JP4286220B2 - 金属ニッケル粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、金属ニッケル粉末を内部電極として用いた積層セラミックコンデンサは、一般に次のような方法で製造されている。すなわち、チタン酸バリウム等の誘電体粉末を有機バインダーと混合し懸濁させ、これをドクターブレード法によりシート状に成形して誘電体グリーンシートを作成する。一方、内部電極用の金属ニッケル粉末を有機溶剤、可塑剤、有機バインダー等の有機化合物と混合して金属ニッケル粉末ペーストを形成し、これを前記グリーンシート上にスクリーン印刷法で印刷する。次いで、乾燥、積層および圧着し、加熱処理にて有機成分を除去してから、水素ガスの還元性雰囲気においてさらに昇温して1000〜1300℃またはそれ以上の温度で焼成し、この後、誘電体セラミック層の両端に外部電極を焼き付けて積層セラミックコンデンサを得る。
上記のような積層セラミックコンデンサの製造方法において、誘電体グリーンシートに金属ペーストを印刷し、積層及び圧着した後、加熱処理にて有機成分を蒸発除去する加熱処理は、通常大気中で250〜400℃で行われる。このように酸化雰囲気中で加熱処理を行うため、金属ニッケル粉末は酸化され、それにより体積の膨張が起きる。同時に金属ニッケル粉末は焼結を開始し体積の収縮が起り始める。
このように、積層セラミックコンデンサを製造する工程において、300℃付近の低温領域から酸化還元・焼結反応により金属ニッケル粉末に膨張・収縮による体積変化が生じる。このとき低温段階で金属ニッケル粉末の酸化挙動また焼結挙動が不安定であると、誘電体層と電極層に歪が生じやすく、結果としてクラックまたは剥離などのデラミネーションといわれる層状構造の破壊が起きるという問題があった。
上記のようなデラミネーションの問題を解決する手段として種々の方法が提案されている。たとえば、特開平8−246001号公報では、特定の粒径に対するタップ密度がある限界値以上を有する金属ニッケル粉末を開示し、このような金属ニッケル粉末を用いることによって、ペーストに分散されたニッケル粉と誘電体を焼成してコンデンサとしたときに、デラミネーションが起りにくいことが記載されている。
しかしながら、上記した従来方法は、焼結挙動を改善する目的としてはそれなりの効果を上げているが、必ずしもデラミネーションを防止する方法としては十分ではなく、さらなる改善が望まれていた。
より具体的には、300℃付近で加熱処理した際に酸化反応による体積変化や重量変化が少なく、さらに、焼結による体積変化が少なく安定しており、デラミネーションの発生を防止することができる金属ニッケル粉末及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者等は、金属ニッケル粉末について鋭意研究を重ねた結果、金属ニッケル粉末表面周囲の酸化被膜の特性により焼結挙動が変わり、特定の方法により製造され、特定の酸化被膜を有する金属ニッケル粉末が焼結特性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の金属ニッケル粉末は、炭酸水溶液で処理された平均粒径が1.0μm以下、酸素含有量が0.3〜2.0重量%、また表面層全周に厚みが2〜10nmの酸化被膜を有することを特徴とする。
また本発明は、炭酸水溶液中で処理し、次いで酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴とする金属ニッケル粉末の製造方法を提供するものである。
本発明の金属ニッケル粉末は、平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.05〜1μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5μmの範囲の微粒子である。また、金属ニッケル粉末のBETによる比表面積は、1〜20m2/gであることが好ましい。さらに、金属ニッケル粉末の粒子形状は、球状であることが焼結特性また分散性を向上させるために望ましい。
また、本発明は、酸素を含有していることを前提とし、その含有量は0.3〜2.0重量%であり、0.3〜1.0重量%であればさらに好適である。
さらに本発明の金属ニッケル粉末は、表面層全周に厚みが2〜10nmの均一かつ結晶質の酸化ニッケルを含む酸化被膜を有する。金属ニッケル粉末は通常数nmの厚みの酸化被膜で覆われているが、従来の金属ニッケル粉末の酸化被膜は非晶質部分を多く含むものであった。これに対して本発明の金属ニッケル粉末の酸化被膜は粒子全周にわたりその厚みが実質的に均一であり、かつ結晶質の酸化ニッケル(NiO)の組成、具体的には立方晶(面心立方)の結晶構造を持つ酸化ニッケルの酸化被膜であることが望ましい。このように均一な酸化被膜を有するため、酸化雰囲気で加熱処理した際の酸化挙動また焼結挙動が安定している。
本発明での金属ニッケル粉末は気相法や液相法など公知の方法により製造することができるが、特に塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることによりニッケル粉末を生成する気相還元法、あるいは熱分解性のニッケル化合物を噴霧して熱分解する噴霧熱分解法が、生成するニッケル粉末の粒子径を容易に制御することができ、さらに球状の粒子が効率よく製造することができるという点において好ましい方法である。
気相還元法においては、気化させた塩化ニッケルのガスと水素等の還元性ガスとを反応させるが、固体の塩化ニッケルを加熱し蒸発させて塩化ニッケルガスを生成してもよい。しかしながら、塩化ニッケルの酸化または吸湿防止またエネルギー効率を考慮すると、金属ニッケルに塩素ガスを接触させて塩化ニッケルガスを連続的に発生させ、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、次いで還元性ガスと接触させ塩化ニッケルガスを連続的に還元してニッケル粉末を製造する方法が有利である。
気相還元反応によるニッケル粉末の製造過程では、塩化ニッケルガスと還元性ガスとが接触した瞬間にニッケル原子が生成し、ニッケル原子同士が衝突・凝集することによって超微粒子が生成し、成長してゆく。そして、還元工程での塩化ニッケルガスの分圧や温度等の条件によって、生成されるニッケル粉末の粒径が決まる。上記のようなニッケル粉末の製造方法によれば、塩素ガスの供給量に応じた量の塩化ニッケルガスが発生するから、塩素ガスの供給量を制御することで還元工程へ供給する塩化ニッケルガスの量を調整することができ、これによって生成するニッケル粉末の粒径を制御することができる。さらに、金属塩化物ガスは、塩素ガスと金属との反応で発生するから、固体金属塩化物の加熱蒸発により金属塩化物ガスを発生させる方法と異なり、キャリアガスの使用を少なくすることができるばかりでなく、製造条件によっては使用しないことも可能である。従って、気相還元反応の方が、キャリアガスの使用量低減とそれに伴う加熱エネルギーの低減により、製造コストの低減を図ることができる。
また、塩化工程で発生した塩化ニッケルガスに不活性ガスを混合することにより、還元工程における塩化ニッケルガスの分圧を制御することができる。このように、塩素ガスの供給量もしくは還元工程に供給する塩化ニッケルガスの分圧を制御することにより、ニッケル粉末の粒径を制御することができ、よってニッケル粉末の粒径を安定させることができるとともに、粒径を任意に設定することができる。
上記のような気相還元法によるニッケル粉末の製造条件は、平均粒径1μm以下になるように任意に設定するが、例えば、出発原料である金属ニッケルの粒径は約5〜20mmの粒状、塊状、板状等が好ましく、また、その純度は慨して99.5%以上が好ましい。この金属ニッケルを、まず塩素ガスと反応させて塩化ニッケルガスを生成するが、その際の温度は、反応を十分進めるために800℃以上とし、かつニッケルの融点である1453℃以下とする。反応速度と塩化炉の耐久性を考慮すると、実用的には900℃〜1100℃の範囲が好ましい。次いで、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、水素ガス等の還元性ガスと接触反応させるが、窒素やアルゴン等の不活性ガスを、塩化ニッケルガスに対し1〜30モル%混合し、この混合ガスを還元工程に導入してもよい。また、塩化ニッケルガスと共にまたは独立に塩素ガスを還元工程に供給することもできる。このように塩素ガスを還元工程に供給することによって、塩化ニッケルガスの分圧が調整でき、生成するニッケル粉末の粒径を制御することが可能となる。還元反応の温度は反応完結に十分な温度以上であればよいが、固体状のニッケル粉末を生成する方が、取扱いが容易であるので、ニッケルの融点以下が好ましく、経済性を考慮すると900℃〜1100℃が実用的である。
このように還元反応を行いニッケル粉末を生成させた後、生成ニッケル粉末を冷却する。冷却の際、生成したニッケルの一次粒子同士の凝集による二次粒子の生成を防止して所望の粒径のニッケル粉末を得るために、還元反応を終えた1000℃付近のガス流を400〜800℃程度まで窒素ガス等の不活性ガスを吹き込むことにより急速冷却させることが望ましい。その後、生成したニッケル粉末を、例えばバグフィルター等により分離、回収する。
また、噴霧熱分解法によるニッケル粉末の製造方法では、熱分解性のニッケル化合物を原料とするが、具体的には、ニッケルの硝酸塩、硫酸鉛、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸鉛、塩化物、アンモニウム錯体、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコキシ化合物などの1種又は2種以上である。このニッケル化合物を含む溶液を噴霧して、微細な液滴を作るが、このときの溶媒としては、水、アルコール、アセトン、エーテル等が用いられる。また、噴霧の方法は、超音波又は二重ジェットノズル等の噴霧方法により行う。このようにして微細な液滴とし、高温で加熱しニッケル化合物を熱分解して、金属ニッケル粉末を生成する。このときの加熱温度は、使用される特定のニッケル化合物が熱分解する温度以上であり、好ましくはニッケルの融点付近である。
液相法による金属ニッケル粉末の製造方法では、硫酸ニッケル、塩化ニッケルあるいはニッケル錯体を含むニッケル水溶液を、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物中に添加するなどして接触させてニッケル水酸化物を生成し、次いでヒドラジンなどの還元剤でニッケル水酸化物を還元し金属ニッケル粉末を得る。このように生成した金属ニッケル粉末は、均一な粒子を得るために必要に応じて解砕処理する。
本発明の金属ニッケル粉末では、上記のような方法で得られた金属ニッケル粉末を一旦炭酸水溶液中に懸濁させ処理する。
炭酸水溶液中に懸濁させ処理を行う際、通常、上記の各種製造方法により得られ乾燥した金属ニッケル粉末を炭酸水溶液に懸濁する。この場合、気相還元法、噴霧熱分解法による金属ニッケルの製造方法では、生成したニッケル粉を通常純水で洗浄するが、その洗浄を炭酸水溶液で行うか、あるいは純水で洗浄を行った後、水スラリー中に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは炭酸水溶液を添加して処理することもできる。特に、気相還元法を採用した場合、このように純水による洗浄の途中あるいは後に、スラリーの状態において炭酸水溶液と接触して処理することが、製造工程の簡略化の面において有利である。
さらに、気相還元法において、まず、炭酸水溶液で洗浄することによって、金属ニッケル粉末中の塩素分が効率よく除去でき、塩素分を十分に除去した後、再度炭酸水溶液を金属ニッケル粉末と接触させ処理することにより、焼結挙動などの優れた特性を有する金属ニッケル粉末が得られる。
このように金属ニッケル粉末を炭酸水溶液に懸濁させ処理することによって、粉末表面に存在する水酸化ニッケルなどの水酸化物や粒子同士の摩擦などにより表面から剥離して形成された微粒子が除去される。
本発明においてこの炭酸水溶液中での処理の際、pHは5.5〜6.5の範囲、好ましくはpH5.5〜6.0である。pH5.5未満で処理した場合、金属ニッケル粉末表面に不均一な酸化皮膜が生成し金属ニッケル粉末の焼結性を低下させることになる。また、金属ニッケル粉末自体が溶解してしまい、表面の荒れが生じる。pH6.5を超えて処理を行った場合、金属ニッケル粉末表面に付着もしくは吸着した水酸化物を除去することができず、乾燥工程終了後に残存した水酸化物が不均一な酸化皮膜となり、焼結挙動が不安定となる。
また、上記炭酸水溶液中での処理の際の温度は0〜100℃、好ましくは10〜50℃、特に好ましくは10〜35℃である。さらに処理の条件は、金属ニッケル粉末のスラリーに炭酸ガスを吹き込みながら炭酸ガスをスラリーに溶存させると同時に、金属ニッケル粉末を滞留させ処理する方法、あるいは炭酸水溶液に懸濁させた後、スラリーを攪拌して処理する方法が挙げられる。このように処理した後、必要に応じて純水等で洗浄して乾燥する。
金属ニッケル粉の乾燥方法としては公知の方法を採用することができ、具体的には高温のガスと接触させ乾燥する気流乾燥、加熱乾燥および真空乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法のうち、気流乾燥は、粒子同士の接触による酸化被膜の磨耗がなく好ましい方法である。一方、攪拌などの手段により金属ニッケル粉どうしが接触する方法は、表面の酸化被膜が磨耗により剥がれ不均一になるのであまり好ましくない。また、均質な酸化被膜を形成させるためには、極短時間に水分を除去して乾燥することが望ましい。具体的には金属ニッケル粉が水スラリーの状態もしくは水分が約50重量%の状態から、水分が0.1重量%以下になるまで、好ましくは1分以内、特には30秒以内、さらには10秒以内である。この短時間に粒子を乾燥できるという点でも、気流乾燥方法は数秒で乾燥が可能であり、好ましい方法である。この気流乾燥では高温の窒素ガスなどと接触させるが、このときの温度は200〜300℃、好ましくは250℃前後のガスを接触させる。
本発明の金属ニッケル粉末は、上記の炭酸水溶液による処理に次いで、大気中あるいは酸素ガス雰囲気などの酸化性雰囲気で加熱処理することが望ましく、特に望ましくは、炭酸水溶液による処理を行い、次いで気流乾燥を行い、水分を0.1重量%以下にした後、大気中あるいは酸素ガス雰囲気などの酸化性雰囲気で加熱処理を行う。
このときの温度は通常200〜400℃であり、好ましくは200〜300℃、より好ましくは200〜250℃である。200℃未満で加熱処理を行った場合、水酸化物がニッケル表面に残存し、ニッケル粉末の優れた酸化挙動及び焼結挙動を示すのに十分な酸化皮膜を形成することが難しい。また、400℃を超えた温度で加熱処理すると、金属ニッケル粉末の内部まで酸化処理されてしまい、焼結性の低下や、積層セラミックコンデンサの内部電極の抵抗値の上昇等が生じる。さらに、加熱処理中に金属ニッケル粉末が焼結し凝集してしまうため、積層セラミックコンデンサの内部電極の短絡等の構造欠陥が生じることになる。
加熱処理時間は、通常30分〜10時間であり、金属ニッケル粉末中の酸素含有量が0.3〜2.0重量%になるように処理を行う。
このように金属ニッケル粉末を炭酸水溶液に懸濁させ処理することによって、粉末表面に存在する水酸化ニッケルなどの水酸化物や粒子同士の摩擦などにより表面から剥離して形成された微粒子が除去される。次いで炭酸水溶液で処理した金属ニッケル粉末を乾燥後、酸化性雰囲気で加熱処理することによって、均一な酸化被膜を有する金属ニッケル粉末を得ることができる。本発明のように炭酸水溶液で処理しないで水酸化物が粒子表面に存在したまま乾燥すると、水酸化物が粒子表面に残存し、乾燥後に粒子表面に不均一な酸化被膜が形成され、あるいは粒子同士の摩擦などにより表面から剥離して形成された微粒子が粒子表面に付着した状態となる。また、これを200〜400℃の範囲で加熱処理すれば粒子表面の水酸化物は酸化物に変化して酸化被膜が形成されるが、上記と同様に酸化被膜の厚みが不均一となり、粒子表面に凹凸あるいは微粒子が付着した状態となって平滑にはならない。
本発明の金属ニッケル粉末は、これを内部電極に用いた積層セラミックコンデンサの製造工程において有機成分を除去するために酸化性雰囲気下にて300℃付近で加熱処理した際、従来のものに比して酸化による重量変化が少なく、かつ焼結開始による体積変化が少ない。これは、前記したように積層セラミックコンデンサの焼成時にデラミネーションの発生が起り難くなることを意味する。したがって、本発明の金属ニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサの製造工程において優れた酸化挙動及び焼結挙動を示し、デラミネーションが起り難くなるという効果を奏する。
また本発明の金属ニッケル粉末の製造方法は、上記した金属ニッケル粉末を有利に製造するための方法であって、金属ニッケル粉末を炭酸水溶液中で処理し、次いで酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴としている。
本発明の金属ニッケル粉末の製造方法によれば、炭酸水溶液中で処理し、次いで酸化性雰囲気下で熱処理することにより生成した酸化皮膜を金属ニッケル粉末表面に形成することにより、金属ニッケル粉末の焼結挙動が変わり、金属ニッケル粉末の焼結開始温度をより高温側に移行させ、さらには焼結時における金属粉末の収縮率を減少させることができる。
第2図は、実施例1で得られた金属ニッケル粉末のSEM写真である。
第3図は、比較例3で得られた金属ニッケル粉末のSEM写真である。
第4図は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例3の焼結挙動を示すグラフである。
−金属ニッケル粉末の製造−
比較例1
炭酸水溶液処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして金属ニッケル粉末を得た。
比較例2
炭酸水溶液処理を行わず、加熱処理を大気中で250℃、30分行った以外は実施例1と同様にして金属ニッケル粉末を得た。
比較例3
炭酸水溶液処理および加熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして金属ニッケル粉末を得た。
−測定−
上記実施例および比較例の金属ニッケル粉末につき、酸化被膜の厚さ、酸素含有率、平均粒径、焼結挙動、酸化挙動及び粒度分布を下記の方法により測定し、その結果を第1表に示した。また、実施例1で得られた金属ニッケル粉末のSEM写真を図2に、また比較例3で得られた金属ニッケル粉末のSEM写真を図3に示した。さらに実施例1および2、また比較例1および2の焼結挙動を示すグラフを図4に示した。
1)焼結挙動
金属ニッケル粉末1g、しょうのう3重量%およびアセトン3重量%を混合し、内径5mm、長さ10mmの円柱状の金型に充填し、その後面圧1トンの荷重をかけ試験ピースを作成した。この試験ピースを熱膨張収縮挙動(diratometry)測定装置(TMA、8310、株式会社リガク社製)を用い、弱還元雰囲気下で昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
2)平均粒径
電子顕微鏡により試料の写真を撮影し、粉末200個の粒径を測定してその平均を算出した。
3)酸化被膜の厚さ
まず、金属ニッケル粉末試料をコロジオン膜を張った銅製シートメッシュ上に直接振りかけ、その後カーボンを蒸着させ測定試料を作成した。次いで、200kV電界放射型透過電子顕微鏡(HF−2000、日立製作所社製)を用いて測定試料の格子像を観察し、金属ニッケル粉末表面全周の酸化被膜厚さを測定した。
4)酸素含有率
試料の金属ニッケル粉末をニッケル製のカプセルに充填し、これを黒鉛ルツボに入れ、アルゴン雰囲気中で約3000℃に加熱し、このとき発生した一酸化炭素をIRにより定量し、金属ニッケル粉末中の酸素含有率を求めた。
5)酸化挙動
TG−DTA測定装置にて、大気中にて5℃/分の昇温速度で1000℃まで加熱し、その際の300℃の時点での重量増加率(%)と、1%重量が増加したときの温度を確認した。
第1表から明らかなように、実施例の金属ニッケル粉末では、300℃での重量増加率が比較例よりも小さく、重量増加率が1%のときの温度は比較例よりも高かった。このことから、実施例の金属ニッケル粉末では、比較例に較べて酸化が抑制されることが判る。特に、実施例1では加熱処理によって均一な酸化被膜が形成されたため、加熱によるそれ以上の酸化が抑制されたものと推定される。
また図2に示す実施例1の金属ニッケル粉末の表面は平滑であるが、図3の比較例3の金属ニッケル粉末の表面は平滑性に劣り、かつ粒子表面に微粒子状の付着物が見られる。
さらに図4の焼結挙動において、実施例1の金属ニッケル粉末は200〜300℃の低温領域での体積変化が全くなく焼結挙動が安定している。
以上の結果から、本発明の金属ニッケル粉末では、積層セラミックコンデンサの製造工程において優れた酸化挙動及び焼結挙動を示し、結果として、デラミネーションの防止が有効に図られることが推定される。
以上説明したように本発明の金属ニッケル粉末によれば、酸化性雰囲気での300℃付近の加熱処理の際、酸化挙動及び焼結挙動が従来の金属ニッケル粉末に比べて非常に安定しており、低温領域での金属ニッケル粉末の収縮及び膨張がなく、積層セラミックコンデンサの製造過程においてデラミネーションの発生を防止することができるという効果を奏する。
Claims (21)
- 炭酸水溶液で処理され、平均粒径が1.0μm以下であり、酸素含有量が0.3〜2.0重量%であり、表面層全周に厚みが2〜10nmの酸化被膜を有することを特徴とする金属ニッケル粉末。
- 平均粒径が0.05〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属ニッケル粉末。
- BETによる比表面積が1〜20m2/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ニッケル粉末。
- 粒子形状が球状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記金属ニッケル粉末は、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触反応させた気相反応生成物、あるいは熱分解性のニッケル化合物を噴霧して熱分解する噴霧熱分解生成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記金属ニッケル粉末は、炭酸水溶液中で処理され、次いで、酸化性雰囲気下で熱処理して得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記金属ニッケル粉末は、炭酸水溶液中で処理され、乾燥され、次いで酸化性雰囲気下で熱処理して得られたものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 気相反応法あるいは噴霧熱分解法により生成した前記金属ニッケル粉末スラリーを炭酸水溶液中で洗浄し、続いて前記炭酸水溶液中の処理を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 気相反応法あるいは噴霧熱分解法により生成した前記金属ニッケル粉末を純水洗浄し、この純水洗浄後の金属ニッケル粉末水スラリーに炭酸ガスを吹き込むことによって前記炭酸水溶液中の処理を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 気相反応法あるいは噴霧熱分解法により生成した前記金属ニッケル粉末を純水洗浄し、この純水洗浄後の金属ニッケル粉末水スラリーに炭酸水溶液を添加することによって前記炭酸水溶液中の処理を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記炭酸水溶液中の処理がpH5.5〜6.5の範囲で行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記炭酸水溶液中の処理が0〜100℃の範囲で行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記酸化性雰囲気下での熱処理温度が200〜400℃であることを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記金属ニッケル粉末は、導電ペースト用であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 前記金属ニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサ用であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の金属ニッケル粉末。
- 炭酸水溶液中で処理し、次いで、酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴とする金属ニッケル粉末の製造方法。
- 塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触反応させて得られた金属ニッケル粉末を、炭酸水溶液中で処理し、次いで、酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴とする請求項16に記載の金属ニッケル粉末の製造方法。
- 前記炭酸水溶液中での処理がpH5.5〜6.5の範囲で行われることを特徴とする請求項16または17に記載の金属ニッケル粉末の製造方法。
- 前記炭酸水溶液中の処理が0〜100℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の金属ニッケル粉末の製造方法。
- 前記酸化性雰囲気下での熱処理の温度が200〜400℃であることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の金属ニッケル粉末の製造方法。
- 炭酸水溶液中で処理し、乾燥し、次いで、酸化性雰囲気下で熱処理することを特徴とする請求項16〜20のいずれかに記載の金属ニッケル粉末の製造方法。
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