JP3631570B2 - 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体薄膜およびセラミックコンデンサに関するものであり、例えば、膜厚が2μm以内の誘電体薄膜およびこの誘電体薄膜を用いた高周波用のセラミックコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コンデンサなどに使用される誘電体材料には、高い比誘電率が要求されることは勿論のこと、誘電損失が小さく、温度特性が良好であり、直流電圧に対する誘電特性の依存性が小さい等の種々の要求を満足させる必要がある。
【0003】
従来では、誘電体材料として、チタン酸バリウム(BaTiO)のようなペロブスカイト型の各種酸化物が報告されており、また実用化されている。
【0004】
一方、近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、コンデンサ等の電子部品の小型化、大容量化の要求が高まってきている。この様な要求に応えるために、積層セラミックコンデンサ(MLC)においては、誘電体層を薄層化することにより静電容量を高めると共に、小型化を図る必要が生じている。
【0005】
また、近年、電子機器は動作周波数が加速度的に増大しており、電子部品も高周波領域において優れた特性を示す事が要求されはじめている。コンデンサにおいては、高周波数領域においては電流が流れ易くなり、畜電器としてだけでなく抵抗体やコイルとしての性質も現れてくる。このため高周波用コンデンサは抵抗、インダクタンスが小さい事が重要になる。また、高周波領域においては強誘電体は比誘電率が減少することが知られており、高周波数においても高誘電率を示す材料によりコンデンサを形成する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、BaTiO系のセラミックコンデンサにおいては、誘電体層中の結晶粒径が小さくなり、サイズ効果により比誘電率が低下することが問題となっていた。また薄層化に伴い、誘電体1層当りにかかる電圧が大きくなり、特に直流成分のかかった状態での静電容量の低下(DCバイアス特性の低下)が問題となっていた。
【0007】
また、典型的なコンデンサ材料であるBaTiO材料は1KHz程度の低周波領域においては大きな比誘電率を示し、コンデンサ材料として優れた材料であるが、周波数分散が大きいため、高周波領域における比誘電率の減少が大きいと考えられ、高周波領域では高誘電率材料として使えないと考えられてきた(特開平6−77083号公報参照)。
【0008】
この為、従来薄膜コンデンサ材料として、比誘電率は小さいが、比誘電率の温度変化率が小さく、自発分極がないために自発分極に起因するDCバイアス依存性や、高周波領域での比誘電率の減少が小さい常誘電体であるTaやSrTiOが主に研究されてきた。しかしながら、これらの薄膜材料は比誘電率が測定周波数1KHzで最大でも数百程度であり、薄膜コンデンサをさらに小型、高容量化するのは困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、BaTi1−x(ZrのZr原子を化学量論組成から減少した、即ちBaTi1−x(Zrと表した時のpを0.80≦p<1.00とした誘電体薄膜が、低周波領域および高周波領域において高い比誘電率を有し、かつDCバイアスに対する依存性も小さく、さらに静電容量の温度変化率も小さくなることを見い出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の誘電体薄膜は、金属元素としてBa、TiおよびZrからなるペロブスカイト型複合酸化物よりなる誘電体薄膜であって、その組成式をBaTi1−x(Zrと表した時のxおよびpが、0.02≦x≦0.25、0.80≦p<1.00を満足するものである、ここで、pが、0.80≦p≦0.95を満足することが望ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物の平均結晶粒径が、0.11μm〜0.20μmであることが望ましい。また、誘電体薄膜は、測定周波数1kHz(室温)における比誘電率が1200以上、測定周波数100MHz(室温)における比誘電率が1100以上のものである
【0011】
本発明のセラミックコンデンサは、上記した誘電体薄膜の両面に一対の電極を形成してなるものである。
【0012】
【作用】
BaTiO系の誘電体材料においては、120℃、10℃、−70℃に相転移点が存在し、その近傍で比誘電率が高くなっている。つまり室温付近はこの相転移点の中間に存在し、温度特性は良好であるが比誘電率はあまり大きくない。
【0013】
本発明のセラミックコンデンサでは、BaTiOのTi原子をZr原子にて置換することにより、3点の相転移点は室温付近にシフトし、室温で3点の相転移点が重なるため、高い比誘電率を実現している。また薄膜中の平均結晶粒径を細かくすることにより、強誘電体的性質に常誘電体的性質が現れるために、静電容量の温度変化率は小さくなり、また比誘電率は多少低下するが、直流電圧がかかった状態の静電容量の低下が抑制され、DCバイアス特性は良好となる。
【0014】
また、薄膜中の平均結晶粒径を細かくすることにより、自発分極が小さくなり常誘電体的性質が支配的になるために、強誘電性の起源である自発分極に依存した高周波領域における比誘電率の減少が低減し、高周波領域においても低周波領域と同様に大きな比誘電率を示す。従って、BaTi1−xZrで表わされる誘電体薄膜では、測定周波数100MHz(室温)における比誘電率が950以上となり、低周波および高周波において高い比誘電率を有するとともに、DCバイアス特性および静電容量の温度特性が良好となる。
【0015】
また、本発明の誘電体薄膜によれば、BaTi1−xZrで表される組成式のZr原子を化学量論組成から減少した、即ちBaTi1−x(Zrと表された時のpを0.80≦p<1.00、特に0.80≦p≦0.95としたので、Zr欠陥が発生し、原子の揺らぎが大きくなり、同じ平均粒子径を持つBaTi1−xZrからなる誘電体薄膜に比べて、測定周波数1kHz及び100MHzにおける比誘電率を10%〜20%向上することができる。
【0016】
さらに、ペロブスカイト型複合酸化物の平均結晶粒子径が0.11〜0.20μmと小さいことから、誘電体薄膜の薄層化を促進することができるとともに、強誘電性が消失し、常誘電体的性質が支配的になるため、静電容量の温度特性及びDCバイアス特性を良好とすることができる。また強誘電性の起源である自発分極が消失するため自発分極に起因する誘電率の周波数分散が小さくなり、100MHzの様な高周波領域においても大きな比誘電率を示す。
【0017】
即ち、本発明では、測定周波数1kHzでの比誘電率が1200以上で、温度特性もコンデンサのJIS規格におけるB特性を満足し、且つ直流電圧印加による静電容量の減少率(DCバイアス特性)も5V/μmの電界印加時に30%未満と小さいため、低周波において優れたセラミックコンデンサであるだけでなく、100MHzでの比誘電率が1100以上であり、バイパスコンデンサやデカップリングコンデンサのようなIC等の高周波回路用のコンデンサとして優れたセラミックコンデンサを得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体薄膜は、組成式をBaTi1−x(Zrと表した時のxおよびpが、0.02≦x≦0.25、0.80≦p<1.00を満足するものである。ここで、BaTi1−x(Zrのpを0.80≦p<1.00としたのは、pが0.80より小さい場合には比誘電率が小さくなるからである。pは、測定周波数1kHzでの比誘電率を1200以上とし、100MHzの比誘電率を1100以上とするという観点から、0.80≦p≦0.95であることが望ましい。
【0019】
また、上記組成式において、xを0.02〜0.25としたのは、xが0.02よりも小さい場合にはBaTiOのサイズ効果により比誘電率が小さくなり、xが0.25よりも大きい場合には比誘電率が最大となる温度が室温以下となるからである。xは、室温で比誘電率が大きくなるという観点から、0.05〜0.1が望ましい。
【0020】
さらに、BaTi1−x(Zrの平均結晶粒径dを0.11〜0.20μmとしたのは、平均結晶粒径dが0.11μm未満であると比誘電率が低下し易くなるからである。また0.20μmより大きい場合には静電容量のDCバイアス特性が低下し易く、5V/μmの直流電圧印加時に30%を越えるからである。このように、BaTi1−x(Zrの平均結晶粒径dを0.11〜0.20μmとするためには、ゾルゲル法により誘電体薄膜を形成し、1000℃以上の温度で焼成することが望ましい。
【0021】
また、誘電体薄膜を挟持する電極としては、0.05μm厚さ以上の配向した白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)薄膜等があり、これらのうちでも配向した白金(Pt)と金(Au)薄膜が最適である。Pt、Auは膜との反応性が小さく、また酸化されにくい為、膜との界面に低誘電率相が形成されにくい為である。膜厚を0.05μm以上としたのは0.05μm未満であると高周波領域における等価直列抵抗が大きくなるためである。配向した白金(Pt)薄膜とは、配向性または単結晶的白金(Pt)薄膜であり、配向性を有するPt薄膜とは、3つの結晶軸のうち一つの軸が膜表面に近似的に垂直な方向に揃った膜であり、単結晶的Pt薄膜とは3つの結晶軸が全て揃った膜である。このような電極は、スパッタ蒸着やレーザ蒸着法等物理的蒸着において、電極が形成される基板温度を450℃以上とすることにより得られるもので、これらのうちでも、基板温度を450℃以上としたスパッタ蒸着が望ましい。
【0022】
また、金属薄膜を蒸着する基板としては、アルミナ、サファイア、MgO単結晶、SrTiO 単結晶、チタン被覆シリコン、もしくは銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ステンレススティール(Fe)薄膜もしくは薄板が望ましい。特に、薄膜との反応性が小さく、安価で、硬度が大きく、かつ、金属薄膜の結晶性という点からアルミナ、サファイアが望ましく、高周波領域における低抵抗化の点で銅(Cu)薄板もしくは銅(Cu)薄膜が望ましい。
【0023】
本発明の誘電体薄膜では、BaTi1−x(Zr微粒子をゾルゲル法、水熱合成法等の湿式合成法により作製するのが好ましい。以下、ゾルゲル法を用いて作製する例を記載する。
【0024】
具体的には、先ず、Ba(OR(R:炭素数1以上の炭化水素基)で表される、例えばバリウムメトキシド等のバリウムアルコキシドと、ROCOH(R:炭素数1以上の炭化水素基)で表される、例えば2−メトキシエタノール等のアルコール類とのアルコール交換反応による溶液、あるいは固体のバリウム金属を前記ROCOHに溶解してBa(OCORで表される、例えばバリウムメトキシエトキシド溶液を合成する。
【0025】
一方、Ti(OR(R:炭素数1以上の炭化水素基)で表される、例えばチタンブトキシド等のチタンアルコキシドと、前記ROCOHとのアルコール交換反応からTi(OCORで表される、例えばチタンメトキシエトキシド溶液を合成する。
【0026】
また、Zr(OR(R:炭素数1以上の炭化水素基)で表される、例えばジルコニウムブトキシド等のジルコニウムアルコキシドと、前記ROCOHとのアルコール交換反応からZr(OCORで表される、例えばジルコニウムメトキシエトキシド溶液を合成する。
【0027】
次に、所定モル濃度で前記Ti(OCOR溶液とZr(OCOR溶液を混合した後、等モル濃度の前記Ba(OCOR溶液とTi(OCOR溶液およびZr(OCOR溶液を混合し、室温攪拌あるいは加熱撹拌もしくは還流して、Ba,Ti,Zrの原子比がBaTi1−x(Zrの比率に調製されたBa−Ti−Zr複合アルコキシド溶液を得る。
【0028】
得られた複合アルコキシド溶液を塗布溶液とし、ディップコーティング法や、スピンコーティング法、スプレーコーティング法等により基板に塗布する。
【0029】
次に、塗布溶液中の溶媒の沸点以上、BaTi1−x(Zrの結晶化温度以下の温度範囲、例えば120℃〜500℃で熱処理してアルコールや残留水分の含有量を所定量以下に乾燥除去する。さらに結晶化温度以上の温度で適宜熱処理してもよい。上記複合アルコキシド溶液の塗布から熱処理までの操作を所望の膜厚が得られるまで繰り返し行う。この操作の繰り返し回数は、塗布溶液の濃度、粘度及び薄膜の厚さにより適宜決定することができる。
【0030】
本発明によれば、所定の膜厚を形成した後、BaTi1−x(Zrの結晶化温度以上の温度、例えば、酸化性雰囲気中、700℃以上の温度で、膜厚により約10分から12時間程度焼成してBaTi1−x(Zrからなる誘電体薄膜を得る。粒径の制御は、焼成温度、焼成時間によって行う。
【0031】
また、焼成はその都度重量変化が生じなくなるまで行う事が望ましく、予め使用する複合アルコキシドで作製した乾燥ゲルの重量変化を熱分析で測定し、結晶化温度以上の温度で重量変化が認められなくなる時間を決定し、その時間を焼成時間として採用すれば良い。以上のようにして、本発明の誘電体薄膜を得る。
【0032】
また、本発明のセラミックコンデンサは、上記のようにして得られた複合アルコキシド溶液を塗布溶液とし、ディップコーティング法や、スピンコーティング法、スプレーコーティング法等により、Pt等の電極用金属薄膜を蒸着した基板に塗布する。金属薄膜を蒸着する基板としては、サファイア,SiO,Si,MgO,SrTiO,アルミナ,石英等が用いられるが、金属薄膜との反応性が小さく、安価、かつ金属薄膜の結晶性という点からサファイアが望ましい。
【0033】
また、溶液を塗布する際に、金属薄膜電極と塗布溶液との付着が不十分である場合には、金属薄膜電極と塗布溶液との濡れ性を向上すべく、複合アルコキシド溶液を調製する際の溶媒量を変えて、第1回目に塗布する溶液の濃度を薄くすることにより塗布膜の均一性を改善でき、この際に用いる複合アルコキシド溶液は溶媒量が異なるだけで、組成等には変化が無いことから、組成上の均一性を損なうことはない。
【0034】
次に、上記と同様にして焼成し、この後、上記と同様な電極用金属薄膜を蒸着することにより、本発明のセラミックコンデンサを得る。本発明の誘電体薄膜の厚みは、薄層化のためには2μm以下、特には、1μm以下が望ましい。
【0035】
図1に本発明のセラミックコンデンサの縦断面図を示す。図において、符号1は、アルミナ、サファイア,SiO等の基板であり、符号2,3は電極、符号4は誘電体薄膜である。
【0036】
尚、誘電体薄膜と電極とを交互に積層した積層セラミックコンデンサであっても良いことは勿論である。
【0037】
また、塗布溶液の濃度を薄くしたものを塗布、乾燥する行程を多数回繰り返した方が、膜の均一性を向上できることは言うまでもない。
【0038】
また、得られた前記複合アルコキシド溶液に、全金属モル数の10〜20倍の水を溶媒と混合したものを、撹拌しながら滴下、混合する。100℃〜120℃に加熱し、撹拌しながら溶媒を完全に除去する。得られたゲルを500℃以下の温度で熱処理し、有機成分を除去して、仮焼粉体を得る。この仮焼粉体に所定のバインダーを添加し、成形し焼成することによってもBaTi1−x(Zr膜体を得ることができる。
【0039】
さらに、0.11〜0.20μmの平均結晶粒径を有するBaTi1−x(Zrを得るためには、1000℃以上の焼成温度が必要である。多結晶Pt薄膜電極の上にBaTi1−x(Zr膜を形成する場合、1000℃以上の焼成温度においてPt多結晶も3次元的に粒成長する為、BaTi1−x(Zrと反応が容易に起こり、BaTi1−x(Zrの粒成長を抑制する。一方、配向したPt膜を用いると、Pt自身が温度によらず焼成により膜面に平行方向に2次元的な粒成長をするか、もしくは粒成長しない為、BaTi1−x(Zrとの反応が起こりにくく、Ptの拡散していない粒成長したBaTi1−x(Zrが得られる。よって、電極としては、配向したPt膜が望ましい。
【0040】
【実施例】
実施例1
先ず、金属バリウム(Ba)を溶媒である2−メトキシエタノール(CHOCOH)に溶解して、0.4M(mol/l)のバリウムメトキシエトキシド(Ba(OCOCH))溶液を調製した。一方、テトラプロポキシチタン(Ti・(O−i−Pr))を2−メトキシエタノール(CHOCOH)に溶解して0.4M(mol/l)のチタンメトキシエトキシド(Ti(OCOCH)溶液を調製した。次にテトラプロポキシジルコニウム(Zr・(O−n−Pr))を2−メトキシエタノール(CHOCOH)に溶解して0.4M(mol/l)のジルコニウムメトキシエトキシド(Zr(OCOCH)溶液を調製した。これら3種の溶液をBaTi1−x(Zrと表した時のxとpが表1の値となる様に混合し、124℃で2時間還流操作を行い、塗布溶液を調製した。
【0041】
得られた塗布溶液を、サファイア単結晶上に電極となる白金を650℃でスパッタ蒸着してなる基板にスピンコーティング法により塗布した。300℃に保持したホットプレートで1分間、さらに750℃の温度で5分間熱処理した後、室温まで冷却した。塗布および熱処理する工程を30回繰り返した後、管状炉で50ml/分の酸素を流しながら、1100〜1150℃で各20分〜3時間焼成し、膜厚が0.80μmのBaTi1−x(Zrからなる試料を作製した。
【0042】
得られた誘電体薄膜をX線回折測定(XRD)により分析を行ったところ、いずれも結晶構造が立方晶構造であることを確認した。
【0043】
得られた試料について、表面SEM(走査型電子顕微鏡)観察と断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行い、平均結晶粒子径を求めた。また、試料表面に直径0.2mmの金(Au)の円形電極をスパッタ蒸着し、LCRメーター(ヒュウレットパッカード製4284A)を用いて、比誘電率,誘電損失,これらの直流バイアス特性、温度変化率を測定した。
【0044】
測定条件は、測定周波数f=1kHz、印加電圧Vrms =100mVとした。
【0045】
室温での比誘電率(K)、誘電損失(DF)および−25℃と85℃の静電容量の変化率を測定し、これらの結果を表1に示す。尚、−25℃の静電容量の変化率TCC(%)は、−25℃の静電容量をCp−25とし、25℃の静電容量をCp25とした時、(Cp−25−Cp25)×100/Cp25で求め、85℃の静電容量の変化率TCC(%)は、85℃の静電容量をCp85とし、25℃の静電容量をCp25とした時、(Cp85−Cp25)×100/Cp25で求めた。またDCバイアス特性を、電界を印加しない場合の静電容量C、5V/μmの電界を印加したときの静電容量Cとした時に、(C−C)/C×100で求め、表1に記載した。
【0046】
また、インピーダンスアナライザ(ヒュウレットパッカード社製HP4291A,フィクスチャーHP16092A)を用いて1MHz〜1.8GHzにおける特性評価をおこなった。インピーダンス−周波数特性の測定により、100MHzにおける等価直列容量を評価し、比誘電率を求めた。
【0047】
表1
Figure 0003631570
【0048】
この表1より、本発明では、試料No.2〜4、7〜9、12〜15、18、19、22、23から判るように、いずれも1kHz(室温)における比誘電率1200以上、100MHz(室温)における比誘電率1100以上で、静電容量の温度変化率±10%以内、DCバイアス5V/μm印加時に減少率30%未満を満足している。一方、本発明の範囲外の試料では、1kHzおよび100MHzにおける比誘電率がそれぞれ1200、1100未満であることが判る。
【0049】
図2に、組成式BaTi1−x(Zrで、xが0.05と0.10の場合について、pを0.75〜1.05とした時の比誘電率を記載した。このグラフよりpが0.80≦p<1.00を満足する場合には、p=1の時よりも比誘電率が大幅に向上していることが判る。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、BaTi1−xZrで表される組成式のZr原子を化学量論組成から減少した、即ちBaTi1−x(Zrと表された時のPを0.80≦p<1.00としたので、電界に対する原子の揺らぎが大きくなり、同じ平均粒子径を持つBaTi1−xZrからなる誘電体薄膜に比べて、比誘電率を10%〜20%向上することができる。
【0051】
また、ペロブスカイト型複合酸化物の平均結晶粒子径が0.11〜0.20μmと小さいことから、誘電体薄膜の薄層化を促進することができるとともに、強誘電性が消失し、常誘電体的性質が現れ、静電容量の温度特性及びDCバイアス特性を良好とすることができる。また同時に、常誘電的性質が支配的であるため、比誘電率の周波数分散も小さく高周波において高誘電率が得られる。
【0052】
以上詳述したように、本発明の誘電体薄膜は、DCバイアス特性、温度特性が優れているうえに、100MHzの様な高周波においても比誘電率が大きい為、素子の小型化を図ることができるとともに、ICまわりのデカップリングコンデンサ等の高周波領域で用いられるコンデンサとして広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミックコンデンサを示す縦断面図である。
【図2】組成式BaTi1−x(Zrにおいて、xが0.05と0.10の場合についてpを0.75〜1.05とした時の比誘電率を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・基板
2,3・・・電極
4・・・誘電体薄膜

Claims (5)

  1. 金属元素としてBa、TiおよびZrからなるペロブスカイト型複合酸化物よりなる誘電体薄膜であって、その組成式を
    BaTi1−x(Zr
    と表した時のxおよびpが、
    0.02≦x≦0.25
    0.80≦p<1.00
    を満足することを特徴とする誘電体薄膜。
  2. pが、0.80≦p≦0.95を満足することを特徴とする請求項1記載の誘電体薄膜。
  3. ペロブスカイト型複合酸化物の平均結晶粒径が、0.11μm〜0.20μmであることを特徴とする請求項1または2記載の誘電体薄膜。
  4. 測定周波数1kHz(室温)における比誘電率が1200以上、測定周波数100MHz(室温)における比誘電率が1100以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体薄膜。
  5. 請求項1記載の誘電体薄膜の両面に一対の電極を形成してなることを特徴とするセラミックコンデンサ。
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