JP4681191B2 - 2主軸対向旋盤 - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は、同一軸線上に互いに対向する2本の主軸を備え、かつこれらの主軸と協働してワークを加工する工具タレットを複数個備えた2主軸対向型マルチタレット旋盤に関するものである。
背景技術
同一軸線上に互いに対向する2本の主軸を備えた2主軸対向旋盤は公知である。通常の旋盤は、ワークの一端を把持して加工を行なうので、当該一端の加王を行なうことができない。しかし2主軸対向旋盤であれば、同一機械上で加工途中のワークを一方の主軸から他方の主軸へと受け渡すことで、互いに相手側主軸のチャックで把持されていた端部の加工を行うことができる。
更に、複数の工具タレットを備えた2主軸対向旋盤は、一方の主軸に把持されたワークと他方の主軸に把持されたワークとに異なる加工を並行して行うことができ、加工能率が向上する。工具タレットには、ドリルやミーリングカッタなどの回転工具、テールストック、ワークの周面をサポートする支持ローラなどを取り付けることも可能である。そこでこれらを適宜組み合わせて工具タレットに装着することによって、ワークに広範な加工を行うことが可能になる。
従来の2主軸対向旋盤における複数タレットの組合せは、2主軸2タレット及び2主軸3タレットである。2主軸2タレットの旋盤は、2本の主軸の各々と協働してワークを加工する工具タレットを1個ずつ設けた構造である。この種の旋盤で一方の主軸に把持された1個のワークを2個の工具タレットを用いて加工を行なうこと、例えば他方の主軸と協働する工具タレットに装着したテールストックでワークの反チャック側を保持して旋削加工を行うという加工も可能であるが、そのような加工を行うときには、他方の主軸でのワークの加工は不可能である。
2主軸3タレットの旋盤は、通常、第3タレットが第1主軸のワークを加工する位置から第2主軸のワークを加工する位置まで移動可能であり、第1主軸と第2主軸とは、必要なときに2個のタレットと協働してワークの加工を行うことができる。従って、例えば、一方の主軸で2個のタレットを用いてワークの外径と内径とを同時に加工しつつ、他方の主軸に把持されたワークの旋削加工やドリル加工を行うという動作が可能である。
1個の主軸に把持されたワークを2個の工具タレットを用いて加工すれば、主軸軸線を挟んで対向する2位置でワークを切削することにより、ワークにかかる加工反力をバランスさせるバランス加工ができる。また、一方のタレットに装着したテールストックを用いるシャフト材の加工や、外径と内径の同時加工などの、1主軸1タレットでは不可能な種々の形態での加工ができる。更に、ワークの2箇所を同時加工することも可能であるため、加工能率も向上する。
しかし従来用いられている2主軸3タレットの旋盤では、第3タレットが一方の主軸と協動して加工を行っているときは、他方の主軸側では1個のタレットしか用いることができず、当該一方の主軸で第3タレットが担当している加工が終了するまで、2タレットを用いる加工を待たなければならない。
発明の開示
この発明は、ワークの加工をより能率的に行うことができるマルチタレット型の2主軸対向旋盤を提供する。更にこの発明は、主軸方向(Z軸)及び工具の切込み方向(X軸)との両者と直交する方向(Y軸)に工具を移動及び位置決め可能にした合理的な構造を提供することにより、より広範な加工を経済的に可能にする。
この発明の2主軸対向旋盤は、第1主軸2と、当該第1主軸の軸線上でその軸線方向に移動かつ位置決め可能に対向している第2主軸4とを備えており、前記第1主軸と協働してワークを加工する2個一組の工具タレット8a、8cと、第2主軸と協働してワークを加工する2個一組の工具タレット8b、8dとを備えている。各組の2個の工具タレットは、主軸軸線Bを挟んで対向する手前側下方と奥側上方とに配置される。
2個2組の4個の工具タレットは、そのすべてをZ軸方向及びX軸方向に移動かつ位置決め可能な刃物台に装着するのがもっとも好ましい。また、この4個の工具タレットは、そのすべてを第1主軸に把持されたワークを加工する位置から第2主軸に把持されたワークを加工する位置まで各独立して移動可能に設けるのが好ましい。対向する2個一組の工具タレットの少なくとも一方は、ドリルやフライスカッタなどの回転工具の駆動装置を備えたものとする。
この発明のより好ましい構造の2主軸対向旋盤は、第2主軸4と主軸軸線方向に移動不能な第1主軸とが同一基台上のオペレータから見て右側と左側とに配置されている。各主軸と協働する各2個の工具タレットのうちの各1個は主軸軸線Bの奥側上方に配置され、他方の各1個は主軸軸線の手前側下方に配置される。これら4個の工具タレットは、すべてが主軸方向及び主軸直角方向に移動位置決め可能に装着されている。
この発明の更に好ましい構造の2主軸対向旋盤は、主軸軸線Bの奥側上方に配置された工具タレットのY軸移動位置決め装置を備え、かつ当該奥側の工具タレットが回転工具の駆動装置を備えている構造である。この構造における主軸軸線Bの手前側下方に配置された工具タレットは、Y軸移動位置決め装置を備えていない。
発明を実施するための最良の形態
図1及び図3において、第1主軸台1は、主軸方向(Z軸方向)の位置が固定された固定主軸台で、この第1主軸台に第1主軸2が高速回転、低速高トルク回転及び角度割出し可能に軸支されている。この第1主軸2と対向して同一主軸軸線B上に第2主軸台3で軸支された第2主軸4が配置されている。第2主軸台3は、ベッド7に設けた主軸ガイド9に沿って、第1主軸2に対して近接離隔方向に移動及び位置決め可能である。第2主軸4も第1主軸2と同様に、図示しない駆動モータにより高速回転、低速高トルク回転及び角度割出しが可能である。第1主軸2及び第2主軸4の対向端には、それぞれ第1チャック5及び第2チャック6が装着されている。
第1主軸2と第2主軸4は、加工領域Aを挟んでオペレータから見て左右両側に配置されている。図2に明示されているように、ベッド7はオペレータ側が低くなる方向に傾斜した、いわゆるスラント型である。そのベッドの主軸を挟む手前側と奥側とに、手前側Z軸ガイド11aと奥側Z軸ガイド11cとが、主軸軸線Bと平行に配置されている。ベッド7がスラント型である関係上、手前側Z軸ガイド11aは主軸軸線Bのオペレータから見て手前側下方に、奥側Z軸ガイド11cは奥側上方に位置する。
各Z軸ガイド11a及び11cの左右には、第1主軸側と第2主軸側のスライド台25a、25b及び25c、25dが摺動自在に装着されている。各Z軸ガイド11a、11cと平行に、各2本のZ送りネジ26a、26b及び26c、26dがベッド7に軸支して設けられており、各Z送りネジの軸端にはZ送りモータ27a、27b及び27c、27dが連結されている。4本のZ送りネジ26a、26b、26c、26dはそれぞれスライド台25a、25b、25c、25dに螺合している。
各スライド台には、X軸ガイド12a、12b、12c、12d、これらのX軸ガイドと平行なX送りネジ36a、36b、36c、36d、及び、各X送りネジの軸端に連結されたX送りモータ37a、37b、37c、37dが設けられている。手前側のスライド台のX軸ガイド12a、12bには、刃物台13a、13bが移動自在に装着され、これらの刃物台はそれぞれのX送りネジ36a、36bに螺合している。奥側のスライド台のX軸ガイド12c、12dには、Xスライド台35c、35dが移動自在に装着され、これらのXスライド台はそれぞれのX送りネジ36c、36dに螺合している。
Xスライド台35c、35dは、側面形状がL形をしている。各Xスライド台には、Y軸ガイド14c、14d、これらのY軸ガイドと平行なY送りネジ46c、46d、及び、各Y送りネジの軸端に連結されたY送りモータ47c、47dが設けられている。各Xスライド台のY軸ガイド14c、14dには、刃物台13c、13dが移動自在に装着され、これらの刃物台はそれぞれのY送りネジ46c、46dに螺合している。
以上のように装着された4個の刃物台には、それぞれ工具タレット8a、8b、8c、8dが搭載されている。手前側の工具タレット8a、8bは、主軸軸線Bより下方にあり、Z軸方向とX軸方向とに移動かつ位置決め可能である。奥側のタレット8c、8dは主軸軸線Bより上方にあり、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向に移動かつ位置決め可能である。
前記スライド台25a、25b、25c、25dは、第2主軸側の工具タレット8b、8dが第1主軸に把持されたワーク15aを加工するために第1主軸側に移動したときに第1主軸側のスライド台25a、25cが加工領域Aから待避可能で、第1主軸側の工具タレット8a、8cが第2主軸に把持されたワーク15bを加工するために第2主軸側に移動したときに第2主軸側のスライド台25b、25dが加工領域から待避可能な長さで設けられている。
上記のように構成された2主軸対向旋盤の基本的なワーク加工動作は、次のとおりである。図示しないローダによって加工領域Aに搬送されて第1チャック5に把持されたワーク、または、第1主軸の中空孔を通して加工領域Aに挿入されて第1チャック5で把持されたワークが、第1主軸側の2個の工具タレット8a、8cに取り付けた刃物やテールストックなどを用いて加工される。
第1主軸側での加工が終了すると、第2主軸4が第1主軸側に移動して、第2チャック6でワークの加工済の先端を把持する。次に、第1チャック5を開くか、または、第1主軸と第2主軸とを同期回転させて突っ切りバイトでワークを切り離し、その後第2主軸台3が第1主軸台1から離隔することにより、ワークが第2主軸側に受け渡される。そして第2主軸側では、第2主軸側の工具タレット8b、8dに装着した刃物やテールストックなどを用いてワークの加工を行う。
ワークが第2主軸に受け渡された後、第1主軸には次のワークが装填され、第1主軸側と第2主軸側とでそれぞれ2個一組の工具タレットと協働してワークの加工が行われる。
図4ないし図7は、この発明の旋盤による加工の例を模式的に示したものである。図4の例では第1主軸側のワーク15aが第1主軸側の工具タレット8a、8cに装着された外径加工バイト16a、16cでバランス加工されており、第2主軸側のワーク15bは、第2主軸側の工具タレット8b及び8dに装着された外径加工バイト16dと内径加工バイト17とにより、内径と外径とが同時加工されている。バランス加工は、主軸軸線Bを挟む両側から工具を進出させて加工を行うことにより、ワークに作用する加工反力をバランスさせて、重切削を行うときのワークの変形を防止し、加工精度の低下やびびり振動の発生を回避することができる。
図5の例では、第1主軸側のワークの反チャック側の端部が、第1主軸側の工具タレットの一方8aに装着されたテールストック21で保持された状態で、他方のタレット8cに装着した工具16cにより加工が行われており、第2主軸側のワーク15bは、第2主軸側の工具タレット8bに装着された支持ローラ22でワークの周面を支持しながら、他方の工具タレット8dに装着した工具16dで加工が行われている。
図6の例では、第1主軸側のワーク15aが第2主軸側の工具タレットの一方8bに装着された工具16bにより加工されており、第2主軸側のワーク15bが第1主軸側の工具タレットの一方8cに装着した工具16cで加工されている。このとき、第1主軸側と第2主軸側の他方の工具タレット8a、8dはZ軸ガイド11a、11cの端部で待避している。このような加工は、一般的には加工能率を低下させるが、加工に必要な工具の種類が多いときに有効である。
図7の例では、両端を第1主軸と第2主軸とで把持された細長いワーク15が第2主軸側の工具タレット8b、8dに装着された外径加工バイト16b、16dでバランス加工されており、第1主軸側の工具タレット8a及び8cはZ軸ガイド11a、11cの端部で待避している。このような加工は、細長いワークの端部から反対側の端部まで刃物の跡を残さないで滑らかに加工したいときに有効である。
産業上の利用可能性
2主軸対向旋盤の加工において、図4に示すように、第1主軸側及び第2主軸側で共に工具タレットの一方に装着されたテールストックや支持ローラなどのワーク支持部材でワークを支持しながら、他方の工具タレットに装着した工具でワークを加工するようにすれば、直径に比べて長さの長いシャフト材の加工も第1主軸側と第2主軸側とで同時並行的に行うことが可能になり、シャフト材加工時の加工能率の向上を図ることができる。
また図5に示すように、第1主軸側及び第2主軸側でこれらの主軸と協動する2個の工具タレットを同時に用いて加工を行なえば、加工能率が向上し、バランス加工を行なうことで重切削を可能にすることにより、さらなる加工能率の向上が図れる。
また図6に示すように、一方の主軸側の工具タレットに装着した工具で他方の主軸に把持されたワークを加工可能にすることで、加工に多種類の工具を必要とする加工が可能になる。また図7に示すように、第1主軸側又は第2主軸側の工具タレットに装着された工具でワークの全長を加工することにより、より表面精度の高い仕上げ加工が可能になる。
また図示実施例の旋盤のように、第1主軸台1を固定位置に設けた構造は、第1主軸側の剛性を高くできるので、第1主軸側で荒加工を行ない、第2主軸側で仕上げ加工を行なうという、ワークの受渡し順序と合った合理的な加工が可能である。また、4個の工具タレットのすべてを主軸方向及び主軸直角方向にCNC装置で各独立に移動位置決め可能にした構造は、加工の自由度と加工能率の向上及び制御の容易性の点で優れている。
更に図示実施例の旋盤のように、奥側の工具タレットのY軸移動を可能にした構造は、奥側の工具タレットにドリルやフライスカッタなどの回転工具を装着して、マシニングセンタに近い複雑な加工を可能にする。そして奥側の工具タレットのみをY軸移動可能とすることで、工具のY軸移動による広範な加工を可能にするとともに、機械が高価になるのを回避し、また上下寸法が大きくなるY軸移動装置が機械の奥側に位置することで、加工領域へのオペレータの作業性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
図1はこの発明の2主軸対向旋盤の一実施例を模式的に示す図で、図2の矢印C方向から見た図である。図2は図1の旋盤の側面図である。図3は図1の旋盤の刃物台の斜視図である。図4ないし図7は上記実施例の旋盤を用いた加工の例を図2の矢印Cの方向から見た模式図である。図において、符号の2は第1主軸、4は第2主軸、7はベッド、8a〜8dは工具タレット、9は主軸ガイド、11a、11cはZ軸ガイド、12a〜12dはX軸ガイド、14はY軸ガイド、Aは加工領域、Bは主軸軸線である。

Claims (3)

  1. 第1主軸(2)と、第1主軸に同一軸線上で近接離隔可能に対向している第2主軸(4)とを備えた2主軸対向旋盤において、第1主軸側に位置する2個一組の工具タレット(8a,8c)及び第2主軸側に位置する2個一組の工具タレット(8b,8d)を備え、各組の2個の工具タレットはオペレータから見て主軸軸線(B)を挟む手間側下方と奥側上方とに配置され、これら4個の工具タレットのすべてが主軸方向及び主軸直角方向に移動位置決め可能に装着され、前記4個の工具タレットのすべてが第1主軸に把持されたワークを加工する位置から第2主軸に把持されたワークを加工する位置まで各独立に移動可能で且つ、第2主軸側の工具タレット(8b,8d)が第1主軸に把持されたワークを加工するために第1主軸側に移動したときに第1主軸側の工具タレット(8a,8c)が前記工具タレット(8b,8d)の加工領域から退避可能であり、
    第1主軸側の工具タレット(8a,8c)が第2主軸に把持されたワークを加工するために第2主軸側に移動したときに第2主軸側の工具タレット(8b,8d)が前記工具タレット(8a,8c)の加工領域から退避可能であることを特徴とする、2主軸対向旋盤。
  2. 主軸軸線(B)の奥側上方に配置された2個の工具タレット(8c,8d)が回転工具駆動装置を備えている、請求項記載の2主軸対向旋盤。
  3. 主軸軸線(B)の奥側上方に配置された2個の工具タレット(8c,8d)がY軸方向に移動かつ位置決め可能に設けられている、請求項1又は2記載の2主軸対向旋盤。
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