JP4959634B2 - 誘電体磁器およびコンデンサ - Google Patents

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本発明は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とする誘電体磁器とそれを用いたコンデンサに関する。
現在、モバイルコンピュータや携帯電話をはじめとするデジタル方式の電子機器の普及が目覚ましく、近い将来、地上デジタル放送が全国に展開されようとしている。地上デジタル放送用の受信機であるデジタル方式の電子機器として液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどがあるが、これらデジタル方式の電子機器には多くのLSIが用いられている。
そのため、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなど、これらデジタル方式の電子機器を構成する電源回路にはバイパス用のコンデンサが数多く実装されているが、ここで用いられているコンデンサは高い静電容量を必要とする場合には高誘電率の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献1を参照)が採用され、一方、低容量でも温度特性を重視する場合には容量変化率の小さい温度補償型の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献2を参照)が採用されている。
特開2001−89231号公報 特開2001−294481号公報
しかしながら、特許文献1に開示された高誘電率の積層セラミックコンデンサは、強誘電性を有する誘電体磁器によって構成されているために比誘電率の温度変化率が大きく、かつ誘電分極を示すヒステリシスが大きいという不具合があった。
また、特許文献1に開示された強誘電性の誘電体磁器を用いて形成されたコンデンサでは、電源回路上において電気誘起歪に起因するノイズ音を発生させやすいことから、プラズマディスプレイなどに使用する際の障害となっていた。
一方、温度補償型の積層セラミックコンデンサは、それを構成する誘電体磁器が、常誘電性であるために誘電分極を示すヒステリシスがなく、強誘電性特有の電気誘起歪が起こらないという利点があるものの、誘電体磁器の比誘電率が低いために蓄電能力が低く、バイパスコンデンサとしての性能を満たさないという課題があった。
従って、本発明は、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示す誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供することを目的とする。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とし、該結晶相を構成する結晶粒子間に粒界相を有する誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.045モル、マグネシウムをMgO換算で0.0075〜0.04モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モル含有するとともに、前記マグネシウムが前記結晶粒子の内部よりも表層部に多く存在し、前記結晶粒子の表面から20nmの深さにおける前記マグネシウムの濃度が0.2原子%以下であるとともに、前記結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであり、かつ前記結晶相が立方晶を主体とする結晶構造を有することを特徴とする。
また、本発明の誘電体磁器は、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、前記イットリウムをYO3/2換算で0.01〜0.024モル、前記マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、前記マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.03モル、前記イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モル含有するとともに、前記結晶粒子の表面から20nmの深さにおける前記マグネシウムの濃度が0.15原子%以下であり、かつ前記結晶粒子の平均粒径が0.07〜0.15μmであることが望ましい。
さらに、本発明の誘電体磁器は、前記誘電体磁器のX線回折から求められる前記結晶相の格子定数aが0.4013〜0.4017nmであることが望ましい。
また、本発明のコンデンサは、上記誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器によれば、従来の常誘電性を有する誘電体磁器に比較して比誘電率が高く、かつ安定した比誘電率の温度特性を示すとともに、自発分極の小さい誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明のコンデンサによれば、誘電体層として、高誘電率でかつ安定した比誘電率の温度特性を示し、自発分極の小さい上記誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサを提供できる。その為、このコンデンサを電源回路に用いた場合、電気誘起歪に起因するノイズ音の発生を抑制できる。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分として、これにイットリウム、マンガン、マグネシウムおよびイッテルビウムを含有するものであり、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.045モル、マグネシウムをMgO換算で0.0075〜0.04モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モル含有する。
また、本発明の誘電体磁器を構成する結晶粒子は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とし、この結晶相を構成する結晶粒子間に粒界相を有するとともに、前記結晶相が立方晶を主体とする結晶構造を有する。なお、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とするとは、この結晶性のチタン酸バリウムが主成分であることを意味しており、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相以外の結晶相が少量含まれていてもよい。
さらに、本発明の誘電体磁器は、主たる結晶相を構成する結晶粒子の平均結晶粒径が0.05〜0.2μmであるとともに、マグネシウムが、結晶粒子の内部よりも表層部に多く存在しており、結晶粒子の表面から20nmの深さにおけるマグネシウムの濃度が0.2原子%以下である。
このような誘電体磁器は、室温における比誘電率が700以上、125℃における比誘電率が650以上、25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数((ε125−ε25)/(ε25(125℃−25℃)))が絶対値で1000×10−6/℃以下、室温における分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cmよりも小さくなる。
ここで、立方晶を主体とする結晶構造とは、X線回折により求められる結晶構造として、ペロブスカイト型結晶構造の面指数(400)の回折ピークが分離していない程度のX線回折パターンを有するもののことであり、立方晶以外の結晶構造を有する結晶相が少量含まれていても構わない。
図1は、後述の実施例の表1,2における本発明の誘電体磁器である試料No.4のX線回折チャートであり、2θ=97〜104°の範囲(面指数(400))の回折ピークである。図1に見られるように、主な回折ピークは面指数(400)の回折ピークであり、ペロブスカイト型結晶構造の面指数(400)の回折ピークが分離していない。そのため、このようなX線回折パターンを有する誘電体磁器はその結晶相が立方晶を主体とする結晶構造を有していることが分かる。
なお、誘電体磁器の結晶構造はX線回折法により求める。具体的には、得られた誘電体磁器を粉砕し、粉砕した試料を、X線回折装置を用いて、2θ=4〜120°の範囲で回折し、主に、面指数(200)および(400)のピークから求める。
本発明の誘電体磁器は、結晶構造が正方晶で強誘電性を示すチタン酸バリウムに、イットリウム、マンガン、マグネシウムおよびイッテルビウムを固溶させるとともに、結晶粒子の平均粒径を特定の範囲とすることで、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を、立方晶を主体とする結晶構造にするとともに、マグネシウムが結晶粒子中の内部よりも表層部に多く存在するようにし、結晶粒子の内部におけるマグネシウムの濃度が低くなるようにしたものである。
これにより本発明の誘電体磁器は、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において平坦となり、誘電分極のヒステリシスが小さくなる。そのため比誘電率が700以上でも比誘電率の温度係数の小さい誘電体磁器とすることができる。
即ち、上述した範囲でチタン酸バリウムに対して、イットリウム、マンガンおよびマグネシウムを所定量含有させると、室温(25℃)以上のキュリー温度を示し、比誘電率の温度係数が正の値を示す誘電特性を示す誘電体磁器となるが、このような誘電特性を示す誘電体磁器に対して、さらにイッテルビウム(Yb)を含有させた場合に、本発明の効果が大きく現れ、比誘電率の温度係数が小さくなり温度特性を平坦化できる。
ここで、イッテルビウムはチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の粗大化を抑制する働きをもち、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モル含有する。
これは、バリウム1モルに対するイッテルビウムの含有量がYbO3/2換算で0.025モルよりも少ないと、誘電体磁器の比誘電率が高いものの、比誘電率の温度係数がその絶対値で1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、誘電分極のヒステリシスが大きくなるからであり、またバリウム1モルに対するイッテルビウムの含有量がYbO3/2換算で0.18モルよりも多いと、25℃における誘電体磁器の比誘電率が700よりも低くなり、また、125℃における比誘電率が650未満となるためである。
また、イッテルビウム以外のバリウム1モルに対するイットリウム、マンガンおよびマグネシウムの含有量は、それぞれYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、MnO換算で0.0002〜0.045モル、MgO換算で0.0075〜0.04モル含有する。
バリウム1モルに対するマグネシウムの含有量がMgO換算で0.0075モルより少ないと、誘電体磁器の比誘電率の温度係数がその絶対値で1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、分極電荷が25nC/cmよりも大きくなる。またマグネシウムの含有量がMgO換算で0.04モルより多いと、誘電体磁器の比誘電率が700未満に低下するとともに、分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cmよりも大きくなる。
バリウム1モルに対するイットリウムの含有量がYO3/2換算で0.0014モルよりも少ないか、またはバリウム1モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.0002モルよりも少ない場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数がその絶対値で1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、分極電荷が25nC/cmよりも大きくなる。また、バリウム1モルに対するイットリウムの含有量がYO3/2換算で0.03モルよりも多い場合には誘電体磁器の比誘電率が700未満になるとともに、分極電荷が25nC/cmよりも大きくなる。また、バリウム1モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.045モルよりも多いと、誘電体磁器の比誘電率が700未満に低下するとともに、比誘電率の温度係数が1000×10−6/℃よりも大きくなる。
なお、本発明の誘電体磁器には、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば焼結性を高くするやめの助剤としてガラス成分や他の添加成分を誘電体磁器中に4質量%以下の割合で含有させても構わない。
さらに、本発明の誘電体磁器は、マグネシウムを上記範囲で含有するものであるが、かかる誘電体磁器を構成する結晶粒子中において、マグネシウムが内部よりも表層部に多く存在するとともに、結晶粒子の表面から20nmの深さにおけるマグネシウムの濃度が0.2原子%以下であり、これにより室温(25℃)における誘電体磁器の比誘電率を700以上にすることができる。これに対して、結晶粒子の表面から20nmの深さにおけるマグネシウムの濃度が0.2原子%よりも高い場合には、室温(25℃)における誘電体磁器の比誘電率が700未満となる。
結晶粒子中のマグネシウムの濃度の測定は、誘電体磁器の表面を研磨した研磨面に存在する結晶粒子に対して元素分析器(EDS)を付設した透過電子顕微鏡を用いて元素分析を行なう。このとき電子線のスポットサイズは1〜3nmとし、分析する箇所は結晶粒子の表面からの深さが20nmの位置とし、測定点から検出されるBa、Ti、Y、Yb、Mg、Mnの全量を100%としたときのMgの割合を求め、この測定を結晶粒子10個に対して行い、その平均値より求める。このとき表面からの深さが5nmの位置についても同様の方法で分析を行い、結晶粒子中のMgの濃度変化を調べる。抽出する結晶粒子は、その輪郭から画像処理にて各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その直径が後述する測定方法によって求まる平均粒径の±30%の範囲にある結晶粒子とし、この範囲にある結晶粒子を10個抽出する。本発明において、結晶粒子の表面とは、誘電体磁器の表面を研磨した研磨面における結晶粒子の輪郭を意味する。また、結晶粒子の表層部とは、結晶粒子の表面から5nmまでの深さの領域を意味する。さらに結晶粒子の内部とは、結晶粒子の表面からの深さが10nm以上の領域を意味する。
またさらに、本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmである。
チタン酸バリウムを主成分とする結晶相により構成される結晶粒子の平均粒径が0.05μmよりも小さいと、配向分極の寄与が無くなるために誘電体磁器の比誘電率が低下するからであり、また平均粒径が0.2μmよりも大きいと、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が大きくなるか、または誘電分極が大きくなるか、あるいは誘電体磁器の比誘電率の温度係数とともに誘電分極が大きくなるおそれがあるからである。これに対し、平均粒径が0.05〜0.2μmとすることで、誘電分極のヒステリシスが小さく常誘電性に近い特性を示す誘電体磁器とすることができる。
誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均粒径は、誘電体磁器の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択し、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求める。
なお、本発明の誘電体磁器の好ましい組成や構造としては、バリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.01〜0.014モル、マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.03モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モルとするとともに、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径が0.07〜0.15μmであり、結晶粒子の表面から20nmの深さにおけるマグネシウムの濃度が0.15原子%以下であるものが良く、この範囲の誘電体磁器は、25℃における比誘電率を750以上、125℃における比誘電率を710以上、比誘電率の温度係数を絶対値で850×10−6/℃以下、誘電分極を20nC/cm以下にすることが可能になる。
そして、本発明の誘電体磁器では、立方晶の格子定数aが0.4013〜0.4017nmであることが望ましい。結晶相の格子定数が上記範囲である場合には、25℃における比誘電率を760以上、125℃における比誘電率を720以上を維持したまま、比誘電率の温度係数をその絶対値で850×10−6/℃以下、誘電分極を20nC/cm以下にすることが可能になる。
なお、誘電体磁器を構成する結晶相の格子定数はのX線回折法により求める。具体的には、得られた誘電体磁器を粉砕し、粉砕した試料を、X線回折装置を用いて、2θ=4〜120°の範囲で回折し、主に、面指数(200)および(400)のピークから求める。
次に、本発明の誘電体磁器の製法について説明する。
まず、素原料粉末として、純度がいずれも99%以上のBaCO粉末とTiO粉末、Y粉末および炭酸マンガン粉末を用いる。これらの素原料粉末を、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、TiO粉末を0.97〜0.99モル、YをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、MnCOを0.0002〜0.045モルの割合でそれぞれ配合する。
次に、上記した素原料粉末の混合物を湿式混合し、乾燥させた後、温度850〜1100℃で仮焼し、粉砕する。このとき仮焼粉末は、その結晶構造が立方晶を主体とする構造を有するとともに、平均粒径を0.04〜0.1μmとすることが好ましい。
仮焼粉末の平均粒径は、後述するように、仮焼粉末を電子顕微鏡用試料台上に分散させて走査型電子顕微鏡により写真を撮り、その写真上で仮焼粉末が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった仮焼粉末を選択し、その写真に映し出されている仮焼粉末の輪郭を画像処理して各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求める。
次いで、この仮焼粉末100質量部に対してYb粉末を2.2〜15質量部、MgO粉末を0.065〜0.35質量部の割合で混合する。この後、混合粉末をペレット状に成形し、常圧で1200℃〜1300℃の温度範囲で焼成を行うことにより本発明の誘電体磁器を得ることができる。焼成は大気中もしくは還元雰囲気中にて行うことができる。ただし、焼成温度が1200℃よりも低い場合には結晶粒子の粒成長と緻密化が抑えられるために誘電体磁器の密度が低いものとなり、また焼成温度が1300℃よりも高い場合には結晶粒子が粒成長しすぎてしまうおそれがある。そのため、焼成は1200℃〜1300℃の温度範囲で行なうことが良い。
本発明では、このようにチタン酸バリウムを主成分とし、YおよびMnCO粉末を添加して仮焼粉末を作製するために、焼成後に誘電体磁器中に形成される結晶相が立方晶を主体とするものにできる。また、上記仮焼粉末に対して、Yb粉末およびMgO粉末を添加することにより、焼成後の結晶粒子の粒成長を抑制でき、これにより結晶粒子の平均粒径を0.05〜0.2μmの範囲にできる。そして、MgO粉末を仮焼粉末に対して添加しているために、焼成後の結晶粒子中には、マグネシウムをその内部よりも表層部に高濃度で存在させることができるとともに、結晶粒子の表面から20nmの深さにおけるマグネシウムの濃度を0.2原子%以下とすることができる。
これにより常誘電性に近い比誘電率の温度特性を維持し、分極電荷が低く、かつ高誘電率の誘電体磁器を容易に製造することができる。
なお、本発明の誘電体磁器を製造するに際しては、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば、焼結助剤としてガラス粉末を添加しても良く、その添加量は、チタン酸バリウムを主成分とし、YおよびMnCO粉末を添加して得られた仮焼粉末に、Yb粉末およびMgO粉末を加えた主な原料粉末の合計量100質量部に対して、0.5〜4質量部の範囲が好ましい。
次に、図2は、本発明のコンデンサの一例を示す断面模式図である。本発明の誘電体磁器を用いて、以下のようなコンデンサを形成できる。
本発明のコンデンサは、コンデンサ本体10の端部に外部電極12が設けられている。コンデンサ本体10は誘電体層13と内部電極層である導体層14とが交互に積層されて構成されている。誘電体層13は上述した本発明の誘電体磁器によって形成される。導体層14は高積層化しても製造コストを抑制できるという点でNiやCuなどの卑金属が望ましく、特に、本発明のコンデンサを構成する誘電体層13との同時焼成を図るという点でNiがより望ましい。この導体層14の厚みは平均で1μm以下が好ましい。
また、このようなコンデンサを作製する場合には、上述した混合粉末をグリーンシートに成形するとともに、導体層となる導体ペーストを調製して前記グリーンシートの表面に印刷したあと積層して積層体を形成する。しかる後、積層体の端面にさらに導体ペーストを印刷して焼成することにより得ることができる。
誘電体磁器を以下のように作製した。まず、いずれも純度が99.9%のBaCO粉末、TiO粉末、Y粉末、MnCO粉末を用意し、表1に示す割合で調合し混合粉末を調製した。表1に示す量は前記元素の酸化物換算量に相当する量である。
次に、混合粉末を温度1000℃にて仮焼し、仮焼粉末を粉砕した。このとき粉砕した仮焼粉末の平均粒径は0.1μmとした。なお、仮焼粉末の平均粒径は、まず、粉砕した仮焼粉末を電子顕微鏡用試料台上に分散させて走査型電子顕微鏡により写真を撮った。この後、その写真上で仮焼粉末が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった仮焼粉末を選択した。そして、その写真に映し出されている仮焼粉末の輪郭を画像処理して各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求めた。この後、仮焼粉末100質量部に対して、いずれも純度99.9%のYb粉末およびMgO粉末を表1に示す割合で混合し、さらに、SiOを主成分とするガラス粉末(SiO:40〜60モル%、BaO:10〜30モル%、CaO:10〜30モル%、LiO:5〜15モル%)を添加した。ガラス粉末の添加量は、仮焼粉末、Y粉末およびMgO粉末の合計量100質量部に対して3質量部とした。この後、混合粉末を造粒し、直径16.5mm、厚さ1mmの形状のペレット状に成形した。なお、表1において、一括仮焼と記した試料No.32は仮焼粉末を調製する際に、MgO粉末をBaCO粉末、TiO粉末、Y粉末およびMnCO粉末とともに一括に混合し仮焼したものである。
次に、各組成のペレットを10個ずつ、H−Nの混合ガス中にて、表1に示す温度で焼成した。
次に、得られた誘電体磁器を以下のようにして評価した。誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均粒径は、誘電体磁器の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮った。次に、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択した。次いで、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求めた。
また、25℃および125℃における比誘電率は、所定のペレット状に成形され、表面に導体膜が形成された誘電体磁器からなる試料を、LCRメーター4284A(ヒューレットパッカード社製)を用いて周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0V、温度25℃および125℃にて静電容量を測定し、ペレット状の試料の直径と厚み、および導体膜の面積から算出した。25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数は、25℃および125℃における比誘電率を、それぞれ、〔比誘電率の温度係数={(ε125−ε25)/(ε25(125℃−25℃))}(ε25:25℃における比誘電率,ε125:125℃における比誘電率)〕の式から求めた。また、得られた誘電体磁器について電気誘起歪の大きさを誘電分極の測定によって求めた。この場合、電圧を±1250Vの範囲で変化させた時の、0Vにおける電荷量(残留分極)の値で分極電荷を評価した。なお、比誘電率、比誘電率の温度係数および分極電荷の測定は、試料数を10個とした。
また、得られた誘電体磁器を粉砕し、X線回折(2θ=97〜104°、Cu−Kα)よりを用いて結晶相の同定を行い、また、同じピークから格子定数aを求めた。格子定数の評価は試料数を各試料3個とし、これらの平均値より求めた。
結晶粒子中のマグネシウムの濃度の測定は、元素分析器(EDS)を付設した透過電子顕微鏡を用いて測定した。この場合、分析する試料は誘電体磁器を研磨し、その研磨した誘電体磁器の表面において特定の結晶粒子を抽出した。抽出する結晶粒子について、その輪郭から画像処理にて各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、各結晶粒子は平均粒径の±30%の範囲にある結晶粒子とし、この範囲にある結晶粒子を10個抽出した。元素分析を行う際の電子線のスポットサイズは1〜3nmとし、分析する箇所は結晶粒子の表面からの深さが5nmおよび20nmの位置とした。そして、この作業を結晶粒子10個に対して行い、その平均値を用いた。
試料の組成分析はICP分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた誘電体磁器を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により誘電体磁器に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。
表1に調製組成、仮焼温度および焼成温度を示した。焼成後の結晶粒子の平均粒径、各結晶構造の格子定数および特性の結果を表2に示した。
Figure 0004959634
Figure 0004959634
Figure 0004959634
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表1〜4の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.2〜10,13〜17,20〜23,25,27〜31,34および37〜41では、25℃における比誘電率が700以上、125℃における比誘電率が650以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃以下かつ分極電荷(電圧0Vでの残留分極の値)が25nC/cm以下であった。
また、バリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.01〜0.024モル、マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、マグネシウムをMgO換算で
0.017〜0.03モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モルの範囲で含有するとともに、結晶粒子の平均粒径を0.07〜0.15μmとした試料No.6〜9,15,16,21,22,25,29,30,39および40では、25℃における比誘電率が750以上、125℃における比誘電率が710以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で843×10−6/℃以下かつ分極電荷(電圧0Vでの残留分極の値)が20nC/cm以下であった。
特に、誘電体磁器の結晶粒子の結晶構造について、立方晶の格子定数aを0.4013〜0.4017nmとした試料No.6〜8,15,16,21,22,29,30,39および40では、25℃における比誘電率が760以上、125℃における比誘電率を720以上であり、比誘電率の温度係数が絶対値で843×10−6/℃以下、誘電分極が20nC/cm以下であった。
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.1,11,12,18,19,24,26,32,33,35および36)では、室温における比誘電率を700以上、125℃における比誘電率を650以上、25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数((ε−ε25)/ε25(T−25))が絶対値で1000×10−6/℃以下および室温における分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cmのいずれかの特性を満足しないものであった。
実施例における試料No.4の誘電体磁器のX線回折チャートである。 本発明のコンデンサの一例を示す断面模式図である。
符号の説明
10 コンデンサ本体
13 誘電体層
14 導体層

Claims (4)

  1. チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とし、該結晶相を構成する結晶粒子間に粒界相を有する誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.045モル、マグネシウムをMgO換算で0.0075〜0.04モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モル含有するとともに、前記マグネシウムが前記結晶粒子の内部よりも表層部に多く存在し、前記結晶粒子の表面から20nmの深さにおける前記マグネシウムの濃度が0.2原子%以下であるとともに、前記結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであり、かつ前記結晶相が立方晶を主体とする結晶構造を有することを特徴とする誘電体磁器。
  2. 前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、前記イットリウムをYO3/2換算で0.01〜0.024モル、前記マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、前記マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.03モル、前記イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モル含有するとともに、前記結晶粒子の表面から20nmの深さにおける前記マグネシウムの濃度が0.15原子%以下であり、かつ前記結晶粒子の平均粒径が0.07〜0.15μmであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
  3. 前記誘電体磁器のX線回折から求められる前記結晶相の格子定数aが0.4013〜0.4017nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体磁器。
  4. 請求項1乃至3のうちいずれかに記載の誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とするコンデンサ。
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