JP4513278B2 - 非還元性誘電体セラミックの製造方法、非還元性誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサ - Google Patents

非還元性誘電体セラミックの製造方法、非還元性誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサ Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、チタン酸バリウム系の非還元性誘電体セラミックの製造方法に関するもので、特に、中高圧用積層セラミックコンデンサにおいて用いるのに適した非還元性誘電体セラミックの製造方法、この製造方法によって得られた非還元性誘電体セラミック、およびこの非還元性誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
誘電率温度特性の良好な非還元性誘電体セラミックとして、そこに含まれるセラミック結晶がコアシェル構造を有するものが知られている。コアシェル構造を有する誘電体セラミックは、たとえばチタン酸バリウム等の主成分に希土類元素等を含む添加成分を添加し、グレイン成長を抑制しながら焼成することによって得られるもので、希土類元素等を含む添加成分をチタン酸バリウム等の主成分に拡散させることによって、温度特性を平坦にすることができる。従来のコアシェル構造を有する誘電体セラミックは、通常、低電圧の積層セラミックコンデンサに多く用いられている。なお、上述したように、グレイン成長を抑制するため、焼成工程において、誘電体セラミックが十分に焼結する前に、焼成を終了させることが行なわれている。
【0003】
コアシェル構造を有する非還元性誘電体セラミックとして、たとえば特開平10−308321号公報(特許文献1)では、グレイン径に対するコア径の比率が40〜90%の範囲にあるものが、誘電率が十分に高くかつ静電容量の温度特性が良好であるとされている。たとえば、グレイン径が0.4μmの誘電体セラミックによれば、誘電率温度特性についてはEIA規格のX7R特性を満足し、誘電率については2000以上のものが得られている。
【0004】
また、特開2002−50536号公報(特許文献2)および特開2000−103668号公報(特許文献3)では、チタン酸バリウムに希土類元素、Mn、Mg等の添加成分を含有させた組成を有する非還元性誘電体セラミックが記載されている。これらの誘電体セラミックでは、チタン酸バリウムに比較的多くの添加成分を含有させることにより、強誘電性を抑え、それによって、良好な誘電率温度特性が得られるとともに、たとえば25kV/mmの高電圧直流下でも高い絶縁抵抗を与えることができる。
【0005】
なお、特許文献2および3では、そこに開示された誘電体セラミックに含まれるセラミック結晶のグレイン径や構造、たとえばコアシェル構造を有するか否かについては記載されていないが、本件発明者による試作の結果、コアシェル構造を有するものであることが確認されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−308321号公報
【特許文献2】
特開2002−50536号公報
【特許文献3】
特開2000−103668号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
コアシェル構造を有する誘電体セラミックにおいて、コア径が小さくなり、シェル厚みが厚くなると、誘電率温度特性が悪くなることが知られている。これは、シェルを形成するための添加成分がコアをなすチタン酸バリウムにまで固溶し、シェル部分の電気的特性がより支配的になるためであると考えられている。
【0008】
すなわち、コアシェル構造を持たない誘電体セラミックとして、チタン酸バリウムと添加成分とが十分に固溶し、焼成時に数μmの大きさまで十分なグレイン成長がもたらされたものがあるが、このような誘電体セラミックについては、誘電率が10000以上と高いが、誘電率温度特性が悪いことが知られている。したがって、前述したようなシェル厚みの厚い誘電体セラミックは、このグレイン成長が十分に生じた誘電体セラミックにより近い電気的特性を示すことになり、そのため、誘電率温度特性が悪くなってしまう。
【0009】
このようなことから、前述した特許文献1に記載の誘電体セラミックでは、グレイン径に対するコア径の比率が40〜90%の範囲となるようにコア径を大きくし、言い換えると、グレイン径に対するシェル厚みの比率が5〜30%の範囲となるようにシェル厚みを薄く制御することによって、良好な誘電率温度特性を得るようにしている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された誘電体セラミックでは、たとえば10kV/mm以上の高電界が印加されるような積層セラミックコンデンサに用いられると、この高電界に起因する電気歪みや圧電共振が生じたり、極端に信頼性が低下したりするため、中高圧用積層セラミックコンデンサの用途には適していない。
【0011】
一方、特許文献2および3に記載された誘電体セラミックでは、良好な誘電率温度特性が得られ、かつ高電界において安定した絶縁抵抗を示しているが、最近の中高圧用積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化すなわち薄層化に対する要望に十分に応えられなくなってきている。そのため、電界強度のさらなる増大に対しても、誘電率温度特性が良好であり、高い信頼性を示す、非還元性誘電体セラミックの実現が望まれている。
【0012】
そこで、この発明の目的は、上述のような要望を満たし得る非還元性誘電体セラミックを有利に製造できる方法を提供しようとすることである。
【0013】
この発明の他の目的は、上述した製造方法によって得られた非還元性誘電体セラミックおよびこの非還元性誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサを提供しようとすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を解決するため、この発明に係る非還元性誘電体セラミックの製造方法は、次のような工程を備えることを特徴としている。
【0015】
まず、出発原料として、ABO3 系化合物(Aは、Ba、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiおよびZrである。)からなり、かつ平均粉末径が0.1〜0.3μmである主成分粉末を用意するとともに、原子番号57〜71の希土類元素の少なくとも1種を含む希土類元素化合物、Mg化合物、Mn化合物、BaZrO3 およびSi化合物の各々からなる副成分粉末とが用意される。
【0016】
次に、上記主成分粉末および副成分粉末が混合される。ここで、上記副成分粉末としてのBaZrO 3 粉末の添加量は、上記主成分粉末であるABO 3 系化合物粉末1モル部に対して、0.060〜0.250モル部とされる。
【0017】
次に、得られた混合粉末が成形される。
【0018】
次に、得られた成形体が還元性雰囲気中で焼成され、それによって、非還元性誘電体セラミックが得られる。この焼成工程によって得られた非還元性誘電体セラミックに含まれるセラミック結晶は、コアシェル構造を有し、かつコア径<0.4×グレイン径の条件を満たすとともに、その平均グレイン径が、0.15〜0.8μmであり、かつ前記主成分粉末の平均粉末径の1.5倍以上とされる。
【0019】
この発明は、また、上述のような製造方法によって得られた、非還元性誘電体セラミックにも向けられる。
【0020】
この発明は、さらに、積層セラミックコンデンサにも向けられる。
【0021】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、複数の積層された誘電体セラミック層と、静電容量を取得できるように誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成されかつたとえばニッケルもしくはニッケル合金または銅もしくは銅合金のような卑金属を導電材料として含む複数の内部電極と、内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極とを備え、誘電体セラミック層が前述したようなこの発明に係る非還元性誘電体セラミックから構成されることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を示す断面図である。
【0023】
積層セラミックコンデンサ1は、直方体状の積層体2を備えている。積層体2は、複数の積層された誘電体セラミック層3と、複数の誘電体セラミック層3間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極4および5とを備えている。
【0024】
内部電極4および5は、積層体2の外表面にまで到達するように形成されるが、積層体2の一方の端面6にまで引き出される内部電極4と他方の端面7にまで引き出される内部電極5とが、積層体2の内部において、誘電体セラミック層3を介して静電容量を取得できるように交互に配置されている。
【0025】
内部電極4および5は、導電材料として、ニッケルもしくはニッケル合金または銅もしくは銅合金のような卑金属を含んでいる。
【0026】
前述した静電容量を取り出すため、積層体2の外表面上であって、端面6および7上には、内部電極4および5のいずれか特定のものに電気的に接続されるように、外部電極8および9がそれぞれ形成されている。外部電極8および9に含まれる導電材料としては、内部電極4および5の場合と同じ導電材料を用いることができ、さらに、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金なども用いることができる。外部電極8および9は、このような金属粉末にガラスフリットを添加して得られた導電性ペーストを付与し、焼き付けることによって形成される。
【0027】
また、外部電極8および9上には、必要に応じて、ニッケル、銅などからなる第1のめっき層10および11がそれぞれ形成され、さらにその上には、半田、錫などからなる第2のめっき層12および13がそれぞれ形成される。
【0028】
この発明に係る非還元性誘電体セラミックの製造方法は、上述のような積層セラミックコンデンサ1を製造するための工程の一部として実施される。すなわち、積層セラミックコンデンサ1を製造するための工程を実施した結果として、積層セラミックコンデンサ1に備える誘電体セラミック層3が、この発明に係る製造方法によって製造された非還元性誘電体セラミックから構成されることになる。
【0029】
積層セラミックコンデンサ1を製造するため、まず、誘電体セラミック層3となるセラミックグリーンシートが作製される。セラミックグリーンシートは、次のようにして作製される。
【0030】
出発原料として、ABO3 系化合物(Aは、Ba、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiおよびZrである。)からなり、かつ平均粉末径が0.1〜0.3μmである主成分粉末が用意される。他方、同じく出発原料として、原子番号57〜71の希土類元素の少なくとも1種を含む希土類元素化合物、Mg化合物、Mn化合物、BaZrO3 およびSi化合物の各々からなる副成分粉末が用意される。Si化合物は、たとえばSiO2 であり、焼結助剤として機能するものである。
【0031】
次に、上述した主成分粉末および副成分粉末が所定量ずつ秤量され、たとえば湿式混合されることによって、混合粉末とされる。ここで、副成分粉末としてのBaZrO 3 粉末の添加量は、主成分粉末であるABO 3 系化合物粉末1モル部に対して、0.060〜0.250モル部とされる。この混合粉末には、有機バインダおよび有機溶剤が添加され、それによってスラリー化される。
【0032】
次に、上述のスラリーをシート状に成形することによって、セラミックグリーンシートが得られる。
【0033】
次に、セラミックグリーンシートの特定のものの一方主面上に、ニッケルもしくは銅またはこれらの合金などの卑金属を導電成分とする導電性ペーストがスクリーン印刷法などによって付与され、それによって、内部電極4または5となる導体膜が形成される。なお、内部電極4または5となる導体膜は、蒸着法またはめっき法などによって形成されてもよい。
【0034】
次に、上述のように導体膜が形成されたセラミックグリーンシートが、必要数積層されるとともに、導体膜が形成されていないセラミックグリーンシートがその上下に積層され、次いで、これらを積層方向にプレスすることによって、積層体2の生の状態のものが得られる。
【0035】
その後、生の状態の積層体2は、必要に応じてカットされた後、還元性雰囲気中において所定の温度にて焼成され、焼結した積層体2が得られる。この段階において、セラミックグリーンシートに含まれていた主成分粉末および副成分粉末からなる混合粉末が焼結し、この発明に係る非還元性誘電体セラミックからなる誘電体セラミック層3が得られる。
【0036】
次に、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が形成され、その後、必要に応じて、第1のめっき層10および11ならびに第2のめっき層12および13が形成されることによって、積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0037】
このような積層セラミックコンデンサにおいて、前述した誘電体セラミック層3を構成する非還元性誘電体セラミックは、コアシェル構造を有し、かつコア径<0.4×グレイン径の条件を満たす、セラミック結晶を含んでいる。そして、このセラミック結晶は、その平均グレイン径が、0.15〜0.8μmであり、かつ前述した主成分粉末の平均粉末径の1.5倍以上となっている。
【0038】
上述のように、非還元性誘電体セラミックにおいて、焼成工程によって十分にグレイン成長させたコアシェル構造を作り出すようにすれば、十分な焼結状態が得られ、高電界での信頼性を大幅に向上させることができる。
【0039】
次に、この発明を、実験例に基づいてより具体的に説明する。この実験例は、この発明の範囲の限定の根拠を与えるため、およびこれらによる効果を確認するために実施されたものである。
【0040】
表1に示すような組成を有するABO3 系化合物を、混合粉砕工程、乾燥工程および1000℃以上の温度での加熱工程を経て合成し、次いで、同じく表1に示すような平均粉末径が得られるように粉砕工程を実施し、主成分粉末としてのABO3 系粉末A〜Iを得た。表1に示した平均粉末径は、走査型電子顕微鏡による観察結果から求めたものである。表1には、ABO3 における「A/B」の比率も示されている。
【0041】
【表1】
Figure 0004513278
【0042】
次に、表2に示すように、主成分粉末としてのABO3 系粉末A〜Iのいずれかを用いながら、これに、副成分粉末として、R(希土類元素)化合物、Mg化合物、Mn化合物、BaZrO3 およびSi化合物の各粉末を加えた。ここで、ABO3 、R、MおよびBaZrO3 については、「ABO3 +aR+bM+cBaZrO3 」(ただし、MはMg化合物およびMn化合物)において、「a」、「b」および「c」が、ABO3 1モルに対するモル比率で、表2の「副成分量」の欄に示した「a」、「b」および「c」とそれぞれなるように加えた。また、焼結助剤としてのSi化合物については、SiO2 粉末を加え、これが、「ABO3 +aR+bM+cBaZrO3 」100重量部に対して、表2に示すような重量部となるように加えた。そして、これら粉末を混合粉砕し、それによって、主成分粉末および副成分粉末が混合された混合粉末を得た。
【0043】
【表2】
Figure 0004513278
【0044】
次に、上述のようにして得られた各試料に係る混合粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶剤を加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを得た。次に、このセラミックスラリーをドクターブレード法によってシート状に成形し、厚み13μmの矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0045】
次に、上述のセラミックグリーンシート上に、ニッケルを導電成分として含む導電性ペーストを印刷し、内部電極を構成するための導電性ペースト膜を形成した。
【0046】
次に、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを、導電性ペースト膜が引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層するとともに、その上下に、導電性ペースト膜が形成されていないセラミックグリーンシートを積層し、これらを積層方向にプレスすることによって、生の状態の積層体を得た。
【0047】
次に、生の積層体を、窒素雰囲気中にて350℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10-9〜10-12 MPaのH2 −N2 −H2 Oガスからなる還元性雰囲気中において、表3の「焼成温度」の欄に示した各温度にて2時間焼成し、焼結後の積層体を得た。なお、表3に示すように、表2に示した試料3については、焼成温度として1220℃および1300℃の2種類の温度を採用し、1220℃の温度で焼成した試料を試料3aとし、1300℃の温度で焼成した試料を試料3bとした。
【0048】
次に、焼結後の積層体の両端面に、B2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系のガラスフリットを含有しかつ導電成分として銀を含む導電性ペーストを塗布し、窒素雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
【0049】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅5.0mm、長さ5.7mmおよび厚さ2.4mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミックの厚みは10μmであった。また、有効誘電体セラミック層の数は5であった。次に、各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表3に示すような項目について評価した。
【0050】
まず、「平均グレイン径」および「コア径比率」については、積層セラミックコンデンサ1に備える誘電体セラミック層に存在するセラミック結晶を透過型電子顕微鏡によって観察した結果から求めたもので、「コア径比率」は、コア径/グレイン径の比率である。
【0051】
また、「誘電率」は、積層セラミックコンデンサの静電容量を求め、その結果から算出したものである。「誘電率」については、直流電圧を印加しない状態(電界強度:0kV/mm)、直流電圧100Vを印加した状態(電界強度:10kV/mm)および直流電圧200Vを印加した状態(電界強度:20kV/mm)の各々の下で求めた。
【0052】
また、「誘電損失」(tanδ)については、直流電圧100Vを印加した状態(電界強度:10kV/mm)および直流電圧200Vを印加した状態(電界強度:20kV/mm)の各々の下で求めた。
【0053】
また、「容量温度変化率」は、温度変化に対する静電容量の変化率を求めたもので、直流電圧100Vを印加した状態(電界強度:10kV/mm)および直流電圧200Vを印加した状態(電界強度:20kV/mm)の各々の下において、20℃での静電容量を基準として、85℃での静電容量の変化率を示したものである。
【0054】
「電気歪み率」については、30kV/mmの電界強度をもって直流電圧を印加した状態での歪み率を求めたものである。
【0055】
「平均寿命時間」は、温度150℃にて直流電圧400V(電界強度:40kV/mm)を印加する高温負荷寿命試験を実施し、絶縁抵抗の経時変化を測定し、絶縁抵抗値が105 Ω以下になるまでの時間を寿命時間とし、その平均値を求めたものである。
【0056】
【表3】
Figure 0004513278
【0057】
表3において、試料番号に*を付したものは、この発明の範囲外の試料である。
【0058】
すなわち、試料3bでは、表3に示すように、平均グレイン径が0.8μmより大きい0.82μmであり、焼成時に粒成長が激しく生じたものと考えられる。そのため、平均寿命時間が221時間と比較的短く、また誘電率についても、10kV/mmの電界および20kV/mmの電界を印加した状態では300未満と比較的低い。
【0059】
また、試料7では、コア径比率が40%以上の46%であり、通常のコアシェル構造を有する誘電体セラミックと同様である。その結果、誘電率については、直流電圧を印加しない状態では1750と高いが、印加される直流電圧が高くなるほど急激に低下し、20kV/mmの電界が印加された状態では275と低下している。そのため、電気歪み率が比較的高く、また、平均寿命時間も比較的短い。
【0060】
また、試料9では、表2に示すように、ABO3 系粉末Dが用いられ、このABO3 系粉末Dの平均粉末径は、表1に示すように、0.3μmを超える0.50μmである。その結果、試料9では、表3に示すように、コア径比率が82%と高い。このことから、試料9では、上述の試料7の場合と同様、誘電率については、直流電圧を印加しない状態では3340と極めて高いが、印加される直流電圧が高くなるほど急激に低下し、電気歪み率が比較的高く、また、平均寿命時間も短い。
【0061】
さらに、試料14では、表2に示すように、ABO3 系粉末Iが用いられ、このABO3 系粉末Iは、表1に示すように、その平均粉末径が0.1μmより小さい0.07μmである。そのため、表3に示すように、平均グレイン径が0.15μmより小さい0.12μmとなっている。その結果、誘電率については、直流電圧を印加しない状態であっても213と低くなっている。
【0062】
これらに対して、この発明の範囲内にある試料1〜3a、4〜6、8および10〜13では、上述した試料3b、7、9および14に比べて、良好な特性を示している。
【0063】
特に、試料2、3a、4〜6、10および13では、誘電率については、10kV/mmの直流電圧および20kV/mmの直流電圧を印加した状態であっても300以上の値を示し、電気歪み率については、0.080以下と小さく、また、平均寿命時間については、400時間を超える長い時間を示している。
【0064】
なお、この発明の範囲内にある試料のうち、試料12では、表2に示すように、ABO3 系粉末Gが用いられ、ABO3 系粉末Gは、表1に示すように、Caを含んでいる。その結果、表3に示すように、誘電損失および電気歪み率が他の試料に比べてやや大きくなっているが、平均寿命時間が660時間と極めて長く、信頼性がより向上していることがわかる。
【0065】
また、試料13では、表2に示すように、ABO3 系粉末Hが用いられ、このABO3 系粉末Hは、表1に示すように、SrおよびZrを含んでいる。しかしながら、このようなSrやZrの存在にも関わらず、直流電圧印加下においても、高い誘電率を示し、電気歪み率が比較的低く、平均寿命時間についても比較的長く、SrやZrの存在が特に問題を引き起こすものではないことがわかる。
【0066】
なお、表1に示した「A/B」については、これが1.000〜1.035の範囲にあり、表2に示した「a」については、これが0.06〜0.19の範囲にあり、同じく「b」については、0.02〜0.10の範囲にあり、同じく「c」については、0.06〜0.20の範囲にあることが好ましいことがわかっている。
【0067】
これに関して、試料1および11では、表1に示すように、「A/B」が1.000〜1.035の範囲から外れているため、表3に示すように、平均寿命時間については、他の試料に比べて、やや短くなっている。
【0068】
また、試料8では、表2に示すように、「a」が0.06〜0.19の範囲から外れ、また、「c」が0.06〜0.20の範囲から外れている。そのため、試料8では、表3に示すように、他の試料に比べて、誘電率が低くなっている。
【0069】
なお、上述した実験例では、副成分粉末に含まれる希土類元素として、Gd、DyおよびYbが用いられたが、原子番号57〜71の希土類元素であれば、他の希土類元素が用いられても、実質的に同様の効果を示すことが確認されている。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ABO3 系化合物からなる主成分粉末として、その平均粉末径が0.1〜0.3μmというように小さいものを用意し、それによって、この主成分粉末と副成分粉末とを混合して得られた混合粉末の成形体を還元性雰囲気中で焼成する工程において、主成分粉末の反応性を上げ、この焼成工程によって得られた非還元性誘電体セラミックに含まれるセラミック結晶が、コアシェル構造を有するが、コア径<0.4×グレイン径の条件を満たすようにしながら、その平均グレイン径が、0.15〜0.8μmであり、かつ主成分粉末の平均粉末径の1.5倍以上となるようなグレイン成長を生じさせるので、結晶粒界の信頼性が向上し、良好な信頼性を示す非還元性誘電体セラミックを得ることができる。
【0071】
また、焼成工程において焼成温度、雰囲気を調整することによって、セラミック結晶の平均グレイン径を0.15〜0.8μmというように小さくすることにより、誘電率自体を低くすることが行なわれるので、コア径が、コア径<0.4×グレイン径の条件を満たすように小さくされても、誘電率の温度特性を平坦化することができる。
【0072】
このようなことから、この発明に係る製造方法によって製造された非還元性誘電体セラミックによれば、高電界下での信頼性が高く、電気歪み率も低くすることができるので、小型かつ大容量でありながら、中高圧用途に適した積層セラミックコンデンサを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
3 誘電体セラミック層
4,5 内部電極
8,9 外部電極

Claims (3)

  1. 出発原料として、ABO3系化合物(Aは、Ba、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiおよびZrである。)からなり、かつ平均粉末径が0.1〜0.3μmである主成分粉末を用意するとともに、原子番号57〜71の希土類元素の少なくとも1種を含む希土類元素化合物、Mg化合物、Mn化合物、BaZrO3およびSi化合物の各々からなる副成分粉末とを用意する工程と、
    前記主成分粉末および前記副成分粉末を混合して混合粉末を得る工程と、
    前記混合粉末を成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体を還元性雰囲気中で焼成する工程と
    を備え、
    前記混合粉末を得る工程において、前記副成分粉末としての前記BaZrO 3 粉末の添加量が、前記主成分粉末である前記ABO 3 系化合物粉末1モル部に対して、0.060〜0.250モル部であり、
    前記焼成工程によって得られた非還元性誘電体セラミックに含まれるセラミック結晶は、コアシェル構造を有し、かつコア径<0.4×グレイン径の条件を満たすとともに、その平均グレイン径が、0.15〜0.8μmであり、かつ前記主成分粉末の平均粉末径の1.5倍以上とされる、非還元性誘電体セラミックの製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法によって得られた、非還元性誘電体セラミック。
  3. 複数の積層された誘電体セラミック層と、静電容量を取得できるように前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成されかつ卑金属を導電材料として含む複数の内部電極と、前記内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極とを備える、積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体セラミック層が請求項2に記載の非還元性誘電体セラミックから構成されている、積層セラミックコンデンサ。
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