次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して燃料電池セル収容容器8が配置されている。この燃料電池セル収容容器8内の内部には発電室10が構成され、この発電室10の中には複数の燃料電池セル16が同心円状に配置されており、これらの燃料電池セル16により、燃料ガスと酸化剤ガスである空気の発電反応が行われる。
各燃料電池セル16の上端部には、排気集約室18が取り付けられている。各燃料電池セル16において発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)は、上端部に取り付けられた排気集約室18に集められ、この排気集約室18の天井面に設けられた複数の噴出口から流出される。流出した燃料は、発電室10内で発電に使用されずに残った空気により燃焼され、排気ガスが生成されるようになっている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された炭化水素系の原燃料ガスの流量を調整する燃料供給装置である燃料ブロア38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
なお、燃料ブロア38を通過した原燃料ガスは、燃料電池モジュール2内に配置された脱硫器36と、熱交換器34、電磁弁35を介して燃料電池セル収容容器8の内部に導入される。脱硫器36は、燃料電池セル収容容器8の周囲に環状に配置されており、原燃料ガスから硫黄を除去するようになっている。また、熱交換器34は、脱硫器36において温度上昇した高温の原燃料ガスが直接電磁弁35に流入し、電磁弁35が劣化されるのを防止するために設けられている。電磁弁35は、燃料電池セル収容容器8内への原燃料ガスの供給を停止するために設けられている。
補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気の流量を調整する酸化剤ガス供給装置である空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)を備えている。
さらに、補機ユニット4には、燃料電池モジュール2からの排気ガスの熱を回収するための温水製造装置50が備えられている。この温水製造装置50には、水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)の燃料電池モジュールに内蔵された燃料電池セル収容容器の内部構造を説明する。
図2は燃料電池セル収容容器の断面図であり、図3は燃料電池セル収容容器の主な部材を分解して示した断面図である。
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8内の空間には、複数の燃料電池セル16が同心円状に配列され、その周囲を取り囲むように燃料流路である燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、酸化剤ガス供給流路22が順に同心円状に形成されている。ここで、排ガス排出流路21及び酸化剤ガス供給流路22は、酸化剤ガスを供給/排出する酸化剤ガス流路として機能する。
まず、図2に示すように、燃料電池セル収容容器8は、概ね円筒状の密閉容器であり、その側面には、発電用の空気を供給する酸化剤ガス流入口である酸化剤ガス導入パイプ56、及び排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58が接続されている。さらに、燃料電池セル収容容器8の上端面からは、排気集約室18から流出した残余燃料に点火するための点火ヒーター62が突出している。
図2及び図3に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、燃料電池セル16の周囲を取り囲むように、内側から順に、発電室構成部材である内側円筒部材64、外側円筒部材66、内側円筒容器68、外側円筒容器70が配置されている。上述した燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、及び酸化剤ガス供給流路22は、これらの円筒部材及び円筒容器の間に夫々構成される流路であり、隣り合う流路の間で熱交換が行われる。
即ち、排ガス排出流路21は燃料ガス供給流路20を取り囲むように配置され、酸化剤ガス供給流路22は排ガス排出流路21を取り囲むように配置されている。また、燃料電池セル収容容器8の下端側の開放空間は、燃料を各燃料電池セル16に分散させる燃料ガス分散室76の底面を構成する概ね円形の分散室底部材72により塞がれている。
内側円筒部材64は、概ね円筒状の中空体であり、その上端及び下端は開放されている。また、内側円筒部材64の内壁面には、分散室形成板である円形の第1固定部材63が気密的に溶接されている。この第1固定部材63の下面と、内側円筒部材64の内壁面と、分散室底部材72の上面により、燃料ガス分散室76が画定される。また、第1固定部材63には、各々燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴63aが形成されており、各燃料電池セル16は、各挿通穴63aに挿通された状態で、セラミック接着剤により第1固定部材63に接着されている。このように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池モジュール2を構成する部材間相互の接合部には、セラミック接着剤が充填され、硬化されることにより、各部材が相互に気密的に接合されている。
外側円筒部材66は、内側円筒部材64の周囲に配置される円筒状の管であり、内側円筒部材64との間に円環状の流路が形成されるように、内側円筒部材64と概ね相似形に形成されている。さらに、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間には中間円筒部材65が配置されている。中間円筒部材65は、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間に配置された円筒状の管であり、内側円筒部材64の外周面と中間円筒部材65の内周面の間には改質部94が構成されている。また、中間円筒部材65の外周面と、外側円筒部材66の内周面の間の円環状の空間は、燃料ガス供給流路20として機能する。このため、改質部94及び燃料ガス供給流路20は、燃料電池セル16における発熱及び排気集約室18上端における残余燃料の燃焼により熱を受ける。また、内側円筒部材64の上端部と外側円筒部材66の上端部は溶接により気密的に接合されており、燃料ガス供給流路20の上端は閉鎖されている。さらに、中間円筒部材65の下端と、内側円筒部材64の外周面は、溶接により気密的に接合されている。
内側円筒容器68は、外側円筒部材66の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、外側円筒部材66との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が外側円筒部材66と概ね相似形に形成されている。この内側円筒容器68は、内側円筒部材64の上端の開放部を覆うように配置される。外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間は、排ガス排出流路21(図2)として機能する。この排ガス排出流路21は、内側円筒部材64の上端部に設けられた複数の小穴64aを介して内側円筒部材64の内側の空間と連通している。また、内側円筒容器68の下部側面には、排ガス流出口である排ガス排出パイプ58が接続されており、排ガス排出流路21が排ガス排出パイプ58に連通される。
排ガス排出流路21の下部には、燃焼触媒60及びこれを加熱するためのシースヒーター61が配置されている。
燃焼触媒60は、排ガス排出パイプ58よりも上方に、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間に充填された触媒である。排ガス排出流路21を下降した排気ガスは、燃焼触媒60を通過することにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58から排出される。
シースヒーター61は、燃焼触媒60の下方の、外側円筒部材66の外周面を取り囲むように取り付けられた電気ヒーターである。固体酸化物型燃料電池装置1の起動時において、シースヒーター61に通電することにより、燃焼触媒60が活性温度まで加熱される。
外側円筒容器70は、内側円筒容器68の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、内側円筒容器68との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が内側円筒容器68と概ね相似形に形成されている。内側円筒容器68の外周面と、外側円筒容器70の内周面の間の円環状の空間は、酸化剤ガス供給流路22として機能する。
また、外側円筒容器70の下部側面には、酸化剤ガス導入パイプ56が接続されており、酸化剤ガス供給流路22が酸化剤ガス導入パイプ56に連通される。
分散室底部材72は、概ね円形の皿状の部材であり、内側円筒部材64の内壁面にセラミック接着剤により気密的に固定される。これにより、第1固定部材63と分散室底部材72の間に、燃料ガス分散室76が構成される。また、分散室底部材72の中央には、バスバー80(図2)を挿通させるための挿通管72aが設けられている。各燃料電池セル16に電気的に接続されたバスバー80は、この挿通管72aを通して燃料電池セル収容容器8の外部に引き出される。また、挿通管72aには、セラミック接着剤が充填され、燃料ガス分散室78の気密性が確保されている。さらに、挿通管72aの周囲には、断熱材72b(図2)が配置されている。
内側円筒容器68の天井面から垂下するように、発電用の空気を噴射するための、円形断面の酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。この酸化剤ガス噴射用パイプ74は、内側円筒容器68の中心軸線上を鉛直方向に延び、その周囲の同心円上に各燃料電池セル16が配置される。酸化剤ガス噴射用パイプ74の上端が内側円筒容器68の天井面に取り付けられることにより、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間に形成されている酸化剤ガス供給流路22と酸化剤ガス噴射用パイプ74が連通される。酸化剤ガス供給流路22を介して供給された空気は、酸化剤ガス噴射用パイプ74の先端から下方に噴射され、第1固定部材63の上面に当たって、発電室10内全体に広がる。
燃料ガス分散室76は、第1固定部材63と分散室底部材72の間に構成される円筒形の気密性のあるチャンバーであり、その上面に各燃料電池セル16が林立されている。第1固定部材63の上面に取り付けられた各燃料電池セル16は、その内側の燃料極が、燃料ガス分散室76の内部と連通されている。各燃料電池セル16の下端部は、第1固定部材63の挿通穴63aを貫通して燃料ガス分散室76の内部に突出し、各燃料電池セル16は第1固定部材63に、接着により固定されている。
図2に示すように、内側円筒部材64には、第1固定部材63よりも下方に複数の小穴64bが設けられている。内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間は、複数の小穴64bを介して燃料ガス分散室76内に連通されている。供給された燃料は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の空間を一旦上昇した後、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間を下降し、複数の小穴64bを通って燃料ガス分散室76内に流入する。燃料ガス分散室76に流入した燃料は、燃料ガス分散室76の天井面(第1固定部材63)に取り付けられた各燃料電池セル16の燃料極に分配される。
さらに、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16の下端部は、燃料ガス分散室76内でバスバー80に電気的に接続され、挿通管72aを通して電力が外部に引き出される。バスバー80は、各燃料電池セル16により生成された電力を、燃料電池セル収容容器8の外部へ取り出すための細長い金属導体であり、碍子78を介して分散室底部材72の挿通管72aに固定されている。バスバー80は、燃料ガス分散室76の内部において、各燃料電池セル16に取り付けられた集電体82と電気的に接続されている。また、バスバー80は、燃料電池セル収容容器8の外部において、インバータ54(図1)に接続される。なお、集電体82は、排気集約室18内に突出している各燃料電池セル16の上端部にも取り付けられている(図4)。これら上端部及び下端部の集電体82により、複数の燃料電池セル16が電気的に並列に接続されると共に、並列に接続された複数組の燃料電池セル16が電気的に直列に接続され、この直列接続の両端が夫々バスバー80に接続される。
次に、図4及び図5を参照して、排気集約室の構成を説明する。
図4は排気集約室の部分を拡大して示す断面図であり、図5は、図2におけるV−V断面である。
図4に示すように、排気集約室18は、各燃料電池セル16の上端部に取り付けられたドーナツ型断面のチャンバーであり、この排気集約室18の中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74が貫通して延びている。
図5に示すように、内側円筒部材64の内壁面には、排気集約室18支持用の3つのステー64cが等間隔に取り付けられている。図4に示すように、各ステー64cは金属製の薄板を折り曲げた小片であり、排気集約室18を各ステー64cの上に載置することにより、排気集約室18は内側円筒部材64と同心円上に位置決めされる。これにより、排気集約室18の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間、及び排気集約室18の内周面と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面との間の隙間は、全周で均一になる(図5)。
排気集約室18は、集約室上部材18a及び集約室下部材18bが気密的に接合されることにより構成されている。
集約室下部材18bは、上方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための円筒部が設けられている。
集約室上部材18aは、下方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための開口部が設けられている。集約室上部材18aは、集約室下部材18bの上方に開口したドーナツ型断面の領域に嵌め込まれる形状に構成されている。
集約室下部材18bの周囲の壁の内周面と集約室上部材18aの外周面の間の隙間にはセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。
また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、大径シールリング19aが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。大径シールリング19aは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
一方、集約室下部材18b中央の円筒部の外周面と、集約室上部材18a中央の開口部の縁の間にもセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、小径シールリング19bが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。小径シールリング19bは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
集約室下部材18bの底面には複数の円形の挿通穴18cが設けられている。各挿通穴18cには燃料電池セル16の上端部が夫々挿通され、各燃料電池セル16は各挿通穴18cを貫通して延びている。各燃料電池セル16が貫通している集約室下部材18bの底面上にはセラミック接着剤が流し込まれ、これが硬化されることにより、各燃料電池セル16の外周と各挿通穴18cの間の隙間が気密的に充填されると共に、各燃料電池セル16が集約室下部材18bに固定されている。
さらに、集約室下部材18bの底面上に流し込まれたセラミック接着剤の上には、円形薄板状のカバー部材19cが配置され、セラミック接着剤の硬化により集約室下部材18bに固定されている。カバー部材19cには、集約室下部材18bの各挿通穴18cと同様の位置に複数の挿通穴が設けられており、各燃料電池セル16の上端部はセラミック接着剤の層及びカバー部材19cを貫通して延びている。
一方、排気集約室18の天井面には、集約された燃料ガスを噴出させるための複数の噴出口18dが設けられている(図5)。各噴出口18dは、集約室上部材18aに、円周上に配置されている。発電に使用されずに残った燃料は、各燃料電池セル16の上端から排気集約室18内に流出し、排気集約室18内で集約された燃料は各噴出口18dから流出し、そこで燃焼される。
次に、図2を参照して、燃料供給源30から供給される原燃料ガスを改質するための構成について説明する。
まず、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間の空間で構成されている燃料ガス供給流路20の下部には、水蒸気改質用の水を蒸発させるための蒸発部86が設けられている。蒸発部86は、外側円筒部材66の下部内周に取り付けられたリング状の傾斜板86a及び水供給パイプ88から構成されている。また、蒸発部86は、発電用の空気を導入するための酸化剤ガス導入パイプ56よりも下方で、排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58よりも上方に配置されている。傾斜板86aは、リング状に形成された金属の薄板であり、その外周縁が外側円筒部材66の内壁面に取り付けられる。一方、傾斜板86aの内周縁は外周縁よりも上方に位置し、傾斜板86aの内周縁と、内側円筒部材64の外壁面との間には隙間が設けられている。
水供給パイプ88は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプであり、水流量調整ユニット28から供給された水蒸気改質用の水が、水供給パイプ88を介して蒸発部86に供給される。水供給パイプ88の上端は、傾斜板86aを貫通して傾斜板86aの上面側まで延び、傾斜板86aの上面側に供給された水は、傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面の間に留まる。傾斜板86aの上面側に供給された水は、そこで蒸発され水蒸気が生成される。
また、蒸発部86の下方には、原燃料ガスを燃料ガス供給流路20内に導入するための燃料ガス導入部が設けられている。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、燃料ガス供給パイプ90を介して燃料ガス供給流路20に導入される。燃料ガス供給パイプ90は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプである。
また、燃料ガス供給パイプ90の上端は、傾斜板86aよりも下方に位置している。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、傾斜板86aの下側に導入され、傾斜板86aの傾斜により流路を絞られながら傾斜板86aの上側へ上昇する。傾斜板86aの上側へ上昇した原燃料ガスは、蒸発部86で生成された水蒸気と共に上昇する。
燃料ガス供給流路20内の蒸発部86上方には、燃料ガス供給流路隔壁92が設けられている。燃料ガス供給流路隔壁92は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の円環状の空間を上下に隔てるように設けられた円環状の金属板である。この燃料ガス供給流路隔壁92の円周上には等間隔に複数の噴射口92aが設けられており、これらの噴射口92aにより燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間と下側の空間が連通されている。燃料ガス供給パイプ90から導入された原燃料ガス及び蒸発部86で生成された水蒸気は、一旦、燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留した後、各噴射口92aを通って燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間に噴射される。各噴射口92aから燃料ガス供給流路隔壁92の上側の広い空間に噴射されると、原燃料ガス及び水蒸気は急激に減速され、ここで十分に混合される。
さらに、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の、円環状の空間の上部には、改質部94が設けられている。改質部94は、各燃料電池セル16の上部と、その上方の排気集約室18の周囲を取り囲むように配置されている。改質部94は、内側円筒部材64の外壁面に取り付けられた触媒保持板(図示せず)と、これにより保持された改質触媒96によって構成されている。
このように、改質部94内に充填された改質触媒96に、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間で混合された原燃料ガス及び水蒸気が接触すると、改質部94内においては、式(1)に示す水蒸気改質反応SRが進行する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (1)
改質部94において改質された燃料ガスは、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の空間を下方に流れ、燃料ガス分散室76に流入して、各燃料電池セル16に供給される。水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるが、反応に要する熱は、排気集約室18から流出するオフガスの燃焼熱、及び各燃料電池セル16において発生する発熱により供給される。
次に、図6を参照して、燃料電池セル16について説明する。
本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池セル16として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル16上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル16が構成されている。各燃料電池セル16は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル16のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
図6(a)は、下端がカソードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図であり、図6(b)は、下端がアノードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図である。
図6に示すように、燃料電池セル16は、細長い円筒状の多孔質支持体97と、この多孔質支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。多孔質支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料ガス分散室76を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル16の多孔質支持体97の内部を流れ、酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル16上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル16上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
図6(a)に示すように、燃料電池セル16のカソード側端部には、多孔質支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
図6(b)に示すように、燃料電池セル16のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。
これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。
電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
図6(a)(b)においては、各燃料電池セル16の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル16の上端部における構成も同様である。なお、上端部においては、各燃料電池セル16は、排気集約室18の集約室下部材18bに固定されているが、固定部分の構成は下端部における第1固定部材63に対する固定と同様である。
次に、多孔質支持体97及び各層の構成を説明する。
多孔質支持体97は、本実施形態においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。
燃料極層98は、本実施形態においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y2O3−90mol%ZrO2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
反応抑制層99は、本実施形態においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa2O3−60mol%のCeO2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。
固体電解質層100は、本実施形態においては、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
空気極層101は、本実施形態においては、La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.2O3の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。
インターコネクタ層102は、本実施形態においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル16上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。
電極層103a、103bは、本実施形態においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。
リード膜層104a、104bは、本実施形態においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
なお、リード膜層104a、104bは、固体電解質層100と同じ緻密な層であり、セラミック接着剤と接着されることにより、気密性を確保することができる。
また、本実施形態では、電極層103a、103bが燃料極層98と同一の多孔質材料で形成されているが、これに限らず、電極層103a、103bが、反応抑制層99や空気極層101と同一の多孔質材料を含む他の電気導電性の多孔質材料で形成されていてもよい。例えば、燃料電池セル16の端部に最も近い位置に形成された単セル16aの空気極層101を更に端部方向に延長し、その延長した部分を電極層としてもよい。
次に、図1及び図2を参照して、固体酸化物型燃料電池装置1の作用を説明する。
まず、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程において、燃料ブロア38が起動され、燃料の供給が開始されると共に、シースヒーター61への通電が開始される。シースヒーター61への通電が開始されることにより、その上方に配置された燃焼触媒60が加熱されると共に、内側に配置された蒸発部86も加熱される。燃料ブロア38により供給された燃料は、脱硫器36、熱交換器34、電磁弁35を介して、燃料ガス供給パイプ90から燃料電池セル収容容器8の内部に流入する。流入した燃料は、燃料ガス供給流路20内を上端まで上昇した後、改質部94内を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、改質部94内の改質触媒96の温度が十分に上昇していないため、燃料の改質は行われない。
燃料ガス分散室76に流入した燃料ガスは、燃料ガス分散室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇しておらず、また、インバータ54への電力の取り出しも行われていないため、発電反応は発生しない。
排気集約室18に流入した燃料は、排気集約室18の噴出口18dから噴出される。噴出口18dから噴出された燃料は、点火ヒーター62により点火され、そこで燃焼される。この燃焼により、排気集約室18の周囲に配置された改質部94が加熱される。また、燃焼により生成された排気ガスは、内側円筒部材64の上部に設けられた小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。高温の排気ガスは、排ガス排出流路21内を下降し、その内側に設けられた燃料ガス供給流路20を流れる燃料、外側に設けられた酸化剤ガス供給流路22内を流れる発電用の空気を加熱する。さらに、排気ガスは、排ガス排出流路21内に配置された燃焼触媒60を通ることにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58を通って燃料電池セル収容容器8から排出される。
排気ガス及びシースヒーター61により蒸発部86が加熱されると、蒸発部86に供給された水蒸気改質用の水が蒸発され、水蒸気が生成される。水蒸気改質用の水は、水流量調整ユニット28により、水供給パイプ88を介して燃料電池セル収容容器8内の蒸発部86に供給される。蒸発部86で生成された水蒸気と、燃料ガス供給パイプ90を介して供給された燃料は、一旦、燃料ガス供給流路20内の燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留し、燃料ガス供給流路隔壁92に設けられた複数の噴射口92aから噴射される。噴射口92aから勢いよく噴射された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間内で減速されることにより、十分に混合される。
混合された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路20内を上昇し、改質部94に流入する。改質部94の改質触媒96が改質可能な温度まで上昇している状態においては、燃料及び水蒸気の混合気が改質部94を通過する際、水蒸気改質反応が発生し、混合気が水素を多く含む燃料に改質される。改質された燃料は、小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。小穴64bは燃料ガス分散室76の周囲に多数設けられ、燃料ガス分散室76として十分な容積が確保されているため、改質された燃料は、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16に均等に流入する。
一方、空気流量調整ユニット45により供給された酸化剤ガスである空気は、酸化剤ガス導入パイプ56を介して酸化剤ガス供給流路22に流入する。酸化剤ガス供給流路22に流入した空気は、内側を流れる排気ガスにより加熱されながら酸化剤ガス供給流路22内を上昇する。酸化剤ガス供給流路22内を上昇した空気は、燃料電池セル収容容器8内の上端部で中央に集められ、酸化剤ガス供給流路22に連通された酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入する。酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入した空気は下端から発電室10内に噴射され、噴射された空気は第1固定部材63の上面に当たって発電室10内全体に広がる。発電室10内に流入した空気は、排気集約室18の外周壁と内側円筒部材64の内周壁の間の隙間、及び排気集約室18の内周壁と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面の間の隙間を通って上昇する。
この際、各燃料電池セル16の外側(空気極側)を通って流れる空気の一部は発電反応に利用される。また、排気集約室18の上方に上昇した空気の一部は、排気集約室18の噴出口18dから噴出する燃料の燃焼に利用される。燃焼により生成された排気ガス、及び発電、燃焼に利用されずに残った空気は、小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。排ガス排出流路21に流入した排気ガス及び空気は、燃焼触媒60により一酸化炭素が除去された後、排出される。
このように、各燃料電池セル16が発電可能な温度である650℃程度まで上昇し、各燃料電池セル16の内側(燃料極側)に改質された燃料が流れ、外側(空気極側)に空気が流れると、化学反応により起電力が発生する。この状態において、燃料電池セル収容容器8から引き出されているバスバー80にインバータ54が接続されると、各燃料電池セル16から電力が取り出され、発電が行われる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、発電用の空気は、発電室10の中央に配置された酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射され、発電室10内を排気集約室18と内側円筒部材64の間の均等な隙間及び排気集約室18と酸化剤ガス噴射用パイプ74の間の均等な隙間を通って上昇する。このため、発電室10内の空気の流れは、ほぼ完全に軸対称の流れとなり、各燃料電池セル16の周囲には、ムラなく空気が流れる。これにより、各燃料電池セル16間の温度差が抑制され、各燃料電池セル16で均等な起電力を発生することができる。
次に、図7−図9を参照して、集電体の構成について説明する。
図7は、集電体82を上から見た図であり、図7(a),図7(b)はそれぞれ燃料電池セル16の上端部,下端部に取り付けられる集電体82A,82Bを示している。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ燃料電池セルを取り付けるための取付孔84,84Aの拡大図である。図9は、一部の集電体の拡大図である。
集電体82は、複数の集電体(集電板)83a−83gから構成されており、各集電体は、弾性及び導電性を有する薄い金属板材を機械加工することにより形成されている。本実施形態では、ニッケルの板材を用いて形成されている。これら集電体には、燃料電池セル16を挿入して取り付けるための取付孔84,84Aが設けられている。
図7(a)に示されているように、集電体82Aは、中心O(円筒形状のセル配列収容空間である発電室10の軸中心と略一致)に対して中心角約120度で周方向に広がる3つの略扇形の集電体83a,83b,83cによって構成され、略円形の外形を有している。各集電体83a−83cは、中心Oを中心とする円弧により、中心側を切り欠いた切頂扇形の形状を有する。集電体82Aは、これら集電体83a−83cが周方向に所定の隙間を空けて隣接して並列に配置されることにより、中央部分に酸化剤ガス噴射用パイプ74を挿入するための略円形の開口部82aが形成される。
図7(b)に示されているように、集電体82Bは、中心Oに対して中心角約120度で周方向に広がる2つの略扇形の集電体83e,83fと中心角約60度の2つの略扇形の集電体83d,83gによって構成され、略円形の外形を有している。各集電体83d−83gは、中心Oを中心とする円弧により、中心側を切り欠いた切頂扇形の形状を有する。集電体82Bは、これら集電体83d−83gが周方向に所定の間隔を空けて隣接して並列に配置されることにより、中央部分に略円形の開口部82bが形成される。また、集電体83d,83gには、外部への電力取出し用導体であるバスバー80を接続するための連結部83h,83iが設けられている。
各集電体83a−83gは、外周縁部及び内周縁部(中心側の円弧状の縁部)がそれぞれ発電室10の内径及び酸化剤ガス噴射用パイプ74の外径に略一致する円弧形状を有する。一方、各集電体83a−83gは、中心O側から径方向外側に延びる対向する2つの辺が直線状ではなく、これらの辺の近傍に形成された取付孔84Aを縫うようにジグザグ状に形成されている。即ち、これらの辺は、取付孔84Aのある部分が周方向外側に突出し、径方向に隣接する取付孔84Aの間の部分が周方向内側に凹むように延びている。
また、図7から分かるように、複数の燃料電池セル16からなるセル配列は、軸方向から見て、隣接する燃料電池セル16が正三角形の頂点に位置するような正三角形配列であり、これに合わせて集電体82A,82Bの取付孔84,84Aも正三角形配列となっている。よって、隣接する2つの集電体の隣接する縁部(径方向に延びる辺)の近傍に形成された取付孔84,84Aの間の間隔も他の部分における間隔と同じである。
本実施形態では、各集電体83a−83gが略扇形の形状を有しているため、中心O側ほど周方向の長さが小さく、外周側ほど周方向長さが大きくなる。このため、各集電体83a−83gにおいて、単位面積当たりの取付孔84,84Aの配置個数は同じであっても、径方向の中間部分に配置される取付孔84,84Aの絶対数と比較して、中心O側の絶対数は少なくなり、外周側の絶対数は多くなる。さらに、本実施形態では、取付孔84,84Aは、外周側の縁部に沿う単位周方向長さ当たりの個数が、他の部位と比較して少なくなるように配置されている。
本実施形態では、複数(この例では102本)の燃料電池セル16が、17本毎の6つのグループ(燃料電池セル群)に分割されている。そして、図2に示すように燃料電池セル16の上端部及び下端部に集電体82が接続されると、集電体82を介して、各グループの燃料電池セル16が並列接続され、さらに6つのグループが直列接続される。即ち、例えば、一方のバスバー80に接続された集電体83dがアノード(陽極)であるとすると、集電体83dに接続された第1グループの燃料電池セル16を介して、集電体83aの右側半分がカソード(陰極),左側半分がアノードとなり、さらに第2グループの燃料電池セル16を介して、集電体83eの下側半分がカソードとなる。同様に、集電体83eの上側半分がアノードとなり、第3グループの燃料電池セル16を介して、集電体83bの下側半分がカソード,上側半分がアノードとなり、第4グループの燃料電池セル16を介して、集電体83fの左側半分がカソード,右側半分がアノードとなり、第5グループの燃料電池セル16を介して、集電体83cの上側半分がカソード,下側半分がアノードとなり、最後に第6グループの燃料電池セル16を介して、他方のバスバー80に接続された集電体83gがカソードとなる。
次に、図8(a)に示すように、各集電体の取付孔84は、機械加工による放射状の切込み及び中心部の円形開口により形成されている。1つの取付孔84は、8本の切込み線及び1つの円形開口により形成されている。切込み線の両端をつなぐ仮想線84bは、燃料電池セル16の外形寸法(仮想線84c)よりも大きな円形を形成する。この切込み線及び円形開口により、この仮想線84b(即ち、取付孔84の内周縁)から円の中心方向(径方向内側)へ延出すると共に、先端が切り落とされたような16個の弾性片84aが形成されている。
各弾性片84aは、先端側に向かうにつれて先細りとなる略扇形の形状であり、基端部(仮想線84b)に対して先端部が弾性的に撓むことが可能である。従って、取付孔84に燃料電池セル16が挿入されるとき、弾性片84aの先端部は燃料電池セル16の外周面と当接して外周面に沿って撓み、弾性片84aは燃料電池セル16に弾性的に係合する。そして、集電体に対して燃料電池セル16が所定位置まで挿入されると、集電体は、弾性片84aの弾性力によって燃料電池セル16に保持される。
なお、燃料電池セル16はセラミック材料で形成されているため、高い寸法精度で形成することが難しく、個々の燃料電池セル16の間で、長さ、径、曲がり等においてばらつきがある。このため、各取付孔84において、仮想線84bと仮想線84cとの間を調整代として燃料電池セル16の位置ずれを吸収することができ、各弾性片84aの撓み具合を異ならせることにより、理想的な仮想線84cの位置からずれた位置に燃料電池セル16を配置することができる。
また、図8(b)に示すように、互いに隣接する集電体の隣接する縁部の近傍に形成された取付孔84Aは、約180度の周方向範囲に8個の弾性片84aが形成され、残りの約180度の周方向範囲は弾性片84aが形成されていない略半円形状の開口部84dとなっている。この開口部84dは、仮想線84bと略一致する円弧部84eと、円弧部84eの両端を繋ぐ直線部84fを有している。直線部84fは、8つの弾性片84aのうち周方向の両端に位置する2つの弾性片84aの径方向に延びる外側の辺によって形成されており、開口部84dと8つの弾性片84aとの境界をなしている。また、開口部84dは、取付孔84Aの周方向のうち、径方向に延びる縁部(集電体の周方向の縁部)側に位置している(図7参照)。このような取付孔84Aは、開口部84dを有しない取付孔84と比べて燃料電池セル16を開口部84d内で移動させ易いため、より位置調整がやり易くなっている。
また、図7(a)及び図7(b)に図示されているように、各集電体の径方向に延びる各縁部において、径方向に沿って配置された取付孔84Aは、それぞれの開口部84dの直線部84fの仮想延長線84gが一直線上に揃わないように、開口部84dの向きが設定されている。
また、各集電体は、隣接する取付孔84及び84Aの中心を繋ぐ直線のうち中心Oを通る直線が2以下となるように、取付孔84及び84Aの配置が中心Oから見て周方向に非対称に形成されている。例えば、図7(a)には、集電体83aに対して仮想直線85a−85dが例示されている。これら仮想直線のうち仮想直線85a,85cは中心Oを通るが、他の仮想直線85b,85d並びに集電体83aにおいて引くことが可能な任意の仮想直線は、中心Oを通らない。本実施形態では、集電体に設けられた取付孔84,84Aは、等間隔で規則的に配置されているが、周方向に非対称であり、中心Oに対して放射状に配置されていない。
また、図9に示すように、集電体83d,83gは、それぞれ、バスバー80が連結される連結部83h,83iを中心側の縁部に備えている。具体的には、連結部83h,83iは、集電体83d,83gの中心側の円弧部83j,83kにおいて、周方向の中心位置から周方向(図9では反時計方向)にオフセットされた端部の位置に、中心O側へ突出するように形成されている。
また、図9に示すように、連結部83h,83iの最も近傍に位置する取付孔84Aは、連結部83h,83iに向くような角度で開口部84dが形成されている。即ち、取付孔84Aの中心と近傍の連結部との間に、開口部84dが設けられている。
次に、図2−図4,図10及び図11を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1の製造工程の概略を説明する。
まず、内側円筒部材64、中間円筒部材65、外側円筒部材66、及び第1固定部材63を溶接により一体に組み立てる(図3参照)。また、内側円筒部材64と中間円筒部材65の間に設けられる改質部94には、改質触媒96を充填する。さらに、水供給パイプ88及び燃料ガス供給パイプ90も溶接により取り付ける。
次に、燃料電池セル16の一方の端部を第1固定部材63の挿通穴63aに挿通し、燃料電池セル16を第1固定部材63に対して治具等により位置決めする。次いで、位置決めされた燃料電池セル16の他方の端部側に、第2固定部材である集約室下部材18bを配置する。
このように、各燃料電池セル16が位置決めされた状態で、集約室下部材18bの上にセラミック接着剤を注入し、カバー部材19cを配置した後、乾燥炉内で加熱することによりセラミック接着剤を硬化させる。これにより、セラミック接着剤層118(図2参照)が形成される。セラミック接着剤層118により、燃料電池セル16と集約室下部材18bとのセル接合部が気密的に接合される。
なお、各燃料電池セル16は、そのリード膜層104a、104bの部分でセラミック接着剤により接着される(図6参照)。
セラミック接着剤の加熱工程においては、乾燥炉内の温度は、常温から約120分で約60℃まで上昇され、次いで、約20分で約80℃まで上昇され、その後約60分間約80℃に維持される。約80℃の温度を維持した後、乾燥炉内の温度は、約30分で常温に戻される。
この加熱工程により、セラミック接着剤は、以後の製造工程を実施可能な状態まで硬化される。また、後の工程において、セラミック接着剤は、第2の加熱工程を行うことにより、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで硬化される。
次に、組立体を上下反転し、各燃料電池セル16の先端部が突出している第1固定部材63の上にセラミック接着剤を注入し、カバー部材67を配置した後、乾燥炉内で上述の加熱工程を実施することにより、セラミック接着剤を硬化させる。これにより、セラミック接着剤層122(図2参照)が形成される。セラミック接着剤層122により、燃料電池セル16と第1固定部材63とのセル接合部が気密的に接合される。
次に、図10に示すように、第1固定部材63から突出している各燃料電池セル16の先端部(上下反転させていないときの下端部)に集電体82が取り付けられ、この集電体82がバスバー80に接続される。集電体82は、複数の燃料電池セル16からなるセル配列に対して、各取付孔84,84Aが対応する燃料電池セル16の軸方向の上方に位置するように位置決めされる。そして、集電体82は、上方からセル配列に対して所定の押圧力で押し付けられる。これにより、各取付孔84,84Aに燃料電池セル16の端部が挿入され、取付孔84,84Aの弾性片84aによる弾性力によって、集電体82はセル配列に取り付けられる。
次に、組立体に分散室底部材72を取り付ける。さらに、分散室底部材72の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の円環状の隙間に、セラミック接着剤を充填する。また、分散室底部材72の中央に設けられた、挿通管72aの中に、碍子78を配置し、セラミック接着剤を充填する。集電体82から延びる各バスバー80は、この碍子78及びセラミック接着剤を貫通する。この状態で、組立体に対して上述の加熱工程を実行して、セラミック接着剤を硬化させる。
次に、図11に示すように、組立体の上下を反転し、集約室下部材18bから突出するように固定された各燃料電池セル16の先端部に集電体82を取り付ける。さらに、集約室下部材18b上に集約室上部材18aを配置し、集約室上部材18aと集約室下部材18bの隙間に、セラミック接着剤を注入する。また、セラミック接着剤の上に大径シールリング19a,小径シールリング19bを配置する。この状態で、組立体に対して上述の加熱工程を実行して、セラミック接着剤層120a,120b(図4参照)を形成する。
次に、組立体に対して、内側円筒容器68及び外側円筒容器70を溶接又はセラミック接着剤により取り付ける。その後、外側円筒部材66と内側円筒容器68との隙間にセラミック接着剤を充填し、上述の加熱工程により硬化させる。この加熱工程の後に、さらに高い温度(例えば、約650℃)まで昇温する第2の加熱工程が実行され、各セラミック接着剤層を、起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで硬化させる。
以上の工程により、図2に示す組立体が製造され、最後に還元工程が行われる。この還元工程では、高温(例えば、約650℃)の炉内で高温の還元ガス(燃料ガス、即ち、水素ガス)を燃料ガス供給パイプ90から供給し、還元ガスが各燃料電池セル16の燃料極側を通過するようにする。これにより、高温の還元ガスの雰囲気内で酸化された燃料極を還元して、例えば、燃料極に含まれていた酸化ニッケルをニッケルに還元することができる。
次に、図12及び図13を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1の製造工程のうち、集電体82を燃料電池セル16のセル配列に固定する方法について詳細に説明する。
図12は集電体の固定方法の説明図であり、図13は集電体が燃料電池セルに固定された状態を示す説明図である。
各燃料電池セル16は、円筒形状の多孔質支持体97を有し、その外周面に、燃料極層98,反応抑制層99,固体電解質層100,空気極層101,電極層103a及び103b,リード膜層104a及び104bが形成されている(図6参照)。
集電体をセル配列に取り付ける際には、先ず、複数の燃料電池セル16を、図10のように、セル配列にモジュール化する。
次に、図12(a)に示すように、集電体82の各集電体83a−83gをセル配列に対して位置合わせし(図12(a)の仮想線参照)、各集電体をセル配列に対して押し込む。これにより、各燃料電池セル16が、対応する取付孔84に挿入される。所定位置まで各集電体が押し込まれると、取付孔84の弾性片84aが燃料電池セル16の電極層103a,103bに弾性的に係合する(図12(a)の実線参照)。
次に、図12(b)に示すように、各弾性片84aと電極層103a,103bとの間に導電性を有する接着剤153を塗布し、接着剤153を硬化させ、弾性片84aと電極層とを接着する。
図13(a)に示すように、取付孔84では、燃料電池セル16の電極層103a,103bの全周にわたって16個の弾性片84aが弾性的に係合し、導電性接着剤153によって物理的に固定されると共に電気的に接続される。また、仮に一部の弾性片84aが電極層と当接しない場合(片当たりの場合)においても、導電性接着剤153を介して、すべての弾性片84aを電極層と電気的に接続させることができる。
なお、本実施形態では、取付孔84Aにおいて導電性接着剤153を用いることが望ましいが、片当たりが生じない場合には、取付孔84においては必ずしも導電性接着剤153を用いなくてもよい。
一方、図13(b)に示すように、取付孔84Aでは、燃料電池セル16の電極層103a,103bの約半周において8個の弾性片84aが弾性的に係合すると共に、電極層103a,103bの全周にわたって導電性接着剤153が塗布される。取付孔84Aでは、電極層上で弾性片84aが無い部分においても、帯状の導電性接着剤153を介して、弾性片84a及び集電体82の本体部分と電気的に接続されている。これにより、取付孔84に挿入された燃料電池セル16と同様に、取付孔84Aに挿入された燃料電池セル16においても電極層103a,103bの全周が発電反応の際に用いられるため、燃料電池セル16に対して局所的に大きな負荷が掛って劣化が進行することが防止される。
以下に、本実施形態の燃料電池装置の作用について説明する。
燃料電池セルは集電体のような金属機械部品ほど製造寸法精度が高くないため、セル配列において、各燃料電池セルは理想的な位置から僅かずつずれて配置する。このため、集電体を理想的な位置に位置合わせして、セル配列に組付けようとしても、大きな組付力が必要になる。そして、このような大きな組付力でセル配列に集電体を無理に組み付けようとすると、取付孔の弾性片による電極剥がれや、集電体の変形による集電体同士の接触(短絡)等が生じるおそれがある。
また、集電体は、セル配列に対して理想的な位置に配置できればよいが、燃料電池セルの位置ずれの程度に応じて、許容範囲内で平行移動及び/又は回転移動により僅かにずれた位置に配置される。各燃料電池セルの位置ずれを吸収しつつ集電体を組み付けていく際に、位置ずれが集電体の特定の部分(特に中央部分)に片寄ると、位置ずれを吸収し切れなくなるか、大きな組付力により無理に集電体を押し込まなければならないか、集電体が許容範囲を超えてずれてしまう場合が生じる。
本実施形態では、このような問題に対処するため、多数の燃料電池セル16を軸方向から見て略円形領域に分散して配置し、この略円形領域に適合させて、複数の略扇形の集電体83a−83c及び集電体83d−83gの並列配置によって略円形の集電体82A,82Bを形成するように構成している(図7参照)。略扇形の集電体83a−83gは、中心O側が狭く、外周側が広いため、中心O側ほど取付孔84,84Aの数が少なく、外周側ほど数が多くなる。また、外周側の周方向の両端部においても、端部に近づくにつれ取付孔84,84Aの数が少なくなる。
したがって、各燃料電池セル16の位置ずれを各取付孔84,84Aにおいて少しずつ吸収させながら集電体83a−83gをセル配列に対して取り付ける際に、取付孔の数が少ない領域ではその領域全体で弾性片84aの変形が小さな力で可能になるので、集電体83a−83gに大きな変形を与えることなく、特に中心O側の領域,径方向外側の外周縁部に沿った領域,及び外周側両端部の領域において位置ずれを吸収し易くなる。これにより、本実施形態では、小さな組付力で集電体83a−83gをセル配列に対して取り付けることが可能であり、電極剥がれが防止され、また、集電体自体の変形を抑制して隣接する集電体同士の接触による短絡を防止することが可能となる。
また、本実施形態において、集電体83a−83gは、略扇形の形状の中心O側の縁部近傍、及び径方向外側の外周側の縁部近傍に形成された取付孔84,84Aは、径方向の中間部分に形成された取付孔84,84Aと比較して、周方向における個数が少ないか、単位周方向長さ当たりの個数が少なく形成されている。集電体83a−83gの組み付け時において、集電体83a−83gの周縁部分で取付孔84,84Aの数又は密度が小さい領域では、比較的小さな組付力で燃料電池セル16の位置ずれを吸収し易くなる。このため、集電体83a−83gが全体として過度な変形が抑制され、隣接する集電体同士の接触による短絡を防止することができる。
また、本実施形態においては、発電用酸化剤ガスが発電室10の中心部分に酸化剤ガス噴射用パイプ74を通して軸方向に沿って導入されるように構成されている(図2参照)。導入された酸化剤ガスは、発電室10の第1固定部材63の上面に吹き付けられ、発電室10内全体に広がる。導入される酸化剤ガスは運転中の発電室10の内部温度よりも低温であるので、第1固定部材63のうち、酸化剤ガスに吹き付けられる中央部分が発電室10の内部温度よりも低温に保持される。一方、第1固定部材63の下方には、下部側の集電体82B(集電体83d−83g)が配置されている。したがって、集電体82Bは、第1固定部材63の低温の中央部分により冷却され得る。仮に、集電体82Bの中央部分が冷却され径方向に温度勾配が形成されると、集電体82Bには径方向において電気抵抗に差が生じるため、発電によって生じた電流のバスバー80への流れが温度の影響を受けてしまい、発電効率が低下するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、集電体82Bは、中央部に円形の開口部82bが設けられているため、第1固定部材63の中央部分から冷熱が伝わり難くなっており、発電効率の低下を防止することができる。
また、本実施形態において、各集電体83a−83gは、任意の隣接する取付孔84,84Aを結ぶ仮想直線(図7(a)の85a−85d等)のうち中心Oを通る仮想直線が2本以下となるように、取付孔84,84Aの配置が周方向に非対称に設定されている。即ち、各集電体83a−83gにおいて、中心Oを指向する規則性が低くなるように、隣接する複数の取付孔84,84Aの並びが設定されている。複数の取付孔84,84Aの並びが中心Oを指向すると、集電体全体の周方向への移動が拘束され易くなり、また、その並びの両端に位置する取付孔の距離(この場合、径方向の離間距離)が最短になるため、集電体83a−83gの組み付け時において、燃料電池セル16の位置ずれを吸収する際に不利となる。このため、本実施形態では、複数の取付孔84,84Aの並びが中心Oを指向しないように構成することにより、位置ずれの吸収を制限され難くして、集電体83a−83gの無理な変形やそれに伴う隣接する集電体の接触及び短絡を抑制可能としている。
また、本実施形態において、集電体83a−83gは、軸方向から見て隣接する取付孔84,84Aが正三角形の頂点に位置するように配置されている(図7参照)。このように取付孔84,84Aを正三角形配列とすることにより、位置ずれの吸収が容易となり、集電体83a−83gの変形に対しても強度を持たせることができる。
また、本実施形態において、取付孔83a−83gの弾性片84aは、導電性接着剤153によって燃料電池セル16の電極層103a,103bに固定されている(図13参照)。燃料電池セル16の位置ずれを取付孔84,84Aによって吸収する場合に、一部の弾性片84aが片当たりするおそれがあるが、導電性接着剤153によって弾性片84aを電極層に固定することにより、位置ずれを吸収させつつ、電極層と集電体との電気的接続を確保することができる。
また、本実施形態において、集電体83a−83gは、隣接する集電体に隣接する縁部(径方向に延びる縁部)が、この縁部近傍に設けられた取付孔84Aの部分が周方向に突出するようにジグザグ状に延びている(図7参照)。この構成により、集電体83a-83gの径方向に延びる縁部は、単に直線状とした場合よりも捩れに対して強くなり、強度を高めることができる。このため、位置ずれを吸収するように集電体83a−83gを組み付ける際に破断や捩れを抑制することができる。
また、本実施形態において、集電体83a−83gの径方向に延びる縁部近傍に形成された取付孔84Aは、取付孔84と比べて、8個の弾性片84aが取り除かれて開口部84dが形成されており、残された8個の弾性片84aが導電性接着剤153によって燃料電池セル16の電極層に固定されている(図7,図13参照)。このように径方向に延びる縁部の取付孔84Aに開口部84dを形成することにより、位置ずれが蓄積され易い縁部において燃料電池セル16の位置ずれを吸収し易くなり、更に、燃料電池セル16の挿入を小さな力で行うことができるようになる。これにより、集電体自体の位置ずれが小さくなり、また、全体的な組付力を小さくすることが可能となるので、集電体83a−83gの縁部における変形又は破損、及び、弾性片84aによる電極剥がれを防止することができる。
また、本実施形態では、一部の弾性片84aが取り除かれているので、隣接する集電体に対して、導電性接着剤153が弾性片84aを伝って垂れて、隣接する集電体同士を短絡させるおそれを低減することができる。
また、本実施形態において、図7に示すように、集電体83a−83gの縁部近傍に形成された取付孔84Aにおいて、開口部84dは、集電体の縁部側に形成されていることにより、縁部近傍の取付孔84Aにおいて、燃料電池セル16の位置ずれを吸収し易くなり、取付孔84Aの変形や破損の発生を低減することができる。
また、本実施形態において、集電体83a−83gの縁部近傍に形成された取付孔84Aにおいて、開口部84dは略半円形を有し、隣接する複数の取付孔84Aの開口部84dは、開口部84dの直線部84fの仮想延長線84gが直線上に整列しないように形成されている(図7参照)。各縁部において、複数の取付孔84Aの仮想延長線84gが一直線上に整列すると、整列した仮想延長線84gで集電体の縁部で折れや曲がり等の変形が発生し易くなってしまう。しかしながら、本実施形態では仮想延長線84gが一直線上に揃わないように構成することにより、縁部の強度又は剛性の低下が抑制される。このため、薄い板材によって形成された集電体83a−83gであっても、組付時における縁部の変形が抑制され、組み付けが容易となり、また、弾性片84aと燃料電池セル16の電極層との間の電気的接触不良も生じ難くすることができる。
また、本実施形態において、集電体83a−83gの縁部近傍に形成された取付孔84Aにおいて、開口部84dの直線部84fが、中心Oを向かないように形成されているので(図7参照)、薄い板材によって形成された集電体であっても、板厚を大きくすることなく、集電体83a−83gの組付時における縁部の変形が抑制され、また、運転時における熱等の影響による縁部の変形も抑制することができる。
また、本実施形態において、集電体83d,83gの連結部83h,83iは、開口部84dが形成された取付孔84Aの近傍であって、取付孔84Aの周方向において開口部84dが形成された方向に位置する(図9参照)。
薄い金属板で形成された集電体83d,83gは、製造時において金属製の軸方向に延びる棒状の部材であるバスバー80を少なくとも一時的に支持する場合があり、また、運転中において温度上昇に伴うバスバー80の長さ変化による影響を受ける場合がある。即ち、集電体83d,83gは、バスバー80から上向き及び下向きの応力を受ける場合がある。しかしながら、このような応力が掛ったときに、開口部84dが連結部83h,83iに近い位置に形成されていると、連結部83h,83iから取付孔84Aの開口部84dまでの部位が撓み易くなり、開口部84dの外側部分が上下の動きを吸収し、弾性片84a及びこれに係合する燃料電池セル16に対する影響を小さくすることができる。これにより、集電体83d,83gの全体的な位置ずれや変形が生じる程度を低減できると共に、連結部83h,83iの近傍における取付孔84Aでの燃料電池セル16と弾性片84aとの間の電気的接触不良の発生を抑制することができる。
また、本実施形態において、連結部83h,83iは、略扇形の集電体83d,83gにおいて、取付孔84,84Aが少ない中心O側の円弧部83j,83kに設けられているので、集電体83d,83gは、製造時や運転時において、バスバー80から連結部83h,83iを介して受ける応力を中心O側の縁部で逃がすことができる。これにより、強度や剛性が低い薄い板材で集電体83d,83gが形成されていても、集電体83d,83gが全体として位置ずれや変形することが抑制され、隣接する集電体同士の接触や、取付孔84,84Aにおける電気的接触不良の発生を抑制することができる。このように、本実施形態では、集電体83d,83gの形状及び連結部83h,83iの配置の工夫によって集電体83d,83gの強度・剛性を補強して、集電体83d,83gの全体としての位置ずれや変形を防止することができる。
また、本実施形態において、燃料電池セル16が中心O付近の領域には配置されず、集電体82A,82Bの中心部には取付孔84,84Aが設けられていない開口部82a,82bが形成されている(図7参照)。中心Oの周囲領域は、運転時に発電熱が生じないため、燃料電池セル16が林立する領域と比較して低温領域となる。よって、集電体82Bの開口部82b付近も低温領域となる。そして、連結部83h,83iは、低温領域に位置するため、連結部83h,83iから高温の温熱がバスバー80に伝わり難くなる。このように、本実施形態では、冷却機構又は熱伝達遮断機構を別途設けることなく、簡単な構造の工夫により、バスバー80を介して外部のインバータ54へ温熱が伝達することを抑制することができる。
また、本実施形態において、発電用酸化剤ガスが、集電体82Bの開口部82bに向くように発電室10内に導入される(図2参照)。よって、運転時に、発電室10の内部温度よりも低温である発電用酸化剤ガスによって、集電体82Bの開口部82b付近を間接的に冷却することができる。このため、別途の冷却風用ブロア等の冷却手段を設けることなく、バスバー80を効率的に冷却することが可能である。
また、本実施形態において、集電体83d,83gにおいて、連結部83h,83iは、略扇形の周方向の中心から周方向にずれた位置にオフセットして設けられているため(図9参照)、運転時において熱変形又は熱膨張したバスバー80から連結部83h,83iを介して伝わる応力は、略扇形の集電体83d,83gに周方向の中心位置に対する捩れ力として伝わる。このため、応力が集電体83d,83gを全体として位置ずれさせるようには伝わらず、取付孔84,84Aにおける電気的接触不良の発生を抑制することができる。また、製造時においてバスバー80から連結部83h,83iを介して伝わる応力も捩れ力となるので、集電体83d,83gが低い剛性の薄い板材で形成されていたとしても、バスバー80を支持することができる。
また、本実施形態において、集電体83d,83gは、中心O側の縁部が直線部ではなく、円弧部83j,83kに形成されており、この円弧部83j,83kに連結部83h,83iが設けられているので(図9参照)、バスバー80からの応力に対して、中心O側の縁部の剛性を局所的に高めることができる。
また、本実施形態において、集電体83d,83gにおいて、連結部83h,83iの近傍に形成された取付孔84Aは、複数の弾性片84aのうち連結部83h,83iの方向に位置する弾性片84aが取り除かれ、開口部84dが形成されている(図9参照)。このため、集電体83d,83gをセル配列に対して組み付ける際に、連結部83h,83i付近において、燃料電池セル16の位置ずれを取付孔84Aの開口部84dによって吸収し、連結部83h,83iを位置ずれさせることなく所定位置に配置し易くすることができる。また、取付孔84Aに開口部84dが形成されることにより、バスバー80から応力を受けたときに、取付孔84A付近を撓ませて応力を局所的に吸収し易くすることができるので、集電体83d,83gに全体として応力の影響が及ぶことを抑制することができる。
また、本実施形態において、連結部83h,83iの近傍に形成された取付孔84Aにおいて、弾性片84aが設けられていない領域と弾性片84aが設けられている領域との境界をなす開口部84dの直線部84fの仮想延長線84gが、連結部83h,83iを通らないように、開口部84dが設けられている(図7参照)。これにより、例えば、運転時にバスバー80から応力を受けたときに、取付孔84Aにおいて、開口部84d側が撓むので、弾性片84aに応力の影響が及び難くなる。これにより、応力を局所的に吸収して、集電体83d,83gの全体に応力の影響が及ぶことを抑制することができる。