JP4252508B2 - チタン酸バリウム粉末の製造方法及びその粉末並びにそれを用いた積層セラミック電子部品 - Google Patents

チタン酸バリウム粉末の製造方法及びその粉末並びにそれを用いた積層セラミック電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、水熱合成法によるチタン酸バリウム粉末の製造方法及びその粉末に関し、さらにその粉末を用いた積層セラミック電子部品に及ぶ。
コンデンサの小型大容量化の要求に伴い、誘電体であるチタン酸バリウム粉末も微細化されており、平均粒子径100nm以下のチタン酸バリウム粉末を使用する必要性が生じてきた。そこで、粒度分布が良い微細なチタン酸バリウム粉末を得るために、チタン化合物とバリウム化合物とをアルカリ性水溶液に添加し、高圧容器内で100℃以上の温度に加熱してチタン酸バリウム粉末を得る水熱合成法を適用した製造方法の開示がある(例えば特許文献1、特許文献2又は特許文献3を参照。)。
ところが、水熱合成法によって得られるチタン酸バリウム粉末、特に水熱合成したままの粉未は水酸基不純物を含んでいるため、結晶性が悪いという欠点がある。
また特許文献1では、50nm以下の微細なチタン酸バリウム粉末を水熱合成で得る技術が開示されているが、この方法ではチタンに対するバリウムの供給比率を極端に大きくしているため、過剰なバリウムを除去する工程が必要であり、その組成制御性に問題があった。
また特許文献2では、80nm以下の酸化チタン微粒子と水溶性バリウム塩とアルカリ性化合物を加圧容器中で水熱反応させてチタン酸バリウム粉末を得ることを特徴とするチタン酸バリウムの合成方法が開示されている。この方法では微細で腐食性不純物を含まないチタン酸バリウムが合成可能であるとされているが、酸化チタン微粉末を用いているためハンドリングが難しいという欠点を有している。
なお、特許文献3には、結晶性が高く、平均粒子径が0.1〜0.3μmのチタン酸バリウム粉末に関する技術の開示がある。しかし、粒子径が100nm以下のチタン酸バリウム粉末を得ておらず、コンデンサの小型大容量化の要求を満たさない。
特開平6-48734号公報 特開平8-119633号公報 特許第3391269号
水熱合成法で用いるチタン源としては、四塩化チタン、チタンアルコキンド又は酸化チタン微粒子を用いることができる。しかし、四塩化チタンは塩素が不純物として混入する、チタンアルコキンドは価格が高く化学的に不安定である、酸化チタン微粒子は嵩比重が低いためハンドリングが難しいという欠点が有る。
また、先に述べたとおり、水熱合成法によって得られるチタン酸バリウム粉末、特に水熱合成したままの粉未は水酸基不純物を含んでいるため、結晶性が悪いという欠点がある。そのため、所望の粒子径より小さな粒子を水熱合成し、後に熱処理することで所望の大きさになるように粒成長させることが望まれる。粒成長させる工程で、水酸基不純物が除去され、結晶性が向上するためである。この時、できるだけ小さな水熱合成粒子を合成し、これを粒成長させたほうが、結晶性が良好であるため、微細な水熱合成粒子を作製する手法が望まれている。
そこで、本発明の目的は、チタン酸バリウム粉末を水熱合成法により製造するに際して、チタン源として、微細粒子径としてもハンドリングの良い酸化チタンゾルを用いることによって、できるだけ小さな水熱合成粒子を容易に合成することである。さらにこの水熱合成粒子を粒成長させて、微細で且つ結晶性が良好なチタン酸バリウム粉末を提供することを目的とする。また、チタン源として所定以上の純度の酸化チタンゾルを用いることによって、塩素不純物の混入のないチタン酸バリウムを安価且つ容易に合成することを目的とする。これにより、コンデンサの特性について不純物による悪影響が少ない積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、水熱合成法によるチタン酸バリウム粉末の製造に際して、酸化チタンゾルの平均粒子径を10nm以下にすることによって、合成されるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径を40nm以下にできること、さらにこの合成粉を熱処理で2.5倍以上の粒径にすることによって結晶性の良い平均粒子径100nm以下のチタン酸バリウムを得ることができること、また酸化チタンゾルの純度を高いものを使用することによって、得られたチタン酸バリウム粉末を使用して作製したコンデンサの特性が上がること見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、平均一次粒子径(以下、単に平均粒子径ともいう)が10nm以下で、純度が98%以上の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液に少なくとも水溶性バリウム塩を混合して混合溶液を調製する溶液調製工程と、前記混合溶液を80℃以上の温度で水熱反応させてチタン酸バリウム粉末を得る水熱反応工程と、前記水熱反応工程により得られたチタン酸バリウム水熱合成粒子を650〜850℃に加熱する熱処理工程と、を含み、含有する不純物塩素量が30ppm以下のチタン酸バリウム粉末を得ることを特徴とする。非常に微細な平均一次粒子径40nm以下の前記水熱合成粒子を粒成長させて、微細で且つ結晶性が良好なチタン酸バリウム粉末が得られる。
ここで純度が98%以上の酸化チタン粒子とは、酸化チタンゾル溶液を乾操させて得られる酸化チタン粒子の純度が98%以上の酸化チタンゾルである。塩素不純物の混入のないチタン酸バリウムを安価且つ容易に合成することができる。これによりコンデンサの特性について不純物による悪影響が少ない積層セラミック電子部品を提供することが可能となる。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、前記水溶性バリウム塩が、水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物又は水酸化バリウム8水和物であることを含む。水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物又は水酸化バリウム8水和物は溶解するとアルカリ性を呈するので、アルカリ性化合物を添加する必要がない。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、前記混合溶液にアルカリ性化合物を添加して該混合溶液をアルカリ性に調節するpH調整工程をさらに含んでも良い。水熱反応において加水分解反応を進めるために混合溶液のpHを調整するものである。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、前記熱処理工程は、熱処理後のチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が前記チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径の2.5倍以上となるまで熱処理を行なう工程であることが好ましい。これによって結晶性がより良好なチタン酸バリウム粉末が得られる。
本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、前記本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法(ただし、熱処理工程を経る製造方法)により製造され、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う、コア部よりも結晶性の高い被覆部とを有するチタン酸バリウム粉末であって、前記コア部の平均直径が40nm以下で、且つ、平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする。すなわち、本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、正方晶の結晶構造を有し、且つ、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う、コア部よりも結晶性の高い被覆部とを有する粒子を含む粉末であり、含有する不純物塩素量が30ppm以下であることを特徴とする。ここで、コア部と被覆部の結晶性の高い若しくは低いとは結晶性の相対的高低を示している(以降単に「結晶性の低いコア部」、「結晶性の高い被覆部」ともいう。)また含有する不純物硫黄量が1000ppm以下であることを特徴とする。ここで、本発明に係るチタン酸バリウム粉末では、前記コア部の平均直径が40nm以下で、且つ、前記粒子の平均粒子径は100nm以下で、且つ、前記粒子の平均粒子径は前記コア部直径の2.5倍以上であることが好ましい。
本発明に係る積層セラミック電子部品は、本発明に係るチタン酸バリウム粉末を含む誘電体材料を焼成して得た誘電体層を有することを特徴とする。不純物による悪影響が少ない積層セラミック電子部品を提供できる。
チタン酸バリウム粉末を水熱合成法により製造するに際して、平均粒子径が10nm以下の酸化チタンゾルをチタン源として使用することで、40nm以下で不純物の含有が少ないチタン酸バリウム粉末を容易に且つ安価に製造できる。微細粒子径の水熱合成粒子が得られることで、微細で且つ結晶性が良好なチタン酸バリウム粉末を得ることができる。したがって、積層セラミック電子部品としたときもコンデンサの小型大容量化に対応することができ、且つ、コンデンサの特性について不純物による悪影響が少ない。
以下、本発明に実施の形態を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
(チタン酸バリウム水熱合成粒子の合成)
まず、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法について説明する。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、平均粒子径が10nm以下の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液に少なくとも水溶性バリウム塩を混合して混合溶液を調製する溶液調製工程と、前記混合溶液を80℃以上の温度で水熱反応させてチタン酸バリウム粉末を得る水熱反応工程とを含む。
チタン源として、平均粒子径が10nm以下の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液を用いる。水熱合成法で用いるチタン源として、四塩化チタンを用いると塩素が不純物として混入し、チタンアルコキンドを用いると価格が高くまた化学的に不安定であり、酸化チタン微粒子を用いると嵩比重が低いためハンドリングが難しい。そこで、これらの欠点がなく、且つ、40nm以下の非常に微細なチタン酸バリウム水熱合成粒子が得られる平均粒子径が10nm以下の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液を用いる。酸化チタンゾル溶液の溶媒は例えば水であっても良く、また有機溶媒と水との混合溶媒でも良い。酸化チタンゾルは、好ましくは、酸化チタンゾル溶液を乾操させて得られる酸化チタン粒子の純度が98%以上の酸化チタンゾルとする。純度の高い酸化チタンゾルを用いることで、実施例で示すように、−55℃から125℃での容量温度係数が±15%以下のX7R規格を満たすことができる。なお、水熱合成粒子とは水熱合成法によって得られた粒子をそのまま乾燥させたものである。
水溶性バリウム塩としては、水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物、水酸化バリウム8水和物、塩化バリウム、塩化バリウム2水和物、硝酸バリウム、酢酸バリウム、カルボン酸バリウムが例示される。ここでカルボン酸バリウムについて、カルボン酸には次のものがある。蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、桂皮酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸。水溶性バリウム塩としては、この中で、水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物又は水酸化バリウム8水和物が、塩化物イオン等の不純物を含まないため、好ましい。
混合溶液は、酸化チタンゾル溶液に少なくとも水溶性バリウム塩を混合して得られる固液混合物である。ここで、チタンに対するバリウムの組成比(Ba/Ti)は、特に制限はないがチタン酸バリウム粉末としたときに、チタンに対するバリウムの組成比(Ba/Ti)が1よりも大きく1.03よりも小さくなるように水溶性バリウム塩を混合することが好ましい。組成比(Ba/Ti)をこの範囲とすることで、耐還元性を向上させることができるからである。なお、チタン酸バリウムの特性を調整する範囲内で、添加物を混合溶液に添加若しくは溶解させても良い。また、その後の水熱反応を進めるためには、混合溶液をアルカリ性にする必要があり、好ましくはpH12以上に調製することが好ましい。そこで、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、溶液調製工程と水熱反応工程に加えて、さらに、混合溶液にアルカリ性化合物を添加して混合溶液をアルカリ性に調節するpH調整工程を含んでも良い。アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はアンモニア水が例として挙げられる。ただし、水溶性バリウム塩として、水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物又は水酸化バリウム8水和物を採用すると、溶解したときにアルカリ性を呈することから、アルカリ性化合物を添加する必要はない。もちろんこの場合においてもアルカリ性化合物を添加することを妨げない。
水熱反応工程において、混合溶液を80℃以上の温度で水熱反応させる。80℃未満で水熱反応を行なうと、得られるチタン酸バリウム水熱合成粒子の結晶性が悪い。80℃以上の温度で水熱反応を行なうことで、立方晶のチタン酸バリウム水熱合成粒子が得られる。結晶性を向上させる目的で、オートクレーブ中で200℃以上の高温高圧条件下で水熱反応をさせることがより好ましい。
(熱処理による粒成長)
水熱合成法によって得られるチタン酸バリウム水熱合成粒子は、水酸基不純物を含んでいる。水酸基がチタン酸バリウム水熱合成粒子の内部に入ると、バリウム欠陥が同時に生じる。そのため、このような状態のチタン酸バリウムは、結晶性が悪く、比誘電率が低い。そのため、電子材料としては適さない。そこで、熱処理することで粒成長させ、水酸基不純物を除去し、結晶性を向上させる。すなわち、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、水熱反応工程により得られたチタン酸バリウム水熱合成粒子を650〜850℃に加熱する熱処理工程をさらに含むことが好ましい。この熱処理を行ったときの粒成長のメカニズムを、図1を用いて説明する。図1は、チタン酸バリウム水熱合成粒子の熱処理による粒成長の過程を示す概念図であり、(a)は水熱合成粒子、(b)は水酸基不純物が除去され、残されたバリウム欠陥が集合し、ポアが生成した粒子、(c)は2以上の粒子が合体し、結晶性の低いコアとそれを覆う被覆からなる粒子を示す。図1(b)に示すように合成されたチタン酸バリウム水熱合成粒子を熱処理すると、水酸基は粒子外に排出されるが、バリウム欠陥が1箇所に集合して、空洞(ポア)が形成される。このポアはコンデンサの寿命を低下させるので、できるだけ少なくすることが好ましい。また、図1(c)に示すように熱処理の過程で粒子同士が焼結して粒成長を起こす。コアはポアが残存し、結晶性が低く、誘電率が低い。一方、被覆はポアが外部に排出されて結晶性が高く、誘電率が高い。したがって、所望の粒子径より小さな粒子を水熱合成し、後に熱処理することで所望の大きさになるように粒成長させる。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法では、チタン源として平均粒子径10nm以下の酸化チタンゾルを用いることで、平均粒子径40nm以下の微細な粒子径のチタン酸バリウム水熱合成粒子を得ている。よって粒成長した後のコアの直径は40nm以下とすることができる。コアの直径が小さいことから、粒成長後のポア含有量を低下させることができる。以上の観点から、充分な熱処理を施して、粒子を成長させるために熱処理工程の温度は650〜850℃とすることが好ましい。650℃未満の熱処理では粒成長が充分に進まず、逆に850℃を超えると焼結が生じ、粒子同士の凝結が起こる。熱処理工程では、熱処理後のチタン酸バリウム粉末の粒子径がチタン酸バリウム水熱合成粒子の粒子径の2.5倍以上となるまで熱処理を行なうことが好ましい。2.5倍以上となるまで熱処理を行なうことで、コアに対して被覆が厚くなるので、結晶性がより向上する。ただし、コンデンサの小型大容量化の要請からチタン酸バリウム粉末が100nm以下の平均粒子径となるように熱処理工程を終えることがより好ましい。
以上の工程を経て得られた本実施形態に係るチタン酸バリウム水熱合成粒子は、平均粒子径が40nm以下で、且つ、含有する不純物塩素量が30ppm以下、また含有する不純物硫黄量が1000ppm以下である。平均粒子径が40nm以下とできたのは、チタン源として平均粒子径が10nm以下の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液を用いたからであり、含有する不純物塩素を30ppm以下、含有する不純物硫黄量を1000ppm以下にできたのは、98%以上の純度の酸化チタンゾルを用いたことによる。さらに、結晶構造は立方晶であり、結晶格子中のOH基量が0.1〜3wt%である。結晶格子中のOH基量は、例えば株式会社リガク製TG−DTA装置、Thermo
Plus 2を用いることにより測定できる。200〜700℃の重量減少がOH基量に相当する。粒子径によりOH基量は変化し、例えば平均粒子径10nmのときOH基量は3wt%、平均粒子径40nmのときOH基量は0.3wt%である。
さらに熱処理工程を経て得られた本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う結晶性の高い被覆部とを有するチタン酸バリウム粉末であって、コア部の直径が40nm以下で、且つ、平均粒子径が100nm以下である。ここで結晶構造は正方晶であり、粒子の粒子径はコア部直径の2.5倍以上であり、含有する不純物塩素量が30ppm以下、含有する不純物硫黄量が1000ppm以下である。
熱処理工程を経て得られた本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、コンデンサを製造するため、副成分を添加して混合粉末としても良い。副成分としては、例示すると次の通りである。酸化マグネシウム、並びに酸化イットリウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウムから選ばれる少なくとも1種以上とを含有し、更に他の副成分として酸化バリウム、酸化ストロンチウム又は酸化カルシウムから選択される少なくとも1種以上と、酸化ケイ素と、酸化マンガン又は酸化クロムから選択される少なくとも1種以上と、酸化バナジウム、酸化モリブデン又は酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上とを含有する。そして、チタン酸バリウムをBaTiOに、酸化マグネシウムをMgOに、酸化イットリウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウムから選ばれる少なくとも1種以上をReに、酸化バリウムをBaOに、酸化ストロンチウムをSrOに、酸化カルシウムをCaOに、酸化ケイ素をSiOに、酸化マンガンをMnOに、酸化クロムをCrに、酸化バナジウムをVに、酸化モリブデンをMoOに、酸化タングステンをWOに、それぞれ換算したとき、BaTiO100molに対する比率が、MgO:0.1〜2.5mol以下、Re:6mol以下、MO(MはMg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種)、LiO及びBの少なくとも一種:6mol以下、SiO:6mol以下、(但し、MOは、SiO1molに対して、1molの割合で添加することが好ましい)、MnO又はCrから選択される少なくとも一種:0.5mol以下、V、MoO又はWOから選択される少なくとも一種:0.3mol以下とすることが好ましい。
チタン酸バリウムを含む原料粉末を誘電体ペーストに調整し、積層セラミック電子部品、例えば積層コンデンサを作製する。
以下、積層コンデンサの製造方法について具体的に記載する。積層コンデンサは、例えば、複数の誘電体層と複数の内部電極とを交互に積層したコンデンサ素体を備えている。内部電極は電気的に接続された端子電極が設けられている。端子電極の外側には、必要に応じてめっき層が設けられている。コンデンサ素体の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6mm〜5.6mm)×(0.3mm〜5.0mm)×(0.3mm〜1.9mm)程度である。
誘電体層は本実施の形態に係るチタン酸バリウム粉末を含有する誘電体材料を含有しており、結晶性の低いコアの直径が小さくなっている。これにより平均粒子径が100nm以下の微細粒子であるものの、コンデンサの誘電率が高く、且つ高温における容量温度特性が平坦化されるようになっている。誘電体層の一層当たりの厚さは、通常0.5μm〜40μm程度であり、30μm以下であれば好ましい。誘電体層の積層数は、通常2〜300程度である。
内部電極は、導電材料を含有している。導電材料は特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)あるいはそれらの合金が好ましい。なお、本実施の形態では誘電体層の構成材料が耐還元性を有しており、導電材料に安価な卑金属を用いることもできるので、導電材料としてはニッケルあるいはニッケル合金が特に好ましい。ニッケル合金としては、マンガン、クロム、コバルト(Co)およびアルミニウムなどから選択される1種以上の元素とニッケルとの合金が好ましく、合金中におけるニッケルの含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、内部電極は、それらの他にリン(P)などの各種微量成分を0.1重量%程度以下含有していても良い。内部電極の厚さは用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.5μm〜5μm程度であることが好ましく、0.5μm〜2.5μm程度であればより好ましい。
端子電極は、例えば、端子電極ペーストを焼き付けることにより形成されたものである。この端子電極ペーストは、例えば、導電材料と、ガラスフリットと、ビヒクルとを含有している。導電材料は、例えば、銀(Ag)、金(Au)、銅、ニッケル、パラジウム(Pd)および白金(Pt)からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。端子電極の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常10μm〜50μm程度である。めっき層は、例えば、ニッケルあるいはスズの単層構造、またはニッケルおよびスズを用いた積層構造となっている。
このような構成を有する積層コンデンサは、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、平均粒子径100nm以下の本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を用意する。なお、平均粒子径は、例えば、実施例で用いるBET(BrunauerEmmett
Teller)法のほか、SEM写真、TEM写真、あるいはレーザ回折法によって求めても良い。
ここで前述したようにチタン酸バリウム粉末として、チタンに対するバリウムの組成比(Ba/Ti)が1よりも大きく1.03よりも小さいものを用いることが好ましい。
次いで、チタン酸バリウム粉末に副成分を混合したのち、この原料混合粉末に有機ビヒクルまたは水系ビヒクルを加えて混練し、誘電体ペーストを作成する。有機ビヒクルはバインダを有機溶媒中に溶解させたものである。バインダは特に限定されず、エチルセルロースあるいはポリビニルブチラールなどの各種バインダから選択して用いる。有機溶媒も特に限定されず、成形方法に応じて選択する。例えば、印刷法あるいはシート法などにより成形する場合には、テルピネオール,ブチルカルビトール,アセトンあるいはトルエンなどを選択して用いる。また、水系ビヒクルは水に水溶性バインダおよび分散剤などを溶解させたものである。水溶性バインダも特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール,セルロース,水溶性アクリル樹脂あるいはエマルションなどから選択して用いる。
誘電体ペーストにおけるビヒクルの含有量は特に限定されず、通常はバインダが1〜5重量%程度、溶剤が10〜50重量%程度となるように調整する。また、誘電体ペーストには、必要に応じて分散剤または可塑剤などの添加物を添加してもよい。その添加量は、合計で10重量%以下とすることが好ましい。
続いて、誘電体ペーストを成形し、例えば180℃〜400℃に加熱して脱バインダ処理を行ったのち、例えば1100℃〜1400℃で焼成する。これにより、誘電体磁器が得られる。
次いで、内部電極を構成する導電材料または焼成後に導電材料となる各種酸化物,有機金属化合物あるいはレジネートなどを、誘電体ペーストと同様のビヒクルと混練して内部電極ペーストを作製する。内部電極ペーストにおけるビヒクルの含有量は誘電体ペーストと同様に調整する。また、内部電極ペーストには、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料などの添加物を添加してもよい。その添加量は、合計で10重量%以下とすることが好ましい。
続いて、これら誘電体ペーストと内部電極ペーストとを用い、例えば、印刷法あるいはシート法により、コンデンサ素体の前駆体であるグリーンチップを作製する。例えば、印刷法を用いる場合には、誘電体ペーストおよび内部電極ペーストをポリエチレンテレフタレート製の基板(以下、PET基板と言う)などの上に交互に印刷し、熱圧着したのち、所定形状に切断し、基板から剥離してグリーンチップとする。また、シート法を用いる場合には、誘電体ペーストを用いて誘電体ペースト層(グリーンシート)を形成し、この誘電体ペースト層の上に内部電極ペースト層を印刷したのち、これらを積層して圧着し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
グリーンチップを作製したのち、脱バインダ処理を行う。脱バインダ処理条件は通常のもので良く、例えば、内部電極にニッケルあるいはニッケル合金などの卑金属を用いる場合には、下記のように調整することが好ましい。
Figure 0004252508
脱バインダ処理を行ったのち、焼成を行い、コンデンサ素体を形成する。焼成時の雰囲気は内部電極の構成材料に応じて適宜選択すれば良いが、内部電極にニッケルあるいはニッケル合金などの卑金属を用いる場合には、還元性雰囲気とすることが好ましい。例えば、雰囲気ガスとしては窒素ガスに水素ガスを1〜10容量%混合して加湿したものが好ましく、酸素分圧は1×10−3Pa〜1×10−7Paとすることが好ましい。酸素分圧がこの範囲未満であると、内部電極が異常焼結して途切れてしまうことがあるからであり、酸素分圧がこの範囲を超えると、内部電極が酸化してしまう傾向があるからである。
焼成時の保持温度は1100℃〜1400℃とすることが好ましく、1200℃〜1360℃とすればより好ましく、1200℃〜1320℃とすれば更に好ましい。保持温度がこの範囲未満であると緻密化が不十分であり、この範囲を超えると内部電極が途切れ、または内部電極の構成元素が拡散して容量温度特性が低下してしまうからである。
その他の焼成条件は、例えば下記のようにすることが好ましい。

Figure 0004252508
なお、焼成を還元雰囲気で行った場合には、焼成ののちにアニールを施すことが好ましい。アニールは誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命が著しく延長され、信頼性が向上する。アニール時の雰囲気ガスには加湿した窒素ガスを用いることが好ましく、その酸素分圧は0.1Pa以上、特に1Pa〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧がこの範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、この範囲を超えると内部電極が酸化してしまうからである。アニールの保持温度は1100℃以下、特に500℃〜1100℃とすることが好ましい。保持温度がこの範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となり、絶縁抵抗が低下し、IR寿命が短くなってしまうからである。一方、この範囲を超えると、内部電極が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極が誘電体層と反応し、容量温度特性の悪化、絶縁抵抗の低下、およびIR寿命の低下を生じてしまうからである。
その他の焼成条件は、例えば下記のようにすることが好ましい。
Figure 0004252508
なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよく、保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。ちなみに、上述した脱バインダ処理工程、焼成工程およびアニール工程において、雰囲気ガスを加湿する場合には、例えば、ウエッターなどを使用すればよい。その場合の水温は0℃〜75℃程度とすることが好ましい。
また、脱バインダ処理工程、焼成工程およびアニール工程は連続して行うようにしてもよく、互いに独立して行うようにしてもよい。これらを連続して行う場合には、脱バインダ処理後、冷却せず雰囲気を変更して焼成の保持温度まで昇温して焼成を行い、次いでアニール工程の保持温度まで冷却し、雰囲気を変更してアニールを行うことが好ましい。これらを独立して行う場合には、焼成工程において、脱バインダ処理時の保持温度までは窒素ガスまたは加湿した窒素ガス雰囲気下で昇温し、そののち焼成時の雰囲気に変更して昇温を続けることが好ましく、アニール時の保持温度まで冷却した後は、再び窒素ガスあるいは加湿した窒素ガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、アニールに際しては、窒素ガス雰囲気下で保持温度まで昇温したのちに雰囲気を変更してもよく、アニールの全工程を加湿した窒素ガス雰囲気としても良い。
コンデンサ素体を形成したのち、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、内部電極ペーストと同様にして作製した端子電極ペーストを印刷または転写して焼き付け、端子電極を形成する。その際、雰囲気は例えば加湿した窒素ガスと水素ガスとの混合ガス中とし、焼き付け温度は600℃〜800℃、保持温度は10分間〜1時間程度とすることが好ましい。端子電極を形成したのち、必要に応じて端子電極の上にめっき層を形成する。これにより積層コンデンサが得られる。
なお、この積層コンデンサは、はんだ付けなどによりプリント基板上などに実装され、各種電子機器に用いられる。
このように本実施の形態によれば、結晶性の低いコアの直径を40nm以下としつつ、平均粒子径が100nm以下の微細粒子としたので、高結晶性と高比誘電率を有した誘電体材料を提供できる。よって、この誘電体材料を用いて積層コンデンサを形成すれば、IR加速寿命を向上させ、ひいては高温における信頼性を向上させることができると共に、薄層化が可能となり、小型化および大容量化を図ることができる。また、高温における容量温度特性を平坦化することができるので、例えば、−55℃〜125℃の範囲内における容量変化率を基準温度25℃として±15%以内とする米国電子工業会規格(EIA規格)のX7R特性を容易に満たすことができる。従って、高温での使用を可能とすることができる。
(水熱合成粒子の粒子径の検討)
参考例1−1)
平均粒子径が5nmの酸化チタン粒子が6wt%分散した酸化チタンゾル溶液に、含有される酸化チタンより2モル%過剰の水酸化バリウム8水和物を添加し、オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて300℃1時間反応させた。得られた反応物のスラリーをろ過し、これを乾燥させて乾燥粉末を得た。乾燥粉末のX線回折測定(株式会社リガク社製RINT2000)により、この粉末は立方晶のチタン酸バリウムであることを確認した。チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径は17nmであった。粒子中の不純物塩素は8ppm、不純物硫黄は18ppmであった。粒子径(nm)はユアサアイオニクス株式会社製マルチソーブ16によって比表面積(m/g)を測定し、1000÷(比表面積)という式で算出した。実施例を含む本発明において塩素量はイオンクロマト法で求めた。塩素量イオンクロマト法の測定条件は、次の通りである。すなわち、試料0.2gとTa0.5gを混合し、磁性ボートに取り、1050℃で水蒸気蒸留する。分解物を0.1%NaOH+2%H捕集液20mlに回収し、100mlに定容する。イオンクロマト装置(DIONEX社製DX−500)を用いて測定する。このとき、カラムはDIONEX AS17、溶離液は7−35mM KOH、流速は1.0ml/minとした。また、実施例を含む本発明において硫黄量は酸素気流中燃焼赤外吸収法で測定した。酸素気流中燃焼赤外吸収法の測定条件は、次の通りである。すなわち、測定装置としてLECO社製CS−244を用いた。検量線の校正は、LECO製校正試料501−67(lot.No.890−100−1)及び高純度鉄502−231(lot.No.1192−3)を用いて行った。試料は50mg前後を精秤した。試料は、予備測定のC,S濃度から判断し、約0.5gを精秤した。なお、酸化チタンゾルは、含水酸化チタンスラリーに塩酸または硝酸を添加することで、得られる。
参考例1−2)
平均粒子径が7nmの酸化チタン粒子が30wt%分散した酸化チタンゾル溶液を用いた以外は参考例1−1と同様にしてチタン酸バリウム粉末を得た。この粉末は立方晶のチタン酸バリウムであることを確認した。チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径は26nmであった。粒子中の不純物塩素は4ppm、不純物硫黄は461ppmであった。
参考例1−3)
参考例1−2と全く同条件でチタン酸バリウムを構成したところ、チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径は29nmであった。粒子中の不純物塩素は9ppm、不純物硫黄は449ppmであった。
参考例1−4)
平均粒子径が10nmの酸化チタン粒子が10wt%分散した酸化チタンゾル溶液を用いた以外は参考例1−1と同様にしてチタン酸バリウム粉末を得た。この粉末は立方晶のチタン酸バリウムであることを確認した。チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径は33nmであった。粒子中の不純物塩素は21ppm、不純物硫黄は27ppmであった。
(比較例1)
平均粒子径が50nmの酸化チタン粒子が6wt%分散した酸化チタンゾル溶液を用いた以外は参考例1−1と同様にしてチタン酸バリウム粉末を得た。この粉末は立方晶のチタン酸バリウムであることを確認した。チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径は68nmであった。粒子中の不純物塩素は38ppm、不純物硫黄は1098ppmであった。
参考例1−1から参考例1−4及び比較例1の結果から、酸化チタン粒子の平均粒子径と得られるチタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径との関係は図2に示すとおりである。図2から、10nm以下の酸化チタン粒子を用いれば、40nm以下のチタン酸バリウム水熱合成粒子が得られることがわかる。また、参考例1−2と参考例1−3とを比較すると再現性も良かった。また比較例1は、不純物塩素が30ppmを超え、また不純物硫黄が1000pmを超えていて、且つ、粒子径が40nmを大きく超えているため、後述する実施例4−1、実施例4−2、参考例4−1から示される不純物要因及び比較例6−1から示される粒子径要因の結果を考慮すると、比較例1のチタン酸バリウム粉末を使用して作製したコンデンサの特性は低いと考えられる。
(水熱反応の温度の検討)
(比較例2−1)
平均粒子径が10nmの酸化チタン粒子が6wt%分散した酸化チタンゾル溶液に、含有される酸化チタンより2モル%過剰の水酸化バリウム8水和物を添加し、オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて75℃1時間反応させた。得られた反応物のスラリーをろ過し、これを乾燥させて乾燥粉末を得た。乾燥粉末のX線回折測定の結果、チタン酸バリウムの生成が認められるが、未反応の酸化チタンや水酸化バリウムが分解して生成した炭酸バリウムが混在していた。
参考例2−1)
オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて95℃1時間反応させた以外は比較例2−1と同様とした。乾燥粉末のX線回折測定の結果、チタン酸バリウムのみの生成が認められ、反応が完結したことがわかる。
水熱反応の温度は80℃以上とすることで、反応が完了したチタン酸バリウム粉末が得られた。
(熱処理工程における粒成長率の検討)
(実施例3)
平均粒子径が17nmのチタン酸バリウム水熱合成粒子を準備し、これを熱処理した場合の熱処理温度と、熱処理後の平均粒子径及び粒成長率の相関を求める。粒成長率は(熱処理後の平均粒子径)÷(水熱合成粒子の平均粒子径)×100という式により算出した。また、平均粒子径(nm)は参考例1−1と同様の方法により求めた。熱処理温度を700℃、790℃、820℃、850℃、それぞれの熱処理時間を2時間と設定した。結果を図3に示す。図3に結果から、熱処理温度が高いほど粒成長率が大きくなることがわかった。熱処理温度700℃では粒成長率が253%(平均粒子径43nm)、熱処理温度790℃では粒成長率が461%(平均粒子径78.5nm)、熱処理温度820℃では粒成長率が531%(平均粒子径90.3nm)、熱処理温度850℃では粒成長率が621%(平均粒子径105.6nm)であった。平均粒子径が17nmのチタン酸バリウム水熱合成粒子を用いたため、熱処理温度850℃で粒成長させたとしても、熱処理後のチタン酸バリウム粉末の平均粒子径は105.6nmと微細であった。
(酸化チタンゾルの純度の検討)
(実施例4−1)
純度が99.9%で、平均粒子径が5nmの酸化チタン粒子が6wt%分散した酸化チタンゾル溶液に、含有される酸化チタンより2モル%過剰の水酸化バリウム8水和物を添加し、オートクレーブ(高圧反応容器)を用いて300℃1時間反応させた。得られた反応物のスラリーをろ過し、これを乾燥させて乾燥粉末を得た。さらに、熱処理温度を790℃、熱処理時間を2時間と設定してチタン酸バリウム粉末を得た。粒子中の不純物塩素は8ppm、不純物硫黄は18ppmであった。次いで、このチタン酸バリウム粉末から実施形態で説明した方法に従ってコンデンサを作製しアジレントテクノロジーズ株式会社製4284Aおよび恒温槽によって125℃での容量温度係数(%)を測定した。125℃での25℃基準の容量温度係数は13%であった。
(実施例4−2)
純度が98.5%で、平均粒子径が7nmの酸化チタン粒子が30wt%分散した酸化チタンゾル溶液を用いた以外は実施例4−1と同様の操作を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。粒子中の不純物塩素は20ppm、不純物硫黄は211ppmであった。次いで、このチタン酸バリウム粉末から実施形態で説明した方法に従ってコンデンサを作製し、125℃での容量温度係数(%)を測定した。125℃での容量温度係数は14%であった。
(参考例4−1)
純度が97%で、平均粒子径が7nmの酸化チタンゾルを用いた以外は実施例4−1と同様の操作を行い、チタン酸バリウム粉末を得た。粒子中の不純物塩素は32ppm、不純物硫黄は1033ppmであった。次いで、このチタン酸バリウム粉末からコンデンサを作製し、125℃での容量温度係数(%)を測定した。125℃での容量温度係数は19%であった。
図4に酸化チタンゾルの純度と125℃での容量温度係数(%)との関係を示す。125℃での容量温度係数が15%以下の場合、X7R規格を満たすことができるので、図4から、酸化チタンゾルの純度は98%以上であることが望ましいことがわかる。
(結晶性の低いコアの直径とコンデンサの比誘電率の関係の検討)
(実施例5−1)
チタン酸バリウム水熱合成粒子を熱処理して、結晶性が低いコアの直径が15nmのチタン酸バリウム粉末を合成した。チタン酸バリウム粉末の平均粒子径は90nmであった。この場合、粒成長率は600%である。このチタン酸バリウム粉末から実施形態で説明した方法に従ってコンデンサを作製し、アジレントテクノロジーズ株式会社製4284Aおよび恒温を用いて室温、1MHzにおけるコンデンサの比誘電率を測定したところ、1108であった。結果を表1に示す。
(実施例5−2〜実施例5−4、比較例5−1〜比較例5−2)
結晶性が低いコアの直径と粒成長率を表1に示すように変化させて、チタン酸バリウム粉末を得て、その後、実施例5−1と同様にコンデンサの比誘電率を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0004252508
表1を参照すると、粒成長率が250%未満(2.5倍未満)では、誘電率の低下が著しく、大容量コンデンサの材料としては粒成長率が250%以上のチタン酸バリウム粉末を用いることが好ましいことがわかった。また、図5に結晶性の低いコアの直径とコンデンサの比誘電率との関係を示した。結晶性の低いコアの直径が40nmを超えると比誘電率が1000未満となるため、大容量コンデンサの材料としては結晶性の低いコアの直径が40nm以下のチタン酸バリウム粉末を用いることが好ましいことがわかった。
チタン酸バリウム水熱合成粒子の熱処理による粒成長の過程を示す概念図であり、(a)は水熱合成粒子、(b)は水酸基不純物が除去され、残されたバリウム欠陥が集合し、ポアが生成した粒子、(c)は2以上の粒子が合体し、結晶性の低いコア部とそれを覆う被覆部からなる粒子を示す。 参考例1−1〜参考例1−4及び比較例1の結果から示される、酸化チタン粒子の平均粒子径と得られるチタン酸バリウム水熱合成粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである。 平均粒子径が17nmのチタン酸バリウム水熱合成粒子を熱処理したときの熱処理温度と熱処理後の平均粒子径及び粒成長率の相関を示すグラフである。 酸化チタンゾルの純度と125℃での容量温度係数(%)との関係を示すグラフである。 結晶性の低いコア部の直径とコンデンサの比誘電率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1,チタン酸バリウム水熱合成粒子
2,熱処理後のチタン酸バリウム粒子
3,バリウム欠陥集合(ポア)
4,結晶性の低いコアとそれを覆う結晶性の高い被覆とを有するチタン酸バリウム粒子
5,結晶性の低いコア
6,結晶性の高い被覆

Claims (9)

  1. 平均一次粒子径が10nm以下で、純度が98%以上の酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾル溶液に少なくとも水溶性バリウム塩を混合して混合溶液を調製する溶液調製工程と、前記混合溶液を80℃以上の温度で水熱反応させてチタン酸バリウム粉末を得る水熱反応工程と、前記水熱反応工程により得られたチタン酸バリウム水熱合成粒子を650〜850℃に加熱する熱処理工程と、を含み、含有する不純物塩素量が30ppm以下のチタン酸バリウム粉末を得ることを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  2. 前記水溶性バリウム塩が、水酸化バリウム無水物、水酸化バリウム2水和物又は水酸化バリウム8水和物であることを特徴とする請求項1記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  3. 前記混合溶液にアルカリ性化合物を添加して該混合溶液をアルカリ性に調節するpH調整工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  4. 前記熱処理工程は、熱処理後のチタン酸バリウム粉末の平均一次粒子径が前記チタン酸バリウム水熱合成粒子の平均一次粒子径の2.5倍以上となるまで熱処理を行なう工程であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  5. 請求項1、2、3又は4記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法により製造され、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う、コア部よりも結晶性の高い被覆部とを有するチタン酸バリウム粉末であって、前記コア部の直径が平均40nm以下で、且つ、平均一次粒子径が100nm以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
  6. 正方晶の結晶構造を有し、且つ、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う、コア部よりも結晶性の高い被覆部とを有する粒子を含む粉末であり、含有する不純物塩素量が30ppm以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
  7. 正方晶の結晶構造を有し、且つ、結晶性の低いコア部と該コア部を覆う、コア部よりも結晶性の高い被覆部とを有する粒子を含む粉末であり、含有する不純物硫黄量が1000ppm以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
  8. 前記コア部の平均直径が40nm以下で、且つ、前記粒子の平均一次粒子径は100nm以下で、且つ、前記粒子の平均一次粒子径は前記コア部直径の2.5倍以上であることを特徴とする請求項6又は7記載のチタン酸バリウム粉末。
  9. 請求項5、6、7又は8記載のチタン酸バリウム粉末を含む誘電体材料を焼成して得た誘電体層を有することを特徴とする積層セラミック電子部品。
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