JP4863007B2 - 誘電体磁器組成物および電子部品 - Google Patents
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BaZrO3 を含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Li、Al、GeおよびBから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する、各副成分の酸化物または複合酸化物換算での比率が、
第1副成分:9〜13モル、
第2副成分:2.7〜5.7モル、
第3副成分:4.5〜5.5モル、
第4副成分:0.5〜1.5モル、
第5副成分:3.0〜3.9モル、
であり、
前記誘電体磁器組成物を構成する誘電体粒子が、主成分からなる主成分相と、前記主成分相の周囲に、前記副成分のうち少なくとも1種が拡散した拡散相と、を有し、
前記誘電体粒子の粒径をDとした場合に、粒子表面からの深さが前記粒径Dの5%である深さT5における前記第5副成分の含有割合が、Si、Li、Al、GeまたはB換算で、0.1原子%より多く、1.3原子%未満である誘電体磁器組成物が提供される。
本発明に係る電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は図1に示す誘電体層2の要部拡大断面図、
図3は誘電体粒子の粒子内構造を説明するための概念図、
図4は本発明の実施例における誘電体粒子のSi含有量の測定方法を説明するためのTEM写真、
図5は本発明の実施例における誘電体粒子のSi含有量を示すグラフである。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウムを含む主成分と、
BaZrO3 を含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Li、Al、GeおよびBから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を有するものである。
多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。なお、第1副成分であるBaZrO3 は、Zrのうち一部が、Hfにより置換されたものであっても良い。Zrに対するHfの置換量の上限は、通常5%程度である。
図2に示すように、誘電体層2は、誘電体粒子(結晶粒)2aと、隣接する複数の誘電体粒子2a間に形成された結晶粒界(粒界相)2bとを含んで構成される。この誘電体粒子2aは、主に、主成分であるチタン酸バリウムから構成されている粒子であり、本実施形態の誘電体粒子2aは、図3に示すように、主成分であるチタン酸バリウムからなる主成分相と、前記主成分相の周囲に、前記副成分のうち少なくとも1種が拡散した拡散相とを有する。なお、図3は、図2における誘電体粒子2aの粒子内構造を説明するための概念図である。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
まず、主成分の原料として、BaTiO3 粉末(主成分原料粉末)を、副成分の原料として、BaZrO3 (第1副成分)、MgCO3 (第2副成分)、Gd2 O3 (第3副成分)、MnO(第4副成分)、およびSiO2 (第5副成分)を、それぞれ準備した。次いで、Gd2 O3 とSiO2 とを予め仮焼し、得られた仮焼物と、BaTiO3 粉末と、BaZrO3 、MgCO3 およびMnOとを、ボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体材料を得た。
なお、本実施例では、Gd2 O3 とSiO2 との仮焼条件(仮焼温度および仮焼時間)を表1に示すように、それぞれ変化させ、複数の試料(試料番号1〜9)を調製した。ただし、表1の試料番号1については仮焼は行わなかった。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1220〜1320℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:N2 +H2 +H2 O混合ガス(酸素分圧:10−12MPa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:N2 +H2 O混合ガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
誘電体粒子の主成分相および拡散相の有無は、まず、誘電体層2にFIB加工を施すことにより測定用サンプルを調製し、次いで、測定用サンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより確認した。その結果、全ての試料(特に、試料番号3〜8)において、誘電体粒子が、主成分相の周囲に拡散相が形成された構成となっていることが確認できた。
まず、誘電体層2にFIB加工を施し、測定用サンプルを調製した。次いで、測定用サンプルを用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)によるエネルギー分散型X線分光法により、誘電体粒子中におけるSi元素の含有量を測定した。なお、測定は、誘電体粒子の粒径Dに対して、5%の深さとなる位置について行った。また、誘電体粒子の粒径Dは、TEMにより得られた断面写真において、コード法により算出した。
コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率εs(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では800以上を良好とした。結果を表1に示す。
コンデンサ試料に対し、一定温度(25℃)において、直流電圧非印加状態における比誘電率に対する、20V/μmの直流電圧を印加した際における比誘電率の変化率(単位は%)を算出することにより、DC−bias特性を測定した。本実施例では、DC−bias特性は、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値とした。DC−bias特性は0に近いほど好ましく、本実施例では−45%以上を良好とした。結果を表1に示す。
コンデンサ試料に対し、−55〜125℃における静電容量を測定し、基準温度(25℃)における静電容量に対する変化率を算出した。本実施例では、ΔC/C=+22%〜−33%(X7T特性)を満足するものを良好とした。結果を表1に示す。
コンデンサ試料に対し、210℃にて、40V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、HALTにより、高温加速寿命を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、この高温加速寿命は、10個のコンデンサ試料について行った。評価基準は、10時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
まず、コンデンサ試料を、所定パターンの電極がプリントしてあるガラスエポキシ基板にハンダ付けすることにより固定した。次いで、基板に固定したコンデンサ試料に対して、AC:10Vrms/μm、周波数3kHzの条件で電圧を印加し、電圧印加時におけるコンデンサ試料表面の振動幅を測定し、これを電歪量とした。なお、コンデンサ試料表面の振動幅の測定には、レーザードップラー振動計を使用した。また、本実施例では、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値を電歪量とした。電歪量は低いほうが好ましい。結果を表1に示す。
Gd2 O3 とSiO2 とを予め仮焼する代わりに、BaTiO3 粉末とGd2 O3 とSiO2 とを、仮焼温度1000℃、仮焼時間2時間の条件で予め仮焼し、各副成分(第1〜第5副成分)の添加量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
Gd2 O3 とSiO2 とを予め仮焼する代わりに、BaTiO3 粉末とGd2 O3 とMgOとを、仮焼温度1000℃、仮焼時間3時間の条件で予め仮焼し、各副成分(第1〜第5副成分)の添加量を表1に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
表1に示すように、Gd2 O3 とSiO2 とを650〜1050℃で仮焼した試料番号3〜8においては、いずれも、誘電体粒子が、主成分相の周囲に拡散相を有する構成となっており、しかも誘電体粒子の粒径Dの5%である深さT5におけるSi(第5副成分)量が、0.1原子%より多く、1.3原子%未満であった。そして、これら試料番号3〜8においては、いずれも、比誘電率、容量温度特性および電歪特性を良好に保ちながら、DCバイアス特性(静電容量の直流電圧印加依存性)および絶縁抵抗の加速寿命の向上が可能であることが確認できた。
Gd2 O3 とSiO2 との仮焼条件(仮焼温度および仮焼時間)、および各副成分(第1〜第5副成分)の添加量を表2に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
表2に示すように、各副成分の添加量を本発明の範囲外とした場合には、Gd2 O3 とSiO2 とを予め所定の条件で仮焼し、これにより、深さT5におけるSi量を本発明所定の範囲とした場合においても、各特性に劣る結果となった。
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
2a… 誘電体粒子
2b… 結晶粒界
3… 内部電極層
4… 外部電極
Claims (2)
- チタン酸バリウムを含む主成分と、
BaZrO3 を含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Li、Al、GeおよびBから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する、各副成分の酸化物または複合酸化物換算での比率が、
第1副成分:9〜13モル、
第2副成分:2.7〜5.7モル、
第3副成分:4.5〜5.5モル、
第4副成分:0.5〜1.5モル、
第5副成分:3.0〜3.9モル、
であり、
前記誘電体磁器組成物を構成する誘電体粒子が、主成分からなる主成分相と、前記主成分相の周囲に、前記副成分のうち少なくとも1種が拡散した拡散相と、を有し、
前記誘電体粒子の粒径をDとした場合に、粒子表面からの深さが前記粒径Dの5%である深さT5における前記第5副成分の含有割合が、Si、Li、Al、GeまたはB換算で、0.1原子%より多く、1.3原子%未満である誘電体磁器組成物。 - 請求項1に記載の誘電体磁器組成物からなる誘電体層と、内部電極層と、を有する電子部品。
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