JP4765316B2 - パワーアンプ装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス幅変調信号(以下、PWM(Pulse Width Modulation)信号という)によりドライブされるパワーアンプ装置に関する。
【0002】
本出願は、日本国において2002年7月18日に出願された日本特許出願番号2002−209557を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
従来、オーディオ用のパワーアンプ装置として、いわゆるD級アンプと呼ばれるデジタルアンプがある。このD級アンプは、スイッチングにより電力増幅を行うものであり、例えば図1に示すように構成されている。
【0004】
図1に示すパワーアンプ装置は、デジタルオーディオ信号Pinが、入力端子Tinを通じてPWM変調回路11に供給されると共に、クロック生成部12から所定の周波数のクロック信号がPWM変調回路11に供給される。PWM変調回路11に供給されたデジタルオーディオ信号Pinは、一対のPWM信号PA、PBに変換される。
【0005】
この場合、図2A、図2Bに示すように、PWM信号PA、PBのパルス幅(各PWM信号波形において、状態“H”である時間幅)は、デジタルオーディオ信号Pinが示す量子化レベル(信号PinをD/A変換したときの瞬時レベルに対応。以下同様)に対応して変化するものであるが、一方のPWM信号PAのパルス幅は、デジタルオーディオ信号Pinそのものが示す量子化レベルの大きさに対応するものとされ、他方のPWM信号PBのパルス幅は、デジタルオーディオ信号Pinが示す量子化レベルの2の補数の大きさに対応するものとされる。
【0006】
なお、図2A及び図2Bに示した例のPWM信号PA及びPBは、その立ち上がり時点が、PWM信号PA、PBの1サイクル期間(基準周期)TCの開始時点に固定され、その立ち下がり時点がデジタルオーディオ信号Pinの示すレベルに対応して変化する、いわゆる片側変調方式のPWM信号である。
【0007】
PWM信号PA及びPBとしては、図2C及び図2Dに示すように、立ち上がり時点及び立ち下がり時点の両方が同時に変化する、いわゆる両側変調方式のPWM信号とすることもできる。
【0008】
PWM信号PA、PBのキャリア周波数fc(=1/TC)は、デジタルオーディオ信号Pinのサンプリング周波数fsの例えば16倍とされ、fs=48kHzとすれば、
fc=16fs=16×48kHz=768kHzとされる。
【0009】
このPWM変調回路11からの一方のPWM信号PAがドライブ回路13に供給されて、図3Aに示すように、PWM信号PAと非反転及び反転された一対のドライブ用のパルス電圧(ドライブパルス)+PA、−PAが形成される。
【0010】
ドライブ回路13からのパルス電圧+PA、−PAは、一対のスイッチング素子、例えばnチャンネルのMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Type Field Effect Transistor)151、152のゲートにそれぞれ供給される。
【0011】
この場合、FET(Field Effect Transistor)151、152は、プッシュプル回路15を構成するものであり、FET151のドレインが電源端子20に接続され、FET151のソースがFET152のドレインに接続され、FET152のソースが接地に接続される。電源端子20には、安定した直流電圧+VDDが電源電圧として供給される。なお、電圧+VDDは、例えば20V〜50Vとされている。
【0012】
そして、FET151のソース及びFETI52のドレインが、コイル及びコンデンサを有するローパスフィルタ17を通じて、スピーカ19の一端が接続されるスピーカ端子SP+に接続される。
【0013】
PWM変調回路11からの他方のPWM信号PBに対しても、PWM信号PAに対してと同様に構成される。すなわち、PWM信号PBがドライブ回路14に供給されて、図3Bに示すように、信号PBと非反転及び反転された一対のドライブ用のパルス電圧(ドライブパルス)+PB、−PBが形成される。
【0014】
ドライブ回路14からのパルス電圧+PB、−PBが、プッシュプル回路16を構成する一対のnチャンネルのMOS−FET161、162のゲートにそれぞれ供給される。
【0015】
そして、FET161のソース及びFET162のドレインが、コイル及びコンデンサを有するローパスフィルタ18を通じてスピーカ19の他端が接続されるスピーカ端子SP−に接続される。
【0016】
したがって、パルス電圧+PA=“H”のときには、パルス電圧−PA=“L”であり、FET151がオンになるとともに、FET152がオフになるので、FET151、152の接続点の電圧VAは、図3Cに示すように、電圧+VDDとなる。逆に、パルス電圧+PA=“L”のときには、パルス電圧−PA=“H”であり、FET151がオフになると共に、FET152がオンになるので、電圧VA=0となる。
【0017】
同様に、パルス電圧+PB=“H”のときには、パルス電圧−PB=“L”であり、FET161がオンになるとともに、FET162がオフになるので、FET161、162の接続点の電圧VBは、図3Dに示すように、電圧+VDDとなる。逆に、パルス電圧+PB=“L”のときには、パルス電圧−PB=“H”であり、FET161がオフになるとともに、FET162がオンになるので、電圧VB=0となる。
【0018】
そして、電圧VA=+VDD、かつ、電圧VB=0の期間には、図1及び図3Eに示すように、FET151、152の接続点から、ローパスフィルタ17からスピーカ19、さらにローパスフィルタ18に至るラインを通じて、FET161、162の接続点へと、電流iが流れる。
【0019】
また、電圧VA=0、かつ、電圧VB=+VDDの期間には、FET161、162の接続点から、ローパスフィルタ18からスピーカ19、さらにローパスフィルタ17に至るラインを通じて、FET151、152の接続点へと、逆向きに電流iが流れる。さらに、VA=VB=+VDDの期間、及びVA=VB=0の期間には、電流iは流れない。つまり、プッシュプル回路15、16がBTL(Bridge Tied Load)回路を構成しているためである。
【0020】
電流iの流れる期間は、元のPWM信号PA、PBが立ち上がっている期間に対応して変化するとともに、電流iがスピーカ19を流れるとき、電流iはローパスフィルタ17、18により積分されるので、結果として、スピーカ19を流れる電流iは、デジタルオーディオ信号Pinの示すレベルに対応したアナログ電流であって、電力増幅された電流となる。つまり、電力増幅された出力がスピーカ19に供給されることになる。
【0021】
こうして、図1に示す回路は、パワーアンプとして動作するが、このとき、FET151、152、161、162は、入力されたデジタルオーディオ信号Pinに対応して電源電圧+VDDをスイッチングして、電力増幅をするので、効率が良く、大出力を得ることができる。
【0022】
ところで、図1の構成のみでは、パワーアンプ装置に電源が投入されている状態において、例えばスピーカ19とスピーカ端子SP+、SP−とを結線する際などにおいて、スピーカ端子SP+又はスピーカ端子SP−の一方に、一端側が接続されているスピーカコードの他端が、シャーシや金属に触れるなどした場合、図1の出力段のプッシュプル回路の一方には大電流が流れ、当該プッシュプル回路のFET151、152又は161、162が破壊されるおそれがある。
【0023】
また、一端側のリード線がスピーカ端子SP+あるいはスピーカ端子SP−に接続されているスピーカの他端側のリード線が金属部分に接触した場合にも、回路に大電流が流れて、出力段のFET151、152、161、162が破壊されるおそれがあると共に、このときにはスピーカが破壊(焼損)してしまうおそれがある。
【0024】
このような事態の発生を防止するため、従来から、上述のようなパワーアンプ装置には、過電流保護回路が設けられている。図4は、その過電流保護回路が付加された従来のパワーアンプ装置を示す回路図である。
【0025】
図4に示すパワーアンプ装置には、過電流検出回路21が、出力段のプッシュプル回路15、16と、電源端子20との間に設けられる。
【0026】
すなわち、過電流検出回路21においては、電源端子20がコンデンサ211を介して接地されると共に、抵抗器212及びコンデンサ213の直列回路を介して接地される。電源端子20は、過電流検出用のトランジスタ214のエミッタに接続される。抵抗器212とコンデンサ213との接続点が、FET151及び161のドレインに接続され、プッシュプル回路15及び16には、電源電圧+VDDが抵抗器212を通じて供給される。
【0027】
抵抗器212とコンデンサ213との接続点は、過電流検出用のトランジスタ214のベースに接続される。このトランジスタ214のコレクタは、トランジスタ215のベースに接続される。このトランジスタ215のエミッタは接地される。このトランジスタ215のコレクタ出力が、過電流検出出力として、マイクロコンピュータ22に供給される。
【0028】
マイクロコンピュータ22は、トランジスタ215のコレクタ出力により、過電流が検出されたと判断したときには、この例では、ドライブ回路13及び14からのドライブ信号+PA、−PA及び+PB、−PBの出力を停止して、FET151、152、161、162を常にオフとするように制御する。
【0029】
この過電流検出回路21は、次のように動作する。すなわち、図4の構成においては、電源端子20からの電源電圧+VDDは、抵抗器212を通じてプッシュプル回路15及び16に供給される。
【0030】
通常動作時には、FET151、152、161、162を通じて流れる電流iは、所定の値よりは小さく、このため抵抗器212による電圧降下は小さいため、過電流検出用トランジスタ214はオフである。
【0031】
一方、前述のような理由により、FET151、152、161、162を通じて大電流が流れるようになると、抵抗器212における電圧降下は大きくなるため、過電流検出用トランジスタ214はオンとなる。このため、トランジスタ215もオンとなり、そのコレクタの過電流検出出力がハイレベルからローレベルとなる。
【0032】
すると、マイクロコンピュータ22は、この過電流検出出力がローレベルになったことから、ドライブ回路13、14に、その出力を停止させる制御信号を供給する。ドライブ回路13及び14では、この制御信号を受けて、ドライブ信号+PA、−PA及び+PB、−PBの、FET151、152、161、162への供給を停止する。これにより、FET151、152、161、162は全てオフとされ、過電流は流れなくなり、FET151、152、161、162やスピーカ19が保護される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
ところで、スピーカ端子SP+及びSP−にスピーカ19が接続されて、このスピーカ19がPWM駆動されるときのパワーアンプの出力は、数W〜100Wを超えるものとなる。
【0034】
上述した従来の検出回路の場合には、電源電圧+VDDが、過電流検出用の抵抗器212を介してプッシュプル回路15、16に供給される構成であるため、通常動作時においては、スピーカ19に流れる音声信号電流iに応じた電流が抵抗器212を流れることにより、プッシュプル回路15、16の電源電圧(FET151、161のドレイン電圧)が変動することになる。
【0035】
このため、図4の構成では、パワーアンプの最小出力のときと、最大出力のときとで、所期の比率の出力が得られない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、上述したような従来のパワーアンプ装置が有する問題点を解消することができる新規なパワーアンプ装置を提供することにある。
【0037】
上述したような目的を達成するために提案される本発明に係るパワーアンプ装置は、入力信号を非反転して増幅し、出力端が負荷の一端に接続される第1の増幅回路と、前記入力信号を反転して増幅し、出力端が前記負荷の他端に接続される第2の増幅回路と、 前記第1の増幅回路の出力端と前記第2の増幅回路の出力端との間に直列接続された3個の抵抗器と、前記直列接続された3個の抵抗器のうちの中央の抵抗器に並列接続されたコンデンサと、前記中央の抵抗器に第1の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第1の検出手段と、前記中央の抵抗器に第2の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第2の検出手段とからなり、前記第1の増幅回路の出力端の電位と前記第2の増幅回路の出力端の電位にずれが生じたこと検出する検出手段と、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づき、前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路の一方が過電流状態になったかを判定する過電流判定手段と、前記過電流判定手段によって過電流状態になったと判定された増幅回路への電源電圧の供給を停止することによって過電流状態になったと判定された増幅回路のみの動作を停止させる動作停止手段とを備える。
また、本発明に係るパワーアンプ装置は、入力信号を、その量子化レベルをパルス幅に対応させた第1のパルス幅変調信号に変換して出力する第1のパルス幅変調手段と、前記第1のパルス幅変調手段から出力される前記第1のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第1のドライブパルスに変換して出力する第1のドライブ手段と、第1の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、前記第1のドライブ手段からの前記一対の第1のドライブパルスが、前記第1の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の一端に接続される第1のプッシュプル回路とを備え、前記入力信号を非反転増幅する第1の増幅回路と、前記入力信号を、その量子化レベルの2の補数をパルス幅に対応させた第2のパルス幅変調信号に変換して出力する第2のパルス幅変調手段と、前記第2のパルス幅変調手段から出力される前記第2のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第2のドライブパルスに変換して出力する第2のドライブ手段と、第2の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、前記第2のドライブ手段からの前記一対の第2のドライブパルスが、前記第2の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の他端に接続される第2のプッシュプル回路とを備え、前記入力信号を反転増幅する第2の増幅回路と、前記第1の増幅回路の出力端と前記第2の増幅回路の出力端との間に直列接続された3個の抵抗器と、前記直列接続された3個の抵抗器のうちの中央の抵抗器に並列接続されたコンデンサと、前記中央の抵抗器に第1の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第1の検出手段と、前記中央の抵抗器に第2の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第2の検出手段とからなり、前記第1の増幅回路の出力端の電位と前記第2の増幅回路の出力端の電位にずれが生じたこと検出する検出手段と、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づき、前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路の一方が過電流状態になったかを判定する過電流判定手段と、前記過電流判定手段によって過電流状態になったと判定された増幅回路への電源電圧の供給を停止することによって過電流状態になったと判定された増幅回路のみの動作を停止させる動作停止手段とを備える。
【0038】
本発明に係るパワーアンプ装置においては、通常動作時は、負荷の一端が接続される第1の増幅回路の出力端と、負荷の他端が接続される第2の増幅回路の出力端とは、共に電源電圧の中点電位となる。
【0039】
一方、パワーアンプ装置に電源が投入されている状態において、例えばスピーカ19とスピーカ端子SP+、SP−とを結線する際などにおいて、スピーカ端子SP+又はスピーカ端子SP−の一方に、一端側が接続されているスピーカコードの他端が、シャーシや金属に触れるなどした場合に、当該スピーカコードが接続されている方のスピーカ端子を出力端とする増幅回路の増幅素子には大電流が流れ、また、この増幅回路の出力端の電位が下がる。
【0040】
このため、他の増幅回路の出力端の中点電位に対するずれが生じ、そのずれが検出手段により検出される。そして、動作停止手段は、その検出出力により、増幅回路の動作を実質的に停止させる。これにより、増幅回路の増幅素子や負荷が保護される。
【0041】
これらの増幅回路として、パルス幅変調信号によるスイッチングアンプとすることができる。この場合には、第1の増幅回路は、入力信号を、その量子化レベルをパルス幅に対応させた第1のパルス幅変調信号に変換して出力する第1のパルス幅変調手段と、第1のパルス幅変調手段から出力される第1のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第1のドライブパルスに変換して出力する第1のドライブ手段と、第1の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、第1のドライブ手段からの一対の第1のドライブパルスが、第1の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の一端に接続される第1のプッシュプル回路とを備える。また、第2の増幅回路は、入力信号を、その量子化レベルの2の補数をパルス幅に対応させた第2のパルス幅変調信号に変換して出力する第2のパルス幅変調手段と、第2のパルス幅変調手段から出力される第2のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第2のドライブパルスに変換して出力する第2のドライブ手段と、第2の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、第2のドライブ手段からの第2の一対のドライブパルスが、第2の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の他端に接続される第2のプッシュプル回路とを備える。そして、検出手段は、第1のプッシュプル回路の出力端の電位と、第2のプッシュプル回路の出力端の電位とのずれを検出する。
【0042】
この場合にも、パワーアンプ装置に電源が投入されている状態において、例えばスピーカ端子SP+又はスピーカ端子SP−の一方が、シャーシや金属に触れるなどした場合に、接地されたスピーカ端子を出力端とするプッシュプル回路のスイッチング素子には大電流が流れ、また、このプッシュプル回路の出力端の電位が下がる。
【0043】
このため、他のプッシュプル回路の出力端の中点電位に対するずれが生じ、そのずれが検出手段により検出される。そして、動作停止手段は、その検出出力により、プッシュプル回路の動作を実質的に停止させる。これにより、プッシュプル回路のスイッチング素子や負荷が保護される。
【0046】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施の形態の説明から一層明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、パワーアンプの最小出力のときと、最大出力のときとで、所期の比率の出力が得られないという従来の技術が有している問題点を解決しつつ、過電流時のプッシュプル回路のスイッチング素子や、負荷の保護を図ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係るパワーアンプ装置を、前述したデジタルオーディオ信号の電力増幅装置に適用した例を挙げて説明する。
【0049】
図5は、本発明に係るパワーアンプ装置の構成を示す回路図であり、過電流検出回路部分を除くPWM駆動回路部分は、前述した図1に示したものと全く同様である。
【0050】
本発明においては、電源端子20からの電源電圧+VDDは、前述した図4に示す従来例の場合と異なり、抵抗器を介さずに直接にプッシュプル回路15及び16に供給される。
【0051】
本発明に係るパワーアンプ装置の過電流検出回路30においては、プッシュプル回路15の出力端であるFET151のソースとFET152のドレインとの接 続点TP15と、プッシュプル回路16の出力端であるFET161のソースとFET162のドレインとの接続点TP16との間に、抵抗器31、32、33の直列回路が接続される。中央の抵抗器32に並列にコンデンサ34が接続される。このコンデンサ34は、この過電流検出回路30が低周波成分についてのみ 動作するようにするために設けられる。
【0052】
抵抗器31と32の接続点が、PNP型トランジスタ35のエミッタに接続されると共に、PNP型トランジスタ36のベースに接続される。抵抗器32と33の接続点が、PNP型トランジスタ35のベースに接続されると共に、PNP型トランジスタ36のエミッタに接続される。そして、PNP型トランジスタ35 及びPNP型トランジスタ36のコレクタ同士が接続され、その接続点がトランジスタ37のベースに接続される。このトランジスタ37のエミッタは接地され、そのコレクタに得られる過電流検出出力は、マイクロコンピュータ22に供給される。
【0053】
以上の構成においては、通常動作時には、接続点TP15及びTP16は、共に中点電位、つまり、+VDD/2となり、PWM駆動回路部分は、図4の場合と全く同様にして動作する。このとき、接続点TP15及びTP16は、前述したように、共に中点電位であるため、過電流検出回路30には電流は、流れず、トランジスタ35、36は共にオフ、したがって、トランジスタ37もオフの状態となる。
【0054】
この場合に、図4に示す従来例とは異なり、プッシュプル15及び16には、電源端子20からの電源電圧+VDDが直接に供給されるので、図4に示す従来例のようなレベル変動がスピーカ19での再生音声に生じることはなく、音声品質の劣化は生じない。
【0055】
次に、図5に示すパワーアンプ装置に電源が投入されている状態において、スピーカ端子SP−側が、前述したような理由で接地されるなどすると、プッシュプル回路16の出力端、つまり接続点TP16の電位が中点電位よりも下がる。
【0056】
すると、接続点TP15から接続点TP16側に向かって電流が流れ、抵抗器32における電圧降下分により、トランジスタ35がオンとなる。このため、トランジスタ37がオンとなって、過電流状態が検出され、その過電流状態の検出出力がマイクロコンピュータ22に供給される。
【0057】
マイクロコンピュータ22は、受け取った過電流検出出力に基づいて、ドライブ回路13及び14を非動作状態に制御して、プッシュプル回路15及び16のFET151、152、161、162の全てをオフする。これにより、プッシュプル回路16には過電流が流れなくなり、FET161、162が保護されると共に、負荷としてのスピーカ19が接続されている場合には、スピーカ19も保護される。
【0058】
図5に示すパワーアンプ装置に電源が投入されている状態において、スピーカ端子SP+側が、前述したような理由で接地されるなどすると、プッシュプル回路15の出力端、つまり接続点TP15の電位が中点電位よりも下がる。
【0059】
すると、接続点TP16から接続点TP15側に向かって電流が流れ、抵抗器32における電圧降下分により、トランジスタ36がオンとなる。このため、トランジスタ37がオンとなって、過電流状態が検出され、その過電流状態の検出出力がマイクロコンピュータ22に供給される。
【0060】
マイクロコンピュータ22は、受け取った過電流検出出力に基づいて、ドライブ回路13及び14を非動作状態に制御して、プッシュプル回路15及び16のFET151、152、161、162の全てをオフする。これにより、プッシュプル回路15には過電流が流れなくなり、FET151、152が保護されると共に、負荷としてのスピーカ19が接続されている場合には、スピーカ19も保護される。
【0061】
以上のようにして、本発明に係るパワーアンプ装置の検出回路30によれば、プッシュプル回路を構成するスイッチング素子としてのFET151、152、161、162や、負荷としてのスピーカが、過電流に対して保護されると共に、パワーアンプの最小出力のときと、最大出力のときとで、所期の比率の出力が得られる。
【0062】
なお、上述の例では、マイクロコンピュータ22は、過電流検出出力によりドライブ回路13及び14の動作を制御するようにしたが、マイクロコンピュータ22は、過電流検出出力によりPWM変調回路11の出力PA、PBを停止するように制御してもよい。
【0063】
また、マイクロコンピュータ22は、過電流検出出力により、PWM変調回路11やドライブ回路13、14の動作を実質上不能にするために、それらPWM変調回路11やドライブ回路13、14、プッシュプル回路15、16への電源供給を遮断するようにしてもよい。
【0064】
また、図6に示すように、スピーカ端子SP+とフィルタ17との間及びスピーカ端子SP−とフィルタ18との間に、通常はオンとされる出力遮断用のスイッチ回路41、42を設け、マイクロコンピュータ22が、過電流検出出力に基づいて、過電流検出時には、これらのスイッチ回路41、42をオフするようにしてもよい。スイッチ回路41、42をオフすることにより、負荷側が出力端から切断され、不具合を生じる電流のルートが断たれるからである。
【0065】
上述した本発明に係るパワーアンプ装置の検出回路30では、プッシュプル回路15及び16の出力端(接続点TP15及びTP16)の間に直列接続された3本の抵抗器を使用して過電流状態を検出したが、両出力端の間の電位変化が検出されればよいので、例えば抵抗器は1本でも構成できることはもちろんである。あるいは、両出力端の電位のずれを検出する回路であってもよい。
【0066】
なお、上述した検出回路30では、接続点TP15及びTP16のいずれかの電位が中点電位からずれた場合に、プッシュプル回路15及び16のFET151、152、161、162の全てをオフするようにしたが、図7に示すように、接続点TP15及びTP16の電位のずれをそれぞれ検出して、どちらのプッシュプル回路が過電流状態となったか判断し、過電流状態となったと判断されたプッシュプル回路のFETのみをオフとするように制御してもよい。すなわち、接続点TP16の電位が中点電位よりも下がった場合は、接続点TP15から接続点TP16側に向かって電流が流れる抵抗器32における電圧降下分により、トランジスタ35がオンとなり、このため、トランジスタ39がオンとなって、接続点TP16側の過電流状態が検出され、その過電流状態の検出出力がマイクロコンピュータ22に供給される。マイクロコンピュータ22は、受け取った過電流検出出力に基づいて、プッシュプル回路16のFET161、162をオフするように制御する。逆に、接続点TP15の電位が中点電位よりも下がった場合は、接続点TP16から接続点TP15側に向かって電流が流れる抵抗器32における電圧降下分により、トランジスタ36がオンとなり、このため、トランジスタ38がオンとなって、接続点TP15側の過電流状態が検出され、その過電流状態の検出出力がマイクロコンピュータ22に供給される。マイクロコンピュータ22は、受け取った過電流検出出力に基づいて、プッシュプル回路15のFET151、152をオフするように制御する。もちろん、この例においても、マイクロコンピュータ22がいずれの過電流検出出力を受け取った場合にプッシュプル回路15及び16のFET151、152、161、162の全てをオフするようにしてもよい。
【0067】
また、上述した例では、検出回路30はプッシュプル回路15及び16の出力端の間に接続されるが、ローパスフィルタ17及び18の出力端の間、つまりスピーカ端子SP+とスピーカ端子SP−との間に接続されるようにしてもよい。この場合、ローパスフィルタ17及び18の出力端ではアナログ信号とされた出力が得られるので、検出回路30の過電流検出用の抵抗器32及び並列コンデンサ34による時定数を大きくする必要がある。
【0068】
なお、上述の例では、入力信号Pinがデジタルオーディオ信号の場合である場合を例に挙げて説明したが、アナログオーディオ信号であってもよい。また、PWM変調回路11及びドライブ回路13、14を一体化した構成とすることもできる。さらに、PWM変調回路11及びドライブ回路13、14はハードウェア構成とすることはもちろん、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータで実行されるソフトウェア処理により各PWM信号を得るようにしてもよい。
【0069】
上述の例では、パワーアンプ部としてプッシュプル回路15及び16により説明したが、それぞれスイッチング素子1個によるシングルエンド構成とすることもできる。この場合、FET152、162の代わりに例えば抵抗器に置き換えればよく、ドライブ回路13、14は不要となる。
【0070】
さらに、パワーアンプ部がアナログ回路である場合にも本発明の技術が適用できる。例えば、図8のパワーアンプ装置は、所謂BTLタイプの構成を示している。アナログオーディオ信号Sinが、入力端子Tinより供給され、非反転パワーアンプ回路51で電力増幅され、スイッチ回路41を介して、スピーカ19の一端が接続されるスピーカ端子SP+に出力される。一方、アナログオーディオ信号Sinがインバータ53を介して非反転パワーアンプ回路52に供給される。パワーアンプ回路52で電力増幅され、スイッチ回路42を介して、スピーカ19の他端が接続 されるスピーカ端子SP−に出力される。インバータ53及び非反転パワーアンプ回路52は、反転パワーアンプを構成している。ここで、パワーアンプ回路51、52は、例えば正極の直流電圧+VDDのみが電源電圧として電源端子20に供給される、いわゆる片電源方式とされ、その出力端における電位は共に中点電位、つまり、+VDD/2となっているものとする。そして、この例においても、それぞれの出力端、つまり接続点TP51及びTP52の間に過電流検出回路30が接続され、スピーカ端子SP+あるいはSP−が接地されると、上述の実施態様と同様に、過電流状態が検出され、マイクロコンピュータ22がパワーアンプ回路51、52を保護するように制御する。図8では、マイクロコンピュータ22がスイッチ回路41、42をオフするように制御する。
【0071】
また、上述の例は、本発明をオーディオ用のアンプに適用した例を挙げて説明したが、モータなどの電力機器を駆動するためのアンプとして使用することもできる。また、スピーカ19に代えて任意の負荷を接続すれば、その負荷に動作電圧を供給することができると共に、入力信号Pinを変更することにより、負荷に供給される電圧の大きさを変更することができる。
【0072】
なお、上記の例では、過電流検出回路の過電流検出出力を、マイクロコンピュータに供給し、マイクロコンピュータが負荷を切り離したり、ドライブ回路やPWM変調回路を制御したり、各回路への電源の遮断をコントロールしたりするようにしたが、本発明は、マイクロコンピュータではなく、専用の制御回路を別個に設けて制御を行うようにしてもよい。
【0073】
なお、本発明は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上述したように、本発明によれば、パワーアンプの最小出力のときと、最大出力のときとで、所期の比率の出力が得られないという従来の技術が有している問題点を解決しつつ、過電流時のプッシュプル回路のスイッチング素子や、負荷の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】 PWM駆動のパワーアンプ装置の構成例を示す回路図である。
【図2A】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図2B】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図2C】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図2D】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3A】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3B】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3C】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3D】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3E】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図3F】 図1に示すパワーアンプ装置の動作の説明に供する図である。
【図4】 従来の過電流保護回路を備えるパワーアンプ装置を示す回路図である。
【図5】 本発明に係るパワーアンプ装置を示す回路図である。
【図6】 本発明に係るパワーアンプ装置の他の例を示す回路図である。
【図7】 本発明に適用される過電流検出回路の他の例を示す回路図である。
【図8】 本発明に係るパワーアンプ装置の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
11 PWM変調回路、12 クロック生成部、13 ドライブ回路、14 ドライブ回路、15 プッシュプル回路、151 MOS−FET、152 MOS−FET、16 プッシュプル回路、161 MOS−FET、162 MOS−FET、17 ローパスフィルタ、18 ローパスフィルタ、19 スピーカ、22 マイクロコンピュータ、TP15 接続点、TP16 接続点、30 過電流検出回路、31 抵抗器、32 抵抗器、33 抵抗器、34 コンデンサ、35 PNP型トランジスタ、36 PNP型トランジスタ、37 トランジスタ、38 トランジスタ、39 トランジスタ

Claims (6)

  1. 入力信号を、その量子化レベルをパルス幅に対応させた第1のパルス幅変調信号に変換して出力する第1のパルス幅変調手段と、前記第1のパルス幅変調手段からのドライブパルスに応じて、スイッチング動作をし、出力端が負荷の一端に接続される第1のスイッチング回路とを備え、前記入力信号を非反転増幅する第1の増幅回路と、
    前記入力信号を、その量子化レベルの2の補数をパルス幅に対応させた第2のパルス幅変調信号に変換して出力する第2のパルス幅変調手段と、前記第2のパルス幅変調手段からのドライブパルスに応じて、スイッチング動作をし、出力端が前記負荷の他端に接続される第2のスイッチング回路とを備え、前記入力信号を反転増幅する第2の増幅回路と、
    前記第1の増幅回路の出力端と前記第2の増幅回路の出力端との間に直列接続された3個の抵抗器と、前記直列接続された3個の抵抗器のうちの中央の抵抗器に並列接続されたコンデンサと、前記中央の抵抗器に第1の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第1の検出手段と、前記中央の抵抗器に第2の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第2の検出手段とからなり、前記第1の増幅回路の出力端の電位と前記第2の増幅回路の出力端の電位にずれが生じたこと検出する検出手段と、
    前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づき、前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路の一方が過電流状態になったかを判定する過電流判定手段と、
    前記過電流判定手段によって過電流状態になったと判定された増幅回路への電源電圧の供給を停止することによって過電流状態になったと判定された増幅回路のみの動作を停止させる動作停止手段と
    を備えるパワーアンプ装置。
  2. 前記動作停止手段は、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づいて、前記第1及び第2のパルス幅変調手段、前記第1及び第2のスイッチング回路の少なくとも何れかへの電源電圧の供給を停止する請求項に記載のパワーアンプ装置。
  3. 前記動作停止手段は、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づいて、前記第1及び/又は第2のパルス幅変調手段からのパルス幅変調信号の出力を停止する請求項1に記載のパワーアンプ装置。
  4. 入力信号を、その量子化レベルをパルス幅に対応させた第1のパルス幅変調信号に変換して出力する第1のパルス幅変調手段と、前記第1のパルス幅変調手段から出力される前記第1のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第1のドライブパルスに変換して出力する第1のドライブ手段と、第1の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、前記第1のドライブ手段からの前記一対の第1のドライブパルスが、前記第1の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の一端に接続される第1のプッシュプル回路とを備え、前記入力信号を非反転増幅する第1の増幅回路と、
    前記入力信号を、その量子化レベルの2の補数をパルス幅に対応させた第2のパルス幅変調信号に変換して出力する第2のパルス幅変調手段と、前記第2のパルス幅変調手段から出力される前記第2のパルス幅変調信号を互いに逆レベルの一対の第2のドライブパルスに変換して出力する第2のドライブ手段と、第2の一対のスイッチング素子がプッシュプル接続されて構成され、前記第2のドライブ手段からの前記一対の第2のドライブパルスが、前記第2の一対のスイッチング素子に供給され、出力端が負荷の他端に接続される第2のプッシュプル回路とを備え、前記入力信号を反転増幅する第2の増幅回路と、
    前記第1の増幅回路の出力端と前記第2の増幅回路の出力端との間に直列接続された3個の抵抗器と、前記直列接続された3個の抵抗器のうちの中央の抵抗器に並列接続されたコンデンサと、前記中央の抵抗器に第1の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第1の検出手段と、前記中央の抵抗器に第2の方向に電流が流れて電圧降下を生じたことを検出する第2の検出手段とからなり、前記第1の増幅回路の出力端の電位と前記第2の増幅回路の出力端の電位にずれが生じたこと検出する検出手段と、
    前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づき、前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路の一方が過電流状態になったかを判定する過電流判定手段と、
    前記過電流判定手段によって過電流状態になったと判定された増幅回路への電源電圧の供給を停止することによって過電流状態になったと判定された増幅回路のみの動作を停止させる動作停止手段と
    を備えるパワーアンプ装置。
  5. 前記動作停止手段は、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づいて、前記第1及び/又は第2のパルス幅変調手段からのパルス幅変調信号の出力を停止する請求項に記載のパワーアンプ装置。
  6. 前記動作停止手段は、前記第1及び第2の検出手段の検出出力に基づいて、前記第1及び/又は第2のドライブ手段からの一対のドライブパルスの出力を停止する請求項に記載のパワーアンプ装置。
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