JP2005035900A - エマルション型殺微生物剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、紙パルプ製造業の工程水、工業用循環冷却水、産業排水等の各種工業用工程水において、汚れやスライム障害を引き起こす微生物類に対して、優れた殺微生物効果を示す殺微生物剤組成物を提供することである。
【解決手段】エマルション型殺微生物剤組成物において、(A)ポリオキシエチレン(平均付加モル数E=6〜15モル)硬化ヒマシ油誘導体と、(B)カチオン性界面活性剤と、(C)殺微生物剤を含むカチオン性ベシクルを含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】エマルション型殺微生物剤組成物において、(A)ポリオキシエチレン(平均付加モル数E=6〜15モル)硬化ヒマシ油誘導体と、(B)カチオン性界面活性剤と、(C)殺微生物剤を含むカチオン性ベシクルを含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙パルプ製造業の工程水、工業用循環冷却水、産業排水等の各種工業用工程水において発生する微生物に起因する汚れやスライム障害を除く殺微生物剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種工業用工程水や産業排水等の水中で一般に生息している細菌類、真菌類(カビ類)が繁殖すると種々の障害を起こすことはよく知られている。例えば、開放循環冷却水系では、水中の溶解物及び分散物質は濃縮されてその濃度が高くなり、水中微生物の活動に好都合な状況となっている。その結果、水系内の微生物が繁殖し、分泌した粘性物質と水中の土砂、鉄錆、その他の有機物等の夾雑物が混合した汚泥状物のスライムが増大することとなる。スライムが付着することにより、水系内のストレーナーの通水不良、熱交換器の熱伝導の低下、配管流量の減少及び配管閉塞、装置壁面の金属腐食等の弊害をもたらす。
【0003】
また、紙パルプ製造業では、多種多様な薬品、例えばデンプン、サイズ剤、歩留向上剤、紙力剤、ラテックス樹脂等を使用しているため、微生物の生育に好ましい環境となっている。その結果、微生物の増殖により形成されたスライムが、抄紙工程内の壁面に付着し、ある程度成長した後、壁面から剥がれてパルプスラリー中に混ざり、成紙中に抄き込まれるとプレス工程、乾燥工程で紙切れを起こしたり、成紙の着色、斑点、目玉等の発生となり、製品価値を著しく低下させることとなる。
【0004】
これらの微生物障害を引き起こす微生物に対して、従来、種々の殺微生物剤が提案されてきた。使用される殺微生物剤の多くは、難水溶性、非水溶性であるため、水系の微生物類に接触しやすいように、可溶化したり、乳化させたりした微生物剤として用いられている。例えば、ハロゲン化酢酸エステルと4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをアニオン性界面活性剤とグリコール系溶剤で溶解した抗菌剤組成物(特許文献1参照)、水不溶性の2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと塩化ベンザルコニウム塩等の4級アンモニウム塩を用いて可溶化した殺微生物剤(特許文献2参照)、メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾールの有機スルホン酸塩と2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1種を極性溶媒であるエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解した殺微生物剤組成物(特許文献3参照)、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマールと2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを配合した防かび剤(特許文献4参照)、テトラアルキルホスホニウム塩と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び/又は2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと界面活性剤あるいは極性溶媒を含む殺微生物剤組成物およびこれを用いる微生物制御方法(特許文献5参照)等がある。しかし、殺微生物成分を可溶化、乳化した微生物剤は、水系に添加されると水系で希釈された状態となり、直接、微生物に作用したり、パルプに付着してカビや微生物類の繁殖を防止したりすることはできず、殺微生物効果を得るためには、多量の薬剤を使用しなければならず、好ましくない。そのため、未だに満足しうる殺微生物効果を発揮する殺微生物剤組成物は得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−13726号公報
【特許文献2】
特開平5−139918号公報
【特許文献3】
特開平7−149609号公報
【特許文献4】
特開平9−315912号公報
【特許文献5】
特開平10−273408号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙パルプ製造業の工程水、工業用循環冷却水、産業排水等の各種工業用工程水において、汚れやスライム障害を引き起こす微生物類に対して、優れた殺微生物効果を示す殺微生物剤組成物を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、殺微生物剤組成物について鋭意検討を行った結果、殺微生物効果を有する殺微生物剤用原体とカチオン性電荷を有する特定のベシクルを用いることにより、殺微生物効果が向上することを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、エマルション型殺微生物剤組成物において、(A)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン(平均付加モル数E=6〜15モル)硬化ヒマシ油誘導体と、(B)下記一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤(式中、R1、R2、R3、R4の少なくとも2つは独立に炭素数10〜22の炭化水素基を表し、他はそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基を表し、nは1,2の正の整数を表し、X−は塩化物イオン、臭化物イオン、炭素数1〜6の1〜2価のカルボン酸残基を表わす。)と、(C)殺微生物剤とを含有するカチオン性ベシクルを含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物である。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明であり、前記カチオン性ベシクルが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の濃度を5〜20重量%とし、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の平均付加モル数を10モルにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の発明であり、(B)成分のカチオン性界面活性剤が、前記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4のいずれかが炭素数12〜20の炭化水素基であり、他がそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基であり、nが1、X−が塩化物イオン又は臭化物イオンであることを特徴としている。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明であり、前記一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤が、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミドからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明であり、モル分率:B/(A+B)が0.1〜0.33であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のエマルション型殺微生物剤組成物であり、(C)殺微生物剤が、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体と(B)カチオン性界面活性剤と、(C)殺微生物剤を含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物であり、さらに詳しくは(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体と(B)カチオン性界面活性剤が水中でカチオン性電荷を有するベシクルを形成し、この調製されたベシクルに殺微生物効果を有する化合物(殺微生物剤)を保持させて得られたエマルション型殺微生物剤組成物である。
【0017】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物を微生物障害が発生している水系に添加することにより、高い殺微生物効果が期待できる。特にアニオン電荷を有するパルプを使用している紙パルプ工業に好適である。
【0018】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物で配合する(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体(以下、「A成分」とする)は、硬化ヒマシ油のエチレンオキシド付加物であり、エチレンオキシドの付加モル数は平均6モル〜15モル、好ましくは平均付加モル数10モルである。この範囲外では水中で自己集合して安定なベシクルを形成することができない。
【0019】
エマルション型殺微生物剤組成物におけるA成分の濃度は、1〜20重量%であり、20重量%を超えると安定なベシクルが得られない。
【0020】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物で配合する(B)カチオン性界面活性剤(以下、「B成分」とする。)は、一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤である。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、R1、R2、R3、R4の少なくとも2つは独立に炭素数10〜22の炭化水素基(直鎖及び分岐鎖、飽和及び不飽和)であり、他はそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)であり、nは正の整数、X−は塩化物イオン、臭化物イオン、炭素数1〜6の1〜2価のカルボン酸アニオンを表わし、1〜2価のカルボン酸アニオンの場合、一部がナトリウム塩あるいはカリウム塩であってもよい。
【0023】
カルボン酸としては、1価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、メタクリル酸、酪酸、吉草酸、グルコン酸、ヘキサン酸等があり、2価のカルボン酸としてはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバチン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、酒石酸等がある。また、2価カルボン酸の場合には、一部がナトリウム塩あるいはカリウム塩の形であってもよい。
【0024】
A成分とB成分の混合時のモル比は、〔B/(A+B)〕が0.1を超え、0.33以下である。この範囲外では、カチオン性が安定に維持されない。
【0025】
ベシクルの作成、エマルション化にB成分以外の界面活性剤を用いても良い。界面活性剤としては、非イオン性活性剤、アニオン性活性剤があり、これから選ばれる少なくとも1種以上であり、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸モノエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0027】
アニオン性活性剤としては、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン重縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、N−アシルメチルタウリン、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩、アルキルホスホン酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル、硫酸化ヒマシ油等が挙げられる。
【0028】
本発明で配合する(C)殺微生物剤(以下、「C成分」とする。)は、細菌類、真菌類等の微生物類の成長を抑制し、死滅させうる効果を有する化合物であり、有機ハロゲン系化合物、有機窒素硫黄系化合物、有機窒素系化合物、有機硫黄系化合物、アルデヒド系化合物等があり、これから選ばれる少なくとも1種以上、あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
有機ハロゲン系化合物としては、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール、トリブロモニトロメタン、β−ブロモ−β−ニトロスチレン、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、5−ブロモ−2−メチル−5−ニトロ−1,3−ジオキサン等の有機ブロモニトロ系化合物、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−プロパン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2,3−トリスブロモアセトキシプロパン、メチレンビスブロモアセテート、ベンジルブロモアセテート、2−ブロモアセトアミド等の有機ブロム酢酸エステル又はアミド類、ビストリブロモメチルスルホン、2−ブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、及び2−ヒドロキシエチル−2,3−ジブロモプロピオネート、ジヨードメチル−p−トリルスルホン等の有機ハロゲンスルホン系化合物、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4−ジフロオロ−6−メトキシイソフタロニトリル等のハロゲン化イソフタロニトリル系化合物、ジクロログリオキシム、α−クロロベンズアルドキシムアセテート、α−クロロベンズアルドキシム、2−(P−ヒドロオキシフェニル)グリオキシロヒドロキシモイルクロライド、N,4−ジヒドロキシ−α−オキソベンゼンエタンイミドイルクロライド、α−クロロ−o−アセトキシベンズアルドキシム、α,4−ジクロロベンズアルドキシム等のハロゲン化オキシム系化合物等が挙げられる。
【0030】
有機窒素硫黄系化合物としては、メチレンビスチオシアネート、エチレンビスチオシアネート等のアルキレンビスチオシアネート系化合物、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等の3−イソチアゾロン系化合物、及びこれら3−イソチアゾロン系化合物と金属塩とのコンプレックス、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウム、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカーバメート及びそのナトリウム塩、エチレンチウラムモノサルファイド、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン等のチオカーバメート系化合物、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロルメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド等のスルホンアミド系化合物、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム等のチアゾール系化合物、3,5−ジメチル−1,3,5−テトラヒドロチアジアジン−2−チオン、3,3’−エチレンビス−(テトラヒドロ−4,6−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン)等のチアジアジン化合物等が挙げられる。
【0031】
有機窒素系化合物としては、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−エチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン系化合物、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバミン酸等のカルバミン酸又はそのエステル系化合物、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)]−2’−[(2,4−ジクロロフェニル)メトキシ]エチル−3−(2−フェニルエチル)−1H−イミダゾリウムクロライド、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール等のイミダゾール系化合物、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)−アクリル酸アミド、2−クロルアセトアミド等のアミド系化合物、N−(2−ヒドロキシプロピル)−アミノメタノール、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール等のアミノアルコール系化合物、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド等のフタルイミド系化合物等が挙げられる。
【0032】
有機硫黄系化合物としては、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン等のジチオール系化合物、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド及び2−ヒドロキシプロピルメタンチオスルホネート等が挙げられる。
【0033】
アルデヒド系化合物としては、o−フタルアルデヒド、α−ブロムシンナムアルデヒド等が挙げられる。
【0034】
好ましくは、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルである。
【0035】
A成分とB成分により得られるカチオン性ベシクルに対するC成分の配合量は、C成分により適宜決定するが、通常、C成分のモル比は〔C/(A+B+C)〕=0.1〜0.7、好ましくは0.1〜0.5である。0.7を超えるとエマルション粒径が大きくなり、安定性が不十分になる場合がある。
【0036】
C成分の溶解に有機系溶媒を用いても良い。例えば、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルカーボネート等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドフラン等のエーテル類、N−メチルピロリドン、2−メチルピロリドン等のピロリドン類、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0037】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物に使用する水は、特に限定されるものではなく、一般の市水、イオン交換水、工業用水などが用いられる。
【0038】
A成分とB成分を〔B/(A+B)〕が0.1を超え、0.33以下になるように、有機溶剤、例えばエタノールに溶解し、撹拌下、均一に混合する。次いで、エタノールを揮発、除去し、この混合物に水を加えて撹拌する。加える水量は、A成分とB成分の混合物濃度が1〜20重量%になるようにする。1日間静置して混合ベシクルを熟成させる。その後、撹拌下、混合ベシクルにC成分の殺微生物剤を〔C/(A+B+C)〕が0.1〜0.7の範囲になるようなC成分量を添加し、15分撹拌してエマルション型殺微生物剤組成物を得る。
【0039】
エマルション型殺微生物剤組成物のpHは、配合するA成分、B成分、C成分により異なるため、適宜決定されれば良い。また、pHの調整には、通常、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
【0040】
本発明のエマルション型殺微生物組成物の水系への添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば通常の薬品注入ポンプを用いて、連続的あるいは間欠的に添加される。通常は、微生物生存数を適宜測定し、スライム傷害が起きないように微生物数を設定された基準数以下に保つように添加する。
【0041】
また、本発明のエマルション型殺微生物組成物の添加箇所は、障害が発生している箇所あるいは工程を考慮して適宜選択、決定されるものであり、通常、障害が発生している箇所あるいは工程に直接、添加するか、その上流に添加される。また、紙パルプ産業でのパルプの防腐防カビには、直接、噴霧しても良い。
【0042】
本発明の殺微生物剤組成物の添加量は、水質、温度など該水系の工程条件、生存微生物の種類、微生物数、スライムの発生の程度、添加頻度などによって大きく異なるので一律に定められるものではないが、通常、対象とする処理水系に対して、C成分として0.1〜1,000mg/L、好ましくは1〜500mg/L、さらに好ましくは5〜300mg/L添加される。添加量が0.1mg/Lより少ないと本発明の効果が得られない場合があり、また、1,000mg/Lより多いと、効果は充分にあるが、添加量の割には効果の向上が小さく、経済的にみて不利になることがある。
【0043】
本発明の防腐防カビ剤はpHの影響が少なく広いpH範囲で適用が可能である。本発明を実施する対象系中のpHは、4〜11、好ましくは6〜9である。
【0044】
本発明の効果を妨害しない範囲において、他の殺微生物剤を併用したり、あるいは消泡剤、スケールコントロール剤等その他工程添加剤と共に使用したりすることがあるが、本発明はこれら薬品の添加については何ら制限するものではない。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0046】
〔A成分〕
A−1:ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1378)[日光ケミカルズ(株)製]
A−2:ポリオキシエチレン(6モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1202)[日光ケミカルズ(株)製]
A−3:ポリオキシエチレン(15モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1598)[日光ケミカルズ(株)製]
【0047】
〔B成分〕
B−1:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(分子量364.4)[試薬、東京化成工業(株)製]
B−2:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量263.9)[試薬、東京化成工業(株)製]
【0048】
〔C成分〕
C−1:1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(分子量329.8)
C−2:4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(分子量282)[有効成分濃度25重量%のジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液、ローム&ハース社製]
C−3:2−ベンズイミダゾリンカルバミン酸メチル(分子量191.2)
【0049】
〔その他〕
D−1:ソルビタンモノオレエート「ノニオンOP−80R」[商品名、日本油脂(株)製]
D−2:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート「ノニオンOT−221」[商品名、日本油脂(株)製]
D−3:トリプロピレングリコールメチルエーテル
〔エマルション型殺微生物剤:実施例No.1の調製〕
【0050】
ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(A−1)10.0g(7.3ミリモル)とヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(B−1)0.30g(0.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.1)、エタノール50gを加えて混合し、均一に溶解させた後、2日間減圧乾燥して、エタノールを除去して混合物1を得た。混合物1に水88.45gを加えて2時間、撹拌し、更に20℃にて2日間、20℃の恒温槽に静置した。次いで殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)0.60g(1.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.2)を添加、撹拌し、エマルション型殺微生物剤No.1を得た。
同様に表1記載の組成にて、エマルション型殺微生物剤実施例No.2〜11を調製した。
【0051】
〔エマルション型殺微生物剤:比較例No.1〜5の調製〕
ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(A−1)10.0g(7.3ミリモル)、水88.45gを加えて2時間、撹拌し、更に20℃にて2日間、20℃の恒温槽に静置した。次いで殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)0.60g(1.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.2)を添加、撹拌し、エマルション型殺微生物剤比較例No.1を得た。同様に表1記載の組成にて、エマルション型殺微生物剤比較例No.2〜5を調製した。
【0052】
〔殺微生物剤:比較例7〕
ソルビタンモノオレエート(D−1)4g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(D−2)6g、トリプロピレングリコールメチルエーテル(D−3)80g、殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)10gを混合、撹拌し、殺微生物剤No.7を得た。
【0053】
〔殺微生物剤:比較例8〕
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(B−1)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(有効成分濃度25重量%のジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液:C−2)10gを水に撹拌下、添加し、可溶化して殺微生物剤比較例No.8を調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
[ウェットパルプの防かび試験]
製紙会社の漂白クラフトパルプ(BKP)製造時のウエットパルプシートに発生したカビを採取して、ウェットパルプシートに発生していたカビ(Aspergillus属、Penicillium属)をPDA寒天培地で7日間、28℃で培養し、その胞子をポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートの0.05%水溶液に分散させて、それぞれのカビの胞子懸濁液を調製した。これらの胞子懸濁液の胞子数が1×104個/mlになるように希釈、調製し、それぞれの胞子懸濁液を等量混合して、試験用混合胞子懸濁液を調製した。
【0056】
製造直後の製紙会社の漂白クラフトパルプ(BKP)を採取し、四日市市水にて2.5重量%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを200mL(絶乾パルプ量5g)取り、表1記載のエマルション型殺微生物剤組成物を(B)成分の有効分(殺微生物成分)として200mg/絶乾パルプ−gとなるように添加し、1分間、混合、撹拌した。40メッシュ金網を張ったブフナーロート(直径11cm)で該パルプスラリーを吸引ろ過し、得られたパルプシートをプレス圧3.5kg/cm2で5分間、プレス脱水を行ない、パルプ濃度約70%、シート厚さ5mmのウェットパルプシートを作成した。これを5×5cmに切り取り試験片とし、寒天培地〔組成はJISZ−2911に準拠し、蒸留水1Lに硝酸アンモニウム3g、リン酸2水素カリウム1g、硫酸マグネシウム・7水塩0.5g、塩化カリウム0.25g、硫酸鉄・7水塩0.002g、寒天25gを混合しpHを4.5〜5.5に調整し、オートクレーブで125℃×15分間滅菌した寒天培地を用いた。〕上の中央に置き、カビの混合胞子懸濁液を1mlふりかけて、滅菌シャーレで蓋をして、28℃、湿度95〜99%の恒温器で培養した。その後、ウェットパルプシート上のカビの生育状況を目視観察し、エマルション型殺微生物剤組成物の効果を以下のように評価し、カビが発生するまでの所要日数を測定した。
結果を表2に示す。表2中、−、+、++は以下のことを表す。
− :試験片上にカビの発生が認められず、良好。
+ :試験片上の全面積の1/3以下にカビの発生が認められる。
++:試験片上の全面積の1/3以上にカビの発生が認められる。
【0057】
【表2】
【0058】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物の防カビ効果は、従来の活性剤型エマルション殺微生物剤や分散型エマルション殺微生物剤のいずれにおいてもウェットパルプシートの防カビ効果の向上を示している。
【0059】
【発明の効果】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物を用いることにより、紙・パルプ製造業におけるウェットパルプの防腐防カビの性能向上だけで無く、パルプへの吸着剤性向上により、工程水系・白水系の殺微生物効果が高まり、優れた殺微生物効果を発揮し、製品品質低下を防止することができる。また、一般水系においても、スライム等の付着物が通常、負電荷を有するため、これに吸着することにより、殺微生物剤をより有効に作用させることが期待され、処理コストの低減に大きく寄与する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙パルプ製造業の工程水、工業用循環冷却水、産業排水等の各種工業用工程水において発生する微生物に起因する汚れやスライム障害を除く殺微生物剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種工業用工程水や産業排水等の水中で一般に生息している細菌類、真菌類(カビ類)が繁殖すると種々の障害を起こすことはよく知られている。例えば、開放循環冷却水系では、水中の溶解物及び分散物質は濃縮されてその濃度が高くなり、水中微生物の活動に好都合な状況となっている。その結果、水系内の微生物が繁殖し、分泌した粘性物質と水中の土砂、鉄錆、その他の有機物等の夾雑物が混合した汚泥状物のスライムが増大することとなる。スライムが付着することにより、水系内のストレーナーの通水不良、熱交換器の熱伝導の低下、配管流量の減少及び配管閉塞、装置壁面の金属腐食等の弊害をもたらす。
【0003】
また、紙パルプ製造業では、多種多様な薬品、例えばデンプン、サイズ剤、歩留向上剤、紙力剤、ラテックス樹脂等を使用しているため、微生物の生育に好ましい環境となっている。その結果、微生物の増殖により形成されたスライムが、抄紙工程内の壁面に付着し、ある程度成長した後、壁面から剥がれてパルプスラリー中に混ざり、成紙中に抄き込まれるとプレス工程、乾燥工程で紙切れを起こしたり、成紙の着色、斑点、目玉等の発生となり、製品価値を著しく低下させることとなる。
【0004】
これらの微生物障害を引き起こす微生物に対して、従来、種々の殺微生物剤が提案されてきた。使用される殺微生物剤の多くは、難水溶性、非水溶性であるため、水系の微生物類に接触しやすいように、可溶化したり、乳化させたりした微生物剤として用いられている。例えば、ハロゲン化酢酸エステルと4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをアニオン性界面活性剤とグリコール系溶剤で溶解した抗菌剤組成物(特許文献1参照)、水不溶性の2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと塩化ベンザルコニウム塩等の4級アンモニウム塩を用いて可溶化した殺微生物剤(特許文献2参照)、メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾールの有機スルホン酸塩と2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの少なくとも1種を極性溶媒であるエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解した殺微生物剤組成物(特許文献3参照)、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマールと2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを配合した防かび剤(特許文献4参照)、テトラアルキルホスホニウム塩と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び/又は2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと界面活性剤あるいは極性溶媒を含む殺微生物剤組成物およびこれを用いる微生物制御方法(特許文献5参照)等がある。しかし、殺微生物成分を可溶化、乳化した微生物剤は、水系に添加されると水系で希釈された状態となり、直接、微生物に作用したり、パルプに付着してカビや微生物類の繁殖を防止したりすることはできず、殺微生物効果を得るためには、多量の薬剤を使用しなければならず、好ましくない。そのため、未だに満足しうる殺微生物効果を発揮する殺微生物剤組成物は得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−13726号公報
【特許文献2】
特開平5−139918号公報
【特許文献3】
特開平7−149609号公報
【特許文献4】
特開平9−315912号公報
【特許文献5】
特開平10−273408号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙パルプ製造業の工程水、工業用循環冷却水、産業排水等の各種工業用工程水において、汚れやスライム障害を引き起こす微生物類に対して、優れた殺微生物効果を示す殺微生物剤組成物を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、殺微生物剤組成物について鋭意検討を行った結果、殺微生物効果を有する殺微生物剤用原体とカチオン性電荷を有する特定のベシクルを用いることにより、殺微生物効果が向上することを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、エマルション型殺微生物剤組成物において、(A)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン(平均付加モル数E=6〜15モル)硬化ヒマシ油誘導体と、(B)下記一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤(式中、R1、R2、R3、R4の少なくとも2つは独立に炭素数10〜22の炭化水素基を表し、他はそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基を表し、nは1,2の正の整数を表し、X−は塩化物イオン、臭化物イオン、炭素数1〜6の1〜2価のカルボン酸残基を表わす。)と、(C)殺微生物剤とを含有するカチオン性ベシクルを含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物である。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明であり、前記カチオン性ベシクルが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の濃度を5〜20重量%とし、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の平均付加モル数を10モルにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の発明であり、(B)成分のカチオン性界面活性剤が、前記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4のいずれかが炭素数12〜20の炭化水素基であり、他がそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基であり、nが1、X−が塩化物イオン又は臭化物イオンであることを特徴としている。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明であり、前記一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤が、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミドからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明であり、モル分率:B/(A+B)が0.1〜0.33であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のエマルション型殺微生物剤組成物であり、(C)殺微生物剤が、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体と(B)カチオン性界面活性剤と、(C)殺微生物剤を含んでなることを特徴とするエマルション型殺微生物剤組成物であり、さらに詳しくは(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体と(B)カチオン性界面活性剤が水中でカチオン性電荷を有するベシクルを形成し、この調製されたベシクルに殺微生物効果を有する化合物(殺微生物剤)を保持させて得られたエマルション型殺微生物剤組成物である。
【0017】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物を微生物障害が発生している水系に添加することにより、高い殺微生物効果が期待できる。特にアニオン電荷を有するパルプを使用している紙パルプ工業に好適である。
【0018】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物で配合する(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体(以下、「A成分」とする)は、硬化ヒマシ油のエチレンオキシド付加物であり、エチレンオキシドの付加モル数は平均6モル〜15モル、好ましくは平均付加モル数10モルである。この範囲外では水中で自己集合して安定なベシクルを形成することができない。
【0019】
エマルション型殺微生物剤組成物におけるA成分の濃度は、1〜20重量%であり、20重量%を超えると安定なベシクルが得られない。
【0020】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物で配合する(B)カチオン性界面活性剤(以下、「B成分」とする。)は、一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤である。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、R1、R2、R3、R4の少なくとも2つは独立に炭素数10〜22の炭化水素基(直鎖及び分岐鎖、飽和及び不飽和)であり、他はそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)であり、nは正の整数、X−は塩化物イオン、臭化物イオン、炭素数1〜6の1〜2価のカルボン酸アニオンを表わし、1〜2価のカルボン酸アニオンの場合、一部がナトリウム塩あるいはカリウム塩であってもよい。
【0023】
カルボン酸としては、1価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、メタクリル酸、酪酸、吉草酸、グルコン酸、ヘキサン酸等があり、2価のカルボン酸としてはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバチン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、酒石酸等がある。また、2価カルボン酸の場合には、一部がナトリウム塩あるいはカリウム塩の形であってもよい。
【0024】
A成分とB成分の混合時のモル比は、〔B/(A+B)〕が0.1を超え、0.33以下である。この範囲外では、カチオン性が安定に維持されない。
【0025】
ベシクルの作成、エマルション化にB成分以外の界面活性剤を用いても良い。界面活性剤としては、非イオン性活性剤、アニオン性活性剤があり、これから選ばれる少なくとも1種以上であり、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸モノエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0027】
アニオン性活性剤としては、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン重縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、N−アシルメチルタウリン、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩、アルキルホスホン酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル、硫酸化ヒマシ油等が挙げられる。
【0028】
本発明で配合する(C)殺微生物剤(以下、「C成分」とする。)は、細菌類、真菌類等の微生物類の成長を抑制し、死滅させうる効果を有する化合物であり、有機ハロゲン系化合物、有機窒素硫黄系化合物、有機窒素系化合物、有機硫黄系化合物、アルデヒド系化合物等があり、これから選ばれる少なくとも1種以上、あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
有機ハロゲン系化合物としては、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール、トリブロモニトロメタン、β−ブロモ−β−ニトロスチレン、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、5−ブロモ−2−メチル−5−ニトロ−1,3−ジオキサン等の有機ブロモニトロ系化合物、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−プロパン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2,3−トリスブロモアセトキシプロパン、メチレンビスブロモアセテート、ベンジルブロモアセテート、2−ブロモアセトアミド等の有機ブロム酢酸エステル又はアミド類、ビストリブロモメチルスルホン、2−ブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、及び2−ヒドロキシエチル−2,3−ジブロモプロピオネート、ジヨードメチル−p−トリルスルホン等の有機ハロゲンスルホン系化合物、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4−ジフロオロ−6−メトキシイソフタロニトリル等のハロゲン化イソフタロニトリル系化合物、ジクロログリオキシム、α−クロロベンズアルドキシムアセテート、α−クロロベンズアルドキシム、2−(P−ヒドロオキシフェニル)グリオキシロヒドロキシモイルクロライド、N,4−ジヒドロキシ−α−オキソベンゼンエタンイミドイルクロライド、α−クロロ−o−アセトキシベンズアルドキシム、α,4−ジクロロベンズアルドキシム等のハロゲン化オキシム系化合物等が挙げられる。
【0030】
有機窒素硫黄系化合物としては、メチレンビスチオシアネート、エチレンビスチオシアネート等のアルキレンビスチオシアネート系化合物、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等の3−イソチアゾロン系化合物、及びこれら3−イソチアゾロン系化合物と金属塩とのコンプレックス、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウム、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカーバメート及びそのナトリウム塩、エチレンチウラムモノサルファイド、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン等のチオカーバメート系化合物、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロルメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド等のスルホンアミド系化合物、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム等のチアゾール系化合物、3,5−ジメチル−1,3,5−テトラヒドロチアジアジン−2−チオン、3,3’−エチレンビス−(テトラヒドロ−4,6−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン)等のチアジアジン化合物等が挙げられる。
【0031】
有機窒素系化合物としては、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−エチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン系化合物、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバミン酸等のカルバミン酸又はそのエステル系化合物、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)]−2’−[(2,4−ジクロロフェニル)メトキシ]エチル−3−(2−フェニルエチル)−1H−イミダゾリウムクロライド、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール等のイミダゾール系化合物、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)−アクリル酸アミド、2−クロルアセトアミド等のアミド系化合物、N−(2−ヒドロキシプロピル)−アミノメタノール、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール等のアミノアルコール系化合物、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド等のフタルイミド系化合物等が挙げられる。
【0032】
有機硫黄系化合物としては、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン等のジチオール系化合物、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド及び2−ヒドロキシプロピルメタンチオスルホネート等が挙げられる。
【0033】
アルデヒド系化合物としては、o−フタルアルデヒド、α−ブロムシンナムアルデヒド等が挙げられる。
【0034】
好ましくは、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルである。
【0035】
A成分とB成分により得られるカチオン性ベシクルに対するC成分の配合量は、C成分により適宜決定するが、通常、C成分のモル比は〔C/(A+B+C)〕=0.1〜0.7、好ましくは0.1〜0.5である。0.7を超えるとエマルション粒径が大きくなり、安定性が不十分になる場合がある。
【0036】
C成分の溶解に有機系溶媒を用いても良い。例えば、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルカーボネート等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドフラン等のエーテル類、N−メチルピロリドン、2−メチルピロリドン等のピロリドン類、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0037】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物に使用する水は、特に限定されるものではなく、一般の市水、イオン交換水、工業用水などが用いられる。
【0038】
A成分とB成分を〔B/(A+B)〕が0.1を超え、0.33以下になるように、有機溶剤、例えばエタノールに溶解し、撹拌下、均一に混合する。次いで、エタノールを揮発、除去し、この混合物に水を加えて撹拌する。加える水量は、A成分とB成分の混合物濃度が1〜20重量%になるようにする。1日間静置して混合ベシクルを熟成させる。その後、撹拌下、混合ベシクルにC成分の殺微生物剤を〔C/(A+B+C)〕が0.1〜0.7の範囲になるようなC成分量を添加し、15分撹拌してエマルション型殺微生物剤組成物を得る。
【0039】
エマルション型殺微生物剤組成物のpHは、配合するA成分、B成分、C成分により異なるため、適宜決定されれば良い。また、pHの調整には、通常、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
【0040】
本発明のエマルション型殺微生物組成物の水系への添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば通常の薬品注入ポンプを用いて、連続的あるいは間欠的に添加される。通常は、微生物生存数を適宜測定し、スライム傷害が起きないように微生物数を設定された基準数以下に保つように添加する。
【0041】
また、本発明のエマルション型殺微生物組成物の添加箇所は、障害が発生している箇所あるいは工程を考慮して適宜選択、決定されるものであり、通常、障害が発生している箇所あるいは工程に直接、添加するか、その上流に添加される。また、紙パルプ産業でのパルプの防腐防カビには、直接、噴霧しても良い。
【0042】
本発明の殺微生物剤組成物の添加量は、水質、温度など該水系の工程条件、生存微生物の種類、微生物数、スライムの発生の程度、添加頻度などによって大きく異なるので一律に定められるものではないが、通常、対象とする処理水系に対して、C成分として0.1〜1,000mg/L、好ましくは1〜500mg/L、さらに好ましくは5〜300mg/L添加される。添加量が0.1mg/Lより少ないと本発明の効果が得られない場合があり、また、1,000mg/Lより多いと、効果は充分にあるが、添加量の割には効果の向上が小さく、経済的にみて不利になることがある。
【0043】
本発明の防腐防カビ剤はpHの影響が少なく広いpH範囲で適用が可能である。本発明を実施する対象系中のpHは、4〜11、好ましくは6〜9である。
【0044】
本発明の効果を妨害しない範囲において、他の殺微生物剤を併用したり、あるいは消泡剤、スケールコントロール剤等その他工程添加剤と共に使用したりすることがあるが、本発明はこれら薬品の添加については何ら制限するものではない。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0046】
〔A成分〕
A−1:ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1378)[日光ケミカルズ(株)製]
A−2:ポリオキシエチレン(6モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1202)[日光ケミカルズ(株)製]
A−3:ポリオキシエチレン(15モル付加)硬化ヒマシ油(平均分子量1598)[日光ケミカルズ(株)製]
【0047】
〔B成分〕
B−1:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(分子量364.4)[試薬、東京化成工業(株)製]
B−2:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(分子量263.9)[試薬、東京化成工業(株)製]
【0048】
〔C成分〕
C−1:1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(分子量329.8)
C−2:4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(分子量282)[有効成分濃度25重量%のジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液、ローム&ハース社製]
C−3:2−ベンズイミダゾリンカルバミン酸メチル(分子量191.2)
【0049】
〔その他〕
D−1:ソルビタンモノオレエート「ノニオンOP−80R」[商品名、日本油脂(株)製]
D−2:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート「ノニオンOT−221」[商品名、日本油脂(株)製]
D−3:トリプロピレングリコールメチルエーテル
〔エマルション型殺微生物剤:実施例No.1の調製〕
【0050】
ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(A−1)10.0g(7.3ミリモル)とヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(B−1)0.30g(0.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.1)、エタノール50gを加えて混合し、均一に溶解させた後、2日間減圧乾燥して、エタノールを除去して混合物1を得た。混合物1に水88.45gを加えて2時間、撹拌し、更に20℃にて2日間、20℃の恒温槽に静置した。次いで殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)0.60g(1.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.2)を添加、撹拌し、エマルション型殺微生物剤No.1を得た。
同様に表1記載の組成にて、エマルション型殺微生物剤実施例No.2〜11を調製した。
【0051】
〔エマルション型殺微生物剤:比較例No.1〜5の調製〕
ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油(A−1)10.0g(7.3ミリモル)、水88.45gを加えて2時間、撹拌し、更に20℃にて2日間、20℃の恒温槽に静置した。次いで殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)0.60g(1.8ミリモル)(A−1に対するモル分率は0.2)を添加、撹拌し、エマルション型殺微生物剤比較例No.1を得た。同様に表1記載の組成にて、エマルション型殺微生物剤比較例No.2〜5を調製した。
【0052】
〔殺微生物剤:比較例7〕
ソルビタンモノオレエート(D−1)4g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(D−2)6g、トリプロピレングリコールメチルエーテル(D−3)80g、殺微生物剤1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン(C−1)10gを混合、撹拌し、殺微生物剤No.7を得た。
【0053】
〔殺微生物剤:比較例8〕
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(B−1)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(有効成分濃度25重量%のジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液:C−2)10gを水に撹拌下、添加し、可溶化して殺微生物剤比較例No.8を調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
[ウェットパルプの防かび試験]
製紙会社の漂白クラフトパルプ(BKP)製造時のウエットパルプシートに発生したカビを採取して、ウェットパルプシートに発生していたカビ(Aspergillus属、Penicillium属)をPDA寒天培地で7日間、28℃で培養し、その胞子をポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートの0.05%水溶液に分散させて、それぞれのカビの胞子懸濁液を調製した。これらの胞子懸濁液の胞子数が1×104個/mlになるように希釈、調製し、それぞれの胞子懸濁液を等量混合して、試験用混合胞子懸濁液を調製した。
【0056】
製造直後の製紙会社の漂白クラフトパルプ(BKP)を採取し、四日市市水にて2.5重量%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを200mL(絶乾パルプ量5g)取り、表1記載のエマルション型殺微生物剤組成物を(B)成分の有効分(殺微生物成分)として200mg/絶乾パルプ−gとなるように添加し、1分間、混合、撹拌した。40メッシュ金網を張ったブフナーロート(直径11cm)で該パルプスラリーを吸引ろ過し、得られたパルプシートをプレス圧3.5kg/cm2で5分間、プレス脱水を行ない、パルプ濃度約70%、シート厚さ5mmのウェットパルプシートを作成した。これを5×5cmに切り取り試験片とし、寒天培地〔組成はJISZ−2911に準拠し、蒸留水1Lに硝酸アンモニウム3g、リン酸2水素カリウム1g、硫酸マグネシウム・7水塩0.5g、塩化カリウム0.25g、硫酸鉄・7水塩0.002g、寒天25gを混合しpHを4.5〜5.5に調整し、オートクレーブで125℃×15分間滅菌した寒天培地を用いた。〕上の中央に置き、カビの混合胞子懸濁液を1mlふりかけて、滅菌シャーレで蓋をして、28℃、湿度95〜99%の恒温器で培養した。その後、ウェットパルプシート上のカビの生育状況を目視観察し、エマルション型殺微生物剤組成物の効果を以下のように評価し、カビが発生するまでの所要日数を測定した。
結果を表2に示す。表2中、−、+、++は以下のことを表す。
− :試験片上にカビの発生が認められず、良好。
+ :試験片上の全面積の1/3以下にカビの発生が認められる。
++:試験片上の全面積の1/3以上にカビの発生が認められる。
【0057】
【表2】
【0058】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物の防カビ効果は、従来の活性剤型エマルション殺微生物剤や分散型エマルション殺微生物剤のいずれにおいてもウェットパルプシートの防カビ効果の向上を示している。
【0059】
【発明の効果】
本発明のエマルション型殺微生物剤組成物を用いることにより、紙・パルプ製造業におけるウェットパルプの防腐防カビの性能向上だけで無く、パルプへの吸着剤性向上により、工程水系・白水系の殺微生物効果が高まり、優れた殺微生物効果を発揮し、製品品質低下を防止することができる。また、一般水系においても、スライム等の付着物が通常、負電荷を有するため、これに吸着することにより、殺微生物剤をより有効に作用させることが期待され、処理コストの低減に大きく寄与する。
Claims (6)
- 前記カチオン性ベシクルは、前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の濃度が5〜20重量%であり、前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の平均付加モル数が10モルである請求項1記載のエマルション型殺微生物剤組成物。
- 前記(B)成分のカチオン性界面活性剤は、前記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4のいずれかが炭素数12〜20の炭化水素基であり、他がそれぞれ独立に炭素数1〜3の炭化水素基であり、nが1、X−が塩化物イオン又は臭化物イオンである請求項1又は2記載のエマルション型殺微生物剤組成物。
- 前記一般式(2)で表されるカチオン性界面活性剤は、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミドからなる群から選ばれた1種以上である請求項1乃至3のいずれかに記載のエマルション型殺微生物剤組成物。
- モル分率:〔B/(A+B)〕が0.1〜0.33である請求項1乃至4のいずれかに記載のエマルション型殺微生物剤組成物。
- 前記殺微生物剤は、1,2−ビス−(ブロモアセトキシ)−エタン、1,4−ビス−(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロオロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルから選ばれた1種以上である請求項1乃至5のいずれかに記載のエマルション型殺微生物剤組成物。
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