JP4565980B2 - 燃料電池組立体 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス通路が形成されているセルを具備し、かかるセルの片端部が保持部材にガスタイトに固定されている形態の燃料電池組立体に関する。
次世代エネルギーとして、近年、固体高分子形、リン酸形、溶融炭酸塩形及び固体電解質形等の種々の形の燃料電池システムが提案されている。特に、固体電解質形燃料電池システムは、作動温度が700乃至1000℃程度と高いが、発電効率が高い、排熱利用ができる等の利点を有しており、研究開発が推し進められている。
固体電解質形燃料電池システムの典型例においては、細長く延びる板状支持基板を含むセルを所要方向に配列してガスケースの片面、通常は上面上に、ガスケースの上面を規定する板状部材でよい適宜の保持部材を介して固定している。支持基板の各々にはその長手方向に貫通して延在するガス通路が形成されており、かかるガス通路がガスケース内に連通せしめられ、ガスケース内に送給された燃料ガス(或いは酸素含有ガス)がガスケース内から支持基板の各々のガス通路に流動せしめられる。
セルの片端部が固定されている保持部材と支持基板の周囲からガスケース内の燃料ガス(或いは酸素含有ガス)が漏出するのを防止するために、セルの片端部は保持部材にガスタイトに固定されていることが重要である。下記特許文献1には、セルの片端部を保持部材にガスタイトに固定する固定構造と共にガスタイトな固定に適した固定シール材として運転温度で固相状態である結晶化ガラスが開示されている。
下記特許文献2には、セルの片端部を保持部材にガスタイトに固定する固定構造と共にガスタイトな固定に適した固定シール材として運転温度で固相状態である結晶化ガラス及びセラミックスを主成分とする複合体が開示されている。
特開平10−92450号公報 特開平10−321244号公報
而して、従来の燃料電池組立体には次のとおりの解決すべき問題が存在する。第一に、保持部材に対するセルの片端部の固定は、700乃至1000℃程度である運転温度においても、固定が充分堅固に維持されると共にガスタイト性が充分確実に維持されることが重要であるが、従来の燃料電池組立体においては、堅固な固定と確実なガスタイトを維持するために固定構造を徒に複雑化しなければならない、或いは堅固な固定と確実なガスタイトとのいずれかが毀損されてしまう虞が少なくない。
第二に、セルの片端部と保持部材との間に介在せしめる固定シ−ル材として、特に耐熱性及びガスタイト性に優れたガラスを使用した場合、製作時にガラスが冷却された時点で固定シール材にクラックが発生してしまう傾向がある。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その第一の技術的課題は、複雑な固定構造を採用する必要をなくして、セルの片端部が保持部材に充分確実にガスタイトに充分堅固に固定される、新規且つ改良された燃料電池組立体を提供することである。
本発明の第二の技術的課題は、シール材として耐熱性及びガスタイト性に優れたガラスを使用した場合でも、シール材にクラックが発生することが充分確実に回避される、新規且つ改良された燃料電池組立体を提供することである。
本発明の燃料電池組立体は、ガス流路が形成されているセルと、該セルの片端部が板状の保持部材に設けられている貫通穴に挿入されてガスタイトに固定されている燃料電池組立体において、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材により前記セルの片端部と前記保持部材とが固定されているとともに、前記固定材の上面と、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間にガラスからなるシール材が設けられており、該シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことを特徴とする。このような燃料電池組立体では、セルの片端部が固定材により保持部材に固定され、貫通穴の内面壁と、セルの片端部の周囲との間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材によりセルの片端部と保持部材とが固定されているため、それぞれのセルを固定材によりそれぞれの保持部材の貫通穴内に確実にかつ強固に立設でき、保持部材とセルとの間をガスタイトにガスシールできる。特に、固定材の表面と保持部材の全表面がシール材により被覆されていることが、ガスシールという点及び製造上の観点から望ましい。また、シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことから、固定材によりセルを固定した後、シール材を形成でき、よりガスシール性を向上できるとともに、製造時に固定材の高い熱処理によりセルを保持部材に固定した後、その表面にシール材を低い温度で熱処理して形成でき、固定材に悪影響を与えることがない。また、セメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材及びガラスからなるシール材のそれぞれの作用によって、複雑な固定構造を採用する必要なくして、セルの片端部が保持部材に充分確実にガスタイトに充分堅固に固定される。
本発明の燃料電池組立体は、ガス流路が形成されている複数のセルと、該セルの片端部
が枠状の保持部材に設けられている貫通穴に挿入されてガスタイトに固定されている燃料電池組立体において、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間及び複数の前記セル同士の間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材により前記セルの片端部と前記保持部材とが固定されているとともに、前記固定材の上面と、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間にガラスからなるシール材が設けられており、該シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことを特徴とする。このような燃料電池組立体では、複数のセルの片端部が固定材により保持部材に固定され、貫通穴の内面壁と、セルの片端部の周囲との間及び複数のセル同士の間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材によりセルの片端部と保持部材とが固定されているため、保持部材とセルとの間をガスタイトにガスシールできる。特に、固定材の表面と保持部材の全表面がシール材により被覆されていることが、ガスシールという点及び製造上の観点から望ましい。また、複数のセルを同時に保持部材に強固に立設でき、組立性を大幅に改善でき、また一括してセルを固定シールすることができる。また、枠形状の保持部材自身の加工が容易でかつ安価なものとなる。さらに、シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことから、固定材によりセルを固定した後、シール材を形成でき、よりガスシール性を向上できるとともに、製造時に固定材の高い熱処理によりセルを保持部材に固定した後、その表面にシール材を低い温度で熱処理して形成でき、固定材に悪影響を与えることがない。また、セメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材及びガラスからなるシール材のそれぞれの作用によって、複雑な固定構造を採用する必要なくして、セルの片端部が保持部材に充分確実にガスタイトに充分堅固に固定される。
また、本発明の燃料電池組立体は、保持部材は耐酸化性の金属又は合金からなることを特徴とする。このような燃料電池組立体では、保持部材が耐酸化性を有しているため、固定材やシール材の熱処理工程における酸化雰囲気下での熱処理においても腐食等の劣化を防止でき、これに起因するガス漏出を防止できる。また、シール材におけるクラックを防止するには、シール材を薄くすることが効果的であるが、このようにシール材を薄くしても、長時間の燃料電池の作動状態における保持部材の酸化を防止でき、保持部材の雰囲気による腐食等の劣化を防止でき、これに起因するガス漏出を防止できる。
また、本発明の燃料電池組立体は、固定材がシリカ−アルミナ系無機材質であることが好ましい
さらに、本発明の燃料電池組立体は、固定材が結晶質ガラスからなり、前記シール材が結晶化度の低いガラス又は非晶質ガラスからなるとともに、シール材の結晶化度、固定材の結晶化度よりも小さいことを特徴とする。このような燃料電池組立体では、セルの片端部を保持部材に固定する固定材には、例えばほぼ結晶質に近い結晶ガラスを用い、より強度を高くし、クラックの進展を抑制する機能を付与し、また、固定材上のシール材を熱処理する工程においても固定材が軟化することなく十分な固定強度を得ることができる。一方、固定材の表面を覆うシール材としては、例えば、ほぼ非晶質のガラスを用い、製造時に固定材にクラックや空隙等の欠陥が入っても、そのクラックや空隙等の欠陥をシール材熱処理工程における粘度の低下により埋め、また、高温での粘度低下により柔軟性を有し、シール性を高める機能を付与することができる。
さらに、本発明の燃料電池組立体は、前記セルにガスを供給するためのガスケースを備え、該ガスケースは、上面を規定する前記保持部材と、上面に開口部を有し該開口部を形成する壁上面の内側部分に、前記開口部を取り囲む内側環状段差部が形成されてなる箱状本体とからなり、前記保持部材と前記箱状本体とが、前記内側環状段差部に前記保持部材の外周部を係合させ接合材で接合されていることが好ましい。このような燃料電池組立体では、接合材、シール材が形成される部位が箱状本体の上面部のみの一箇所に限定されるため、ガスリークが懸念される部位を最小限にすることができるため、箱状本体の開口部に保持部材を有する上壁部材を気密に取り付けることができる。また複数本のセルを束ねたセルスタックの複数本を並列に並べる場合においても、隣り合うセルスタック同士間の隙間に固定材やシール材がはみ出ることがないため、隣り合うセルスタックの接合部位を欠損することなくクリアランスを最小限度にできることから、モジュール内部の容積の低減、熱自立性に優れるモジュール構造の構築が可能となる。
また、本発明の燃料電池組立体は、保持部材の下面の外周角部が面取りされて面取部を形成しており、該面取部と内側環状段差部との間には、接合材溜が形成されていることが好ましい。このような燃料電池組立体では、接合材溜により、保持部材と内側環状段差部とを確実に接合することができ、その間からガスが漏出するのを確実に防止できる。
さらに、本発明の燃料電池組立体は、保持部材と箱状本体と、固定材の結晶化度よりも低い結晶化度を有する接合材により接合されていることが好ましい。シール材と接合材同一材料からなることが好ましい
このような燃料電池組立体では、保持部材と箱状本体との間の空隙をシール材熱処理工程におけるシール材の粘度の低下により、クラックや空隙等の欠陥の発生無く埋めることができ、また、高温での粘度低下により柔軟性を有し、シール性を高める機能を付与することができる。さらに工程上、シール材と接合材を同一の材料とすることで、保持部材とセルのシールと、保持部材と箱状本体との固定を同時に回の熱処理工程で施工することができ、ガスタイト性を維持したままでの工程の短縮が可能となる。
また、本発明の燃料電池組立体は、箱状本体の開口部を形成する壁上面、接合材表面、固定材表面、保持部材表面は、シール材により被覆されていることが好ましい。このような燃料電池組立体は、シール性をさらに向上できる。特に、保持部材の雰囲気による腐食等の劣化を防止でき、これに起因するガス漏出を防止できる
本発明の燃料電池組立体によれば、貫通穴の内面壁と、セルの片端部の周囲との間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材によりセルの片端部と保持部材とが固定されているとともに、固定材の上面と、貫通穴の内面壁と、セルの片端部の周囲との間にガラスからなるシール材が設けられており、シール材の軟化温度が固定材の軟化温度よりも低いことから、それぞれのセルを固定材により保持部材の貫通穴内に確実にかつ強固に立設でき、保持部材とセルとの間をガスタイトにガスシールできるとともに、シール材の軟化温度が固定材の軟化温度よりも低いことから、固定材によりセルを固定した後、シール材を設けることができ、よりガスシール性を向上することができる。
図1は、本発明に従って構成された燃料電池組立体の典型例である固体電解質燃料電池組立体の好適実施形態を図示している。図示の組立体は略直方体形状であるハウジング2を具備し、このハウジング2は耐熱性金属から形成された外枠体4とこの内面に張設された断熱材層6とから構成されている。ハウジング2の上部には水平方向に延在する板状断熱材層8が配設されており、ハウジング2内は断熱材層8よりも下方の発電燃焼室10と断熱材層8よりも上方の付加室12とに区画されている。
発電燃焼室10の下部には前後方向(図1において紙面に垂直な方向)に間隔をおいて4個のガスケース14(図1ではそのうちの1個を図示している)が配設されている。ガスケース14の各々は幅方向(図1において左右方向)に細長く延在する直方体形状であり、上面が開放された箱状本体16と、この本体16の上面上に配設されてガスケース14の上面を規定する板状部材18から構成されている。図示の実施形態においては、ガスケース14の板状部材18に全体を番号20で示すセルスタックが配設されている。セルスタック20自体及びセルスタック20とその保持部材を構成する板状部材18との関係については後に更に詳述する。
図示の実施形態においては、4個のガスケース14を前後方向に並列配置し、ガスケース14の各々の板状部材18にセルスタック20を配設しているが、所望ならば前後方向にも相当な寸法を有する単一のガスケースを配設し、かかるガスケース14の上面を規定
する板状部材18に4列のセルスタック20を並列して配設することもできる。
発電燃焼室10の上部には、セルスタック20の各々に対応せしめて改質ケース22が配設されている。かかる改質ケース22は適宜の耐熱金属から形成することができる。改質ケース22の各々内には都市ガスでよい被改質ガスを水素リッチな燃料ガスに改質するための適宜の触媒(図示していない)が収容されている。改質ケース22の各々の片端部(図1において右端部)には被改質ガス導入管24が連結され、他端部(図1において左端部)には燃料ガス送給管26が接続されている。被改質ガス導入管24はハウジング2の下壁を貫通してハウジング2外に延在し、都市ガスでよい被改質ガス供給源(図示していない)に接続されている。燃料ガス送給管26はガスケース14の各々に接続されている。
図示の実施形態においては、4列に配設されたガスケース14及びセルスタック20の各々に対して改質ケース22を配設しているが、所望ならば4列に配列されたガスケース14及びセルスタック20に対して共通の1個の改質ケースを配設することもできる。
ハウジング2の上部に区画された付加室12内には空気マニホルド室28が配設されている。この空気マニホルド室28にはハウジング2の上壁を貫通してハウジング2外に延出する酸素含有ガス導入管30が接続されている。この酸素含有ガス導入管30は空気でよい酸素含有ガスの供給源(図示していない)に接続されている。空気マニホルド室28には、更に、その下面からセルスタック20間に垂下する酸素含有ガス噴出手段(図示していない)も接続されている。かかる酸素含有ガス噴出手段は噴出口を有する噴出パイプ或いは中空噴出プレートから構成することができる。付加室12には、更に、発電燃焼室10をハウジング2外に連通せしめる排気ダクト32も配設されている。
図1と共に図2を参照して説明を続けると、セルスタック20の各々は、鉛直方向、即ち図1において上下方向、図2において紙面に垂直な方向に細長く延在するセル34を図1において左右方向、図2において上下方向に複数個(図示の場合は8個)配置して構成されている。図2に明確に図示する如く、セル34の各々は電極支持基板36、内側電極層である燃料極層38、固体電解質層40、外側電極層である酸素極層42、及びインターコネクタ44から構成されている。
電極支持基板36は鉛直方向に細長く延びる板状片であり、平坦な両面と半円形状の両側面を有する。電極支持基板36にはこれを鉛直方向に貫通する複数個(図示の場合は4個)のガス通路46が形成されている。
インターコネクタ44は電極支持基板36の片面(図2のセルスタック20において上面)上に配設されている。燃料極層38は電極支持基板36の他面(図2のセルスタック20において下面)及び両側面に配設されており、その両端はインターコネクタ44の両端に接合せしめられている。固体電解質層40は燃料極層38の全体を覆うように配設され、その両端はインターコネクタ44の両端に接合せしめられている。酸素極層42は、固体電解質層40の主部上、即ち電極支持基板36の他面を覆う部分上、に配置され、電極支持基板板36を挟んでインターコネクタ44に対向して位置せしめられている。
セルスタック20の各々における隣接するセル34間には集電部材48が配設されており、一方のセル34のインターコネクタ44と他方のセル34の酸素極層42とを接続している。セルスタック20の各々において両端、即ち図2において上端及び下端に位置するセル34の片面及び他面にも集電部材48が配設されている。
そして、4列のセルスタック20の図2において左側に位置する2個の片端(図2において上端)に配設された集電部材48は導電部材50によって接続され、中央に位置する2個の他端(図2において下端)に配設された集電部材48も導電部材50によって接続され、右側に位置する2個の片端(図2において上端)に配設された集電部材48も導電部材50によって接続されている。更に、4列のセルタック20の左端に位置する1個の他端(図2において下端)に配設された集電部材48には導電部材50が接続され、右端の片端(図2において下端)に配設された集電部材48にも導電部材50が接続されている。かくして、全てのセル34が電気的に直列接続されている。
セル34について更に詳述すると、電極支持基板36は燃料ガスを燃料極層38まで透過させるためにガス透過性であること、そしてまたインターコネクタ44を介して集電するために導電性であることが要求され、かかる要求を満足する多孔質の導電性セラミック(若しくはサーメット)から形成することができる。燃料極層38及び/又は固体電解質層40との同時焼成により電極支持基板36を製造するためには、鉄属金属成分と特定希土類酸化物とから電極支持基板36を形成することが好ましい。所要ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35乃至50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
燃料極層38は多孔質の導電性セラミック、例えば希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニアを称されている)とNi及び/又はNiOとから形成することができる。固体電解質層40は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有するものであることが必要であり、通常、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrOから形成されている。酸素極層42は所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電セラミックから形成することができる。
酸素極層42はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30乃至50%の範囲にあることが好ましい。インターコネクタ44は導電性セラミックから形成することができるが、水素ガスでよい燃料ガス及び空気でよい酸素含有ガスと接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、このためにランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ44は電極支持基板36に形成された燃料通路46を通る燃料ガス及び電極支持基板36の外側を流動する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが望まれる。集電部材48は弾性を有する金属又は合金から形成された適宜の形状の部材或いは金属繊維又は合金繊維から成るフェルトに所要表面処理を加えた部材から構成することができる。導電部材50は適宜の金属又は合金から形成することができる。
図1と共に図3を参照して説明を続けると、上述したとおり発電燃焼室10の下部に配設されているガスケース14の各々の上面には保持部材を構成する板状部材18が配設され、ガスケース14の上壁面を構成している。そして、この板状部材18にはセルスタック20におけるセル34の配列方向即ち図1において左右方向に間隔をおいて複数個(図示の場合は8個)の貫通穴52が形成されている。
そして、かかる貫通穴52の各々にセル34の片端部即ち下端部が挿入されている。本発明に従って構成された燃料電池組立体においては、セル34の各々とセル34の保持部材を構成する板状部材18との間には、相互に異なった材料から構成された固定材54とシール材56とが配設されていることが重要である。図示の実施形態においては、板状部材18に形成されている貫通穴52の内面壁とセル34の下端部の周囲との間には固定材54が充填されており、そしてかかる固定材54の上面側にシール材56が積層されている。シール材56は貫通穴52の内周面上部とセル34の下端部周囲との間に存在せしめられている共に、板状部材18の貫通穴52よりも上方にも溢出して板状部材18の上面とセル34の周囲との間にも存在せしめられている。特に、固定材54及び板状部材18の全上面をシール材56により被覆することが望ましい。これにより、板状部材18の貫通穴52を介してのガス漏出を確実に防止できるとともに、製造上容易となる。
固定材54は板状部材18にセル34を堅固に固定することを目的とするものであり、セラミック系無機材質、ガラス系無機材質或いはセメント系無機材質等から構成することができるが、特に好適な無機材質としては1200℃程度の耐熱性を有するシリカ−アルミナ系無機材質を挙げることができる。固定材54の熱膨張係数α3は、セル34の熱膨張係数α1と板状部材18の熱膨張係数α2との低いほうの50%以上で且つ高い方の150%以下であるのが好である。
一方、シール材56は板状部材18とセル34の下端部との間をガスタイトにシールすることを目的にするものであり、固定材よりも軟化温度の低いものが好ましい。シール材56の好適例としては、軟化温度が燃料電池組立体の運転温度である700乃至1000℃よりも高く、700乃至1000℃において固相状態であるガラスを挙げることができる。加えて、本発明者等の経験によれば、シール材56に比較的大きな引っ張り応力が生成されてクラックが発生し、シール材56によるガスタイトなシールが毀損されてしまうのを充分確実に回避するためには、シール材56の熱膨張係数α4はセル34の熱膨張係数α1以上で且つ板状部材18の熱膨張係数α2以下(α2≧α4≧α1)であることが望ましい。セル34の熱膨張係数α1は、一般に、セル34における体積の大部分は電極支持基板36が占める等の事実から、電極支持基板36を構成している材料の熱膨張係数と略等しい。
因みに、図1及び図3に図示するとおりのセル固定シール構造において、シリカ、アルミナを主成分とするシリカ−アルミナ系無機材質を、板状部材18とセル34との間に充填し、常温にて3時間乾燥し、90℃で1時間乾燥させ、固定材54(熱膨張係数α3が
10.0×10−6/℃)を形成した。この後、熱膨張係数α4が11.8×10−6/℃で平均粒径が9μmのガラス粉末に溶媒9%と分散剤2%とを添加混合してガラスペーストを生成し、かかるガラスペーストを板状部材18とセル34との間の固定材54上に施し、溶媒を130℃で乾燥後950℃に加熱してガラスを溶融させ、しかる後に常温に冷却したところ、シール材を構成するガラスにクラックを発生せしめることなく板状部材18とセル34との間をガスタイトにシールすることができた。セル34の熱膨張係数α1は11.6×10−6であった。板状部材18としては、熱膨張係数α2が12.1×10−6であるSUS430製のものと熱膨張係数α2が12.0×10−6であるフォ
ルステライト製のものとの二種を使用した。
上述したとおりの電池組立体においては、被改質ガス供給管24を通して改質ケース22に都市ガスでよい被改質ガスが供給され、改質ケース22内において水素リッチな燃料ガスに改質され、しかる後に燃料ガス送給管26を通してガスケース14に送給される。次いで、セル34の各々の電極支持基板36に形成されているガス通路46の下端に導入され、ガス通路46を上昇する。一方、酸素含有ガス導入管30を通して空気マニホルド室28に空気でよい酸素含有ガスが導入され、かかる酸素含有ガスが酸素含有ガス噴出手段(図示していない)を通して発電燃焼室10内に噴出せしめられ、かくしてセル34の各々に供給される。セル34の各々においては、酸素極層42で下記式(1)の電極反応が生成され、また燃料極層38では下記式(2)の電極反応が生成されて発電される。
酸素極: 1/2O +2e → O2−(固体電解質) ・・・(1)
燃料極: O2−(固体電解質)+H → H O+2e ・・・(2)
セル34における電極支持基板36のガス通路46を流動する燃料ガスの、電極反応に使用されなかった燃料ガスは、電極支持基板36の上端から発電・燃焼室10内に流出せしめられる。発電・燃焼室10内に流出せしめられた燃料ガスは流出と同時に燃焼せしめられる。発電・燃焼室10内には適宜の着火手段(図示していない)が配設されており、燃料ガスが発電・燃焼室10に流出され始めると着火手段が作動せしめられて燃焼が開始される。発電燃焼室10に噴出された酸素含有ガス中の酸素で電極反応に使用されなかったものは燃焼に利用される。発電燃焼室10内は、セル34での発電及び燃焼ガスの燃焼に起因して例えば700乃至1000℃程度の高温になる。発電燃焼室10内での燃焼によって生成された燃焼ガスは、発電燃焼室10の上端から排気ダクト32を通してハウジング2外に排出される。
図示の実施形態においては、ガスケース14の上面を規定している板状部材18を、セル34をガスタイトに固定する保持部材として利用しているが、これに代えて、例えばガスケース14の上面を規定する板状部材の上面に積層配置される板状或いはその他の適宜の形状の部材を、セル34をガスタイトに固定するための保持部材として利用することもできる。
図4及び図5は本発明の燃料電池組立体の他の形態を示すもので、図4は縦断面図、図5は横断面図を示すもので、箱状本体16の開口部が上壁部材78で閉塞されている。
即ち、上壁部材78の一部を構成する保持部材78aは、図6に示すように枠状であり、保持部材78a内には複数のセル34の片端部が挿入され、保持部材78aの内壁面とセル34の片端部の周囲との間、及び複数のセル34の片端部相互間には固定材78bが充填され、図6に示すようなセルスタック20が構成されている。
ガスケース14の箱状本体16の開口部を形成する壁上面の内側部分には、図7及び図8に示すように、開口部を取り囲む内側環状段差部16aを形成し、内側環状段差部16aに保持部材78a外周部を係合させ接合材79で接合し、図4及び図5に示すように、箱状本体16の開口部を保持部材78a、固定材78bで閉塞し、上壁部材78としている。保持部材78a下面の外周角部は面取りされており、該面取部78a1と内側環状段差部16aとの間には、接合材溜81が形成されている。面取部78a1は、C面加工するか、もしくは角部を斜めにカットすることにより作製できる。これにより、より確実に保持部材78aと内側環状段差部16aとの間をシールすることができる。
箱状本体16の開口部を形成する壁上面、接合材79表面、固定材78b表面、保持部材78a表面は、シール材83により被覆されている。
この図4乃至図8に示す燃料電池組立体においても、上記形態と同様、固定材78bは、セル34の熱膨張係数α1と保持部材78aの熱膨張係数α2との低い方の50%以上で、且つ高い方の150%以下である熱膨張係数α3を有することが望ましく、また、シール材83の熱膨張率α4は、セル34の熱膨張率α1以上で、且つ保持部材78aの熱膨張率α2以下(α2≧α4≧α1)であることが望ましい。さらに、シール材83は1000℃以下において固相状態であるガラスであり、固定材78bは、1200℃以下において固相状態であるセラミック、ガラス、及びセラミックとガラスの複合物のいずれかからなることが望ましい。
固定材78b、シール材83としては、無機材質からなるセメント材、セラミック、またガラス質のもの、もしくはこれらの複合材が利用されるが、セルを固定する機能及び、ガスタイトにシールする機能の両機能を持ち合わせた材質として、結晶ガラスを利用することが望ましい
また所望の結晶ガラス以外にも、両機能をそれぞれに有することを目的として、固定材78b、シール材83の2層構造とすることも可能である。この場合、固定材78bにおいては、前述のように燃料電池の作動温度の観点より700から1000℃で固相状態にあることが望ましいが、好ましくは燃料電池組立体の作製工程を考慮すると、500から1200℃で固相状態にあることが望ましい。
シール材83の結晶化度は、固定材78bの結晶化度よりも低いことが望ましい。結晶化度の高低については、XRDのピーク強度を相対的に比較することにより確認することができる。特に、シール材83は結晶化度の低いガラスもしくは非晶質ガラスからなり、固定材78bは結晶質ガラスからなることが望ましい。固定材78bは、例えばSiO、MgO、ZnO、Alを含有する結晶質ガラスからなり、このように結晶質ガラスを用いることにより、強度が大きく、クラックの進展を抑制でき、また、シール材83としては、例えばSiO、MgO、ZnO、Alを含有する非晶質ガラスからなり、このように結晶化度の低いガラスもしくは非晶質ガラスを用いることにより、シール性が良好であり、例えば固定材78bにクラックが入ったとしてもシール材83により埋設することができる。
固定材78bの軟化温度は、シール材の軟化温度よりも高いことが望ましい。軟化温度の高低は、示差熱分析(DTA)より算出することにより確認することができる。これにより、固定材78bによりセルを固定した後、シール材を形成でき、よりガスシール性を向上できる。
シール材83の厚みはガスシール性という観点からは薄いほど良いが、水蒸気により分解される傾向にあるため、0.1〜2mmが望ましい。また、固定材78bの厚み、即ち、保持部材78aとセルの下端部との間隔、セルの下端部の間隔は、絶縁性低下という観点から1mm以上あることが望ましい。尚、保持部材78aは、フェライト系材料からなる合金製とされている。
保持部材78aと箱状本体16との間には、固定材78bの結晶化度よりも低い結晶化度を有する接合材79により接合されていることが望ましく、特にシール材83と接合材79は同一材料からなることが望ましい。
このような燃料電池組立体では、複数のセル34を束ねたものを枠形状の保持部材78a内に挿入した後、ペースト状の固定材78bを枠形状の保持部材78a内部に流入させ、乾燥、熱処理を経て固定シールされる。その後、箱状本体16の上面開口部内部に、上壁部材78をはめ合わせ、ペースト状の接合材79を上壁部材78と内側環状段差部16aとの間に流し込み、乾燥、熱処理し、さらに、ペースト状のシール材を固定材78bの表面、保持部材78a上面および箱状本体16の壁上面、接合材79表面に塗布し、乾燥、熱処理を経て燃料電池組立体を作製することができる。尚、接合材79とシール材83を同一材料から構成し、そのペーストを、上壁部材78と内側環状段差部16aとの間、固定材78bの表面、保持部材78a上面および箱状本体16の壁上面に塗布し、乾燥、熱処理を経て燃料電池組立体を作製することもできる。この場合には、製造が容易となる。
このような燃料電池組立体では、セル34を固定材78bにより保持部材78aに確実
にかつ強固に立設でき、固定材78b上のシール材83によりガスシールを確実に行うことができるとともに、多数のセル34を同時に保持部材78aに強固に立設でき、組立性を大幅に改善でき、また一括してセル34を固定シールすることができる。また、枠形状の保持部材78a自身の加工が容易でかつ安価なものとなる。
また、箱状本体16の内側環状段差部16aに、保持部材78aの外周部を係合させて接合したので、接合面積が増加して接合強度が向上するとともに、箱状本体16内のガスが漏出する際の経路が長くなり、接合部でのガス漏洩に対する抵抗が大きくなるため、ガスの接合部からのガス漏出を防止できる。
また、セル34の固定材78bによる固定長さは、強固に固定するという観点から、セル34の長さの1/20以上とすることが望ましい。
本発明者等は、図4乃至図8に図示するとおりのセル固定シール構造について、下記のような燃料電池組立体を作製した。先ず、SiO、MgO、ZnOを主成分とする平均粒径が1μmのガラスフリットに、溶媒9%とバインダー成分2%とを添加混合して固定材用のガラスペーストを生成し、かかるガラスペーストを保持部材78aとセル34との間、及びセル間に施し、90℃で乾燥させた後に900℃に加熱、熱処理し、固定材78bを形成した。固定材78bは、結晶化度の高いガラスであり、熱膨張係数α3は11.0×10−6/℃であった。
次に、SiO、MgO、ZnOを主成分とする平均粒径が9μmのガラスフリットに、溶媒9%と分散剤2%とを添加混合してシール材用のガラスペーストを作製した。
次に、箱状本体16の開口部に上記上壁部材78を収納し、この上壁部材78と内側環状段差部16aとの隙間、及び保持部材78a表面、固定材78b表面にシール材用のガラスペーストを塗布し、溶媒を90℃で乾燥除去後、再度900℃に加熱してガラスを溶融させ、シール材83を形成し、図4及び図5に示すような燃料電池組立体を作製した。
シール材83は結晶化していないガラスであり、熱膨張係数α4が10.8×10−6/℃であった。固定材78bの軟化温度は1000℃以上であり、シール材83の軟化温度は855℃であった。
シール材83形成後に、目視にてクラック有無を確認したところ、シール材83を構成するガラスにクラックは発生していなかった。
この後、セル34の上端部をシリコン樹脂にて封止した上で、室温において0.1MPaの加圧空気を箱状本体16内に導入して漏れ検知液(石鹸水)をシール材83上に塗布した上でシール材83からの漏れを確認した。その結果、板状部材とセル及び板状部材と箱状本体のいずれの接合部においてもガスタイトにシールできていることを確認した。セル34の熱膨張係数α1は10.8×10−6であった。保持部材78aとしては、熱膨張係数α2が11.2×10−6であるフェライト系金属のものを使用した。
本発明に従って構成された燃料電池組立体の好適実施形態を示す簡略縦断面図。 図1の燃料電池組立体におけるセルスタックを示す横断面図。 図1の燃料電池組立体における、保持部材を構成する板状部材にセルをガスタイトに固定する様式を示す拡大部分断面図。 ガスケースにセルが立設した状態を示す本発明の燃料電池組立体の他の形態を示す簡略縦断面図。 図4の横断面図。 上壁部材にセルが立設した状態を示す斜視図。 上壁部材を箱状本体の開口部に嵌め込む状態を示す断面図。 上壁部材を箱状本体の開口部に嵌め込む工程を示す工程図。
符号の説明
2:ハウジング
10:発電燃焼室
14:ガスケース
18:板状部材
20:セルスタック
34:セル
52:貫通穴
54、78b:固定材
56、83:シール材
78:上壁部材
78a:保持部材
78a1:面取部
79:接合材
81:接合材溜

Claims (10)

  1. ガス流路が形成されているセルと、該セルの片端部が板状の保持部材に設けられている貫通穴に挿入されてガスタイトに固定されている燃料電池組立体において、
    前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材により前記セルの片端部と前記保持部材とが固定されているとともに、
    前記固定材の上面と、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間にガラスからなるシール材が設けられており、該シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことを特徴とする燃料電池組立体。
  2. ガス流路が形成されている複数のセルと、該セルの片端部が枠状の保持部材に設けられている貫通穴に挿入されてガスタイトに固定されている燃料電池組立体において、
    前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間及び複数の前記セル同士の間に充填されているセメント、セラミック及びガラスのうち少なくとも1種からなる固定材により前記セルの片端部と前記保持部材とが固定されているとともに、
    前記固定材の上面と、前記貫通穴の内面壁と、前記セルの片端部の周囲との間にガラスからなるシール材が設けられており、該シール材の軟化温度が前記固定材の軟化温度よりも低いことを特徴とする燃料電池組立体。
  3. 前記保持部材は耐酸化性の金属又は合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池組立体。
  4. 前記固定材がシリカ−アルミナ系無機材質であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の燃料電池組立体。
  5. 前記固定材が結晶質ガラスからなり、前記シール材が結晶化度の低いガラス又は非晶質ガラスからなるとともに、前記シール材の結晶化度が、前記固定材の結晶化度よりも低いことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の燃料電池組立体。
  6. 前記セルにガスを供給するためのガスケースを備え、該ガスケースは、上面を構成する前記保持部材と、上面に開口部を有し該開口部を形成する壁上面の内側部分に、前記開口部を取り囲む内側環状段差部が形成されてなる箱状本体とからなり、前記保持部材と前記箱状本体とが、前記内側環状段差部に前記保持部材の外周部を係合させて接合材で接合されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の燃料電池組立体。
  7. 前記保持部材の下面の外周角部が面取りされて面取部を形成しており、該面取部と前記内側環状段差部との間に、接合材溜が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池組立体。
  8. 前記保持部材と前記箱状本体とが、前記固定材の結晶化度よりも低い結晶化度を有する前記接合材により接合されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池組立体。
  9. 前記シール材と前記接合材とが同一材料からなることを特徴とする請求項6乃至8のうちいずれかに記載の燃料電池組立体。
  10. 前記箱状本体の前記開口部を形成する壁上面、前記接合材表面、前記固定材表面及び前記保持部材表面が、前記シール材により被覆されていることを特徴とする請求項6乃至9のうちいずれかに記載の燃料電池組立体。
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