JP4691790B2 - 誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばニッケルまたはニッケル合金のような卑金属からなる内部電極を有する積層セラミックコンデンサにおいて有利に用いられる誘電体セラミック、ならびに、この誘電体セラミックを用いて構成された積層セラミックコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサは、複数の積層された誘電体セラミック層と内部電極金属とが積層された状態となっている積層体を備えている。このような積層セラミックコンデンサにおいて、最近では、コスト低減のため、内部電極となる金属として、高価な貴金属であるAgやPdに代わって、安価なNiなどが用いられることが多い。
【0003】
Niなどを内部電極に用いる場合には、Niなどが酸化されない還元性雰囲気で焼成する必要がある。しかしながら、還元性雰囲気下での焼成では、チタン酸バリウムからなるセラミックは、通常、還元されて半導体化するので好ましくない。
【0004】
この問題を解決するために、たとえば、特公昭57−42588号公報に示されるように、チタン酸バリウム固溶体におけるバリウムサイト/チタンサイトの元素のモル比を化学量論比より過剰にした、誘電体材料の非還元化技術が開発されている。これ以来、Niなどを内部電極とした積層セラミックコンデンサの実用化が可能となり、その生産量も拡大している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年のエレクトロニクスの発展に伴い、電子部品の小型化が急速に進行し、積層セラミックコンデンサにおいても、小型化、大容量化の傾向が顕著である。また、このような積層セラミックコンデンサに対しては、上述の静電容量の増大ばかりでなく、静電容量の温度安定性も求められており、温度特性のよい高誘電率材料として多くの材料が提案され、実用化されている。
【0006】
これらの材料は、いずれもBaTiO3を主成分とするもので、これに希土類元素を添加し、焼結する過程で添加成分をBaTiO3粒子に拡散させている。得られた焼結体の個々の粒子は、添加成分が拡散していないコア部と添加成分が拡散したシェル部とからなるコアシェル構造をとることが知られており、平坦な誘電率の温度特性は、誘電率の温度特性の異なるコア部とシェル部との重ね合わせによって得られる。
【0007】
このような材料が提案されたことによって、静電容量の温度変化の少ない、また高容量の積層セラミックコンデンサが実現され、市場拡大に大いに貢献している。
【0008】
しかしながら、このコアシェル構造は、セラミックの焼結と添加成分の拡散の制御とによって達成されるものであり、焼結が進むと添加成分の拡散も進行し、平坦な温度特性が得られない。他方、焼結が不十分であれば、温度特性は安定であるが信頼性に劣る。すなわち、上述の材料では、工業的に焼結と拡散の安定した制御が比較的難しく、得られる誘電率の温度特性も不安定である。
【0009】
さらに、前述したような積層セラミックコンデンサの小型大容量化の要求を満たすため、積層体中の誘電体セラミック層をさらに薄層化し、かつ多層化する必要が生じてきている。しかしながら、薄層化した場合、内部電極間のセラミック粒子の個数が少なくなり、信頼性の低下が著しく、そのため、薄層化には限界がある。そこで、セラミック粒子の粒径を小さくし、信頼性の高い、しかも誘電率の電界強度安定性に優れた材料の開発が望まれている。
【0010】
一方、自動車用電子部品などでは、使用最高温度を高くすることが望まれており、高い温度まで特性が安定していることが望まれている。積層セラミックコンデンサの場合にも、より高い温度(たとえば150℃)で誘電率の温度特性が安定であり、信頼性が高いことが望まれている。
【0011】
しかしながら、従来のコアシェル構造を持った材料では、BaTiO3粒子を小さくすると焼結性が増大し、添加成分の拡散も増大し、平坦な温度特性の確保が比較的困難になる。また、BaTiO3は高い温度(たとえば150℃前後)での誘電率の変化が大きく、誘電率の温度特性を高い温度まで安定にさせることが比較的困難である。
【0012】
以上のことから、コアシェル構造を持った材料を用いて、積層セラミックコンデンサの十分な薄層化や高い温度までの誘電率の十分な安定化を図ることは、実質的に困難あるいは不可能であるのが現状である。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述したような問題点を解決し得る、誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の誘電体セラミックは、一般式:(Ba1-xCaxO)mTiO2+αMO+βMgO+γMnO+δReO3/2(ただし、MはBaおよびCaのうちの少なくとも1種類の元素、Reは希土類元素)で表され、x、m、α、β、γおよびδがそれぞれ、0.02≦x≦0.15、0.990≦m、1.000≦(α+m)≦1.035、0.001≦β≦0.05、0.0001≦γ≦0.0005、0.001≦δ≦0.06の範囲内(ただし、α、β、γ、δはモル比)にあり、かつ、平均結晶粒子径が、0.05〜0.5μmの範囲内にあることを特徴とする。
【0015】
そして、前記ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする。
【0016】
また、さらに、焼結助剤を、前記誘電体セラミック100重量部に対して、0.2〜5.0重量部含有していることを特徴とする。
【0017】
また、前記焼結助剤はSiO2を主成分とするものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは、複数の積層された誘電体セラミック層を有する積層体と、該積層体の端面上の互いに異なる位置に設けられた複数の外部電極とを備え、前記積層体の内部には、複数の内部電極が、いずれかの前記外部電極に電気的に接続されるように、前記誘電体セラミック層間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成されている、積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が上述の誘電体セラミックからなることを特徴とする。
【0020】
そして、前記内部電極は、ニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする。
【0021】
また、前記外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなることを特徴とする。
【0022】
さらに、前記外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなる層と、該層上に形成された少なくとも1層以上のめっき層からなることを特徴とする。
【0023】
上記構成を備えた本発明の誘電体セラミックは、添加成分の拡散によるコアシェル構造を持たない材料であり、そのため、温度特性や信頼性が添加成分の拡散に影響されない材料である。また、本発明の誘電体セラミックを用いて積層セラミックコンデンサを製造すると、静電容量の温度特性に関して、JIS規格で規定するB特性ならびにEIA規格で規定するX7R特性およびX8R特性を満足することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体セラミックは、前述したように、一般式:(Ba1-xCaxO)mTiO2+αMO+βMgO+γMnO+δReO3/2(ただし、MはBaおよびCaのうちの少なくとも1種類の元素、Reは希土類元素)で表されるものである。ここで、x、m、α、β、γおよびδがそれぞれ、0.02≦x≦0.15、0.990≦m、1.000≦(α+m)≦1.035、0.001≦β≦0.05、0.0001≦γ<0.001、0.001≦δ≦0.06の範囲内(ただし、α、β、γ、δはモル比)にある。
【0025】
このような誘電体セラミックは、還元性雰囲気中で焼成しても、半導体化することなく焼成することができる。また、この誘電体セラミックを用いることにより、静電容量の温度特性がJIS規格で規定するB特性(−25℃〜+85℃で容量変化が±10%以内)ならびにEIA規格で規定するX7R特性(−55℃〜+125℃で容量変化が±15%以内)およびX8R特性(−55℃〜+155℃で容量変化が±15%以内)を満足し、室温ないしは高温での絶縁抵抗の高い、高信頼性で絶縁耐力の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0026】
以下に、上述の組成範囲に限定した理由について説明する。
【0027】
Ca量xが0.02未満の場合には、直流電圧による比誘電率の変化が大きく、また平均寿命が短くなる。一方、Ca量xが0.15を超える場合には、比誘電率が小さく、tanδも大きくなる。なお、好ましくは、Ca量xを0.05以上とすることにより、平均寿命をさらに向上させることができる。
【0028】
また、(Ba、Ca)/Ti比mとMO(ただしMはBaおよびCaのうちの少なくとも1種類の元素)量αの和(m+α)が1.000未満の場合、比抵抗が低くなり、また平均寿命時間が著しく短くなる。また、(Ba、Ca)/Ti比mとMO量αの和(m+α)が1.035を超える場合、焼結性が不足し、比誘電率が小さくなる。また、(Ba、Ca)/Ti比mとMO量αの和(m+α)が1.000以上でかつ1.035以下の場合でも、(Ba、Ca)/Ti比mが0.990未満の場合、比抵抗が低くなり、また平均寿命時間が著しく短くなる。
【0029】
また、MgO量βが0.001未満の場合には、比抵抗が低く、温度特性がB特性およびX7R特性を満足しない。一方、MgO量βが0.05を超えると、焼結温度が高くなり、また温度特性がB特性およびX7R特性を満足せず、平均寿命時間も短くなる。
【0030】
また、MnO量γが0.0001未満の場合、比抵抗が低くなる。一方、MnO量γが0.001以上の場合は、直流バイアスを印加し続けた時の容量変化が大きくなる。
【0031】
また、ReO3/2量δが0.001未満の場合には、平均寿命時間が短くなる。一方、ReO3/2量δが0.06を超える場合には、温度特性がB特性およびX7R特性を満足しない。
【0032】
上述したReとしては、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素が好ましい。
【0033】
また、本発明の誘電体セラミックとしては、さらに焼結助剤を、誘電体セラミック100重量部に対して0.2〜5.0重量部含有しているものが好ましい。。焼結助剤量が0.2重量部未満の場合、低温での焼結性が不十分となり、めっきにおける比抵抗の低下が大きく、平均寿命時間が短くなることがある。一方、焼結助剤量が5.0重量部を超える場合、焼結助剤に含まれるガラス成分に基づく二次相の生成が増大し、比誘電率が低下する。また、このような焼結助剤としては、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0034】
また、上述した誘電体セラミックの平均粒子径としては、0.05〜0.5μmが好ましい。平均粒径が0.50μmを超える場合、比誘電率は大きくなる。しかしながら、誘電体セラミック層を2μm以下と薄層化した場合、平均寿命時間が短くなり、また、高電界下での比誘電率の変化が大きくなることがある。他方、平均粒径が0.05μm未満の場合、平均寿命時間が延びる。しかしながら、比誘電率が低くなり、比誘電率の温度変化もB特性およびX7R特性を満足するもののやや大きくなる。
【0035】
上述した誘電体セラミックは、たとえば、図1に示すような積層セラミックコンデンサ1を製造するために用いられる。
【0036】
図1を参照して、積層セラミックコンデンサ1は、複数の積層された誘電体セラミック層2を有する積層体3と、この積層体3の第1および第2の端面4および5上にそれぞれ設けられた第1および第2の外部電極6および7とを備える。積層セラミックコンデンサ1は、全体として直方体形状のチップタイプの電子部品を構成する。
【0037】
積層体3の内部には、第1の内部電極8と第2の内部電極9とが交互に配置される。第1の内部電極8は、第1の外部電極6に電気的に接続されるように、各端縁を第1の端面4に露出させた状態で誘電体セラミック層2間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成され、第2の内部電極9は、第2の外部電極7に電気的に接続されるように、各端縁を第2の端面4に露出させた状態で誘電体セラミック層2間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成される。
【0038】
このような積層セラミックコンデンサ1において、その積層体3の誘電体セラミック層2が、前述したような誘電体セラミックから構成される。
【0039】
次に、このような積層セラミックコンデンサ1の製造方法を以下に説明する。
【0040】
まず、出発原料としてBa、Ca、Tiを含有する複合酸化物粉末と特性改善などを目的とした添加剤とが用意され、これらは、所定量秤量し湿式混合して混合粉とされる。
【0041】
次いで、上述の混合物の粉末に有機バインダおよび溶媒を添加することによって、スラリーが調製され、このスラリーを用いて、誘電体セラミック層2となるセラミックグリーンシートが作製される。
【0042】
次いで、特定のセラミックグリーンシート上に、内部電極8および9となるべき導電性ペースト膜が形成される。この導電性膜は、たとえば、ニッケル、銅などの卑金属またはその合金を含み、スクリーン印刷法、蒸着法、めっき法などによって形成される。
【0043】
次いで、導電性ペースト膜を形成したセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、圧着された後、必要に応じてカットされる。このようにして、複数のセラミックグリーンシート、およびセラミックグリーンシート間の特定の界面に沿ってそれぞれ形成された複数の内部電極8および9を積層したものであって、内部電極8および9の端縁を端面4または5に露出させている、生の状態の積層体3が作製される。
【0044】
次いで、この積層体3は還元性雰囲気下で焼成され、誘電体セラミックとされる。
【0045】
次いで、焼成された積層体3の第1および第2の内部電極8および9の露出した各端縁にそれぞれ電気的に接続されるように、積層体3の第1および第2の端面4および5上に、それぞれ、第1および第2の外部電極6および7が形成される。
【0046】
外部電極6および7の材料組成は、特に限定されるものではない。具体的には、内部電極8および9と同じ材料を使用することもできる。また、たとえば、Ag、Pd、Ag−Pd、Cu、Cu合金などの種々の導電性金属粉末の焼結層、または、上記導電性金属粉末とB2O3−Li2O−SiO2−BaO系、B2O3−SiO2−BaO系、Li2O−SiO2−BaO系、B2O3−SiO2−ZnO系などの種々のガラスフリットとを配合した焼結層によって構成される。このような外部電極6および7の材料組成は、積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮して適宜選択される。
【0047】
なお外部電極6および7は、その材料となる金属粉末ペーストを焼成前の積層体3上に塗布して、積層体3の焼成と同時に焼き付けることによって形成させるようにしてもよい。
【0048】
その後、必要に応じて、外部電極6および7はNi、Cu、Ni−Cu合金などからなるめっき層10および11によってそれぞれ被覆される。また、さらに、これらめっき層10および11上に、はんだ、錫などからなる第2のめっき層12および13が形成されてもよい。
【0049】
次に、本発明を具体的な実施例に基づき説明する。なお、本発明の範囲内における実施可能な形態は、このような実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
本実施例において作製しようとする積層セラミックコンデンサは、図1に示すような構造の積層セラミックコンデンサ1である。
【0051】
まず、出発原料として、高純度のTiO2、BaCO3、およびCaCO3を準備して、表1に示す組成の(Ba1-xCax)mTiO3が得られるように秤量した後、混合粉砕した。乾燥後、粉末を1000℃以上の温度で加熱し、表1に示す平均粒径を有する(Ba1-xCax)mTiO3粉末を合成した。なお、平均粒径は走査型電子顕微鏡で観察することによって求めた。
【0052】
【表1】
【0053】
またSiO2を主成分とする焼結助剤としての酸化物ガラス粉末を得るため、表2に示すモル%の組成物が得られるように、各成分の酸化物、炭酸塩および水酸化物を秤量し、混合粉砕した。これら混合粉末を、白金るつぼ中において1500℃まで加熱した後、急冷し、粉砕することによって、平均粒径が0.5μm以下の焼結助剤としての酸化物ガラス粉末を得た。
【0054】
【表2】
【0055】
また、添加成分であるBa、Ca、Mg、Mn、Re(ただし、Reは希土類元素)として、BaCO3、CaCO3、MgO、MnO、Dy2O3、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Ho2O3およびEr2O3を準備した。
【0056】
次に、これらの原料粉末と(Ba1-xCax)mTiO3粉末および焼結助剤とを表3に示す組成になるように配合し、配合物を得た。この配合物にポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールなどの有機溶剤を加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを調製した。このセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート成形し、厚み2.7μmの矩形のグリーンシートを得た。次に、このセラミックグリーンシート上に、Niを主体とする導電性ペーストを印刷し、内部電極を構成するための導電性ペースト膜を形成した。
【0057】
【表3】
【0058】
次いで、セラミックグリーンシートを、導電性ペースト膜の引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、積層体を得た。この積層体を、N2雰囲気中にて350℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、10-9〜10-12MPaのH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中において表4に示す温度で2時間焼成した。
【0059】
焼成後の積層体の両端面にB2O3−Li2O−SiO2−BaO系のガラスフリットを含有する銀ペーストを塗布し、N2雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。
【0060】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅が5.0mm、長さが2.4mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは2μmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は5であり、1層あたりの対向電極面積は16.3×10-6m2であった。
【0061】
次に、これらの得られた試料について電気特性を測定した。
【0062】
まず、静電容量(C)および誘電損失(tanδ)を、自動ブリッジ式測定器を用い、JIS規格C5102に従って測定し、得られた静電容量から比誘電率(ε)を算出した。
【0063】
また、絶縁抵抗計を用い、温度25℃において、10Vの直流電圧を2分間印加して25℃での絶縁抵抗(R)を求め、比抵抗(logρ)を算出した。
【0064】
また、5kV/mmの直流バイアスを印加したときの容量変化率を、直流バイアスを印加しない時の静電容量を基準として求めた。
【0065】
また、温度変化に対する静電容量の変化率を、20℃での静電容量を基準とした−25℃から+85℃の範囲での変化率(ΔC/C20)と、25℃での静電容量を基準とした−55℃から+125℃の範囲での変化率(ΔC/C25)として求めた。
【0066】
また、昇圧速度100V/秒で直流電圧を印加して、絶縁破壊電圧を測定した。
【0067】
また、DCバイアスエージング試験として、温度85℃において、1kHz、1Vrmsの交流電圧に、4Vの直流電圧を重畳して100時間印加した後の静電容量の変化率を、4Vの直流電圧を印加する前を基準として求めた。
【0068】
また、高温負荷試験として、温度150℃において、直流電圧20Vを印加して、その絶縁抵抗の経時変化を測定した。なお、高温負荷試験は、各試料の絶縁抵抗値(R)が105Ω以下になったときを故障とし、平均寿命時間を求めた。
【0069】
以上の電気特性の測定結果を表4に示す。
【0070】
さらに、得られた積層セラミックコンデンサ中の誘電体セラミックの平均結晶粒子径を、積層体の断面研磨面を化学エッチングし、走査型電子顕微鏡で観察することによって求めた。この結晶粒子径を表4に示す。
【0071】
なお、表3、4において、試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものであり、その他は本発明の範囲内のものである。
【0072】
【表4】
【0073】
表3、4からわかるように、本発明の範囲内にある試料12〜35によれば、温度に対する静電容量の変化率が−25℃から+85℃の範囲でJIS規格に規定するB特性を満足し、−55℃〜+125℃の範囲でEIA規格に規定するX7R特性を満足する。また、直流バイアスを印加し続けたときの容量変化(DCバイアスエージング)は−30%以内に抑えられ、静電容量の安定性に優れる。さらに、高温負荷試験での平均寿命時間は、多くは100時間以上、少なくとも80時間以上と長く、信頼性に優れる。そして、焼成温度も1200℃以下の温度で焼成可能である。以下に、組成範囲を限定した理由について説明する。
【0074】
試料1のように、Ca量xが0.02未満の場合には、直流バイアス(5kV/mm)印加時の容量変化率が−65%と大きく、また平均寿命が2時間と短くなる。一方、試料2のように、Ca量xが0.15を超える場合には、比誘電率が1200と小さく、tanδも10.5%と大きくなる。なお、より好ましくは、試料14のように、Ca量xが0.05以上の場合である。このときには特に平均寿命が125時間で、試料15の90時間または試料23の100時間のように、xが0.02〜0.04の場合よりも有利である。
【0075】
また、試料3のように、(Ba、Ca)/Ti比mとMO(ただしMはBaおよびCaのうちの少なくとも1種類)量αの和(m+α)が1.000未満の場合、比抵抗(logρ、以下同様)が11.4Ω・cmと低くなり、また平均寿命時間が著しく短く、高温で電圧を印加した直後にほぼ故障に至る。一方、試料4のように、(Ba、Ca)/Ti比mとMO量αの和(m+α)が1.035を超える場合、焼結性が不足し、比誘電率も1400と小さく、平均寿命時間も2時間と短い。また、試料5のように、(Ba、Ca)/Ti比mとMO量αの和(m+α)が1.000以上の場合であっても、(Ba、Ca)/Ti比mが0.990未満のときは、比抵抗が10.5Ω・cmと低くなり、平均寿命時間が著しく短くなる。
【0076】
また、試料6のように、MgO量βが0.001未満の場合には、比抵抗が11.3Ω・cmと低く、温度特性がB特性およびX7R特性を満足しない。一方、試料7のように、MgO量βが0.05を超えると、焼結温度が高くなり、温度特性がB特性およびX7R特性を満足せず、また平均寿命時間が3時間と短くなる。
【0077】
また、試料8のように、MnO量γが0.0001未満の場合、比抵抗が10.2Ω・cmと低くなる。一方、試料9のように、MnO量γが0.001以上の場合、直流バイアスを印加し続けたときの容量変化(DCバイアスエージング)が−35%と大きくなる。
【0078】
また、試料10のように、ReO3/2量δが0.001未満の場合には、平均寿命時間が75時間と短くなる。一方、試料11のようにReO3/2量δが0.06を超える場合には、温度特性がB特性およびX7R特性を満足しない。
【0079】
また、試料28〜30および32〜35と試料31との比較でわかるとおり、ReがY、Gd、Tb、Ho、ErまたはYbである場合、ReがDyの場合と同様に、特性に優れたものとなる。
【0080】
また、試料12のように焼結助剤量が0の場合、平均寿命時間が81時間とやや短くなる。一方、試料13のように、焼結助剤量が5.0重量部を超える場合には比誘電率が1520とやや小さくなる。これに対して、焼結助剤量を0.2〜5.0重量部とすることにより、比誘電率の低下を抑えて平均寿命時間を延ばすことができる。
【0081】
また、焼結助剤の種類としては、本実施例で使用したa、b、c3種類の焼結助剤のように、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0082】
また、試料16のように、平均結晶粒子径が0.55μmと比較的大きいものは、比誘電率が大きくなるが、本実施例のように誘電体セラミック層を2μmと薄層化した場合、平均寿命時間が80時間とやや短くなる。一方、試料17のように、平均結晶粒子径が0.045μmと小さいものは、平均寿命時間は長くなるが、比誘電率が1550とやや小さくなる。これに対して、平均結晶粒子径を0.05〜0.5μmの範囲内とすることにより、比誘電率の低下を抑えて平均寿命時間を延ばすことができる。
【0083】
なお、上記実施例では、金属元素としてBa、Ca、Tiを含有する複合酸化物原料として、固相法により作製した(Ba1-xCax)mTiO3粉末を用いたが、これに限定するものではなく、アルコキシド法あるいは水熱合成法など湿式合成法により作製された粉末を用いてもよい。さらに、原料粉末の結晶構造を(Ba1-xCax)mTiO3に限定するものではなく、Caの一部またはすべてがTiサイトに固溶した粉末を用いてもよい。
【0084】
また、添加成分であるBa、Ca、Mg、Mn、Re(Reは希土類元素)の各酸化物およびSiO2を含有する焼結助剤は、この発明の範囲内の誘電体セラミック相を構成できるものであれば、アルコキシド、有機金属などの溶液を用いてもよく、これによって得られる特性は何ら損なわれるものではない。
【0085】
また積層コンデンサの内部電極に含まれるNiの粒子表面には、本来、NiOが存在する。酸化しやすい焼成条件によっては、NiOが多く生成し、このNiOは、積層コンデンサの積層体を得るための焼成工程において、積層体を構成する誘電体セラミック中に拡散する場合がある。また、内部電極の焼結を抑制する目的でZrO2成分などを添加することもあり、このような添加物組成は、焼成時に、誘電体セラミック組成に対して最大で数モル%まで拡散する場合がある。本発明の誘電体セラミックにおいては、これらの電極成分が拡散しても、その電気特性に影響がないことを確認している。
【0086】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の誘電体セラミックは、温度に対する静電容量の変化率がB特性およびX7R特性を満足する。また、直流バイアスを印加し続けたときの容量変化は−30%以内に抑えられ、静電容量の安定性に優れる。さらに、高温負荷試験での平均寿命時間はほぼ100時間以上と長く、信頼性に優れる。そして、焼成温度も1200℃以下の温度で焼成可能である。
【0087】
また、本発明の誘電体セラミックは、コアシェル構造に基づき誘電率の温度特性を平坦化するのではなく、組成物本来の温度特性に基づき誘電率の温度特性の平坦化を図るので、温度特性や信頼性が添加成分の拡散状態に影響されず、焼成条件による特性の変動を少なくすることができる。このため、この誘電体セラミックを用いて、特性のばらつきが少なく、誘電率の温度特性が安定しかつ優れた、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0088】
また、この誘電体セラミックは、耐還元性を有しているため、卑金属であるニッケルまたはニッケル合金を内部電極とした積層セラミックコンデンサを得ることができ、積層セラミックコンデンサのコストダウンを図ることができる。
【0089】
また、本発明の誘電体セラミックに、たとえばSiO2を主成分とする焼結助剤が添加されていると、誘電体セラミックの焼成工程において、誘電体セラミックをたとえば1250℃以下といった比較的低温で焼結させることが容易になる。したがって、積層セラミックコンデンサにおいては、焼成時における内部電極の収縮も小さくなり、誘電体セラミック層の厚みが薄くても積層セラミックコンデンサの信頼性をより高くすることができるとともに、内部電極として、ニッケル、銅などの卑金属またはその合金を含むものを問題なく用いることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 誘電体セラミック層
3 積層体
4 第1の端面
5 第2の端面
6 第1の外部電極
7 第2の外部電極
8 第1の内部電極
9 第2の内部電極
Claims (8)
- 一般式:(Ba1-xCaxO)mTiO2+αMO+βMgO+γMnO+δReO3/2(ただし、MはBaおよびCaのうちの少なくとも1種類の元素、Reは希土類元素)で表され、x、m、α、β、γおよびδがそれぞれ、
0.02≦x≦0.15
0.990≦m
1.000≦(α+m)≦1.035
0.001≦β≦0.05
0.0001≦γ≦0.0005
0.001≦δ≦0.06
の範囲内(ただし、α、β、γ、δはモル比)にあり、
かつ、平均結晶粒子径が、0.05〜0.5μmの範囲内にあることを特徴とする、誘電体セラミック。 - 前記ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体セラミック。
- さらに、焼結助剤を、前記誘電体セラミック100重量部に対して、0.2〜5.0重量部含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の誘電体セラミック。
- 前記焼結助剤はSiO2を主成分とするものであることを特徴とする、請求項3に記載の誘電体セラミック。
- 複数の積層された誘電体セラミック層を有する積層体と、該積層体の端面上の互いに異なる位置に設けられた複数の外部電極とを備え、前記積層体の内部には、複数の内部電極が、いずれかの前記外部電極に電気的に接続されるように、前記誘電体セラミック層間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成されている、積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が前記請求項1〜4のうちいずれかに記載の誘電体セラミックからなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。
- 前記内部電極は、ニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
- 前記外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなることを特徴とする、請求項5または6に記載の積層セラミックコンデンサ。
- 前記外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなる層と、該層上に形成された少なくとも1層以上のめっき層からなることを特徴とする、請求項5または6に記載の積層セラミックコンデンサ。
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