JP4641719B2 - 透光性電磁波シールド膜の製造方法及び透光性電磁波シールド膜 - Google Patents
透光性電磁波シールド膜の製造方法及び透光性電磁波シールド膜 Download PDFInfo
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Description
また、透明性に関する要求レベルは、CRT用として凡そ70%以上、PDP用として80%以上が要求されており、更により高い透明性が望まれている。
例えば、特開平5−327274号公報(特許文献1)には、導電性繊維からなる電磁波シールド材が開示されている。しかし、このシールド材はメッシュ線幅が太くディスプレイ画面をシールドすると、画面が暗くなり、ディスプレイに表示された文字が見えにくいという欠点があった。
無電解メッキ触媒を印刷法で格子状パターンとして印刷し、次いで無電解メッキを行う方法が提案されている(例えば、特開平11−170420号公報(特許文献2)、特開平5−283889号公報(特許文献3)など)。しかし、印刷される触媒の線幅は60μm程度と太く、比較的小さな線幅、緻密なパターンが要求されるディスプレイの用途としては不適切であった。
さらに、無電解メッキ触媒を含有するフォトレジストを塗布して露光と現像を行うことにより無電解メッキ触媒のパターンを形成した後、無電解メッキする方法が提案されている(例えば、特開平11−170421号公報(特許文献4))。しかし、導電膜の可視光透過率は72%であり、透明性が不十分であった。更には、露光後に大部分を除去する無電解メッキ触媒として極めて高価なパラジウムを用いる必要があるため、製造コストの面でも問題があった。
フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工により、透明基体上に金属薄膜のメッシュを形成する方法が提案されている(例えば、特開2003−46293号公報(特許文献5)、特開2003−23290号公報(特許文献6)、特開平5−16281号公報(特許文献7)、特開平10−338848号公報(特許文献8)など)。この方法では、微細加工が可能であるため、高開口率(高透過率)のメッシュを作成することができ、強力な電磁波放出も遮蔽できるという利点を有する。しかし、その製造工程は煩雑かつ複雑で、生産コストが高価になるという間題点があった。また、エッチング工法によるところから、格子模様の交点部が直線部分の線幅より太い問題があることが知られている。また、モアレの問題も指摘され、改善が要望されていた。
銀塩を利用した感光材料は、従来主に、画像や映像を記録・伝達するため材料として利用されてきた。例えばカラーネガフィルム、黒白ネガフィルム、映画用フィルム、カラーリバーサルフィルム等の写真フィルム、カラーペーパー、黒白印画紙などの写真用印画紙等であり、更にまた、金属銀を露光パターン通りに形成できることを利用したエマルジョンマスク(フォトマスク)等が汎用となっている。これらはすべて銀塩を露光・現像して得られる画像自体に価値があり、画像そのものを利用している。
上記5つの文献に記載された方法では、導電性金属パターンが形成される層に特別に調製された物理現像核が露光部・未露光部の区別なく均一に設けられる。このため、金属銀膜が生成しない露光部に、不透明な物理現像核が残存し、光線透過性が損なわれるという欠点があった。特に、金属パターン材料をCRTやPDP等ディスプレイの透光性電磁波シールド材料として利用する場合には、上記の欠点は重大である。
また、高い導電性を得ることも困難で、高い導電性を得るために厚い銀膜を得ようとすると、透明性が損なわれる問題があった。したがって、上記銀塩拡散転写法をそのまま用いても、電子ディスプレイ機器の画像表示面からの電磁波をシールドするのに好適な、光透過性と導電性の優れた透光性電磁波シールド材料は得ることができなかった。
また、銀塩拡散転写法を用いないで、通常の市販のネガフィルムを利用し、現像、物理現像、メッキ工程を通じて導電性を付与した場合、導電性と透明性の点において、CRTやPDPの透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。
近年では、透明なガラスやプラスチック基板面に金属薄膜からなるメッシュを形成した電磁波遮蔽板が、極めて高い電磁波シールド性を有し、かつ良好な光透過性が得られることから、PDP等のディスプレイ用パネル等の電磁波シールド材として特に用いられるようになってきた。しかし、その価格は非常に高価であったため、製造コストの低減化が強く要望されていた。さらに、ディスプレイでは、高い画像の明度が要求されるため、100%に近い光透過性が強く求められていた。ところが、光透過性を向上させるために、開口率(メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合)を上げると、導電性が低下して電磁波シールド効果が損なわれるため、導電性(電磁波シールド効果)と光透過性を同時に向上させることは、これまでの技術では非常に困難であった。また、ディスプレイの画像表示面の前面に設置することからモアレが発生し、問題となっていた。
(1)支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(2)支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成し、さらに前記光透過性部及び前記導電性金属部を酸化処理することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(3)支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部及び前記光透過性部を酸化処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(4)支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部及び前記光透過性部を酸化処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成した後、さらに前記導電性金属部及び前記光透過性部を酸化処理することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(5)支持体上に設けられた銀塩とバインダーをAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、前記金属銀部をPdを含有する溶液で処理し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(6)前記金属銀部がパターン状である(1)〜(5)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(7)前記銀塩含有層中の銀塩がハロゲン化銀であることを特徴とする(1)〜(7−0)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(8)前記ハロゲン化銀が臭化銀を主体とすることを特徴とする(7−0)または(7)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(9)前記ハロゲン化銀がロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物を含有することを特徴とする(7−0)〜(8)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(10)前記ハロゲン化銀がPd(II)イオン及び/又はPd金属を含有することを特徴とする(7−0)〜(9)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(11)前記ハロゲン化銀がPd(II)イオン及び/又はPd金属を前記ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有することを特徴とする(10)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(12)前記銀塩含有層中のAg/バインダー体積比が1/2以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13)前記銀塩含有層中のAg/バインダー体積比が1/1以上であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13−2)前記銀塩含有層中のAg/バインダー体積比が100以下であることを特徴とする(1)〜(13−1)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13−3)前記バインダーが水溶性ポリマーであることを特徴とする(1)〜(13−2)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13−4)前記バインダーがゼラチンであることを特徴とする(1)〜(13−3)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(14)前記銀塩含有層中の銀塩の球相当径が0.1〜100nmであることを特徴とする(1)〜(13−4)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(15)前記露光がレーザービームによる走査露光方式で行われることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(16)前記露光がフォトマスクを介して行われることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(17)前記銀塩含有層の現像処理で用いられる現像液が画質向上剤を含有することを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(18)前記画質向上剤が含窒素へテロ環化合物である(17)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(19)前記銀塩含有層の現像処理で用いられる現像液がリス現像液であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(19−2)前記銀塩含有層の現像処理が定着処理を含むことを特徴とする(1)〜(19)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(20)前記現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量が、露光前の前記露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることを特徴とする(1)〜(19−2)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(22)前記メッキ処理が電解メッキで行われることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(23)前記メッキ処理が無電解メッキ及びそれに続く電解メッキで行われることを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(24)前記無電解メッキが無電解銅メッキであることを特徴とする(21)又は(23)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(25)前記銀塩含有層の現像処理後の階調が4.0を超えることを特徴とする(1)〜(24)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(26)前記導電性金属部の表面をさらに黒化処理することを特徴とする(1)〜(25)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(27)前記光透過性部が実質的に物理現像核を有しないことを特徴とする(1)〜(26)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(28)前記物理現像及び/又はメッキ処理後の透光性電磁波シールド膜の表面抵抗が2.5Ω/sq以下であり、かつ/又は前記光透過性部の透過率が95%以上であることを特徴とする(1)〜(27)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(28−2)前記物理現像及び/又はメッキ処理後の透光性電磁波シールド膜の表面抵抗が1.1Ω/sq以下であることを特徴とする(1)〜(28)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(29)(1)〜(28)のいずれかの製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜。
(30)前記導電性金属部に含まれる金属成分の全質量に対する銀の質量が50質量%以上であることを特徴とする(29)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(31)前記導電性金属部に含まれる金属成分の全質量に対する銀、銅及びパラジウムの合計の質量が80質量%以上であることを特徴とする(29)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(32)前記導電性金属部の形状がメッシュ状であることを特徴とする(29)〜(31)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(33)前記導電性金属部の開口率が85%以上であることを特徴とする(32)に記載の透光性電磁波シールド膜。
(34)前記導電性金属部に担持された導電性金属粒子からなる層の厚さが0.1μm以上5μm未満であり、かつ表面抵抗値が3Ω/sq以下であることを特徴とする(29)〜(33)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(35)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上18μm未満であることを特徴とする(29)〜(33)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(36)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上14μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(37)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上10μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(38)前記導電性金属部の線幅が0.1μm以上7μm未満であることを特徴とする(29)〜(34)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(39)前記光透過性部の透過率が95%以上であることを特徴とする(29)〜(38)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(40)前記光透過性部の透過率が98%以上であることを特徴とする(29)〜(38)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
(41)(29)〜(40)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜を有するプラズマディスプレイパネル。
従来の銀塩拡散転写法を利用した方法(アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、第72巻、645項、2000年発刊(非特許文献1)、国際公開WO 01/51276号公報(特許文献11)、特開2000−149773号公報(特許文献12)に記載の方法)では、物理現像核層が金属画像部及び透光性部に均一に設けられるため、金属画像部の他に透光性部にも物理現像核が残存する。したがって、銀塩拡散転写法では、残存した物理現像核が光を吸収してしまうため、透光性部における透過性が損なわれるという原理的な問題点を有していた。
なお、本発明における光透過性部の「透過率」とは、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率を指し、(透光性電磁波シールド材料の透過率)/(支持体の透過率)×100(%)で表される。光透過性部の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがさらにより好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
本発明では、支持体として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラスなどを用いることができる。
プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
本発明におけるプラスチックフィルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
本発明において、光センサーとして銀塩を含有する層(銀塩含有層)が支持体上に設けられる。銀塩含有層は、銀塩のほか、バインダー、溶媒等を含有することができる。
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩及び酢酸銀などの有機銀塩が挙げられるが、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
本発明では、光センサーとして機能させるためにハロゲン化銀を使用する。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
本発明において、ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4やNa2PdCl4等が挙げられる。
本発明で使用できる乳剤としては、例えば、特開平11−305396号公報、特開2000−321698号公報、特開平13−281815号公報、特開2002−72429号公報の実施例に記載されたカラーネガフィルム用乳剤、特開2002−214731号公報に記載されたカラーリバーサルフィルム用乳剤、特開2002−107865号公報に記載されたカラー印画紙用乳剤などを好適に用いることができる。
本発明の銀塩含有層において、バインダーは、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができる。本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
本発明の銀塩含有層で用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の銀塩含有層に用いられる溶媒の含有量は、前記銀含有層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であることが好ましく、50〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光、X線などの放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
本発明では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、後述する光透過性部が形成される。
本発明では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はメッキ処理を行う。本発明では物理現像又はメッキ処理のみで導電性金属粒子を金属性部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とメッキ処理を組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。
本発明における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオンなどの金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフィルム、インスタントスライドフィルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
無電解銅メッキ液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅メッキ浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
本発明では、現像処理後の金属銀部、並びに物理現像及び/又はメッキ処理後に形成される導電性金属部には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後、あるいは物理現像又はメッキ処理後に行うことができ、さらに現像処理後と物理現像又はメッキ処理後のそれぞれで行ってもよい。
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
本発明では、導電性金属部は、前述した露光及び現像処理により形成された金属銀部を物理現像又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
金属銀は、露光部に形成させる場合と、未露光部に形成させる場合がある。物理現像核を利用した銀塩拡散転写法(DTR法)は、未露光部に金属銀を形成させるものである。本発明においては、透明性を高めるために露光部に金属銀を形成させることが好ましい。
前記金属部に担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、又はこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属粒子は、銅、アルミニウム又はニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記導電性金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波シールド膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
ここに、「実質的に物理現像核を有しない」とは、光透過性部における物理現像核の存在率が0〜5%の範囲であることをいう。
本発明の透光性電磁波シールド膜における支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
本発明では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はメッキ処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する透光性電磁波シールド膜であっても容易に形成することができる。
本発明では、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板などの透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼ぶ。
水媒体中のAg60gに対してゼラチン7.5gを含む、球相当径平均0.05μmの沃臭化銀粒子(I=2モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/1とし、ゼラチン種としては平均分子量2万の低分子量ゼラチンを用いた。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。PETは塗布前にあらかじめ親水化処理したものを用いた。乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスク(ライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスク)を介して紫外線ランプを用いて露光し、下記の現像液を用いて25℃で45秒間現像し、さらに定着液(スーパーフジフィックス:富士写真フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
前述の従来技術欄の「(3)フォトグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュ」の代表として、特開2003−46293号公報記載の金属メッシュの作成を行った。
このサンプルは特開2003−46293号公報の実施例1と同様の実験を行って作成した。尚、本発明のサンプルとメッシュ形状(線幅、ピッチ)を一致させるために、上記と同じピッチ200μmのフォトマスクを利用した。
また、金属細線メッシュがディスプレイ画像を視認する際に悪影響を及ぼすか否かをか判断するために以下のようなモアレの評価を行った。
日立製PDP及び松下電器製PDP前面に、モアレが最小のバイアス角度で電磁波シールド膜を設置し、目視による官能評価を行った。PDPに正対して観察すると共に、PDPに対して視点を様々な位置に置いてPDP画像表示面に対して斜め方向から観察を行った。いずれのモアレが顕在化しなかった場合を○、モアレが顕在化したサンプルを×と評価した。
光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察・写真撮影して、メッシュをなす金属細線の交差する交点部の形状を観察した。交点部の線幅が直線部分の線幅の1.5倍未満の場合、交点の太りの問題なし(○)、1.5倍以上の場合太りの問題あり(×)と評価した。
比較例の透光性導電膜と、本発明のサンプルAを比べると、開口率と表面抵抗は同等であり、どちらも同じレベルの光透過性と導電性(電磁波シールド能)を有していることが判る。但し、PDP画像の画質(モアレ)の観点に目を向けると、比較例のサンプルではモアレが発生したのに対し、本発明のサンプルではその問題が生じないことが判った。
尚、メッシュの交点部の形態を観察した処、比較例の銅箔をエッチングしたサンプルでは交点が直線部分よりも太い形状であったのに対し、本発明のサンプルでは交点部の太りが見られなかった。モアレの有無はこの交点の形状の違いから生じていると推定される。
前述の従来技術欄の「銀塩を利用した導電性金属銀の形成方法」である、物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法(特開2000−149773号公報及び国際公開WO01/51276号公報等)との比較を以下の様に行った。
特開2000−149773号公報に記載の方法と同様の方法で、親水化処理した透明なTAC(トリアセチルセルロース)支持体上に物理現像核層と感光層を塗布し、ピッチ200μmのメッシュ状フォトマスクを介して露光を与え、DTR法による現像を行い、比較サンプル1を作製した。
また、実施例1と同様の方法により、4cm×4cmの大きさの塗布試料を用い、本発明サンプルCを作製した。
本発明サンプルCと比較サンプル1のメッシュ形態は、線幅12μm、ピッチ200μmであり、どちらも開口率88%であった。
これらのサンプルの光透過性部の透過率と、表面抵抗とを測定した結果を下表に示す。
以上のように、光透過性部の透明性の観点から、特開2000−149773号公報等に記載の銀塩拡散転写法を用いた方法ではディスプレイ前面に設置する電磁波シールド膜として十分透明なものを得ることは困難であり、これに対し物理現像核を塗布しない方法が透明性の高いシールド膜を得ることができディスプレイ用途として、より適している。
銀塩拡散転写法を用いないで導電性金属部を得る場合、より高い導電性を得るために、高いAg/ゼラチン体積比が重要な要件であることを示すため、以下の実験を行った。
実施例1におけるゼラチン量を変更して、Ag/ゼラチン体積比が1/4〜1/0.6とし、メッシュをなす金属細線の線幅は12μm、開口率は88%である比較例サンプルEおよび本発明サンプルF〜Gを作製した。本願の実施例1と同様の方法により表面抵抗を測定した。
また、通常のカラーネガフィルムを用いる場合に関して、比較のために述べる。市販のカラーネガフィルムのAg/バインダー(ゼラチン)体積比は、約1/17と非常に小さいため、実施例1におけるゼラチン量を変更して、Ag/ゼラチン体積比が1/17であるサンプルDを作製し、本願の実施例1、2と同様の実験を行い表面抵抗等を測定した。
結果を下表に示す。
300Ω/sq以下の導電性が要求されるCRT用としては、Ag/ゼラチン比は1/4以上でもよいが、2.5Ω/sq以下の導電性が要求されるPDP用としては、Ag/ゼラチン比は1/3以上の必要がある。
また、通常のカラーネガフィルムのようなAg/ゼラチン比の小さい感光材料を用いると、導電性パターンの形成は可能であっても、透光性電磁波シールド材料として十分な導電性を満たすことは困難である。
Claims (15)
- 支持体上に設けられた銀塩とバインダーを乾燥状態におけるAg/バインダー体積比が1/3以上で含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成することを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 露光部に前記金属銀部を形成し、未露光部に前記光透過性部を形成することを特徴とする請求項1に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記光透過性部が物理現像核を有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記透光性電磁波シールド膜の表面抵抗が2.5Ω/sq以下であり、かつ前記光透過性部の透過率が95%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記透光性電磁波シールド膜の表面抵抗が1.1Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- Ag/バインダー体積比が1/2以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- Ag/バインダー体積比が1/1以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- Ag/バインダー体積比が100以下の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記銀塩が光センサーとして機能することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記バインダーが水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記バインダーがゼラチンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 前記現像処理が定着処理を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜。
- 請求項13に記載の透光性電磁波シールド膜を有するプラズマディスプレイパネル。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有する、プラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
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