JP4770210B2 - 積層セラミック電子部品およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、IR(絶縁)寿命に優れ、広い温度範囲において誘電損失が低く抑えられた信頼性の高い積層セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
電子部品としての積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、1台の電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型・高性能化にともない、積層セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
積層セラミックコンデンサは、通常、内部電極層用のペーストと誘電体層用のペーストとを使用して、シート法や印刷法等により積層し、積層体中の内部電極層と誘電体層とを同時に焼成して製造される。内部電極層の導電材としては、一般にPdやPd合金が用いられているが、Pdは高価であるため、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用されるようになってきている。内部電極層の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極層が酸化してしまうため、誘電体層と内部電極層との同時焼成を、還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比抵抗が低くなってしまう。このため、非還元性の誘電体材料が開発されている。
しかし、非還元性の誘電体材料を用いた積層セラミックコンデンサは、電界の印加によるIR(絶縁抵抗)の劣化が著しく、IR寿命が短く、信頼性が低いという問題がある。
また、コンデンサには、温度特性が良好であることも要求され、特に、用途によっては、厳しい条件下で温度特性が平坦であることが求められる。近年、自動車のエンジンルーム内に搭載するエンジン電子制御ユニット(ECU)、クランク角センサ、アンチロックブレーキシステム(ABS)モジュールなどの各種電子装置に積層セラミックコンデンサが使用されるようになってきている。これらの電子装置は、エンジン制御、駆動制御およびブレーキ制御を安定して行うためのものなので、回路の温度安定性が良好であることが要求される。
これらの電子装置が使用される環境は、寒冷地の冬季には−20℃程度以下まで温度が下がり、また、エンジン始動後には、夏季では+130℃程度以上まで温度が上がることが予想される。最近では電子装置とその制御対象機器とをつなぐワイヤハーネスを削減する傾向にあり、電子装置が車外に設置されることもあるので、電子装置にとっての環境はますます厳しくなっている。したがって、これらの電子装置に用いられるコンデンサは、広い温度範囲において温度特性が平坦である必要がある。
温度特性に優れた温度補償用コンデンサとして、たとえば、特許文献1には、(Ca,Me)(Zr,Ti)O系(ただし、Meは、Sr、MgおよびBaの少なくとも一つ)の主成分と、Mnとを含む誘電体層を有するコンデンサが開示されている。特に、この文献においては、誘電体層中にMnを含有させているため、比較的に低温での焼結が可能となっている。しかしながら、この文献においては、誘電体層中に比較的多くのMnが含有されることとなるため、IR寿命や誘電損失に劣るという問題があった。
特許文献2には、温度特性に優れた温度補償用コンデンサとして、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系の主成分を含有しており、かつ、粒界にはMnが偏析している誘電体層を有するコンデンサが開示されている。しかしながら、この文献においても、上記特許文献1と同様に誘電体層中には比較的多くのMnが含有されているため、IR寿命に劣るという問題があった。また、この文献では、温度85℃において誘電損失の評価を行っているが、たとえば−55〜155℃の広い温度範囲において、誘電損失を低くできるか否かについては不明である。
また、特許文献3には、誘電体セラミック層に含有されたSiを含む焼結助剤成分が、内部電極導体が形成されるべき導体形成領域の空隙に偏析されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサが開示されている。この文献によると、デラミネーションやクラック等の構造欠陥を防止できると記載されている。しかしながら、この文献では、誘電損失に劣るという問題があった。また、この文献に記載されている積層セラミックコンデンサは、温度補償を目的としていない。そのため、この文献における誘電体組成は、温度補償用のコンデンサに用いられる誘電体組成と明らかに異なる組成となっている。
特開2004−262680号公報 特開2002−134350号公報 特開2004−273975号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、誘電率や静電容量の温度特性などの各種電気特性を維持しつつ、IR寿命に優れ、かつ、広い温度範囲(たとえば、−55〜155℃の範囲)において誘電損失を低く抑えることができ、信頼性の高い積層セラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る積層セラミック電子部品は、
誘電体層と内部電極層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミック電子部品であって、
前記素子本体を積層方向に沿って切断した場合に、前記内部電極層に観察される電極層の途切れ部の少なくとも一部には、Mnの酸化物を含有する偏析相が形成されていることを特徴とする。
本発明においては、前記内部電極層に電極層の途切れ部を形成し、この途切れ部の少なくとも一部に前記Mnの酸化物を偏析させることにより、IR寿命を向上させることができるとともに、広い温度範囲において誘電損失を低く抑えることができ、信頼性の高い積層セラミック電子部品を得ることができる。特に、広い温度範囲において誘電損失を低く抑えることにより、交流電圧下での発熱による誘電体層の劣化を抑制することができる。前記偏析相は、主としてMnの酸化物を含有する偏析相であることが好ましい。また、偏析相中に含まれるMnの酸化物は、焼成前および/または焼成中には、誘電体層に含有されていることが好ましい。
本発明における電極層の途切れ部とは、電極層を構成している導電体成分が実質的に含有されていない部分、すなわち電極層が不連続に途切れている部分を意味し、電極層に形成されている貫通孔や、切欠きなどが含まれる。本発明においては、前記途切れ部が形成されるため、ある断面では電極層が不連続に途切れていることとなるが、他の位置で電極層は連続しているため、電極層の導通は問題なく確保することができる。すなわち、積層方向と垂直な方向から見た場合には、内部電極層の一部に電極層の途切れている部分が存在することとなるが、内部電極層全体としては、連続していることとなる。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、好ましくは、前記内部電極層に前記途切れ部が全く無いとして仮定した場合に、前記内部電極層が前記誘電体層を被覆する理想面積に対して、前記内部電極層が前記誘電体層を実際に被覆する面積の割合である被覆率が60〜95%である。内部電極層に途切れ部が形成されていない場合には、被覆率は、100%となる。前記被覆率が小さ過ぎると、内部電極層の対峙面積が小さくなってしまい、電子部品として充分に機能しなくなる傾向にある。一方、前記被覆率が大き過ぎると、内部電極層に途切れ部が形成され難くなり、結果として、電極層の途切れ部に前記偏析相を形成できなくなる。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、前記内部電極層の厚みは、3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、2.5μm以下である。内部電極層が厚すぎると、電極層の途切れ部を形成することが困難になる。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、好ましくは、
前記誘電体層が、誘電体磁器組成物を含んでおり、
前記誘電体磁器組成物は、組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで示され、前記組成式中の元素名を示す記号Meが、Sr、MgおよびBaの少なくとも一つであり、組成モル比を示す記号m、xおよびyが、0.8≦m≦1.3、0≦x≦1.00、0≦y≦0.8の関係にある誘電体酸化物を含む主成分と、
Mnの酸化物を含む第3副成分と、を含有し、
前記第3副成分の前記主成分100モルに対する比率が、Mnの酸化物中のMn元素換算で、0モル<第3副成分<5モルである。
本発明においては、前記誘電体層に含有される誘電体磁器組成物を上記構成とすることにより、静電容量の温度依存性を低くすることができ、温度補償用の積層セラミック電子部品として好適に用いることができる。なお、本発明において、上記第3副成分の含有量は、誘電体層に実際に含まれるMnの酸化物の含有量と、上述の偏析相に含まれるMnの酸化物の含有量との合計の含有量を意味する。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、好ましくは、
前記誘電体磁器組成物が、
Vの酸化物を含む第1副成分と、
Alの酸化物を含む第2副成分と、をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する各成分の比率が、
第1副成分:0モル<第1副成分<7モル(ただし、Vに換算した値)、
第2副成分:0モル<第2副成分<15モル(ただし、Alに換算した値)、
である。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、好ましくは、
前記誘電体磁器組成物が、
SiOを主成分とし、MO(ただし、Mは、Ba、Ca、SrおよびMgから選ばれる少なくとも1種の元素)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第4副成分をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する前記第4副成分の比率が、酸化物換算で、0モル<第4副成分<20モルである。
本発明においては、前記主成分および第3副成分に加えて、好ましくは前記第1副成分および第2副成分、より好ましくは前記第4副成分をさらに含有させることにより、静電容量の温度依存性のさらなる改善を図ることができる。
より好ましくは、前記第4副成分は、組成式{(Ba,Ca1−z )O}SiOで示され、前記組成式中の組成モル比を示す記号zおよびvが、0≦z≦1および0.5≦v≦4.0の関係にある複合酸化物を含む。
本発明に係る積層セラミック電子部品において、
前記誘電体層、内部電極層および偏析相中におけるMn元素の分布の検出強度の標準偏差σおよび平均検出強度xより、下記式(1)から算出されるMn元素の分布のC.V.値が、53以上であることが好ましく、より好ましくは95以上である。
C.V.値=(検出強度の標準偏差σ/平均検出強度x)×100…(1)
上記C.V.値(Coefficient of Variation;変動係数)は、前記誘電体層、内部電極層および偏析相中における元素分布の検出強度の標準偏差σを、元素の分布の平均検出強度xで除した値であり、その元素の分散度合いを示す値である。この値が低い程、分散度合いが高く、逆に、この値が高い程、分散度合いが低く、偏析などが発生していることとなる。本発明においては、Mnの酸化物が電極層の途切れ部に偏析していることが望ましいため、Mn元素の分布のC.V.値は、高いほうが好ましい。
本発明においては、前記誘電体層、内部電極層および偏析相中におけるMnの分布のC.V.値は、たとえば、誘電体層、内部電極層および偏析相の切断面のEPMA(Electron Probe Micro Analysis)分析により測定することができる。すなわち、EPMA分析により、Mn元素の元素マッピングを行い、各部位におけるMn元素のピーク強度を測定し、そのピーク強度から、誘電体層、内部電極層および偏析相中におけるMn元素の分布の検出強度の標準偏差σおよび平均検出強度xを求め、上記式により算出することができる。
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
誘電体層と内部電極層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、
前記誘電体層を構成することとなる誘電体磁器組成物原料として、Mnの酸化物および/または焼成後にMnの酸化物になる化合物を含む第3副成分原料を含有する誘電体磁器組成物原料を使用し、かつ、
焼成後の焼結体に、900℃より高く、1150℃未満の温度で再酸化処理を施す工程を有することを特徴とする。
本発明の製造方法においては、前記再酸化処理の酸素分圧は、4.1×10−9〜6.9×10−7MPaとすることが好ましい。また、再酸化処理の時間は、2〜6時間とすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、再酸化処理を上記温度(好ましくは、さらに、上記酸素分圧、時間)で行うことにより、焼成後の電極層に所望の途切れ部を形成することができる。そして、電極層に途切れ部を形成することにより、焼成中には、誘電体層中に含有されていたMnを、この途切れ部に移動させて、偏析させることができる。なお、Mnは、焼結を促進する効果や、誘電体層に耐還元性を付与する効果を有する。そのため、焼成の際に、Mnを誘電体層中に含有させておくことにより、誘電体層を良好に焼結させることができる。
本発明の製造方法において、好ましくは、
前記誘電体磁器組成物原料が、
組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで示され、前記組成式中の元素名を示す記号Meが、Sr、MgおよびBaの少なくとも一つであり、組成モル比を示す記号m、xおよびyが、0.8≦m≦1.3、0≦x≦1.00、0≦y≦0.8の関係にある誘電体酸化物を含む主成分原料を、さらに含有する。
本発明の製造方法において、好ましくは、
前記第3副成分原料の前記主成分原料100モルに対する比率が、Mn元素換算で、0モル<第3副成分原料<5モルである。
第3副成分原料に含有されるMnは、再酸化処理後には、前記誘電体層だけでなく、前記偏析相にも含有されることとなる。そのため、上記第3副成分原料の添加量は、誘電体層および偏析相に含有されることとなるMnの合計添加量を意味する。
本発明の製造方法において、好ましくは、
Vの酸化物および/または焼成後にVの酸化物になる化合物を含む第1副成分原料と、
Alの酸化物および/または焼成によりAlの酸化物になる化合物を含む第2副成分原料と、をさらに含有し、
前記主成分原料100モルに対する各副成分原料の比率が、
第1副成分原料:0モル<第1副成分原料<7モル(ただし、Vに換算した値)、
第2副成分原料:0モル<第2副成分原料<15モル(ただし、Alに換算した値)であり、
より好ましくは、
前記誘電体磁器組成物原料が、
SiO、BaO、CaO、SrO、MgO、LiO、B、および/または焼成によりこれらの酸化物になる化合物から選ばれる少なくとも1種を含む第4副成分原料をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する前記第4副成分原料の比率が、酸化物換算で、0モル<第4副成分原料<20モルである。
本発明によると、内部電極層に電極層の途切れ部を形成し、この途切れ部の少なくとも一部にMnの酸化物を偏析させることにより、誘電率や静電容量の温度特性などの各種電気特性を維持しつつ、IR寿命に優れるとともに、広い温度範囲(たとえば、−55〜155℃の範囲)において誘電損失の低い積層セラミック電子部品を提供することができる。また、本発明の製造方法によると、上記所定の温度で再酸化処理を行うため、焼成後の内部電極層に所望の途切れ部を形成することができ、さらには、この途切れ部に、Mnの酸化物を含有する偏析相を形成することができる。
なお、上述の特許文献1(特開2004−262680号公報)では、焼成後の再酸化処理を比較的に低い温度で行っているため、本発明のように、Mnの酸化物を含有する偏析相を、内部電極層の途切れ部に形成することはできない。そのため、特許文献1では、本発明のような作用効果を得ることはできない。
また、上述の特許文献2(特開2002−134350号公報)では、Mnの偏析相を、粒界に形成している。そのため、Mnの酸化物は、誘電体層に含有されたままであり、したがって、本発明とは構成が異なり、本発明のような作用効果を得ることはできない。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの要部断面図、
図3(A)は本発明の実施例に係る誘電体層、内部電極層および偏析相のMn元素の元素マッピング結果を表す写真、図3(B)は誘電体層、内部電極層および偏析相の反射電子像を表す写真、図3(C)は比較例に係る誘電体層および内部電極層のMn元素の元素マッピング結果を表す写真、図3(D)は誘電体層および内部電極層の反射電子像を表す写真、
図4は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサの測定温度と誘電損失との関係を示すグラフである。
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子部品としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層されたコンデンサ素子本体10を有する。コンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素子本体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2
誘電体層2は、組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで示される誘電体酸化物を含む主成分と、Mnの酸化物を含む第3副成分と、を含有する誘電体磁器組成物から構成されることが好ましい。なお、上記式中、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
上記式中、xは、0≦x≦1.00であることが好ましい。xは記号Me(ただし、MeはSr、MgおよびBaの少なくとも一つ。中でもSrが好ましい。)の原子数を表し、x、すなわち記号Me/Ca比を変えることで結晶の相転移点を任意にシフトさせることが可能となる。そのため、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。ただし、本発明においては、Caと記号Meとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
上記式中、yは、0≦y≦0.8であることが好ましい。yはTi原子数を表すが、TiOに比べ還元されにくいZrOを置換していくことにより耐還元性がさらに増していく傾向がある。
上記式中、mは、0.8≦m≦1.3であることが好ましく、より好ましくは0.970≦m≦1.030である。mを0.8以上にすることにより還元雰囲気下での焼成に対して半導体化を生じることが防止され、mを1.3以下にすることにより焼成温度を高くしなくても緻密な焼結体を得ることができる。
上記第3副成分は、焼結を促進する効果、および誘電体層に耐還元性を付与する効果を有し、さらには、アクセプタとしても機能する。第3副成分の主成分100モルに対する比率は、酸化物中のMn元素換算で、好ましくは0モル<第3副成分<5モル、より好ましくは0.1モル≦第3副成分≦4モルとする。第3副成分の添加量が多すぎると、IR寿命が低下する傾向にある。本実施形態において、上記第3副成分の含有量は、誘電体層2に実際に含まれるMnの酸化物の含有量と、図2に示す偏析相20に含まれるMnの酸化物の含有量との合計の含有量を意味する。なお、偏析相20については、後に詳述する。
本実施形態では、誘電体層2を構成する誘電体磁器組成物は、
Vの酸化物を含む第1副成分と、
Alの酸化物を含む第2副成分と、をさらに含有することが好ましい。
このような第1副成分および第2副成分を所定量含有させることで、誘電特性を劣化させることなく低温焼成が可能となり、誘電体層2を薄層化した場合でもIR寿命を向上させることができる。
第1副成分の主成分100モルに対する比率は、V換算で、好ましくは0モル<第1副成分<7モル、より好ましくは0.01モル≦第1副成分≦5モルである。
第2副成分の主成分100モルに対する比率は、Al換算で、好ましくは0モル<第2副成分<15モル、より好ましくは0.01モル≦第2副成分≦10モルである。
第1副成分および第2副成分の比率を、上記範囲にすることにより、yを0≦y≦0.8の範囲とした場合おいて、IR寿命を向上させることができる。
なお、第1副成分に含まれるVの酸化物の一部を、NbやTaなどの5族元素の酸化物や、Cr、Mo、Wの6族元素の酸化物で置換しても構わない。
本実施形態においては、誘電体層2を構成する誘電体磁器組成物は、上記主成分および第1〜第3副成分に加えて、SiOを主成分とし、MO(ただし、Mは、Ba、Ca、SrおよびMgから選ばれる少なくとも1種の元素)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第4副成分と、をさらに含有することが好ましい。この第4副成分は、主として焼結助剤として作用するが、誘電体層2を薄層化した際の初期絶縁抵抗(IR)の不良率を改善する効果をも有する。
好ましくは、上記第4副成分は、組成式{(Ba,Ca1−z )O}SiOで示される複合酸化物(以下、BCGとも言うことがある)を含む。複合酸化物である{(Ba,Ca1−z )O}SiOは、融点が低いため、主成分に対する反応性が良好である。組成式{(Ba,Ca1−z )O}SiOにおいて、組成式中の組成モル比を示す記号vは、好ましくは0.5≦v≦4.0であり、より好ましくは0.5≦v≦2.0である。vが小さすぎると、すなわちSiOが多すぎると、主成分と反応して誘電体特性を悪化させてしまう。一方、vが大きすぎると、複合酸化物の融点が高くなってしまい、誘電体層の焼結性を悪化させてしまう。なお、BaとCaとの組成モル比を示す記号zは任意であり(0≦z≦1)、一方だけを含有するものであってもよいが、好ましくは0.3≦z≦0.7である。
第4副成分の前記主成分100モルに対する比率は、酸化物(または複合酸化物)換算で、好ましくは0モル<第4副成分<20モル、より好ましくは0.1モル≦第4副成分≦15モルである。第4副成分を少量でも添加することで、初期IR不良率の発生を低下させるのに効果的であり、添加量を20モル未満とすることで、比誘電率の低下を抑え、十分な容量を確保できる。
本発明に係る誘電体磁器組成物には、Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも一つの元素)を含む第5副成分がさらに含有してあってもよい。
誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、一層あたり1μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上、20μm以下である。誘電体層が薄すぎると、絶縁不良が発生し易くなる。また、厚すぎると、シート欠陥が発生し易くなるため、同様に絶縁不良が発生し易くなる。
誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、たとえば2000程度である。
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
また、図2に示すように、内部電極層3には、電極途切れ部30が形成されている。ここにおいて、図2は、コンデンサ素子本体10を積層方向に沿って切断した場合の要部断面図である。なお、本実施形態においては、図2に示す断面では、電極途切れ部30が形成されている部分で、内部電極層3が不連続となっているが、他の位置(他の断面)で内部電極層3は連続しているため、電極層の導通は問題なく確保することができる。
本実施形態においては、内部電極層3に電極途切れ部30が全く無いとして仮定した場合に、内部電極層3が誘電体層2を被覆する理想面積に対して、内部電極層3が誘電体層2を実際に被覆する面積である被覆率は、好ましくは60〜95%であり、より好ましくは90〜95%である。被覆率が低すぎると、誘電体層2のうち、誘電体層として機能しなくなる部分が多くなり、結果としてコンデンサとしての静電容量が低下してしまう傾向にある。一方、被覆率が高すぎると、電極途切れ部30が形成され難くなり、結果として、電極途切れ部30中に偏析相20が形成されなくなってしまう。
内部電極層3の厚みは、3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、2.5μm以下である。内部電極層3が厚すぎると、電極途切れ部30が形成され難くなってしまう。一方、内部電極層3が薄すぎると、被覆率が低下してしまう傾向にある。
偏析相20
本実施形態においては、内部電極層3に形成されている電極途切れ部30の少なくとも一部に、偏析相20が形成されている。この偏析相20は、Mnの酸化物を含む偏析相であり、特に、Mnの酸化物を主として含有する偏析相であることが好ましい。また、偏析相20中におけるMnの酸化物の含有量は、偏析相20全体100重量%に対して、70重量%程度以上であることが好ましい。
本発明においては、電極途切れ部30に、Mnの酸化物を偏析相20として偏析させることを最大の特徴としている。Mnの酸化物を、電極途切れ部30の内部に偏析させることにより、本発明の作用効果、すなわち、誘電率や静電容量の温度特性などの各種電気特性を維持しつつ、IR(絶縁)寿命を向上させ、かつ、広い温度範囲(たとえば、−55〜155℃の範囲)において誘電損失を低くすることができる。
なお、電極途切れ部30に、Mnの酸化物を偏析させることにより(すなわち、Mnの酸化物を含有する偏析相20を形成することにより)、上記効果を奏する理由としては、必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
すなわち、第3副成分としてのMnの酸化物は、上述したように、誘電体層2の焼結を促進する効果を有するため、焼成後に誘電体層2となるグリーンシート中に、Mnの酸化物を含有させることにより、焼結温度を比較的に低くすることができる。しかも、Mnの酸化物は焼結を促進する効果以外にも、誘電体層2に耐還元性を付与する効果を有し、焼成中における誘電体層2の耐還元性を高めることもできる。そのため、Mnの酸化物を含有させることにより、誘電体層2を良好に焼結することができ、誘電率や温度特性などの各種電気特性を充分に発揮させることができる。
しかしながら、このMnの酸化物が、焼結後の誘電体層2中に比較的に多く含有されていると、IR寿命の低下や、誘電損失の劣化を招いてしまう傾向にある。そのため、本発明のように、焼成時には、Mnの酸化物を誘電体層2中に含有させておき、焼成後には、内部電極層3に形成された電極途切れ部30中にMnの酸化物を偏析させることにより、IR寿命の低下および誘電損失の劣化を防止することが可能となると考えられる。
本実施形態においては、誘電体層2、内部電極層3および偏析相20中におけるMn元素の分布の検出強度の標準偏差σおよび平均検出強度xより、下記式(1)から算出されるMn元素の分布のC.V.値が、53以上であることが好ましく、より好ましくは95以上である。
C.V.値=(検出強度の標準偏差σ/平均検出強度x)×100…(1)
本実施形態においては、Mn元素は、偏析相20として内部電極層3に形成された電極途切れ部30中に偏析している。そのため、Mn元素の分布のC.V.値は、高いほうが好ましい。Mn元素のC.V.値が低すぎると、すなわち、Mn元素が誘電体層2中に分散していると、IR寿命および誘電損失が悪化する傾向にある。
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。
外部電極の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を調製する。
誘電体層用ペーストを製造するに際しては、まず、これに含まれる誘電体磁器組成物原料を準備する。誘電体磁器組成物原料には、主成分原料と、第1〜第4副成分原料が含まれる。なお、誘電体磁器組成物原料に含有される各原料の混合比は、焼成後の比率が、上述の所定比率となるように調製すれば良い。
主成分原料としては、組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで表される原料が用いられる。この主成分原料は、いわゆる固相法の他、いわゆる液相法により得られるものであってもよい。固相法は、たとえば、SrCO、CaCO、TiO、ZrOを出発原料として用いる場合、これらを所定量秤量して混合、仮焼き、粉砕することにより、原料を得る方法である。液相合成法としては、しゅう酸塩法、水熱合成法、ゾルゲル法などが挙げられる。
第1副成分原料としては、Vの酸化物および/または焼成後にVの酸化物になる化合物が用いられる。第2副成分原料としては、Alの酸化物および/または焼成によりAlの酸化物になる化合物が用いられる。第3副成分原料としては、Mnの酸化物および/または焼成によりMnの酸化物になる化合物が用いられる。第4副成分原料としては、SiO、BaO、CaO、SrO、MgO、LiO、B、および/または焼成によりこれらの酸化物になる化合物が用いられる。
誘電体磁器組成物原料の製造方法は、特に限定されず、たとえば、主成分原料を製造する際に、出発原料に第1〜第4副成分原料などの副成分原料を混合しておき、固相法や液相法などにより主成分原料を製造すると同時に誘電体磁器組成物原料を得ても良い。あるいは、一旦、主成分原料を固相法や液相法などにより製造しておき、これに第1〜第4副成分原料などの副成分原料を添加することによって、誘電体磁器組成物原料を得ても良い。
以下、固相法により主成分原料を製造する際に、第1〜第4副成分原料を混合させて誘電体磁器組成物原料を得る方法を例に採り説明する。
まず、たとえばSrCO、CaCO、TiO、ZrOなどの各主成分原料の出発原料の他に、最終組成に対する少なくとも一部の第1副成分原料(たとえばV)、第2副成分原料(たとえばAl)、第3副成分原料(たとえばMnCO)および第4副成分原料(たとえば(Ba,Ca)SiO2+z)を所定量秤量して、混合、乾燥することにより、仮焼き前原料を準備する。
次に、準備された仮焼前粉体を仮焼きし、仮焼済粉末とする。仮焼き条件は、特に限定されないが、次に示す条件で行うことが好ましい。昇温速度は、好ましくは50〜400℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。保持温度は、好ましくは、1000〜1300℃である。温度保持時間は、好ましくは0.5〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。処理雰囲気は、空気中、窒素中および還元雰囲気中の何れでも構わない。
得られた仮焼済粉末は、アルミナロールなどにより粗粉砕された後、必要に応じて、残りの添加物(第1〜第4副成分原料の残部も含む)を添加して、最終組成にする。その後、この混合粉末を、必要に応じて、ボールミルなどによって混合し、乾燥することによって、誘電体磁器組成物原料(粉末)を得る。
なお、誘電体磁器組成物原料としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体磁器組成物原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。
誘電体磁器組成物粉末の粒径は、塗料化する前の状態で、通常、平均粒径0.1〜3μm程度である。
次に、この誘電体磁器組成物原料を塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バインダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜20時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−13〜10−9MPaとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1380℃、さらに好ましくは1260〜1360℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結や、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
次いで、コンデンサ素子本体には再酸化処理(アニール)を施す。再酸化処理は、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
再酸化処理の際の保持温度(再酸化処理温度)は、900℃より高く、1150℃未満とすることが好ましく、より好ましくは1000℃以上、1100℃以下とする。本実施形態においては、再酸化処理の保持温度を上記範囲とすることにより、内部電極層3に所望の電極途切れ部30を形成することができる。そして、電極途切れ部30を形成することにより、焼成中には、誘電体層2(あるいは、グリーンシート)中に含有されていたMnを、この電極途切れ部30中に移動させて、偏析させ、Mnの酸化物を含有する偏析相20を形成することができる。
Mnは、焼結を促進する効果や、誘電体層2に耐還元性を付与する効果を有するため、焼成の際に、Mnを誘電体層2中に含有させておくことにより、誘電体層2を良好に焼結させることができる。そのため、誘電率や静電容量の温度特性などの各種電気特性を充分に発揮させることができる。しかも、焼成後には、上記条件で再酸化処理を行うため、Mnを偏析相20として偏析させることができ、結果として、IR寿命および誘電損失の劣化を防止することができる。
保持温度が低すぎると、内部電極層3に所望の電極途切れ部30を形成することができなくなる傾向にある。一方、保持温度が高すぎると、内部電極層3の酸化により容量が低下するだけでなく、内部電極層3が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。
再酸化処理の際の酸素分圧は、好ましくは4.1×10−9〜6.9×10−7MPa、より好ましくは7.6×10−8〜4.2×10−7MPaとする。酸素分圧が低すぎると、内部電極層3に所望の電極途切れ部30を形成することができなくなる傾向にある。一方、酸素分圧が高すぎると、内部電極層3が酸化してしまう。なお、酸素分圧は、再酸化処理の雰囲気ガスとして、たとえば、加湿したNガス等を用いて調整すれば良い。
また、再酸化処理の際の温度保持時間(再酸化処理時間)は、好ましくは2〜6時間、より好ましくは2〜3時間とする。本実施形態においては、比較的に高い温度で再酸化処理を行うため、温度保持時間を比較的短くした場合でも、再酸化処理の効果を充分に得ることができる。温度保持時間を長くし過ぎると、内部電極が酸化してしまう。また、保持時間が長いと、生産性が低下してしまうという問題もある。
上記以外の再酸化処理条件としては、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。
上記した脱バインダ処理、焼成および再酸化処理において、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成および再酸化処理は、連続して行なっても、独立に行なってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、再酸化処理の保持温度に達したときに雰囲気を変更して再酸化処理を行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、再酸化処理時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、再酸化処理に際しては、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、再酸化処理の全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
本実施形態の積層セラミックコンデンサは、内部電極層3に電極途切れ部30を有しており、この電極途切れ部30には、Mnの酸化物を含有する偏析相20が形成されている。そのため、IR寿命を向上させることができるとともに、かつ、広い温度範囲(たとえば、−55〜150℃の範囲)において誘電損失を低くすることができる。特に、広い温度範囲において誘電損失を低く抑えることにより、交流電圧下での発熱に起因する誘電体層2の劣化を抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、誘電体層2には、主成分および第1〜第4副成分として、上述の各酸化物(複合酸化物)を含有させる。そのため、静電容量の温度依存性を低くすることができ、温度補償用の積層セラミックコンデンサとして好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、本発明の所定の構成を有するものであれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、誘電体材料を作製するための出発原料として、それぞれ平均粒径0.1〜1μmの主成分原料(SrCO、CaCO、TiO、ZrO)および第1〜第4副成分原料を用意した。本実施例では、MnOの原料には炭酸塩(第3副成分:MnCO)を用い、他の原料には酸化物(第1副成分:V、第2副成分:Al、第4副成分:(Ba0.6 Ca0.4 )SiOを用いた。なお、(Ba0.6 Ca0.4 )SiOは、BaCO,CaCOおよびSiOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1000〜1300℃で空気中で焼成し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより製造した。
次に、主成分原料と、第1〜第4副成分原料とを、焼成後の主成分の組成が(Ca0.6 Sr0.4 0.995 ・(Zr0.78 Ti0.22 )O、第1〜第4副成分が以下の配合比となるように秤量して混合し、乾燥することにより、仮焼前粉体を準備した。
(第1副成分):0.1モル
Al(第2副成分):0.4モル
MnCO(第3副成分):1モル
(Ba0.6 Ca0.4 )SiO(第4副成分):2モル
なお、上記各副成分の配合比は、主成分100モルに対する配合比であり、第1副成分および第2副成分は各酸化物換算の配合比、第3副成分はMn元素換算の配合比、第4副成分は複合酸化物換算の配合比である。
次に、この仮焼前粉体を仮焼した。仮焼き条件は、昇温速度:300℃/時間、保持温度:1000〜1300℃、温度保持時間:2時間、雰囲気:空気中とした。次に、仮焼によって得られた材料をアルミナロールで粉砕して、仮焼き済粉体(誘電体磁器組成物原料)を得た。
このようにして得られた誘電体磁器組成物原料に、アクリル樹脂、酢酸エチル、ミネラルスピリットおよびアセトンを、ボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
内部電極層用ペーストは、平均粒径0.1〜0.8μmのNi粒子と、有機ビヒクルと、ブチルカルビトールとを3本ロールにより混練してペースト化することにより製造した。
外部電極用ペーストは、平均粒径0.5μmのCu粒子と、有機ビヒクルと、ブチルカルビトールとを混練してペースト化することにより製造した。
次いで、上記誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上に、グリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷したのち、PETフィルムからグリーンシートを剥離した。そして、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着してグリーンチップを得た。内部電極を有するシートの積層数は10層とした。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理および焼成を行い、焼結体を得た。
脱バインダ処理は、昇温時間15℃/時間、保持温度280℃、保持時間8時間、空気雰囲気の条件で行った。
焼成は、昇温速度200℃/時間、保持温度:1250〜1350℃、保持時間2〜3時間、冷却速度300℃/時間、加湿したN+H混合ガス雰囲気(酸素分圧は2×10−13〜5×10−10MPa内に調節)の条件で行った。なお、焼成の際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
次いで、上記にて得られた焼結体について、再酸化処理(アニール)を行った。本実施例では、再酸化処理を表1に示す各条件で行い、試料番号1〜8の各試料を得た。試料1,3,4,6および8においては、水温を35℃としたウェッターにより加湿したNガス雰囲気中で再酸化処理を行った。また、試料7は、再酸化処理を行わなかった試料である。
次いで、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中において、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。このようにして得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10、その厚さは6μmであり、内部電極層の厚さは1.5μmであった。各サンプルについて下記特性の評価を行った。
Mnの酸化物を含む偏析相
内部電極層に形成された電極途切れ部に、Mnの酸化物を含む偏析相が形成されているか否かを調べるために、各コンデンサ試料について、EPMA分析およびSEMによる反射電子像(BEI)の測定を行った。
EPMA分析は、各試料の誘電体層、内部電極層(および偏析相)の切断面についてEPMA測定を行い、Mn元素の元素マッピングを行った。測定は、視野30μm×30μmの範囲について行った。
反射電子像(BEI)の測定は、各試料の誘電体層、内部電極層(および偏析相)の切断面について、走査電子顕微鏡(SEM:日本電子社製の製品番号JSM−T300)を用いてSEM写真を撮影することにより行った。測定は、EPMA分析と同視野について行った。
そして、上記にて得られた元素マッピングの写真およびSEM写真より、電極途切れ部に、Mn元素を含有する偏析相が形成されているか否かを調べた。結果を表1に示す。
また、測定の結果得られた元素マッピングの写真、およびSEM写真を、図3(A)〜図3(D)に示す。ここにおいて、図3(A)は試料1の元素マッピングの写真、図3(B)は試料1のSEM写真、図3(C)は試料7の元素マッピング写真、図3(D)は試料7のSEM写真である。
内部電極層の被覆率
上記と同様の方法により反射電子像を測定し、得られたSEM写真から内部電極層の被覆率を求めた。具体的には、内部電極層に電極途切れ部が全く無いとして仮定した場合に、内部電極層が誘電体層を被覆する理想面積を100%とし、得られたSEM写真に基づき、内部電極層が誘電体層を実際に被覆している面積の比率を計算することにより求めた。なお、被覆率は、視野30μm×30μmについて測定したSEM写真10枚を使用して求めた。結果を表1に示す。
Mn元素のC.V.値
上記と同様の方法によりEPMA測定を行い、得られた元素マッピングの写真からMn元素のC.V.値を求めた。具体的には、まず、得られたMn元素の元素マッピングの結果から、解析画面における各部位のMn元素のピーク強度を測定した。次いで、そのピーク強度から、誘電体層、内部電極層(および偏析相)におけるMn元素の分布の検出強度の標準偏差σおよび平均検出強度xを求め、標準偏差σおよび平均検出強度xから、下記式(1)により焼成後のMn元素のC.V.値を算出した。本実施例では、C.V.値は大きいほうが好ましく、53以上、特に95以上であることが好ましい。結果を表1に示す。
C.V.値=(検出強度の標準偏差σ/平均検出強度x)×100…(1)
IR寿命
各コンデンサ試料に対し、200℃で100V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより、IR寿命を測定した。このIR寿命は、10個のコンデンサ試料について行い、平均寿命時間を測定することにより評価した。本実施例では、印加開始から抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。結果を表1に示す。
誘電損失(tanδ)
各コンデンサ試料に対し、測定温度−55℃〜+155℃の範囲で、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で、誘電損失(tanδ、単位は%)を測定した。結果を図4および表1に示す。なお、表1には、25℃および155℃における測定結果を示した。
比誘電率(ε)
各コンデンサ試料に対し、基準温度25℃でデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で、静電容量を測定した。そして、得られた静電容量と、コンデンサ試料の電極寸法および電極間距離とから、比誘電率(ε、単位はなし)を算出した。その結果、いずれの試料も56以上と良好な結果が得られた。
静電容量の温度特性
各コンデンサ試料に対し、LCRメータを用いて、1kHz、1Vの電圧での静電容量を測定し、基準温度を20℃としたとき、20〜85℃の温度範囲内で、温度に対する静電容量変化率が−3000〜0ppm/℃を満足するかどうかを調べた。その結果、いずれの試料も満足していることが確認された。
Figure 0004770210
表1に、試料1〜8の再酸化処理条件、Mnを含む偏析相の有無、被覆率、Mn元素のC.V.値、IR寿命および誘電損失の測定結果を示す。
表1より、再酸化処理の温度を900℃より高く、1150℃未満とした実施例の試料1〜3においては、電極途切れ部にMnの酸化物を含む偏析相が形成されていた。試料1〜3は、いずれもIR寿命が50時間以上と優れた結果となり、また、図4から明らかなように、広い温度範囲において誘電損失が低くなる結果となった。なお、試料1〜3は、内部電極層の被覆率およびMn元素のC.V.値についても、本願発明の好ましい範囲内となっていた。また、同じ範囲におけるEPMA写真およびSEM写真である図3(A)、図3(B)より、Mnを含有する偏析相が、電極途切れ部に形成されていることが確認できる。
これに対して、再酸化処理の温度を本願発明の好ましい範囲よりも低い温度とした比較例の試料4〜6、および再酸化処理を行わなかった比較例の試料7では、電極途切れ部にMnの酸化物を含む偏析相が形成されておらず、いずれもIR寿命に劣る結果となった。さらに、図4より、試料5〜7は、誘電損失が高くなっていることが確認できる。なお、試料4は、誘電損失は良好な結果であったが、IR寿命に劣るため、信頼性という観点より劣る結果となった。また、試料4〜7は、内部電極層の被覆率およびMn元素のC.V.値についても、本願発明の好ましい範囲外となっていた。
また、再酸化処理を1200℃と高くした比較例の試料8においては、内部電極の途切れや球状化が顕著に発生し、被覆率が55%と極めて低くなってしまい、コンデンサとして殆ど機能しなかった。
なお、Mnの酸化物を含む偏析相が形成されていなかった比較例の試料4〜7においては、Mnの酸化物を含む偏析相の代わりに、Siの酸化物を主成分とする偏析相が形成されていた。すなわち、本発明のような温度補償用の誘電体組成においては、上述の特許文献3(特開2004−273975号公報)に記載されているようなSiの酸化物を含む偏析相が形成されていても、IR寿命および誘電損失に劣る結果となった。なお、このSiの酸化物を主成分とする偏析相は、コンデンサの焼成過程で形成されていると考えられる。
実施例2
実施例2においては、第3副成分であるMnCOの添加量を、表2に示すように変化させた以外は、上述の実施例1における試料1と同様の方法により、積層セラミックコンデンサの試料を製造し、Mnの酸化物の添加による影響を評価した。なお、実施例2では、実施例1と同様にして、EPMA分析およびSEMによる反射電子像(BEI)の測定による偏析相の有無、IR寿命、IR不良率の評価を行った。結果を表2に示す。この実施例2においては、再酸化処理を、処理温度1100℃、ウェッター温度35℃、酸素分圧4.2×10−7MPaの条件で行った。
Figure 0004770210
表2より、試料1,9〜13においては、Mnの添加量が増加するとIR寿命が悪化する傾向にあることが確認できる。これらの中でも、実施例の試料1,10〜12は、IR寿命に優れ、いずれも良好な結果となった。
一方、Mnを添加しなかった比較例の試料9は、IR不良が発生してしまい、IR寿命の測定を行うことができなかった。また、Mnの添加量を5モルとした参考例の試料13は、電極途切れ部にMnの酸化物を含む偏析相が形成されてはいたが、IR寿命に劣る結果となった。この理由としては必ずしも明らかではないが、Mnの添加量が多すぎたため、誘電体層中に実際に含有されているMnの酸化物の量が多くなってしまったことに起因すると考えられる。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの要部断面図である。 図3(A)は本発明の実施例に係る誘電体層、内部電極層および偏析相のMn元素の元素マッピング結果を表す写真、図3(B)は誘電体層、内部電極層および偏析相の反射電子像を表す写真、図3(C)は比較例に係る誘電体層および内部電極層のMn元素の元素マッピング結果を表す写真、図3(D)は誘電体層および内部電極層の反射電子像を表す写真である。 図4は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサの測定温度と誘電損失との関係を示すグラフである。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
20… 偏析相
3… 内部電極層
30… 電極途切れ部
4… 外部電極

Claims (11)

  1. 誘電体層と内部電極層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミック電子部品であって、
    前記誘電体層が、誘電体磁器組成物からなり、
    前記誘電体磁器組成物は、組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで示され、前記組成式中の元素名を示す記号Meが、Sr、MgおよびBaの少なくとも一つであり、組成モル比を示す記号m、xおよびyが、0.8≦m≦1.3、0≦x≦1.00、0≦y≦0.8の関係にある誘電体酸化物を含む主成分と、
    Vの酸化物を含む第1副成分と、
    Alの酸化物を含む第2副成分と、
    Mnの酸化物を含む第3副成分と、を含有し、
    前記成分の前記主成分100モルに対する比率が、
    第1副成分:0モル<第1副成分<7モル(ただし、V に換算した値)、
    第2副成分:0モル<第2副成分<15モル(ただし、Al に換算した値)、
    第3副成分:0モル<第3副成分<5モル(ただし、Mnの酸化物中のMn元素換算)であり、
    前記素子本体を積層方向に沿って切断した場合に、前記内部電極層に観察される電極層の途切れ部の少なくとも一部には、Mnの酸化物を含有する偏析相が形成されていることを特徴とする積層セラミック電子部品。
  2. 前記内部電極層に前記途切れ部が全く無いとして仮定した場合に、前記内部電極層が前記誘電体層を被覆する理想面積に対して、前記内部電極層が前記誘電体層を実際に被覆する面積の割合である被覆率が60〜95%である請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記内部電極層の厚みが、3μm以下である請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  4. 前記誘電体磁器組成物が、
    SiOを主成分とし、MO(ただし、Mは、Ba、Ca、SrおよびMgから選ばれる少なくとも1種の元素)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第4副成分をさらに含有し、
    前記主成分100モルに対する前記第4副成分の比率が、酸化物換算で、0モル<第4副成分<20モルである請求項1〜3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  5. 前記第4副成分は、組成式{(Ba,Ca1−z )O}SiOで示され、前記組成式中の組成モル比を示す記号zおよびvが、0≦z≦1および0.5≦v≦4.0の関係にある複合酸化物を含む請求項に記載の積層セラミック電子部品。
  6. 前記誘電体層、内部電極層および偏析相中におけるMn元素の分布の検出強度の標準偏差σおよび平均検出強度xより、下記式(1)から算出されるMn元素の分布のC.V.値が、53以上である請求項1〜のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
    C.V.値=(検出強度の標準偏差σ/平均検出強度x)×100…(1)
  7. 誘電体層と内部電極層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、
    前記誘電体層を構成することとなる誘電体磁器組成物原料として、組成式{(Ca1−x Me)O}・(Zr1−y Ti)Oで示され、前記組成式中の元素名を示す記号Meが、Sr、MgおよびBaの少なくとも一つであり、組成モル比を示す記号m、xおよびyが、0.8≦m≦1.3、0≦x≦1.00、0≦y≦0.8の関係にある誘電体酸化物を含む主成分原料と、Vの酸化物および/または焼成後にVの酸化物になる化合物を含む第1副成分原料と、Alの酸化物および/または焼成によりAlの酸化物になる化合物を含む第2副成分原料と、Mnの酸化物および/または焼成後にMnの酸化物になる化合物を含む第3副成分原料と、を含有する誘電体磁器組成物原料を使用し、かつ、
    焼成後の焼結体に、900℃より高く、1150℃未満の温度で再酸化処理を施す工程を有することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記第3副成分原料の前記主成分原料100モルに対する比率が、Mn元素換算で、0モル<第3副成分原料<5モルである請求項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  9. 前記主成分原料100モルに対する各副成分原料の比率が、
    第1副成分原料:0モル<第1副成分原料<7モル(ただし、Vに換算した値)、
    第2副成分原料:0モル<第2副成分原料<15モル(ただし、Alに換算した値)である請求項またはに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  10. 前記誘電体磁器組成物原料が、
    SiO、BaO、CaO、SrO、MgO、LiO、B、および/または焼成によりこれらの酸化物になる化合物から選ばれる少なくとも1種を含む第4副成分原料をさらに含有し、
    前記主成分100モルに対する前記第4副成分原料の比率が、酸化物換算で、0モル<第4副成分原料<20モルである請求項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  11. 前記第4副成分は、組成式{(Ba,Ca1−z )O}SiOで示され、前記組成式中の組成モル比を示す記号zおよびvが、0≦z≦1および0.5≦v≦4.0の関係にある複合酸化物を含む請求項10に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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