以下、図面を用いて本実施形態のセルスタック装置について説明する。図1は、本実施形態のセルスタック装置を示し、(a)はセルスタック装置を概略的に示す縦断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す横断面図である。なお、以降の図において同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
なお、図1に示すセルスタック装置は、セルである燃料電池セルを複数個配列してなる燃料電池セルスタック装置であり、以下の説明では、セルとして燃料電池セルを例として説明する。
図1に示すセルスタック装置1は、柱状の複数の燃料電池セル3を備えるセルスタック2を有している。燃料電池セル3は、内部にガス流路14を有して、一対の対向する平坦面をもつ断面が扁平状で全体として柱状の導電性支持体13の一方の平坦面上に、内側電極層としての燃料極層9と、固体電解質層10と、外側電極層としての空気極層11とを順次積層してなるとともに、他方の平坦面のうち空気極層11が形成されていない部位にインターコネクタ12が積層されている。そして、隣接する燃料電池セル3間に導電部材4を介して配置することで、燃料電池セル3同士が電気的に直列に接続される。なお、インターコネクタ12の外面および空気極層11の外面には、導電性の接合材15が設けられており、導電部材4を、接合材15を介して空気極層11およびインターコネクタ12に接続させることより、両者の接触がオーム接触となって電位降下を少なくし、導電性能の低下を有効に抑制することができる。
そして、セルスタック2を構成する各燃料電池セル3の下端が、燃料電池セル3に反応ガスを供給するためのマニホールド7にガラス等のシール材16により固定されている。なお、シール材16については後述する。また、図1に示すセルスタック装置1においては、ガス流路14にマニホールド7より反応ガスとして水素含有ガス(燃料ガス)を供給する場合の例を示しており、マニホールド7の側面に、燃料ガスをマニホールド7内に供給するための燃料ガス供給管8が接続されている。
また、燃料電池セル3の配列方向(図1に示すX方向)の両端から導電部材4を介してセルスタック2を挟持しており、マニホールド7に下端が固定されている弾性変形可能な端部導電部材5を具備している。ここで、図1に示す端部導電部材5においては、燃料電池セル3の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状の、セルスタック2(燃料電池セル3)の発電により生じる電流を外部へ引出すための電流引出し部6が設けられている。
ちなみに、上記セルスタック装置1においては、ガス流路14より排出される燃料ガス
(余剰の燃料ガス)を燃料電池セル3の上端部側で燃焼させる構成とすることにより燃料電池セル3の温度を上昇させることができる。それにより、セルスタック装置1の起動を早めることができる。
マニホールド7は、ガスケース7bとガスケース7b上に配置され、開口部を備える枠体7aとを有している。燃料電池セル3の下端部は枠体7aで囲まれており、枠体7aの内側に充填されたシール材16で燃料電池セル3の下端部が固定されている。ガスケース7bは、燃料電池セル3のガス流路14に燃料ガスを供給する開口部を上面に有している。枠体7a及びガスケース7bの開口部は、燃料電池セル3及びシール材16により塞がれている。これにより、燃料電池セル3のガス流路14以外の部分が気密に封止されている。
また、シール材16としては、絶縁性を有し、800〜1000℃の耐熱性を有する材料であることが好ましく、例えばガラス(特には非晶質なガラスや、結晶質を含むガラス)を用いることができる。具体的にはSiO2−MgO−B2O3−Al2O3−CaO系や、SiO2−MgO−B2O5−ZnO系を用いることができる。
なお、枠体7aに代えてそれぞれの燃料電池セル3の下端に対応した挿入口を有する蓋状部材(図示せず)をガスケース7bに設けたものであってもよい。当該場合には、燃料電池セル3はシール材16によって挿入口に固定されている。
以下に、図1において示す燃料電池セル3を構成する各部材について説明する。
燃料極層9は、一般的に公知のものを使用することができ、例えば、多孔質の導電性セラミックス、例えば希土類元素酸化物が固溶しているZrO2(安定化ジルコニアと称し、部分安定化も含むものとする。)とNiおよび/またはNiOとを含むものを用いることができる。
固体電解質層10は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有しており、例えば、3〜15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2から形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料を用いてもよい。
空気極層11は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスを用いることができる。空気極層11はガス透過性を有しており、例えば開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
インターコネクタ12は、導電性セラミックスを用いることができる。インターコネクタ12は、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、それゆえランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ12は導電性支持体13に形成された複数のガス流路14を流通する燃料ガス、および導電性支持体13の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質であり、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
導電性支持体13としては、燃料ガスを燃料極層9まで透過するためにガス透過性であり、インターコネクタ12を介して集電するために導電性である。したがって、導電性支持体13としては、例えば導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。燃料電池セル3を作製するにあたり、燃料極層9または固体電解質層10との同時焼成によ
り導電性支持体13を作製する場合においては、鉄属金属成分と特定希土類酸化物(Y2O3、Yb2O3等)とから導電性支持体13を形成することが好ましい。また、導電性支持体13は、ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
なお、図示はしていないが、中間層を備えることもできる。これにより、固体電解質層10と空気極層11との接合を強固とするとともに、固体電解質層10と空気極層11との間に、固体電解質層10の成分と空気極層11の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制することができる。
ここで、中間層としては、Ce(セリウム)と他の希土類元素とを含有する組成とすることができ、例えば、
(1):(CeO2)1−x(REO1.5)x
式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数。
で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなることが好ましい。
また、中間層を2層とすることもできる。これにより、固体電解質層10と空気極層11とを強固に接合するとともに、固体電解質層10の成分と空気極層11の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることをさらに抑制することができる。
また、図示はしていないが、インターコネクタ12と導電性支持体13との間に密着層を設けることもできる。これにより、インターコネクタ12と導電性支持体13との間の熱膨張係数差を軽減することができる。
密着層としては、燃料極層9と類似した組成とすることができ、例えば、YSZなどの希土類元素酸化物が固溶しているZrO2(安定化ジルコニアと称する)とNiおよび/またはNiOとすることができる。なお、希土類元素酸化物が固溶したZrO2と、Niおよび/またはNiOとは、体積比で40:60〜60:40の範囲とすることが好ましい。
図2は、図1に示す破線Aの部位を拡大して示す断面図である。なお図2においては、断面図であるが、シール材16及び燃料電池セル3のハッチングは省略している。
シール材16は、燃料電池セル3の配列方向、かつ燃料電池セル3の長手方向における断面視において、マニホールド7外に漂うガスに晒される表面が凹型のメニスカス形状とされており、燃料電池セル3間の中央部付近に底部17を有し、底部17から燃料電池セル3に向けて這い上がる凹状の外形線を有している。
ここで、燃料電池セル3及びシール材16は温度変化によって体積変化が生じる。特に、燃料電池セル3とシール材16の熱膨張係数に差が大きいと、燃料電池セル3とシール材16との接合部に過大な応力が生じ、接合部付近のシール材16にクラックが生じるおそれがあった。ひいては、マニホールド7内の燃料ガスがリークし、信頼性が低下するおそれがあった。
特に、マニホールド7内は、燃料電池装置の起動及び停止の繰り返しにより大きな温度変化を伴うこととなる。すわわち、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応
力は、マニホールド側の方が特に大きくなる。
そこで、本実施形態に係るシール材16は、シール材16の熱膨張係数は前記セルの熱膨張係数より大きく、燃料電池セル3の長手方向におけるマニホールド7の外側に位置する外側領域16bと、燃料電池セル3の長手方向におけるマニホールド7の内側に位置する内側領域16aとを有し、内側領域16aと燃料電池セル3との熱膨張係数の差は、外側領域16bと燃料電池セル3との熱膨張係数の差より、小さいことを特徴とする。
それにより、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応力を低減し、クラックの発生を抑制することができる。ひいては、マニホールド7内の燃料ガスのリークを抑制し、信頼性を向上することができる。
ちなみに、外側領域16bの熱膨張係数を比較的高くすることにより、燃料電池セル3と外側領域16bとの境界に圧縮応力をかけることができるため、燃料電池セル3の熱変形や、還元雰囲気下での変形に伴う剥離によるクラックを抑制することができる。
ここで、シール材16の内側領域16aとは、燃料電池セル3間のシール材のうち、マニホールド7内のガス(本実施例においては燃料ガス)に晒される側に位置する領域(図2にける下側領域)をいい、外側領域16bとは、燃料電池セル3間のシール材のうち、マニホールド7外のガス(本実施例においては酸素含有ガス)に晒される側に位置する領域(図2における上側領域)をいう。ここで、内側領域16aと外側領域16bとは、図2におけるシール材16の下端18aから上端18bまでの長さを四等分する三つの区画線(図2における二点鎖線)のうち最も下端18a側の線(図2における線C)を基準として、区画すればよい。言い換えれば、シール材16の高さの1/4までが内側領域16aであり、内側領域16aより上側が外側領域16bである。
「シール材の熱膨張係数はセルの熱膨張係数より大きく」とは、シール材16の内側領域16a全体及び外側領域16b全体の熱膨張係数が燃料電池セル3全体の熱膨張係数より大きいことを意味する。
なお、シール材16の内側領域16aと外側領域16bの熱膨張係数とを比較評価するにあたっては、以下の方法により行うことができる。まず、領域毎に任意の100μm2の測定領域を合計三つ抽出する。次いで、抽出した測定領域の組成分析をWDS等により行い、特定領域の組成比及び結晶相を特定する。次いで、当該組成比及び結晶相を有するサンプルを作製し、熱膨張係数を測定する。最後に、抽出した三つの測定領域における熱膨張係数の平均を算出して内側領域16aと外側領域16bの熱膨張係数を比較する。
図3は、図2の破線Bの部位の拡大図であり、図3におけるシール材16の内側領域16aは第一領域T1を有している。
また、シール材16はAl2O3を含有しており、内側領域16aは、Al2O3のEPMA解析の半定量マッピングにおいて、Al2O3のモル濃度がシール材16の外側領域16bにおけるAl2O3の平均モル濃度の2倍以上である測定点が集結した第一領域T1を含み、第一領域T1の面積が100μm2以上であり、かつ第一領域T1の熱膨張係数が、燃料電池セル3の熱膨張係数以下の値であってもよい。
すなわち、内側領域16aに、熱膨張係数が燃料電池セル3より小さい第一領域T1を有することで、内側領域16aの熱膨張係数を小さくすることができ、燃料電池セル3と内側領域16aとの熱膨張差をさらに低減することができる。そのため、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応力を低減し、クラックの発生を抑制することができ
る。
また、内側領域16aの第一領域T1は面積が1000μm2以上であってもよい。この構成により、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応力を低減し、クラックの発生をさらに抑制することができる。
また、Al2O3のモル濃度がシール材16の外側領域16bにおけるAl2O3の平均モル濃度の2倍以上である測定点が集結した第一領域T1に代えて、SiO2のモル濃度がシール材の外側領域におけるSiO2の平均モル濃度の2倍以上である測定点が集結した第二領域を有していてもよい。
この構成により、内側領域16aに、熱膨張係数が燃料電池セル3より小さい第二領域(図示していない)を有することで、内側領域16aの熱膨張係数を小さくすることができ、燃料電池セル3と内側領域16aとの熱膨張差をさらに低減することができる。そのため、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応力を低減し、クラックの発生を抑制することができる。
また、内側領域16aの第二領域は面積が1000μm2以上であってもよい。この構成により、燃料電池セル3とシール材16との接合部にかかる応力を低減し、クラックの発生をさらに抑制することができる。
なお、第一領域T1及び第二領域はシール材16の内側領域16aにのみ存在するものとする。また、第一領域T1及び第二領域の両方をシール材16の内側領域16aに存在させてもよい。さらに、第一領域T1及び第二領域が重なりあう領域を有していてもよい。
なお、100μm2以上の第一領域T1及び第二領域を検出するにあたっては、例えば、日本電子製X線マイクロアナライザJXA−8530Fを用いて、EPMA解析の半定量マッピングにより検出することができる。この際、加速電圧は15.0(kV)、照射電流は1.012×10−7(A)、時間は10(ms)、測定点数は250(x軸)×200(y軸)、及び測定間隔は0.5μm(x軸)×0.5μm(y軸)とすればよい。
1000μm2以上の第一領域T1及び第二領域を検出するにあたっては、例えば、は、日本電子製X線マイクロアナライザJXA−8530Fを用いて、EPMA解析の半定量マッピングにより検出することができる。この際、加速電圧は15.0(kV)、照射電流は1.007×10−7(A)、時間は10(ms)、測定点数は310(x軸)×240(y軸)、及び測定間隔は10μm(x軸)×10μm(y軸)とすればよい。
なお「測定点」とは、X線マイクロアナライザの測定点の一点をいう。また、「第一領域T1の面積」又は「第二領域の面積」とは、一つの第一領域T1又は第二領域の面積をさすものとする。
第一領域T1及び第二領域の熱膨張係数は、例えば以下の方法にて測定することができる。まず、燃料電池セル3の配列方向かつ燃料電池セル3の長手方向におけるシール材16の内側領域16aの断面におけるAl2O3又はSiO2のEPMA解析の半定量マッピングにて第一領域T1及び第二領域のうち少なくとも何れか1つの領域を特定(以下、特定領域という。)する。次に、特定領域の組成分析をWDS等により行い、特定領域の組成比及び結晶相を特定する。最後に、当該組成比及び結晶相を有するサンプルを作製し、熱膨張係数を測定する。
内側領域16a及び外側領域16bの熱膨張係数の比較評価を行う方法として上述した方法以外に以下の方法を採用してもよい。第一領域T1又は第二領域を有する実施形態において、第一領域T1又は第二領域の熱膨張係数を上述の方法で測定し、当該熱膨張係数がシール材16の熱膨張係数より小さい場合には、内側領域16aの熱膨張係数が外側領域16bの熱膨張係数より小さいと比較評価することができる。シール材16の熱膨張係数は上述したシール材16の組成から推定してもよい。
燃料電池セル3の熱膨張係数は、燃料電池セル3のうちシール材16で固定されている側の端部を切り出して測定用サンプルを作製し、熱膨張係数を線膨張係数測定装置(TMA)を用いて測定することで算出できる。
上述のセルスタック装置は、例えば以下の製造方法にて作製することができる。まず、断熱性の板状体の上に枠体7aを載置する。次に、枠体7a内に燃料電池セル3の下端を挿入し、板状体の上に載置する。次に、第一領域T1を構成する組成を有する材料(以下、第一添加材という。)又は第二領域を構成する組成を有する材料(以下、第二添加材という。)を板状体の上に載置する。次に、Si系結晶化ガラス粉末に有機成分を添加してなるペーストを枠体7aの開口部に流し込み、850℃で5時間熱処理し、燃料電池セル3の下端部と枠体7aシール材16で固定する。次に、板状体を枠体7a又は蓋状部材から引き離す。最後に、セルスタック2が固定された枠体7aを、ガスタンク7bの上面の開口部を塞ぐようにガスタンク7aにシール材にて固定する。
さらに、燃料電池セル3の配列方向、かつ燃料電池セル3の長手方向における断面視において、内側領域16aの内側表面が、燃料電池セル3の長手方向におけるシール材16の中央に向かって凹んだメニスカス形状であってもよい。
この構成により、メニスカス形状とすることで応力を緩和することができるため、燃料電池セル3とシール材16の内側領域16aとの接合部付近にクラックが生じることをさらに抑制することができる。
なお、シール材16における内側領域16aのメニスカス形状は、凹型メニスカス形状に対応した凸部を平面上に有する板状体を使用して上述する方法で製造することで得ることができる。
図4は、本実施形態のセルスタック装置1を備えてなる燃料電池モジュール(以下、モジュールという場合がある。)の一例を示す外観斜視図であり、図5は図4の断面図である。
図4に示すモジュール20においては、収納容器21の内部に、本実施形態のセルスタック装置1が収納されている。なお、セルスタック装置1の上方には、燃料電池セル3に供給する燃料ガスを生成するための改質器22が配置されている。なお、図4においては、セルスタック装置1が2つのセルスタック2を備えている場合を示しているが、適宜その個数は変更することができ、例えばセルスタック2を1つだけ備えていてもよい。また、セルスタック装置1を、改質器22を含むものとすることもできる。
また、図4においては、燃料電池セル3として、内部を燃料ガスが長手方向に流通する燃料ガス流路を複数有する中空平板型で、燃料ガス流路を有する支持体の表面に、燃料極層、固体電解質層および酸素極層を順に積層してなる固体酸化物形の燃料電池セル3を例示している。なお、燃料電池セル3の間に酸素含有ガスが流通する。
また、図4に示す改質器22においては、原燃料供給管26を介して供給される天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成する。なお、改質器22は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる構造とすることが好ましく、水を気化させるための気化部23と、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部24とを備えている。そして、改質器22で生成された燃料ガスは、燃料ガス流通管25(図1に示す燃料ガス供給管8に相当)を介してマニホールド7に供給され、マニホールド7より燃料電池セル3の内部に設けられた燃料ガス流路に供給される。
また図4においては、収納容器21の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されるセルスタック装置1を後方に取り出した状態を示している。ここで、図4に示したモジュール20においては、セルスタック装置1を、収納容器21内にスライドして収納することが可能である。
なお、収納容器21の内部には、マニホールド7に並置されたセルスタック2の間に配置され、酸素含有ガスが燃料電池セル3の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、酸素含有ガス導入部材27が配置されている。
図5に示すように、モジュール20を構成する収納容器21は、内壁28と外壁29とを有する二重構造で、外壁29により収納容器21の外枠が形成されるとともに、内壁28によりセルスタック装置1を収納する発電室30が形成されている。さらに収納容器21においては、内壁28と外壁29との間を、燃料電池セル3に導入する酸素含有ガスが流通する酸素含有ガス流路36としている。
ここで、収納容器21内には、収納容器21の上部より、上端側に酸素含有ガスが流入するための酸素含有ガス流入口(図示せず)とフランジ部40とを備え、下端部に燃料電池セル3の下端部に酸素含有ガスを導入するための酸素含有ガス流出口31が設けられてなる酸素含有ガス導入部材27が、内壁28を貫通して挿入されて固定されている。
なお、図5においては、酸素含有ガス導入部材27が、収納容器21の内部に並置された2つのセルスタック2間に位置するように配置されているが、セルスタック2の数により、適宜配置することができる。
また発電室30内には、モジュール20内の熱が極端に放散され、燃料電池セル3(セルスタック2)の温度が低下して発電量が低減しないよう、モジュール20内の温度を高温に維持するための断熱部材32が適宜設けられている。
断熱部材32は、セルスタック2の近傍に配置することが好ましく、特には、燃料電池セル3の配列方向に沿ってセルスタック2の側面側に配置するとともに、セルスタック2の側面における燃料電池セル3の配列方向に沿った幅と同等またはそれ以上の幅を有する断熱部材32を配置することが好ましい。
また、燃料電池セル3の配列方向に沿った内壁28の内側には、排ガス用内壁34が設けられており、内壁28と排ガス用内壁34との間が、発電室30内の排ガスが上方から下方に向けて流れる排ガス流路37とされている。なお、排ガス流路37は、収納容器21の底部に設けられた排気孔35と通じている。また、排ガス用内壁34のセルスタック2側にも断熱部材32が設けられている。
それにより、モジュール20の稼動(起動処理時、発電時、停止処理時)に伴って生じる排ガスは、排ガス流路37を流れた後、排気孔35より排気される構成となっている。
また、上述の構成のモジュール20においては、燃料電池セル3における燃料ガス流路より排出される発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスとを燃料電池セル3の上端と改質器22との間で燃焼させることにより、燃料電池セル3の温度を上昇・維持させることができる。あわせて、燃料電池セル3(セルスタック2)の上方に配置された改質器22を温めることができ、改質器22で効率よく改質反応を行なうことができる。なお、通常発電時においては、上記燃焼や燃料電池セル3の発電に伴い、モジュール20内の温度は500〜800℃程度となる。
図6は、外装ケース内に図4で示したモジュール20と、モジュール20を動作させるための補機(図示せず)とを収納してなる本実施形態の燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図6においては一部構成を省略して示している。
図6に示す燃料電池装置41は、支柱42と外装板43から構成される外装ケース内を仕切板44により上下に区画し、その上方側を上述したモジュール20を収納するモジュール収納室45とし、下方側をモジュール20を動作させるための補機を収納する補機収納室46として構成されている。なお、補機収納室46に収納する補機を省略して示している。
また、仕切板44には、補機収納室46の空気をモジュール収納室45側に流すための空気流通口47が設けられており、モジュール収納室45を構成する外装板43の一部に、モジュール収納室45内の空気を排気するための排気口48が設けられている。
このような燃料電池装置41においては、上述したように、長期信頼性の向上したモジュール20をモジュール収納室45に収納し、モジュール20を動作させるための補機を補機収納室46に収納して構成されることにより、長期信頼性の向上した燃料電池装置41とすることができる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、導電性支持体上に空気極層、固体電解質層、燃料極層を配置した燃料電池セルであっても良い。さらに、例えば、上記形態では、導電性支持体13上に燃料極層9、固体電解質層10、空気極層11を積層したが、導電性支持体13を用いることなく、燃料極層9自体を支持体とし、この燃料極層9に、固体電解質層10、空気極層11を設けても良い。
また、支持体上に空気極層、固体電解質層、燃料極層を有する発電素子部が複数形成された、いわゆる横縞型の燃料電池セルスタックを複数組み合わせてなる横縞型バンドルにも適用することができる。
さらに、上記形態では燃料電池セル3、セルスタック装置1、モジュール20ならびに燃料電池装置41について説明したが、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O2)を生成する電解セル(SOEC)およびこの電解セルを備える電解セルスタック装置および電解モジュールならびにモジュール収容装置である電解装置にも適用することができる。
(試料の作製)
上述したセルスタック装置について、表1に示すように、7つの試料を作製した。
上述した方法により、第一領域を内側領域に有するシール材によりセルスタックを枠体に固定した。
セルスタック装置の各試料は、10個の燃料電池セルを含むものとした。各試料にて使用した燃料電池セルの形状は図1、2と同様の板形状とした。燃料電池セルは、長手方向の長さが20cm、燃料電池セルの幅方向の長さが20mm、厚みが2mmであった。燃料電池セルの熱膨張係数は約10.9ppm/K(常温から1000℃における熱膨張係数)とした。
シール材は、SiO2−MgO−B2O3−Al2O3−CaO系を用いた。主成分の組成比(モル濃度比)は、15(SiO2):21(MgO):26(B2O3):5(Al2O3):29(CaO)であった。シール材の熱膨張係数は約11.6ppm/K(常温から1000℃における熱膨張係数)とした。第一領域となる第一添加材としてSiO2−MgO−B2O3−Al2O3−CaO系を用いた。第一添加材の組成比(モル濃度比)が異なる各試料をそれぞれ作製した。
(耐久性試験)
セルスタック装置の燃料電池セルのガス通路内に水素ガスを流し、更に燃料電池セルの外側(酸素極層の外面)に空気を流し、850℃において24時間発電させ、この後、水素ガスを停止し、自然冷却させた。当該手順の繰り返し回数が所定回数(40回、60回)になる度に試験を停止し、クラックの発生の有無を確認した。その結果を表1に示す。
なお、確認時にクラックが生じているスタック装置については、それ以降の試験は行わなかった。
試験結果を表1に示す。なお、表1には、第一領域となる第一添加材の組成比(モル濃度比)、第一添加材に含まれるAl2O3の組成比(モル濃度比)をシール材に含まれるAl2O3の組成比(モル濃度比)で除した値であるAl2O3の濃度倍率、第一添加材の熱膨張係数の値、燃料電池セルとシール材の外側領域(表1では外側と略す。)とシール材の内側領域(表1では内側と略す。)との熱膨張係数の関係及び熱サイクル試験のサイクル回数を記載した。
(耐久性試験結果)
試料No.1、3では、40回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生
じた。これは、シール材の内側領域の熱膨張係数が外側領域の熱膨張係数以上の値であり、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差が大きかったためである。
試料No2、4〜7では40回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じていなかった。シール材の内側領域が外側領域より熱膨張係数が小さく、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差が小さかったためである。
また、試料No.2、4、5では、60回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じたが、試料No.6、7では、シール材の内側領域にクラックが発生しなかった。これは、試料No.6、7におけるシール材の内側領域の熱膨張係数が試料No.5と比較してさらに小さく、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差がさらに小さかったためである。
(試料の作製)
上述したセルスタック装置について、表2に示すように、5つの試料を作製した。
上述した方法により、第一領域を内側領域に有するシール材によりセルスタックを枠体に固定した。
第一領域となる第一添加材の最大粒子断面積以外の条件は実施例1における表1の試料No.7と同様とした。第一添加材の最大粒子断面積が異なる各試料をそれぞれ作製した。
なお、「最大粒子断面積」は、Al2O3のEPMA解析の半定量マッピングにおいて認識される第一領域の面積と対応するものである。
(耐久性試験)
当該試験方法は繰り返し回数を70回とした以外は実施例1と同様とした。
(耐久性試験結果)
試験結果を表2に示す。
試料No.1〜3では、70回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じた。
一方、内側領域に含有される第一領域の面積(第一添加材の最大粒子断面積)が1000μm2以上である試料No.4及び5では、70回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じなかった。
(試料の作製)
上述したセルスタック装置について、表3に示すように、5つの試料を作製した。
上述した方法により、第二領域を内側領域に有するシール材によりセルスタックを枠体に固定した。
第二領域となる第二添加材の組成比(モル濃度比)以外の条件は実施例1と同様とした。第二添加材の組成比(モル濃度比)が異なる各試料をそれぞれ作製した。
(耐久性試験)
当該試験方法は実施例1と同様とした。
試験結果を表3に示す。なお、表3には、第二領域となる第二添加材の組成比(モル濃度比)、第二添加材に含まれるSiO2の組成比(モル濃度比)をシール材に含まれるSiO2の組成比(モル濃度比)で除した値であるSiO2の濃度倍率、第一添加材の熱膨張係数の値、燃料電池セルとシール材の外側領域(表3では外側と略す。)とシール材の内側領域(表3では内側と略す。)との熱膨張係数の関係及び熱サイクル試験のサイクル回数を記載した。
(耐久性試験結果)
試料No.1では、40回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じた。これは、シール材の内側領域が外側領域より熱膨張係数が大きく、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差が大きかったためである。
試料No2〜5では40回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じていなかった。これは、シール材の内側領域が外側領域より熱膨張係数が小さく、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差が小さかったためである。
また、試料No.2では、60回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じたが、試料No.3〜5では、シール材の内側領域にクラックが発生しなかった。これは、試料No.3〜5におけるシール材の内側領域の熱膨張係数が試料No.2と比較してさらに小さく、燃料電池セルの熱膨張係数と内側領域の熱膨張係数の差がさらに小さかったためである。
(試料の作製)
上述したセルスタック装置について、表4に示すように、5つの試料を作製した。
上述した方法により、第二領域を内側領域に有するシール材によりセルスタックを枠体に固定した。
第二領域となる第二添加材の最大粒子断面積以外の条件は実施例3における表3の試料No.4と同様とした。第二添加材の最大粒子断面積が異なる各試料をそれぞれ作製した。
なお、「最大粒子断面積」は、SiO2のEPMA解析の半定量マッピングにおいて認識される第二領域の面積と対応するものである。
(耐久性試験)
当該試験方法は繰り返し回数を70回とした以外は実施例1と同様とした。
(耐久性試験結果)
試験結果を表4に示す。
試料No.1〜3では、70回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じた。
一方、内側領域に含有される第二領域の面積(第二添加材の最大粒子断面積)が1000μm2以上である試料No.4及び5では、70回の熱サイクル試験でシール材の内側領域にクラックが生じなかった。