JP3411201B2 - 誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体薄膜およびセラミックコンデンサ

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JP3411201B2 JP32844497A JP32844497A JP3411201B2 JP 3411201 B2 JP3411201 B2 JP 3411201B2 JP 32844497 A JP32844497 A JP 32844497A JP 32844497 A JP32844497 A JP 32844497A JP 3411201 B2 JP3411201 B2 JP 3411201B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は誘電体薄膜およびこ
の誘電体薄膜を用いたセラミックコンデンサに関するも
のである。
【0002】
【従来技術】2種以上の金属からなる複合ペロブスカイ
ト酸化物、特にPb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (以下、
PMNということもある)のようなリラクサ材料は室温
で大きな比誘電率を有するため、コンデンサ材料として
有用であることが知られている。
【0003】このようなPMN焼結体として、従来、P
bO粉末とMgCO3 粉末とNb25 粉末とを一括し
て混合粉砕し、焼結する固相焼結法が知られている。し
かしながら、このような一括して混合粉砕する固相焼結
によるPMN焼結体の作製では、ほぼペロブスカイト単
相からなる焼結体を得るのは困難であり、低温で安定な
パイロクロア相が生成し易く、また生成したパイロクロ
ア相は比誘電率が低いため、結果として焼結体の比誘電
率が低くなり、コンデンサ材料として不適当な場合が多
い。
【0004】このため、固相焼結法では、MgNb酸化
物(MgNb2 6 )とPb原料、およびTi原料を反
応させるコランバイト法による合成が行われている。こ
の方法によれば、ほぼペロブスカイト単相の焼結体を得
ることが可能となり、比誘電率を15000以上とする
ことができる。しかしながら、従来、これらバルク材料
は比誘電率の周波数分散が大きく、1MHz以上の高周
波では比誘電率が小さくなり、コンデンサとして機能し
なくなると考えられていた。
【0005】近年、電子機器の小型、薄形化に伴い、電
子部品の小型化、薄膜化が要求されている。特に受動部
品であるコンデンサの小型、薄形化は必須となってい
る。また、コンピュータ等の高速デジタル回路を用いた
電子機器は高周波化の流れにあり、数10MHzから数
100MHzの動作周波数帯域が重要になってきてい
る。これにともない、コンデンサ等の受動部品も高周波
もしくは高速デジタルパルスに対して優れた特性を示す
ことが必須になってきている。
【0006】近年、PMN等の高誘電率材料を薄膜化
し、薄膜コンデンサに応用しようとされているが、従来
の固相焼結法では膜厚はせいぜい10μm程度であっ
た。また薄膜においても固相焼結法による焼結体と同
様、低温で安定なパイロクロア相が生成し易く、ほぼペ
ロブスカイト単相からなる膜を得るのが困難となり、コ
ンデンサ材料として不適当な場合が多い。特に薄膜化す
る場合、下部電極との格子の不整合および化学結合の相
違等でパイロクロア相が生成し易いという問題がある言
われており(例えば、特開平6−57437号公報参
照)、パイロクロア相の少ないペロブスカイト単相のP
MN薄膜を得るのが困難であった。
【0007】このパイロクロア相生成の問題を解決する
手法として、ゾルゲル法で作製されたPMN薄膜におい
ては、急速昇温焼成(特開平2−177521号公報参
照)やシーディング法(特開平6−57437号公報参
照)等の種々の手法が提案されており、ペロブスカイト
単相に近いPMN薄膜が得られている。また、急速昇温
焼成法によるPMN薄膜では、ほぼペロブスカイト単相
からなる膜が得られ、室温における比誘電率も2000
を越すPMN系薄膜材料が得られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 のようなリラクサ材料は1K
Hz程度の低周波数においては大きな比誘電率を示し、
コンデンサ材料として優れた材料であるが、比誘電率の
周波数分散が大きいため、高周波領域における比誘電率
の減少が大きく、高周波領域では高誘電率材料として使
えないと考えられてきた(特開平6−77083号公報
参照)。
【0009】また、急速昇温焼成を用いたゾルゲル法で
作製されたPMN系薄膜は、粒成長速度が大きく、短時
間で数μmレベルの大きな粒子を形成する為、マイクロ
ポアを内在し易く、大気中の水を吸着し易い為、コンデ
ンサとして重要である絶縁抵抗が大気中の湿度により低
下する問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
の解決方法を鋭意検討した結果、バルクにおいて、マク
ロな自発分極を持たないため、DCバイアス依存性が小
さいが、大きな比誘電率を持つPMNに、誘電的活性の
大きいPbTiO3 (以下、PTということもある)を
固溶した材料を薄膜化することにより、大きな誘電活性
を示し、DCバイアス印加下でも大きな比誘電率を示
し、かつ高周波領域においても比誘電率の減少が小さく
なることを知見し、本発明に至った。
【0011】さらに、粒成長に大きな活性化エネルギー
が必要なため粒成長し難いPbTiO3 と、粒成長速度
の大きいPMNを積層し、熱処理(焼成)により固溶体
を形成し、バルクのPMN−PT固溶体に比べ大きな格
子定数を持つPMN−PT膜を形成することにより、大
気中の湿度に対し影響を受け難くく高絶縁性を示すこと
を知見し、本発明に至った。
【0012】即ち、本発明の誘電体薄膜は、金属元素と
してPb、Mg、NbおよびTiを含むペロブスカイト
型複合酸化物からなる膜厚2μm以下の誘電体薄膜であ
って、前記金属元素酸化物のモル比による組成式を (1−x)Pb(Mgb/3Nb2/3)O・xP
bTiO と表した時、前記x、aおよびbが、0<x≦0.3
5、1≦a≦1.15、1≦b≦1.15を満足すると
ともに、格子定数W(nm)と前記xで表されるA
((0.4043−W)/x)の値が3.9×10 −3
≦A≦7.3×10 −3 を満足するものである。
【0013】ここで5V/μmの直流電界印加時に流れ
る電流密度が0.1μA/cm2 以下であることが望ま
しい。また測定周波数1kHz(室温)および測定周波
数100MHz(室温)における比誘電率がいずれも1
500以上であることが望ましい。
【0014】本発明の誘電体薄膜は、PT前駆体溶液を
塗布、熱処理した後、PMN前駆体溶液を塗布して熱処
理し、750〜850℃で急速昇温焼成を行なうことに
より得られる。
【0015】本発明のセラミックコンデンサは、上記誘
電体薄膜の両面に一対の電極を対向して形成してなるも
のである。
【0016】
【作用】本発明の誘電体薄膜によれば、マクロな自発分
極を持たないためDCバイアス特性に優れ、かつ高誘電
率であるPMNに、誘電的活性の大きいPbTiO3
固溶するため、高誘電率でDCバイアス特性に優れた材
料になる。
【0017】またPbTiO3 を固溶することにより、
比誘電率の最大となる温度が高温側にシフトし、室温以
上での比誘電率が向上する。
【0018】さらに、薄膜にすることにより、ペロブス
カイト型複合酸化物の膜厚方向の平均結晶粒子径がサブ
ミクロンのオーダに小さくなり、より常誘電体的性質が
支配的になるため、静電容量の温度特性及びDCバイア
ス特性を良好とすることができ、100MHzの様な高
周波においても、誘電率の周波数分散が小さく、高周波
においても大きな比誘電率を示す。
【0019】また、粒成長速度の小さいPbTiO3
粒成長速度の大きいPMNを積層し、急速昇温焼成によ
り急速に焼結及び固溶を行うため、PbTiO3 により
粒成長が抑制され、緻密な膜を形成し、大気中の湿度に
よる絶縁抵抗の低下を防止できる。
【0020】また、PTにより過剰の粒成長を抑制する
ことにより、PTを固溶することにより現れるPMN−
PT固溶体の強誘電性を抑制し、より常誘電体的性質が
支配的になるため、静電容量の温度特性及びDCバイア
ス特性を良好とすることができ、また、100MHzの
様な高周波においても、大きな比誘電率を示す。
【0021】本発明のセラミックコンデンサでは、上記
したような優れた特性を有する誘電体薄膜の両面に、例
えば、膜厚0.05μm以上の白金(Pt)、金(A
u)、パラジウム(Pd)薄膜からなる一対の電極を対
向して形成することにより、高周波においても高容量で
優れた薄膜コンデンサを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の誘電体薄膜は、膜厚2μ
m以下の誘電体薄膜である。ここで、膜厚2μm以下の
誘電体薄膜としたのは、これより厚くなると工程数が増
加し、また、コンデンサを構成した場合、容量が小さく
なるからである。誘電体薄膜の膜厚は、製造の容易性、
膜質劣化の点で1μm以下が望ましく、さらに膜の絶縁
性を考慮すると特に0.3μm〜1μmが望ましい。
【0023】また、モル比による組成式を、(1−x)
Pba (Mgb/3 Nb2/3 )O3 ・xPbTiO3 と表
した時、前記x、aおよびbが、0<x≦0.35、1
≦a≦1.15、1≦b≦1.15を満足するものであ
る。
【0024】このように、PbTiO3 量を示すxを
0.35以下としたのは、xが0.35よりも多くなる
と、室温での比誘電率が1kHzにおいて1500以下
となり、またリーク電流も0.1μA/cm2 より大き
くなるからである。比誘電率を向上するにはxの範囲は
0<x≦0.20が望ましい。
【0025】また、aを1〜1.15としたのは、aが
1よりも小さい場合にはパイロクロア相が生成し比誘電
率が低下するからであり、1.15よりも大きい場合に
はPbOが粒界に析出し、比誘電率が低下し、絶縁抵抗
も低下するからである。aは特性の再現性が良いという
理由から1.05〜1.1であることが望ましい。
【0026】さらに、bを1〜1.15としたのは、b
が1よりも小さい場合や1.15よりも大きい場合に
は、比誘電率が低下するからである。bは特性の再現性
が良いという理由から1〜1.1であることが望まし
い。
【0027】また、本発明の誘電体薄膜は、格子定数W
(nm)と前記PbTiO3 量xとの関係を示すA=
(0.4043−W)/xの式で表されるA値が3.9
×10-3≦A≦7.3×10-3を満足することを特徴と
する。つまり、格子定数Wは、PTの固溶量を示すxの
関数で表されるものであり、Aが上記範囲を外れる場合
には、湿度により絶縁抵抗が低下するからである。Aは
5×10-3≦A≦6×10-3であることが望ましい。
【0028】また、本発明の薄膜コンデンサは、上記し
た誘電体薄膜の両面に一対の電極を対向して形成してな
るものである。尚、誘電体薄膜と電極とを交互に積層し
た積層セラミックコンデンサであっても良いことは勿論
である。
【0029】コンデンサの電極としては、厚さ0.05
μm以上の配向した白金(Pt)、金(Au)、パラジ
ウム(Pd)薄膜等があり、これらのうちでも配向した
白金(Pt)と金(Au)薄膜が最適である。Pt、A
uは膜との反応性が小さく、また酸化され難い為、膜と
の界面に低誘電率相が形成され難いからである。
【0030】膜厚を0.05μm以上としたのは0.0
5μm未満であると高周波領域における等価直列抵抗が
大きくなるためである。配向した白金(Pt)薄膜と
は、配向性または単結晶的白金(Pt)薄膜であり、配
向性を有するPt薄膜とは、3つの結晶軸のうち一つの
軸が膜表面に近似的に垂直な方向に揃った膜であり、単
結晶的Pt薄膜とは3つの結晶軸が全て揃った膜であ
る。このような電極は、スパッタ蒸着やレーザ蒸着法等
物理的蒸着において、電極が形成される基板温度を45
0℃以上とすることにより得られるもので、これらのう
ちでも、基板温度を450℃以上としたスパッタ蒸着が
望ましい。
【0031】また、金属薄膜を蒸着する基板としては、
アルミナ、サファイア、MgO単結晶、SrTiO3
結晶、チタン被覆シリコン、または銅(Cu)、ニッケ
ル(Ni)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ステンレ
ススティール(SUS)薄膜もしくは薄板が望ましい。
特に、薄膜との反応性が小さく、安価で硬度が大きく、
金属薄膜の結晶性という点からアルミナ、サファイアが
望ましく、高周波領域における低抵抗化の点で銅(C
u)薄板または銅(Cu)薄膜が望ましい。
【0032】本発明の薄膜コンデンサは、例えば、P
t、Au、Pd等を基板上にスパッタ法、蒸着法、グラ
ビア印刷等の手法により成膜して下部電極を形成し、こ
の下部電極膜の表面に、上記誘電体膜を上記方法で成膜
して形成し、この後に誘電体薄膜表面に下部電極と同様
にして上部電極を成膜することにより得られる。また、
積層コンデンサは誘電体膜と電極とを交互に積層するこ
とにより得られる。
【0033】本発明の誘電体薄膜は、例えば、以下のよ
うにして作製される。先ず、塗布溶液としてPb、M
g、Nbの有機金属化合物が均一に溶解した前駆体溶液
とPb及びTiの有機金属化合物が均一に溶解した前駆
体溶液を調製する。
【0034】Mg、及びNbの有機酸塩、無機塩、アル
コキシドから選択される少なくとも1種のMg化合物、
Nb化合物をMg:Nb=b:2(1≦b≦1.15)
のモル比でR1 OH、R2 OC2 4 OH、R3 COO
H(R1 、R2 、R3 :炭素数1以上のアルキル基)で
示される溶媒に混合する。混合後、所定の操作を行い、
IRスペクトルにおいて656cm-1付近に吸収を有
し、他の求核性の有機金属化合物の存在下においても安
定なMg−O−Nb結合を有するMgNb複合アルコキ
シド分子を合成する。
【0035】IRスペクトルにおいて656cm-1付近
に吸収を有するMgNb複合アルコキシド分子を得るに
は、以下のような方法がある。
【0036】第1の方法として、MgおよびNbのアル
コキシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点まで溶液の温
度を上昇させ、例えば酸等の触媒の共存下で還流操作を
行うことにより、分子内での脱エーテル反応を促進する
方法。
【0037】第2の方法として、上記のようにMgおよ
びNbのアルコキシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点
まで溶液の温度を上昇させ、還流操作による複合化を行
った後、無水酢酸、エタノールアミン、アセチルアセト
ン等に代表される安定化剤を添加する方法。
【0038】第3の方法として、Mgのカルボン酸塩と
Nbのアルコキシドとの還流操作により、分子内での脱
エステル反応を促進する方法。
【0039】第4の方法として、Mgの水酸化物とNb
のアルコキシド、あるいはMgのアルコキシドとNbの
水酸化物の還流操作により、分子内での脱アルコール反
応を促進する方法。
【0040】第5の方法しとて、鉛前駆体の求核性を小
さくする為、前述の無水酢酸,エタノールアミン、アセ
チルアセトン等の安定化剤を添加する方法。
【0041】以上のいずれかの手法を用いる事により、
他の求核性有機金属化合物の存在下においても安定なM
g−O−Nb結合を有するMgNb複合アルコキシド分
子を合成できる。
【0042】これらのうちでも、第2の還流操作後に安
定化剤を添加する方法が最も望ましい。
【0043】また、合成した上記MgNb複合アルコキ
シド溶液に水と溶媒の混合溶液を適下し、部分加水分解
を行い、前述のMgNb複合アルコキシドが重縮合した
MgNbゾルを形成させる。部分加水分解とは、分子内
のアルコキシル基の一部を水酸基と置換し、置換された
分子内での脱水、あるいは脱アルコール反応により、重
縮合させる方法である。
【0044】次に、鉛(Pb)の有機酸塩、無機塩、ア
ルコキシドから選択される少なくとも1種の鉛化合物を
1 OH、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1
2、R3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶
媒に混合する。この時、鉛化合物が結晶水を含む場合に
は、作製したPb前駆体溶液中に水が存在しないように
脱水処理する。
【0045】作製したPb前駆体溶液もしくは酢酸Pb
・3水和物のような鉛(Pb)の有機酸塩と作製したM
gNb複合アルコキシド溶液、あるいはMgNbゾルを
Pb:(Mg+Nb)=a:(b+2)/3(1≦a≦
1.15、1≦b≦1.15)のモル比で混合し、PM
N前駆体溶液とする。
【0046】次に、Tiの有機酸塩、無機塩、アルコキ
シドから選択される少なくとも1種のTi化合物をR1
OH、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1
2 、R3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶
媒に混合した後、無水酢酸、エタノールアミン、アセチ
ルアセトン等に代表される安定化剤を添加し、Ti溶液
を作製する。
【0047】作製したTi溶液と前述したPb前駆体溶
液もしくは酢酸Pb・3水和物のような鉛(Pb)の有
機酸塩とをPb:Ti=1:1のモル比で混合し、PT
前駆体溶液とする。
【0048】作製したPMN及びPT塗布溶液を所定の
順序に従って基板上にスピンコート法、ディップコート
法、スプレー法等の手法により、成膜する。
【0049】成膜後、300℃〜400℃の温度で1分
間熱処理を行い、膜中に残留した有機物を燃焼させ、ゲ
ル膜とする。1回の膜厚は0.1μm以下が望ましい。
【0050】成膜−熱処理を所定の膜厚になるまで繰り
返した後、600℃で熱処理し、PTゲルを結晶化させ
る。熱処理後、750℃〜850℃で急速昇温焼成を行
い、本発明の結晶質の誘電体薄膜が作製される。得られ
た誘電体薄膜の膜厚は2μm以下であるが、これより厚
くなると工程数が増加し、また、コンデンサを構成した
場合、容量が小さくなるからである。
【0051】
【実施例】実施例1 MgエトキシドとNbエトキシドを1.05:2のモル
比で秤量し、2−メトキシエタノ−ル中で還流操作(1
24℃で17時間)を行い、1M(mol/l)濃度の
Mg−Nb複合アルコキシド溶液を合成した。IRスペ
クトルにおいて、656cm-1付近にMg−O−Nb結
合による吸収が見られた。Mg−Nb複合アルコキシド
溶液に、アセチルアセトンをMg−Nb溶液の全金属量
の1倍量添加後、室温で10分間撹拌し、安定化させ
た。酢酸鉛・3水和物と2−メトキシエタノールをMg
−Nb溶液にPb:(Mg+Nb)=1.05:3.0
5/3となるように混合し、1時間室温で撹拌する事に
より、1M濃度のPb1.05(Mg1.05/3Nb2/3 )O3
前駆体溶液を合成した。
【0052】次にTiプロポキシドを2−メトキシエタ
ノ−ルに室温で溶解し、0.33M濃度のTi溶液を作
製した後、アセチルアセトンをTi溶液の金属量の1倍
量添加後、室温で10分間撹拌し、安定化させた。酢酸
鉛・3水和物と2−メトキシエタノールをTi溶液にP
b:Ti=1:1となるように混合し、1時間室温で撹
拌する事により、0.33M濃度のPbTiO3 前駆体
溶液を合成した。
【0053】電極となるPt(111)が650℃でス
パッタ蒸着されたサファイア単結晶基板上の上記Pt電
極の表面に、前記PT塗布溶液をスピンコーターで塗布
し、乾燥させた後、340℃で熱処理を1分間行い、P
Tゲル膜を作製した。塗布、乾燥を20回繰り返した
後、600℃で1時間焼成した。SEM観察より膜厚を
調査し、PT膜の1回の成膜効率が0.025μmであ
る事を確認した。
【0054】次に、電極となるPt(111)が650
℃でスパッタ蒸着されたサファイア単結晶基板上の上記
Pt電極の表面に、前記PT塗布溶液をスピンコーター
で1回塗布し、乾燥させた後、340℃で熱処理を1分
間行った後、前記PMN塗布溶液をスピンコーターで塗
布した。乾燥させた後、340℃で熱処理を1分間行
い、PMNゲル膜を作製した。塗布、乾燥を10回繰り
返した後、急速昇温焼成により815℃で0.5分焼成
した。SEM観察より膜厚を調査し、PTゲル膜上のP
MNの成膜効率を調べた。1回の成膜で0.07μmの
PMN膜が得られている事を確認した。
【0055】得られたPMN及びPT膜の成膜効率か
ら、PMNとPTの組成比を設計した。PT濃度10%
(x=0.1)の膜を以下のように作製した。
【0056】前記PT塗布溶液をスピンコーターで1回
塗布し、乾燥させた後、340℃で熱処理を1分間行
い、PTゲル膜を作製した。続いてPMN塗布溶液を1
回塗布し、乾燥させた後、340℃で熱処理を1分間行
い、PMNゲル膜を作製した。PMN溶液の塗布及び熱
処理の操作を5回繰り返した後、再度PTゲル膜を1層
形成し、その後PMNゲル膜を5層形成した。最後にP
Tゲル膜をその上に1層形成し、PTとPMNの多層ゲ
ル膜を形成した。この積層体を図1に示す。また、積層
工程を、[(PMN)m〕p〔(PT)n〕q]
{(m、n、p、q)=(5、2、1、3)}、即ち、
〔(PMN)5 2 〔(PT)1 3 と表す。
【0057】その後、ホットプレートを用いて600℃
で1分間熱処理し、PTのみを結晶化させた。X線回折
測定によりPT結晶の回折ピークを確認した。
【0058】PTとPMNの多層ゲル膜を820℃で
0.5分間(大気中)の急速昇温焼成を行い、膜厚0.
775μmの膜を得た。得られた薄膜のX線回折結果よ
り、ペロブスカイト生成率を計算すると約98%であっ
た。また、3〜4本のX線回折ピークを用いて格子定数
を求めた。角度は白金の(111)反射のKβ成分を基
準にした。格子定数の誤差は±0.0001nmと見積
もられた。
【0059】また、作製した0.775μm膜厚の薄膜
表面に直径0.2mmの金電極をスパッタ蒸着により形
成し、薄膜コンデンサを作製した後、500℃で10分
間熱処理した。LCRメータ(ヒューレットパッカード
社製4284A)を用いて、25℃、1kHz(AC1
00mV)の条件で比誘電率を求めた。また、恒温槽を
用いて比誘電率の温度変化を測定し、下記に記載する比
較例のx=0.1の試料と同じ温度で誘電率がピークを
持つことを確認した。
【0060】さらに、微小電流検出計(ヒューレットパ
ッカード社製4140B)を用いて5V/μmの電界印
加時の漏れ電流密度を測定し、絶縁性を評価した。
【0061】次に、作製した0.775μm膜厚の膜の
表面に直径0.05mmの金電極をスパッタ蒸着により
形成し、薄膜コンデンサを作製した後、500℃で10
分間熱処理した。
【0062】この薄膜コンデンサについて、インピーダ
ンスアナライザ(ヒュウレットパッカード社製HP42
91A,フィクスチャーHP16092A)およびマイ
クロプローブを用いて1MHz〜1.8GHzにおける
特性評価をおこなった。インピーダンスー周波数特性の
測定により、100MHzにおける等価直列容量を評価
し、比誘電率を求めた。
【0063】電気的特性は全て平均湿度60%の雰囲気
中で10日間放置してから測定した。これらの結果を表
1の試料No.3に記載した。また、作製法は同じである
が、PT量x、PMN及びPTの積層数m、n及び各々
の繰り返し回数p、qだけを変えて作製した試料につい
て、上記と同様に評価し、その結果を表2の試料No.
1、2、及びNo.4〜9に記載した。
【0064】また、MgエトキシドとNbエトキシドの
比をb(0.9〜1.2):2とし、Mg−Nb複合ア
ルコキシド溶液を合成した後、酢酸鉛・3水和物と2−
メトキシエタノールをMg−Nb溶液にPb:(Mg+
Nb)=a(0.9〜1.2):〔b(0.9〜1.
2)+2〕/3となるように混合する以外は、上記実施
例1と同様に誘電体薄膜を作製し、また、上記と同様に
して特性を測定した。その結果も表2の試料No.10〜
19に記載した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】これらの表1、2から、本発明の誘電体薄
膜は、1KHzおよび100MHzにおいて1500以
上の高誘電率を有し、また、5V/μmの電界印加時の
漏れ電流密度は、0.1μA/cm2 より小さいのに対
し、比較例ではいずれも1KHzおよび100MHzに
おける比誘電率が1500よりも低いことが判る。
【0068】比較例 MgエトキシドとNbエトキシドを1.05:2のモル
比で秤量し、2−メトキシエタノ−ル中で還流操作(1
24℃で17時間)を行い、1M(mol/l)濃度の
Mg−Nb複合アルコキシド溶液を合成した。IRスペ
クトルにおいて、656cm-1付近にMg−O−Nb結
合による吸収が見られた。次にTiプロポキシドを2−
メトキシエタノ−ルに室温で溶解し、1M濃度のTi溶
液を作製した。1M濃度のTi溶液を、MgNb複合ア
ルコキシド溶液に、(Mg+Nb):Ti=1−x:x
の比率で混合し、その後、アセチルアセトンをMg−N
b―Ti溶液の全金属量の1倍量添加後、室温で10分
間撹拌し、安定化させた。酢酸鉛・3水和物と2−メト
キシエタノールをMg−Nb−Ti溶液にPb:(Mg
+Nb+Ti)=1.05:〔(3.05/3)・(1
−x)+x〕となるように混合し、1時間室温で撹拌す
る事により、1M濃度のPb1.05(Mg1.05/3
2/3 1-x Tix 3 (x=0、0.1、0.2、
0.3、0.4)前駆体溶液を合成した。
【0069】電極となるPt(111)が650℃でス
パッタ蒸着されたサファイア単結晶基板上の上記Pt電
極の表面に、前記塗布溶液をスピンコーターで塗布し、
乾燥させた後、340℃で熱処理を1分間行い、ゲル膜
を作製した。塗布溶液の塗布−熱処理の操作を10回繰
り返した後、815℃で0.5分間(大気中)の急速昇
温焼成を行い、膜厚0.73μmのPb1.05(Mg
1.05/3Nb2/3 1-x Tix 3 (x=0、0.1、
0.2、0.3、0.4)薄膜を得た。得られた薄膜の
X線回折結果より、ペロブスカイト生成率を計算すると
約96%であった。
【0070】作製した0.73μm膜厚の薄膜表面に直
径0.2mmの金電極をスパッタ蒸着により形成し、上
記と同様にして特性を測定し、これらの結果を表1、2
の試料No.20〜24に記載した。
【0071】これらの表1、2のNo.20〜24より、
通常焼成による膜は、高湿度雰囲気中放置により絶縁抵
抗が小さく、5V/μmの電界印加時の漏れ電流密度は
0.1μA/cm2 よりはるかに大きい事が判る。
【0072】図2は、No.21の印加電圧―漏れ電流曲
線を示すグラフである。この図2から、誘電体薄膜作製
後、ロータリーポンプで真空に引いた環境に試料を置い
て測定すると、抵抗は大きく、絶縁破壊電圧も80Vよ
り大きい事がわかる。一方、大気中放置(湿度約60
%、10日)すると、絶縁抵抗は小さくなり、絶縁破壊
電圧も30V程度と小さくなることが判る。
【0073】図3は、No.3の印加電圧―漏れ電流曲線
を示すグラフである。この図3から、大気中放置(湿度
約60%、10日)した後でも抵抗が大きく、絶縁破壊
電圧も80Vより大きい事がわかる。
【0074】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の誘電体薄
膜は、1kHzの様な低周波においてだけでなく100
MHzの様な高周波においても比誘電率が大きい上に、
耐湿性に優れ、絶縁性に優れている為、ICまわりのデ
カップリングコンデンサ等の高周波で用いられるコンデ
ンサとして広く適用できるとともに、素子の小型化・薄
型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層ゲル膜を示す説明図である。
【図2】No.21の漏れ電流と印加電圧との関係を示す
グラフである。
【図3】No.3の漏れ電流と印加電圧との関係を示すグ
ラフである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素としてPb、Mg、NbおよびT
    iを含むペロブスカイト型複合酸化物からなる膜厚2μ
    m以下の誘電体薄膜であって、前記金属元素酸化物のモ
    ル比による組成式を (1−x)Pb(Mgb/3Nb2/3)O・xP
    bTiO と表した時、前記x、aおよびbが 0<x≦0.35 1≦a≦1.15 1≦b≦1.15 を満足するとともに、格子定数W(nm)と前記xで表
    される A((0.4043−W)/x)の値が 3.9×10 −3 ≦A≦7.3×10 −3 を満足することを特徴とする誘電体薄膜。
  2. 【請求項2】5V/μmの直流電界印加時に流れる電流
    密度が0.1μA/cm以下であることを特徴とする
    請求項1記載の誘電体薄膜。
  3. 【請求項3】測定周波数1kHz(室温)および測定周
    波数100MHz(室温)における比誘電率がいずれも
    1500以上であることを特徴とする請求項1または2
    記載の誘電体薄膜。
  4. 【請求項4】請求項1記載の誘電体薄膜の両面に一対の
    電極を対向して形成してなることを特徴とするセラミッ
    クコンデンサ。
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