JP5455268B1 - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガス流路が内部に形成された多孔質の支持基板のガス流出側端部にコーティング膜が形成された燃料電池であって、コーティング膜にクラックが発生する事態を抑制し得るものを提供すること。
【解決手段】この燃料電池は、複数のガス流路18が長手方向に沿って内部に形成された平板状の多孔質の支持基板11と、支持基板11の主面に設けられ、少なくとも燃料極12、固体電解質13、及び空気極14がこの順で積層された発電素子部と、を備えた焼成体である。各ガス流路18の内壁面におけるガス排出側の端部、並びに、支持基板11の長手方向におけるガス排出側の端面に、支持基板より気孔率が小さいコーティング膜が形成されている。コーティング膜における各ガス流路18の内壁面に形成された部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmである。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関する。
従来より、「長手方向を有する平板状であり、且つ、1つ又は複数のガス流路が前記長手方向に沿って内部に形成された多孔質の支持基板」と、「前記支持基板の主面に設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部」と、を備えた焼成体である固体酸化物形燃料電池が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。
係る焼成体である燃料電池では、燃料極等の導電性を獲得するため、燃料電池を作動させる前に、燃料電池に対して高温下(例えば、800℃程度)にて還元ガスを供給する熱処理(以下、「還元処理」と呼ぶ。)が行われて、燃料電池が非還元体から還元体に移行される。
係る燃料電池では、「各ガス流路内において長手方向における一方向(同じ方向)にガス(燃料ガス)が流され、各ガス流路のガス排出口から外部空間に排出された余剰のガスが、同ガス排出口の近傍にて、同外部空間内にある空気(酸素)と反応して燃焼させられる構成」が採用され得る。
この構成が採用される場合、支持基板のガス流出側端部にてクラックが発生し易い。これは、以下の理由に基づく、と考えられる。第1に、支持基板が多孔質であることに起因して、支持基板のガス流出側端部の内部に外部空間内にある空気が進入し、上述した余剰のガスが同内部にて空気と反応して燃焼する。この結果、同内部にて、燃焼による発熱に伴う過大な熱応力が局所的に発生してクラックが発生する。第2に、支持基板のガス流出側端部の内部に外部空間内にある空気が進入することによって、還元体である同内部が再酸化される。この結果、同内部にて、再酸化による寸法変化(酸化膨張又は収縮)に伴う過大な応力が局所的に発生してクラックが発生する。
このようなクラックの発生を抑制するため、支持基板のガス流出側端部、具体的には、各ガス流路の内壁面におけるガス排出側の端部、並びに、支持基板の長手方向におけるガス排出側の端面に、支持基板より気孔率が小さいコーティング膜が形成される構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このコーティング膜の形成によって、外部空間内にある空気が支持基板のガス流出側端部の内部へ進入し難くなり、この結果、上記のクラックの発生が抑制され得る。
特開2012−9226号公報
ところで、上記のようにコーティング膜が形成される構成において、燃料電池の稼働環境によってはコーティング膜にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係る問題に対処するために種々の実験等を重ねた。その結果、本発明者は、係るクラックの発生は、「コーティング膜の表面粗さ」と強い相関があることを見出した。
本発明の目的は、ガス流路が内部に形成された多孔質の支持基板のガス流出側端部にコーティング膜が形成された燃料電池であって、コーティング膜にクラックが発生する事態を抑制し得るものを提供することにある。
本発明に係る燃料電池は、上記と同様の支持基板と発電素子部とを備える。各ガス流路の前記長手方向における一端側及び他端側がそれぞれ、ガス流入側及びガス排出側に対応する。この燃料電池では、少なくとも、前記各ガス流路の内壁面における前記ガス排出側の端部、及び、前記支持基板の前記長手方向における前記ガス排出側の端面に、前記支持基板より気孔率が小さいコーティング膜が形成されている。
この燃料電池の特徴は、前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmであることにある。ここにおいて、前記支持基板の気孔率は、20〜60%であり、前記コーティング膜の気孔率は、0〜10%であることが好適である。
本発明者は、前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmである場合に、そうでない場合と比べて、同部分においてクラックが発生し難くなることを見出した。更には、前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の厚さが、3〜45μmである場合に、そうでない場合と比べて、同部分においてクラックがより一層発生し難くなることも見出した。これらの点の詳細については後述する。
本発明の第1実施形態に係る燃料電池セルを示す斜視図である。 図1に示す複数の燃料電池セルを含むスタック構造体の全体の斜視図である。 図2に示した燃料ガスマニホールドの全体の斜視図である。 図2に示したスタック構造体の内部におけるガスの流れを示す断面図である。 図2に示したスタック構造体に対して燃料ガス及び空気が供給・排出される様子を示した斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る燃料電池セルを示す斜視図である。 図6に示す燃料電池セルの7−7線に対応する断面図である。 図6に示す支持基板の凹部に埋設された燃料極及びインターコネクタの状態を示した平面図である。 図6に示す燃料電池セルの作動状態を説明するための図である。 図6に示す燃料電池セルの作動状態における電流の流れを説明するための図である。 図6に示す支持基板を示す斜視図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第1段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第2段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第3段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第4段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第5段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第6段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第7段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池の製造過程における第8段階における図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池セルの第1変形例の図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池セルの第2変形例の図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池セルの第3変形例の図7に対応する断面図である。 図6に示す燃料電池セルの第4変形例の図8に対応する断面図である。 図6に示す複数の燃料電池セルを含むスタック構造体の全体の斜視図である。 図24に示した燃料ガスマニホールドの全体の斜視図である。 図24に示したスタック構造体の内部におけるガスの流れを示す断面図である。 図24に示したスタック構造体に対して燃料ガス及び空気が供給・排出される様子を示した斜視図である。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセル100では、平板状の多孔質の導電性支持体11の一方の主面に、多孔質の燃料極12、緻密な固体電解質13、多孔質の導電性セラミックスからなる空気極14が順次積層されている。また、空気極14と反対側の導電性支持体11の主面には、中間膜15、ランタン−クロム系酸化物材料からなるインターコネクタ16、P型半導体材料からなる集電膜17が順次形成されている。
セル100は、第1長手方向(x軸方向)を有する平板状を呈し、セル100の長さL1(第1長手方向の長さ)は50〜500mmであり、幅L2は10〜100mmであり、厚さL3は1〜5mmである(L1>L2)。セル100の第1長手方向(x軸方向)の一端部の側面の形状(長さL2、幅L3の長円形状、L2>L3)は、第2長手方向(y軸方向)を有する。
また、導電性支持体11の内部には、互いに平行な複数のガス流路18が長手方向(x軸方向)に沿って幅方向(y方向)に間隔をおいて形成されている。各ガス流路18の断面形状は直径Dが0.5〜3mmの円形である。隣り合うガス流路18、18の幅方向における間隔(ピッチ)Pは1〜5mmである。なお、各ガス流路18の断面形状は、楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であってもよい。
セル100は、幅方向(長手方向と直角の方向)の両側にそれぞれ設けられた側端部B,Bと、側端部B,Bを連結する一対の平坦部A,Aと、から構成されている。一対の平坦部A,Aは平坦であり、ほぼ平行である。平坦部A,Aのうちの一方では、導電性支持体11の一方の主面上に燃料極12、固体電解質13、空気極14が順に形成され、平坦部A,Aのうちの他方では、導電性支持体11の他方の主面上に中間膜15、インターコネクタ16、集電膜17が順に形成されている。
導電性支持体11の幅は、10〜100mmであり、厚さは、1〜5mmであることが望ましい。導電性支持体11のアスペクト比(幅/厚さ)は、5〜100である。なお、導電性支持体11の形状は、「薄板状」と表現されているが、幅方向の寸法及び厚さ方向の寸法の組み合わせに応じて、「楕円柱状」、或いは、「扁平状」とも表現され得る。また、導電性支持体11の形状は、円筒状であってもよい。
この導電性支持体11は、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm及びPrから選ばれた1種以上からなる希土類元素酸化物とNi及び/又はNiOとを主成分とする材質から構成されることが望ましい。なお、Niに加えて、FeやCu等が含まれていてもよい。
また、導電性支持体11は、「NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)」と、「絶縁性セラミックス」とを含んで構成される、と記載することもできる。絶縁性セラミックスとしては、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y(イットリア)、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」等が使用され得る。導電性支持体11の導電率は、800℃にて、10〜2000S/cmである。導電性支持体11の気孔率は、20〜60%である。
導電性支持体11とインターコネクタ16の間に形成される中間膜15は、Ni及び/又はNiOと希土類元素を含有するZrOを主成分とする材質、または希土類酸化物(例えばY)から構成され得る。中間膜15中のNi化合物のNi換算量は、全量中35〜80体積%であることが望ましく、更には、50〜70体積%であることがより望ましい。Ni換算量が35体積%以上であることで、Niによる導電パスが増加して、中間膜15の伝導度が向上する。この結果、中間膜15に起因する電圧降下が小さくなる。また、Ni換算量が80体積%以下であることで、導電性支持体11とインターコネクタ16の間の熱膨張係数差を小さくすることができ、両者の界面における亀裂の発生が抑制され得る。
また、電圧降下の減少という観点から、中間膜15の厚さは20μm以下であることが望ましく、更には、10μm以下であることが望ましい。
中希土類元素や重希土類元素の酸化物の熱膨張係数は、固体電解質13における「Yを含有するZrO」の熱膨張係数より小さい。従って、Niとのサーメット材としての導電性支持体11の熱膨張係数を固体電解質13の熱膨張係数に近づけることができる。この結果、固体電解質13のクラックや、固体電解質13の燃料極12からの剥離が抑制され得る。更には、熱膨張係数が小さい重希土類元素酸化物を用いることで、導電性支持体11中のNiを多くでき、導電性支持体11の電気伝導度を上げることができる。この観点からも、重希土類元素酸化物を用いることが望ましい。
なお、希土類元素酸化物の熱膨張係数の総和が固体電解質13の熱膨張係数未満であれば、軽希土類元素のLa、Ce、Pr、Ndの酸化物は、中希土類元素、重希土類元素に加えて含有されていても問題はない。
また、精製途中の安価な複数の希土類元素を含む複合希土類元素酸化物を用いることにより、原料コストを大幅に下げることができる。この場合も、複合希土類元素酸化物の熱膨張係数が固体電解質13の熱膨張係数未満であることが望ましい。
また、インターコネクタ16表面にP型半導体、例えば、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる集電膜17を設けることが望ましい。インターコネクタ16表面に直接金属の集電部材を配して集電すると、非オーム接触に起因して、電位降下が大きくなる。オーム接触を確保して電位降下を少なくするためには、インターコネクタ16にP型半導体からなる集電膜17を接続する必要がある。P型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を用いることが望ましい。遷移金属ペロブスカイト型酸化物としては、ランタン−マンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物、又は、それらの複合酸化物の少なくとも一種を用いることが望ましい。
導電性支持体11の主面に設けられた燃料極12は、Niと希土類元素が固溶したZrOとから構成される。この燃料極12の厚さは1〜30μmであることが望ましい。燃料極12の厚さが1μm以上であることで、燃料極12としての3層界面が十分に形成される。また、燃料極12の厚さが30μm以下であることで、固体電解質13との熱膨張差による界面剥離が防止され得る。
この燃料極12の主面に設けられた固体電解質13は、イットリア(Y)を含有したイットリア安定化ジルコニアYSZ(緻密体なセラミックス)から構成される。固体電解質13の厚さは、0.5〜100μmであることが望ましい。固体電解質13の厚さが0.5μm以上であることで、ガス透過が防止され得る。また、固体電解質13の厚さが100μm以下であることで、抵抗成分の増加が抑制され得る。
また、空気極14は、遷移金属ペロブスカイト型酸化物のランタン−マンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物、又は、それらの複合酸化物の少なくとも一種の多孔質の導電性セラミックスから構成されている。空気極14は、800℃程度の中温域での電気伝導性が高いという観点から、(La,Sr)(Fe,Co)O系が望ましい。空気極14の厚さは、集電性という観点から、10〜100μmであることが望ましい。
インターコネクタ16は、導電性支持体11の内外間の燃料ガス、酸素含有ガスの漏出を防止するため緻密体とされている。また、インターコネクタ16の内外面は、燃料ガス、酸素含有ガスとそれぞれ接触するため、耐還元性、耐酸化性を有している。
このインターコネクタ16の厚さは、30〜200μmであることが望ましい。インターコネクタ16の厚さが30μm以上であることで、ガス透過が完全に防止され得、200μm以下であることで、抵抗成分の増加が抑制され得る。
このインターコネクタ16の端部と固体電解質13の端部との間には、シール性を向上すべく、例えば、NiとZrO、或いはYからなる接合層を介在させても良い。
このセル100では、緻密な固体電解質13は、導電性支持体11の一方の主面上のみならず、導電性支持体11の側端部を介して他方の主面上のインターコネクタ16の側端面まで形成されている。即ち、固体電解質13は、両側の側端部B,Bを形成するように、導電性支持体11の他方の主面まで延設され、インターコネクタ16と接合している。なお、側端部B,B(導電性支持体11の側端部)は、発電に伴う加熱や冷却に伴い発生する熱応力を緩和するため、幅方向において外側に突出する曲面形状となっていることが望ましい。
次に、以上説明したようなセル100の製法について説明する。先ず、La、Ce、Pr、Ndの元素を除く希土類元素酸化物粉末とNi及び/又はNiO粉末が混合される。この混合粉末に、有機バインダーと、溶媒とを混合した導電性支持体材料が押し出し成形されて、板状の導電性支持体成形体が作製される。この成形体が乾燥、脱脂される。
また、希土類元素(Y)が固溶したZrO粉末と有機バインダーと溶媒を混合した固体電解質材料を用いてシート状の固体電解質成形体が作製される。
次に、Ni及び/又はNiO粉末と、希土類元素が固溶したZrO粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して作製された、燃料極12となるスラリーが、前記固体電解質成形体の一方側に塗布される。これにより、固体電解質成形体の一方側の面に燃料極成形体が形成される。
次に、導電性支持体成形体に、前記シート状の固体電解質成形体と燃料極成形体の積層体が、燃料極成形体が導電性支持体成形体に当接するように、導電性支持体成形体に巻き付けられる。
次に、この積層成形体の側端部B,Bを形成する位置の固体電解質成形体上に、上記のシート状の固体電解質成形体が更に数層積層され、乾燥される。また、固体電解質13となるスラリーが固体電解質成形体上にスクリーン印刷されてもよい。なお、このとき脱脂が行われてもよい。
次に、ランタン−クロム系酸化物粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したインターコネクタ材料を用いて、シート状のインターコネクタ成形体が作製される。
また、Ni及び/又はNiO粉末と、希土類元素が固溶したZrO粉と、有機バインダーと、溶媒を混合したスラリーを用いて、シート状の中間膜成形体が作製される。
次に、インターコネクタ成形体と中間膜成形体とが積層される。この積層体の中間膜成形体側が、露出した導電性支持体成形体側に当接するように、この積層体が導電性支持体成形体に積層される。
これにより、導電性支持体成形体の一方主面に、燃料極成形体、固体電解質成形体が順次積層されるとともに、他方主面に中間膜成形体、インターコネクタ成形体が積層された積層成形体が作製される。なお、各成形体は、ドクターブレードによるシート成形、印刷、スラリーディップ、並びにスプレーによる吹き付けなどにより作製され得る。また、各成形体は、これらの組み合わせにより作製され得る。なお、この状態の支持体成形体のガス流出側端部には、後述するコーティング膜500(図4を参照)の成形膜も、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、積層成形体が脱脂処理され、酸素含有雰囲気中で1300〜1600℃で同時焼成される。
次に、P型半導体である遷移金属ペロブスカイト型酸化物粉末と、溶媒を混合して、ペーストが作製される。前記積層体がこのペースト中に浸漬される。そして、固体電解質13、インターコネクタ16の表面に、空気極成形体、集電膜成形体が、それぞれディッピング、或いは直接のスプレー塗布により形成される。これらの成形体が1000〜1300℃で焼き付けられることにより、本発明に係る燃料電池が作製される。
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、導電性支持体11、燃料極12、中間膜15中のNi成分が、NiOとなっている。従って、これらの導電性を獲得するため、その後、導電性支持体11側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
(スタック構造体の一例)
次に、上述した複数のセル100を用いたスタック構造体の一例について図2〜図5を参照しながら説明する。図2に示すように、このスタック構造体は、多数のセル100と、多数のセル100のそれぞれに燃料ガスを供給するための燃料ガスのマニホールド200と、を備えている。マニホールド200の全体は、ステンレス鋼等の材料で構成されている。
マニホールド200の天板(換言すれば、ガスタンクの天板(平板))は、多数のセル100を支持するための支持板210を兼ねている。また、マニホールド200には、外部からマニホールド200の内部空間に燃料ガスを導入するための導入通路220が設けられている。各セル100が支持板210の表面から第1長手方向(x軸方向)に沿ってそれぞれ突出し且つ複数のセル100がスタック状に整列するように、各セル100の第1長手方向のガス流入側端部が支持板210に接合・支持されている。各セル100の第1長手方向のガス流出側端部は、自由端となっている。従って、このスタック構造は、「片持ちスタック構造」と表現することができる。
図3に示すように、支持板210(マニホールド200の天板)の表面には、マニホールド200の内部空間と連通する多数の挿入孔211が形成されている。各挿入孔211には、対応するセル100のガス流入側端部がそれぞれ挿入(遊嵌)される。
図4に示すように、挿入孔211とセル100のガス流入側端部との接合部のそれぞれにおいて、接合材300が、挿入孔211の内壁とセル100のガス流入側端部の外壁との間の隙間に充填される。これにより、各挿入孔211と対応するセル100のガス流入側端部とがそれぞれ接合・固定されている。接合材300としては、非晶質ガラス、結晶化ガラス等が使用され得る。各セル100のガス流路18のガス流入側端部は、マニホールド200の内部空間と連通している。
図4に示すように、隣接するセル100、100の間には、隣接するセル100、100の間(より詳細には、一方のセル100の燃料極12と他方のセル100の空気極14)を電気的に直列に接続するための集電部材400が介在している。集電部材400は、例えば、金属メッシュ等で構成される。
また、図4に示すように、各セル100のガス流出側端部(自由端部)には、導電性支持体11より気孔率が小さいコーティング膜500が形成されている。図4のZ部の拡大図に示すように、具体的には、コーティング膜500は、各ガス流路の内壁面におけるガス排出側の端部に形成された部分(以下、「流路内壁面コーティング膜」と呼ぶ)501と、セル100の長手方向におけるガス排出側の端面の全域に形成された部分(以下、「端面コーティング膜」と呼ぶ)502と、を含んで構成される。換言すれば、コーティング膜500は、少なくとも、各ガス流路18の内壁面におけるガス排出側の端部、並びに、導電性支持体11の長手方向におけるガス排出側の端面に形成されている。端面コーティング膜502は、各流路内壁面コーティング膜501と連続している。なお、図4に示す例では、コーティング膜500は、セル100の側面におけるガス排出側の端部にも形成されている。コーティング膜500のうちこの部分は、端面コーティング膜502と連続している。
コーティング膜500は、例えば、希土類元素を含むジルコニアから構成される。コーティング膜500は、固体電解質13と同じ材料(例えば、イットリア安定化ジルコニアYSZ)で構成されてもよいし、導電性支持体11と同じ材料で構成されてもよい。コーティング膜500は、外部空間から導電性支持体11への空気の進入を防止できる程度の緻密性を備えており、その気孔率は0〜10%である。コーティング膜500は、上述のように、導電性支持体11、燃料極12及び固体電解質13との共焼成によって形成されてもよいし、導電性支持体11、燃料極12及び固体電解質13の焼成後に、真空成膜プロセス法(蒸着法、CVD法(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)等)によって形成されてもよい。
以上、説明したスタック構造を稼働させる際には、図5に示すように、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素等)及び「酸素を含むガス(空気等)」を流通させる。導入通路220から導入された燃料ガスは、マニホールド200の内部空間へと移動し、その後、各挿入孔211を介して対応するセル100のガス流路18にそれぞれ導入される。各ガス流路18を通過した燃料ガスは、その後、各ガス流路18のガス流出側端部(自由端部)から外部に排出される。空気は、スタック構造の内部における隣接するセル100間の隙間に沿って、セル100の幅方向(y軸方向)に流される。
各ガス流路18のガス排出口から外部空間に排出された余剰のガスは、同ガス排出口の近傍にて、同外部空間内にある空気(酸素)と反応して燃焼させられる。ここで、各セル100のガス流出側端部(自由端部)にコーティング膜500が形成されていることによって、多孔質の導電性支持体11のガス流出側端部の内部に外部空間内にある空気が進入することが抑制され得る。この結果、同内部への空気の進入に起因して導電性支持体11のガス流出側端部にクラックが発生する事態の発生が抑制され得る。
上述した片持ちスタック構造は、例えば、以下の手順で組み立てられる。先ず、必要な枚数の完成したセル100、並びに、完成したマニホールド200が準備される。次いで、所定の治具等を用いて、複数のセル100がスタック状に整列・固定される。次に、複数のセル100がスタック状に整列・固定された状態が維持されながら、複数のセル100のそれぞれの一端部が、支持板210の対応する挿入孔211に一度に挿入される。次いで、接合材300用のペーストが、挿入孔211とセル100の一端部との接合部のそれぞれの隙間に充填される。
次に、上記のように充填されたペーストに熱処理が加えられる。これにより、ペーストが乾燥・固化されることによって、接合材300としての機能を発揮し、各セルのガス流入側端部が対応する挿入孔211(従って、支持板210)にそれぞれ接合・固定される。その後、前記所定の治具が複数のセル100から取り外されて、上述した片持ちスタック構造体が完成する。
(コーティング膜の表面粗さ)
一般に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)では、燃料極の導電性を獲得するため、SOFCを作動させる前に、焼成体であるSOFC(の燃料極)に対して高温下(例えば、800℃程度)にて還元ガスを供給する熱処理(以下、「還元処理」と呼ぶ。)を行って、燃料極を構成するNiOをNiへと還元する必要がある。即ち、SOFC(の燃料極)を非還元体から還元体に移行する必要がある。
なお、還元処理によって還元体となったSOFCを、その後において800℃程度から常温まで降温する過程において、400℃前後に降温されるまでSOFC(の燃料極)を還元雰囲気に曝し続けた場合、その後の常温下でもSOFC(の燃料極)が還元体に維持される。一方、還元処理によって還元体となったSOFCが400℃前後に降温されるまでにSOFC(の燃料極)が酸化雰囲気に曝された場合、燃料極が再酸化して、その後の常温下にてSOFC(の燃料極)が非還元体に維持され得る。即ち、SOFC(の燃料極)が還元体から非還元体へと戻り得る。更には、係る再酸化によってSOFC(の燃料極)が非還元体となっている状態でSOFCに対して800℃程度で還元処理を再び行うことにより、SOFC(の燃料極)は非還元体から還元体へと再び移行し得る。以上のように、焼成体である(製造後の)SOFCの状態は、その後の使用条件に応じて、還元体及び非還元体の何れの状態にもなり得る。
上記還元処理によって還元体となった上記第1実施形態に係る燃料電池(スタック構造体)が、通常の環境下で稼働される場合には、コーティング膜500にクラックが発生しない。しかしながら、燃料電池(スタック構造体)が熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、コーティング膜500(特に、流路内壁面コーティング膜501)にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、「コーティング膜500(流路内壁面コーティング膜501)の表面粗さ」と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Aについて説明する。
(試験A)
試験Aでは、上記第1実施形態に係る燃料電池について、導電性支持体11の材質、流路内壁面コーティング膜501の材質、及び、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さの組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、14種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。表面粗さとして、JIS
B 0601:2001で定義される「算術平均粗さRa」が採用された。表1に記載された表面粗さの値は、焼成体である上記第1実施形態の完成後、且つ、上記還元処理後の段階での値(N=10の平均値)である。表面粗さの測定は、ガス流路18の長手方向に沿って行われた。この測定に使用された表面粗さ計は、TAYLOR
HOBSON社製のForm TalySurf Plusである。触針部の曲率半径は2μmである。
各サンプル(図1に示す燃料電池)にて使用された導電性支持体11としては、材料の気孔率が20〜60%であり、厚さ、幅がそれぞれ、2.5mm、50mm(即ち、アスペクト比が20)であり、ガス流路18の断面形状が直径1.5mmの円形であり、隣接するガス流路18、18間のピッチPが5.0mmのものが使用された。各サンプルでは、上述と同様、前記積層成形体(導電性支持体成形体に、少なくとも燃料極成形体と固体電解質成形体とが積層された成形体)と、コーティング膜の成形体とが共焼成された。その後、各サンプルに対して還元処理が行われた。各サンプルにおいて、コーティング膜500(特に、流路内壁面コーティング膜501)の厚さは、5〜10μmであった。
「コーティング膜の表面粗さ」の調整は、導電性支持体11の表面粗さ、コーティング材料の平均粒径、スラリー粘度、ディップコーティング時の引き上げ速度等を調整することにより達成された。具体的には、支持体の表面粗さ(Ra)は0.25〜2.5μm、コーティング材料の平均粒径は0.3〜1.2μm、スラリー粘度は1〜10000mPa・s、引き上げ速度は0.1〜30mm/secの範囲内で調整された。焼成温度は、1300〜1600℃の範囲内で調整された。焼成時間は、1〜20時間の範囲内で調整された。還元処理温度は、800〜1000℃の範囲内で調整された。還元処理時間は、1〜10時間の範囲内で調整された。
なお、本試験(後述する試験Bでも同様)では、支持体(支持基板)の気孔率は、以下のように測定された。先ず、支持体(支持基板)の気孔内に樹脂が進入するようにその支持体(支持基板)に対して所謂「樹脂埋め」処理がなされた。その「樹脂埋め」処理された支持体(支持基板)の表面に対して機械研磨がなされた。機械研磨された表面の微構造を走査型電子顕微鏡を用いて観察して得られた画像に対して画像処理を行うことによって、気孔の部分(樹脂が進入している部分)と気孔でない部分(樹脂が進入していない部分)の面積がそれぞれ算出された。「全体の面積(気孔の部分の面積と気孔でない部分の面積の和)」に対する「気孔の部分の面積」の割合が支持体(支持基板)の「気孔率」とされた。
そして、上記還元処理後の段階(還元状態)における各サンプルについて、「燃料極12に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、流路内壁面コーティング膜501におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。
表1から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで5.2μmを超えると、理由は不明であるが、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し易い。一方、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで5.2μm以下であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。
また、上述のように、各サンプルにて形成されたコーティング膜500は、導電性支持体11、燃料極12、及び固体電解質13との共焼成によって形成されている。この場合、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さを算術平均粗さRaで0.13μm未満とすることはできなかった。以上より、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であると、そうでない場合と比べて、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し難い、ということができる。
ことが好ましい。
なお、本発明者は、通常の条件・環境下(例えば、常温から750℃まで4時間で上げた後に750℃から常温まで12時間で下げるパターン)にて上記第1実施形態が使用される場合、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲外であっても、コーティング膜500(流路内壁面コーティング膜501)にクラックが発生しないことを別途確認している。
以上の結果は、各ガス流路18の断面形状が円形の場合に対応するが、各ガス流路18の断面形状が楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。また、この結果は、導電性支持体のアスペクト比が20の場合に対応するが、導電性支持体のアスペクト比が5〜100の範囲内であれば、同じ結果が得られることが既に確認されている。また、コーティング膜500の表面粗さは、コーティング膜500の全域に亘って均一であることが望ましく、従って、コーティング膜500における流路内壁面コーティング膜501を除いた部分の表面粗さも、流路内壁面コーティング膜501と同様、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であることが望ましい。
(コーティング膜の厚さ)
また、本発明者は、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが0.13〜5.2μmである場合において、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1(図4のZ部の拡大図を参照)が3〜45μmであると、流路内壁面コーティング膜501においてクラックがより一層発生し難くなることも見出した。以下、このことを確認した試験Bについて説明する。
(試験B)
試験Bでは、上記第1実施形態に係る燃料電池について、導電性支持体11の材質、流路内壁面コーティング膜501の材質、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さ、及び、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表2に示すように、11種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。各サンプルの流路内壁面コーティング膜501の表面粗さは全て、0.3〜0.8μmの範囲内となっている。
各サンプルのその他の寸法等は、試験Aのものと同様である。「コーティング膜の厚さ」の調整は、コーティング膜の成形体(焼成前の状態)の膜厚の調整によって達成され得る。
そして、上記還元処理後の段階(還元状態)における各サンプルについて、試験Aで実行された熱サイクル試験より熱応力的に過酷な熱サイクル試験、即ち、「燃料極12に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで1時間で上げた後に750℃から常温まで2時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、流路内壁面コーティング膜501におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表2に示すとおりである。
表2から理解できるように、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲外では、理由は不明であるが、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し易い。一方、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲内であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。
以上の結果は、各ガス流路18の断面形状が円形の場合に対応するが、各ガス流路18の断面形状が楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。また、この結果は、導電性支持体のアスペクト比が20の場合に対応するが、導電性支持体のアスペクト比が5〜100の範囲内であれば、同じ結果が得られることが既に確認されている。また、コーティング膜500の厚さは、コーティング膜500の全域に亘って均一であることが望ましく、従って、コーティング膜500における流路内壁面コーティング膜501を除いた部分の厚さも、流路内壁面コーティング膜501と同様、3〜45μmの範囲内であることが望ましい。
以上、表1、表2の結果より、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であると、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し難く、更に、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲内にあると、前記クラックがより一層発生し難い、ということができる。
(第2実施形態)
図6は、本発明に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の第2実施形態を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。この点、導電性支持体の表面に「燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順に積層されてなる発電素子部」が1つのみ設けられたセルが複数枚積層された所謂「縦縞型」の構成が採用された上記第1実施形態と異なる。
この第2実施形態のSOFCの全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが5〜50cmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが1〜10cmの長方形である。このSOFCの全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図6に加えて、このSOFCの図6に示す7−7線に対応する部分断面図である図7を参照しながら、このSOFCの詳細について説明する。図7は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図7に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図11に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。各燃料ガス流路11の断面形状は直径Dが0.5〜3mmの円形である。隣り合う燃料ガス流路11、11の幅方向における間隔(ピッチ)Pは1〜5mmである。なお、各燃料ガス流路11の断面形状は、楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であってもよい。また、本例では、各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板10の気孔率は、20〜60%である。
支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」と、絶縁性セラミックスとを含んで構成され得る。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
また、絶縁性セラミックスとしては、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」が好適である。また、絶縁性セラミックスとして、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y(イットリア)が使用されてもよい。
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。これに対し、支持基板10は、Ni元素を含まない絶縁性セラミックス材料のみ、例えば、MgO−Y、MgO−MgAlで構成されてもよい。
支持基板10の幅は10〜100mmであり、厚さは、1〜5mmである。支持基板10のアスペクト比(幅/厚さ)は、5〜100である。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図7及び図8に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸化性イオン(酸素イオン)伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
なお、図7に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図7を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図7では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図7では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図7では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図7では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、説明した「横縞型」のSOFCに対して、図9に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極60) …(1)
+O2−→HO+2e
(於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図10に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図9に示すように、このSOFC全体から(具体的には、図9において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図6に示した「横縞型」のSOFCの製造方法の一例について図11〜図19を参照しながら簡単に説明する。図11〜図19において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図11に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図11に示す12−12線に対応する部分断面を表す図12〜図19を参照しながら説明を続ける。
図12に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図13に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図14に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図15に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図16に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図17に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。なお、図17には示していないが、この状態の支持基板の成形体10gのガス流出側端部には、後述するコーティング膜500(図26を参照)の成形膜も、ディッピング法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図6に示したSOFCにおいて空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図18に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図19に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図6に示したSOFCが得られる。以上、図6に示したSOFCの製造方法の一例について説明した。
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、支持基板10、及び燃料極20中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20の導電性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
上記第2実施形態では、図11等に示すように、支持基板10に形成された凹部12の平面形状(支持基板10の主面に垂直の方向からみた場合の形状)が、長方形になっているが、例えば、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であってもよい。
また、上記第2実施形態においては、各凹部12にはインターコネクタ30の全体が埋設されているが、インターコネクタ30の一部のみが各凹部12に埋設され、インターコネクタ30の残りの部分が凹部12の外に突出(即ち、支持基板10の主面から突出)していてもよい。
また、上記第2実施形態において、凹部12における底壁と側壁とのなす角度θが90°になっているが、図20に示すように、角度θが90〜135°となっていてもよい。また、上記第2実施形態においては、図21に示すように、凹部12における底壁と側壁とが交差する部分が半径Rの円弧状になっていて、凹部12の深さに対する半径Rの割合が0.01〜1となっていてもよい。
また、上記第2実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、図22に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。
また、上記第2実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。また、上記第2実施形態においては、支持基板10が平板状を呈しているが、円筒状を呈していても良い。
加えて、上記第2実施形態においては、図8に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(支持基板10の材料からなる長手方向に沿う2つの側壁と、燃料極集電部21の材料からなる幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みとなっている。この結果、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
これに対し、図23に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みであってもよい。これによれば、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の4つの側面の全てと底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触する。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との界面の面積をより一層大きくできる。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との間における電子伝導性をより一層高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力をより一層高めることができる。
図24〜図27はそれぞれ、上記第2実施形態に係るセル100を用いたスタック構造体が形成された場合における図2〜図5に対応する図である。図24〜図27において、図2〜図5に示した部材・構成と同じ或いは等価な部材・構成については図2〜図5にて使用した符号と同じ符号が付されている。
図26に示すように、このスタック構造体に使用された上記第2実施形態に係るセル100のガス流出側端部(自由端部)にも、上記第1実施形態に係るセル100と同様(図4を参照)、支持基板10より気孔率が小さいコーティング膜500が形成されている。このコーティング膜500は、少なくとも、各ガス流路11の内壁面におけるガス排出側の端部、並びに、支持基板10の長手方向におけるガス排出側の端面に形成されている。端面コーティング膜502は、各流路内壁面コーティング膜501と連続している。なお、図26に示す例では、コーティング膜500は、セル100の側面におけるガス排出側の端部にも形成されている。コーティング膜500のうちこの部分は、端面コーティング膜502と連続している。
このコーティング膜500は、例えば、希土類元素を含むジルコニアから構成される。このコーティング膜500は、固体電解質膜40と同じ材料(例えば、イットリア安定化ジルコニアYSZ)で構成されてもよいし、支持基板10と同じ材料で構成されてもよい。このコーティング膜500は、外部空間から支持基板10への空気の進入を防止できる程度の緻密性を備えており、その気孔率は0〜10%である。このコーティング膜500は、上述のように、支持基板10、燃料極20及び固体電解質膜40との共焼成によって形成されてもよいし、支持基板10、燃料極20及び固体電解質膜40の焼成後に、真空成膜プロセス法(蒸着法、CVD法(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)等)によって形成されてもよい。
(コーティング膜の表面粗さ)
上述した還元処理によって還元体となった上記第2実施形態に係る燃料電池(スタック構造体)も、上記第1実施形態に係る燃料電池と同様、通常の環境下で稼働される場合にはコーティング膜500にクラックが発生しない一方で、熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、コーティング膜500(特に、流路内壁面コーティング膜501)にクラックが発生する場合があった。本発明者は、上記第1実施形態と同様、上記第2実施形態においても、係るクラックの発生が、「コーティング膜500(流路内壁面コーティング膜501)の表面粗さ」と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Cについて説明する。
(試験C)
試験Cでは、試験Aと同様、上記第2実施形態に係る燃料電池について、支持基板10の材質、流路内壁面コーティング膜501の材質、及び、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さの組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表3に示すように、14種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。表面粗さの評価方法は、試験Aのときと同じである。
各サンプル(図6に示す燃料電池)にて使用された支持基板10としては、材料の気孔率が20〜60%であり、厚さ、幅がそれぞれ、2.5mm、50mm(即ち、アスペクト比が20)であり、ガス流路11の断面形状が直径1.5mmの円形であり、隣接するガス流路11、11間のピッチPが5.0mmのものが使用された。各サンプルでは、上述と同様、支持基板10、燃料極20、及び固体電解質膜40と、コーティング膜500とが共焼成された。その後、各サンプルに対して還元処理が行われた。各サンプルにおいて、コーティング膜500(特に、流路内壁面コーティング膜501)の厚さは、5〜10μmであった。「コーティング膜の表面粗さ」の調整は、試験Aのときと同様になされた。
そして、上記還元処理後の段階(還元状態)における各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、流路内壁面コーティング膜501におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表3に示すとおりである。
表3から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで5.2μmを超えると、理由は不明であるが、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し易い。一方、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで5.2μm以下であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。
また、上述のように、各サンプルにて形成されたコーティング膜500は、支持基板10、燃料極20、及び固体電解質膜40との共焼成によって形成されている。この場合、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さを算術平均粗さRaで0.13μm未満とすることはできなかった。以上より、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であると、そうでない場合と比べて、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し難い、ということができる。
ことが好ましい。
なお、本発明者は、通常の条件・環境下(例えば、常温から750℃まで4時間で上げた後に750℃から常温まで12時間で下げるパターン)にて上記第2実施形態が使用される場合、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲外であっても、コーティング膜500(流路内壁面コーティング膜501)にクラックが発生しないことを別途確認している。
以上の結果は、各ガス流路11の断面形状が円形の場合に対応するが、各ガス流路11の断面形状が楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。また、この結果は、導電性支持体のアスペクト比が20の場合に対応するが、導電性支持体のアスペクト比が5〜100の範囲内であれば、同じ結果が得られることが既に確認されている。また、コーティング膜500の表面粗さは、コーティング膜500の全域に亘って均一であることが望ましく、従って、コーティング膜500における流路内壁面コーティング膜501を除いた部分の表面粗さも、流路内壁面コーティング膜501と同様、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であることが望ましい。
(コーティング膜の厚さ)
また、本発明者は、上記第2実施形態に関し、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが0.13〜5.2μmである場合において、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1(図26のZ部の拡大図を参照)が3〜45μmであると、流路内壁面コーティング膜501においてクラックがより一層発生し難くなることも見出した。以下、このことを確認した試験Dについて説明する。
(試験D)
試験Dでは、上記第2実施形態に係る燃料電池について、支持基板10の材質、流路内壁面コーティング膜501の材質、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さ、及び、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表4に示すように、11種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。各サンプルの流路内壁面コーティング膜501の表面粗さは全て、0.3〜0.8μmの範囲内となっている。
各サンプルのその他の寸法等は、試験B、Cのものと同様である。「コーティング膜の厚さ」の調整は、コーティング膜の成形体(焼成前の状態)の膜厚の調整によって達成され得る。
そして、上記還元処理後の段階(還元状態)における各サンプルについて、試験Cで実行された熱サイクル試験より熱応力的に過酷な熱サイクル試験、即ち、「燃料極12に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで1時間上げた後に750℃から常温まで2時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、流路内壁面コーティング膜501におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表4に示すとおりである。
表4から理解できるように、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲外では、理由は不明であるが、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し易い。一方、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲内であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。
以上の結果は、各ガス流路11の断面形状が円形の場合に対応するが、各ガス流路11の断面形状が楕円形、長穴、四隅に円弧を有する四角形等であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。また、この結果は、導電性支持体のアスペクト比が20の場合に対応するが、導電性支持体のアスペクト比が5〜100の範囲内であれば、同じ結果が得られることが既に確認されている。また、コーティング膜500の厚さは、コーティング膜500の全域に亘って均一であることが望ましく、従って、コーティング膜500における流路内壁面コーティング膜501を除いた部分の厚さも、流路内壁面コーティング膜501と同様、3〜45μmの範囲内であることが望ましい。
以上、表3、表4の結果より、上記第2実施形態に関し、流路内壁面コーティング膜501の表面粗さが算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmの範囲内であると、流路内壁面コーティング膜501にクラックが発生し難く、更に、流路内壁面コーティング膜501の厚さT1が3〜45μmの範囲内にあると、前記クラックがより一層発生し難い、ということができる。
(第2実施形態特有の作用・効果)
上述した第2実施形態では、支持基板10の上下面に形成されている、燃料極20を埋設するための複数の凹部12のそれぞれが、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁を有している。換言すれば、支持基板10において各凹部12を囲む枠体がそれぞれ形成されている。従って、この構造体は、支持基板10が外力を受けた場合に変形し難い。
また、支持基板10の各凹部12内に燃料極20及びインターコネクタ30等の部材が隙間なく充填・埋設された状態で、支持基板10と前記埋設された部材とが共焼結される。従って、部材間の接合性が高く且つ信頼性の高い焼結体が得られる。
また、インターコネクタ30が、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bに埋設され、この結果、直方体状のインターコネクタ30の幅方向(y軸方向)に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。従って、燃料極集電部21の外側平面上に直方体状のインターコネクタ30が積層される(接触する)構成が採用される場合に比べて、燃料極20(集電部21)とインターコネクタ30との界面の面積を大きくできる。従って、燃料極20とインターコネクタ30との間における電子伝導性を高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記第2実施形態では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに、複数の発電素子部Aが設けられている。これにより、支持基板の片側面のみに複数の発電素子部が設けられる場合に比して、構造体中における発電素子部の数を多くでき、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記第2実施形態では、固体電解質膜40が、燃料極20の外側面、インターコネクタ30の外側面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、燃料極20の外側面とインターコネクタ30の外側面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
11…導電性支持体、12…燃料極、13…固体電解質、14…空気極、
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、21a、21b…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、500…コーティング膜、A…発電素子部

Claims (5)

  1. 長手方向を有する多孔質の支持基板であって1つ又は複数のガス流路が前記長手方向に沿って内部に形成された支持基板と、
    前記支持基板の主面に設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、
    を備えた焼成体である燃料電池であって、
    前記各ガス流路の前記長手方向における一端側及び他端側がそれぞれ、ガス流入側及びガス排出側に対応し、
    少なくとも、前記各ガス流路の内壁面における前記ガス排出側の端部、及び、前記支持基板の前記長手方向における前記ガス排出側の端面に、前記支持基板より気孔率が小さいコーティング膜が形成されており、
    前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmである、燃料電池。
  2. 請求項1に記載の燃料電池において、
    前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の厚さが、3〜45μmである、燃料電池。
  3. 長手方向を有する多孔質の支持基板であって1つ又は複数のガス流路が前記長手方向に沿って内部に形成された支持基板と、
    前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順に積層されてなる複数の発電素子部と、
    1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
    を備えた焼成体である燃料電池であって、
    前記支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる底壁と全周に亘って前記支持基板の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する凹部がそれぞれ形成され、
    前記各凹部に、対応する前記発電素子部の燃料極がそれぞれ埋設され、
    前記各ガス流路の前記長手方向における一端側及び他端側がそれぞれ、ガス流入側及びガス排出側に対応し、
    少なくとも、前記各ガス流路の内壁面における前記ガス排出側の端部、及び、前記支持基板の前記長手方向における前記ガス排出側の端面に、前記支持基板より気孔率が小さいコーティング膜が形成されており、
    前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.13〜5.2μmである、燃料電池。
  4. 請求項3に記載の燃料電池において、
    前記コーティング膜における前記各ガス流路の内壁面に形成された部分の厚さが、3〜45μmである、燃料電池。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の燃料電池において、
    前記支持基板の気孔率は、20〜60%であり、前記コーティング膜の気孔率は、0〜10%である、燃料電池。
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