JP3807873B2 - Ni超微粉の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ニッケルガスを含む原料気体を水素で還元することにより、平均粒径が0.1〜0.4μmのNi超微粉を製造することが可能なNi超微粉の製造方法に係り、特に、生産性を高く維持しつつNi超微粉の品質を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ni、Cu、Agなどの導電性の金属粉末は、積層セラミックコンデンサの内部電極用として有用であり、とりわけNi粉は、そのような用途として最近注目されている。このようなNi粉の製造方法としては、塩化ニッケルガスを発生させてこれを還元炉内に充満させた水素で還元する方法が知られている。ところで、一般に積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と内部電極として使用される金属層とが交互に重ねられた構成となっている。近年では、コンデンサの小型化、大容量化に伴い、内部電極の薄層化・低抵抗化等の要求から、平均粒径1.0μm以下、さらに0.5μm以下、とりわけ0.1〜0.4μmの超微粉が要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
Ni粉の粒径を小さくするには、塩化ニッケルの水素中での滞留時間を短くする必要があるが、所望の粒径を得ると同時にNi粉の形状をできるだけ球形に近付け、かつ、粒径を均一にする必要がある。また、Ni粉の生産性を高めるためには、原料気体の還元炉への導入流量を多くし、あるいは原料気体中の塩化ニッケルガスの分圧を高めることが有効であるが、品質の安定化と一層の向上が課題となっている。
【0004】
よって、本発明は、以下の目的を達成することができるNi超微粉の製造方法を提供するものである。
▲1▼平均粒径が0.1〜0.4μmのNi超微粉を製造する。
▲2▼生産効率を高く維持しつつNi超微粉の形状、粒径の均一性といった品質を向上させる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、原料気体の還元炉への導入条件を検討した結果、上記目的を達成し得る最適の条件を見出すに至った。すなわち、本発明Ni超微粉の製造方法は、塩化ニッケルガスを気相還元してNi超微粉を製造するNi超微粉の製造方法において、水素を還元炉の入口に設けた第1の吐出口から吐出し、第1の吐出口を取り囲むように設けた第2の吐出口から塩化ニッケルガス分圧が0.2〜0.7の原料気体を同時に吐出し、この還元炉内での塩化ニッケルガスを、その空間速度(SV)を0.02〜0.07sec−1として流通させながら水素で還元することを特徴としている。
【0007】
上記製造方法のより好ましい態様は以下のとおりである。
(1)還元炉へ導入する原料気体の塩化ニッケルガス分圧を0.3〜0.7とし、還元炉内での塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.025〜0.07sec−1にして水素還元すること、
(2)平均粒径が0.1〜0.2μmのNi超微粉を得るために、還元炉へ導入する原料気体の塩化ニッケルガス分圧を0.25〜0.6とし、還元炉内での塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.03〜0.07sec−1にして水素還元すること、より好ましくは塩化ニッケルガス分圧を0.3〜0.55とし、空間速度(SV)を0.035〜0.07sec−1にして水素還元すること、
(3)平均粒径が0.25〜0.4μmのNi超微粉を得る場合に、還元炉へ導入する原料気体の塩化ニッケルガス分圧を0.3〜0.7とし、還元炉内での塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.02〜0.06sec−1とすること、より好ましくは塩化ニッケルガス分圧を0.3〜0.7として空間速度(SV)を0.03〜0.06sec−1として水素還元すること、
(4)原料気体を、0.5〜5.0m/秒の線速度で第2の吐出口から還元炉内に吐出すること、
(5)還元炉の入口に設けた第1の吐出口から水素を吐出し、この第1の吐出口を取り囲むように設けた第2の吐出口から原料気体を吐出すること、
(6)第1の吐出口からは、塩化ニッケルガスの還元に必要な水素の理論量の30〜100モル%の量の水素を吐出すること。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態についてより詳しく説明する。なお、この明細書で使用している用語を以下のように定義する。
▲1▼原料気体とは、塩化ニッケルガスを不活性ガスで希釈した気体であって、還元に供される原料となる混合物である。不活性ガスは、塩化ニッケルガスの希釈およびキャリアの両方もしくは一方の作用を奏する。不活性ガスとして窒素ガスやアルゴンガスが通常は使用される。
▲2▼塩化ニッケルガス分圧とは、塩化ニッケルガスと不活性ガスとの混合物のうち、塩化ニッケルが占めるモル分率である。
▲3▼空間速度とは、SV(space velocity、単位:sec−1)で表し、還元炉内の反応部容積(原料気体入口から生成したNi超微粉を冷却する冷却部までの容積V(リットル)に対する還元炉に導入される塩化ニッケルガスの導入速度(リットル/秒、還元温度、1気圧換算)の割合を言う。なお、塩化ニッケルガスは不活性ガスとの混合物として導入されるが、SVは不活性ガスを除いた塩化ニッケルを対象にした値である。
▲4▼線速度とは、第2の吐出口から還元炉内へ原料気体を導入する際の原料気体の吐出速度(m/秒、ただし還元温度換算)である。
【0009】
A.原料気体
還元に供される原料気体の成分である塩化ニッケルガスの生成方法は、固体塩化ニッケルの加熱蒸発あるいはNi金属に塩素ガスを接触させて金属塩化物に変換する方法のいずれでも構わないが、後者の方が塩素導入量により塩化ニッケル発生量を制御し易いから、本発明において好ましく採用される。本発明において還元炉へ導入する原料気体は塩化ニッケルガスと不活性ガスの混合物であり、塩化ニッケルガスの分圧は0.2〜0.7、好ましくは0.25〜0.7、より好ましくは0.3〜0.7である。このような分圧の範囲は、生産効率を高く維持しながら、粒径およびその均一性、形状、結晶性および焼結性などの品質を備えた目的のNi超微粉を製造する上で好ましい態様である。
【0010】
B.還元炉
B−1.全体構成
図1は本発明で使用される還元炉10の一例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。還元炉10の頂部には原料気体導入管42に連接された原料気体導入ノズル30が設けられ、これとは別に水素導入管20が設けられている。更に、冷却ガス導入管11が設けられている。原料気体導入ノズル30の先端(図中符号13aで示す)と、冷却ガス導入管11の位置(図中符号13bで示す)との間の空間が反応部12である。還元反応により生成したNi超微粉は、余剰水素、副生した塩化水素とともに分離回収工程、精製工程へ移送される。
【0011】
B−2.原料気体及び水素の導入方式
原料気体吐出ノズル30は、図1に示すような単管状あるいは二又あるいはそれ以上に分岐していても良い。原料気体吐出口からの原料気体の吐出速度、すなわち線速度は、0.5〜5.0m/秒(還元温度で換算した計算値)に設定するのが好ましい。線速度がこの範囲を超えると還元反応が不均一になる。
【0012】
生産性とNi微粉末の品質との両者を満足させるために、図2に示すように、原料気体吐出ノズル30内に水素吐出ノズル24を設けた二重管構造(マルチノズルという場合がある)にすることが望ましい。これにより、塩化ニッケルの還元反応をさらに効率良く行うことが可能となる。この他の態様として、水素吐出ノズル24を中心として、その周囲に複数の原料気体吐出口を分割したノズルを用いても良い。このように構成することにより、原料気体吐出口から導入される塩化ニッケルガスが水素と極めて安定的、均一かつ効率的に反応し、粒径分布の小さいNi超微粉を高い塩化ニッケルガス分圧においても得ることができる。
【0013】
B−3.水素の導入量
還元炉へ導入する水素の合計量は、原料の塩化ニッケルの還元に必要な理論量(化学当量)もしくはそれ以上とし、具体的には理論量の110〜200モル%を導入する。
【0014】
そして、図2に示したような二重管ノズルを用いる場合には、中心部に設けた水素吐出ノズル24から理論量の30〜100モル%の水素を導入し、水素導入管20から残りの必要量すなわち合計量が110〜200モル%になるように導入するのが本発明の目的達成のために好ましい。なお、理論量の200モル%を超える水素を導入しても害はないが不経済である。特に好ましい態様としては、図2に示すような二重管を用いて水素吐出ノズル24から理論量の40〜90モル%を導入し、水素導入管20から別途30〜90モル%を導入し、合計の水素導入量が理論値の110〜180モル%となるようにするのが特に効果的である。
【0015】
B−4.反応条件・空間速度
還元炉内での還元反応は反応部12において950〜1150℃で行われる。塩化ニッケルガス分圧0.2〜0.7の原料気体を原料気体吐出口から還元炉内に導入すると、塩化ニッケルガスは直ちに水素と接触し、Niの核を造って成長する。その後、還元炉の下部に設けた冷却ガス導入管11からの不活性ガスの導入などにより急冷され、成長が停止させられる。こうして生成されたNi超微粉は、その後分離回収工程へ移送される。
【0016】
本発明では、原料気体中の塩化ニッケルガスの分圧と、原料気体導入ノズル30の吐出口から冷却域の間の反応部12における塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.02〜0.07sec−1に設定する組合せが重要である。空間速度(SV)が0.02sec−1未満では生産効率が極めて低く、0.07sec−1を超えるとNi超微粉の品質が不安定になり易い。この観点からさらに条件を絞り込むとすれば、空間速度(SV)は0.025〜0.07sec−1が好ましい。
【0017】
図3は生成したNi超微粉の平均粒径に対する塩化ニッケルガスの分圧と空間速度(SV)との関係を示すものである。図3から明らかなように、平均粒径を制御するには原料気体の塩化ニッケルガス分圧と空間速度(SV)の範囲を上述のように設定することによって、平均粒径0.1〜0.2μmまたは平均粒径0.25〜0.4μmのNi超微粉を任意に製造することができるのである。
【0018】
具体的には、
▲1▼平均粒径0.1〜0.2μmのNi超微粉を製造するには、還元炉へ導入する塩化ニッケルの蒸気分圧を0.25〜0.6とし、還元炉内における塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.03〜0.07sec−1として水素還元する。より好ましくは、塩化ニッケルガスの分圧は0.3〜0.55が良く、空間速度(SV)は0.035〜0.07sec−1が良い。
▲2▼平均粒径0.25〜0.4μmのNi超微粉を製造するには、還元炉へ導入する塩化ニッケルの蒸気分圧を0.3〜0.7とし、還元炉内における塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を0.02〜0.06sec−1として水素還元する。より好ましくは、塩化ニッケルガスの分圧は0.3〜0.7が良く、空間速度(SV)は0.03〜0.06sec−1が良い。
▲3▼平均粒径が同じでも塩化ニッケルガスの分圧が低い程、また空間速度(SV)が小さい程、生成したNi超微粉の結晶性が優れたものとなり、後述する焼結性も向上する。この場合、生産性が低下するので、品質とのバランスを考慮して分圧および空間速度(SV)を適宜設定する。
【0019】
そして、さらに好ましい態様は、上述のとおり、水素を原料気体と隣接して同時に還元炉内に吐出し、しかも上記の原料気体の塩化ニッケルガス分圧と空間速度(SV)で還元反応を行う。
【0020】
【実施例】
[実施例1]
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
図1に示す還元炉に単管ノズルを取り付け、表1に示す条件で反応を行った。得られたNi超微粉の物性を表1に示した。
【0021】
▲1▼Ni超微粉の平均粒径をBET法により測定した。
▲2▼電子顕微鏡によりNi超微粉の形状を観察した。
▲3▼Ni超微粉に対してX線回折を行い、その回折パターンにおけるピークが明瞭な場合を結晶性が良好と判定し、ピークが不明瞭な場合を不良と判定した。
▲4▼Ni超微粉を用いてペレットをプレス成形し、これを加熱して体積が変化(焼結の開始)したときの温度を測定して焼結性を評価した。なお、温度が高い程安定した焼結が行われ、焼結性は良好であることを意味する。
▲5▼粒度分布のCV値(粒径の標準偏差/平均粒径)を測定した。
【0022】
【表1】
Figure 0003807873
【0023】
表1から明らかなように、実施例1によるNi超微粉は、平均粒径が0.21μmの球形の粉末であり、結晶性、焼結性および粒度分布のいずれにおいても良好な結果を示した。
【0024】
[実施例2]
次に、実施例1で用いた還元炉に図2の二重管ノズルを取り付けて、表1に示す条件で反応を行った。得られたNi超微粉の物性を表1に併記した。表1から判るように、所望の平均粒径、形状および良好な結晶性を有するNi超微粉が得られることは勿論のこと、還元反応が均一に生じるために焼結性と粒度分布をより一層向上させることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、塩化ニッケルガス分圧と塩化ニッケルガスの空間速度(SV)を最適な範囲に設定しているので、以下のような優れた効果を得ることができる。
▲1▼結晶性、形状、焼結性に優れた平均粒径0.4μm以下のNi超微粉を製造することができる。
▲2▼原料気体を二重管ノズルより水素と同時に導入することにより、焼結性と粒度分布をより一層向上させることができる。
▲3▼高い塩化ニッケルガス分圧においても、良好な品質のNi超微粉を製造できるため、生産性が著しく高い。とりわけ粒径の小さい超微粉が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態による還元炉を示す縦断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態による原料気体導入ノズルを二重管ノズルに構成した例を示す縦断面図である。
【図3】 生成したNi超微粉のそれぞれの平均粒径に対する塩化ニッケルの分圧と空間速度(SV)との関係図である。
【符号の説明】
10…還元炉、11…冷却ガス導入管、12…反応部、20…水素導入管、
24…水素吐出ノズル、30…原料気体吐出ノズル。

Claims (2)

  1. 塩化ニッケルガスを気相還元してNi超微粉を製造するNi超微粉の製造方法において、
    水素を還元炉の入口に設けた第1の吐出口から吐出し、
    該第1の吐出口を取り囲むように設けた第2の吐出口から塩化ニッケルガス分圧が0.2〜0.7の原料気体を同時に吐出し、
    上記還元炉内における塩化ニッケルガスを、その空間速度(SV)を0.02〜0.07sec−1として流通させながら水素で還元することを特徴とするNi超微粉の製造方法。
  2. 塩化ニッケルガスの還元に必要な水素の理論量の30〜100モル%の量の水素を前記第1の吐出口から吐出することを特徴とする請求項に記載のNi超微粉の製造方法。
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