以上の洗浄を2回実施した後、1608gのイオン交換水による攪拌洗浄を5回行った。このイオン交換水による洗浄は、各20分間行った。最後のイオン交換水洗浄が終了後、濾過前に洗浄液にpHメーターを投入し、5分後のpHを測定したところ、10.7であった。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値63.44重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1950g〔硫黄分(S)として22.07モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が61.86重量%(21.52モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.55モル含まれることになる。〕、74.78重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1119g(NaOH分として20.92モル)をNMP6700gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。脱水前のNaOH/NaSHは、0.97(モル/モル)となり、NaOH/Sは、0.95(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、21.67モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、pDCB3265g〔pDCB/有効S=1.025(モル/モル)〕、NMP2260g、及び水118g〔缶内の合計水量/有効S=1.50(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内のNaOH/有効S=1.020(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH9.53gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.80モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で1時間反応させ、その後30分間で230℃に昇温し、230℃で1.5時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約92%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水441.2gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=2.63(モル/モル)〕、255℃に昇温して4.0時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、9.9であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、93%であり、溶融粘度は、141Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
実施例1と全く同じ操作で脱水工程から重合工程を実施した。後処理工程を以下の方法により行った。
反応終了後、イオン交換水による洗浄回数を7回としたこと以外は実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、9.7であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、92%であり、溶融粘度は、145Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値62.39重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1802g〔硫黄分(S)として20.06モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が59.42重量%(19.11モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.95モル含まれることになる。〕、74.08重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1045g(NaOH分として19.35モル)をNMP6702gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。脱水前のNaOH/NaSHは、1.01(モル/モル)となり、NaOH/Sは、0.96(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、19.68モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、pDCB2951g〔pDCB/有効S=1.020(モル/モル)〕、NMP2000g、及び水97g〔缶内の合計水量/有効S=1.50(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内NaOH/有効S=1.054(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH2.72gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.76モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で1時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約92%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水461.0gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=2.82(モル/モル)〕、260℃に昇温して5.0時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、10.0であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、92%であり、溶融粘度は、230Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値62.12重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1804g〔硫黄分(S)として19.99モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が59.5重量%(19.15モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.84モル含まれることになる。〕、73.95重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1030.6g(NaOH分として19.05モル)をNMP6005gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。脱水前のNaOH/NaSHは、0.99(モル/モル)となり、NaOH/Sは、0.95(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、19.59モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、pDCB2923g〔pDCB/有効S=1.015(モル/モル)〕、NMP3597.6g、及び水176g〔缶内の合計水量/有効S=1.70(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内NaOH/有効S=1.054(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH13.9gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.80モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で4.5時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約93%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水607gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=3.45(モル/モル)〕、255℃に昇温して2.0時間反応させた後、30分かけて245℃に降温して11.5時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、9.5であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、85%であり、溶融粘度は、450Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
実施例2と全く同じ操作で脱水工程から重合工程を実施した。ただし、後処理工程を以下の方法により行った。
反応終了後、イオン交換水による洗浄回数を8回としたこと以外は、実施例1と同様の方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、8.9であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、92%であり、溶融粘度は、123Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
実施例1と全く同じ操作で脱水工程から重合工程を実施した。ただし、後処理工程を以下の方法により行った。
最後のイオン交換水による洗浄時に、約3gのNaOH(純度97%)を洗浄液に添加したこと以外は実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最終洗浄後の洗浄液のpHは、12.5であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、92%であり、溶融粘度は、155Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
実施例1と全く同じ操作で脱水工程から重合工程を実施した。ただし、後処理工程を以下の方法により行った。
反応終了後、室温付近まで冷却した反応混合物を707gサンプリングし、100メッシュのスクリーンを使用して篩分し、ウエット状態(含水率60重量%)の粒状ポリマーを回収した。ウエット状態の粒状ポリマーに、502gのアセトンと26gのイオン交換水を加えて、30分間攪拌洗浄した。このときの洗浄液の量は、理論ポリマー回収量に対して5倍量であり、また、洗浄液の含水率は、5重量%である。以上の洗浄を2回実施した後、528gのイオン交換水による20分間の攪拌洗浄を3回行った。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値63.44重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1950g〔硫黄分(S)として22.07モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が61.86重量%(21.52モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.55モル含まれることになる。〕、74.78重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1178g(NaOH分として22.02モル)をNMP6700gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。脱水前のNaOH/NaSHは、1.02(モル/モル)となり、NaOH/Sは、1.00(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、21.68モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、pDCB3266g〔pDCB/有効S=1.025(モル/モル)〕、NMP2262g、及び水115g〔缶内の合計水量/有効S=1.50(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内NaOH/有効S=1.100(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH35.6gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.78モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で1時間反応させ、その後30分間で230℃に昇温し、230℃で1.5時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約92%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水441.3gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=2.63(モル/モル)〕、255℃に昇温して4.0時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、11.8であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、85%であり、溶融粘度は、171Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
1.脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値62.12重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1790.7g〔硫黄分(S)として19.84モルになる。中和滴定法によるNaSH分析値が59.5重量%(19.01モル)であり、硫化ナトリウム(Na2S)が0.83モル含まれることになる。〕、73.95重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1028.7g(NaOH分として19.02モル)をNMP6001gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に仕込んだ。脱水前のNaOH/NaSHは、1.00(モル/モル)となり、NaOH/Sは、0.96(モル/モル)となる。
上記脱水工程の後、19.45モルの有効Sを含む反応缶を170℃まで冷却し、pDCB2902g〔pDCB/有効S=1.015(モル/モル)〕、NMP3533.7g、及び水170g〔缶内の合計水量/有効S=1.70(モル/モル)〕を加え、さらに、反応缶内NaOH/有効S=1.100(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH45.8gを加えた。反応缶内には、H2Sが揮散することにより生成したNaOH(0.79モル)が含まれている。
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で4.5時間反応させた(前段重合工程:pDCBの転化率=約93%)。その後、攪拌機の撹拌数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、水603gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=3.45(モル/モル)〕、255℃に昇温して2.0時間反応させた後、30分かけて245℃に降温して11.5時間反応させた(後段重合工程)。
反応終了後、実施例1と同様な方法でポリマーの洗浄を実施して、精製ポリマーを得た。このとき、最後のイオン交換水洗浄後の洗浄液のpHは、10.2であった。このようにして得られた粒状ポリマーの収率は、80%であり、溶融粘度は、470Pa・sであった。色調、溶融安定性、結晶化温度、及び低分子量成分の含有量のデータを表1に示した。
Claims (7)
- 下記特性(a)〜(e):
(a)温度310℃及び剪断速度1216sec−1の条件下で測定した溶融粘度が3〜2000Pa・s、
(b)水/アセトン(容量比=2:1)混合溶媒中で測定したpHが7.5〜11.5、
(c)温度340℃での溶融状態から10℃/分の速度で降温させる過程で測定した結晶化温度が165〜220℃、
(d)ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、室温プレスにより固化してシートを作製し、得られたシートを150℃/30分間アニーリングして結晶化シートを作製し、この結晶化シートを試料とし、測定に先立って標準白色板により校正を行った色彩色差計を用いて、標準光C、反射光測定法により、各試料について3点ずつ色調の測定を行い、その平均値を白色度(WH)としたときの白色度が70〜85、
(e)310℃で5分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 1 に対する、310℃で30分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 2 の比MV 2 /MV 1 が0.80〜1.0、
を有し、かつ、有機アミド溶媒中でアルカリ金属水硫化物を含む硫黄源とジハロ芳香族化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で重合させて得られたポリアリーレンスルフィドであることを特徴とするポリアリーレンスルフィド。 - 下記特性(f):
(f)ポリマー10gに、抽出用溶媒としてクロロホルム50mlを用いてソックスレー抽出を6時間行い、抽出終了後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させ、60℃で2時間の真空乾燥を行った後、フラスコ内に残った抽出物の重量を測定し、該重量と抽出に使用したポリマーの重量とに基づいて算出した低分子量成分の含有量が5.0重量%以下、
を更に有する請求項1記載のポリアリーレンスルフィド。 - 下記(I)〜(V)の各工程:
(I)有機アミド溶媒とアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを含む混合物を加熱し、蒸留により水を系外へ排出する脱水工程、
(II)アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源1モル当たり1.00〜1.09モルのアルカリ金属水酸化物が存在するように、各成分の仕込み量を調整する仕込み工程、
(III)有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で重合させる重合工程、
(IV)重合工程で生成したポリマーを水、親水性有機溶媒またはこれらの混合液からなる洗浄液で2回以上繰り返して洗浄し、その際、最終洗浄段階で、水または混合液からなる洗浄液を用いて洗浄し、かつ、洗浄後の洗浄液のpHが8.0〜11.0の範囲内となるように洗浄条件を制御する洗浄工程、及び、
(V)洗浄液からポリマーを分離し、乾燥し回収する回収工程であって、下記特性(a)〜(e):
(a)温度310℃及び剪断速度1216sec−1の条件下で測定した溶融粘度が3〜2000Pa・s、
(b)水/アセトン(容量比=2:1)混合溶媒中で測定したpHが7.5〜11.5、
(c)温度340℃での溶融状態から10℃/分の速度で降温させる過程で測定した結晶化温度が165〜220℃、
(d)ポリマーを320℃/10分間のホットプレスで加熱溶融後、室温プレスにより固化してシートを作製し、得られたシートを150℃/30分間アニーリングして結晶化シートを作製し、この結晶化シートを試料とし、測定に先立って標準白色板により校正を行った色彩色差計を用いて、標準光C、反射光測定法により、各試料について3点ずつ、色調の測定を行い、その平均値を白色度(WH)としたときの白色度が70〜85、
(e)310℃で5分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 1 に対する、310℃で30分間保持した後、剪断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度値MV 2 の比MV 2 /MV 1 が0.80〜1.0、
を有するポリマーを回収する回収工程、
を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法。 - 前記(I)の脱水工程として、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物、及びアルカリ金属水硫化物1モル当たり0.95〜1.05モルのアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して反応させ、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程を採用し、
前記(II)の仕込み工程として、系内に残存する混合物に、アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)1モル当たり、1.00〜1.09モルのアルカリ金属水酸化物と0.5〜2.0モルの水が存在するように、必要に応じて、アルカリ金属水酸化物と水を添加する仕込み工程を採用し、
前記(III)の重合工程として、混合物にジハロ芳香族化合物を添加し、有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とを170〜270℃の温度で重合反応させて、ジハロ芳香族化合物の転化率が50〜98%のプレポリマーを生成させる前段重合工程、及び前段重合工程後、仕込み硫黄源1モル当たり2.0〜10モルの水が存在する状態となるように反応系内の水量を調整すると共に、245〜290℃に加熱して、重合反応を継続する後段重合工程を含む重合工程を採用し、
前記(IV)の洗浄工程として、重合工程で生成したポリマーを水、親水性有機溶媒またはこれらの混合液からなる洗浄液で2回以上繰り返して洗浄し、その際、最終洗浄段階で、水または混合液からなる洗浄液を用いて洗浄し、かつ、洗浄後の洗浄液のpHが8.0〜11.0の範囲内となるように洗浄条件を制御する洗浄工程を採用する請求項3記載の製造方法。 - 前記(IV)の洗浄工程において、最終洗浄段階で、洗浄後の洗浄液のpHが8.0〜11.0の範囲内となるように
(i)酸または塩基性化合物を添加した洗浄液を用いる方法、
(ii)洗浄回数を調整する方法、
(iii)ポリマーに対する洗浄液の量を調整する方法、または
(iv)これらの方法を組み合わせた方法、
により、洗浄条件を制御する請求項3または4記載の製造方法。 - 前記(IV)の洗浄工程において、最終洗浄段階で、水からなる洗浄液を用いる請求項3乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記(IV)の洗浄工程において、ポリマー10gに、抽出用溶媒としてクロロホルム50mlを用いてソックスレー抽出を6時間行い、抽出終了後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させ、60℃で2時間の真空乾燥を行った後、フラスコ内に残った抽出物の重量を測定し、該重量と抽出に使用したポリマーの重量とに基づいて算出した低分子量成分の含有量が5.0重量%以下になるまで、ポリマーの洗浄を繰り返し行う請求項3乃至6のいずれか1項に記載の製造方法。
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