JP5116185B1 - 接合材、及び、その接合材を用いた燃料電池のスタック構造体 - Google Patents

接合材、及び、その接合材を用いた燃料電池のスタック構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】複数のセルがスタック状に整列するように接合材を用いて支持板に接合された燃料電池のスタック構造体用のクラック発生を抑制する接合材を提供する。
【解決手段】支持板210の表面には、複数のセル100の一端部を挿入するための複数の挿入孔211が形成される。各セル100の一端部が対応する挿入孔211にそれぞれ遊嵌される。接合材300が、各挿入孔211と対応するセル100の一端部との接合部のそれぞれにおいて、挿入孔211の内壁とセル100の一端部の外壁との間に存在する隙間に少なくとも充填されるよう設けられる。接合材300として、結晶化温度まで温度が高められた非晶質ガラスの結晶化が進行することで生成される結晶化ガラスであって、結晶化温度下における前記結晶化に起因する接合材の体積減少率(結晶化収縮率)が0.78%以上12%以下であるものが使用される。
【選択図】図5

Description

本発明は、接合材、及び、その接合材を用いた燃料電池のスタック構造体に関する。
従来より、「内部にガス流路が形成された支持基板を備えた長手方向を有するセル」と、「前記各セルが支持板の表面から長手方向に沿ってそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、前記各セルの長手方向の一端部を接合材を用いてそれぞれ接合・支持する支持板」と、「マニホールドの内部空間と前記複数のセルの前記ガス流路のそれぞれの一端部とが連通するように、前記支持板が設けられるガスのマニホールド」と、を備えた固体酸化物形燃料電池のスタック構造体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2005−100687号公報
ところで、上述したスタック構造体に関し、本発明者は、以下の特徴を有するものを考えている。前記支持板の表面には、前記マニホールドの内部空間と連通するとともに前記複数のセルの一端部を挿入するための1つ又は複数の挿入孔が形成されている。前記各セルの一端部が、対応する前記挿入孔にそれぞれ遊嵌されている。前記接合材が、前記各挿入孔と対応する前記セルの一端部との接合部のそれぞれにおいて前記挿入孔の内壁と前記セルの一端部の外壁との間に存在する隙間に少なくとも進入(充填)するように設けられることによって、前記各挿入孔と対応する前記セルの一端部とがそれぞれ接合されている。
上記の特徴を有するスタック構造体に対し、本発明者は、耐久性向上等の観点から、接合材として、非晶質ガラスではなく結晶化ガラスを使用することを考えている。非晶質ガラスが使用される場合、燃料電池の作動温度において、非晶質ガラスを構成する材料の元素の揮発に起因して、セルに設けられた空気極や燃料極が被毒され得る。この結果、電極の性能(特性)が劣化し、燃料電池の耐久性が低下する恐れがある。なお、結晶化ガラスとは、非晶質材料(非晶質ガラス)に熱処理(結晶化処理)を施すことによって非晶質材料が結晶化(固化、セラミックス化)されたものであり、結晶化度が60%以上のものであるとも定義できる。
接合材として結晶化ガラスが使用される場合、先ず、非晶質材料(非晶質ガラス)のペーストが前記各接合部の隙間に充填される。この状態で熱処理を施して非晶質材料が結晶化される(結晶化ガラスとなる)。これにより、各セルの一端部が対応する挿入孔にそれぞれ接合されて、スタック構造体が完成する。
係る熱処理の後、結晶化ガラスで構成される接合材の表面から内部に向けてクラックが発生する場合があった(後述する図8を参照)。本発明者は、係る問題に対処するために種々の実験等を重ねた。その結果、本発明者は、係るクラックの発生は、結晶化温度下にて非晶質材料の結晶化が進行する過程における「前記結晶化に起因する接合材の体積減少率」(以下、「結晶化収縮率」と呼ぶ。)と強い相関があることを見出した。
本発明は、結晶化ガラスで構成される接合材であって上記のような特徴を有する燃料電池のスタック構造体に適用された際にクラックが発生し難いものを提供すること、並びに、その接合材を用いた燃料電池のスタック構造体を提供することを目的とする。
本発明に係る接合材は、熱処理によって結晶化温度まで温度が高められた非晶質ガラスの結晶化が進行することによって生成される結晶化ガラスで構成される接合材である。前記結晶化ガラスは、SiO−MgO系の材料で構成されることが好適である。この接合材の特徴は、「結晶化収縮率」が0.78%以上12%以下であることにある。
本発明者は、結晶化ガラスで構成される接合材が上記の特徴を有する燃料電池のスタック構造体に用いられた際、「結晶化収縮率」が0.78%以上12%以下である場合に、そうでない場合と比べて、接合材(結晶化ガラス)にクラックが発生し難くなることを見出した。この点の詳細については後述する。
本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に使用される1つのセルを示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体の全体の斜視図である。 図2に示した燃料ガスマニホールドの全体の斜視図である。 図3に示した支持板に形成された挿入孔の拡大図である。 挿入孔とセルの一端部との接合部の様子を示した縦断面図である。 挿入孔とセルの一端部との接合部の様子を示した横断面図である。 図2に示したスタック構造体に対して燃料ガス及び空気が供給・排出される様子を示した図である。 挿入孔とセルの一端部との接合部において接合材にクラックが発生している様子を示した図である。 熱処理を施して非晶質ガラス材料が結晶化される際の、材料の温度及び体積の関係の推移を示したグラフである。 1つの挿入孔に複数のセルの一端部が挿入される場合における図6に対応する図である。 支持板の孔にセルの一端部が進入しないようにセルが支持板に対して配置される場合における図5に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に使用される1つのセルの他の例を示す斜視図である。 図12に示すセルの13−13線に対応する断面図である。 図12に示す支持基板の凹部に埋設された燃料極及びインターコネクタの状態を示した平面図である。 図12に示すセルの作動状態を説明するための図である。 図12に示すセルの作動状態における電流の流れを説明するための図である。 図12に示す支持基板を示す斜視図である。 図12に示すセルの製造過程における第1段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第2段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第3段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第4段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第5段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第6段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第7段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの製造過程における第8段階における図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの第1変形例の図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの第2変形例の図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの第3変形例の図13に対応する断面図である。 図12に示すセルの第4変形例の図14に対応する断面図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図2に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図3に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図4に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図5に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図6に対応する図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図7に対応する図である。
(スタック構造体に使用されるセルの構成の一例)
先ず、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体に使用されるセル100について説明する。図1に示すように、セル100では、平板状の多孔質の導電性支持体11の一方の主面に、多孔質の燃料極12、緻密な固体電解質13、多孔質の導電性セラミックスからなる空気極14が順次積層されている。また、空気極14と反対側の導電性支持体11の主面には、中間膜15、ランタン−クロム系酸化物材料からなるインターコネクタ16、P型半導体材料からなる集電膜17が順次形成されている。
セル100は、第1長手方向(x軸方向)を有する平板状を呈し、セル100の長さL1(第1長手方向の長さ)は50〜500mmであり、幅L2は10〜100mmであり、厚さL3は1〜5mmである(L1>L2)。セル100の第1長手方向(x軸方向)の一端部の側面の形状(長さL2、幅L3の長円形状、L2>L3)は、第2長手方向(y軸方向)を有する。
また、導電性支持体11の内部には、互いに平行な複数のガス流路(貫通孔)18が長手方向(x軸方向)に沿って幅方向(y方向)に間隔をおいて形成されている。各ガス流路18の断面形状は直径Dが0.5〜3mmの円形である。隣り合うガス流路18、18の幅方向における間隔(ピッチ)Pは1〜5mmである。なお、各ガス流路18の断面形状は、楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であってもよい。
セル100は、幅方向(長手方向と直角の方向)の両側にそれぞれ設けられた側端部B,Bと、側端部B,Bを連結する一対の平坦部A,Aと、から構成されている。一対の平坦部A,Aは平坦であり、ほぼ平行である。平坦部A,Aのうちの一方では、導電性支持体11の一方の主面上に燃料極12、固体電解質13、空気極14が順に形成され、平坦部A,Aのうちの他方では、導電性支持体11の他方の主面上に中間膜15、インターコネクタ16、集電膜17が順に形成されている。
導電性支持体11の幅は、10〜100mmであり、厚さは、1〜5mmであることが望ましい。導電性支持体11のアスペクト比(幅/厚さ)は、5〜100である。なお、導電性支持体11の形状は、「薄板状」と表現されているが、幅方向の寸法及び厚さ方向の寸法の組み合わせに応じて、「楕円柱状」、或いは、「扁平状」とも表現され得る。
この導電性支持体11は、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm及びPrから選ばれた1種以上からなる希土類元素酸化物とNi及び/又はNiOとを主成分とする材質から構成されることが望ましい。なお、Niに加えて、FeやCu等が含まれていてもよい。
また、導電性支持体11は、「NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)」と、「絶縁性セラミックス」とを含んで構成される、と記載することもできる。絶縁性セラミックスとしては、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y(イットリア)、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」等が使用され得る。導電性支持体11の導電率は、800℃にて、10〜2000S/cmである。導電性支持体11の気孔率は、20〜60%である。
導電性支持体11とインターコネクタ16の間に形成される中間膜15は、Ni及び/又はNiOと希土類元素を含有するZrOを主成分とする材質、または希土類酸化物(例えばY)から構成され得る。中間膜15中のNi化合物のNi換算量は、全量中35〜80体積%であることが望ましく、更には、50〜70体積%であることがより望ましい。Ni換算量が35体積%以上であることで、Niによる導電パスが増加して、中間膜15の伝導度が向上する。この結果、中間膜15に起因する電圧降下が小さくなる。また、Ni換算量が80体積%以下であることで、導電性支持体11とインターコネクタ16の間の熱膨張係数差を小さくすることができ、両者の界面における亀裂の発生が抑制され得る。
また、電圧降下の減少という観点から、中間膜15の厚さは20μm以下であることが望ましく、更には、10μm以下であることが望ましい。
中希土類元素や重希土類元素の酸化物の熱膨張係数は、固体電解質13における「Yを含有するZrO」の熱膨張係数より小さい。従って、Niとのサーメット材としての導電性支持体11の熱膨張係数を固体電解質13の熱膨張係数に近づけることができる。この結果、固体電解質13のクラックや、固体電解質13の燃料極12からの剥離が抑制され得る。更には、熱膨張係数が小さい重希土類元素酸化物を用いることで、導電性支持体11中のNiを多くでき、導電性支持体11の電気伝導度を上げることができる。この観点からも、重希土類元素酸化物を用いることが望ましい。
なお、希土類元素酸化物の熱膨張係数の総和が固体電解質13の熱膨張係数未満であれば、軽希土類元素のLa、Ce、Pr、Ndの酸化物は、中希土類元素、重希土類元素に加えて含有されていても問題はない。
また、精製途中の安価な複数の希土類元素を含む複合希土類元素酸化物を用いることにより、原料コストを大幅に下げることができる。この場合も、複合希土類元素酸化物の熱膨張係数が固体電解質13の熱膨張係数未満であることが望ましい。
また、インターコネクタ16表面にP型半導体、例えば、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる集電膜17を設けることが望ましい。インターコネクタ16表面に直接金属の集電部材を配して集電すると、非オーム接触に起因して、電位降下が大きくなる。オーム接触を確保して電位降下を少なくするためには、インターコネクタ16にP型半導体からなる集電膜17を接続する必要がある。P型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を用いることが望ましい。遷移金属ペロブスカイト型酸化物としては、ランタン−マンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物、又は、それらの複合酸化物の少なくとも一種を用いることが望ましい。
導電性支持体11の主面に設けられた燃料極12は、Niと希土類元素が固溶したZrOとから構成される。この燃料極12の厚さは1〜30μmであることが望ましい。燃料極12の厚さが1μm以上であることで、燃料極12としての3層界面が十分に形成される。また、燃料極12の厚さが30μm以下であることで、固体電解質13との熱膨張差による界面剥離が防止され得る。
この燃料極12の主面に設けられた固体電解質13は、イットリア(Y)を含有したイットリア安定化ジルコニアYSZ(緻密体なセラミックス)から構成される。固体電解質13の厚さは、0.5〜100μmであることが望ましい。固体電解質13の厚さが0.5μm以上であることで、ガス透過が防止され得る。また、固体電解質13の厚さが100μm以下であることで、抵抗成分の増加が抑制され得る。
また、空気極14は、遷移金属ペロブスカイト型酸化物のランタン−マンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物、又は、それらの複合酸化物の少なくとも一種の多孔質の導電性セラミックスから構成されている。空気極14は、800℃程度の中温域での電気伝導性が高いという観点から、(La,Sr)(Fe,Co)O系が望ましい。空気極14の厚さは、集電性という観点から、10〜100μmであることが望ましい。
インターコネクタ16は、導電性支持体11の内外間の燃料ガス、酸素含有ガスの漏出を防止するため緻密体とされている。また、インターコネクタ16の内外面は、燃料ガス、酸素含有ガスとそれぞれ接触するため、耐還元性、耐酸化性を有している。
このインターコネクタ16の厚さは、30〜200μmであることが望ましい。インターコネクタ16の厚さが30μm以上であることで、ガス透過が完全に防止され得、200μm以下であることで、抵抗成分の増加が抑制され得る。
このインターコネクタ16の端部と固体電解質13の端部との間には、シール性を向上すべく、例えば、NiとZrO、或いはYからなる接合層を介在させても良い。
セル100では、緻密な固体電解質13は、導電性支持体11の一方の主面上のみならず、導電性支持体11の側端部を介して他方の主面上のインターコネクタ16の側端面まで形成されている。即ち、固体電解質13は、両側の側端部B,Bを形成するように、導電性支持体11の他方の主面まで延設され、インターコネクタ16と接合している。なお、側端部B,B(導電性支持体11の側端部)は、発電に伴う加熱や冷却に伴い発生する熱応力を緩和するため、幅方向において外側に突出する曲面形状となっていることが望ましい。
次に、以上説明したようなセル100の製法について説明する。先ず、La、Ce、Pr、Ndの元素を除く希土類元素酸化物粉末とNi及び/又はNiO粉末が混合される。この混合粉末に、有機バインダーと、溶媒とを混合した導電性支持体材料が押し出し成形されて、板状の導電性支持体成形体が作製される。この成形体が乾燥、脱脂される。
また、希土類元素(Y)が固溶したZrO粉末と有機バインダーと溶媒を混合した固体電解質材料を用いてシート状の固体電解質成形体が作製される。
次に、Ni及び/又はNiO粉末と、希土類元素が固溶したZrO粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して作製された、燃料極12となるスラリーが、前記固体電解質成形体の一方側に塗布される。これにより、固体電解質成形体の一方側の面に燃料極成形体が形成される。
次に、導電性支持体成形体に、前記シート状の固体電解質成形体と燃料極成形体の積層体が、燃料極成形体が導電性支持体成形体に当接するように、導電性支持体成形体に巻き付けられる。
次に、この積層成形体の側端部B,Bを形成する位置の固体電解質成形体上に、上記のシート状の固体電解質成形体が更に数層積層され、乾燥される。また、固体電解質13となるスラリーが固体電解質成形体上にスクリーン印刷されてもよい。なお、このとき脱脂が行われてもよい。
次に、ランタン−クロム系酸化物粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したインターコネクタ材料を用いて、シート状のインターコネクタ成形体が作製される。
また、Ni及び/又はNiO粉末と、希土類元素が固溶したZrO粉と、有機バインダーと、溶媒を混合したスラリーを用いて、シート状の中間膜成形体が作製される。
次に、インターコネクタ成形体と中間膜成形体とが積層される。この積層体の中間膜成形体側が、露出した導電性支持体成形体側に当接するように、この積層体が導電性支持体成形体に積層される。
これにより、導電性支持体成形体の一方主面に、燃料極成形体、固体電解質成形体が順次積層されるとともに、他方主面に中間膜成形体、インターコネクタ成形体が積層された積層成形体が作製される。なお、各成形体は、ドクターブレードによるシート成形、印刷、スラリーディップ、並びにスプレーによる吹き付けなどにより作製され得る。また、各成形体は、これらの組み合わせにより作製され得る。
次に、積層成形体が脱脂処理され、酸素含有雰囲気中で1300〜1600℃で同時焼成される。
次に、P型半導体である遷移金属ペロブスカイト型酸化物粉末と、溶媒を混合して、ペーストが作製される。前記積層体がこのペースト中に浸漬される。そして、固体電解質13、インターコネクタ16の表面に、空気極成形体、集電膜成形体が、それぞれディッピング、或いは直接のスプレー塗布により形成される。これらの成形体が1000〜1300℃で焼き付けられることにより、セル100が作製される。
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、導電性支持体11、燃料極12、中間膜15中のNi成分が、NiOとなっている。従って、これらの導電性を獲得するため、その後、導電性支持体11側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
(スタック構造体の全体構成の一例)
次に、上述したセル100を用いた本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体について説明する。図2に示すように、このスタック構造体は、多数のセル100と、多数のセル100のそれぞれに燃料ガスを供給するための燃料ガスのマニホールド200と、を備えている。マニホールド200の全体は、ステンレス鋼等の材料で構成されている。
マニホールド200の天板(換言すれば、ガスタンクの天板(平板))は、多数のセル100を支持するための支持板210を兼ねている。また、マニホールド200には、外部からマニホールド200の内部空間に燃料ガスを導入するための導入通路220が設けられている。各セル100が支持板210の表面から第1長手方向(x軸方向)に沿ってそれぞれ突出し且つ複数のセル100がスタック状に整列するように、各セル100の第1長手方向の一端部が支持板210に接合・支持されている(接合構造の詳細は後述する)。各セル100の第1長手方向の他端部は、自由端となっている。従って、このスタック構造は、「片持ちスタック構造」と表現することができる。
図3に示すように、支持板210(マニホールド200の天板)の表面には、マニホールド200の内部空間と連通する多数の挿入孔211が形成されている。各挿入孔211には、対応するセル100の一端部がそれぞれ挿入される。図4に示すように、各挿入孔211の形状は、長さL4、幅L5の長円形状(L4>L5)を呈し、線対称に関する対称軸の方向(第3長手方向、y軸方向)を有する。
挿入孔211の長さL4は、セル100の一端部の側面の長さL2(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。同様に、挿入孔211の幅L5は、セル100の一端部の側面の幅L3(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。即ち、図5、6に示すように、第2長手方向(セル100の一端部の側面の長さ方向)が挿入孔211の対称軸の方向(挿入孔211の長さ方向)に沿うように、セル100の一端部が挿入孔211に挿入された状態では、挿入孔211の内壁とセル100の一端部の外壁との間に隙間が形成される。換言すれば、セル100の一端部が挿入孔211に遊嵌される。なお、図5、図6(特に、図6)では、前記隙間が誇張して描かれている。
図5、図6に示すように、挿入孔211とセル100の一端部との接合部のそれぞれにおいて、固化された接合材300が前記隙間に充填されるように設けられている。これにより、各挿入孔211と対応するセル100の一端部とがそれぞれ接合・固定されている。図5に示すように、各セル100のガス流路18の一端部は、マニホールド200の内部空間と連通している。
また、図5に示すように、隣接するセル100、100の間には、隣接するセル100、100の間(より詳細には、一方のセル100の燃料極12と他方のセル100の空気極14)を電気的に直列に接続するための集電部材400が介在している。集電部材400は、例えば、金属メッシュ等で構成される。
接合材300は、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−BO3系、SiO−CaO系、MgO−BO3系が採用され得るが、SiO−MgO系のものが最も好ましい。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」(結晶化度)の割合が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラス(セラミックス)を指す。
以下、前記「第1長手方向」、前記「第2長手方向」、並びに、挿入孔211の「対称軸の方向」について付言する。「第1長手方向」とは、平板状のセル100の平面(上面)形状(セルの上面視の2次元形状)を有する図形が線対称の性質を備える場合における前記線対称に関する対称軸の方向を指し、対称軸が複数本存在する場合には、前記図形内に含まれる部分の長さが最も長い対称軸の方向を指す。同様に、「第2長手方向」とは、セル100の一端部の側面の形状(セルの側面視の2次元形状)を有する図形が線対称の性質を備える場合における前記線対称に関する対称軸の方向を指し、対称軸が複数本存在する場合には、前記図形内に含まれる部分の長さが最も長い対称軸の方向を指す。前記挿入孔211の「対称軸の方向」とは、挿入孔の形状(支持板の平面視の2次元形状)を有する図形が線対称の性質を備える場合における前記線対称に関する対称軸の方向を指し、対称軸が複数本存在する場合には、何れかの対称軸の方向を指す。
以上、説明した燃料電池の片持ちスタック構造を稼働させる際には、図7に示すように、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素等)及び「酸素を含むガス(空気等)」を流通させる。導入通路220から導入された燃料ガスは、マニホールド200の内部空間へと移動し、その後、各挿入孔211を介して対応するセル100のガス流路18にそれぞれ導入される。各ガス流路18を通過した燃料ガスは、その後、各ガス流路18の他端(自由端)から外部に排出される。空気は、スタック構造の内部における隣接するセル100間の隙間に沿って、セル100の幅方向(y軸方向)に流される。
上述した片持ちスタック構造は、例えば、以下の手順で組み立てられる。先ず、必要な枚数の完成したセル100、並びに、完成したマニホールド200が準備される。次いで、所定の治具等を用いて、複数のセル100がスタック状に整列・固定される。次に、複数のセル100がスタック状に整列・固定された状態が維持されながら、複数のセル100のそれぞれの一端部が、支持板210の対応する挿入孔211に一度に挿入される。次いで、接合材300用の非晶質材料(非晶質ガラス)のペーストが、挿入孔211とセル100の一端部との接合部のそれぞれの隙間に充填される。その際、図5に示すように、ペーストが支持板210の表面から上方に向けてはみ出す程度まで前記接合部に供給されてもよい。
次に、上記のように充填された非晶質材料ペーストに熱処理(結晶化処理)が加えられる。この熱処理によって非晶質材料の温度がその結晶化温度まで到達すると、結晶化温度下にて、材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される接合材300が機能を発揮し、各セルの一端部が対応する挿入孔211にそれぞれ接合・固定される。換言すれば、各セル100の一端部が接合材300を用いて支持板210にそれぞれ接合・支持される。その後、前記所定の治具が複数のセル100から取り外されて、上述した片持ちスタック構造体が完成する。
(接合材にクラックが発生する事態の発生の抑制)
上述した接合材300用の非晶質材料ペーストの熱処理の後、図8に示すように、結晶化ガラスで構成される接合材300の表面から内部に向けてクラックが発生する場合があった。
本発明者は、上述したクラック発生の問題に対処するために種々の実験等を重ねた。その結果、本発明者は、係るクラックの発生は、結晶化温度下にて非晶質材料の結晶化が進行する過程における「前記結晶化に起因する接合材の体積減少率」(以下、「結晶化収縮率」と呼ぶ。)と強い相関があることを見出した。以下、先ず、この知見を得る前提となった「結晶化収縮率の算出手法」について説明する。
図9は、熱処理を施すことによって或る非晶質ガラス材料の(固化された状態にある)成形体(試験片)が結晶化される際の、成形体の温度及び体積の関係の推移の一例を示す。図9において、Tgはこの非晶質ガラス材料のガラス転移点、Tsはこの非晶質ガラス材料のガラス軟化点、Tcはこの非晶質ガラス材料の結晶化温度である。Tg、Ts、Tcは、DTA(示差熱分析、Differential Thermal Analysis),DSC(示差走査熱量測定、Differential
Scanning Calorimetry)等の熱分析により取得される材料物性値である。以下、説明の便宜上、図9において点X(X:A〜G)における成形体の体積を「Vx」と表記する。
点Aは、室温での非晶質状態にある成形体の状態を示す。点Aの状態から、成形体の温度が上昇されてガラス転移点Tgに達すると(点B)、成形体の体積がVaからVbまで増大する。点Bの状態では、成形体は非晶質の状態にある。次いで、点Bの状態から、成形体の温度が上昇されてガラス軟化点Tsに達すると(点G)、成形体の体積がVbからVgまで増大する。ここまでの過程において、Vaは、固化された状態にある非晶質ガラスの成形体を用いて予め算出され得る。その際、Vaは、成形体内部に存在する気孔分を除いた値とされた。Vb、及びVgは、予め算出されたVaを利用して、公知の熱膨張測定機を用いて算出され得る。ガラス軟化点Ts以下の温度領域では、成形体が軟化しないので、成形体の三次元形状が維持され得るからである。
次に、点Gの状態から、成形体の温度が更に上昇されると、成形体の軟化が始まる。このため、成形体の三次元形状が維持され得なくなり、成形体の体積を公知の熱膨張測定機を用いて測定することが不可能となる。従って、点Gの状態から、成形体の温度が上昇して結晶化温度Tcに達した時点、即ち、成形体の材料の結晶化が開始される前の時点(点C)での非晶質状態にある成形体の体積Vcも計測できない。
そこで、本手法では、Vcを推定するため、「ガラス転移点Tgから結晶化温度Tcまでの間において、温度上昇に対する非晶質材料の体積の増加勾配が一定である」という仮定(図中の点G−C間の破線を参照)が採用される。係る仮定のもと、既知のTg、Ts、Tcと、既測定済のVbとVgとを用いて、Tg−Ts間の体積変化について外挿を行うことによって、Vcが算出される。なお、Ts及びVgに代えて、TgとTsの間の所定温度Tzと、Tzでの成形体の体積(測定済)を用いて、Tg−Tz間の体積変化について外挿を行うことによって、Vcが算出されてもよい。
次に、点Cの状態から、成形体の温度が結晶化温度Tcに維持された状態で時間が進行すると、成形体の材料の結晶化が開始・進行していく。このとき、この結晶化の進行に起因して成形体が収縮していく。点Cの状態から十分な時間が経過して、成形体の材料の結晶化(体積の減少)が完了すると(点D)、成形体の体積がVcからVdまで減少する。点Dの状態では、成形体は結晶化後の状態にある。点Dの状態では、成形体が結晶化(固化)しているので、後述するように、Vdは、公知の熱膨張測定機を用いて測定可能である。なお、成形体材料の結晶化の「完了」は、例えば、所定の期間内における成形体の体積の減少量(減少率)が所定値以下となったことに基づいて判定され得る。
点Dの状態から、成形体の温度が下降されてガラス転移点Tgに達すると(点E)、成形体の体積がVdからVeまで減少する。点Eの状態では、成形体は結晶化後の状態にある。次いで、点Eの状態から、成形体の温度が更に下降されて室温に達すると(点F)、成形体の体積がVeからVfまで更に減少する。点Fの状態でも、成形体は結晶化後の状態にある。Vfは、結晶化した結晶化ガラスの成形体を用いて算出され得る。その際、Vfは、成形体内部に存在する気孔分を除いた値とされた。Vdは、上記のように算出されたVfを利用して、公知の熱膨張測定機を用いて算出され得る。
本手法では、上述のように推定されたVcと、上述のように算出されたVdとを用いて、以下の(1)式に従って、「結晶化収縮率」(%)が算出される。
結晶化収縮率=(Vd−Vc)/Vc×100(%) …(1)
以下、上述したクラック発生が「結晶化収縮率」と強い相関があることを確認した試験について説明する。
(試験)
この試験では、上述した片持ちスタック構造体(図2を参照)について、結晶化ガラスで構成される接合材30の材質、及び、結晶化収縮率(%)の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して20個のサンプル(N=20)が作製された。表1に示す結晶化収縮率は、上記(1)式に従って算出された値である。
接合材300の結晶化収縮率の調整は、結晶化処理後の接合材に含まれる結晶相(結晶化ガラス)と非晶質相(非晶質ガラス)の(常温での)「密度比」(結晶相の密度/非晶質相の密度)を調整することによって実現され得る。一般に、「密度比」が大きいほど、接合材の「結晶化収縮率」が大きい(所謂単調増加)、という傾向がある。「密度比」は、1.01〜1.05の範囲内で調整されることが好ましい。「密度比」の調整は、具体的には以下のようになされる。
先ず、結晶化処理後の接合材に一種類のみの結晶相が含まれる場合、その結晶相の密度を大きく(小さく)することによって「密度比」を大きく(小さく)することができる。その結晶相の密度の調整を行うためには、(結晶化処理前の段階での)非晶質ガラスを構成する元素の置換などが考えられる。その際、結晶相の密度を大きく(小さく)するには、イオン半径がほぼ等しく且つ原子番号のより大きな(小さな)元素と置換するのが効果的である。
他方、結晶化処理後の接合材に複数種類の結晶相が含まれる場合、結晶相間の晶出割合を調整することによって「密度比」を調整することができる。例えば、結晶化処理後の接合材に「密度が高い結晶相A」と「密度が低い結晶相B」とが含まれる場合、結晶相Aの晶出割合を大きく(小さく)することによって「密度比」を大きく(小さく)することができる。結晶化処理の際、結晶相Aの晶出割合を大きく(小さく)するためには、結晶相Aの結晶化温度と結晶相Bの結晶化温度との高低にかかわらず、結晶相Aの結晶化温度での保持時間を結晶相Bの結晶化温度での保持時間より長く(短く)すればよい。
「密度比」(=「結晶相の密度」/「非晶質相の密度」)は、下記の方法で得られた「結晶相の密度」及び「非晶質相の密度」を用いて算出され得る。「結晶相の密度」は、X線回折による結晶相の同定、並びに、リートベルト法による結晶構造解析等から得られた情報に基づいて、理論的に算出され得る。例えば、結晶化処理後において一種類の結晶相のみが析出する場合、その一種類の結晶相について上述の方法で算出した密度が、「結晶相の密度」とされ得る。また、結晶化処理後において複数種類の結晶相が析出する場合、それら複数種類の結晶相のそれぞれについて、上述の方法で算出した密度に、対応する結晶相の析出体積割合を乗じた値が算出される。それらの値の総和が、「結晶相の密度」とされ得る。一方、「非晶質相の密度」は、所謂「アルキメデス測定」等を利用して算出された非晶質状態のガラスの密度を、閉気孔率分だけ補正することによって得られる。閉気孔率は、別途、前記非晶質状態のガラスの組織をSEM等を利用して観察するなどして得ることができる。
各サンプル(図2を参照)にて使用されたセル100の第1長手方向(x軸方向)の一端部の側面の形状としては、図6と同様、長さL2が30mm、幅L3が3mmの長円形状(L2>L3)が採用された。挿入孔211の開口の形状としては、図6と同様、長さL4が長さL2より0.5mm大きく、幅L5が幅L3より0.5mm大きい長円形状(L4>L5)が採用された。支持板210(マニホールド200)の材質としてはステンレス鋼が使用された。各サンプルでは、前記隙間に充填された非晶質材料のペーストに対して、温度850℃で1〜5時間の熱処理が施された。この結果、結晶化ガラスで構成された接合材300が機能を発揮して、各セル100の一端部が支持板210にそれぞれ接合された(スタック構造体が完成した)。
そして、上記還元処理が施される前の段階における各サンプルについて、接合材300におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。
表1から理解できるように、結晶化収縮率が12%よりも大きいと、図8に示すように、接合材300の表面から内部に向けてクラックが発生し易い。これは、以下の理由に基づく、と考えられる。即ち、接合材用の非晶質材料のペーストに対して熱処理が施される際、接合材の温度が「結晶化温度」より若干低い「ガラス軟化点」に到達した時点以降、接合材(この段階では、非晶質ガラス)が、挿入孔211の内壁との界面、並びに、セル100の一端部の外壁との界面にて拘束され始める。その後、接合材(この段階では、非晶質ガラス)の温度が「結晶化温度」に到達すると、「結晶化温度」下にて非晶質ガラスの結晶化が進行していくことに起因して接合材300が収縮しようとする(結晶化収縮)。従って、結晶化収縮が開始された時点以降、接合材は周囲(被接合体)に拘束されながら収縮しようとする。この結果、接合材には内部応力(引張応力)が作用する。この結果、結晶化収縮率が大きいと、接合材300にクラックが発生し易いものと考えられる。
一方、表1から理解できるように、結晶化収縮率が12%以下の範囲内であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。なお、結晶化収縮率が0.78%未満の場合、前記隙間に充填された非晶質材料のペーストに熱処理が施される際、ペーストの流動性が極めて悪くなる。この結果、各セル100の一端部と支持板210との接合が不十分となりマニホールド200内のガスが外部に漏れる事態が発生し易いことが別途判明している。以上の結果は、セル100の一端部の側面の形状、並びに、挿入孔211の開口の形状が長円形状の場合に対応するが、セル100の一端部の側面の形状、並びに、挿入孔211の開口の形状が、例えば、円形等であっても、同じ結果が得られることが既に確認されている。
以上のことから、結晶化ガラスで構成される接合材300の表面から内部に向けてクラックが発生する事態を抑制するためには、接合材300の結晶化収縮率が0.78%以上12%以下の範囲内であることが好ましい、ということができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、支持基板の表面に「燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順に積層されてなる発電素子部」が1つのみ設けられたセルが複数枚積層された所謂「縦縞型」の構成が採用されているが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて前記発電素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う発電素子部の間が電気的に接続された所謂「横縞型」のセルが採用されてもよい。また、上記実施形態では、セル(支持基板)が平板状を呈しているが、セル(支持基板)が円筒状を呈していてもよい。
また、上記実施形態のセルでは、燃料極と空気極とを入れ替えてもよい。この場合、図7において燃料ガスと空気とが入れ替えられたガスの流れが採用される。また、上記実施形態では、支持板に形成された1つの挿入孔に1つのセルの一端部が挿入されているが、図10に示すように、支持板に形成された1つの挿入孔211に2つ以上のセル100の一端部が挿入されていてもよい。なお、図10では、隣接するセル100、100の間隔が誇張して描かれている。図10に示す場合においても、挿入孔211の「対称軸の方向」として、図6に示す場合と同様、y軸方向が使用される。即ち、「第2長手方向」(セル100の一端部の側面の長さ方向)が孔211の「対称軸の方向」(y軸方向)と一致するように、各セル100の一端部が対応する挿入孔211に挿入されている。更には、支持板に形成された1つの(唯一の)挿入孔に複数のセルの一端部の全てが挿入されていてもよい。
また、上記実施形態では、挿入孔211にセル100の一端部が挿入されている(即ち、挿入孔211の内部空間にセル100の一端部が進入している)が(図5等を参照)、図11に示すように、孔211にセル100の一端部が挿入されていなくてもよい(即ち、孔211の内部空間にセル100の一端部が進入していなくてもよい)。この場合、接合材300が、各孔211と対応するセル100の一端部との接合部のそれぞれにおいて孔211とセル100の一端部との間に存在する空間に充填されるように設けられる。
更には、上記実施形態では、マニホールドの天板が多数のセルを支持するための支持板を兼ねているが(即ち、支持板がマニホールドと一体で構成されているが)、マニホールドの内部空間と複数のセルのガス流路とが連通する限りにおいて、支持板がマニホールドとは別体で構成されていてもよい。
以下、図1に示したセルの他の例について図12〜図29を参照しながら説明する。
(構成)
図12は、図1に示したセルの他の例に係るセル100を示す。このセル100は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このセル100の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが5〜50cmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが1〜10cmの長方形である。このセル100の全体の厚さは、1〜5mmである。このセル100の全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図12に加えて、このセル100の図12に示す13−13線に対応する部分断面図である図13を参照しながら、このセル100の詳細について説明する。図13は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図13に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図17に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。
支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」と、絶縁性セラミックスとを含んで構成され得る。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
また、絶縁性セラミックスとしては、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」が好適である。また、絶縁性セラミックスとして、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y(イットリア)が使用されてもよい。
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図13及び図14に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸化性イオン(酸素イオン)伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
なお、図13に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図13を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図13では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図13では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図13では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図13では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、説明した図12に示す「横縞型」のセル100に対して、図15に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(2)、(3)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極60) …(2)
+O2−→HO+2e
(於:燃料極20) …(3)
発電状態においては、図16に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図15に示すように、このセル100全体から(具体的には、図15において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図12に示した「横縞型」のセル100の製造方法の一例について図17〜図25を参照しながら簡単に説明する。図17〜図25において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図17に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図17に示す18−18線に対応する部分断面を表す図18〜図25を参照しながら説明を続ける。
図18に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図19に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図20に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図21に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図22に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図23に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図12に示したセル100において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図24に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図25に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図12に示したセル100が得られる。以上、図12に示したセル100の製造方法の一例について説明した。
(作用・効果)
以上、説明したように、図12に示した「横縞型」のセル100では、支持基板10の上下面に形成されている、燃料極20を埋設するための複数の凹部12のそれぞれが、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁を有している。換言すれば、支持基板10において各凹部12を囲む枠体がそれぞれ形成されている。従って、この構造体は、支持基板10が外力を受けた場合に変形し難い。
また、支持基板10の各凹部12内に燃料極20及びインターコネクタ30等の部材が隙間なく充填・埋設された状態で、支持基板10と前記埋設された部材とが共焼結される。従って、部材間の接合性が高く且つ信頼性の高い焼結体が得られる。
また、インターコネクタ30が、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bに埋設され、この結果、直方体状のインターコネクタ30の幅方向(y軸方向)に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。従って、燃料極集電部21の外側平面上に直方体状のインターコネクタ30が積層される(接触する)構成が採用される場合に比べて、燃料極20(集電部21)とインターコネクタ30との界面の面積を大きくできる。従って、燃料極20とインターコネクタ30との間における電子伝導性を高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、図12に示したセル100では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに、複数の発電素子部Aが設けられている。これにより、支持基板の片側面のみに複数の発電素子部が設けられる場合に比して、構造体中における発電素子部の数を多くでき、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、図12に示したセル100では、固体電解質膜40が、燃料極20の外側面、インターコネクタ30の外側面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、燃料極20の外側面とインターコネクタ30の外側面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
なお、図12に示したセル100では、図17等に示すように、支持基板10に形成された凹部12の平面形状(支持基板10の主面に垂直の方向からみた場合の形状)が、長方形になっているが、例えば、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であってもよい。
また、図12に示したセル100では、各凹部12にはインターコネクタ30の全体が埋設されているが、インターコネクタ30の一部のみが各凹部12に埋設され、インターコネクタ30の残りの部分が凹部12の外に突出(即ち、支持基板10の主面から突出)していてもよい。
また、図12に示したセル100では、凹部12における底壁と側壁とのなす角度θが90°になっているが、図26に示すように、角度θが90〜135°となっていてもよい。また、図12に示したセル100では、図27に示すように、凹部12における底壁と側壁とが交差する部分が半径Rの円弧状になっていて、凹部12の深さに対する半径Rの割合が0.01〜1となっていてもよい。
また、図12に示したセル100では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、図28に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。
また、図12に示したセル100では、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。加えて、図12に示したセル100では、「内側電極」及び「外側電極」がそれぞれ燃料極及び空気極となっているが、逆であってもよい。
加えて、図12に示したセル100では、図14に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(支持基板10の材料からなる長手方向に沿う2つの側壁と、燃料極集電部21の材料からなる幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みとなっている。この結果、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
これに対し、図29に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みであってもよい。これによれば、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の4つの側面の全てと底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触する。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との界面の面積をより一層大きくできる。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との間における電子伝導性をより一層高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力をより一層高めることができる。
図30〜図35はそれぞれ、本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に図12に示すセルが使用された場合における図2〜図7に対応する図である。図30〜図35において、図2〜図7に示した部材・構成と同じ或いは等価な部材・構成については図2〜図7にて使用した符号と同じ符号が付されている。図33に示すように、この場合、隣接するセル100、100の間を電気的に直列に接続するため、図5に示した集電部材400に対応する集電部材400に加えて、各セル100について表側と裏側とを電気的に直列に接続するための集電部材500も設けられている。
11…導電性支持体、12…燃料極、13…固体電解質、14…空気極、18…ガス流路、100…セル、200…マニホールド、210…支持板、211…挿入孔、300…接合材、10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、21a、21b…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、A…発電素子部

Claims (8)

  1. 熱処理によって結晶化温度まで温度が高められた非晶質ガラスの結晶化が進行することによって生成される結晶化度が60%以上の結晶化ガラスで構成される接合材であって、
    前記結晶化温度下における前記結晶化に起因する接合材の体積減少率が0.78%以上12%以下である、接合材。
  2. 請求項1に記載の接合材において、
    前記接合材に含まれる非晶質相の常温での密度に対する、前記接合材に含まれる結晶相の常温での密度の割合である密度比が、1.01以上1.05以下である、接合材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の接合材において、
    前記結晶化ガラスが、SiO−MgO系の材料で構成される、接合材。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の接合材において、
    前記熱処理によって前記非晶質ガラスの材料の温度が上昇する過程において、前記材料の温度がガラス転移点に達した時点での非晶質状態にある前記材料の体積である第1体積と、前記材料の温度が前記ガラス転移点と前記ガラス転移点より高いガラス軟化点との間の所定温度又は前記ガラス軟化点に達した時点での非晶質状態にある前記材料の体積である第2体積と、前記材料の温度が前記ガラス軟化点より高い結晶化温度に達した後において前記結晶化温度下にて前記材料の結晶化が完了したと判定される時点での結晶化後の前記材料の体積である第3体積と、が取得され、
    前記取得された第1及び第2体積と、前記ガラス転移点と、前記所定温度又は前記ガラス軟化点と、前記結晶化温度と、に基づいて、前記材料の温度が前記結晶化温度に達し且つ前記材料の結晶化が開始される前の時点での非晶質状態にある前記材料の体積である第4体積が推定され、
    前記結晶化温度下における前記結晶化に起因する接合材の体積減少率として、前記第3体積と前記第4体積とを用いて算出される値が使用される、接合材。
  5. それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも内側電極、固体電解質、及び外側電極がこの順で積層された発電素子部と、を含む複数のセルと、
    前記各セルが支持板の表面から前記長手方向に沿ってそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、前記各セルの前記長手方向の一端部を接合材を用いてそれぞれ接合・支持する支持板と、
    マニホールドの内部空間と前記複数のセルの前記ガス流路のそれぞれの一端部とが連通するように、前記支持板が設けられるガスのマニホールドと、
    を備えた燃料電池のスタック構造体であって、
    前記支持板の表面には、前記マニホールドの内部空間と前記複数のセルの一端部とを連通するための1つ又は複数の孔が形成され、
    前記各セルの一端部が、対応する前記孔に対応して位置付けられ、
    前記接合材が、前記各孔と対応する前記セルの一端部との接合部のそれぞれにおいて前記孔と前記セルの一端部との間に存在する空間に充填されるよう設けられることによって、前記各孔と対応する前記セルの一端部とがそれぞれ接合され、
    前記接合材として、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接合材が使用された、燃料電池のスタック構造体。
  6. それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも内側電極、固体電解質、及び外側電極がこの順で積層された発電素子部と、を含む複数のセルと、
    前記各セルが支持板の表面から前記長手方向に沿ってそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、前記各セルの前記長手方向の一端部を接合材を用いてそれぞれ接合・支持する支持板と、
    マニホールドの内部空間と前記複数のセルの前記ガス流路のそれぞれの一端部とが連通するように、前記支持板が設けられるガスのマニホールドと、
    を備えた燃料電池のスタック構造体であって、
    前記支持板の表面には、前記マニホールドの内部空間と連通するとともに前記複数のセルの一端部を挿入するための複数の挿入孔が形成され、
    前記各セルの一端部が、対応する前記挿入孔に遊嵌され、
    前記接合材が、前記各挿入孔と対応する前記セルの一端部との接合部のそれぞれにおいて前記挿入孔の内壁と前記セルの一端部の外壁との間に存在する隙間に少なくとも進入するよう設けられることによって、前記各挿入孔と対応する前記セルの一端部とがそれぞれ接合され、
    前記接合材として、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接合材が使用された、燃料電池のスタック構造体。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の燃料電池のスタック構造体において、
    前記セルは、
    ガス流路が内部に形成された平板状の多孔質の前記支持基板と、
    前記平板状の支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも内側電極、固体電解質、及び外側電極がこの順に積層されてなる複数の前記発電素子部と、
    1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の内側電極と他方の外側電極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
    を備え、
    前記平板状の支持基板の主面における前記複数の箇所に、底壁と周方向に閉じた側壁とを有する凹部がそれぞれ形成され、
    前記各凹部に、対応する前記発電素子部の内側電極がそれぞれ埋設された、燃料電池のスタック構造体。
  8. 請求項5又は請求項6に記載の燃料電池のスタック構造体において、
    前記セルは、
    ガス流路が内部に形成された平板状の多孔質の前記支持基板と、
    前記平板状の支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも内側電極、固体電解質、及び外側電極がこの順に積層されてなる複数の前記発電素子部と、
    1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の内側電極と他方の外側電極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
    を備え、
    前記各電気的接続部は、緻密な材料で構成された第1部分と、前記第1部分と接続され且つ多孔質の材料で構成された第2部分とで構成され、
    前記平板状の支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる底壁と全周に亘って前記支持基板の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する第1凹部がそれぞれ形成され、
    前記各第1凹部に、対応する前記発電素子部の内側電極がそれぞれ埋設され、
    前記埋設された各内側電極の外側面に、前記内側電極の材料からなる底壁と全周に亘って前記内側電極の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する第2凹部がそれぞれ形成され、
    前記各第2凹部に、対応する前記電気的接続部の前記第1部分がそれぞれ埋設された、燃料電池のスタック構造体。
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