次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して燃料電池セル収容容器8が配置されている。この燃料電池セル収容容器8内の内部には発電室10が構成され、この発電室10の中には複数の燃料電池セル16が同心円状に配置されており、これらの燃料電池セル16により、燃料ガスと酸化剤ガスである空気の発電反応が行われる。
各燃料電池セル16の上端部には、排気集約室18が取り付けられている。各燃料電池セル16において発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)は、上端部に取り付けられた排気集約室18に集められ、この排気集約室18の天井面に設けられた複数の噴出口から流出される。流出した燃料は、発電室10内で発電に使用されずに残った空気により燃焼され、排気ガスが生成されるようになっている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された炭化水素系の原燃料ガスの流量を調整する燃料供給装置である燃料ブロア38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
なお、燃料ブロア38を通過した原燃料ガスは、燃料電池モジュール2内に配置された脱硫器36と、熱交換器34、電磁弁35を介して燃料電池セル収容容器8の内部に導入される。脱硫器36は、燃料電池セル収容容器8の周囲に環状に配置されており、原燃料ガスから硫黄を除去するようになっている。また、熱交換器34は、脱硫器36において温度上昇した高温の原燃料ガスが直接電磁弁35に流入し、電磁弁35が劣化されるのを防止するために設けられている。電磁弁35は、燃料電池セル収容容器8内への原燃料ガスの供給を停止するために設けられている。
補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気の流量を調整する酸化剤ガス供給装置である空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)を備えている。
さらに、補機ユニット4には、燃料電池モジュール2からの排気ガスの熱を回収するための温水製造装置50が備えられている。この温水製造装置50には、水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)の燃料電池モジュールに内蔵された燃料電池セル収容容器の内部構造を説明する。図2は燃料電池セル収容容器の断面図であり、図3は燃料電池セル収容容器の主な部材を分解して示した断面図である。
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8内の空間には、複数の燃料電池セル16が同心円状に配列され、その周囲を取り囲むように燃料流路である燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、酸化剤ガス供給流路22が順に同心円状に形成されている。ここで、排ガス排出流路21及び酸化剤ガス供給流路22は、酸化剤ガスを供給/排出する酸化剤ガス流路として機能する。
まず、図2に示すように、燃料電池セル収容容器8は、概ね円筒状の密閉容器であり、その側面には、発電用の空気を供給する酸化剤ガス流入口である酸化剤ガス導入パイプ56、及び排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58が接続されている。さらに、燃料電池セル収容容器8の上端面からは、排気集約室18から流出した残余燃料に点火するための点火ヒーター62が突出している。
図2及び図3に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、燃料電池セル16の周囲を取り囲むように、内側から順に、発電室構成部材である内側円筒部材64、外側円筒部材66、内側円筒容器68、外側円筒容器70が配置されている。上述した燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、及び酸化剤ガス供給流路22は、これらの円筒部材及び円筒容器の間に夫々構成される流路であり、隣り合う流路の間で熱交換が行われる。即ち、排ガス排出流路21は燃料ガス供給流路20を取り囲むように配置され、酸化剤ガス供給流路22は排ガス排出流路21を取り囲むように配置されている。また、燃料電池セル収容容器8の下端側の開放空間は、燃料を各燃料電池セル16に分散させる燃料ガス分散室76の底面を構成する概ね円形の分散室底部材72により塞がれている。
内側円筒部材64は、概ね円筒状の中空体であり、その上端及び下端は開放されている。また、内側円筒部材64の内壁面には、分散室形成板である円形の第1固定部材63が気密的に溶接されている。この第1固定部材63の下面と、内側円筒部材64の内壁面と、分散室底部材72の上面により、燃料ガス分散室76が画定される。また、第1固定部材63には、各々燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴63aが形成されており、各燃料電池セル16は、各挿通穴63aに挿通された状態で、セラミック接着剤により第1固定部材63に接着されている。このように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池モジュール2を構成する部材間相互の接合部には、セラミック接着剤が充填され、硬化されることにより、各部材が相互に気密的に接合されている。
外側円筒部材66は、内側円筒部材64の周囲に配置される円筒状の管であり、内側円筒部材64との間に円環状の流路が形成されるように、内側円筒部材64と概ね相似形に形成されている。さらに、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間には中間円筒部材65が配置されている。中間円筒部材65は、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間に配置された円筒状の管であり、内側円筒部材64の外周面と中間円筒部材65の内周面の間には改質部94が構成されている。また、中間円筒部材65の外周面と、外側円筒部材66の内周面の間の円環状の空間は、燃料ガス供給流路20として機能する。このため、改質部94及び燃料ガス供給流路20は、燃料電池セル16における発熱及び排気集約室18上端における残余燃料の燃焼により熱を受ける。また、内側円筒部材64の上端部と外側円筒部材66の上端部は溶接により気密的に接合されており、燃料ガス供給流路20の上端は閉鎖されている。さらに、中間円筒部材65の下端と、内側円筒部材64の外周面は、溶接により気密的に接合されている。
内側円筒容器68は、外側円筒部材66の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、外側円筒部材66との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が外側円筒部材66と概ね相似形に形成されている。この内側円筒容器68は、内側円筒部材64の上端の開放部を覆うように配置される。外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間は、排ガス排出流路21(図2)として機能する。この排ガス排出流路21は、内側円筒部材64の上端部に設けられた複数の小穴64aを介して内側円筒部材64の内側の空間と連通している。また、内側円筒容器68の下部側面には、排ガス流出口である排ガス排出パイプ58が接続されており、排ガス排出流路21が排ガス排出パイプ58に連通される。
排ガス排出流路21の下部には、燃焼触媒60及びこれを加熱するためのシースヒーター61が配置されている。
燃焼触媒60は、排ガス排出パイプ58よりも上方に、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間に充填された触媒である。排ガス排出流路21を下降した排気ガスは、燃焼触媒60を通過することにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58から排出される。
シースヒーター61は、燃焼触媒60の下方の、外側円筒部材66の外周面を取り囲むように取り付けられた電気ヒーターである。固体酸化物型燃料電池装置1の起動時において、シースヒーター61に通電することにより、燃焼触媒60が活性温度まで加熱される。
外側円筒容器70は、内側円筒容器68の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、内側円筒容器68との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が内側円筒容器68と概ね相似形に形成されている。内側円筒容器68の外周面と、外側円筒容器70の内周面の間の円環状の空間は、酸化剤ガス供給流路22として機能する。また、外側円筒容器70の下部側面には、酸化剤ガス導入パイプ56が接続されており、酸化剤ガス供給流路22が酸化剤ガス導入パイプ56に連通される。
分散室底部材72は、概ね円形の皿状の部材であり、内側円筒部材64の内壁面にセラミック接着剤により気密的に固定される。これにより、第1固定部材63と分散室底部材72の間に、燃料ガス分散室76が構成される。また、分散室底部材72の中央には、バスバー80(図2)を挿通させるための挿通管72aが設けられている。各燃料電池セル16に電気的に接続されたバスバー80は、この挿通管72aを通して燃料電池セル収容容器8の外部に引き出される。また、挿通管72aには、セラミック接着剤が充填され、燃料ガス分散室78の気密性が確保されている。さらに、挿通管72aの周囲には、断熱材72b(図2)が配置されている。
内側円筒容器68の天井面から垂下するように、発電用の空気を噴射するための、円形断面の酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。この酸化剤ガス噴射用パイプ74は、内側円筒容器68の中心軸線上を鉛直方向に延び、その周囲の同心円上に各燃料電池セル16が配置される。酸化剤ガス噴射用パイプ74の上端が内側円筒容器68の天井面に取り付けられることにより、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間に形成されている酸化剤ガス供給流路22と酸化剤ガス噴射用パイプ74が連通される。酸化剤ガス供給流路22を介して供給された空気は、酸化剤ガス噴射用パイプ74の先端から下方に噴射され、第1固定部材63の上面に当たって、発電室10内全体に広がる。
燃料ガス分散室76は、第1固定部材63と分散室底部材72の間に構成される円筒形の気密性のあるチャンバーであり、その上面に各燃料電池セル16が林立されている。第1固定部材63の上面に取り付けられた各燃料電池セル16は、その内側の燃料極が、燃料ガス分散室76の内部と連通されている。各燃料電池セル16の下端部は、第1固定部材63の挿通穴63aを貫通して燃料ガス分散室76の内部に突出し、各燃料電池セル16は第1固定部材63に、接着により固定されている。
図2に示すように、内側円筒部材64には、第1固定部材63よりも下方に複数の小穴64bが設けられている。内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間は、複数の小穴64bを介して燃料ガス分散室76内に連通されている。供給された燃料は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の空間を一旦上昇した後、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間を下降し、複数の小穴64bを通って燃料ガス分散室76内に流入する。燃料ガス分散室76に流入した燃料は、燃料ガス分散室76の天井面(第1固定部材63)に取り付けられた各燃料電池セル16の燃料極に分配される。
さらに、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16の下端部は、燃料ガス分散室76内でバスバー80に電気的に接続され、挿通管72aを通して電力が外部に引き出される。バスバー80は、各燃料電池セル16により生成された電力を、燃料電池セル収容容器8の外部へ取り出すための細長い金属導体であり、碍子78を介して分散室底部材72の挿通管72aに固定されている。バスバー80は、燃料ガス分散室76の内部において、各燃料電池セル16に取り付けられた集電体82と電気的に接続されている。また、バスバー80は、燃料電池セル収容容器8の外部において、インバータ54(図1)に接続される。なお、集電体82は、排気集約室18内に突出している各燃料電池セル16の上端部にも取り付けられている(図4)。これら上端部及び下端部の集電体82により、複数の燃料電池セル16が電気的に並列に接続されると共に、並列に接続された複数組の燃料電池セル16が電気的に直列に接続され、この直列接続の両端が夫々バスバー80に接続される。
次に、図4及び図5を参照して、排気集約室の構成を説明する。
図4は排気集約室の部分を拡大して示す断面図であり、図5は、図2におけるV−V断面である。
図4に示すように、排気集約室18は、各燃料電池セル16の上端部に取り付けられたドーナツ型断面のチャンバーであり、この排気集約室18の中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74が貫通して延びている。
図5に示すように、内側円筒部材64の内壁面には、排気集約室18支持用の3つのステー64cが等間隔に取り付けられている。図4に示すように、各ステー64cは金属製の薄板を折り曲げた小片であり、排気集約室18を各ステー64cの上に載置することにより、排気集約室18は内側円筒部材64と同心円上に位置決めされる。これにより、排気集約室18の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間、及び排気集約室18の内周面と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面との間の隙間は、全周で均一になる(図5)。
排気集約室18は、集約室上部材18a及び集約室下部材18bが気密的に接合されることにより構成されている。
集約室下部材18bは、上方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための円筒部が設けられている。
集約室上部材18aは、下方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための開口部が設けられている。集約室上部材18aは、集約室下部材18bの上方に開口したドーナツ型断面の領域に嵌め込まれる形状に構成されている。
集約室下部材18bの周囲の壁の内周面と集約室上部材18aの外周面の間の隙間にはセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、大径シールリング19aが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。大径シールリング19aは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
一方、集約室下部材18b中央の円筒部の外周面と、集約室上部材18a中央の開口部の縁の間にもセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、小径シールリング19bが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。小径シールリング19bは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
集約室下部材18bの底面には複数の円形の挿通穴18cが設けられている。各挿通穴18cには燃料電池セル16の上端部が夫々挿通され、各燃料電池セル16は各挿通穴18cを貫通して延びている。各燃料電池セル16が貫通している集約室下部材18bの底面上にはセラミック接着剤が流し込まれ、これが硬化されることにより、各燃料電池セル16の外周と各挿通穴18cの間の隙間が気密的に充填されると共に、各燃料電池セル16が集約室下部材18bに固定されている。
さらに、集約室下部材18bの底面上に流し込まれたセラミック接着剤の上には、円形薄板状のカバー部材19cが配置され、セラミック接着剤の硬化により集約室下部材18bに固定されている。カバー部材19cには、集約室下部材18bの各挿通穴18cと同様の位置に複数の挿通穴が設けられており、各燃料電池セル16の上端部はセラミック接着剤の層及びカバー部材19cを貫通して延びている。
一方、排気集約室18の天井面には、集約された燃料ガスを噴出させるための複数の噴出口18dが設けられている(図5)。各噴出口18dは、集約室上部材18aに、円周上に配置されている。発電に使用されずに残った燃料は、各燃料電池セル16の上端から排気集約室18内に流出し、排気集約室18内で集約された燃料は各噴出口18dから流出し、そこで燃焼される。
次に、図2を参照して、燃料供給源30から供給される原燃料ガスを改質するための構成について説明する。
まず、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間の空間で構成されている燃料ガス供給流路20の下部には、水蒸気改質用の水を蒸発させるための蒸発部86が設けられている。蒸発部86は、外側円筒部材66の下部内周に取り付けられたリング状の傾斜板86a及び水供給パイプ88から構成されている。また、蒸発部86は、発電用の空気を導入するための酸化剤ガス導入パイプ56よりも下方で、排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58よりも上方に配置されている。傾斜板86aは、リング状に形成された金属の薄板であり、その外周縁が外側円筒部材66の内壁面に取り付けられる。一方、傾斜板86aの内周縁は外周縁よりも上方に位置し、傾斜板86aの内周縁と、内側円筒部材64の外壁面との間には隙間が設けられている。
水供給パイプ88は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプであり、水流量調整ユニット28から供給された水蒸気改質用の水が、水供給パイプ88を介して蒸発部86に供給される。水供給パイプ88の上端は、傾斜板86aを貫通して傾斜板86aの上面側まで延び、傾斜板86aの上面側に供給された水は、傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面の間に留まる。傾斜板86aの上面側に供給された水は、そこで蒸発され水蒸気が生成される。
また、蒸発部86の下方には、原燃料ガスを燃料ガス供給流路20内に導入するための燃料ガス導入部が設けられている。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、燃料ガス供給パイプ90を介して燃料ガス供給流路20に導入される。燃料ガス供給パイプ90は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプである。また、燃料ガス供給パイプ90の上端は、傾斜板86aよりも下方に位置している。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、傾斜板86aの下側に導入され、傾斜板86aの傾斜により流路を絞られながら傾斜板86aの上側へ上昇する。傾斜板86aの上側へ上昇した原燃料ガスは、蒸発部86で生成された水蒸気と共に上昇する。
燃料ガス供給流路20内の蒸発部86上方には、燃料ガス供給流路隔壁92が設けられている。燃料ガス供給流路隔壁92は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の円環状の空間を上下に隔てるように設けられた円環状の金属板である。この燃料ガス供給流路隔壁92の円周上には等間隔に複数の噴射口92aが設けられており、これらの噴射口92aにより燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間と下側の空間が連通されている。燃料ガス供給パイプ90から導入された原燃料ガス及び蒸発部86で生成された水蒸気は、一旦、燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留した後、各噴射口92aを通って燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間に噴射される。各噴射口92aから燃料ガス供給流路隔壁92の上側の広い空間に噴射されると、原燃料ガス及び水蒸気は急激に減速され、ここで十分に混合される。
さらに、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の、円環状の空間の上部には、改質部94が設けられている。改質部94は、各燃料電池セル16の上部と、その上方の排気集約室18の周囲を取り囲むように配置されている。改質部94は、内側円筒部材64の外壁面に取り付けられた触媒保持板(図示せず)と、これにより保持された改質触媒96によって構成されている。
このように、改質部94内に充填された改質触媒96に、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間で混合された原燃料ガス及び水蒸気が接触すると、改質部94内においては、式(1)に示す水蒸気改質反応SRが進行する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (1)
改質部94において改質された燃料ガスは、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の空間を下方に流れ、燃料ガス分散室76に流入して、各燃料電池セル16に供給される。水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるが、反応に要する熱は、排気集約室18から流出するオフガスの燃焼熱、及び各燃料電池セル16において発生する発熱により供給される。
次に、図6を参照して、燃料電池セル16について説明する。
本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池セル16として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル16上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル16が構成されている。各燃料電池セル16は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル16のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
図6(a)は、下端がカソードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図であり、図6(b)は、下端がアノードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図である。
図6に示すように、燃料電池セル16は、細長い円筒状の多孔質支持体97と、この多孔質支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。多孔質支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料ガス分散室76を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル16の多孔質支持体97の内部を流れ、酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル16上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル16上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
図6(a)に示すように、燃料電池セル16のカソード側端部には、多孔質支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
図6(b)に示すように、燃料電池セル16のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
図6(a)(b)においては、各燃料電池セル16の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル16の上端部における構成も同様である。なお、上端部においては、各燃料電池セル16は、排気集約室18の集約室下部材18bに固定されているが、固定部分の構成は下端部における第1固定部材63に対する固定と同様である。
次に、多孔質支持体97及び各層の構成を説明する。
多孔質支持体97は、本実施形態においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。
燃料極層98は、本実施形態においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y2O3−90mol%ZrO2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
反応抑制層99は、本実施形態においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa2O3−60mol%のCeO2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。
固体電解質層100は、本実施形態においては、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
空気極層101は、本実施形態においては、La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.2O3の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。
インターコネクタ層102は、本実施形態においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル16上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。
電極層103a、103bは、本実施形態においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。
リード膜層104a、104bは、本実施形態においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
次に、図1及び図2を参照して、固体酸化物型燃料電池装置1の作用を説明する。
まず、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程において、燃料ブロア38が起動され、燃料の供給が開始されると共に、シースヒーター61への通電が開始される。シースヒーター61への通電が開始されることにより、その上方に配置された燃焼触媒60が加熱されると共に、内側に配置された蒸発部86も加熱される。燃料ブロア38により供給された燃料は、脱硫器36、熱交換器34、電磁弁35を介して、燃料ガス供給パイプ90から燃料電池セル収容容器8の内部に流入する。流入した燃料は、燃料ガス供給流路20内を上端まで上昇した後、改質部94内を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、改質部94内の改質触媒96の温度が十分に上昇していないため、燃料の改質は行われない。
燃料ガス分散室76に流入した燃料ガスは、燃料ガス分散室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇しておらず、また、インバータ54への電力の取り出しも行われていないため、発電反応は発生しない。
排気集約室18に流入した燃料は、排気集約室18の噴出口18dから噴出される。噴出口18dから噴出された燃料は、点火ヒーター62により点火され、そこで燃焼される。この燃焼により、排気集約室18の周囲に配置された改質部94が加熱される。また、燃焼により生成された排気ガスは、内側円筒部材64の上部に設けられた小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。高温の排気ガスは、排ガス排出流路21内を下降し、その内側に設けられた燃料ガス供給流路20を流れる燃料、外側に設けられた酸化剤ガス供給流路22内を流れる発電用の空気を加熱する。さらに、排気ガスは、排ガス排出流路21内に配置された燃焼触媒60を通ることにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58を通って燃料電池セル収容容器8から排出される。
排気ガス及びシースヒーター61により蒸発部86が加熱されると、蒸発部86に供給された水蒸気改質用の水が蒸発され、水蒸気が生成される。水蒸気改質用の水は、水流量調整ユニット28により、水供給パイプ88を介して燃料電池セル収容容器8内の蒸発部86に供給される。蒸発部86で生成された水蒸気と、燃料ガス供給パイプ90を介して供給された燃料は、一旦、燃料ガス供給流路20内の燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留し、燃料ガス供給流路隔壁92に設けられた複数の噴射口92aから噴射される。噴射口92aから勢いよく噴射された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間内で減速されることにより、十分に混合される。
混合された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路20内を上昇し、改質部94に流入する。改質部94の改質触媒96が改質可能な温度まで上昇している状態においては、燃料及び水蒸気の混合気が改質部94を通過する際、水蒸気改質反応が発生し、混合気が水素を多く含む燃料に改質される。改質された燃料は、小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。小穴64bは燃料ガス分散室76の周囲に多数設けられ、燃料ガス分散室76として十分な容積が確保されているため、改質された燃料は、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16に均等に流入する。
一方、空気流量調整ユニット45により供給された酸化剤ガスである空気は、酸化剤ガス導入パイプ56を介して酸化剤ガス供給流路22に流入する。酸化剤ガス供給流路22に流入した空気は、内側を流れる排気ガスにより加熱されながら酸化剤ガス供給流路22内を上昇する。酸化剤ガス供給流路22内を上昇した空気は、燃料電池セル収容容器8内の上端部で中央に集められ、酸化剤ガス供給流路22に連通された酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入する。酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入した空気は下端から発電室10内に噴射され、噴射された空気は第1固定部材63の上面に当たって発電室10内全体に広がる。発電室10内に流入した空気は、排気集約室18の外周壁と内側円筒部材64の内周壁の間の隙間、及び排気集約室18の内周壁と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面の間の隙間を通って上昇する。
この際、各燃料電池セル16の外側(空気極側)を通って流れる空気の一部は発電反応に利用される。また、排気集約室18の上方に上昇した空気の一部は、排気集約室18の噴出口18dから噴出する燃料の燃焼に利用される。燃焼により生成された排気ガス、及び発電、燃焼に利用されずに残った空気は、小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。排ガス排出流路21に流入した排気ガス及び空気は、燃焼触媒60により一酸化炭素が除去された後、排出される。
このように、各燃料電池セル16が発電可能な温度である650℃程度まで上昇し、各燃料電池セル16の内側(燃料極側)に改質された燃料が流れ、外側(空気極側)に空気が流れると、化学反応により起電力が発生する。この状態において、燃料電池セル収容容器8から引き出されているバスバー80にインバータ54が接続されると、各燃料電池セル16から電力が取り出され、発電が行われる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、発電用の空気は、発電室10の中央に配置された酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射され、発電室10内を排気集約室18と内側円筒部材64の間の均等な隙間及び排気集約室18と酸化剤ガス噴射用パイプ74の間の均等な隙間を通って上昇する。このため、発電室10内の空気の流れは、ほぼ完全に軸対称の流れとなり、各燃料電池セル16の周囲には、ムラなく空気が流れる。これにより、各燃料電池セル16間の温度差が抑制され、各燃料電池セル16で均等な起電力を発生することができる。
次に、図7乃至図26を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法を説明する。
図7乃至図21は、固体酸化物型燃料電池装置1の製造手順を示した模式図であり、説明のために細部の構成は省略されている。図24は、固体酸化物型燃料電池装置1の製造手順を示すフローチャートである。
まず、図7に示すように、内側円筒部材64、中間円筒部材65、外側円筒部材66、及び第1固定部材63を溶接により組み立てる(図24のステップS1)。ここで、第1固定部材63は、内側円筒部材64の中心軸線と直交するように配置され、その外周縁が内側円筒部材64の内壁面に気密的に溶接される。また、内側円筒部材64と中間円筒部材65の間に設けられる改質部94には、改質触媒96を充填しておく。さらに、水供給パイプ88及び燃料ガス供給パイプ90も溶接により取り付けておく。
次に、図8に示すように、第1位置決め装置である下側ジグ110を、内側円筒部材64に対して正確に位置決めする(図24のステップS2)。下側ジグ110は、内側円筒部材64と平行に、上方に向けて延びる複数の位置決シャフト110aを備えており、これらの位置決シャフト110aは、第1固定部材63に設けられた各挿通穴63aを夫々貫通して延びるように配置される。さらに、各挿通穴63aを貫通して延びる各位置決シャフト110aに燃料電池セル16を夫々配置する。この工程において、各燃料電池セル16は第1固定部材63の各挿通穴63aに挿通される。
位置決シャフト110aが燃料電池セル16に挿入されることにより、燃料電池セル16の一端部は位置決シャフト110aに対して位置決めされる。また、下側ジグ110は内側円筒部材64に対して位置決めされているため、燃料電池セル16の一端部は、燃料電池モジュール2を構成する内側円筒部材64に対して正確に位置決めされる。さらに、各燃料電池セル16の下端は各位置決シャフト110aの基端面110bに当接されているため、全ての燃料電池セル16の下端が同一平面上に位置決めされる。即ち、各燃料電池セル16の第1固定部材63からの突出長さは一定になる。一方、各燃料電池セル16の長さには製造誤差によるばらつきがあるため、各燃料電池セル16の上端の高さは、完全には一定にならない。
従って、この工程においては、各挿通穴63aに挿通された各燃料電池セル16の一端部が、燃料電池モジュール2を構成する内側円筒部材64に対して位置決めされる。
次いで、図9に示すように、排気集約室18の一部を構成する、第2固定部材である集約室下部材18bが、燃料電池セル16の上端部に配置される(図24のステップS3)。内側円筒部材64の内壁面には、位置決め部材である3つのステー64cが溶接されている。各ステー64cは、傾斜して延びる傾斜部と、第1固定部材63と平行に延びる平行部から構成されており、内側円筒部材64の内壁面上に等間隔に配置されている。集約室下部材18bが各ステー64cの上に配置されると、集約室下部材18bは各ステー64cの平行部まで落とし込まれ、発電室10の内壁面を構成する内側円筒部材64に対して正確に位置決めされる。この状態においては、内側円筒部材64の内周面と集約室下部材18bの外周面の間に、均一な隙間が形成される。また、この工程において、各燃料電池セル16の上端部は、第2固定部材である集約室下部材18bの各挿通穴18cに挿通され、上方に突出する。
さらに、図10に示すように、内側円筒部材64の上部に、第2位置決め装置である上側ジグ112が配置される(図24のステップS4)。上側ジグ112は、内側円筒部材64と平行に下方に向けて延びる複数の円錐台112aを備えている。各円錐台112aの先端は、下方から延びる各燃料電池セル16に挿入され、各円錐台112aの側面が各燃料電池セル16の上端部に当接する。上側ジグ112は内側円筒部材64に対して正確に位置決めされているため、各燃料電池セル16の上端部も内側円筒部材64に対して正確に位置決めされる。
従って、この工程においては、集約室下部材18bの各挿通穴18cに挿通された各燃料電池セル16の他端部が、上側ジグ112により燃料電池モジュール2を構成する内側円筒部材64に対して位置決めされる。
このように、各燃料電池セル16の上端部及び下端部が内側円筒部材64に対して正確に位置決めされる。この状態においては、各燃料電池セル16の外周面と、これらが挿通されている集約室下部材18bの各挿通穴18c及び第1固定部材63の挿通穴63aとの間にはほぼ一定の隙間が形成される。即ち、各燃料電池セル16は、集約室下部材18bの各挿通穴18c及び第1固定部材63の挿通穴63aの縁部から所定距離離間した状態で、燃料電池モジュール2(内側円筒部材64)に対して所定の位置に位置決めされる。各燃料電池セル16には製造誤差により僅かな湾曲が存在するが、各燃料電池セル16は、上端部及び下端部で燃料電池モジュール2(内側円筒部材64)に対して正確に位置決めされているため、各燃料電池セル16の外周面と各挿通穴との間の隙間をほぼ一定にすることができる。
このように、各燃料電池セル16が位置決めされた状態で、接着剤付着装置である接着剤注入装置114により集約室下部材18bの上にセラミック接着剤を注入する接着剤付着工程が実施される。なお、集約室下部材18bには、全ての挿通穴18cを取り囲むように円環状に延びる接着剤充填枠18eが設けられている(図4)。接着剤注入装置114は、各挿通穴18cを取り囲む接着剤充填枠18eの内側にセラミック接着剤を流し込み、接合部にセラミック接着剤を付着させる。集約室下部材18b上の接着剤充填枠18eに囲まれた領域は、接着剤受部として機能する。セラミック接着剤は粘性を有する液体であり、流し込まれることにより、集約室下部材18b上で流動し、接着剤充填枠18eの内側に均一な厚さのセラミック接着剤層118が形成される程度の粘性に調整されている。また、流し込まれたセラミック接着剤は、各燃料電池セル16の外周面と各挿通穴18cの間の隙間にも流入して隙間を充填するが、この隙間から流下しない程度の粘性にされている。
図11に示すように、所定量のセラミック接着剤が流し込まれ、セラミック接着剤層118が集約室下部材18b上の接着剤充填枠18eの内側に均一に広がった後、一旦、上側ジグ112が取り外される。この状態で、流し込まれたセラミック接着剤層118の上に、カバー部材19cが配置される(図24のステップS5)。
図12に示すように、カバー部材19cが配置された後、再び上側ジグ112が取り付けられ、この状態で加熱装置である乾燥炉116に入れられ、セラミック接着剤層118が硬化され、各燃料電池セル16は、その外周面が集約室下部材18bに固定される(図24のステップS6)。従って、乾燥炉116は接着剤硬化装置として機能する。このように、燃料を導く流路の構成部品である燃料電池セル16と集約室下部材18bとのセル接合部がセラミック接着剤層118により気密的に接合される。
次に、セラミック接着剤を乾燥硬化させる乾燥硬化工程を説明する。乾燥硬化工程は、次の製造工程が実施可能な状態までセラミック接着剤を硬化させる作業可能硬化工程と、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程における温度上昇に耐え得る状態までセラミック接着剤を硬化させる溶媒除去硬化工程と、を有する。以下では、作業可能硬化工程について説明する。
本実施形態においては、酸化アルミニウム、石英、アルカリ金属ケイ酸塩、二酸化ケイ素、及び水を含むセラミック接着剤が接着に使用され、このセラミック接着剤は脱水縮合反応により硬化される。即ち、セラミック接着剤は、含まれている水及び縮合反応によって生成された水分が蒸発されることにより硬化される。従って、セラミック接着剤を常温で乾燥させ、硬化させるには非常に長い時間を要するので、工業的には乾燥炉等を使用して硬化させるのが一般的である。しかしながら、セラミック接着剤は硬化時に水分が蒸発して体積が収縮するため、通常の乾燥・硬化処理ではセラミック接着剤の層にクラックが発生してしまう。
図27は、燃料電池セルを、セラミック接着剤により通常の接着方法で接着した場合の一例を示す写真である。図27に示すように、硬化されたセラミック接着剤の層には多数のクラックが発生している。これは、セラミック接着剤を硬化させる際、接着剤層の表面の水分が先に蒸発して硬化し、内部の水分が後から蒸発する際に、先に硬化した接着剤層の表面にクラックが発生するものと考えられる。このような状態においても燃料電池セルは十分な強度で接着されているが、燃料電池セルとセラミック接着剤層の間に部分的に隙間が発生してしまい、十分な気密性を確保することができない。即ち、従来の方法でセラミック接着剤を使用した場合、接着と同時に気密性を確保することが困難であり、これが固体酸化物型燃料電池の技術分野においてセラミック接着剤の使用を提案した文献が複数存在するものの、依然として実用化に至っていない原因であると考えられる。
図22は、本実施形態において、流し込まれたセラミック接着剤の上に配置されるカバー部材19cの平面図である。
カバー部材19cは、円形の金属プレートであり、中央に集約室下部材18bの円筒部を挿通させる大きな円形開口が形成され、その周囲に各燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴が形成されている。本実施形態においては、各挿通穴の位置及び大きさは、集約室下部材18bの挿通穴18cと同一に構成されている。
図23は、流し込まれたセラミック接着剤の上にカバー部材19cを配置した状態を示す斜視図である。
図23に示すように、流し込まれたセラミック接着剤の上にカバー部材19cが配置されると、カバー部材19cの自重により、カバー部材19cの下のセラミック接着剤が押し出される。押し出されたセラミック接着剤は、カバー部材19cの挿通穴と燃料電池セル16の外周面の間の隙間に充填され、各燃料電池セル16の周囲で隆起する。また、変形例として、カバー部材19cの各挿通穴の縁部に、挿通穴を取り囲むように周囲壁を形成することもできる。これにより、各燃料電池セル16の周囲に多くのセラミック接着剤が押し出された場合でも、接着剤がカバー部材19c上に流れるのを抑制することができる。
なお、各燃料電池セル16は、そのリード膜層104a、104bの部分でセラミック接着剤により接着されている(図6)。リード膜層104a、104bは、固体電解質層100と同じ緻密な層であるため、多孔質支持体97等の多孔質層にセラミック接着剤が滲入し、通気性が損なわれることはない。
図25は、燃料電池セル16の集約室下部材18bへの接着部を拡大して示す断面図である。
図25に示すように、燃料電池セル16は集約室下部材18bの挿通穴18cに挿通され、集約室下部材18bの上にセラミック接着剤が流し込まれている。流し込まれたセラミック接着剤の上には、カバー部材19cが配置される。カバー部材19cにも、集約室下部材18bと同じ位置に挿通穴が設けられており、燃料電池セル16はこの挿通穴を貫通して上方に延びている。カバー部材19cの挿通穴と燃料電池セル16の外周面との間には所定の隙間があるため、カバー部材19cは、接合される燃料電池セル16の表面近傍が露出されるようにセラミック接着剤の上に載置される。これにより、集約室下部材18bとカバー部材19cの間にセラミック接着剤層118が形成される。また、セラミック接着剤の一部は、カバー部材19cの下から燃料電池セル16の表面近傍に押し出され、この部分のセラミック接着剤が多くなり、燃料電池セル16の周囲に隆起部118aを形成する。また、押し出されたセラミック接着剤は、下方の挿通穴18cと燃料電池セル16の間にも垂下部118bを形成するが、粘性により、セラミック接着剤が流下することはない。カバー部材19cが配置された組立体は、このような状態で乾燥炉116に入れられる(図12)。
図26は、乾燥炉116内の温度制御の一例を示すグラフである。
図12に示す作業可能硬化工程においては、乾燥炉116内の温度は、加熱制御装置116aにより、図26の実線に示すように制御される。まず、乾燥炉116に組立体を入れた後、乾燥炉116内の温度は、常温から約120分で約60℃まで上昇される。次いで、乾燥炉116内の温度は、約20分で約80℃まで上昇され、その後約60分間約80℃に維持される。約80℃の温度を維持した後、乾燥炉116内の温度は、約30分で常温に戻される。
このように、緩やかに温度を上昇させることにより、セラミック接着剤層118中の水分は少しずつ蒸発される。しかしながら、セラミック接着剤層118はカバー部材19cに覆われているため、カバー部材19cに覆われている部分から直接水分が蒸発することはない。このため、セラミック接着剤層118内の水分は、燃料電池セル16周囲の隆起部118a又は垂下部118bを通って少しずつ蒸発される。これにより、外気に露出している隆起部118a及び垂下部118bに水分が集まることになり、これらの部分は乾燥しにくい状態となる。また、カバー部材19c及び集約室下部材18bは熱伝導率の高い金属製であるため、乾燥炉116内の温度ムラ等により局部的に加熱された場合であっても、セラミック接着剤層118への加熱が均一化される。このため、セラミック接着剤層118が局部的に急速に乾燥されることによるクラックの発生を抑制することができる。一方、各燃料電池セル16は熱伝導率の低いセラミック製であるため、燃料電池セル16周囲の隆起部118a及び垂下部118bには熱が伝わりにくく、これらの部分の乾燥、硬化が、他の部分よりも緩やかになる。
このように、本実施形態においては、各燃料電池セル16周囲の隆起部118a及び垂下部118bは緩やかに乾燥されるため、気密性を確保するために重要な、各燃料電池セル16の周囲部分におけるクラックの発生が防止される。また、セラミック接着剤から水分が蒸発されることにより、セラミック接着剤層118の体積は収縮し、所謂「ヒケ」が発生する。しかしながら、各燃料電池セル16の周囲部分には、隆起部118a及び垂下部118bが形成されてセラミック接着剤層が他の部分よりも厚くなっているため、ヒケの発生により燃料電池セル16とセラミック接着剤層の間の隙間の発生を防止することができる。このように、各燃料電池セル16と各挿通穴18cとの間の接着部の気密性が確保されている。セラミック接着剤の充填部分を覆うように配置されたカバー部材19cは、セラミック接着剤の硬化時におけるクラックの発生を抑制する。
また、隆起部118a及び垂下部118bが形成されているため、この部分に僅かなクラックが発生したとしても、クラックがセラミック接着剤層を貫通することは少なく、確実に気密性を確保することができる。従って、隆起部118a及び垂下部118bは、セラミック接着剤硬化時の収縮によるクラックの発生を抑制する気体漏れ抑制部として機能する。なお、硬化されたセラミック接着剤層は多孔質であり、水素又は空気に対する完全な気密性を有するものではないが、隙間なく充填、硬化されたセラミック接着剤層は、実用上十分な気密性を備えている。本明細書において、「気密性を確保」とは、水素又は空気に対し実用上十分な程度に漏れがないことを意味している。
図12に示す作業可能硬化工程により、セラミック接着剤は、図24のステップS7以下の後続の製造工程を実施可能な状態まで硬化される。この状態においてはセラミック接着剤による接着強度は十分に高く、一般的なセラミック接着剤の使用では、接着工程の完了とみなすことができる状態である。しかしながら、セラミック接着剤を固体酸化物型燃料電池装置1の組み立てに使用した場合には不十分な状態であり、この状態で固体酸化物型燃料電池装置1を運転すると、セラミック接着剤層の内部に残留している水分が急激に蒸発し、接着剤層に大きなクラックが発生する。本実施形態においては、このような状態で、図13以下の製造工程が実施される。
次に、作業可能硬化工程が施された後、下側ジグ110及び上側ジグ112が取り外される。さらに、図13に示すように、組立体が上下反転され、各燃料電池セル16の先端部が突出している第1固定部材63の上(上下反転させていないときの下側面)にセラミック接着剤が注入される(図24のステップS7)。これにより、円形断面を有する各燃料電池セル16の外周面が、セラミック接着剤によって、第1固定部材63に設けられた円形の各挿通穴63aの縁部に固定される。ここで、第1固定部材63には、全ての挿通穴63aを取り囲むように円環状に延びる接着剤充填枠63bが設けられている(図3)。接着剤付着工程として、接着剤注入装置114により、各挿通穴63aを取り囲む接着剤充填枠63bの内側にセラミック接着剤が流し込まれる。なお、この工程における各燃料電池セル16の第1固定部材63への接着は、上述した集約室下部材18bへの接着と同様である。また、この工程においては、各燃料電池セル16は集約室下部材18bに固定されているため、上側ジグ112を使用することなく、各燃料電池セル16は適正位置に保持されている。
さらに、図14に示すように、流し込まれたセラミック接着剤の上にカバー部材67が配置され、第1固定部材63とカバー部材67の間に、セラミック接着剤層122が形成される(図24のステップS8)。カバー部材67は、中央の円形開口部が設けられていない点を除き、カバー部材19c(図22)と同様に構成され、セラミック接着剤硬化時におけるクラックの発生を抑制する。このカバー部材67を配置することにより、各燃料電池セル16の周囲には、図25と同様の隆起部及び垂下部が形成され、セラミック接着剤層122の各燃料電池セル16の周囲部分は、気体漏れ抑制部として機能する。
この状態で、組立体は乾燥炉116に入れられ、2回目の作業可能硬化工程が実施される。この作業可能硬化工程においても、乾燥炉116内の温度は、図26の実線に示すように制御される。なお、本実施形態においては、2回目の作業可能硬化工程は、乾燥炉116内の温度を約80℃に維持する時間は、約50分に設定されている。2回目の作業可能硬化工程により、第1固定部材63上のセラミック接着剤層122が硬化され、各燃料電池セル16が第1固定部材63に固定される。このように、燃料を導く流路の構成部品である燃料電池セル16と第1固定部材63のセル接合部がセラミック接着剤により気密的に接合される。この際のカバー部材67の作用も、1回目の作業可能硬化工程と同様である。また、集約室下部材18b上のセラミック接着剤層118には2回の作業可能硬化工程が施されることにより、セラミック接着剤層118は、より安定した状態となる。
次に、図15に示すように、第1固定部材63から突出している各燃料電池セル16の先端部(上下反転させていないときの下端部)に集電体82が取り付けられ、この集電体82がバスバー80に接続される(図24のステップS9)。
さらに、図16に示すように、内側円筒部材64の下方(図16における上方)の開口部から分散室底部材72が挿入される。この分散室底部材72は、その外周のフランジ部72cと、内側円筒部材64の内壁面に溶接された円環状の棚部材64dが当接する位置まで挿入され、その位置に位置決めされる(図24のステップS10)。
次いで、図17に示すように、分散室底部材72の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の円環状の隙間に、接着剤注入装置114によりセラミック接着剤が充填される。また、分散室底部材72の中央に設けられた、導電体通路である挿通管72aの中には、碍子78が配置され、集電体82から延びる各バスバー80は、この碍子78を貫通する。さらに、接着剤付着工程として、碍子78を配置した挿通管72aの中に、接着剤注入装置114によりセラミック接着剤が充填される。各バスバー80は挿通管72aを通って外部まで延び、挿通管72a内の各バスバー80の周囲の空間に、セラミック接着剤が充填される(図24のステップS11)。
さらに、図18に示すように、分散室底部材72の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間に充填されたセラミック接着剤層124の上に円環状の薄板である分散室シールリング126が配置される。また、挿通管72aの内部に充填されたセラミック接着剤層128の上に中央シール板130が配置される(図24のステップS12)。各バスバー80は中央シール板130に設けられた穴を貫通される。これら分散室シールリング126及び中央シール板130は、セラミック接着剤の硬化時におけるクラックの発生を抑制するカバー部材として機能する。この状態で、組立体は、乾燥炉116(図18には図示せず)に入れられ、3回目の作業可能硬化工程が実施される(図24のステップS13)。この作業可能硬化工程においても、乾燥炉116内の温度は、図26の実線に示すように制御される。なお、本実施形態においては、3回目の作業可能硬化工程は、乾燥炉116内の温度を約80℃に維持する時間は、約45分に設定されている。3回目の作業可能硬化工程により、セラミック接着剤層124が硬化され、分散室底部材72と内側円筒部材64が気密的に接着、固定される。このように、燃料を導く流路の構成部品である分散室底部材72と内側円筒部材64の接合部がセラミック接着剤により気密的に接合される。また、セラミック接着剤層128も硬化され、各バスバー80が貫通した挿通管72aが気密的に閉鎖される。
これらのセラミック接着剤が硬化される際、分散室シールリング126及び中央シール板130は、各接着剤層の表面が急激に乾燥されるのを防止し、セラミック接着剤層124、128におけるクラックの発生を抑制する。また、内側円筒部材64と分散室底部材72の間の隙間に充填されたセラミック接着剤層124は、円環状であるため均等に加熱されながら硬化され、クラックの発生が抑制される。例えば、セラミック接着剤層が矩形状に形成されている場合、コーナー部と他の部分では、接着剤が硬化する速度が異なるため、先に乾燥、硬化した部分が、セラミック接着剤の収縮により引っ張られクラックが発生しやすくなる。また、コーナー部は、セラミック接着剤の収縮により発生する応力が集中しやすく、硬化する際にクラックが発生しやすい。これに対して、本実施形態においては、セラミック接着剤層124が円環状であるため、乾燥、硬化が均等に進むと共に、接着剤の収縮により発生する応力が集中しないので、セラミック接着剤層の硬化に伴うクラックの発生を抑制することができる。また、変形例として、セラミック接着剤層124を楕円環状に構成することもできる。
3回目の作業可能硬化工程終了後、組立体の上下が反転され、図19に示すように、集約室下部材18bから突出するように固定された各燃料電池セル16の先端部に集電体82が取り付けられる(図24のステップS14)。この集電体82により、各燃料電池セル16の先端部が電気的に接続される。さらに、集約室下部材18bの上方の開口部に集約室上部材18aが配置される。配置された集約室上部材18aの外周面と、集約室下部材18bの外周壁の内周面の間には円筒状(円環状)の隙間(図4)がある。次いで、この隙間に、接着剤注入装置114(図19には図示せず)により、セラミック接着剤層120aを充填する接着剤付着工程が実施される。セラミック接着剤層120aの上には、充填された接着剤を覆うように円環状の大径シールリング19aが配置される。また、集約室下部材18bの円筒部の外周面と、集約室上部材18aの中央の開口部の間にも円環状の隙間があり、接着剤注入装置114(図19には図示せず)により、この隙間にもセラミック接着剤層120bが充填される。セラミック接着剤層120bの上には、充填された接着剤を覆うように円環状の小径シールリング19bが配置される。これら大径シールリング19a及び小径シールリング19bは、セラミック接着剤の硬化時におけるクラックの発生を抑制するカバー部材として機能する。
なお、変形例として、集約室上部材18aと集約室下部材18bの間の隙間が楕円環状となるように、これらの部材を形成しておき、この隙間にセラミック接着剤を充填することにより、排気集約室18が構成されるように、本発明を構成することもできる。また、変形例として、集約室下部材18bの円筒部と、集約室上部材18aの開口部の隙間が楕円環状となるように、これらの部材を形成しておき、この隙間にセラミック接着剤を充填することにより、排気集約室18が構成されるように、本発明を構成することもできる。
この状態で、組立体は、再び乾燥炉116(図19には図示せず)に入れられ、4回目の作業可能硬化工程が実施される(図24のステップS15)。この作業可能硬化工程においても、乾燥炉116内の温度は、図26の実線に示すように制御される。なお、本実施形態においては、4回目の作業可能硬化工程は、乾燥炉116内の温度を約80℃に維持する時間は、約45分に設定されている。4回目の作業可能硬化工程により、排気集約室18の周囲部のセラミック接着剤層120a、及び排気集約室18の中央部のセラミック接着剤層120bが硬化される。この際、セラミック接着剤層120aの上に配置された大径シールリング19a、及びセラミック接着剤層120bの上に配置された小径シールリング19bは、作業可能硬化工程において、各セラミック接着剤層の表面の水分が急速に蒸発するのを防止する。これにより、セラミック接着剤層120a、120bにおけるクラックの発生を抑制することができ、接合部の気密性を確保することができる。このように、燃料を導く流路の構成部品である集約室上部材18aと集約室下部材18bの接合部がセラミック接着剤により気密的に接合される。なお、これまで3回の作業可能硬化工程により硬化された各セラミック接着剤層は、4回目の作業可能硬化工程において再び緩やかに加熱されるため、クラック発生の危険を回避しながら残留している水分が蒸発され、より安定した状態となる。
次に、図20に示すように、図19まで組み立てられた組立体の上方に、排気通路構成部材である内側円筒容器68及び供給通路構成部材である外側円筒容器70が被せられる(図24のステップS16)。内側円筒容器68及び外側円筒容器70は、溶接により結合された状態で組立体に取り付けられる。また、内側円筒容器68の外壁面下部には排ガス排出パイプ58が取り付けられ、内側天井面には酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。外側円筒容器70の外壁面下部には酸化剤ガス導入パイプ56が取り付けられている。また、内側円筒容器68及び外側円筒容器70を貫通するように、点火ヒーター62が取り付けられている。内側円筒容器68を組立体に被せることにより、外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間に排ガス排出流路21(図2)が形成される。また、内側円筒容器68に取り付けられた酸化剤ガス噴射用パイプ74は、組立体の排気集約室18の中央の開口部を貫通される。
なお、変形例として、内側円筒容器68と外側円筒容器70がセラミック接着剤により接着されるように、本発明を構成することもできる。この場合には、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間の円環状の隙間にセラミック接着剤を充填し、これらの部材を気密的に固定する。或いは、内側円筒容器と外側円筒容器の間の隙間が楕円環状となるように、これらの部材を構成し、この楕円環状の隙間にセラミック接着剤を充填し、これらの部材を気密的に固定するように、本発明を構成することもできる。
図21に示すように、内側円筒容器68及び外側円筒容器70が被せられた組立体は再び上下反転される。ここで、外側円筒部材66の外壁面下部(図21における上部)には円環状の棚部材66aが溶接されており、この棚部材66aは、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の隙間を閉鎖する。この外側円筒部材66の外周面、内側円筒容器68の内周面、及び棚部材66aによって囲まれた円環状の空間に、接着剤付着工程として、接着剤注入装置114によりセラミック接着剤が充填される(図24のステップS17)。なお、変形例として、セラミック接着剤が充填される外側円筒部材と内側円筒容器の間の隙間が楕円環状となるように、外側円筒部材及び内側円筒容器を構成することもできる。
充填されたセラミック接着剤層132を覆うように、円環状の薄板である排気通路シールリング134が配置される。この排気通路シールリング134は、セラミック接着剤の硬化時におけるクラックの発生を抑制するカバー部材として機能する。この状態で、組立体は乾燥炉116(図21には図示せず)に入れられ、5回目の作業可能硬化工程が実施される(図24のステップS18)。
この作業可能硬化工程においては、図26に示すように、乾燥炉116内の温度は、加熱制御装置116aにより、まず、常温から約120分で約60℃まで上昇され、次いで、約20分で約80℃まで上昇され、その後約60分間約80℃に維持される。約80℃の温度が維持された後、溶媒除去硬化工程として、図26に破線で示すように、乾燥炉116内の温度は約70分で約150℃まで上昇される。さらに、約150℃の温度が約60分維持された後、約60分で常温に戻される。
即ち、5回目の作業可能硬化工程を実施することにより、新しく充填されたセラミック接着剤層132が、加熱、硬化され、外側円筒部材66と内側円筒容器68が気密的に接着される。このように、酸化剤ガスを導く流路の構成部品である外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部がセラミック接着剤により気密的に接合される。この際の排気通路シールリング134の作用、及び円環状のセラミック接着剤層132による効果は、上述した分散室シールリング126及びセラミック接着剤層124と同様である。また、1乃至4回目の作業可能硬化工程において硬化されたセラミック接着剤層は、夫々複数回の作業可能硬化工程が施されるため、緩やかな乾燥が繰り返し施され、クラックが発生するリスクを回避しながらセラミック接着剤層は安定した状態となる。
特に、各燃料電池セル16と集約室下部材18bの間のセル接合部に対する作業可能硬化工程は、5回実施された作業可能硬化工程のうちの最初に実行される。また、最後に実施されたセル接合部に対する作業可能硬化工程、即ち、各燃料電池セル16と第1固定部材63の間の接合部に対する作業可能硬化工程(2回目の作業可能硬化工程)の後に、燃料電池セル16以外の構成部品の接合部に対する作業可能硬化工程が3回実施されている。このため、各セル接合部に対して4回以上作業可能硬化工程が実施され、各セル接合部のセラミック接着剤層は極めて安定した状態となる。これらのセル接合部は気密性が損なわれると大きな問題が発生するが、作業可能硬化工程を繰り返し施すことにより、確実に気密性を確保することができる。
また、セル接合部に対する作業可能硬化工程よりも後に実施される、外側円筒部材66と内側円筒容器68の間の接合部に対する作業可能硬化工程は、排気を導く排ガス排出流路21の気密性を確保するためのものであり、万一気密性が損なわれた場合でも、セル接合部の気密性が損なわれた場合よりも悪影響が少なくなる。さらに、上述した変形例のように、内側円筒容器68と外側円筒容器70をセラミック接着剤により接合した場合、この接合部に対する作業可能硬化工程は、セル接合部に対する作業可能硬化工程よりも後に実施される。内側円筒容器68と外側円筒容器70の接合部は、酸化剤ガス供給流路22の気密性を確保するためのものであり、万一気密性が損なわれた場合でも、セル接合部の気密性が損なわれた場合よりも悪影響が少なくなる。
最後の作業可能硬化工程である5回目の作業可能硬化工程を実施した後、引き続き溶媒除去硬化工程が実施される(図24のステップS19)。このように、接着剤付着工程と作業可能硬化工程が複数回繰り返された後、溶媒除去硬化工程が実施される。溶媒除去硬化工程は、作業可能硬化工程により脱水縮合反応が行われ、十分に硬化したセラミック接着剤層から、残留している水分を更に蒸発させ、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで乾燥させるものである。本実施形態においては、溶媒除去硬化工程は、乾燥炉116内の温度を約150℃とし、これを約180分維持することにより実施される。溶媒除去硬化工程を作業可能硬化工程よりも高い温度で実施することにより、短時間でセラミック接着剤層を起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで乾燥させることができる。
このように、溶媒除去硬化工程は、作業可能硬化工程の温度よりも高く、固体酸化物型燃料電池装置1の発電運転時における温度よりも低い温度で実行されるのがよい。本実施形態において使用されているセラミック接着剤は、200℃以下の温度で起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで乾燥させることができ、好ましくは、溶媒除去硬化工程は、100℃以上、200℃以下の温度で実行する。或いは、変形例として、溶媒除去硬化工程を、作業可能硬化工程と同程度の温度で、作業可能硬化工程よりも長時間行うことにより、セラミック接着剤層を起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで乾燥させることもできる。
接着剤付着工程において充填されたセラミック接着剤は、少なくとも1回の作業可能硬化工程を経ているため、溶媒除去硬化工程において乾燥炉116の温度を約150℃まで上昇させても、セラミック接着剤層に大きなクラックが発生することはない。なお、溶媒除去硬化工程終了後も各セラミック接着剤層には水分が残留しているが、微量であるため、燃料電池モジュール2内を発電時の温度まで上昇させても、クラックの発生などのトラブルが発生することはない。また、本実施形態においては、溶媒除去硬化工程は、接着剤付着工程と作業可能硬化工程が複数回繰り返され、最後に作業可能硬化工程が実行された後、1回のみ実施されているが、製造工程の中で、複数回溶媒除去硬化工程を実施することもできる。
変形例として、図24のステップS15における作業可能硬化工程とステップS16の間に、溶媒除去硬化工程を追加することもできる。この変形例においては、追加される溶媒除去硬化工程は、第1溶媒除去硬化工程と第2溶媒除去硬化工程の2回に分けて実施される。
図28乃至図30は、本変形例による溶媒除去硬化工程を説明する図である。図28は本変形例における第1溶媒除去硬化工程を表す図であり、図29は第2溶媒除去硬化工程を表す図である。また、図30は、第2溶媒除去硬化工程における加熱方法を説明する図である。
まず、本変形例による製造方法を実施する場合には、図24のステップS15における4回目の作業可能硬化工程として、図28の前半部分の加熱を行う。即ち、ステップS14まで組み立てられた組立体を乾燥炉116に入れ、乾燥炉116内の温度を約60分間、約80℃に維持する。次いで、図28に示すように、第1溶媒除去硬化工程として、乾燥炉116内の温度を約70分間で約150℃まで上昇させ、この温度を約30分間維持した後、温度を低下させる。この第1溶媒除去硬化工程においては温度を約150℃まで上昇させるが、各セラミック接着剤層は少なくとも1回の作業可能硬化工程を経ているため、この加熱により、セラミック接着剤層に大きなクラックが発生することはない。
次に、図29に示す第2溶媒除去硬化工程を実施する。この第2溶媒除去硬化工程においては、発電室10内及び燃料電池セル16の温度を、発電運転時における温度、又はその近傍の温度まで上昇させる。また、第2溶媒除去硬化工程においては、組立体全体を乾燥炉116内で加熱するのではなく、図30に示すように、発電室10内に加熱された空気を送り込むことによって、発電室10内及び燃料電池セル16を加熱する。即ち、第2溶媒除去硬化工程においては、加熱空気導入管136が、排気集約室18中央の開口部を介して発電室10内に挿入される。第2溶媒除去硬化工程においては、加熱された空気が、加熱空気導入管136を介して発電室10内に導入される。導入された空気は、図30に実線の矢印で示すように、発電室10内の各燃料電池セル16を加熱した後、排気集約室18の外周と内側円筒部材64の内壁面との間の隙間を通って、組立体の外部に流出する。これにより、燃料電池セル16と第1固定部材63の接合部、集約室下部材18bと燃料電池セル16の接合部、集約室上部材18aと集約室下部材18bの接合部、及び分散室底部材72と内側円筒部材64の接合部の各セラミック接着剤層が加熱され、硬化したセラミック接着剤の内部に残留する溶媒が更に蒸発される。
また、加熱空気導入管136を介して発電室10内に導入される空気の温度は、固体酸化物型燃料電池装置1の発電運転時における温度まで、長い時間をかけて少しずつ上昇される。本変形例においては、図29に実線で示すように、加熱空気導入管136から導入される加熱用空気の温度は、導入開始から約3時間かけて約650℃まで上昇される。この温度上昇は、図29に一点鎖線で示す、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程における発電室10内の温度上昇よりも緩やかにされている。図29に示す例では、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程においては約2時間で、発電室10内の温度が約650℃まで温度上昇されるのに対し、第2溶媒除去硬化工程においては、供給される空気の温度が約3時間かけて約650℃まで温度上昇される。
このように緩やかに温度上昇させることにより、セラミック接着剤層に残留している溶媒は少しずつ加熱され、蒸発される。これにより、溶媒の急激な体積膨張及び蒸発による過剰なクラックの発生が抑制される。また、第2溶媒除去硬化工程により、発電室10内各部のセラミック接着剤層の温度は実際の発電運転時の温度まで上昇される。これにより、完成した固体酸化物型燃料電池装置1の実際の起動工程おいて急速に温度を上昇させた場合にも、セラミック接着剤層に過剰なクラックが発生しないことを、より確実に保証することができる。
また、発電室10内の温度を約650℃まで上昇させる第2溶媒除去硬化工程を、組み立て工程の最後(図24のステップS18の後)に行うのではなく、ステップS15の後で実施することにより、組み立て工程を簡略化することが可能になる。即ち、ステップS16において組み付けられる内側円筒容器68及び外側円筒容器70には、燃焼触媒60や点火ヒーター62、シースヒーター61、センサー等の機器が予め取り付けられており、これらの機器を内側円筒容器68及び外側円筒容器70の取り付けと同時に一回で組立体に取り付けることができる。ところが、これらの機器は約650℃の温度には耐えることができない(固体酸化物型燃料電池装置1の実際の発電運転時においては、これらの機器が取り付けられる箇所は約650℃までは温度上昇しない)。従って、内側円筒容器68及び外側円筒容器70の取り付けが完了した後で(図24のステップS18の後で)第2溶媒除去硬化工程を施すとすれば、点火ヒーター62等の機器は、後から別々に取り付ける必要があり、製造工程が複雑化する。
一方、第2溶媒除去硬化工程においては、加熱空気導入管136からの加熱用空気の導入と並行して、燃料ガス供給パイプ90から不活性ガスが供給される。図29に波線の矢印で示すように、燃料ガス供給パイプ90から供給された不活性ガスは、燃料ガス供給流路20内を上端まで上昇した後、改質部94内を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。燃料ガス分散室76に流入した不活性ガスは、燃料ガス分散室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。排気集約室18に流入した不活性ガスは、排気集約室18の噴出口18dから噴出され、組立体の外部に流出する。
本変形例においては、不活性ガスとして窒素ガスが使用されている。また、各燃料電池セル16を内側からも加熱できるよう、導入する窒素ガスは加熱されている。このように、各燃料電池セル16に不活性ガスを導入して、各燃料電池セル16内及び改質部94内の酸化剤ガス(空気)を排出しておく。これにより、発電運転時の温度まで上昇させた際の、各燃料電池セル16の燃料極の酸化及び改質部94の改質触媒の酸化を防止することができる。また、第2溶媒除去硬化工程において、不活性ガスに代えて、水素ガスを燃料ガス供給パイプ90から供給することもできる。この場合には、水素ガスが、高温にされた各燃料電池セル16の燃料極側を通過するので、燃料極を還元させることができる。なお、第2溶媒除去硬化工程において、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇するまでは、不活性ガスを供給しておき、温度が上昇した後、不活性ガスを水素ガスに切り換えることもできる。
なお、本変形例において、第1溶媒除去硬化工程の後、温度を低下させることなく、第2溶媒除去硬化工程の温度まで温度を上昇させることもできる。この場合にも、不活性ガスを燃料ガス供給パイプ90から供給しておく必要がある。また、第1、第2溶媒除去硬化工程のうち、第1溶媒除去硬化工程を省略することもできる。この場合には、第2溶媒除去硬化工程において、供給する加熱空気の温度上昇を更に緩やかにし、4時間以上かけて温度を上昇させるのがよい。
また、各燃料電池セル16の空気極側に酸化剤ガスが供給され、燃料極側に水素ガスが供給され、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇されている状態においては、燃料電池セル16に接続された2本のバスバー80の間に電圧が発生する。このバスバー80間の電圧を測定することにより、各燃料電池セル16及び組立体の各接合部の良否を判定することができる。電圧の測定は、バスバー80の間に電流を流さない状態で行われる。各燃料電池セル16自体に不具合がある場合には、バスバー80間に発生する電圧が低下する。また、各燃料電池セル16と第1固定部材63の間の接合部、又は各燃料電池セル16と集約室下部材18bの間の接合部に大きな燃料漏れが発生している場合にも、燃料極に十分な燃料ガスが供給されないため、電圧が低下する。このように、第2溶媒除去硬化工程においては、各燃料電池セル16の燃料極の還元、及び固体酸化物型燃料電池装置1の半完成品の検査を同時に行うことができる。
また、本実施形態において設定されていた作業可能硬化工程の時間を変更することもできる。例えば、初期に実施される作業可能硬化工程の時間を、後で行われる作業可能硬化工程の時間よりも短くすることができる。初期に作業可能硬化工程が施される接合部は、後で施される接合部よりも多くの回数作業可能硬化工程が施されるので、作業可能硬化工程に要する時間を短縮しながら、クラック発生のリスクを十分に低減することができる。
以上の製造工程により、燃料電池セル収容容器8が完成された後、種々の部品を取り付け、固体酸化物型燃料電池装置1が完成される。また、上述した固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法において使用された、下側ジグ110(第1位置決め装置)、上側ジグ112(第2位置決め装置)、接着剤注入装置114、乾燥炉116(接着剤硬化装置)、及び加熱制御装置116aは、固体酸化物型燃料電池装置の製造装置を構成する。
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法によれば、気密性の確保が極めて重要なセル接合部(燃料電池セル16と第1固定部材63の接合部、及び燃料電池セル16と集約室下部材18bの接合部)に対する作業可能硬化工程(図24のステップS6、S8)よりも後に、セル接合部以外の接合部(内側円筒部材64と分散室底部材72の接合部、及び外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部)に対する作業可能硬化工程(図24のステップS13、S18)が実施される。この結果、セル接合部には少なくとも3回の作業可能硬化工程が施されることとなり、組み立てに要する時間を延長することなく、セル接合部におけるセラミック接着剤層118、122にクラックが発生するリスクを著しく低減することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法によれば、最後のセル接合部(燃料電池セル16と第1固定部材63の接合部)に対する作業可能硬化工程(図24のステップS8)の後に、セル接合部以外の接合部に対する作業可能硬化工程(図24のステップS13、S15、S18)が3回(内側円筒部材64と分散室底部材72の接合部、集約室上部材18aと集約室下部材18bの接合部、及び外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部)実施されるので、セル接合部には最低4回の作業可能硬化工程が施されることとなり、セル接合部におけるクラックの発生のリスクを極小にすることができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法によれば、セル接合部(燃料電池セル16と集約室下部材18bの接合部)に対する作業可能硬化工程(図24のステップS6)は最初に実行されるので、最初に接合されたセル接合部には最も多くの作業可能硬化工程が施されることとなり、そのセル接合部におけるクラックの発生のリスクを極小にすることができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法によれば、溶媒除去硬化工程は1回だけ実施される(図24のステップS19)ので、複数の作業可能硬化工程(図24のステップS6、S8、S13、S15、S18)において次の製造工程が実施可能な状態まで硬化された全てのセラミック接着剤層を、1回の溶媒除去硬化工程により起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで乾燥させることができ、製造に要する時間を大幅に短縮することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造方法において、最後に実施されたセル接合部に対する作業可能硬化工程(図24のステップS8)よりも後に、排気ガスを導く排ガス排出流路21を構成する構成部品の接合部(外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部)に対する作業可能硬化工程(図24のステップS18)が実施される。この接合部においては、仮にセラミック接着剤層にクラックが発生し、気密性が不十分であったとしても、燃料電池セル16の劣化や、著しい性能の低下を引き起こすことがなく、重大なトラブルを回避しながら製造に要する時間を短縮することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1によれば、燃料電池モジュール2の最も内側の第1固定部材63に燃料電池セル16がセラミック接着剤により固定され、その外側に燃料ガス供給流路20が形成され、その外側に内側円筒容器68をセラミック接着剤により固定することにより排気ガスを排出する流路が形成される(図2)。セラミック接着剤を使用して、燃料電池モジュール2を内側から組み立てることにより、燃料電池セル16と第1固定部材63の間のセル接合部に対する作業可能硬化工程(図24のステップS8)が初期に実施され、その外側の内側円筒容器68のセラミック接着剤による接着が後で実施される(図24のステップS18)。このように構成された本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1によれば、効率的な燃料電池モジュール2の組み立て手順を実行しながら、特に気密性の確保が必要なセル接合部に対して、セラミック接着剤の硬化工程を少なくとも4回施すことができ、効率的な組み立てと、十分な気密性の確保を両立することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1の製造装置においては、加熱制御装置116aにより、セル接合部に対する作業可能硬化工程(図24のステップS6、S8)、その後の、セル接合部以外の接合部に対する溶媒除去硬化工程(図24のステップS13、S15、S18)、及び硬化されたセラミック接着剤に対する溶媒除去硬化工程(図24のステップS19)が実行される。この結果、セル接合部に複数回の作業可能硬化工程を施すことができると共に、複数の接合部に対し、同時に溶媒除去硬化工程を施すことができ、組み立てに要する時間を延長することなく、セル接合部におけるセラミック接着剤層にクラックが発生するリスクを著しく低減することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
特に、上述した実施形態においては、各接合部に対する作業可能硬化工程が、集約室下部材18bと燃料電池セル16の接合部、燃料電池セル16と第1固定部材63の接合部、集約室上部材18aと集約室下部材18bの接合部、分散室底部材72と内側円筒部材64の接合部、外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部の順で実施されているが、変形例として、燃料電池セルを下端部から接合するように、本発明を構成することもできる。
この場合には、1回目に燃料電池セル16と第1固定部材63の接合部、2回目に集約室下部材18bと燃料電池セル16の接合部、3回目に集約室上部材18aと集約室下部材18bの接合部、4回目に分散室底部材72と内側円筒部材64の接合部、5回目に外側円筒部材66と内側円筒容器68の接合部に対する作業可能硬化工程が実施される。この変形例によれば、燃料電池セルと他の構成部品を接合するセル接合部に対する作業可能硬化工程が、5回の作業可能硬化工程のうちの前半である1回目と2回目に実施されることとなる。これにより、気密性の確保が特に必要なセル接合部に対して、最も多くの回数の作業可能硬化工程が実施されることとなり、セル接合部における気密性を確実に確保することができる。