JP4931697B2 - 誘電体磁器およびコンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子によって形成された誘電体磁器とそれを用いたコンデンサに関する。
現在、モバイルコンピュータや携帯電話をはじめとするデジタル方式の電子機器の普及が目覚ましく、近い将来、地上デジタル放送が全国に展開されようとしている。地上デジタル放送を担うデジタル方式の電子機器として液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどがあるが、これらデジタル方式の電子機器には多くのLSIが用いられている。
そのため、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなど、これらデジタル方式の電子機器を構成する電源回路にはバイパス用のコンデンサが数多く実装されているが、ここで用いられているコンデンサは高い静電容量を必要とする場合には高誘電率の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献1参照)が採用され、一方、低容量でも温度特性を重視する場合には容量変化率の小さい温度補償型の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献2参照)が採用されている。
特開2000−58377号公報 特開2001−294481号公報
しかしながら、特許文献1に開示された高誘電率の積層セラミックコンデンサは、強誘電性を有する誘電体磁器の結晶粒子によって構成されているため比誘電率の温度変化率が大きく、かつ誘電分極を示すヒステリシスが大きいという不具合があった。
また、特許文献1に開示された強誘電性の誘電体磁器を用いて形成されたコンデンサでは、電源回路上において電気誘起歪に起因する “音鳴り”現象を発生させやすいことから、プラズマディスプレイなどに使用する際の障害となっていた。
一方、温度補償型の積層セラミックコンデンサは、それを構成する誘電体磁器が、常誘電性であるため誘電分極を示すヒステリシスがなく、強誘電性特有の電気歪が起こらないという利点があるものの、誘電体磁器の比誘電率が低いために蓄電能力が低くバイパスコンデンサとしての性能を満たさないという問題があった。
従って、本発明は、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示し、自発分極の小さい誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供することを目的とする。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウム、カルシウム、マグネシウム、希土類元素、およびマンガンが固溶した結晶粒子と粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するチタン1モルに対して、カルシウムをCaO換算で0.1モル以下、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.064モル、希土類元素をRE換算で0.0015〜0.03モル、およびマンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モルの範囲でそれぞれ含有してなり、前記誘電体磁器のX線回折により同定される結晶構造が立方晶系を主体とするものであり、かつ前記結晶粒子の平均結晶粒径が80〜200nmであることを特徴とする。
また、上記誘電体磁器では、前記カルシウムの含有量がCaO換算で0.025〜0.075モル、前記マグネシウムの含有量がMgO換算で0.01〜0.04モルであって、前記結晶粒子の平均結晶粒径が130〜200nmであることが望ましい。
また、本発明のコンデンサは、上記の誘電体磁器からなる誘電体層と導体層とが積層され構成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器によれば、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体磁器中に、カルシウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンを酸化物換算で上記の割合で含有させるとともに、誘電体磁器のX線回折により同定される結晶構造が立方晶系を主体とするものとし、かつ、結晶粒子の平均粒径を80〜200nmとすることにより、従来の強誘電性を有する誘電体磁器よりも比誘電率の温度変化率が小さく、また、従来の常誘電性を有する誘電体磁器に比較して高誘電率であり、かつ安定な比誘電率の温度特性を示すとともに、自発分極の小さい誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明の誘電体磁器において、前記カルシウムの含有量をCaO換算で0.025〜0.075モル、前記マグネシウムの含有量をMgO換算で0.01〜0.04モルとするとともに、前記結晶粒子の平均結晶粒径を130〜200nmとした場合には、比誘電率がより高く、かつ比誘電率の温度特性がより安定で、自発分極のさらに小さい誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明のコンデンサによれば、誘電体層として、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示し、自発分極の小さい上述の誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサを形成でき、これを電源回路用として用いたときには、電気誘起歪に起因する “音鳴り”現象の発生を抑制できる。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウム、カルシウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンが固溶した結晶粒子と粒界相とから実質的に構成されており、誘電体磁器中において、チタン酸バリウムを構成するチタン1モルに対して、カルシウムをCaO換算で0.1モル以下、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.064モル、希土類元素をRE換算で0.0015〜0.03モル、およびマンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モルの割合で含有することを特徴とする。
また、本発明の誘電体磁器は、誘電体磁器のX線回折により同定される結晶構造が立方晶系を主体とするものであり、誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均結晶粒径が80〜200nmであることが重要である。
上記組成および粒径とするとともに、結晶構造を立方晶系を主体とするものにすると、室温における比誘電率を410以上、−55℃〜125℃間における比誘電率の変化率を±10%以内にでき、誘電分極におけるヒステリシスの小さい誘電体磁器を形成できるという利点がある。
このような本発明の誘電体磁器は、その結晶粒子を、チタン酸バリウムにカルシウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンが固溶したものとし、これらの成分が固溶したチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均結晶粒径を80〜200nmとすることで、当該結晶粒子により構成される誘電体磁器の結晶構造を立方晶系を主体としたものにすることができ、これにより正方晶系の結晶構造に起因する強誘電性が低下し、常誘電性を高めることができ、常誘電性が増すことで自発分極を低減できる。
また、結晶粒子の結晶構造を立方晶系を主体とする結晶構造とすることで、−55〜125℃の温度範囲における比誘電率の変化が平坦となり、電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが小さくなる。そのため、比誘電率が410以上を有するにもかかわらず比誘電率の変化率の小さな誘電体磁器を得ることができる。
即ち、本発明の誘電体磁器では、結晶粒子が、チタン酸バリウムにカルシウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンが固溶し、その平均粒径を微細化しかつ結晶構造を立方晶系とすることで比誘電率の温度特性を平坦化できる。
なお、マグネシウム、希土類元素およびマンガンを所定量含むことで相転移現象を変化させ、比誘電率の変化率を示す曲線は−55℃〜125℃の温度範囲において室温を中心に、2つのピークを有したものとなっている。
即ち、本発明の誘電体磁器では、チタン酸バリウムにおけるバリウムの一部をイオン半径の小さいカルシウムにより置換したものとすることで、相転移点が高温側へ移動し、比誘電率の温度に対する平坦性が向上する。これはカルシウムの導入により、マグネシウム、希土類元素、マンガンの固溶性が高まることにより常誘電相−強誘電相の相転移温度は低温化し、同時に散漫になり比誘電率の温度特性が安定なものになると考えられる。
つまり、誘電体磁器を構成する結晶粒子の結晶構造が立方晶系であると、イオン変位による自発分極が抑制され強誘電性を抑制でき、こうして温度に対する比誘電率の変化を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有するものになると考えられる。
本発明の誘電体磁器では、上述したように、チタン酸バリウムを構成するチタン1モルに対して、カルシウムをCaO換算で0.1モル以下、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.064モル、希土類元素をRE換算で0.0015〜0.03モル、およびマンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モルの範囲でそれぞれ含有することが重要である。
なぜなら、チタン1モルに対するカルシウムの含有量がCaO換算で0.1モルより多いか、マグネシウムがMgO換算で0.064モルより多いか、希土類元素がRE換算で0.03より多い場合には比誘電率が低下するからであり、逆に、マグネシウムがMgO換算で0.01モル少ないか、希土類元素がRE換算で0.0015モルより少ない場合には誘電体磁器の比誘電率の変化率が大きくなるからである。また、マンガンがMnO換算で0.0002モルより少ないと、焼成後の誘電体磁器が還元されてしまい誘電体磁器の絶縁抵抗が低下して機能を有しないものとなり、また、マンガンがMnO換算で0.03モルよりも多くなると比誘電率が低下するといった不具合があるからである。
また、本発明の誘電体磁器は、上記のような平坦な比誘電率の温度特性を示すためには、誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均粒径が80〜200nmであることが重要である。これは結晶粒子の平均結晶粒径が80nmよりも小さい場合には比誘電率が低下し、一方、結晶粒子の平均結晶粒径が200nmよりも大きい場合には、比誘電率の温度係数が大きくなるからである。結晶粒子の平均結晶粒径が200nmよりも大きい場合には誘電体磁器中に、チタン酸バリウムのペロブスカイト型結晶構造の正方晶系の結晶が生成してくる可能性があるためである。
つまり、結晶粒子の平均結晶粒径が大きくなると、誘電体磁器中に強誘電性を示す相が多くなるため比誘電率が高くなるが、比誘電率の温度係数が大きくなり自発分極が現れる。これは誘電体磁器のX線回折により同定される結晶構造において立方晶系とともに正方晶系の相が生成してくることに起因する。このような誘電体磁器を誘電体層とするコンデンサを電源回路上において使用した場合には電歪現象に起因する “音鳴り”現象が発生しやすくなる。
本発明の誘電体磁器において、より好ましい組成および粒径としては、カルシウムの含有量がCaO換算で0.025〜0.075モル、前記マグネシウムの含有量がMgO換算で0.01〜0.04モル、希土類元素をRE換算で0.0015〜0.03モルおよびマンガンがMnO換算で0.0002〜0.03モルであり、結晶粒子の平均結晶粒径が130〜200nmであるものがよく、この範囲の誘電体磁器は、25℃における比誘電率を690以上、−55〜125℃における比誘電率の変化率を±10%以内にすることが可能になる。また、本発明の誘電体磁器では、このような組成および粒径を定めた場合に、25℃における比誘電率が1000より低く、−55〜125℃における比誘電率の変化率が±10%以内である場合には、分極値を0.03μC/cm以下にすることが可能になる。
また、誘電体磁器の結晶粒子の平均結晶粒径は誘電体磁器の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、次いで、その写真に映し出されている結晶粒子の輪郭を画像処理し、各粒子の面積から円の直径を求めて平均化する。
また、誘電体磁器の結晶構造はCukαを管球とするX線回折を用いて、2θを10〜100°として測定して同定する。この場合、試料は誘電体磁器を粉砕した粉末を用い、チタン酸バリウムのJCPDSデータを基にして、(002)面、(200)面の回折線から立方晶系および正方晶系を評価する。立方晶系は(002)(200)の回折線が分離していないものであり、正方晶系は立方晶系の(002)(200)の回折線の両脇に回折ピークが出現するか、または回折ピークの分離が見られる場合とする。
また、本発明において、立方晶系を主体とする結晶構造とは立方晶系のチタン酸バリウムの最も強いピークである(110)面の回折ピーク強度が異相の回折ピーク強度よりも大きい状態をいう。
次に、本発明の誘電体磁器の製法について説明する。先ず、素原料粉末として、純度がいずれも99%以上のBaCO粉末と、CaCO粉末、TiO粉末、MgO粉末、Y粉末および炭酸マンガン粉末を用いる。これらの素原料粉末を、チタン酸バリウムを構成するチタン1モルに対して、CaCOを0.10モル以下(ゼロは除く)の割合で、MgOを0.01〜0.064モルの割合で、Yを0.0015〜0.03モルの割合で、MnOを0.0002〜0.03モルの割合で配合する。
次に、上記した素原料粉末の混合物を湿式混合し、乾燥させた後、温度900〜1100℃で仮焼し、粉砕する。粉砕後の仮焼粉末の平均粒径は、仮焼粉末の段階で結晶構造を立方晶系が主体とするものにするために、100nm以下とすることが重要である。
仮焼温度を900℃以上とするのは仮焼粉末にチタン酸バリウムを主成分とする立方晶系の結晶相を生成させるためであり、1100℃以下とするのは、次の工程において、焼成時の反応性を維持し、仮焼時における粒径の粗大化を防止するためである。
仮焼粉末についても上記したX線回折の方法によって結晶構造を同定する。また、仮焼粉末の平均粒径の測定は仮焼粉末を試料台上に分散させた状態で測定する。つまり、仮焼粉末の結晶構造についてもCukαを管球とするX線回折を用いて、2θを10〜100°として測定して同定する。この場合、試料は仮焼粉末を粉砕した粉末を用い、チタン酸バリウムのJCPDSデータを基にして、上記した誘電体磁器についての評価方法と同様な方法で結晶構造の同定を行う。
次に、粉砕した仮焼粉末を用いて所定形状に成形し、1050〜1250℃の温度範囲でホットプレス法により焼成して緻密化した誘電体磁器を得る。この場合、ホットプレス法はカーボン型を用い、窒素雰囲気中にて、圧力80〜150MPaの条件で加圧加熱する。
焼成温度を1050℃以上とするのは、誘電体磁器の緻密化を図るためであり、一方、1250℃以下とするのは、結晶粒子の粒成長を抑制するとともに、誘電体磁器の過剰な還元を抑制して結晶相の分解を防止するためである。
このように仮焼粉末として立方晶系の粉末を用いて焼結させることにより、焼結体においても立方晶系の結晶構造を実現することが容易になり、これにより常誘電性に近い比誘電率の温度特性を維持した高誘電率の誘電体磁器を容易に形成できる。
図1は、本発明のコンデンサを示す断面模式図である。本発明の誘電体磁器を用いて、以下のようなコンデンサを形成できる。
本発明のコンデンサはコンデンサ本体10の端部に外部電極12が設けられている。コンデンサ本体10は誘電体層13と内部電極層である導体層14とが交互に積層され構成されている。ここでの誘電体層13は上述した本発明の誘電体磁器によって形成されることが重要である。導体層14は高積層化しても製造コストを抑制できるという点でNiやCuなどの卑金属が望ましく、特に、本発明のコンデンサを構成する誘電体層13との同時焼成を図るという点でNiがより望ましい。この導体層14の厚みは平均で1μm以下が好ましい。
また、このようなコンデンサを作製する場合には、上記した混合粉末をグリーンシートに成形するとともに、導体層14となる導体ペーストを調製して前記グリーンシートの表面に印刷した後積層し焼成して積層体1を形成する。しかる後、積層体1の端面にさらに導体ペーストを印刷して焼成し、外部電極12を形成することによりコンデンサを得ることができる。こうして得られたコンデンサは、上述の誘電体磁器を誘電体層とすることから、電源回路上において使用した場合には電歪現象に起因する “音鳴り”現象を抑制することができる。
本発明の誘電体磁器を以下のように作製した。まず、いずれも純度が99.9%のBaCO粉末、CaCO粉末、TiO粉末、MgO粉末、Y、Ho、Dy酸化物粉末、炭酸マンガン粉末を用意し、表1に示す割合で調合し混合粉末を調製した。表1に示す量は前記元素の酸化物換算量に相当する量である。
次に、混合粉末を温度1050℃、2時間にて仮焼し、仮焼粉末を粉砕した。このとき粉砕後の仮焼粉末の平均粒径は50〜150nmの範囲に入るようにした。この後、仮焼粉末を直径12mm、厚さ1mmの形状のペレット状に成形した。
次に、各組成のペレットを複数個ずつ焼成した。焼成温度は1050〜1250℃とした。焼成は窒素雰囲気を用いた窒素雰囲気中でホットプレスにて作製した。ホットプレスの圧力は100MPaとし、ホットプレス用治具としてはカーボン型を用いた。焼成後の試料の表面にインジウム・ガリウムの導体膜を印刷した。
作製した誘電体磁器であるこれらの試料をLCRメーター4284Aを用いて周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0Vにて静電容量を測定し、試料の直径と厚みおよび導体膜の面積から比誘電率を算出した。試料数は各10個とした。
また、比誘電率の変化率を−55〜125℃の範囲で測定した。表1における+側最大値は前記温度範囲において、25℃を基準としたときの最も高い比誘電率の割合であり、一方、−側最大値は25℃を基準としたときの最も低い比誘電率の割合である。
誘電体磁器の結晶粒子の平均結晶粒径は得られた誘電体磁器の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、次いで、その写真に映し出されている結晶粒子の輪郭を画像処理し、各粒子を円に仮定してその直径を求め平均化して求めた。写真の倍率は約30000倍とし、観察点数は各試料3点とした。仮焼粉末については、走査型電子顕微鏡用の試料台上に仮焼粉末を分散させて同様の方法により求めた。
また、誘電体磁器の結晶構造はCukαを管球とするX線回折を用いて、得られた誘電体磁器を一旦粉砕し、2θを10〜100°として測定した。この場合、チタン酸バリウムのJCPDSデータを基にして、(002)面、(200)面の回折線から立方晶系を評価した。立方晶系は(002)面、(200)面の回折線が分離していないものとした。仮焼粉末についても同様の測定を行った。実施例は仮焼粉末および焼成後の誘電体磁器のいずれも立方晶系を主体とするものであった。
また、得られた誘電体磁器について圧電歪の大きさを誘電分極の測定によって求めた。圧電歪の大きさは、電歪定数と比誘電率及び自発分極の大きさで決まり、特に分極の大きさに左右される為、分極の大きさ(分極値)を圧電歪の大きさの指標とした。この場合、電界強度が2V/μmとなる周波数10Hzの交流電圧を印加した時の電界−分極履歴曲線を測定し、電界−分極履歴曲線における0Vでの電荷量(残留分極)の値で評価した。
また、得られた焼結体である試料の組成分析はICP分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた誘電体磁器を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により誘電体磁器に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。
表1に調製組成、仮焼条件および焼成条件を、表2に焼成後の試料における組成、結晶粒子の平均結晶粒径および特性の結果を示した。
Figure 0004931697
Figure 0004931697
得られた誘電体磁器は還元した試料No.15を除いて評価できる試料であった。表2の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器は25℃における比誘電率が410以上、比誘電率の変化率が−55〜125℃の範囲において±10%以内であった。また、分極値0.1μC/cm以下であり、圧電歪の小さい試料であることが確認された。
また、カルシウムの含有量がCaO換算で0.025〜0.075モル、前記マグネシウムの含有量がMgO換算で0.01〜0.04モル、希土類元素の含有量がRE換算で0.0015〜0.03モルおよびマンガンの含有量がMnO換算で0.0002〜0.03モルであり、結晶粒子の平均結晶粒径が130〜200nmであるものがよく、この範囲の誘電体磁器は、25℃における比誘電率690以上、−55〜125℃における比誘電率の変化率±10%以内であった。この中で、25℃における比誘電率1000以下、−55〜125℃における比誘電率の変化率が±10%以内である試料は分極値が0.03μC/cm以下であり、さらに圧電歪が小さかった。
これに対して、結晶粒子の平均粒径が0.20μmより大きい試料では、25℃における比誘電率が1000以上と大きかったが、X線回折において正方晶歪が確認され、比誘電率の変化率が−55〜125℃の範囲において+28%以上と本発明の試料に比較して大きかった。結晶粒子の平均粒径が0.08μmより小さい試料では、25℃における比誘電率が360以下であった。
また、カルシウム、マグネシウム、希土類元素、及びマンガンの含有量を本発明の範囲外とした試料においても比誘電率が低いか、比誘電率の温度変化率が大きいものであった。
以下、実際例をさらに詳細に説明する。図2は、本発明の誘電体磁器についての比誘電率の(a)温度変化、(b)温度変化率(25℃の値を基準)を示すグラフである。
グラフ中の#10を付した曲線は本発明の誘電体磁器の例である試料No.10、#2を付した曲線は本発明の比較例である試料No.2の場合である。
#10を付した曲線である試料No.10の誘電体磁器では、チタン酸バリウムに、上記した元素を所定量含有させることで、チタン酸バリウムが本来有する室温および125℃付近に存在する相転移ピークは低温側へ移動し散漫化する。さらに結晶粒子の粒径を制御することで材料の基底状態の誘電率が表面化し、誘電率の温度変化において2つの極大を示し、通常見られる単調温度変化とは異なり、平坦な温度特性が得られる。また、相転移が散漫化し、サイズ制御により強誘電性が抑制されることで、常誘電性的な特性を発現しやすくなる。
本発明において、比誘電率の変化率は希土類元素またはマンガンよりもマグネシウム量に依存するものとされているが、チタン酸バリウムを主成分としマグネシウムを含有する誘電体磁器(非特許文献1参照)のように、BaTiOにおけるTiをMgによって置換しただけでは相転移点の低下と相転移の散漫化は起こらない。本発明では、特に、希土類元素を同時に結晶粒子の内部にまで固溶させることで上記の誘電特性が発現するものと考えられる。
一方、比較例である試料No.2においては、室温以下に見られるように、基本的な誘電特性は粒成長により大きく変化しないが、高温においては粒成長によりCa含有チタン酸バリウムの相転移の特徴が表面化し、100℃近傍の誘電率が増大し、比誘電率の変化率が大きい誘電体磁器となる。
なお、非特許文献1は、トオル・ナガイ(Toru Nagai)、ケンジ・イイジマ(Kenji Iijima)、ハエ・ジン・ワン(Hae Jin Hwang)、ムツオ・サンド(Mutsuo Sando)、トオル・セキノ(
Tohru Sekino)、コウイチ・ニイハラ(koichi Niihara)、イフェクト・オブ・MgO・ドーピング・オン・ザ・フェーズ・トランスフォーメーション・オブ・BaTiO(Effect of MgO Doping on the Phase transformation of BaTiO3) ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミックソサエティ(Journal of American Ceramic Society)(2000) 83 [1] p.107−112、である。
本発明のコンデンサの例を示す断面模式図である。 本発明の誘電体磁器についての比誘電率の(a)温度変化、(b)温度変化率(25℃の値を基準)を示すグラフである。
符号の説明
13・・誘電体層
14・・導体層

Claims (3)

  1. チタン酸バリウム、カルシウム、マグネシウム、希土類元素、およびマンガンが固溶した結晶粒子と粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するチタン1モルに対して、カルシウムをCaO換算で0.1モル以下、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.064モル、希土類元素をRE換算で0.0015〜0.03モル、およびマンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モルの範囲でそれぞれ含有してなり、前記誘電体磁器のX線回折により同定される結晶構造が立方晶系を主体とするものであり、かつ前記結晶粒子の平均結晶粒径が80〜200nmであることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 前記カルシウムの含有量がCaO換算で0.025〜0.075モル、前記マグネシウムの含有量がMgO換算で0.01〜0.04モルであって、前記結晶粒子の平均結晶粒径が130〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
  3. 請求項1または2に記載の誘電体磁器からなる誘電体層と導体層とが積層され構成されていることを特徴とするコンデンサ。
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