JP4178008B2 - 藻類防除剤および藻類防除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、藻類防除剤および藻類防除方法、詳しくは、各種産業分野において、藻類の発生を防除するための藻類防除剤および藻類防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、製紙パルプ工場の抄紙工程、金属加工油循環工程、工業用冷却水循環工程などの循環水系や、貯水ピット、プール、噴水池などの日光が照射される各種の水系、さらには、カゼイン、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤などの各種の産業製品には、藻類が繁殖しやすく、スライムの原因となって、生産性や品質の低下、悪臭の発生などの原因となっている。そのため、このような藻類の繁殖を防除するために、藻類防除剤が広く使用されている。
【0003】
このような藻類防除剤として、現在まで、イソチアゾロン系化合物などの種々の藻類防除剤が知られているが、近年、特開2000−159607号公報において、低濃度でも藻類を効果的に防除でき、かつ、安全性の高い藻類防除剤として、ビス四級アンモニウム化合物のハロゲン化物(ハロゲンの塩)を、有効成分として用いることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ビス四級アンモニウム化合物のハロゲン化物では、その防除効果が十分でなく、また、依然として金属腐食性や皮膚刺激性が残存し、さらには、焼却時に有害なガスを発生させるおそれもある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、藻類に対して十分な防除効果を発現し、かつ、より安全性に優れる藻類防除剤および藻類防除方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ビス四級アンモニウム化合物の種々の塩について鋭意検討したところ、ビス四級アンモニウム化合物の有機塩である、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)が、十分な防除効果を発現し、かつ、安全性に優れる知見を見い出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を含有することを特徴とする、藻類防除剤、
【0008】
(2) N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)の有効量を、防除対象に添加することを特徴とする、藻類防除方法
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の藻類防除剤は、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を、有効成分として含有している。
【0010】
N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)は、公知の方法により製造することができる。
【0011】
そして、本発明の藻類防除剤は、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を、その目的および用途に応じて、公知の方法により、例えば、液剤(水懸濁剤および油剤を含む。)、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセルなどの公知の種々の剤型に製剤化することによって、調製することができる。
【0012】
また、このような製剤化においては、例えば、包接化合物として調製してもよく、さらには、層状ケイ酸塩などのモンモリロナイト(スメクタイト類など)などに担持させ、あるいは、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルクなどに吸着させるようにして調製してもよい。
【0013】
これらのうち、例えば、液剤として製剤化する場合には、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を、適宜の溶剤に溶解または分散すればよい。より具体的には、例えば、液剤100重量%中に、溶剤が1〜99.8重量%、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)が0.1〜95重量%となる割合で配合し、溶解または分散させればよい。用いられる溶剤としては、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を溶解または分散し得る溶剤であれば特に制限されない。
【0014】
このような溶剤としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートなどのケトン系溶剤、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどのエーテル系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルなどのエステル系溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤などが挙げられる。
【0015】
これらのうち、好ましくは、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、極性溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独または2種以上併用してもよい。
【0016】
また、本発明の藻類防除剤は、その目的および用途によって、公知の添加剤、例えば、他の防藻剤および/または防かび剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加してもよい。
【0017】
他の防藻剤および/または防かび剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、ハロアセチレン系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、フェニルウレア系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、4級アンモニウム塩系化合物が挙げられる。
【0018】
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0019】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが挙げられる。
【0020】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンがなど挙げられる。
【0021】
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0022】
ハロアセチレン系化合物としては、例えば、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートなどが挙げられる。
【0023】
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0024】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などが挙げられる。
【0025】
ピリチオン系化合物としては、例えば、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオンなどが挙げられる。
【0026】
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0027】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0028】
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
【0029】
トリアゾール系化合物としては、例えば、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などが挙げられる。
【0030】
ベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、メチル 2−ベンズイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンズイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0031】
4級アンモニウム塩系化合物としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
【0032】
また、他の防藻剤および/または防かび剤として、その他に、例えば、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルフォルマールなどの有機ヨウ素系化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチオカーバメート系化合物、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系化合物、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどのピジリン系化合物、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系化合物、例えば、3−ベンゾ[b]チエン−2−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキサイドなどのオキサチアジン系化合物などが挙げられる。
【0033】
これらの他の防藻剤および/または防かび剤は、単独または2種以上併用してもよい。また、他の防藻剤および/または防かび剤の配合割合は、その剤型および目的ならびに用途によって適宜決定されるが、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)100重量部に対して、1〜9000重量部、好ましくは、3〜8000重量部である。
【0034】
また、界面活性剤としては、例えば、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤など、公知の界面活性剤が挙げられ、好ましくは、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0035】
また、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール]などのフェノール系酸化防止剤、例えば、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0036】
これら、界面活性剤および酸化防止剤は、例えば、液剤の場合には、液剤100重量部に対して0.1〜5重量部添加される。
【0037】
また、光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
【0038】
このような光安定剤は、例えば、液剤の場合には、液剤100重量部に対して0.1〜10重量部添加される。
【0039】
そして、このようにして得られる本発明の藻類防除剤は、藻類に対して低濃度でも十分な防除効果を発現し、かつ、金属腐食性や皮膚刺激性が著しく低減され、さらには、焼却時に有害なガスを発生させるおそれも少なく、安全性に優れる藻類防除剤として、各種の産業分野において有効に用いることができる。
【0040】
そのため、本発明の藻類防除剤は、例えば、製紙パルプ工場の抄紙工程、金属加工油循環工程、工業用冷却水循環工程などの循環水系や、貯水ピット、プール、噴水池などの日光が照射される各種の水系、さらには、カゼイン、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤などの各種の産業製品に対して適用すれば、藻類の繁殖を防除して、スライムの発生を防止することができ、生産性や品質の低下、悪臭の発生などを効果的に防止することができる。
【0041】
本発明の藻類防除剤は、防除対象に応じて、藻類の防除効果を発現する有効量で防除対象に添加すれば、特に限定されないが、例えば、1〜8000mg(有効成分)/kg(製品)、好ましくは、5〜5000mg(有効成分)/kg(製品)の濃度として用いることができる。
【0042】
また、本発明の藻類防除剤は、pHが、3〜13、好ましくは、4〜12の適用対象に用いることができ、さらには、例えば、SO22−、SO32−、HSO2−、HSO3−、S2O32−、好ましくは、SO32−、HSO3−、S2O32−などの還元剤の存在下においても、その効力を有効に発現することができる。なお、この場合の還元剤の濃度は、例えば、製品中1〜10000ppmであることが好ましい。
【0043】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
【0044】
実施例1
N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(ダイマー38A、イヌイ社製)の5重量%水溶液を調製した。
【0045】
比較例1
N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(ダイマー38、イヌイ社製)の5重量%プロピレングリコール溶液を調製した。
【0046】
評価
1)防藻試験
前培養したクロレラバルガリス(Chrorella vulgaris NIES−227)、フォルミデウムラモスン(Phormidium ramosum NIES−305)、ウロスリックスバリアビリス(Ulothrix variabills NIES−329)、オスシラトリアネグラクタ(Oscillatoria neglacta NIES−33)を、それぞれ濁度(440nm)0.8に調製した懸濁液を同量ずつ混合し、この菌懸濁液をC培地に濁度(440nm)0.2となるように添加した。
【0047】
この溶液中に、実施例1および比較例1で調製した藻類防除剤を、表1に示す有効成分濃度で添加して、23℃、光照射下、4週間振盪培養し、濁度を求めた。その結果を表1に示す。なお、表1には、各藻類防除剤が添加されていない無添加の結果も、コントロールとして併せて示している。
【0048】
【表1】
2)最小発育阻止濃度(MIC)
アレン寒天培地を用いた倍数希釈法で、表2に示す藻を用い、23℃、光照射下、4週間培養し、実施例1および比較例1で調製した藻類防除剤の最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)を求めた。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の藻類防除剤は、藻類に対して低濃度でも十分な防除効果を発現し、かつ、金属腐食性や皮膚刺激性が著しく低減され、さらには、焼却時に有害なガスを発生させるおそれも少なく、安全性に優れる藻類防除剤として、各種の産業分野において有効に用いることができる。そのため、本発明の藻類防除方法は、安全性を向上させつつ、藻類を効果的に防除することができる。
Claims (2)
- N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)を含有することを特徴とする、藻類防除剤。
- N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)の有効量を、防除対象に添加することを特徴とする、藻類防除方法。
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