JP4229566B2 - 表面被覆ニッケル粉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いるのに適した特性を有しており、特に脱バインダー時の金属ニッケルの酸化防止性及び拡散防止性に優れていて、セラミック誘電体及び内部電極の厚みの薄い小型多層の積層セラミックコンデンサを製造するのに適している、金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体と内部電極とを交互に層状に重ねて圧着し、焼成して一体化させたものであり、このような積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する際には、内部電極材料である金属微粉末をペースト化し、該ペーストを用いてセラミック基材上に印刷し、該印刷した基材を複数枚重ねて加熱圧着して一体化した後、還元性雰囲気中で加熱焼成を行うのが一般的である。この内部電極材料として、従来は白金、パラジウムが使用されていたが、近時にはこれら白金、パラジウム等の貴金属の代わりにニッケル等の卑金属を用いる技術が開発され、進歩してきている。
【0003】
積層セラミックコンデンサを作製する際には、一般的には、デラミネーションやクラック等の欠陥の発生を抑制するために、大気中での脱バインダー熱処理を約200〜500℃で実施している。その後の焼成は、セラミック誘電体の構成成分に依存して変化するが、チタン酸バリウム系セラミック誘電体では通常1200〜1400℃程度の温度条件下、還元性雰囲気中で実施している。
【0004】
内部電極材料としてニッケル粉を用いる場合には、上記の脱バインダー熱処理の際にニッケル粉の酸化が進み、後工程の高温焼成を還元性雰囲気中で実施したとしてもその酸化されたニッケルは容易には還元されないという弊害が生じる。また、セラミック基材と金属ニッケルとを接触させた状態で焼成すると、金属ニッケルが酸化され、その生成ニッケル酸化物はセラミック誘電体基材と比較して拡散係数が大きいため、固相粒界において拡散係数の大きなニッケル酸化物相から拡散係数の小さいセラミック誘電体相への拡散が進む。
【0005】
例えば、特開平5−287305号公報第1欄38〜49行の記載「Niは高温では酸化されやすいため、非常に低い酸素濃度の雰囲気もしくは水素を含む還元性雰囲気中での焼成が必要となる。このため、使用できる誘電体が限られてくる。‥‥‥‥‥このような誘電体の限定は、製品の性能という面では満足のいくものではない。従って、誘電体の組成選定の自由度を広くとれるように、より酸素濃度の高い雰囲気で焼成可能な低コストの内部電極材料が望まれている。」からも分かる通り、積層セラミックコンデンサの内部電極材料として従来のニッケル粉を用いた場合には、脱バインダー熱処理や焼成の際に約400〜800℃での酸化が著しく、また酸化されたニッケル成分が誘電体中へ拡散する現象が生じていた。
【0006】
即ち、従来のニッケル粉を含有するペーストを用いた場合には、脱バインダー時にニッケル粉中の金属ニッケルの一部が酸化され、生成したニッケル酸化物がセラミック誘電体中に拡散するために、生成すべき内部電極の一部が消失して内部電極に欠損が生じ、且つフェライトの生成によりセラミック誘電体層の一部がその機能を失う傾向があり、従ってセラミック誘電体及び内部電極の厚みの薄い小型多層の積層セラミックコンデンサを誘電特性、電気特性を損うこと無しで製造することは極めて困難であった。
【0007】
このような問題点を解決する手段として、例えば、特開昭57−30308号公報に記載されているように、ニッケル微粒子の表面に、セラミックコンデンサを構成する誘電体セラミックと同一組成のセラミック粉末(共材)を吸着させる方法や、特開平11−124602号公報に記載されているように、ニッケル微粒子の表面に式
xy(x+2y)
(式中、AはCa、Sr及びBaの1種又は2種以上の元素、BはTi及びZr1種又は2種の元素を表し、xとyは次式を満足する数を表す0.5≦y/x≦4.5)
で示される複合酸化物層を設ける方法等が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の各公報に記載されている方法で得られるニッケル粉は、耐酸化性に優れており且つ生成ニッケル酸化物の拡散が抑制されているニッケル粉とは言い難い。即ち、特開昭57−30308号公報に記載の方法で得られるニッケル粉においては、誘電体セラミック粉末(共材)とニッケル微粒子との間には付着力はないのでペーストの調製時にそれらが容易に脱離してしまうので、焼成時におけるニッケル微粒子の耐酸化性も、生成ニッケル酸化物がセラミック誘電体中へ拡散する現象の防止もあまり改善されない。
【0009】
また、特開平11−124602号公報に記載の方法においては、複合酸化物を形成することのできる各々の熱分解性化合物とニッケル原料とを含む溶液を噴霧し、熱分解して複合酸化物を含んだニッケル粉末を調製している。しかし、この方法ではニッケル内部にも複合酸化物が形成されることになり、無駄が多いのみならず、複合酸化物の被覆を、量的にも質的にもより確実にニッケル粒子表面に形成することは困難であり、焼成時におけるニッケル微粒子の耐酸化性も、生成ニッケル酸化物がセラミック誘電体中へ拡散する現象の防止も必ずしも満足できるものではない。
【0010】
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いるのに適した特性を有しており、特に脱バインダー時の金属ニッケルの酸化防止性及び拡散防止性に優れていて、セラミック誘電体及び内部電極の厚みの薄い小型多層の積層セラミックコンデンサを製造するのに適している、金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、大気中で加熱した場合に、温度上昇に比して金属ニッケル分の酸化率の上昇が緩やかで、金属ニッケル分の酸化率が低いニッケル粉が望ましいことを見いだし、またそのような特性は、例えばニッケル粉の表面に金属酸化物の被膜が緻密に密着していることにより達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いる表面被覆ニッケル粉は、金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなり、大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が100℃以上であることを特徴とする。
また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いる表面被覆ニッケル粉は、金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなり、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が90%以下であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
熱重量測定は、物質の温度を調節されたプログラムに従って変化させながら、その物質の質量を温度の関数として測定する技法であり、物質の酸化特性は質量変化で簡単に読み取ることができる。この質量変化量より得られる指標が酸化率である。なお、本明細書において酸化率は金属ニッケル分のみ(即ち、表面を被覆している金属酸化物は計算に入れない)の酸化率を意味する。具体的には、熱重量測定装置を用い、昇温速度を一定に維持し、大気中でXgの対象試料を常温より1000℃以上まで昇温させ、試料の質量変化がなくなる(最終質量、即ち質量飽和値Yg)までその温度に保持する。このようにして得られる質量変化曲線において、質量増加量(質量飽和値Yg−Ag)を金属ニッケル分の酸化率100%として相対評価した。即ち、質量変化曲線上の質量飽和値Ygに相当する点が100%であり、出発点(Agに相当する点)が0%である。
【0014】
本発明者等は、大気中で加熱した場合のニッケル粉の酸化特性をより正確に捉えるために、先ず、酸化状態を確実に読み取ることのできる範囲、即ち金属ニッケル分の酸化率5〜95%の範囲での温度変化に着目した。その結果、大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が大きければ大きいほど、温度上昇に比して金属ニッケル分の酸化率の上昇が緩やかであり、そのような特性を有するニッケル粉は積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いるのに適しているとの結論に達した。
【0015】
金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉に関して、大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が100℃未満の場合には、積層セラミックコンデンサを作製する際に、特に脱バインダー加熱時に、ニッケル粉が急速に酸化されてしまう傾向があるので好ましくない。従って、本発明においては、大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が100℃以上、好ましくは120℃以上、一層好ましくは170℃以上である。
【0016】
本発明の金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉(以下、本発明の表面被覆ニッケル粉と記載する)においては、上記の条件に加えて、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率が20%以下であれば酸化開始温度近傍での耐酸化特性が理想的な状態に近づくので好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であること、即ち金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が400℃以上であることが一層好ましい。更に、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が420℃以上であることが好ましく、450℃以上であることが一層好ましい。
【0017】
また、本発明者等は、大気中で加熱した場合のニッケル粉の酸化特性をより正確に捉えるために、金属ニッケル分の酸化が著しい温度範囲である400〜600℃の間での酸化率の変化に着目した。その結果、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が小さければ小さいほど、温度上昇に比して金属ニッケル分の酸化率の上昇が緩やかであり、そのような特性を有するニッケル粉は積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いるのに適しているとの結論に達した。
【0018】
金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉に関して、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が90%を超える場合には、積層セラミックコンデンサを作製する際に、特に脱バインダー加熱時に、ニッケル粉が急速に酸化されてしまう傾向があるので好ましくない。従って、本発明においては、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0019】
本発明の表面被覆ニッケル粉においては、上記の条件に加えて、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率が20%以下であれば酸化開始温度近傍での耐酸化特性が理想的な状態に近づくので好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であること、即ち金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が400℃以上であることが一層好ましい。更に、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が420℃以上であることが好ましく、450℃以上であることが一層好ましい。
【0020】
また、本発明の表面被覆ニッケル粉においては、以上のような特徴に加えて、SEM観察による平均粒子径(具体的には、例えば、1万倍のSEMによって観察し、無作為に選んだ5視野の合計で500個の1 次粒子のフェレー径をそれぞれ測定し、幾何平均値を算出して得た平均粒子径)が0.1〜1μmであり、SEM観察により測定したフェレー径より求めた平均粒子径及び標準偏差値を用いて、式
CV(%)=(標準偏差値/平均粒子径)×100 ‥‥‥(1)
により求められる変動係数(CV)が30%以内であると、ニッケル粉が小粒径且つ粒度分布に優れていることから、特に薄膜化、多層化された積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いるのに適している。
【0021】
本発明の表面被覆ニッケル粉においては、金属酸化物が、原子番号12〜82の範囲内で周期表の2〜14族に属する金属元素の少なくとも1種を含む酸化物及び複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。金属酸化物が、原子番号12〜82の範囲内で周期表の2族、3族、4族、7族、13族及び14族に属する金属元素の少なくとも1種を含む酸化物及び複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが一層好ましい。
【0022】
上記の金属酸化物について単一金属を含む酸化物の具体例としては、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2 3 、Ga2 3 、Y2 3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、Cr2 3 、MnO2 、Mn3 4 、PbO、Nb2 5 、Nd2 3 、Sm2 3 、Dy2 3 、Er2 3 、Ho2 3 等を挙げることができ、それらは混合物として用いることも出来る。更にこれらの酸化物はNb、W、La、Y、Mo等の金属の酸化物でドープされていてもよい。
【0023】
上記の複合酸化物としては、例えば、一般式
Bam 1-m Tin 1-n 3
(式中、XはSr、Ca、Mg又はPbであり、ZはZr、Y、Sn又はGeであり、mは0〜1の範囲内の値であり、nは0〜1の範囲内の値である。)
で示される複合酸化物を挙げることができる。
【0024】
これらの複合酸化物の具体例としては、例えば、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 、MgTiO3 、BaZrO3 、CaZrO3 、SrZrO3 、(Mg,Ca)TiO3 、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3 、PbTiO3 、Pb(Zr,Ti)O3 、(Pb,Ca)TiO3 、MgAl2 4 、BaTi4 9 等を挙げることができ、それらは混合物として用いることも出来る。更にこれらの複合酸化物はNb、W、La、Y、Mo等の金属の酸化物でドープされていてもよい。
上記の単一金属を含む酸化物と複合酸化物との混合物として用いることも出来る。
【0025】
また、金属ニッケル粒子の表面を被覆しているこれらの金属酸化物の量が全ニッケル粉(金属ニッケル分と表面被覆金属酸化物との合計)の0.5〜10質量%を占めることが好ましく、1〜10質量%を占めることがより好ましい。金属ニッケル粒子の表面を被覆している金属酸化物の量が全ニッケル粉の0.5質量%未満の場合には、金属酸化物の被覆によって達成される効果が不十分となる傾向があり、逆に10質量%を越える場合には、そのようなニッケル粉を積層セラミックコンデンサの内部電極材料として使用したときに、コンデンサの誘電特性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0026】
次に、本発明の表面被覆ニッケル粉の製造方法について説明する。本発明の表面被覆ニッケル粉は種々の方法製造することが可能であり、以下の製造方法は単に例示として示すものである。
一般に、ニッケル粉は液相還元析出法、気相化学反応法、ガス中蒸発法等、湿式、乾式の何れの方法でも製造可能であるが、前述の通り、これらの方法で製造された従来のニッケル粉は耐酸化性の点で満足できるものではない。
【0027】
本発明の課題である、耐酸化性に優れた表面被覆ニッケル粉、即ち金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉は、上記の何れかの方法で製造された金属ニッケル粉を純水中にスラリー化し、そのスラリーに金属元素の水溶性塩、好ましくは原子番号12〜82の範囲内で周期表の2〜14族に属する金属元素の水溶性塩、より好ましくは原子番号12〜82の範囲内で周期表の2族、3族、4族、7族、13族及び14族に属する金属元素の水溶性塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水溶液を添加し、次いで酸もしくはアルカリでpHを調整して、該水溶性塩から誘導される金属酸化物又はその前駆体を該ニッケル微粒子表面に固着させ、その後不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中、100〜600℃の温度で0.5〜2時間熱処理することにより製造できる。
【0028】
上記の製造方法で用いる金属元素の水溶性塩は水溶性であって、不溶性の酸化物又は複合酸化物に転化できるものであれば特には制限されない。例えば、金属元素のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、酸化物や、アルミン酸、ケイ酸等のアルカリ金属塩等を用いることができる。
【0029】
上記の製造方法においては、pHを調整するために酸を用いるかアルカリを用いるかは上記の水溶性塩の種類に応じて変化するが、用いる酸又はアルカリの種類については特には限定されない。このようにpHを調整することにより、上記の水溶性塩が金属酸化物又はその前駆体に転化してニッケル微粒子表面に析出し、固着する。
【0030】
金属ニッケル粒子の表面に金属酸化物を被覆させる方法としては、上記のような湿式法の代わりに、予め用意した金属酸化物、複合酸化物及び/又はそれらの前駆体の超微粒子を金属ニッケル粒子の表面に物理的に付着させ、その後不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中、100〜600℃の温度で0.5〜2時間熱処理することにより製造することもできる。しかし、金属ニッケル粒子の表面により緻密な金属酸化物被覆を形成するためには湿式法が好ましい。
【0031】
上記の何れの製造方法を採用するにしても、不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中、100〜600℃の温度で0.5〜2時間熱処理することが重要であり、固着物又は付着物の酸化物形成に好適な熱処理温度を考慮すると、好ましくは150〜500℃、より好ましくは200〜400℃で熱処理する。また、不活性ガス又は微還元性ガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、水素含有窒素等を使用することができる。
【0032】
上記のように不活性ガス又は微還元性ガス雰囲気中熱処理することにより、核となる金属ニッケル粉の酸化を防止しながら、金属ニッケル粒子表面上の金属酸化物が緻密且つ強固に被覆を形成することができる。また温度と処理時間を上記のように設定することにより過剰な焼結や溶融を引き起こすことなしで被覆の緻密化を達成することができる。
【0033】
また、上記の条件下で熱処理することにより、湿式処理で得られた被覆中に含有される水分、水酸基、炭酸基等を分解・除去することができ、このことにより積層セラミックコンデンサの製造における焼成の際のガスの発生を抑制できると共に、ペースト中でのなじみ性を向上させることもできる。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる事例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で得られた金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなる表面被覆ニッケル粉の諸特性値等については下記の方法で測定した。
【0035】
(1)熱重量測定
熱重量測定装置TG/DTA6300型(セイコー電子工業製)を用い、昇温速度10℃/分に設定して、大気中で試料0.5gを常温より1100℃まで昇温させ、その後1100℃に2時間保持した。このようにして得られた質量変化曲線において、質量増加量(質量飽和値−0.5g)を金属ニッケル分の酸化率100%として相対評価した。即ち、質量変化曲線上の質量飽和値に相当する点が100%であり、出発点(0.5gに相当する点)が0%である。この相対評価において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度及び金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度、並びに400℃での金属ニッケル分の酸化率及び600℃での金属ニッケル分の酸化率を読み取った。
【0036】
(2)SEM観察による平均粒子径
1万倍のSEMによって観察し、無作為に選んだ5視野の合計で500個の1 次粒子のフェレー径をそれぞれ測定し、幾何平均値を算出した。
(3)変動係数(CV)
上記(2)で算出した平均粒子径及び上記(2)で測定したフェレー径より求めた標準偏差値を用いて、式
CV(%)=(標準偏差値/平均粒子径)×100 ‥‥‥(1)
により算出した。
(4)ニッケル粉中の他金属元素品位
試料を溶解させ、ICP(プラズマ発光分光法)により測定した。
【0037】
実施例1
硫酸ニッケル・六水和物(ニッケル品位22.2質量%)44.8Kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケル水酸化物を析出させた。
【0038】
この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30Kgを30分間にわたって添加してニッケル水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを濾過し、洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、その後、純水を加えて10Lのスラリーを調製した。このスラリーにその液温を60℃に維持しながら、硫酸マンガン・五水和物濃度170g/Lの水溶液10Lを一括添加し、その後水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが8となるように調整し、1時間保持した。その後、常法の濾過、洗浄、乾燥を実施して、湿式被覆処理ニッケル粉を得た。
【0039】
この湿式被覆処理ニッケル粉を、窒素雰囲気、400℃に制御した加熱炉内で2時間熱処理して、マンガン酸化物で表面被覆されたニッケル粉を得た。このマンガン酸化物で表面被覆されたニッケル粉について前記したようにして熱重量測定、SEM観察による平均粒子径、変動係数(CV)及びニッケル粉中の他金属元素品位を求めた。その結果は第1表に示す通りであった。
【0040】
実施例2
実施例1で用いた硫酸マンガン・五水和物濃度170g/Lの水溶液10Lの代わりに、蓚酸チタンカリウム・二水和物濃度25g/Lの水溶液30Lと塩化ストロンチウム・六水和物濃度29g/Lの水溶液30Lとを同時に60分間かけて徐々に添加したこと、及びその後の焼成温度を500℃に制御したこと以外は実施例1と同様の方法で、チタン−ストロンチウム複合酸化物で表面被覆されたニッケル粉を得た。このチタン−ストロンチウム複合酸化物で表面被覆されたニッケル粉について前記したようにして熱重量測定、SEM観察による平均粒子径、変動係数(CV)及びニッケル粉中の他金属元素品位を求めた。その結果は第1表に示す通りであった。
【0041】
比較例1
硫酸ニッケル・六水和物(ニッケル品位22.2質量%)44.8Kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケル水酸化物を析出させた。
【0042】
この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30Kgを30分間にわたって添加してニッケル水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを濾過し、洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、その後、常法の濾過、乾燥を実施してニッケル粉を得た。このニッケル粉について前記したようにして熱重量測定、SEM観察による平均粒子径及び変動係数(CV)を求めた。その結果は第1表に示す通りであった。
【0043】
比較例2
硫酸ニッケル・六水和物(ニッケル品位22.2質量%)44.8Kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケル水酸化物を析出させた。
【0044】
この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30Kgを30分間にわたって添加してニッケル水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを濾過し、洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、その後、純水を加えて10Lのスラリーを調製した。このスラリーにその液温を60℃に維持しながら、硫酸マンガン・五水和物濃度170g/Lの水溶液10Lを一括添加し、その後水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが8となるように調整し、1時間保持した。その後、常法の濾過、洗浄、乾燥を実施して、マンガン酸化物で表面被覆されたニッケル粉を得た。このマンガン酸化物で表面被覆されたニッケル粉について前記したようにして熱重量測定、SEM観察による平均粒子径、変動係数(CV)及びニッケル粉中の他金属元素品位を求めた。その結果は第1表に示す通りであった。
【0045】
【表1】
Figure 0004229566
【0046】
第1表のデータから明らかなように、実施例1〜2の本発明の表面被覆ニッケル粉は、比較例1の未処理品、比較例2の金属酸化物が表面に単に付着しているだけの非熱処理品に比べて、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が大きいので、温度上昇に比して金属ニッケル分の酸化率の上昇が緩やかである。また400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が小さいので、金属ニッケルの酸化が著しい温度範囲でも酸化が進みにくい特徴を有している。
【0047】
【発明の効果】
本発明の表面被覆ニッケル粉は特に耐酸化性、脱バインダー時の金属ニッケルの酸化防止性及び拡散防止性に優れているので、セラミック誘電体及び内部電極の厚みの薄い小型多層の積層セラミックコンデンサを製造するのに適している。

Claims (9)

  1. 金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなり、大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度と金属ニッケル分の酸化率が95%となる温度との差が100℃以上であることを特徴とする、積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いる表面被覆ニッケル粉。
  2. 大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆ニッケル粉。
  3. 大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が400℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面被覆ニッケル粉。
  4. 金属酸化物で表面被覆されたニッケル粒子からなり、大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率と600℃での金属ニッケル分の酸化率との差が90%以下であることを特徴とする、積層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いる表面被覆ニッケル粉。
  5. 大気中での熱重量測定において、400℃での金属ニッケル分の酸化率が20%以下であることを特徴とする請求項4記載の表面被覆ニッケル粉。
  6. 大気中での熱重量測定において、金属ニッケル分の酸化率が5%となる温度が400℃以上であることを特徴とする請求項4又は5記載の表面被覆ニッケル粉。
  7. SEM観察による平均粒子径が0.1〜1μmであり、SEM観察により測定したフェレー径より求めた平均粒子径及び標準偏差値を用いて、式
    CV(%)=(標準偏差値/平均粒子径)×100 ‥‥‥(1)
    により求められる変動係数(CV)が30%以内であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の表面被覆ニッケル粉。
  8. 金属酸化物が、原子番号12〜82の範囲内で周期表の2〜14族に属する金属元素の少なくとも1種を含む酸化物及び複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面被覆ニッケル粉。
  9. 表面被覆金属酸化物の量が全ニッケル粉の0.5〜10質量%を占めることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の表面被覆ニッケル粉。
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