JP4522514B2 - 耐薬品性難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、剛性、耐薬品性、加工流動性、難燃性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジエン系ゴム成分にアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、スチレン等の芳香族ビニル化合物をグラフト重合してなるいわゆるABS樹脂は、耐衝撃性、剛性、成形加工性、外観に優れていることから、OA機器や家電製品向けの用途に幅広く用いられている。しかしながら、サニタリー分野に用いられるABS樹脂は、トイレ用洗剤等の家庭用洗剤、化粧品などのアルコール類、界面活性剤等の薬品に接触する機会が多い。近年では、清掃の簡便さから、より洗浄力が高く樹脂への影響も大きい洗剤が使用されることから、こうした薬品が部材に付着することで割れが発生し商品価値を損なう場合があり、このため高い耐薬品性が要求されている。また、ヒーターなどの電機部品を組み込んだ洋式便座などのサニタリー製品が急速に普及しており、こうした用途には、耐薬品性、剛性、成型品外観に加え、難燃性にも優れた樹脂が要求されている。
【0003】
本発明に関わる先行技術としては、特開平5−339462号公報にポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムを使用した熱可塑性樹脂組成物が開示されているが、かかる組成物中における複合ゴムについて耐薬品性に対する効果に関する記載はない。また、特開平8−199028号公報には、ABS樹脂とポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムとのブレンドによる耐薬品性の優れた樹脂組成物が開示されているが、難燃性でない上、樹脂に対する影響が高い家庭用洗剤に対しては耐薬品性が不十分であった。さらに、特開平8−311291号公報には、ABS樹脂とポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムとハロゲン系有機化合物のブレンドによる難燃性と耐薬品性の優れた樹脂組成物が開示されており、ある程度の難燃性、耐薬品性バランスを達成しているものの、樹脂に対する影響が高い家庭用洗剤に対しては耐薬品性が不十分であり、しかも、特定の難燃剤において難燃性、耐薬品性バランスが向上する効果についての記載はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐衝撃性、剛性、成型品外観のバランスに優れ、中性、強アルカリ性や強酸性のトイレ用洗剤や界面活性剤を主な洗浄成分とする家庭用洗剤をはじめとする種々の薬品に対して耐薬品性、難燃性に優れ、広範囲に使用できる樹脂を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題に対して鋭意検討の結果、発明者らはアクリロニトリルの含有量が特定の範囲のABS樹脂および、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムにアクリロニトリル、スチレン等のビニル系化合物がグラフト重合して形成された共重合体および特定のハロゲン系難燃剤を用いて、耐衝撃性、剛性、成型品外観、耐薬品性、難燃性バランスに優れた樹脂組成物が得られることを見いだし本発明に至った。特定範囲の添加量における複合ゴムにビニル化合物をグラフトした共重合体と特定の難燃剤の組み合わせによる耐薬品性、難燃性バランスの向上のメカニズムは、特定の難燃剤におけるカルボニル基由来の極性基および複合ゴムグラフト共重合体の特定の配合量に基づく粒子間距離および分散形態が耐薬品性を向上させているものと推定している。
【0006】
すなわち本発明は、ゴム状重合体に2種以上のビニル化合物をグラフト重合したグラフト重合体を含むゴム強化スチレン系樹脂(A)5〜70重量%、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有し、その重量平均粒子径が0.05μm〜0.3μmである複合ゴムに1種または2種以上のビニル系化合物がグラフト重合して形成された共重合体を含むグラフト共重合体(B)30〜95重量%の合計100重量部に対して、下記一般式を有するハロゲン系難燃剤1〜30重量部からなり、かつゴム強化スチレン系樹脂(A)中のビニル化合物中におけるシアン化ビニル化合物の含有量が20〜80重量%である熱可塑性樹脂組成物である。
【0007】
【化3】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する
本発明におけるゴム強化スチレン系樹脂(A)とは、ゴム状重合体に2種以上のビニル化合物をグラフト共重合するグラフト共重合体を含む樹脂で、ビニル化合物中のシアン化ビニル化合物の割合が20〜80重量%であるゴム強化スチレン系樹脂である。
【0009】
ゴム強化スチレン系樹脂(A)におけるゴム状重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば用いることができる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンージエン三元共重合ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、シリコンゴム等のブロック共重合体およびそれらの水素添加物等を使用することができる。これらの重合体の中で、好ましくは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。但し、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムは含まない。ゴム強化スチレン系樹脂中のゴム状重合体の割合は、1〜18重量%の範囲で用いられるが、必要とする機械的強度、剛性、成形加工性に応じて決められる。好ましくは、3〜15重量%であり、より好ましくは10〜15重量%である。
【0010】
ゴム状重合体にグラフト共重合させるビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有化合物が用いられるが、少なくとも1種類はシアン化ビニル化合物である。
【0011】
好ましい組み合わせとしては、シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物であり、さらに好ましくは、シアン化ビニル系化合物としてアクリロニトリル、シアン化ビニル化合物以外のビニル化合物として、スチレン、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。シアン化ビニル化合物以外のビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ビニル化合物中におけるシアン化ビニル化合物の割合は、20〜80重量%である。20重量%未満の場合は、耐薬品性、剛性が十分でなく、80重量%を越える場合は加工性が低下する。好ましくは20〜50重量%であり、さらに好ましくは、25〜45重量%である。
【0012】
グラフト共重合体の製造過程で生成するゴム状重合体にグラフトした成分の割合は、重合反応により生成した重合体をアセトンに溶解し不溶分を遠心分離器で分離除去することによって測定することができる。アセトンに溶解する成分は、重合反応した共重合体のうちグラフト反応しなかった成分(非グラフト成分)であり、アセトン不溶分からゴム状重合体の量を差し引いた値がグラフト成分の値として定義される。グラフト成分の割合として好ましくは、ゴム状重合体を100重量部として、10〜80重量部であり、より好ましくは、20〜60重量部である。
【0013】
上記グラフト共重合体の製造方法としては、特に限定はされないが、乳化重合で製造されたゴム状重合体ラテックスにビニル化合物をグラフト重合させる乳化グラフト重合方式、連続式、バッチ式、セミバッチ式いずれも可能である。
ゴム強化スチレン系樹脂(A)中のグラフト重合体の割合は、好ましくは1〜50重量%である。1重量%未満の場合は、耐衝撃性が不十分であり、50重量%を越える場合は、剛性が不十分である。より好ましくは、5〜20重量%さらに好ましくは、10〜20重量%である。
【0014】
本発明で用いるゴム強化スチレン系樹脂(A)は、グラフト重合体を製造する過程で生成する、ゴム状重合体にグラフトしていない成分を含んでもよい。ゴム強化スチレン系樹脂(A)の製造方法は通常の方法、例えば、乳化重合により、グラフト重合体とグラフト重合しないビニル共重合体を同時に作り、そのゴム強化スチレン系樹脂ラテックスから凝固剤を用いて固形分を凝固させる方法、また乳化重合によりゴム状重合体の割合の高い、グラフト重合体とビニル共重合体の混合物(以下GRCと略することがある)のラテックスを製造し、上記と同様に凝固剤を用いて固形分を凝固し、別に塊状重合、乳化重合や懸濁重合等で製造したビニル共重合体とともに配合して目的のゴム含有量にする方法もとられる。この場合のビニル共重合体は、非晶性、結晶性の限定はないが、好ましくは上記芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを少なくとも1種類含むものが好ましい。
【0015】
本発明のゴム強化スチレン系樹脂(A)の含有量は、5〜70重量%である。5重量%未満の場合は、耐衝撃性が不十分であり、70重量%を越える場合は、耐薬品性が不十分である。好ましくは、20〜70重量%であり、さらに好ましくは40〜65重量%である。
本発明に用いられる重合体(B)とは、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した複合ゴムに1種または、2種以上のビニル系化合物がグラフト重合して形成されたグラフト共重合体である。
【0016】
複合ゴム中のポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の割合は、好ましくはポリオルガノシロキサンゴム成分10〜90重量%とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分90〜10重量%(合計で100重量%)である。
【0017】
重合体(B)中のビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヒキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
複合ゴムの成分であるポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムは実質上分離できない構造を有しており、好ましい重量平均粒子径は0.05〜0.6μmである。より好ましくは、0.05〜0.3μm、さらに好ましくは、0.05〜0.1μmである。こうした構造を有する複合ゴムの製造は、例えば特開昭64−79257号、特開平1−190746号明細書で記載された方法を用いることができる。
【0019】
本発明で用いるグラフト共重合体(B)、製造過程で生成する、複合ゴム成分にグラフトしていない成分を含んでもよい。グラフト共重合体(B)中の製造過程で生成する複合ゴムにグラフトした成分の割合は、重合反応により生成した重合体をアセトンに溶解し不溶分を遠心分離器で分離除去することによって測定することができる。アセトンに溶解する成分は、重合反応した共重合体のうちグラフト反応しなかった成分(非グラフト成分)であり、アセトン不溶分から複合ゴムの量を差し引いた値がグラフト成分の値として定義される。グラフト成分の割合として好ましくは、複合ゴム成分を100重量部として、5〜150重量部であり、より好ましくは、10〜120重量部である。
【0020】
本発明のグラフト共重合体(B)の含有量は、30〜95重量%である。30重量%未満の場合は、耐薬品性が不十分であり、95重量%を越える場合は、耐衝撃性が不十分である。好ましくは、30〜80重量%であり、さらに好ましくは35〜60重量%である。
本発明のハロゲン系難燃剤(C)は下記一般式 (1)の構造を有するハロゲン系難燃剤であり、特に好ましいのは下記一般式(2)のハロゲン系難燃剤である。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
ハロゲン系難燃剤(C)の含有量は、 必要な難燃性のレベルに応じて決められるが、(A)+ (B)の合計100重量部に対して、0.1〜40重量部である。0.1重量部未満では必要な難燃効果および耐薬品性が発揮されない。また40重量部を超えると 樹脂の機械的強度を低下させる。好ましくは0.5〜30重量部の範囲であり、特に好ましい範囲としては5〜 25重量部である。
また、難燃効果を高める為に難燃助剤を併用することもできる。好ましい難燃助剤は元素周期律表に おけるVBに属する元素を含む化合物および酸化物で具体的には、窒素含有化合物、リン含有化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマス。また、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物も効果的である。この中でも特に好ましくは、酸化アンチモンであり、具体 的には三酸化アンチモン、五酸化アンチモンがあげられる。これらの難燃助剤は樹脂中への分散を改善する目的および、樹脂の熱的安定性を改善する目的で表面処理を施されているものを用いてもよい。難燃助剤の含有量は、好ましくは0.5〜 20重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、樹脂の改質を行う目的で、必要に応じて通常の添加剤、すなわち、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化チタン、表面改質剤、分散剤、可塑剤、安定剤、抗菌剤、抗カビ剤、発泡剤、木粉などを含有することができる。
また、上記のハロゲン系難燃剤(C)と併用して他の難燃剤を含有しても良い。難燃剤としては、リン系化合物やハロゲン系有機化合物の他、メラミン等の窒素含有有機化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物、また、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、カーボンファイバー、グラスファイバー、などの繊維、膨張黒鉛、シリカ、シリカ系ガラス溶融物などが用いられる。
【0025】
リン系化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルポスフェートなどのリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、または赤リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸などの無機系リン化合物、または一般式
【化6】
で表される縮合タイプのリン酸エステル化合物があげられる。
【0026】
これらのリン系化合物は、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
ハロゲン系有機化合物としては、例えば、ヘキサクロロペンタジエン、ヘキサブロモジフェニル、オクタブロモジフェニルオキシド、トリブロモフェノキシメタン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキシド、オクタブロモジフェニルオキシド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタルイミド、ヒキサブロモブテン、トリクロロテトラブロモフェニル−トリフォスフェート、ヘキサブロモシクロドデカンのほか、下記一般式の難燃剤がある。
【0027】
【化7】
【0028】
本発明の樹脂組成物は、耐薬品性をさらに高めるために他の重合体を適宜ブレンドすることができる。例えば、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル、一酸化炭素を含んでなる三元共重合体およびハードセグメントが芳香族ポリエステルであり、かつソフトセグメントが脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリラクトンのいずれかもしくは混合物であるポリエステルエラストマーなどが挙げられる。
【0029】
エチレン、(メタ)アクリル酸エステル、一酸化炭素を含んでなる三元共重合体の(メタ)アクリル酸エステルのアクリル基としては直鎖状でも分岐状でもよく好ましい炭素数としては、1〜18である。アクリル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等があげられ、炭素数2〜8がより好ましい。三元共重合体の組成比として好ましくは、エチレンが10〜85重量%、(メタ)アクリル酸エステルがエチレンが10〜85重量%、(メタ)アクリル酸エステルが10〜50重量%、一酸化炭素が5〜40重量%であり、より好ましくは、エチレンが40〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステルが15〜40重量%、一酸化炭素が5〜35重量%である。こうした三元共重合体は、三井デュポンポリケミカルからエルバロイという商標で入手が可能である。
【0030】
ポリエステルエラストマー中の芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレ ンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙 げられる。好ましくは、ポリブチレンテレフタレートである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラ メチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、 ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられ、これらの 一種または二種以上を用いることができる。脂肪族ポリラクトンとしては、ポリε−カ プロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラ クトン等が挙げられ、これらの一種または二種以上を いることができる。ポリエステルエラストマー中におけ るハードセグメントとソフトセグメントの構成比は、好ましくは、ハ ードセグメントが20〜70重量%、より好ましくは30〜 60重量%、ソフトセグメントが好ましくは30〜80重量%、より好 ましくは40〜70重量%である。これらの好ましい含有量は、本発明における樹脂組成物を100重量部として、0.1〜10重量部である。より好ましくは、0.5〜7重量部であり、さらに好ましくは1〜5重量部である。
【0031】
さらに、本発明の樹脂組成物は、他のポリマーを適宜ブレンドすることができる。例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、PMMA、ポリアミド系エラストマー、ASグラフトポリエチレン、ASグラフトポリプロピレン等があげられる。
【0032】
本発明における樹脂組成物の製造方法については、特に限定されず、通常の方法、例えば、押出混練によるメルトブレンド等により製造することができる。
本発明の組成物は、射出成形、シート押し出し成形、真空成形、圧空成形、異形押し出し成形、ブロー成形、発砲成形、射出プレス成形、ガス注入成形などにより成形することができる。
本発明の組成物を成形した成形体は、OA、家電分野、電気・電子分野、雑貨、サニタリー分野、自動車分野などのハウジング、パーツ、シャーシなどに使用可能であり、特に好ましくは、サニタリー分野における、便座、化粧パネル等の水周りの樹脂部品として使用が可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。(以下「部」というのは「重量部」を意味するものとする。)
実施例および比較例に用いた成分を以下に説明する。
(ゴム強化樹脂A)
(ゴム強化樹脂(A−1)の製造)
ポリブタジエンゴムラテックス(CN WOOD(株)社製 MODEL−6000型によって測定した重量平均粒子径0.3μm)40部に、脱イオン水100部、ロジン酸カリウム1.5部を加え、気相部を窒素置換した後、70℃に昇温する。
【0034】
続いて、アクリロニトリル15部、スチレンを45部、ターシャリードデシルメルカプタン0.6部、クメンハイドロパーオキシド0.1部よりなる単量体混合液、脱イオン水50部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、硫酸第一鉄0.004部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04部を溶解してなる水溶液を7時間にわたり添加し、70℃の重合温度で反応を完結させる。
【0035】
このようにして得られるABSラテックスに、酸化防止剤を添加した後、硫酸アルミニウムをポリマーに対し1.0部加えて凝固させ、更に、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させGRCを得る。
一方、アクリロニトリル、スチレンを溶媒としてエチルベンゼンを用い、重合反応器に上記混合液を連続的に添加し、重合系の温度を120〜130℃にコントロールして重合反応を行う。その後、未反応のモノマーを真空下にて除去し、共重合体の固体粉末を得る。共重合体中のアクリロニトリルは25重量%、スチレンが75重量%である。
【0036】
次に、上記GRCを25重量部および共重合体75重量部の割合でブレンドして2軸押出機にて造粒しゴム強化樹脂(A−1)を得る。
ゴム強化樹脂A−1中のグラフト重合体におけるグラフト成分の割合は、ポリブタジエン成分100重量部に対して45重量部であり、ゴム強化樹脂中(A−1)の成分は、FT−IRを用いた組成分析でブタジエン成分が10重量%、アクリロニトリル成分が22.5重量%、スチレン成分が67.5重量%である。ゴム強化樹脂(A−1)のゴム状重合体にグラフトしていない成分中のアクリロニトリル含有量は、25重量%であり、メチルエチルケトン中で測定した極限粘度(メチルエチルケトン100ml中に共重合体を0.5g溶解した溶液、30℃)は0.52である。
【0037】
(ゴム強化樹脂(A−2)の製造)
GRCの製造でアクリロニトリル20部、スチレン40部とし、共重合の製造でアクリロニトリルを35重量%、スチレンが65重量%とする以外は、ゴム強化樹脂(A−1)と同様にしてゴム強化樹脂(A−2)を得る。
ゴム強化樹脂A−2中のグラフト重合体におけるグラフト成分の割合は、ポリブタジエン成分100重量部に対して50重量部であり、ゴム強化樹脂中A−2の成分は、FT−IRを用いた組成分析でブタジエン成分が10重量%、アクリロニトリル成分が31重量%、スチレン成分が59重量%である。ゴム強化樹脂(A−2)のゴム状重合体にグラフトしていない成分中のアクリロニトリル含有量は、33重量%であり、メチルエチルケトン中で測定した極限粘度(メチルエチルケトン100ml中に共重合体を0.5g溶解した溶液、30℃)は0.46である。
【0038】
(ゴム強化樹脂(A−3)の製造)
GRCの製造でアクリロニトリル25部、スチレン35部とし、共重合の製造でアクリロニトリルを40重量%、スチレンが60重量%とする以外は、ゴム強化樹脂(A−1)と同様にしてゴム強化樹脂(A−3)を得る。
ゴム強化樹脂A−3中のグラフト重合体におけるグラフト成分の割合は、ポリブタジエン成分100重量部に対して55重量部であり、ゴム強化樹脂中A−3の成分は、FT−IRを用いた組成分析でブタジエン成分が10重量%、アクリロニトリル成分が36重量%、スチレン成分が54重量%である。ゴム強化樹脂(A−2)のゴム状重合体にグラフトしていない成分中のアクリロニトリル含有量は、40重量%であり、メチルエチルケトン中で測定した極限粘度(メチルエチルケトン100ml中に共重合体を0.5g溶解した溶液、30℃)は0.37である。
【0039】
(グラフト重合体B)
(グラフト重合体Bの製造)
(グラフト重合体B−1)
ポリオルガノシロキサンラテックス 100部
n−ブチルアクリレート 37.5部
アリルメタクリレート 2.5部
アクリロニトリル 9部
スチレン 21部
からなるグラフト共重合体(特開昭64−79257号実施例、参考例1記載の方法による)。
グラフト重合体(B−1)中のグラフトしていない成分は、25重量%であり、CN WOOD(株)社製 MODEL−6000型によって測定した複合ゴム成分の重量平均粒子径0.08μmである。
【0040】
(グラフト重合体B−2)
ポリオルガノシロキサンラテックス 100部
n−ブチルアクリレート 37.5部
アリルメタクリレート 2.5部
メタクリル酸メチル 30部
からなるグラフト共重合体(特開昭64−79257号実施例、参考例1記載の方法でアクリロニトリルとスチレンの混合液のかわりにメタクリル酸メチルを用いてグラフト重合したもの)。グラフト重合体(B−2)中のグラフトしていない成分は、20重量%であり、CN WOOD(株)社製 MODEL−6000型によって測定した複合ゴム成分の重量平均粒子径0.09μmである。
【0041】
(グラフト重合体B−3)
ポリオルガノシロキサンラテックス 100部
n−ブチルアクリレート 37.5部
アリルメタクリレート 2.5部
アクリロニトリル 9部
スチレン 21部
からなるグラフト共重合体(特開昭64−79257号実施例、参考例1記載の方法による)。
グラフト重合体(B−3)中のグラフトしていない成分は、25重量%であり、CN WOOD(株)社製 MODEL−6000型によって測定した複合ゴム成分の重量平均粒子径0.29μmである。
【0042】
(ゴム強化樹脂Xの製造)
GRCの製造でアクリロニトリル10部、スチレン50部とし、共重合の製造でアクリロニトリルを15重量%、スチレンが85重量%とした以外は、ゴム強化樹脂(A−1)と同様にしてゴム強化樹脂Xを得る。
ゴム強化樹脂X中のグラフト重合体におけるグラフト成分の割合は、48重量部であり、ゴム強化樹脂中Xの成分は、FT−IRを用いた組成分析でブタジエン成分が10重量%、アクリロニトリル成分が13重量%、スチレン成分が67重量%である。ゴム強化樹脂Xのゴム状重合体にグラフトしていない成分中のアクリロニトリル含有量は、15重量%であり、メチルエチルケトン中で測定した極限粘度(メチルエチルケトン100ml中に共重合体を0.5g溶解した溶液、30℃)は0.50である。
(ハロゲン系難燃剤C)
下記式のブロム系難燃剤である。(軟化点101℃、臭素含有量60重量%)
【0043】
【化8】
【0044】
(ポリエステル系エラストマー)
芳香族ポリエステル系エラストマー(大日本インキ社製 グリラックスE500N)を用いた。
表1に示す組成に加えて、三酸化アンチモン6部、ポリテトラフルオロエチレン0.1部、フェノール系安定剤およびエチレンビスステアロアミドおよびステアリン酸カルシウムを配合しシリンダー温度220℃に設定した2軸押出機で造粒してペレットを得て評価に用いる。評価結果を表1に示す。それぞれの特性の評価方法は以下の通りである。
【0045】
(アイゾット衝撃値)
ASTM D256に基づく測定で、試験片の厚さは、3.2mm、ノッチ付きである。数値の単位は、J/mである。
(剛性)
剛性は、ASTM D−790に基づく測定。単位はMPaである。
(メルトフローレート)
JIS K7210に基づく測定で、測定温度は220℃、荷重は10kgである。数値の単位は、g/10分である。
(耐薬品性試験の臨界ひずみ)
3mm厚のコンプレッション成形品から10mm長さに切り出した後 80℃で24時間アニールした後、ベンディングバーに取り付け薬品を塗布する。塗布した薬品が乾燥しないように覆いをし室温23℃、湿度50%の環境で24時間静置し、クラックが生じる臨界ひずみ(%)の値を測定する。
【0046】
表中のノイゲンは、第一工業製薬(株)製のEA130T(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル HLB(=Hydrophile-Lipophile Balance)が13である。パワーズはエステー化学(株)社製のトイレ用洗剤「トイレパワーズ」であり、塩酸2.5%、界面活性剤、ポリオキシエチレンフェニルエーテルからなる。製造番号は、「6042502 18:12」である。
【0047】
(耐薬品性試験のカンチレバー試験)
1/8インチ厚み、幅12.7mm長さが12.7cmの試験片をシリンダー温度240℃の射出成形して得た。試験片のデート側を固定し、エンド側に荷重をかけ、薬品塗布領域の負荷応力:256.5kg/cm2となるように、荷重を決め。薬品(マジックリン)を塗布する。塗布後23℃ 湿度50%の条件で静置してサンプルが破断するまでの時間を測定する。破断するまでの時間が高いほど塗布した薬品に対する耐性が高い。マジックリンは、花王(株)社製の家庭用洗剤であり、界面活性剤8%の液性はアルカリ性である。製造番号は「W342717」である。
(難燃性)
UL94規格の垂直燃焼試験(厚み2.1mm)に基づく試験。V−0に満たないものは×とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、難燃性のバランスに優れ、中性、強アルカリ性や強酸性のトイレ用洗剤をはじめとする種々の薬品に対して耐薬品性に優れ、広範囲に使用できる。
Claims (6)
- ゴム状重合体に2種以上のビニル化合物をグラフト重合したグラフト重合体を含むゴム強化スチレン系樹脂(A)5〜70重量%、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有した、重量平均粒子径0.05μm以上0.3μm未満の複合ゴムに1種または2種以上のビニル系化合物がグラフト重合して形成された共重合体を含むグラフト共重合体(B)30〜95重量%の合計100重量部に対して、下記一般式を有するハロゲン系有機化合物難燃剤を含む難燃剤(C)1〜40重量部からなり、かつゴム強化スチレン系樹脂(A)中のビニル化合物におけるシアン化ビニル化合物の含有量が20〜80重量%である熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト共重合体(B)中の複合ゴムの重量平均粒子径が0.05〜0.1μmである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト共重合体(B)におけるビニル系化合物が、アクリロニトリルおよびスチレンである請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム強化スチレン系樹脂(A)における、アセトンに溶解する成分のメチルエチルケトンでの極限粘度が0.3〜1.0である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム強化スチレン系樹脂(A)における、ビニル化合物のうち少なくとも1つがアクリロニトリルであり、かつビニル化合物中のアクリロニトリルの含有量が25以上、40重量%未満である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ハロゲン系有機化合物難燃剤が、下記一般式を有するブロム系難燃剤である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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