JP5017792B2 - 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法 - Google Patents

電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、耐還元性を有する誘電体磁器組成物およびその製造方法と、この誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサなどの電子部品とに関する。
電子部品としての積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、1台の電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型・高性能化にともない、積層セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
積層セラミックコンデンサは、通常、内部電極層用のペーストと誘電体層用のペーストとを使用して、シート法や印刷法等により積層し、積層体中の内部電極層と誘電体層とを同時に焼成して製造される。
内部電極層の導電材としては、一般にPdやPd合金が用いられているが、Pdは高価であるため、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用されるようになってきている。内部電極層の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極層が酸化してしまうため、誘電体層と内部電極層との同時焼成を、還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比抵抗が低くなってしまう。このため、非還元性の誘電体材料が開発されている。
しかし、非還元性の誘電体材料を用いた積層セラミックコンデンサは、電界の印加によるIR(絶縁抵抗)の劣化が著しく、IR寿命が短く、信頼性が低いという問題がある。
また、コンデンサには、容量の温度特性が良好であることも要求され、特に、用途によっては、厳しい条件下において、容量の温度特性が平坦であることが求められる。近年、自動車のエンジンルーム内に搭載するエンジン電子制御ユニット(ECU)、クランク角センサ、アンチロックブレーキシステム(ABS)モジュールなどの各種電子装置に積層セラミックコンデンサが使用されるようになってきている。これらの電子装置は、エンジン制御、駆動制御およびブレーキ制御を安定して行うためのものなので、回路の温度安定性が良好であることが要求される。
これらの電子装置が使用される環境は、寒冷地の冬季には−20℃程度以下まで温度が下がり、また、エンジン始動後には、夏季では+130℃程度以上まで温度が上がることが予想される。最近では電子装置とその制御対象機器とをつなぐワイヤハーネスを削減する傾向にあり、電子装置が車外に設置されることもあるので、電子装置にとっての環境はますます厳しくなっている。したがって、これらの電子装置に用いられるコンデンサは、広い温度範囲において温度特性が平坦である必要がある。具体的には、容量温度特性が、EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC/C=±15%以内)を満足するだけでは足りず、EIA規格のX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)を満足する誘電体磁器組成物が必要とされる。
たとえば、特許文献1では、所定組成を有し、かつ、結晶粒子内の平均Ca濃度の結晶粒子間におけるばらつきを一定範囲にすることにより、X8R特性を満足する誘電体磁器組成物を得ている。しかしながら、この文献の誘電体磁器組成物では、容量温度特性は改善しているものの、TCバイアス特性(直流電圧印加時の容量温度特性)や、高温加速寿命に劣るという問題があり、信頼性の向上が課題となっていた。
特開2004−214539号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、比誘電率が高く、容量温度特性がEIA規格のX8R特性(−55〜150℃、ΔC/C=±15%以内)を満足するとともに、TCバイアス特性(直流電圧印加時の容量温度特性)、および絶縁抵抗の高温加速寿命が向上でき、しかも、直流電界下での容量の経時変化の小さい誘電体磁器組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物を用い、小型・大容量化を実現でき、特に薄層小型化対応の積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することも目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の誘電体磁器組成物は、
組成式(Ba1−x Ca(Ti1−y Zr)Oで表され、前記組成式中のm、x、およびyが、0.995≦m≦1.020、0<x≦0.15、0≦y≦1.00の関係にある誘電体酸化物を含む主成分と、
MgO,CaO,BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
酸化シリコンを主成分として含む第2副成分と、
,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
前記誘電体磁器組成物を構成する焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が、0.15〜0.6μmであり、かつ、
前記誘電体粒子の50%相当径であるD50径と、100%相当径であるD100径との差(D100−D50)である粒径の粒度分布が、0.3〜0.9μmである。
本発明においては、誘電体磁器組成物を上記所定組成とするとともに、焼結後の誘電体磁器組成物を構成する誘電体粒子の平均結晶粒径、および粒径の粒度分布を上記所定範囲に制御することにより、比誘電率が高く、容量温度特性がEIA規格のX8R特性を満足するとともに、TCバイアス特性、および絶縁抵抗の高温加速寿命が向上でき、しかも、直流電界下での容量の経時変化の小さくすることができる。
なお、本発明において、焼結後の誘電体粒子の上記D50径およびD100径は、それぞれ個数基準累積50%径および個数基準累積100%径を意味する。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記誘電体粒子の平均結晶粒径が、0.19〜0.33μmである。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記誘電体粒子の粒径の粒度分布が、0.3〜0.7μmである。
本発明の誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:1〜10モル、
第3副成分:0.01〜0.2モル、
第4副成分:0.1〜12モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)、
である。
好ましくは、前記誘電体磁器組成物は、MnOまたはCrを含む第5副成分を、さらに有し、
前記主成分100モルに対する第5副成分の比率が、MnまたはCr元素換算で、0.1〜2.5モルである。
好ましくは、前記誘電体磁器組成物は、CaZrOまたはCaO+ZrOを含む第6副成分を、さらに有し、
前記主成分100モルに対する第6副成分の比率が、酸化物換算で、0〜5モル(ただし、0は含まない)である。
本発明の誘電体磁器組成物の製造方法は、
上記いずれかの誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料として、比表面積が4.0〜7.5m/g、好ましくは5.0〜7.0m/gである原料を使用する。
本発明に係る電子部品は、上記本発明の誘電体磁器組成物または上記本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、上記本発明の誘電体磁器組成物または上記本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層と、を交互に積層することにより構成される。
本発明によると、誘電体磁器組成物として、所定組成を有し、かつ、焼結後の誘電体磁器組成物を構成する誘電体粒子の平均結晶粒径、および粒径の粒度分布(D100−D50)を上記所定範囲となるように制御することにより、比誘電率が高く、容量温度特性がX8R特性を満足するとともに、TCバイアス特性、および絶縁抵抗の高温加速寿命が向上でき、しかも、直流電界下での容量の経時変化の小さい誘電体磁器組成物を提供することができる。また、本発明によると、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層として、本発明の誘電体磁器組成物を用いるため、上記特性を有し、特に、小型・大容量化を実現でき、薄層小型化対応の積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供するができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、主成分として、組成式(Ba1−x Ca(Ti1−y Zr)Oで表される誘電体酸化物を有する。この際、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
上記式中、xは、好ましくは0<x≦0.15、より好ましくは0.02≦x≦0.10である。xはCaの原子数を表し、記号x、すなわちCa/Ba比を変えることで結晶の相転移点を任意にシフトさせることが可能となる。そのため、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。
上記式中、yは、好ましくは0≦y≦1.00、より好ましくは0.05≦y≦0.80である。yはTi原子数を表すが、TiOに比べ還元されにくいZrOを置換していくことにより耐還元性がさらに増していく傾向がある。ただし、本発明においては、ZrとTiとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
上記式中、mは、好ましくは0.995≦m≦1.020、より好ましくは1.000≦m≦1.006である。mを0.995以上にすることにより還元雰囲気下での焼成に対して半導体化を生じることが防止され、mを1.020以下にすることにより焼成温度を高くしなくても緻密な焼結体を得ることができる。
誘電体層2は、上記主成分に加えて、以下の第1〜第4副成分を含有する。
すなわち、MgO,CaO,BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
酸化シリコンを主成分として含む第2副成分と、
,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分と、を有する。
上記各副成分の比率は、上記主成分100モルに対し、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:1〜10モル、
第3副成分:0.01〜0.2モル、
第4副成分:0.1〜12モル、
であり、より好ましくは、
第1副成分:0.2〜2.0モル、
第2副成分:2〜5モル、
第3副成分:0.05〜0.1モル、
第4副成分:0.2〜8モル、
である。なお、第4副成分の上記比率は、Rの酸化物のモル比ではなく、R元素単独のモル比である。すなわち、たとえば第4副成分(Rの酸化物)として、Yの酸化物を用いた場合、第4副成分の比率が1モルであることは、Yの比率が1モルなのではなく、Y元素の比率が1モルであることを意味する。
上記所定組成を有する主成分に加えて、これらの第1〜第4副成分を含有させることにより、高い誘電率を維持しながら、容量温度特性を向上させることができ、特に、EIA規格のX8R特性を満足させることができる。第1〜第4副成分の好ましい含有量は上記の通りであり、また、その理由は以下の通りである。
第1副成分(MgO,CaO,BaOおよびSrO)は、容量温度特性を平坦化させる効果を示す。第1副成分の含有量が少なすぎると、容量温度変化率が大きくなってしまうおそれがある。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化してしまうおそれがある。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
第2副成分(酸化シリコン)は、酸化シリコンを主成分とし、好ましくは、SiO、MO(ただし、Mは、Ba、Ca、Sr及びMgから選ばれる少なくとも1種の元素)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種である。第2副成分は、主として焼結助剤として作用するが、薄層化した際の初期絶縁抵抗の不良率を改善する効果を有する。第2副成分の含有量が少なすぎると、容量温度特性が悪くなり、また、IR(絶縁抵抗)が低下する。一方、含有量が多すぎると、IR寿命が不十分となるほか、比誘電率の急激な低下が生じてしまう。
なお、本実施形態においては、第2副成分として、(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.7〜1.2)で表される化合物を使用しても良い。[(Ba,Ca)SiO2+x ]中のBaOおよびCaOは第1副成分にも含まれるが、複合酸化物である(Ba,Ca)SiO2+x は融点が低いため主成分に対する反応性が良好なので、BaOおよび/またはCaOを上記複合酸化物として添加することもできる。なお、BaとCaとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
第3副成分(V,MoOおよびWO)は、キュリー温度以上での容量温度特性を平坦化する効果と、IR寿命を向上させる効果とを示す。第3副成分の含有量が少なすぎると、このような効果が不十分となる。一方、含有量が多すぎると、IRが著しく低下する。なお、第3副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
第4副成分(Rの酸化物)は、キュリー温度を高温側へシフトさせる効果と、容量温度特性を平坦化する効果とを示す。第4副成分の含有量が少なすぎると、このような効果が不十分となり、容量温度特性が悪くなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。本実施形態においては、R元素のなかでも、特性改善効果が高いという理由より、Y,Dy,Ho,Er,TmおよびYbが好ましい。
誘電体層2は、上記主成分および第1〜第4副成分に加えて、
MnOまたはCrを含む第5副成分と、
CaZrOまたはCaO+ZrOを含む第6副成分と、をさらに有することが好ましい。
上記主成分に対する第5、第6副成分の比率は、前記主成分100モルに対し、好ましくは、
第5副成分:0.1〜2.5モル、
第6副成分:0〜5モル(ただし、0は含まない)、
であり、より好ましくは、
第5副成分:0.1〜0.5モル、
第6副成分:1.0〜3.0モル、
である。なお、第5副成分の上記比率は、Mnの酸化物またはCrの酸化物のモル比ではなく、Mn元素またはCr元素単独のモル比である。
第5副成分(MnOまたはCr)は、焼結を促進する効果と、IRを高くする効果と、IR寿命を向上させる効果とを示す。第5副成分の含有量が少なすぎると、このような効果が十分に発揮されない。一方、含有量が多すぎると、容量温度特性に悪影響を与えてしまうおそれがある。
第6副成分(CaZrOまたはCaO+ZrO)は、キュリー温度を高温側へシフトさせる効果と、容量温度特性を平坦化する効果とを示す。また、CR積、直流絶縁破壊強度を改善する効果がある。ただし、第6副成分の含有量が多すぎると、IR加速寿命が著しく悪化し、容量温度特性(X8R特性)が悪くなってしまう。
本実施形態の誘電体層2を構成する誘電体粒子の平均結晶粒径は、0.15〜0.6μmであり、好ましくは0.19〜0.33μmである。さらに、誘電体層2を構成する誘電体粒子の50%相当径であるD50径と、100%相当径であるD100径との差(D100−D50)である粒径の粒度分布が、0.3〜0.9μm、好ましくは0.3〜0.7μmである。
誘電体粒子の平均結晶粒径、および粒径の粒度分布(D100−D50)を上記範囲に制御することにより、比誘電率を高く維持しつつ、しかも、容量温度特性がX8R特性を満足しながら、TCバイアス特性、および絶縁抵抗の高温加速寿命を向上させることができ、さらに、直流電界下での容量の経時変化を小さくすることができる。
誘電体粒子の平均結晶粒径が小さすぎると、容量温度特性が悪化し、X8R特性を満たさなくなるとともに、比誘電率が低下してしまう傾向にある。一方、平均結晶粒径が大きすぎると、TCバイアス特性、高温加速寿命および直流電界下での容量の経時変化が悪化してしまう傾向にある。
誘電体粒子の粒径の粒度分布(D100−D50)が小さすぎると、TCバイアス特性、高温加速寿命および直流電界下での容量の経時変化が悪化してしまう傾向にある。一方、粒径の粒度分布が大きすぎると、容量温度特性が悪化し、X8R特性を満たさなくなるとともに、比誘電率が低下してしまう傾向にある。
本実施形態において、誘電体層2を構成する誘電体粒子の平均結晶粒径は、たとえば、以下の方法により測定することができる。
すなわち、まず、誘電体層2を積層方向と垂直な方向で切断する。次いで、この切断面について、SEM像を撮影する。そして、得られたSEM像より、誘電体層2を構成する各誘電体粒子の結晶粒径を測定し、各誘電体粒子の結晶粒径の平均値を算出して、これを平均結晶粒径とする。
また、本実施形態において、誘電体粒子の上記D50径およびD100径は、それぞれ個数基準累積50%径および個数基準累積100%径を意味する。そして、これらD50径と、D100径との差(D100−D50)である粒径の粒度分布は、たとえば、以下の方法により測定することができる。
すなわち、まず、上記と同様に、誘電体層2を積層方向と垂直な方向で切断し、この切断面について、SEM像を撮影する。そして、得られたSEM像より、誘電体層2を構成する各誘電体粒子の結晶粒径を測定し、個数基準での累積50%径(D50径)および累積100%径(D100径)を算出する。次いで、D50径と、D100径との差(D100−D50)を計算することにより、粒径の粒度分布を求める。
なお、誘電体粒子の平均結晶粒径、および粒径の粒度分布(D100−D50)を算出する際には、各誘電体粒子の結晶粒径を測定する方法として、各誘電体粒子の形状を球と仮定するコード法を採用することが好ましい。また、測定は、15×15μm程度の視野範囲の誘電体粒子について、行うことが好ましい。
誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、一層あたり4.5μm以下、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。厚さの下限は、特に限定されないが、たとえば0.5μm程度である。
誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、たとえば2000程度である。
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。
誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
誘電体磁器組成物粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体磁器組成物粉末中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
本実施形態においては、主成分の原料として、比表面積が4.0〜7.5m/g、好ましくは4.5〜7.0m/gである原料を使用する。主成分の原料として、比表面積が上記所定範囲にある微細化された原料を使用することにより、焼結後の誘電体粒子の結晶粒径、および粒径の粒度分布(D100−D50)を制御することができる。
主成分原料の比表面積が小さ過ぎると、すなわち、微細化が不十分な主成分原料を使用すると、焼結後の誘電体粒子の結晶粒径が大きくなり過ぎてしまうとともに、粒径の粒度分布(D100−D50)が小さくなり過ぎてしまう傾向にある。一方、比表面積が大き過ぎると、すなわち、微細化し過ぎた主成分原料を使用すると、焼結後の誘電体粒子の結晶粒径が小さくなり過ぎてしまうとともに、粒径の粒度分布(D100−D50)が大きくなり過ぎてしまう傾向にある。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バインダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が上記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜20時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−7〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1300℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−1〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、高温負荷寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、本発明の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
まず、誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を作製するために、主成分原料として、(Ba0.9Ca0.11.004TiOと、(Ba0.8Ca0.21.004TiOと、の2種の混合原料(すなわち、組成式(Ba1−x Ca(Ti1−y Zr)Oにおいて、m=1.004、x=0.1および0.2、y=0、ただし、2種の原料の合計でのxの値は、0.15以下とした。)と、以下に示す第1〜第6副成分と、を準備した。
MgO (第1副成分):0.8モル
SiO (第2副成分):3.0モル
(第3副成分):0.1モル
(第4副成分):0.7モル
MnO (第5副成分):0.3モル
CaZrO (第6副成分):2.0モル
上記第1〜第6副成分の添加量は、主成分100モルに対するモル数を、各酸化物換算の添加量で示した。ただし、第4副成分の添加量は、R原子であるY原子換算でのモル数で示した。
次に、これらの主成分および各副成分の原料を、ボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥させて誘電体原料とした。そして、得られた乾燥後の誘電体原料100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、酢酸エチル100重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、トルエン4重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
次に、Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを得た。
これらのペーストを用い、以下のようにして、図1に示される積層型セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、得られた誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上にグリーンシートを形成した。この上に内部電極用ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:30℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1240℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧:10−2Pa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−1Pa)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を5〜75℃としたウエッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料1〜9を得た。なお、本実施例においては、表1に示すように、主成分原料として、比表面積のそれぞれ異なる原料を使用して、主成分原料を変化させた試料1〜9を作製した。
得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とし、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)は2.7μm、内部電極層の厚みは1.2μmとした。
次いで、得られた各コンデンサ試料について、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径、粒径の粒度分布(D100−D50)、容量温度特性、TCバイアス特性、高温加速寿命、直流電界下での容量の経時変化および比誘電率を、それぞれ下記に示す方法により測定した。
誘電体粒子の平均結晶粒径
まず、得られたコンデンサ試料を積層方向に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、15×15μmの視野範囲における各誘電体粒子の結晶粒径を測定した。次いで、各誘電体粒子の結晶粒径を平均し、平均結晶粒径を算出した。なお、各誘電体粒子の結晶粒径は、各誘電体粒子の形状を球と仮定することにより求めた。結果を表1に示す。
誘電体粒子の粒径の粒度分布
上記と同様にして、コンデンサ試料の切断面について、SEM観察を行い、15×15μmの視野範囲における各誘電体粒子の結晶粒径を測定した。そして、各誘電体粒子の結晶粒径より、個数基準での累積50%径(D50径)および累積100%径(D100径)を算出し、D50径と、D100径との差(D100−D50)を計算し、粒径の粒度分布を求めた。なお、各誘電体粒子の結晶粒径は、各誘電体粒子の形状を球と仮定することにより求めた。結果を表1に示す。
容量温度特性
容量温度特性は、得られたサンプルに対し、−55℃〜150℃の温度範囲で静電容量を測定することにより評価した。具体的には、静電容量を、デジタルLCRメータ(YHP製4274A)を用い、周波数1kHz、入力信号レベル1Vrmsの条件下で測定した。そして、これらの温度範囲で最も容量温度特性が悪くなる150℃の温度環境下での静電容量の変化率(ΔC/C、単位は%)を算出した。本実施例においては、−55〜150℃において、ΔC/C=±15%以内、すなわち、X8R特性を満足する試料を良好とした。結果を表1に示す。
TCバイアス特性
TCバイアス特性は、得られたコンデンサ試料について、デジタルLCRメータにて、1kHz、1Vrms、7.0V/μmのバイアス電圧(直流電圧)で−55℃〜150℃まで温度を変化させて測定し、25℃のバイアス電圧無印加中の測定値からの静電容量の変化率(単位は%)を算出して評価した。なお、静電容量の測定にはLCRメーターを用い、周波数1kHz、入力信号レベル1Vrmsの条件下で測定した。TCバイアス特性は、0%に近いほうが好ましく、本実施例では、−50%以上を良好とした。結果を表1に示す。
高温加速寿命
コンデンサの試料を、200℃で10V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより、高温加速寿命を測定した。この高温加速寿命は、10個のコンデンサ試料について行い、平均寿命時間を測定することにより評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。寿命時間は長いほど好ましく、本実施例においては、好ましくは10時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
直流電界下での容量の経時変化
直流電界下での容量の経時変化は、得られたコンデンサ試料について、誘電体層の厚さ1μmあたり2.5Vの直流電界を40℃にて100時間印加し、次いで、無負荷状態で室温にて24時間放置した後、静電容量を測定し、直流電界印加前の容量C(初期容量)からの変化量ΔCを求めて、変化率ΔC/Cを算出することにより求めた。なお、静電容量は、デジタルLCRメータを用い、1kHz、1Vrmsの条件で測定した。結果を表1に示す。
比誘電率ε
比誘電率εは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータにて、周波数1kHz、入力信号レベル1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は、高いほうが好ましい。結果を表1に示す。
Figure 0005017792
評価1
表1に、使用した主成分の原料の比表面積、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径、粒径の粒度分布(D100−D50)、容量温度特性、TCバイアス特性、高温加速寿命、直流電界下での容量の経時変化および比誘電率の結果を示す。なお、主成分の原料の比表面積は、BET法で測定した結果である。
表1より、主成分の原料として、比表面積が4.0〜7.5m/gの範囲にある微細化された原料を使用した実施例の試料2〜8は、いずれも焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が0.15〜0.6μmの範囲、粒径の粒度分布(D100−D50)が0.3〜0.9μmの範囲となり、本発明の範囲内であった。そして、これらの試料2〜8は、いずれも、容量温度特性がX8R特性を満足し、TCバイアス特性、高温加速寿命、直流電界下での容量の経時変化および比誘電率に優れる結果となった。
これに対して、主成分の原料として、比表面積が3.0m/gである原料を使用した比較例の試料1は、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が0.78μm、粒径の粒度分布(D100−D50)が0.20μmとなり、いずれも本発明の範囲外であった。そして、この試料1は、TCバイアス特性が−55.6%と、−50%未満となってしまい、さらに、高温加速寿命も4.5時間と、10時間未満となり、劣る結果となった。
また、主成分の原料として、比表面積が8.0m/gである原料を使用した比較例の試料9は、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が0.13μm、粒径の粒度分布(D100−D50)が1.20μmとなり、いずれも本発明の範囲外であった。そして、この試料9は、容量温度特性がX8R特性を満足せず、また比誘電率も低くなる結果となった。
これらの結果より、誘電体層を所定の範囲とし、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径を0.15〜0.6μm、粒径の粒度分布(D100−D50)を0.3〜0.9μmとすることにより、比誘電率を高く維持しつつ、X8R特性を満足させることができるとともに、TCバイアス特性、および絶縁抵抗の高温加速寿命を向上させることができ、さらに、直流電界下での容量の経時変化を小さくできることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

Claims (6)

  1. 組成式(Ba1−x CaiO で表され、前記組成式中のmおよびxが、0.995≦m≦1.020、0<x≦0.15の関係にある誘電体酸化物を含む主成分と、
    MgO,CaO,BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
    酸化シリコンを主成分として含む第2副成分と、
    ,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
    Rの酸化物(ただし、RはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分と、
    MnOまたはCrを含む第5副成分と、
    CaZrOまたはCaO+ZrOを含む第6副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
    前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
    第1副成分:0.1〜5モル、
    第2副成分:1〜10モル、
    第3副成分:0.01〜0.2モル、
    第4副成分:0.1〜12モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)、
    第5副成分:0.1〜2.5モル(第5副成のモル数は、MnまたはCr元素換算での比率である)、
    第6副成分:0〜5モル(ただし、0は含まない)であり、
    前記誘電体磁器組成物を構成する焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が、0.15〜0.6μmであり、かつ、
    前記誘電体粒子の50%相当径であるD50径と、100%相当径であるD100径との差(D100−D50)である粒径の粒度分布が、0.3〜0.9μmである誘電体磁器組成物。
  2. 前記誘電体粒子の平均結晶粒径が、0.19〜0.33μmである請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
  3. 前記誘電体粒子の粒径の粒度分布が、0.3〜0.7μmである請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
    前記主成分の原料として、比表面積が4.0〜7.5m/gである原料を使用する誘電体磁器組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサ。
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