JP2004339601A - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニッケルとしての結晶性が高く、粒径が0.1〜1μm程度であり、粒度分布が狭い、MLCなどの内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適に用いることができ、かつ、経済性に優れたニッケル粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】湿式還元法で得られたニッケル粉末に焼結防止剤と純水を加えて混合し、この混合スラリーを噴霧熱処理により、ニッケル粉末表面に焼結防止剤をコーティングさせつつ乾燥させ、乾燥後の混合物を還元もしくは不活性雰囲気中、かつ、焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理することにより、ニッケル粉末を焼結した後、焼結後のニッケル粉末から焼結防止剤を分離除去する。
【選択図】 図1
【解決手段】湿式還元法で得られたニッケル粉末に焼結防止剤と純水を加えて混合し、この混合スラリーを噴霧熱処理により、ニッケル粉末表面に焼結防止剤をコーティングさせつつ乾燥させ、乾燥後の混合物を還元もしくは不活性雰囲気中、かつ、焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理することにより、ニッケル粉末を焼結した後、焼結後のニッケル粉末から焼結防止剤を分離除去する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサ(MLC)などの内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適に用いることができるニッケル粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型で高容量のMLCは次のように製造される。まず、パラジウムに代表される内部電極用貴金属ペーストをチタン酸バリウムに代表される誘電体グリーンシートに印刷し、乾燥して、内部電極が交互に重なるように積層する。当該積層体を熱圧着した後に、チップ形成のために切断し、次いで、1300℃程度の温度域で焼結する。これに銀などにより外部電極を形成する。
【0003】
内部電極に適用できる金属としては、誘電体グリーンシートが焼結する上記温度においても溶融せず、かつ、酸化されないことが、必要不可欠である。従来は、上記のようにパラジウムなどの高価な貴金属が用いられていたため、MLCも高価なものとなっていた。
【0004】
そこで、高価な貴金属の代わりに、卑金属であるニッケル粉末を内部電極とすることにより、MLCのコストダウンが図られている。近年では、ニッケル粉末を内部電極とするMLCの市場占有率が著しく増加している。ニッケル内部電極MLCは、その製品群が今後ますます高容量化していくことが十分に予想される。
【0005】
ところで、MLCの製造に用いられるニッケル粉末の大きさに制約を受け、内部電極をニッケル粉末の粒径より薄くすることはできない。また、内部電極に用いるニッケルペーストの性能は、その構成成分であるニッケル粉末の特性によってほぼ決定されるため、MLC作製時におけるニッケル粉末の耐酸化性を向上させる必要がある。したがって、ニッケル粉末の特性として、結晶性が高く、粒径が0.1〜1μm程度であり、充填性も考慮すれば、粒度分布が狭いことが求められる。
【0006】
ニッケル粉末の製造方法として、すでに様々な方法が知られている。たとえば、乾式還元法として、(1)酸化ニッケルなどのニッケル化合物粉末を水素ガスにより還元処理する乾式還元法、(2)ニッケル塩水溶液を超音波や2流体ノズルで霧化し、還元雰囲気下で加熱してニッケル粉末を得る噴霧分解法、および、(3)高温下で塩化ニッケル上記を水素還元処理してニッケル粉末を得るCVD法があり、湿式還元法として、(4)ニッケル塩水溶液またはニッケル化合物スラリーを、pH、温度などを制御しながら、ヒドラジンなどを用いて還元する湿式還元法がある(いずれも、特開2001−98337号公報参照)。
【0007】
これらのうち、噴霧分解法、CVD法を含む乾式還元法では、10μm以下の粒径の均一な球状粒子を得ることは困難である。そこで、これらの方法によって10μm以下の粒子を得る場合、分級により10μmより大きな粒子を取り除いているが、10μm以下の歩留まりが悪いので、ニッケル粉末は非常に高価なものとなる。
【0008】
一方、湿式還元法では、一般に還元反応が急速に進行し、得られるニッケル粉末の粒径が過度に小さくなりやすい。そのため、有機酸やアンモニアなどの錯体形成剤を添加して、還元反応温度をコントロールしている。しかし、このような錯体形成剤を使用すると、困難な廃液処理が伴うため、製造したニッケル粉末が高価となる。仮に、ニッケル粉末を得られたとしても、結晶性は低く、実用に耐えないものとなる。よって、非酸化性雰囲気下での焼成が必要となるが、この場合には上記の乾式還元法と同様の問題が生ずる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−98337号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ニッケルとしての結晶性が高く、粒径が0.1〜1μm程度であり、粒度分布が狭い、MLCなどの内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適に用いることができ、かつ、経済性に優れたニッケル粉末の製造方法を提供する。
【0011】
特に、湿式還元法で得られる結晶性の低いニッケル粉末を内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適なニッケル粉末とする製造方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によるニッケル粉末の製造方法は、湿式還元法で得られたニッケル粉末に焼結防止剤と純水を加えて混合し、この混合スラリーを噴霧熱処理により乾燥させ、乾燥後の混合物を還元もしくは不活性雰囲気中、かつ、焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理することにより、ニッケル粉末の結晶性を向上させた後、ニッケル粉末から焼結防止剤を分離除去することを特徴とする。
【0013】
焼結防止剤として、水溶性のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、特に、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムを使用する。
【0014】
混合スラリーの噴霧熱処理は、100〜200℃で行うことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、まず湿式還元法によって得られたニッケル粉末と水溶性の焼結防止剤とを混合する。焼結防止剤としては、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどのアルカリ金属の塩化物または塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩化物がある。なお、一般に湿式還元法において得られたニッケル粉末の結晶性は低い。
【0016】
この混合は、水を媒体とした湿式混合である。具体的には、ニッケル粉末と焼結防止剤を純水に加えて混合する、焼結防止剤として塩化カリウム水溶液にニッケル粉末を加えて混合する、逆にニッケル粉末水溶液に塩化カリウムなどの焼結防止剤を加えて混合する、といった任意の方法が採用できる。これにより、焼結防止剤は水に溶解するとともに、ニッケル粉末が懸濁した混合スラリーができる。
【0017】
この混合スラリーを、スプレーによって霧化し、霧化した混合体を100〜200℃の温度範囲で乾燥させる。これにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムなどの焼結防止剤がコーティングされる。100〜200℃とするのは、スラリー中の水分除去だからである。
【0018】
次に、コーティングされたニッケル粉末を還元もしくは不活性雰囲気中で塩化カリウムなどの焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理する。具体的には、塩化カリウムの場合、600〜700℃であり、塩化ナトリウムの場合、600〜700℃である。
【0019】
この熱処理により、結晶性の低いニッケル粉末が、焼結防止剤下で相互に焼結して結晶成長する。この結晶成長の際、焼結防止剤はニッケル粉末の周囲を取り囲んでおり、粉末同士の焼結を防止し、熱処理による微粉末同士の融着および巨大化が防止される。
【0020】
その後、熱処理後のニッケル粉末を純水により水洗処理して焼結防止剤を溶解除去し、乾燥し、必要な場合にはメッシュパスすることにより、結晶成長したニッケル粉末を得る。
【0021】
ニッケル粉末の評価は、粒子形状を電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM)により、平均粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)により、結晶子サイズの測定をX線回折装置により、それぞれ測定することにより行う。粒子形状は球形であるほど充填性良好である。結晶子サイズは、粒子の結晶性を評価するものである。本発明によるニッケル粉末は、球形で、平均粒径が1μm以下であり、結晶子サイズは、650Åである。
【0022】
【実施例】
[実施例1]
湿式還元法によって得られたニッケル粉末30gと塩化カリウム30gに0.5リットルの純水を加え、攪拌機で30分間攪拌してスラリーを作製した。このスラリーを噴霧装置に送り込み、スプレーノズルより噴霧し、微小液滴とした。当該液滴を100〜200℃程度において大気中で乾燥させることにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムをコーティングした。
【0023】
次に、反応炉で、2%H2 /98%N2 からなる弱還元ガスを送入しながら、塩化カリウムの融点以下である650℃で、コーティングされたニッケル粉末に熱処理を施した。この熱処理により、ニッケル粉末は塩化カリウム塩の間にあり、相互に焼結して結晶成長した。
【0024】
回収した熱処理後のニッケル粉末を自然冷却し、1リットルの純水で3回水洗し、その後、吸引ろ過により固液分離し、分離したニッケル粉末を50℃で12時間大気乾燥した。
【0025】
製造されたニッケル粉末について、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定した。なお、粒子形状は電界放射型走査型電子顕微鏡により、平均粒径は走査型電子顕微鏡により、結晶子サイズの測定はX線回折装置により、それぞれ測定した。その結果、粒子形状は、球形、平均粒径は0.8μm、結晶子サイズは644Åであった。
【0026】
[実施例2]
湿式還元法によって得られたニッケル粉末20gと塩化カリウム20gに0.5リットルの純水を加え、攪拌機で30分間攪拌してスラリーを作製した。このスラリーを真空装置で室温において30分間真空脱泡し、超音波装置により超音波分散を行いながら噴霧装置に送り込み、スプレーノズルより噴霧し、微小液滴とした。当該液滴を100〜200℃程度において大気中で乾燥させることにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムをコーティングした。
【0027】
次に、反応炉で、2%H2 /98%N2 からなる弱還元ガスを送入しながら、塩化カリウムの融点以下である700℃で、コーティングされたニッケル粉末に熱処理を施した。この熱処理により、ニッケル粉末は塩化カリウム塩の間にあり、相互に焼結して結晶成長した。
【0028】
回収した熱処理後のニッケル粉末を自然冷却し、1リットルの純水で3回水洗し、その後、吸引ろ過により固液分離し、分離したニッケル粉末を50℃で12時間大気乾燥した。
【0029】
実施例1と同様に、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定したところ、それぞれ、球形、0.9μm、609Åであった。
【0030】
[実施例3]
塩化カリウム30gの代わりに、塩化ナトリウム30gを使用した以外は、実施例1と同様にニッケル粉末を作製した。実施例1と同様に、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定したところ、それぞれ、球形、1.0μm、610Åであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、湿式還元法によって得られた結晶性の低いニッケル粉末から、熱処理によるニッケル粉末同士の融着、巨大化を防止し、かつ、安価に、結晶性の高いニッケル粉末を得ることができ、たとえば、積層セラミックコンデンサ内部電極用の高性能で充填性がよい導電ペーストとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において使用した噴霧熱処理装置の概略図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサ(MLC)などの内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適に用いることができるニッケル粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型で高容量のMLCは次のように製造される。まず、パラジウムに代表される内部電極用貴金属ペーストをチタン酸バリウムに代表される誘電体グリーンシートに印刷し、乾燥して、内部電極が交互に重なるように積層する。当該積層体を熱圧着した後に、チップ形成のために切断し、次いで、1300℃程度の温度域で焼結する。これに銀などにより外部電極を形成する。
【0003】
内部電極に適用できる金属としては、誘電体グリーンシートが焼結する上記温度においても溶融せず、かつ、酸化されないことが、必要不可欠である。従来は、上記のようにパラジウムなどの高価な貴金属が用いられていたため、MLCも高価なものとなっていた。
【0004】
そこで、高価な貴金属の代わりに、卑金属であるニッケル粉末を内部電極とすることにより、MLCのコストダウンが図られている。近年では、ニッケル粉末を内部電極とするMLCの市場占有率が著しく増加している。ニッケル内部電極MLCは、その製品群が今後ますます高容量化していくことが十分に予想される。
【0005】
ところで、MLCの製造に用いられるニッケル粉末の大きさに制約を受け、内部電極をニッケル粉末の粒径より薄くすることはできない。また、内部電極に用いるニッケルペーストの性能は、その構成成分であるニッケル粉末の特性によってほぼ決定されるため、MLC作製時におけるニッケル粉末の耐酸化性を向上させる必要がある。したがって、ニッケル粉末の特性として、結晶性が高く、粒径が0.1〜1μm程度であり、充填性も考慮すれば、粒度分布が狭いことが求められる。
【0006】
ニッケル粉末の製造方法として、すでに様々な方法が知られている。たとえば、乾式還元法として、(1)酸化ニッケルなどのニッケル化合物粉末を水素ガスにより還元処理する乾式還元法、(2)ニッケル塩水溶液を超音波や2流体ノズルで霧化し、還元雰囲気下で加熱してニッケル粉末を得る噴霧分解法、および、(3)高温下で塩化ニッケル上記を水素還元処理してニッケル粉末を得るCVD法があり、湿式還元法として、(4)ニッケル塩水溶液またはニッケル化合物スラリーを、pH、温度などを制御しながら、ヒドラジンなどを用いて還元する湿式還元法がある(いずれも、特開2001−98337号公報参照)。
【0007】
これらのうち、噴霧分解法、CVD法を含む乾式還元法では、10μm以下の粒径の均一な球状粒子を得ることは困難である。そこで、これらの方法によって10μm以下の粒子を得る場合、分級により10μmより大きな粒子を取り除いているが、10μm以下の歩留まりが悪いので、ニッケル粉末は非常に高価なものとなる。
【0008】
一方、湿式還元法では、一般に還元反応が急速に進行し、得られるニッケル粉末の粒径が過度に小さくなりやすい。そのため、有機酸やアンモニアなどの錯体形成剤を添加して、還元反応温度をコントロールしている。しかし、このような錯体形成剤を使用すると、困難な廃液処理が伴うため、製造したニッケル粉末が高価となる。仮に、ニッケル粉末を得られたとしても、結晶性は低く、実用に耐えないものとなる。よって、非酸化性雰囲気下での焼成が必要となるが、この場合には上記の乾式還元法と同様の問題が生ずる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−98337号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ニッケルとしての結晶性が高く、粒径が0.1〜1μm程度であり、粒度分布が狭い、MLCなどの内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適に用いることができ、かつ、経済性に優れたニッケル粉末の製造方法を提供する。
【0011】
特に、湿式還元法で得られる結晶性の低いニッケル粉末を内部電極材料形成用の導電ペーストとして好適なニッケル粉末とする製造方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によるニッケル粉末の製造方法は、湿式還元法で得られたニッケル粉末に焼結防止剤と純水を加えて混合し、この混合スラリーを噴霧熱処理により乾燥させ、乾燥後の混合物を還元もしくは不活性雰囲気中、かつ、焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理することにより、ニッケル粉末の結晶性を向上させた後、ニッケル粉末から焼結防止剤を分離除去することを特徴とする。
【0013】
焼結防止剤として、水溶性のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、特に、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムを使用する。
【0014】
混合スラリーの噴霧熱処理は、100〜200℃で行うことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、まず湿式還元法によって得られたニッケル粉末と水溶性の焼結防止剤とを混合する。焼結防止剤としては、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどのアルカリ金属の塩化物または塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩化物がある。なお、一般に湿式還元法において得られたニッケル粉末の結晶性は低い。
【0016】
この混合は、水を媒体とした湿式混合である。具体的には、ニッケル粉末と焼結防止剤を純水に加えて混合する、焼結防止剤として塩化カリウム水溶液にニッケル粉末を加えて混合する、逆にニッケル粉末水溶液に塩化カリウムなどの焼結防止剤を加えて混合する、といった任意の方法が採用できる。これにより、焼結防止剤は水に溶解するとともに、ニッケル粉末が懸濁した混合スラリーができる。
【0017】
この混合スラリーを、スプレーによって霧化し、霧化した混合体を100〜200℃の温度範囲で乾燥させる。これにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムなどの焼結防止剤がコーティングされる。100〜200℃とするのは、スラリー中の水分除去だからである。
【0018】
次に、コーティングされたニッケル粉末を還元もしくは不活性雰囲気中で塩化カリウムなどの焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理する。具体的には、塩化カリウムの場合、600〜700℃であり、塩化ナトリウムの場合、600〜700℃である。
【0019】
この熱処理により、結晶性の低いニッケル粉末が、焼結防止剤下で相互に焼結して結晶成長する。この結晶成長の際、焼結防止剤はニッケル粉末の周囲を取り囲んでおり、粉末同士の焼結を防止し、熱処理による微粉末同士の融着および巨大化が防止される。
【0020】
その後、熱処理後のニッケル粉末を純水により水洗処理して焼結防止剤を溶解除去し、乾燥し、必要な場合にはメッシュパスすることにより、結晶成長したニッケル粉末を得る。
【0021】
ニッケル粉末の評価は、粒子形状を電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM)により、平均粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)により、結晶子サイズの測定をX線回折装置により、それぞれ測定することにより行う。粒子形状は球形であるほど充填性良好である。結晶子サイズは、粒子の結晶性を評価するものである。本発明によるニッケル粉末は、球形で、平均粒径が1μm以下であり、結晶子サイズは、650Åである。
【0022】
【実施例】
[実施例1]
湿式還元法によって得られたニッケル粉末30gと塩化カリウム30gに0.5リットルの純水を加え、攪拌機で30分間攪拌してスラリーを作製した。このスラリーを噴霧装置に送り込み、スプレーノズルより噴霧し、微小液滴とした。当該液滴を100〜200℃程度において大気中で乾燥させることにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムをコーティングした。
【0023】
次に、反応炉で、2%H2 /98%N2 からなる弱還元ガスを送入しながら、塩化カリウムの融点以下である650℃で、コーティングされたニッケル粉末に熱処理を施した。この熱処理により、ニッケル粉末は塩化カリウム塩の間にあり、相互に焼結して結晶成長した。
【0024】
回収した熱処理後のニッケル粉末を自然冷却し、1リットルの純水で3回水洗し、その後、吸引ろ過により固液分離し、分離したニッケル粉末を50℃で12時間大気乾燥した。
【0025】
製造されたニッケル粉末について、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定した。なお、粒子形状は電界放射型走査型電子顕微鏡により、平均粒径は走査型電子顕微鏡により、結晶子サイズの測定はX線回折装置により、それぞれ測定した。その結果、粒子形状は、球形、平均粒径は0.8μm、結晶子サイズは644Åであった。
【0026】
[実施例2]
湿式還元法によって得られたニッケル粉末20gと塩化カリウム20gに0.5リットルの純水を加え、攪拌機で30分間攪拌してスラリーを作製した。このスラリーを真空装置で室温において30分間真空脱泡し、超音波装置により超音波分散を行いながら噴霧装置に送り込み、スプレーノズルより噴霧し、微小液滴とした。当該液滴を100〜200℃程度において大気中で乾燥させることにより、ニッケル粉末の周囲に塩化カリウムをコーティングした。
【0027】
次に、反応炉で、2%H2 /98%N2 からなる弱還元ガスを送入しながら、塩化カリウムの融点以下である700℃で、コーティングされたニッケル粉末に熱処理を施した。この熱処理により、ニッケル粉末は塩化カリウム塩の間にあり、相互に焼結して結晶成長した。
【0028】
回収した熱処理後のニッケル粉末を自然冷却し、1リットルの純水で3回水洗し、その後、吸引ろ過により固液分離し、分離したニッケル粉末を50℃で12時間大気乾燥した。
【0029】
実施例1と同様に、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定したところ、それぞれ、球形、0.9μm、609Åであった。
【0030】
[実施例3]
塩化カリウム30gの代わりに、塩化ナトリウム30gを使用した以外は、実施例1と同様にニッケル粉末を作製した。実施例1と同様に、粒子形状、平均粒径、結晶子サイズを測定したところ、それぞれ、球形、1.0μm、610Åであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、湿式還元法によって得られた結晶性の低いニッケル粉末から、熱処理によるニッケル粉末同士の融着、巨大化を防止し、かつ、安価に、結晶性の高いニッケル粉末を得ることができ、たとえば、積層セラミックコンデンサ内部電極用の高性能で充填性がよい導電ペーストとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において使用した噴霧熱処理装置の概略図である。
Claims (4)
- 湿式還元法で得られたニッケル粉末に焼結防止剤と純水を加えて混合し、この混合スラリーを噴霧熱処理により乾燥させ、乾燥後の混合物を還元もしくは不活性雰囲気中、かつ、焼結防止剤の融点以下の温度で熱処理することにより、ニッケル粉末を焼結した後、焼結後のニッケル粉末から焼結防止剤を分離除去することを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
- 焼結防止剤が、水溶性のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 焼結防止剤が、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムである請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 混合スラリーの噴霧熱処理を100〜200℃で行う請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003141008A JP2004339601A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | ニッケル粉末の製造方法 |
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JP2003141008A JP2004339601A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | ニッケル粉末の製造方法 |
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-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003141008A patent/JP2004339601A/ja active Pending
Cited By (5)
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