JP4135253B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空調ユニットの空気下流端に設けられた吹出口から吹き出される空調風の揺動範囲、吹出範囲、吹出位置、吹出方向、吹出角度、吹出領域、吹出風速、吹出風量または配風量のうちいずれか1つ以上の吹出状態を変更する吹出状態可変装置を備えた車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、実公平7−54010号公報においては、揺動装置によってスインググリル内の可変ルーバーに揺動運動を与えるようにして、吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を変更するスイングルーバー装置を備えた車両用空調装置が提案されている。そして、スインググリルの前面には、可変ルーバーのスイングを一時停止させる時間(スイング停止時間)を所望の時間に設定する停止時間選択スイッチが設けられている。それによって、スイングルーバー装置では、スイング停止時間を乗員が停止時間選択スイッチにて設定することにより、所望のスイング状態を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のスイングルーバー装置においては、日射量のように頻繁に変化する空調負荷に対し、乗員がその都度、停止時間選択スイッチを手動操作することによってスイング停止時間を変更することは非常に煩雑であった。すなわち、日射量が弱い時は、スイング停止時間が短くなるように変更し、日射量の強い時はスイング停止時間が長くなるように変更することは非常に煩雑であった。
【0004】
それに加え、車室内温度のように空調が進むにつれてゆっくり変化する空調負荷に対し、快適なスイング状態を得るための手動操作は更に複雑になる。すなわち、車室内温度が高い時にはスイング停止時間は長めに設定し、車室内温度が低い時にはスイング停止時間は短めに設定する必要があり、快適なスイング状態を得るための手動操作は更に複雑になる。
【0005】
【発明の目的】
本発明の目的は、日射量のように頻繁に変化する空調負荷に対しても、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷に対しても、各空調負荷に応じた時間を自動的に設定することにより、常に快適な空調風の吹出状態を得ることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の場合、すなわち、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じていることが推定される場合には、所定時間、吹出状態可変手段の揺動を例えば前席乗員方向で停止またはゆっくり揺動するようにアクチュエータが制御される。
それによって、日射量(日射強度)や日射方向のように頻繁に変化する空調負荷に対しても、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷に対しても、例えば前席乗員が複雑で煩わしい手動操作をすることなく、所定時間が経過するまで、冷風または温風等の空調風が吹出口から例えば前席乗員方向に略集中的に吹き出される。したがって、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じることはなく、例えば前席乗員の空調感(冷房感または暖房感)を向上できる。
あるいは空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が大きい程、すなわち、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じていると推定される程、吹出状態可変手段の揺動を例えば前席乗員方向で停止またはゆっくり揺動するようにアクチュエータを制御する時間を長くすることにより、例えば前席乗員が複雑で煩わしい手動操作をすることなく、空調負荷が大きい程長い時間が経過するまで、冷風または温風等の空調風が吹出口から乗員方向に略集中的に吹き出される。したがって、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じることはなく、例えば前席乗員の空調感(冷房感または暖房感)を向上できる。
そして、日射方向に基づいて、吹出状態可変手段の揺動を停止する方向または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する方向を決定すると共に、日射量(日射強度)と車室内温度とから、吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定している。これにより、日射量(日射強度)や日射方向のように頻繁に変化する空調負荷にも、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷にも対応し、常に快適な空調風の吹出状態を得ることができる。
【0008】
請求項3ないし請求項5に記載の発明によれば、空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以下の場合、すなわち、例えば前席乗員が暑くも寒くも感じていないと推定される場合には、空調負荷が所定値以上の時よりも、例えば前席乗員方向から外れる方向で、所定時間、吹出状態可変手段の揺動を停止またはゆっくり揺動するようにアクチュエータが制御される。
それによって、日射量のように頻繁に変化する空調負荷に対しても、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷に対しても、乗員が複雑で煩わしい手動操作をすることなく、吹出口から空調風が例えば前席乗員方向から外れる方向に略集中的に吹き出される。したがって、例えば前席乗員が寒過ぎる、または暑過ぎると感じることはなく、例えば前席乗員の快適感を向上できる。
あるいは空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が小さい程、すなわち、例えば前席乗員が暑くも寒くも感じていないと推定される程、吹出状態可変手段の揺動を前席乗員方向から外れる方向または後席乗員方向で、停止またはゆっくり揺動する時間を長くする、あるいはゆっくり揺動する範囲を広くするようにアクチュエータが制御される。
それによって、乗員が複雑で煩わしい手動操作をすることなく、吹出口から空調風が例えば前席乗員方向から外れる後席乗員方向に略集中的に吹き出される。したがって、例えば前席乗員が寒過ぎる、または暑過ぎると感じることはなく、例えば前席乗員の快適感を向上できる。
そして、日射方向に基づいて、吹出状態可変手段の揺動を停止する方向または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する方向を決定すると共に、日射量(日射強度)と車室内温度とから、吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定している。これにより、日射量(日射強度)や日射方向のように頻繁に変化する空調負荷にも、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷にも対応し、常に快適な空調風の吹出状態を得ることができる。
【0009】
請求項6ないし請求項8に記載の発明によれば、空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の場合、すなわち、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じていることが推定される場合には、所定時間、吹出状態可変手段の揺動を例えば乗員方向で停止またはゆっくり揺動するようにアクチュエータが制御される。
それによって、日射量(日射強度)のように頻繁に変化する空調負荷に対しても、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷に対しても、例えば前席乗員が複雑で煩わしい手動操作をすることなく、所定時間が経過するまで、冷風または温風等の空調風が吹出口から例えば前席乗員方向に略集中的に吹き出される。したがって、例えば前席乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じることはなく、例えば前席乗員の空調感(冷房感または暖房感)を向上できる。
【0010】
請求項6に記載の発明によれば、日射量(日射強度)のように頻繁に変化する空調負荷にも、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷にも対応するように、日射量(日射強度)を用いてブロワ風量を決定し、更に、ブロワ風量と車室内温度とから、吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定する。
請求項7に記載の発明によれば、日射量(日射強度)のように頻繁に変化する空調負荷にも、車室内温度のようにゆっくり変化する空調負荷にも対応するように、日射量(日射強度)を用いてブロワ風量を決定し、更に、ブロワ風量と車室内温度と設定温度との温度偏差とから、吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定する。
請求項8に記載の発明によれば、日射量(日射強度)のように頻繁に変化する空調負荷にも、車室内温度や外気温のようにゆっくり変化する空調負荷にも対応するように、日射量(日射強度)を用いてブロワ風量を決定し、更に、ブロワ風量と外気温とから、吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定する。
【0011】
請求項9に記載の発明によれば、日射方向が車両の進行方向に対して左横からの場合には、乗員の左半身に日射が当たることになるので、センタールーバーおよびサイドルーバーの向きを乗員の左半身付近として、乗員の日射が当たると推測される部位(乗員の左半身付近)に空調風が集中するように、停止またはゆっくり揺動させる。
また、日射方向が車両の進行方向に対して左斜め前方からの場合には、乗員の左斜めに日射が当たることになるので、サイドルーバーのみの向きを乗員の左半身付近とし、停止またはゆっくり揺動させる。
そして、日射方向が車両の進行方向に対して真正面または真後ろの場合には、センタールーバーおよびサイドルーバーの向きを乗員の頭胸部付近とし、停止またはゆっくり揺動させる。
【0012】
請求項10に記載の発明によれば、複数の吹出口から複数の空調ゾーンに向けて吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更する複数の吹出状態可変手段の揺動時に、最も隣接する空調ゾーンに近づくタイミングをほぼ同じにするようにアクチュエータが制御される。それによって、最も隣接する空調ゾーンに吹き出す空調風を、自分側の空調ゾーンの空調風でエアカーテンを作り、カットすることで、最も隣接する空調ゾーン間の独立コントロール性を維持できる。
【0013】
請求項11に記載の発明によれば、複数の吹出口から複数の空調ゾーンに向けて吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更する複数の吹出状態可変手段の揺動時に、最も近傍の乗員に近づくタイミングをほぼ同じにするか、あるいは最も近傍の乗員から離れるタイミングをほぼ同じにするようにアクチュエータが制御される。それによって、最も近傍の乗員との境目から自分側の吹出口から吹き出す空調風が最も離れている時に、最も近傍の乗員側の吹出口から吹き出す空調風も自分との境目から最も離すようにすることで、独立コントロール性を維持できる。
【0014】
請求項12ないし請求項14に記載の発明によれば、複数の吹出状態可変手段の揺動中に、例えば前席乗員方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または前席乗員集中吹出時間と、例えば後席乗員方向から外れる方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または車室内拡散吹出時間との合計(トータル)を、異なる空調ゾーンでほぼ等しくするようにアクチュエータが制御される。
それによって、異なる空調ゾーン間、例えば前部座席側の空調ゾーンと後部座席側の空調ゾーンとの間で空調負荷が同じになった時に、複数の吹出状態可変手段の作動が揃い、見栄えを向上できる。
【0015】
請求項15ないし請求項17に記載の発明によれば、空調負荷が非常に高い時に、偏日射補正を行い、日射無し側の乗員に空調風をあまり当てないようにすると、日射無し側の乗員が非常に暑く感じてしまう。したがって、空調負荷が非常に高い場合には、異なる空調ゾーン間の空調負荷の差に拘らず、複数の吹出状態可変手段の制御、つまり複数の吹出状態可変手段の揺動を乗員方向で停止またはゆっくり揺動することで、複数の空調ゾーンを早く快適な空調状態にすることができる。
【0018】
請求項18に記載の発明によれば、少なくとも1つ以上の空調ゾーンで互いに独立に行うことにより、各乗員毎に独立に吹出状態可変手段の揺動状態を制御することで、吹出状態可変手段の制御の効果を向上できる。
請求項19に記載の発明によれば、少なくとも1つ以上の吹出状態変更手段で互いに独立に行うことにより、各乗員の部位毎に独立に吹出状態可変手段の揺動状態を制御することで、吹出状態可変手段の制御の効果を向上できる。
【0019】
請求項20に記載の発明によれば、日射情報検出手段の感度には指向性があり、夏の高仰角日射の時に最適な感度特性にすると、冬の低仰角日射の時の検出日射量が少なくなり、それに伴い吹出状態可変手段の作動状態を最適な状態に制御し難くなるので、日射情報検出手段にて検出された検出日射量を、外気温検出手段にて検出された車室外の空気温度(外気温)に応じて補正し、その補正した日射量に応じて吹出状態可変手段の作動状態を変更することで、吹出状態可変手段の作動状態を最適な状態に制御できる。したがって、乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じることはなく、乗員の空調感(冷房感または暖房感)を向上できる。なお、外気温検出手段としては、外気温をそのままダイレクトに検出するセンサを用いても良いし、エンジン始動時のエンジンの冷却水温、空調初期または送風開始時の吹出温度、空調初期または送風開始時の車室内の空気温度(車室内温度)、空調初期または送風開始時のエバ後温度等を検出するセンサを用いて、外気温を間接的に推定しても良い。
【0020】
請求項21に記載の発明によれば、日射量検出手段にて検出された検出日射量を、外気温検出手段にて検出された車室外の空気温度(外気温)に応じて補正し、その補正した日射量に応じて送風量(ブロワ風量)、目標吹出温度、吹出風量、吹出温度、吹出口モードまたは吹出状態を変更することで、送風量、目標吹出温度、吹出風量、吹出温度、吹出口モードまたは吹出状態を最適な状態に制御できる。したがって、乗員が暑過ぎる、または寒過ぎると感じることはなく、乗員の空調感(冷房感または暖房感)を向上できる。なお、外気温検出手段としては、外気温をそのままダイレクトに検出するセンサを用いても良いし、エンジン始動時のエンジンの冷却水温、空調初期または送風開始時の吹出温度、空調初期または送風開始時の車室内の空気温度(車室内温度)、空調初期または送風開始時のエバ後温度等を検出するセンサを用いて、外気温を間接的に推定しても良い。
【0021】
請求項22に記載の発明によれば、外気温検出手段にて検出された車室外の空気温度(外気温)が所定温度以下の場合、すなわち、太陽仰角が低いと推定された場合には、日射情報検出手段または日射量検出手段にて検出された検出日射量が大きくなる方向に補正することで、少ない検出日射量でも乗員の空調感を向上できる。
請求項23に記載の発明によれば、外気温検出手段にて検出された車室外の空気温度(外気温)が低い程、すなわち、太陽仰角が低い程、日射情報検出手段または日射量検出手段にて検出された検出日射量が大きくなる方向に補正することで、少ない検出日射量でも乗員の空調感を向上できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態の構成〕
図1ないし図44は本発明の第1実施形態を示したもので、図1は車両用空調装置の全体構成を示した図で、図2は車両のインストルメントパネルを示した図で、図3はエアコン操作パネルを示した図である。
【0023】
本実施形態の車両用空調装置は、エンジンを搭載する自動車等の車両の車室内を空調する空調ユニット1における各空調手段(アクチュエータ)を、空調制御装置(以下エアコンECUと言う)50によって制御するように構成されている。その空調ユニット1は、車両の車室内の運転席側(右側前席の乗員方向から左側後席の乗員方向までの)空調ゾーンと車両の車室内の助手席側(左側前席の乗員方向から右側後席の乗員方向までの)空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うことが可能なエアコンユニットである。
【0024】
空調ユニット1は、車両の車室内の前方に配置された空調ダクト2を備えている。この空調ダクト2の上流側には、内外気切替ドア3およびブロワ4とが設けられている。内外気切替ドア3は、サーボモータ5等のアクチュエータにより駆動されて内気吸込口6と外気吸込口7との開度(所謂吸込口モード)を変更する吸込口切替手段である。ブロワ4は、ブロワ駆動回路8により制御されるブロワモータ9により回転駆動されて空調ダクト2内において車室内に向かう空気流を発生させる送風機である。
【0025】
空調ダクト2の中央部には、空調ダクト2内を通過する空気を冷却する冷凍サイクルのエバポレータ(冷却用熱交換器)10が設けられている。また、そのエバポレータ10の下流側には、第1、第2空気通路11、12を通過する空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)13が設けられている。
【0026】
なお、第1空気通路11および第2空気通路12は仕切り板14により区画されている。そのヒータコア13の下流側には、車室内の運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うための運転席側、助手席側エアミックス(A/M)ドア15、16が設けられている。そして、運転席側、助手席側A/Mドア15、16は、サーボモータ17、18等のアクチュエータにより駆動されて、運転席側、助手席側に向けて吹き出す空気の吹出温度を調節する。
【0027】
第1空気通路11の空気下流端では、図1ないし図3に示したように、デフロスタ(DEF)吹出口20、運転席側センターフェイス(FACE)吹出口21、運転席側サイドフェイス(FACE)吹出口22および運転席側フット(FOOT)吹出口23が開口している。
【0028】
第2空気通路12の下流側では、助手席側センターフェイス(FACE)吹出口31、助手席側サイドフェイス(FACE)吹出口32および助手席側フット(FOOT)吹出口33が開口している。そして、第1、第2空気通路11、12内には、車室内の運転席側と助手席側との吹出口モードの設定を互いに独立して行うための運転席側、助手席側吹出口切替ドア24〜26、35、36が設けられている。
【0029】
そして、運転席側、助手席側吹出口切替ドア24〜26、35、36は、サーボモータ28、29、39等のアクチュエータにより駆動されて運転席側、助手席側の吹出口モードをそれぞれ切り替えるモード切替ドアである。ここで、運転席側、助手席側の吹出口モードとしては、FACEモード、B/Lモード、FOOTモード、F/Dモード、DEFモード等がある。
【0030】
そして、内部に、運転席側、助手席側センターFACE吹出口21、31および運転席側、助手席側サイドFACE吹出口22、32を形成する運転席側、助手席側センタースインググリルおよび運転席側、助手席側サイドスインググリルには、インストルメントパネル(格納部材)40に吹出状態可変装置がそれぞれ取り付けられている。なお、運転席側サイドFACE吹出口22および助手席側サイドFACE吹出口32を車両の前側ドアまたは側面ボディのインナパネルにそれぞれ取り付けていても良い。
【0031】
次に、運転席側、助手席側センタースインググリルおよび運転席側、助手席側サイドスインググリルに設置される吹出状態可変装置を図4および図5に基づいて簡単に説明する。ここで、図4は吹出状態可変装置の全体構成を示した図である。
【0032】
吹出状態可変装置は、運転席側、助手席側センタースインググリルおよび運転席側、助手席側サイドスインググリル内にそれぞれ設けられている。なお、これらの各スインググリル内の空気通路は、上記の運転席側、助手席側センターFACE吹出口21、31および運転席側、助手席側サイドFACE吹出口22、32として利用される。そして、各スインググリルの吹出状態可変装置は、ルーバー左右方向揺動機構およびルーバー上下方向揺動機構をそれぞれ有している。
【0033】
ルーバー左右方向揺動機構は、図5(a)に示したように、複数枚の風向可変ルーバー41に支点を中心にして揺動運動を与えるリンクレバー42と、アームプレート43を介してリンクレバー42を水平方向に往復運動させるステッピングモータ44とから構成されている。これらの風向可変ルーバー41は、各スインググリル内において車両の進行方向に対して左右方向(車両の幅方向)に複数列設されたスイングルーバーで、以下各センターグリルに設置された複数枚の風向可変ルーバーをセンタールーバーと言い、各サイドグリルに設置された複数枚の風向可変ルーバーをサイドルーバーと言う。
【0034】
ルーバー上下方向揺動機構は、図5(b)に示したように、複数枚の風向可変ルーバー45に支点を中心にして揺動運動を与えるリンクレバー46と、アームプレート47を介してリンクレバー46を上下方向に往復運動させるステッピングモータ48とから構成されている。これらの風向可変ルーバー45は、各スインググリル内において車両の進行方向に対して上下方向(車両の高さ方向)に複数列設された複数枚のスイングルーバーで、以下各センターグリルに設置された複数枚の風向可変ルーバーをセンタールーバーと言い、各サイドグリルに設置された複数枚の風向可変ルーバーをサイドルーバーと言う。
【0035】
ここで、上記の各風向可変ルーバーである運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、ステッピングモータ44、48を回転させることで、運転席側、助手席側空調ゾーン内に吹き出す空調風(冷風または温風)を所定の揺動範囲(スイング範囲)にて揺動(スイング)させる揺動範囲可変手段として働くと共に、ステッピングモータ44、48を所定の回転角度で止めることで、運転席側、助手席側前席乗員方向または運転席側、助手席側前席乗員外し方向または助手席側、運転席側後席乗員方向に固定する吹出方向可変手段または吹出位置可変手段として働く。
【0036】
なお、ステッピングモータ44、48の出力軸とリンクレバー42、46またはアームプレート43、47との間には、センター、サイドルーバー41、45が乗員により直接手動操作された場合に大きな荷重がステッピングモータ44、48に加わらないように、リンクレバー42、46またはアームプレート43、47からステッピングモータ44、48の出力軸に伝達される乗員の操作力を遮断するクラッチ等の滑り手段が設けられている。
【0037】
そして、ステッピングモータ44、48は、本発明のアクチュエータに相当するもので、1パルス当たりの作動角が決まっており、センター、サイドルーバー41、45を所定の吹出方向に向ける、あるいは所定のスイング範囲でスイングさせる場合には、下記の数1の式で求めたパルスをエアコンECU50から出力することで駆動される。
【0038】
【数1】
必要パルス数=(必要作動角)/(1パルス当たりの作動角)
【0039】
エアコンECU50は、本発明の吹出状態制御手段に相当するもので、内部にCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータが設けられている。そして、エアコンECU50には、図1および図3に示したように、エアコン操作パネル51、運転席側ルーバー操作(SWINGSW)パネル52および助手席側ルーバー操作(SWINGSW)パネル53から各スイッチ信号が入力される。
【0040】
エアコン操作パネル51は、車室内前面の車幅方向の中央部のインストルメントパネル40に一体的に設置されている。このエアコン操作パネル51には、エアコン(A/C)スイッチ54、吸込口モード切替スイッチ55、フロントデフロスタスイッチ56、リヤデフロスタスイッチ57、DUALスイッチ58、吹出口モード切替スイッチ59、ブロワ風量切替スイッチ60、オートスイッチ61、オフスイッチ62、液晶表示装置(ディスプレイ)63、運転席側温度設定スイッチ64および助手席側温度設定スイッチ65等が設置されている。なお、各種の操作スイッチは、ディスプレイ63上に設けられていても良い。
【0041】
上記のうちのDUALスイッチ58は、運転席側空調ゾーン内の温度調節と助手席側空調ゾーン内の温度調節とを互いに独立して行う左右独立温度コントロールを指令する左右独立制御指令手段である。そして、運転席側温度設定スイッチ64は、運転席側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するための運転席側温度設定手段である。また、助手席側温度設定スイッチ65は、助手席側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するための助手席側温度設定手段である。
【0042】
運転席側ルーバー操作パネル52は、インストルメントパネル40の中央部においてエアコン操作パネル51の右隣に設置され、運転席側センター、サイドルーバー41、45の両方をスイング可能にするMATCHスイッチ66、運転席側センタールーバー41、45をスイング可能にするCENTERスイッチ67、運転席側サイドルーバー41、45をスイング可能にするSIDEスイッチ68およびスイングモード切替スイッチ69とから構成されている。なお、各スイッチは、ディスプレイ63上に設けられていても良い。
【0043】
上記のうちMATCHスイッチ66、CENTERスイッチ67、SIDEスイッチ68は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。スイングモード切替スイッチ69は、「STOP(スイング停止)」、「AUTO(オートスイング)」、「Rr」、「U−DSWING(上下方向スイング)」、「R−LSWING(左右方向スイング)」の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
【0044】
なお、スイングモード切替スイッチ69は、「AUTO」に設定されると、運転席側センター、サイドルーバー41、45をオートルーバー制御を行うように指令を出力する。そして、スイングモード切替スイッチ69は、「Rr」に設定されると、前部座席側空調ゾーンよりも後部座席側空調ゾーンの方が風量配分が多くなるように運転席側センター、サイドルーバー41、45をスイングさせる。例えば運転席側センター、サイドルーバー41、45のスイング速度を、運転席側前席の乗員に当たるように空調風が吹き出すゾーンでは速く、運転席側前席の乗員に当たらない(助手席側後席の乗員に当たる)ように空調風が吹き出すゾーンでは遅くする。
【0045】
また、スイングモード切替スイッチ69は、「U−DSWING」に設定されると、運転席側センター、サイドルーバー45を所定のスイング範囲で上下方向(U−D方向)にスイングさせる(マニュアルルーバー制御)ように指令を出力する。さらに、スイングモード切替スイッチ69は、「R−LSWING」に設定されると、運転席側センター、サイドルーバー41を所定のスイング範囲で左右方向(R−L方向)にスイングさせる(マニュアルルーバー制御)ように指令を出力する。
【0046】
助手席側ルーバー操作パネル53は、運転席側ルーバー操作パネル52と同様にして、助手席側センター、サイドルーバー41、45の両方をスイング可能にするMATCHスイッチ70、助手席側センタールーバー41、45をスイング可能にするCENTERスイッチ71、助手席側サイドルーバー41、45をスイング可能にするSIDEスイッチ72およびスイングモード切替スイッチ73とから構成されている。なお、各スイッチは、ディスプレイ63上に設けられていても良い。
【0047】
上記のうちMATCHスイッチ70、CENTERスイッチ71、SIDEスイッチ72は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。スイングモード切替スイッチ73は、STOP(スイング停止)、AUTO(オートスイング)、Rr、U−DSWING(上下方向スイング)、R−LSWING(左右方向スイング)の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
【0048】
なお、スイングモード切替スイッチ73は、スイングモード切替スイッチ69と同様にして、「AUTO」に設定されると、助手席側センター、サイドルーバー41、45をオートルーバー制御を行うように指令を出力する。そして、スイングモード切替スイッチ73は、「Rr」に設定されると、前部座席側空調ゾーンよりも後部座席側空調ゾーンの方が風量配分が多くなるようにセンター、サイドルーバー41、45をスイングさせる。例えば助手席側センター、サイドルーバー41、45のスイング速度を、助手席側前席の乗員に当たるように空調風が吹き出すゾーンでは速く、助手席側前席の乗員に当たらない(運転席側後席の乗員に当たる)ように空調風が吹き出すゾーンでは遅くする。
【0049】
また、スイングモード切替スイッチ73は、「U−DSWING」に設定されると、助手席側センター、サイドルーバー45を所定のスイング範囲で上下方向(U−D方向)にスイングさせる(マニュアルルーバー制御)ように指令を出力する。さらに、スイングモード切替スイッチ73は、「R−LSWING」に設定されると、助手席側センター、サイドルーバー41を所定のスイング範囲で左右方向(R−L方向)にスイングさせる(マニュアルルーバー制御)ように指令を出力する。なお、スイングモード切替スイッチ69、73を、「AUTOモード」と「OFF」とを切り替える1つの切替スイッチに代えても良い。
【0050】
ここで、図3に示したように、運転席側、助手席側センタースインググリル間には、運転席側、助手席側センターFACE吹出口21、31を開閉するシャッタ(図示せず)を手動操作するためのドア開閉スイッチ74が設けられている。また、運転席側、助手席側センタースインググリルおよび運転席側、助手席側サイドスインググリルには、各センター、サイドルーバー41、45のルーバー方向を手動操作により左右方向、上下方向に動かすためのノブ75、76が設けられている。
【0051】
さらに、エアコンECU50は、各センサからのセンサ信号が図示しない入力回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。すなわち、エアコンECU50には、車室内の空気温度(内気温、以下車室内温度と言う)を検出する内気温検出手段としての内気温センサ91、車室外の空気温度(以下外気温と言う)を検出する外気温検出手段としての外気温センサ92、および運転席側、助手席側空調ゾーン内に照射される日射量を検出する日射検出手段としての日射センサ93が接続されている。
【0052】
また、運転席側、助手席側空調ゾーン内に吹き出す空調風の吹出温度を検出する運転席側、助手席側吹出温度センサ94a、94b、エバポレータ10を通過した直後の空気温度(以下エバ後温度と言う)を検出するエバ後温度検出手段としてのエバ後温度センサ95、および車両のエンジンの冷却水温を検出する冷却水温検出手段としての冷却水温センサ96が接続されている。これらのうち日射センサ93は、本発明の空調負荷検出手段、日射情報検出手段に相当するもので、車室内の最前方側のフロントウインド近傍のインストルメントパネル40上に設置されている。
【0053】
なお、日射センサ93は、運転席側空調ゾーン内に照射される日射量(日射強度)を検知し、その日射強度に対応した出力信号TS’(Dr)を発生する運転席側日射強度検知手段(例えばフォトダイオード)と、助手席側空調ゾーン内に照射される日射量(日射強度)を検知し、その日射強度に対応した出力信号TS’(Pa)を発生する助手席側日射強度検知手段(例えばフォトダイオード)とを有している。
【0054】
〔第1実施形態の空調制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU50による空調制御方法を、図1ないし図22に基づいて説明する。ここで、図6はエアコンECU50の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0055】
先ず、イグニッションスイッチがONされてエアコンECU50に直流電源が供給されると、制御プログラム(図6のルーチン)の実行が開始される。このとき、先ず、データ処理用メモリ(RAM)の記憶内容等の初期化を行う(ステップS1)。
【0056】
次に、各種データをデータ処理用メモリに読み込む。すなわち、各スイッチからのスイッチ信号や各センサからのセンサ信号を入力する(空調負荷検出手段、日射情報検出手段:ステップS2)。特には、日射センサ93にて検出した日射強度に対応した出力信号(以下日射センサ信号と言う)TS’(Dr)、TS’(Pa)を入力してデータ処理用メモリに記憶する。
【0057】
次に、上記のステップS2で記憶した日射センサ信号TS’(Dr)、TS’(Pa)に対してT1 (sec)の時定数(遅れ)によって算出される日射強度TS(Dr)、TS(Pa)を決定する。すなわち、日射センサ信号TS’(Dr)、TS’(Pa)および下記の数2の式および数3の式に基づいて、車室内の日射強度TS(Dr)、TS(Pa)および時定数T1 を演算する(ステップS3)。
【0058】
【数2】
【数3】
【0059】
但し、Tは制御周期(例えば1秒間〜4秒間)で、TSn-1(Dr)はTS(Dr)の1周期前の値で、TSn-1(Pa)はTS(Pa)の1周期前の値である。また、T1 はブロワ4のブロワモータ9に印加されるブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)、運転席側、助手席側吹出口切替ドア24〜26、35、36および運転席側、助手席側A/Mドア15、16を制御するのに必要な日射強度TS(Dr)、TS(Pa)に設けられる時定数の値で、例えば30秒間〜120秒間である。
【0060】
次に、上記のような記憶データおよび下記の数4の式および数5の式に基づいて、運転席側の目標吹出温度TAO(Dr)、および助手席側の目標吹出温度TAO(Pa)を演算する(目標吹出温度決定手段:ステップS4)。
【0061】
【数4】
【0062】
【数5】
【0063】
但し、TSET(Dr)、TSET(Pa)は、それぞれ運転席側空調ゾーンの設定温度、助手席側空調ゾーンの設定温度を表し、TR、TAMは、それぞれ車室内温度、外気温を表す。KSET、KR、KAM、KS、Kd(Dr)およびKd(Pa)は、それぞれ温度設定ゲイン、車室内温度ゲイン、外気温ゲイン、日射量ゲイン、運転席側、助手席側空調ゾーンの温度差補正ゲインを表す。
【0064】
なお、Ka(Dr)、Ka(Pa)は、それぞれ外気温TAMが運転席側空調ゾーンおよび助手席側空調ゾーンの各空調温度に及ぼす影響度合を補正するゲインを表し、CD(Dr)、CD(Pa)は上記影響度合に応じた定数、Cは補正定数を表す。ここで、Ka(Dr)、Ka(Pa)、CD(Dr)、CD(Pa)といった値は、車両の形や大きさ、空調ユニット1の各吹出口からの吹出方向等様々なパラメータで変化する。
【0065】
次に、上記のステップS4で求めた運転席側、助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)に基づいてブロワ風量{全風量:ブロワ4に印加するブロワ制御電圧VA}を演算する(ステップS5)。具体的には、上記のブロワ制御電圧VAは、目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)にそれぞれ適合したブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を図7(a)の特性図に基づいて求めると共に、それらのブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を平均化処理することにより得ている。
【0066】
次に、上記のステップS4で求めた運転席側、助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)と、図7(b)の特性図に示した目標吹出温度に対する吹出口モード特性とに基づいて運転席側、助手席側空調ゾーンの各吹出口モードを決定する(ステップS6)。具体的には、吹出口モードの決定においては、上記の目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)が低い温度から高い温度にかけて、FACEモード、B/LモードおよびFOOTモードとなるように決定されている。また、エアコン操作パネル51に設けられた吹出口モード切替スイッチ59を手動操作することにより、FACEモード、B/Lモード、FOOTモードおよびF/Dモードのうちいずれかの吹出口モードに固定される。
【0067】
なお、上記のFACEモードとは、空調風を前席、後席の乗員の上半身(頭胸部)に向けて吹き出す吹出口モードである。また、B/Lモードとは、空調風を前席、後席の乗員の上半身(頭胸部)および足元部に向けて吹き出す吹出口モードである。そして、FOOTモードとは、空調風を前席、後席の乗員の足元部に向けて吹き出す吹出口モードである。さらに、F/Dモードとは、空調風を前席、後席の乗員の足元部および車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出す吹出口モードである。そして、本実施形態では、図示しない操作パネルに設けられたデフロスタスイッチを操作すると、空調風を車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出すDEFモードが設定される。また、いずれの吹出口モードにおいても、運転席側サイドFACE吹出口22および助手席側サイドFACE吹出口32は開口している。
【0068】
次に、運転席側A/Mドア15の目標A/M開度SW(Dr)(%)および助手席側A/Mドア16の目標A/M開度SW(Pa)(%)を演算する(ステップS7)。なお、このような目標A/M開度SW(Dr)および目標A/M開度SW(Pa)の演算は、運転席側、助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)と、エバ後温度センサ95にて検出したエバ後温度(TE)と、冷却水温センサ96にて検出した冷却水温(TW)と、下記の数6の式および数7の式とに基づいて行われる。
【0069】
【数6】
SW(Dr)={TAO(Dr)−TE}×100/(TW−TE)
【数7】
SW(Pa)={TAO(Pa)−TE}×100/(TW−TE)
【0070】
次に、図8のルーチンが起動して、スイングルーバー制御(オートルーバー制御またはマニュアルルーバー制御)を行う。すなわち、オートルーバー制御では、運転席側センター、サイドFACE吹出口21、22から運転席側空調ゾーン内に向けて吹き出す空調風の吹出状態(特に吹出方向、風向)を決定すると共に、助手席側センター、サイドFACE吹出口31、32から助手席側空調ゾーン内に向けて吹き出す空調風の吹出状態(特に吹出方向、風向)を決定する。具体的には、各スインググリルの吹出状態可変装置のセンター、サイドルーバー41、45の揺動範囲(スイング範囲)およびルーバー方向(ルーバー停止位置)を決定する(ステップS8)。
【0071】
次に、決定されたブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)となるようにブロワ駆動回路8に出力信号を送る。また、決定された吹出口モードとなるようにサーボモータ28、29、39を通電制御する。さらに、決定された目標A/M開度SW(Dr)、SW(Pa)となるようにサーボモータ17、18を通電制御する。そして、決定された乗員方向を中心とするスイング範囲またはルーバー一時停止位置(ルーバー一時停止方向)となるようにステッピングモータ44、48に制御信号を送る(吹出状態制御手段:ステップS9)。
次に、ステップS10で所定の制御周期時間(T:例えば0.1秒間〜4.0秒間)が経過した後に、ステップS2の処理に戻る。
【0072】
次に、エアコンECU50によるスイングルーバー制御を図8ないし図12に基づいて説明する。ここで、図8はエアコンECU50によるスイングルーバー制御を示したフローチャートである。
【0073】
先ず、図8のルーチンが起動すると、運転席側、助手席側ルーバー操作パネル52、53に設けられたスイングモード切替スイッチ69、73のいずれかが「AUTO」に設定されているか否かを判定する(ステップS12)。この判定結果がNOの場合には、スイングモード切替スイッチ69、73の設定位置に応じたマニュアルルーバー制御を行う(ステップS13)。その後に、図8のルーチンを抜ける。
【0074】
また、ステップS12の判定結果がYESの場合には、以下のオートルーバー制御を行う。最初に、吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードであるか否かを判定する(ステップS14)。この判定結果がNOの場合には、サイドウインドの防曇および冷熱輻射のカットを行うために、運転席側、助手席側サイドルーバー41、45を近傍のサイドウインドへ向けるようにルーバー停止位置(ルーバー停止方向)を決定する(ステップS15)。その後に、図8のルーチンを抜ける。
【0075】
また、ステップS14の判定結果がYESの場合には、クールダウン判定を行う。例えば下記の数8の式および数9の式のように、車室内温度TRと設定温度TSET(Dr)、TSET(Pa)の差が判定値(所定値:例えば5度)以上であるか否かを判定する。あるいは車室内温度TRが判定値(所定値:例えば35℃)以上であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0076】
【数8】
5(度)≧{TR−TSET(Dr)}
【数9】
5(度)≧{TR−TSET(Pa)}
【0077】
但し、TRは内気温センサ91にて検出した車室内温度を表し、TSET(Dr)、TSET(Pa)は、それぞれ運転席側空調ゾーンの設定温度、助手席側空調ゾーンの設定温度を表す。なお、上記の判定値は、空調初期または空調風吹出初期の空調負荷が高い程、高い値が設定されることが望ましい。但し、車室内温度(TR)が非常に高い時であっても、長時間前席または後席の乗員への集中吹出が続く場合には、空調風の煩わしさを軽減するためにスイングさせるようにしても良い。
【0078】
このステップS16の判定結果がYESの場合には、車室内温度TRと設定温度TSET(Dr)、TSET(Pa)の差が所定値(例えば5度)以上の場合には、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45の原点補正を行う。その後に、図9(a)の説明図に示したように、運転席側、助手席側前席の乗員のシートポジションに従って、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のルーバー方向が前席乗員方向に向くようにステッピングモータ44、48へ制御出力を出すように目標値が決定される(ステップS17)。その後に、図8のルーチンを抜ける。このクールダウン判定による原点補正は、イグニッションスイッチをONした後に1回のみ行われるようにすることが望ましい。
【0079】
ここで、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45の原点補正は、図9(a)に示したルーバー原点補正方向のスイング端につき当たるようにステッピングモータ44、48に制御出力を送り、そのルーバー位置を原点とし、運転席側、助手席側前席の乗員のシートポジションが前の時は若干のパルスをステッピングモータ44、48に送り、運転席側、助手席側前席の乗員のシートポジションが後の時は多くのパルスをステッピングモータ44、48に送ることで、運転席側、助手席側前席の乗員方向に運転席側、助手席側センタールーバー41、45のルーバー方向(空調風の吹出方向)および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のルーバー方向(空調風の吹出方向)が向くように目標値を決定する。
【0080】
また、図9(a)に示したルーバー原点補正方向のスイング端につき当てて原点補正を行うのは、本実施形態の吹出状態可変装置が、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45の現在位置(現在のルーバー方向)を検出する吹出方向検出手段としてのポテンショメータを持っていないので、運転席側、助手席側前席の乗員によって運転席側、助手席側センタールーバー41、45または運転席側、助手席側サイドルーバー41、45を直接動かして運転席側、助手席側センタールーバー41、45または運転席側、助手席側サイドルーバー41、45の現在位置を変えると、ルーバー方向(吹出方向)を乗員方向に正確に向けることができないからである。また、図9(a)に示したルーバー原点補正方向のスイング端につき当てるのは、この原点補正は10秒間程の時間がかかるため、少しでも運転席側、助手席側前席の乗員に早く空調風(冷風)が供給できるようにするためである。
【0081】
なお、前席(運転席、助手席)近傍にポテンショメータ等の座席前後位置検出手段を設けて、運転席側、助手席側前席の乗員のシートポジションを検出することが考えられるが、運転席側、助手席側前席がスイッチやディスプレイ63上で設定するようにしても良い。また、シートポジションをディーラ(自動車販売者)等が設定することができるようにしても良い。そして、運転席側、助手席側前席の乗員やディーラがシートポジションを設定する方法では、クールダウン時に向けたいルーバー方向を好みで調整できるので、この方法の方が好ましい。
【0082】
また、ステップS16の判定結果がNOの場合には、すなわち、定常状態と判定された場合または車室内温度が所定値未満の場合には、図9(b)の特性図に示したように、運転席側、助手席側前席の乗員のシートポジションに従って、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45をスイングする範囲(基準のスイング範囲)を決定(算出)する(ステップS18)。ここで、図9(b)は、前席シートポジションとスイング範囲との関係を示した特性図である。この図9(b)の特性図においては、各前席乗員側スイング端がシートポジションによって変化し、その結果、スイング範囲が変化することを示している。なお、図9(b)の特性図は、車両毎に異なるシートレイアウトやFACE吹出口の位置関係や開口度合などによって補正されることは言うまでもない。また、上記乗員の好みで、その乗員が空調風をあまり好まない時はスイング範囲を狭くする方向に補正することで対応できる。なお、本実施形態では、運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のスイング範囲は、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング範囲と同じとする。
【0083】
また、運転席側センタールーバー41、45のスイングにより空調が可能な空調範囲(運転席側センターFACE吹出口21からの空調風が直接吹き付ける範囲)は、図10(a)に示したように、運転席側前席の乗員方向α(Dr)から助手席側後席の乗員β(Pa)までの範囲に制限される。また、助手席側センタールーバー41、45のスイングにより空調が可能な空調範囲(助手席側センターFACE吹出口31からの空調風が直接吹き付ける範囲)は、図10(a)に示したように、助手席側前席の乗員方向α(Pa)から運転席側後席の乗員β(Dr)までの範囲に制限される。
【0084】
なお、運転席側前席の乗員方向α(Dr)のスイング端は、運転席側前席シートポジションまたはシート形状、運転席側前席の乗員(ドライバー)の体格差や空調風の好み、姿勢のうちの1つ以上から求める運転席側前席乗員側スイング端を示している。同じように、助手席側前席の乗員方向α(Pa)のスイング端は、助手席側前席シートポジションまたはシート形状、助手席側前席の乗員(パッセンジャー)の体格差や空調風の好み、姿勢のうちの1つ以上から求める助手席側前席乗員側スイング端を示している。
【0085】
運転席側、助手席側センタールーバー41、45の向けたい位置(風向き)が前方になる程、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング範囲が広くなる方向に補正される。逆に、向けたい位置が後方になる程、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング範囲が狭くなる方向に補正される。
本実施形態では、運転席側、助手席側後席の乗員は標準状態であると仮定し、運転席側、助手席側後席乗員側スイング端は固定されている。もちろん、運転席側、助手席側後席乗員側スイング端も、各前席乗員側スイング端と同様にして、後席シートポジションまたはシート形状、各後席の乗員の体格差や空調風の好み、姿勢に応じて補正しても良い。
【0086】
また、本実施形態のスイング範囲は、運転席側前席の乗員または助手席側前席の乗員がセンター、サイドルーバー41、45を直接操作した(直接風向きを変える)場合には、乗員の操作方向側にスイング範囲をシフト(移行)するようにしても良い。また、乗員のマニュアル操作により運転席と助手席との間をスイングさせるモードが選択された場合には、本実施形態のスイング範囲決定制御を解除できるようにしても良い。また、その他、乗員のマニュアル操作に応じて本発明のスイング範囲を解除できるようにすることで、本実施形態のスイング範囲が好みに合わない乗員(ユーザ)においても、スイング制御そのものが使われなくなることを防止できる。
【0087】
また、空調負荷が非常に大きい時など、安全運転のため運転席を優先的に空調する時、あるいは後席は助手席に客を乗せる時に、その座席を優先的に空調する時などは、本実施形態のスイング範囲決定制御を解除できるようにすることで、所定の座席を急速に快適とすることができる。また、偏日射時、日射側の空調能力が足りない時などは、その空調ゾーンを主に空調するFACE吹出口からだけでなく、隣の(異なる)空調ゾーンを主に空調するFACE吹出口からも冷風が来るようにスイングさせる(例えば助手席側センタールーバー41、45の運転席側後席乗員側スイング端を運転席側前席の乗員顔部方向に変更する)ことで、車室内全体の快適感を向上させることができる。
【0088】
さらに、見栄え向上または原点補正のため、空調開始や吹出状態可変手段(運転席側、助手席側センタールーバー41、45)の作動開始時などに、運転席側、助手席側センタールーバー41、45を互いに隣の(他の)空調ゾーン側にスイングさせても良い。また、この見栄え向上または原点補正は、空調開始時や運転席側、助手席側センタールーバー41、45の作動開始時から所定時間後に行っても良く、空調終了時や運転席側、助手席側センタールーバー41、45の作動終了後に行っても良く、所定時間毎に行っても良い。
【0089】
次に、運転席側、助手席側空調ゾーン内の日射方向、日射強度と、図11(a)の特性図とに基づいて、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45の揺動範囲(スイング範囲)を決定(算出)しても良い。なお、図11(a)は運転席側、助手席側の日射方向、日射強度に対するルーバーの揺動範囲特性を示した特性図で、図11(b)は車室内温度に対する基準の補正角度特性を示した特性図である。
【0090】
ここで、センター、サイドルーバー41、45の基準のスイング範囲θ(Dr)、θ(Pa)とは、センター、サイドルーバー41、45のルーバー方向を乗員に向けて、その乗員方向を中心にした(左右方向のルーバー角度×2)のことを言う。また、センター、サイドルーバー41、45の基準のスイング範囲θ(Dr)とは、センター、サイドルーバー41、45のルーバー方向を乗員に向けて、その乗員方向を中心にした(上下方向のルーバー角度×2)のことを言う。
【0091】
また、センター、サイドルーバー41、45のスイング範囲の車室内温度補正を行う。具体的には、運転席側、助手席側のスイング範囲θ(Dr)、θ(Pa)と、図11(b)の特性図と、下記の数10の式および数11の式とに基づいて、基準のスイング範囲θ(Dr)、θ(Pa)を決定(算出)しても良い。
【0092】
【数10】
θ(Dr)=θ(Dr)+α(度)
【数11】
θ(Pa)=θ(Pa)+α(度)
【0093】
また、ブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)に基づいて、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45のスイング高さを決定しても良い。具体的には、図10(b)に示したように、ブロワ制御電圧が4(V)〜5(V)の場合に(A)のスイング高さに設定し、ブロワ制御電圧が6(V)〜8(V)の場合に(B)のスイング高さに設定し、ブロワ制御電圧が9(V)以上の場合に(C)のスイング高さに設定する。この制御は、低風量時でも乗員に風速感を与えるためであるが、行わなくても良い。
【0094】
図6のステップS3で決定した日射量TS(Dr)、TS(Pa)および下記の数12の式に基づいて、車室内に射し込む日射量の左右比(H)を演算(決定)する(日射方向決定手段:ステップS19)。
【0095】
【数12】
H=TS(Dr)/{TS(Dr)+TS(Pa)}
但し、{TS(Dr)+TS(Pa)}≦150W/m2 の場合は、H=0.5とする。
【0096】
次に、運転席側、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間と助手席側、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間とを合計したトータル停止時間(スイング停止時間)を決定する(ステップS20)。本実施形態では、トータル停止時間(スイング停止時間)を予め7秒間に設定している。なお、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のスイング範囲に応じたトータル停止時間(スイング停止時間)を算出(決定)しても良い。
【0097】
次に、日射左右比を用いて、ステップS20で求めたトータル停止時間(スイング停止時間)を、運転席側前席乗員(KFORDR)側スイング端と助手席側後席乗員(KNOTPA)側スイング端とにどれだけ振り分けるか、および助手席側前席乗員(KFORPA)側スイング端と運転席側後席乗員(KNOTDR)側スイング端とにどれだけ振り分けるかを算出(決定)する(ステップS21)。その後に、図8のルーチンを抜ける。
【0098】
これは、各乗員側スイング端の振り分け量の算出には、下記の数13の式〜数16の式および図12の特性図を利用している。なお、日射が当たっていると推測される乗員側スイング端の方が、日射が当たっていないと推測される乗員側スイング端よりも、各乗員側スイング端のスイング停止時間を長く設定して、センタールーバー41、45が長く停止するようにして、日射が当たっていると推測される乗員により多くの冷風を供給するように制御する。
【0099】
【数13】
(FORDR−STOP−TIME)=KFORDR×7(秒)
但し、FORDR−STOP−TIMEは、運転席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間である。
【0100】
【数14】
(NOTDR−STOP−TIME)=KNOTDR×7(秒)
但し、NOTDR−STOP−TIMEは、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間である。
【0101】
【数15】
(FORPA−STOP−TIME)=KFORPA×7(秒)
但し、FORPA−STOP−TIMEは、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間である。
【0102】
【数16】
(NOTPA−STOP−TIME)=KNOTPA×7(秒)
但し、NOTPA−STOP−TIMEは、助手席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間である。
【0103】
また、各運転席側、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間と各助手席側、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間にそれぞれ少なくとも1秒間を加算しても良い。これにより、各助手席側、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間が0秒間とならず、各センター、サイドルーバー41、45の動きにゆったり感がなくなるのを防止できる。
【0104】
ここで、本実施形態では、ステップS20においてトータル停止時間(スイング停止時間)を7秒間に設定しているが、図13(a)および図13(b)に示したように、スイング停止時間にランダム性を持たせたランダム停止時間(T)としても良い。具体的には、本実施形態のランダムスイングにおいて、所定の位置でスイングを停止するスイング停止時間を決定する。本実施形態では、予め定められた作動パターンにて決定されるランダムなスイング停止時間を利用しているが、無論これに限定されるものではない。
【0105】
具体的には、最初の1回のスイングが行われると、先ず1秒間が経過するまで所定の位置でスイングを停止する。次のスイング後も1秒間が経過するまで所定の位置でスイングを停止し、次のスイング後は10秒間が経過するまで所定の位置でスイングを停止するというように16回のスイングを1セットとして行い、再度最初のスイング停止時間に戻る。このようにすることによって、乗員の空調風に対する慣れがなくなり、快適感が低下し難くなる。なお、この場合、空調負荷が高い時のランダム表と空調負荷が低い時のランダム表とを分けても良い。
【0106】
また、空調負荷が高い時には、図14の特性図に示したように、運転席側、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間と各助手席側、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間を合計したトータル停止時間(またはランダム時間に乗算する補正値)を増加させることで、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング範囲において、運転席側、助手席側前席の乗員または助手席側、運転席側後席の乗員に向いている割合を増やし、空調効果を上げることができる。この空調効果の向上は、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング時に、運転席側、助手席側前席乗員側スイング端から助手席側、運転席側後席乗員側スイング端まで空調風の吹出方向(風向き)が動くのに要する時間を短くしても、同様に、運転席側、助手席側前席の乗員または助手席側、運転席側後席の乗員に向いている時間を増やすことができる。
【0107】
ここで、図14の特性図では、ランダム停止時間を補正する場合、あるいはトータル停止時間が固定値の場合、車室内に吹き出す空気の吹出温度、外気温、車室内温度が高い程、ランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。また、乗員方向への吹出風速、車室内温度と設定温度の差、ブロワ電圧が大きい程、ランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。さらに、エバ後温度、皮膚温度、シート温度、ステアリング温度が高い程、ランダム時間またはトータル時間が長くなるように設定される。
【0108】
そして、ブロワ風量、日射量が大きい程、ランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。また、設定温度が低い程、ランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。さらに、車速が速い程、ランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。また、吹出口モードがFACEモードよりもB/Lモードの方がランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定され、B/Lモードよりもフルオープンモード(全ての吹出口を開放するモード)の方がランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。さらに、日射方向が車両後方よりも車両前方の方がランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定され、日射方向が車両前方よりも車両側方の方がランダム停止時間またはトータル停止時間が長くなるように設定される。
【0109】
また、前席はフロントウインドがあるため、日射の影響を受け易いと共に、安全運転のために後席よりも優先的に空調されることが望ましい。このときの前席側停止時間に追加される時間も図14の特性図に示す。但し、後席に客が乗車している時など特別な場合には、図14の特性図に示した前席側停止時間に追加される時間を後席側停止時間に追加される時間としても良い。
【0110】
また、本実施形態では、運転席側、助手席側センタールーバー41、45を前席乗員側スイング端および後席乗員側スイング端でのスイング停止時間(トータル停止時間)を7秒間に設定したり、別途定めたランダム表に定めたランダム停止時間をスイング停止時間としたりしたが、空調負荷が高い時には、スイング停止時間(トータル停止時間)を増加させることで、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング幅に乗員に向いている割合を増やし、空調効果を上げることができる。この空調効果の向上は、運転席側、助手席側センタールーバー41、45のスイング端からスイング端へ風向きが動くのに要する時間を短くしても、同様に、乗員に向いている時間を増やすことができる。
【0111】
以上、運転席側、助手席側センタールーバー41、45の、運転席側、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止時間と助手席側、運転席側後席乗員側スイング端でのスイング停止時間とを合計したトータル停止時間について述べたが、非常にゆっくりスイングする範囲(区間)を設けたり、そのゆっくり度合を変化させたり、ゆっくりスイングする時間を変化させたりしても、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0112】
なお、スイング停止方向または停止位置を日射量等の空調負荷に応じて変更しても良い。その方法を以下に示す。先ず、図15の特性図を用いてスイング位置停止位置を求める方法を説明する。
【0113】
図16に示したように、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45が正面(車両の後方)を向いている状態を、スイング位置停止方向の基準方向(0°)として、最も乗員の頭胸部への配風量が多くなるスイング位置停止方向を40°とする。実際には、スインググリル形状や向き、位置、ルーバーの空調風を曲げる能力、シート位置等によって各ルーバー毎の向きの調整が必要であるが、本実施形態では全てのルーバーのスイング位置停止方向の最大変化角度(幅)は40°の時に最も乗員の頭胸部への配風量が多くなるとして説明する。
【0114】
クールダウンの途中で、車室内温度(TR)が例えば31℃まで下がってくると、空調風を乗員に集中し続けると、局所冷房となり、乗員に不快感を与えてしまうため、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45のスイングを開始する。なお、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45のスイングが一定の状態が長く続くと、乗員の快適感が低下するため、所定の位置でランダムな時間、スイングを停止させるようにしている。なお、ランダムスイングは行わなくてもかまわない。
【0115】
しかし、冷房熱負荷がある程度高い条件で上記のようなランダムスイングを行うと、空調風の吹出方向または吹出位置が乗員を外す方向または位置の時に、数十秒間のスイング停止時間があると、乗員が暑く感じ不快感を与えてしまうため、なるべく乗員の頭胸部(特に顔部)に近い所でスイングを停止するようにする。また、冷房熱負荷が低い条件で上記のランダムスイングを行って、乗員の頭胸部(特に顔部)に近い吹出方向または吹出位置の時には、数十秒間のスイング停止時間があると、乗員が寒く感じ不快感を与えるため、なるべく乗員を外す方向または位置でスイングを停止するようにする。なお、乗員側停止方向は前記40度の位置に固定してもかまわない。
【0116】
なお、乗員の温感は、日射量(日射強度)に強く影響されるため、図15(a)の特性図に示したように、日射量に応じてスイングを一時的に停止する方向に各ルーバー角度(風向角度)を補正するようにする。また、冷房熱負荷として車室内温度(TR)および車室内温度(TR)と設定温度(TSET)の差に応じて、図15(b)の特性図に示したように、各ルーバー角度(風向角度)を補正するようにしても良い。なお、この補正は行わなくても良い。
【0117】
また、図17(a)〜(e)の説明図に示したように、車両の進行方向に対して日射方向を検出できる場合や、ナビゲーションシステムを用いて車両の進行方向に対する日射方向を推定できる場合には、日射方向に応じて運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとの左右方向で吹出方向または位置を異ならせることによって、乗員が受ける冷房熱負荷を補いながら、乗員に緊張感や刺激感を与えるランダムスイングを行うようにしても良い。
【0118】
例えば図17(a)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左横からの場合には、運転席側、助手席側の乗員の左半身に日射が当たることになるので、乗員に対して左側のFACE吹出口のセンター、サイドルーバー41、45の向きを基準位置から20°とし、乗員に対して右側のFACE吹出口のサイド、センタールーバー41、45の向きを基準位置から55°として、乗員の日射が当たると推測される位置に空調風が集中するようにスイング一時停止位置を設定する。
【0119】
また、図17(b)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左斜め前方からの場合には、運転席側、助手席側の乗員の左斜めに日射が当たることになるので、乗員に対して左側のFACE吹出口のセンター、サイドルーバー41、45の向きを基準位置から30°とし、乗員に対して右側のFACE吹出口のサイド、センタールーバー41、45の向きを基準位置から45°とする。そして、図17(c)に示したように、日射方向が車両の進行に対して真正面または真後ろの場合には、乗員に対して左右のFACE吹出口のセンター、サイドルーバー41、45の向きを共に基準位置から40°とする。また、図17(d)、(e)の場合には、図17(a)、(b)とは左右逆に設定する。
【0120】
ここで、太陽角度(日射方向)とスイング停止方向との関係を図18の特性図に示す。なお、図18の特性図に示したように、太陽の方向だけでなく、日射量も考慮することが望ましい。このようにすることによって、弱い日射に対しては乗員の顔部に強い風速感を感じることがなくなり、より快適性を向上することができる。
【0121】
また、各ルーバーの角度は、スインググリルの位置、車両形状、乗員の顔部の位置やシート位置等により、各FACE吹出口毎にチューニングが行われることが望ましい。また、各ルーバーのスイングを一時的に停止するだけでなく、所定の位置付近で所定の制御時間が経過するまで、非常にゆっくりと各ルーバーを動かすようにしても同様な効果を得ることができる。
【0122】
ここで、運転席側、助手席側前席乗員側スイング端でのスイング停止方向および助手席側、運転席側前席乗員側スイング端でのスイング停止方向は、図15の特性図、図18の特性図および図19の説明図に示す方向または位置としても良い。
【0123】
また、冷暖房中、前席乗員顔部方向の前席乗員顔部停止時間割合(KFOR FR)を、図20の特性図に示したように、吹出温度、外気温、車室内温度、吹出風速、車室内温度と設定温度の差、ブロワ電圧、エバ後温度、皮膚温度、シート温度、ステアリング温度、ブロワ風量、日射量、車速等の冷房熱負荷が大きい程、または設定温度が低い程、または吹出口モードが乗員上半身方向への風量が減るモード側程、または日射方向が乗員に与える冷房熱負荷を上げる方向である程、多くしても良い。逆に、前席乗員外し方向(後席乗員顔部方向)の後席乗員顔部停止時間割合(KFOR RR)を、図20の特性図に示したように、各冷房熱負荷が大きい程、少なくしても良い。
【0124】
また、暖房中(吹出温度35℃以上)、前席乗員顔部方向の前席乗員顔部停止時間割合(KFOR FR)を、図21の特性図に示したように、吹出温度、外気温、車室内温度、吹出風速、車室内温度と設定温度の差、ブロワ電圧、エバ後温度、皮膚温度、シート温度、ステアリング温度、ブロワ風量、日射量、車速、目標吹出温度(TAO)等の暖房熱負荷が小さい程、または設定温度が高い程、または吹出口モードが乗員下半身方向への風量が減るモード側程、または日射方向が乗員に与える暖房熱負荷を下げる方向である程、多くしても良い。逆に、前席乗員外し方向(後席乗員顔部方向)の後席乗員顔部停止時間割合(KFOR RR)を、図21の特性図に示したように、各暖房熱負荷が小さい程、少なくしても良い。
【0125】
また、暖房中(吹出温度35℃以下)、前席乗員顔部方向の前席乗員顔部停止時間割合(KFOR FR)を、図22の特性図に示したように、暖房熱負荷が小さい程、多くしても良い。逆に、前席乗員外し方向(後席乗員顔部方向)の後席乗員顔部停止時間割合(KFOR RR)を、図22の特性図に示したように、各暖房熱負荷が小さい程、少なくしても良い。以上の制御を1つ行っても良く、2つ以上組み合わせて行っても良い。
【0126】
〔第1実施形態の作用〕
次に、本実施形態の車両用空調装置の作用を図1ないし図44に基づいて説明する。
【0127】
スイングモード切替スイッチ69、73が「AUTO」に設定されている時に、吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、ブロワ4の作用によって外気吸込口7から吸い込まれた外気がエバポレータ10で例えば4℃程度まで冷やされた後に、第1、第2空気通路11、12に入り、運転席側、助手席側A/Mドア15、16の開度に応じてヒータコア13を通過する量が調節されてそれぞれ最適な温度の空調風となる。
【0128】
その後に、空調風(冷風)は、第1、第2空気通路11、12の最下流端で開口した運転席側センターFACE吹出口21、運転席側サイドFACE吹出口22、助手席側センターFACE吹出口31および助手席側サイドFACE吹出口32から運転席側空調ゾーンおよび助手席側空調ゾーンに吹き出される。特に冷風は、運転席側センター、サイドFACE吹出口21、22から運転席の乗員の上半身(頭胸部)に向けて吹き出され、助手席側センター、サイドFACE吹出口31、32から助手席の上半身(頭胸部)に吹き出される。
【0129】
このとき、日射センサ93にて検知した日射センサ信号および時定数に基づいて運転席側空調ゾーンの日射強度TS(Dr)、助手席側空調ゾーンの日射強度TS(Pa)および車室内に射し込む日射方向(TSRL)を演算して、これらの演算結果により、運転席側空調ゾーン内の乗員または助手席側空調ゾーン内の乗員に日射が当たっていると予測される場合には、図19(a)〜図19(e)の説明図に示したように、車室内に射し込む日射方向に基づいてスイング位置停止方向を決定する。具体的には、センター、サイドルーバー41のルーバー方向を乗員方向に向けるように、あるいは乗員方向を外す方向に向けるようにセンター、サイドルーバー41のスイングを停止する。
【0130】
例えば図19(a)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左横からの場合には、運転席側、助手席側の乗員の左半身に日射が当たることになるので、乗員に対して左側のFACE吹出口のセンター、サイドルーバー41の向きを乗員の左半身付近とし、乗員に対して右側のFACE吹出口のサイド、センタールーバー41の向きも乗員の左半身付近として、乗員の日射が当たると推測される部位に空調風が集中するようにスイング一時停止位置を設定する。
【0131】
また、図19(b)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左斜め前方からの場合には、運転席側、助手席側の乗員の左斜めに日射が当たることになるので、乗員に対して左側のFACE吹出口のサイドルーバー41の向きを乗員の左半身付近とし、乗員に対して右側のFACE吹出口のサイドルーバー41の向きを乗員の左半身付近とする。そして、図19(c)に示したように、日射方向が車両の進行に対して真正面または真後ろの場合には、乗員に対して左右のFACE吹出口のセンター、サイドルーバー41の向きを共に乗員の頭胸部付近とする。また、図19(d)、(e)の場合には、図19(b)、(a)とは左右逆に設定する。
【0132】
次に、図23の特性図ないし図25の特性図に示したように、日射量(日射強度)と車室内温度とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求めるか、日射量と車室内温度と設定温度との温度偏差とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求めるか、あるいは日射量と外気温とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求める。例えば、図23の特性図に示したように、例えば日射量が500(W/m2 )のとき、28(℃)≦TR<30(℃)の場合には、スイング停止時間は11秒間となり、26(℃)≦TR<28(℃)の場合には、スイング停止時間は8秒間となり、TR<26(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。この図23の特性図では、前席乗員方向でのスイング停止時間について説明したが、前席乗員方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)を日射量に応じて変化させても同様の効果が得られる。
【0133】
そして、図24の特性図に示したように、例えば日射量が500(W/m2 )のとき、3(℃)≦TR−TSET<5(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は11秒間となり、1(℃)≦TR−TSET<3(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は8秒間となり、TR−TSET<1(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。また、図25の特性図に示したように、例えば日射量が500(W/m2 )のとき、28(℃)≦TAM<30(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は11秒間となり、26(℃)≦TAM<28(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は8秒間となり、TAM<26(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。これらの図24の特性図および図25の特性図では、前席乗員方向でのスイング停止時間について説明したが、前席乗員方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)を日射量に応じて変化させても同様の効果が得られる。
【0134】
また、図26の特性図ないし図28の特性図に示したように、日射量と相関関係にある、ブロワ4のブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧(ブロワ風量)と車室内温度とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求めても良く、ブロワ風量と車室内温度と設定温度との温度偏差とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求めても良く、あるいはブロワ風量と外気温とから前席乗員方向でのスイング停止時間を求めても良い。例えば、図26の特性図に示したように、例えばブロワ制御電圧が6.5(V)のとき、28(℃)≦TR<30(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は11秒間となり、26(℃)≦TR<28(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は8秒間となり、TR<26(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。この図26の特性図では、前席乗員方向でのスイング停止時間について説明したが、前席乗員方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)をブロワ制御電圧(ブロワ風量)に応じて変化させても同様の効果が得られる。
【0135】
そして、図27の特性図に示したように、例えばブロワ制御電圧が6.5(V)のとき、3(℃)≦TR−TSET<5(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は11秒間となり、1(℃)≦TR−TSET<3(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は8秒間となり、TR−TSET<1(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。また、図28の特性図に示したように、例えばブロワ制御電圧が6.5(V)のとき、28(℃)≦TAM<30(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は11秒間となり、26(℃)≦TAM<28(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は8秒間となり、TAM<26(℃)の場合には、前席乗員方向でのスイング停止時間は5秒間となる。これらの図27の特性図および図28の特性図では、前席乗員方向でのスイング停止時間について説明したが、前席乗員方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)をブロワ制御電圧(ブロワ風量)に応じて変化させても同様の効果が得られる。
【0136】
〔第1実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の車両用空調装置は、例えば運転席側前席の乗員または助手席側前席の乗員に日射が当たっていると予測される場合に、日射量(日射強度)が大きい程、またはブロワ風量(ブロワ制御電圧)が大きい程、前席乗員方向でセンター、サイドルーバー41、45のスイングを一時的に停止させる所定時間(スイング停止時間)が長くなるように自動的に設定している。また、その所定時間は、車室内温度(TR)が高い程、車室内温度と設定温度との温度偏差が大きい程、または外気温(TAM)が高い程、長くなるように自動設定している。
【0137】
そして、図19(a)〜図19(e)の説明図に示したように、日射方向に応じて前席乗員方向でセンター、サイドルーバー41、45のスイングを停止させるスイング一時停止方向(ルーバー一時停止位置)を自動設定している。また、運転席側前席の乗員または助手席側前席の乗員に日射が当たっていないと予測される場合には、運転席側前席の乗員または助手席側前席の乗員に日射が当たっていると予測される時よりも、前席乗員方向から外れる方向(後席乗員方向)で、スイング停止時間が経過するまで、センター、サイドルーバー41、45のスイングを停止させるようにしている。
【0138】
それによって、例えば車両がトンネルの中や建物の影に入ったり、出たり、日射方向に対する車両の進行方向が変化したりする等して、日射センサ93から出力される日射センサ信号が大きく変化するような、頻繁に変化する空調負荷に対しても、空調が進むにつれて下降してゆく車室内温度のようなゆっくりと変化する空調負荷に対しても、空調風の吹出方向を前席乗員方向(または後席乗員方向)に自動設定できる。これにより、暑いと感じてルーバーの向きを自分に向けたり、停止時間選択スイッチを操作したりする等の複雑で煩わしい手動操作をすることなく、運転席側、助手席側前席の乗員または助手席側、運転席側後席の乗員の快適感(涼しいと感じる)を向上できる。
【0139】
ここで、車室内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段としては、上記の他に設定温度、吹出口モード、設定温度と車室内温度の差、車室内温度、外気温、エバ後温度、冷却水温、車速、ブロワ風量または乗員数等が考えられ、これらの値を検出するセンサや温度を設定する温度設定手段をも空調負荷検出手段として使用できる。そして、いずれかの空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、前席乗員方向でのスイング停止時間を、空調負荷が大きい程長く設定するようにしても、上記と同様の効果を達成することができる。また、いずれかの空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以下の時に、空調負荷が所定値以上の時よりも、前席乗員方向から外れる方向(後席乗員方向)でのスイング停止時間を、空調負荷が小さい程短く設定することにより、空調風が乗員方向に略集中することで、乗員が寒いと感じることを防止できる。
【0140】
ここで、運転席側、助手席側センタルーバー(および運転席側、助手席側サイドルーバー)41、45のオートスイング制御の他の制御方法を図29、図30のタイムチャート、図31の特性図ないし図44の特性図に基づいて説明する。ここで、図29は、運転席側、助手席側センタルーバー41、45のスイングが、そのセンタルーバー41、45に最も近傍の乗員側になるタイミングを同じする場合の制御方法を示したタイムチャートで、例えば運転席側空調負荷>助手席側空調負荷での制御方法を示す。
【0141】
図29では、運転席側空調負荷が助手席側空調負荷よりも大きくても、運転席側センタールーバー41(45)が助手席側後席乗員顔部方向から正面を経て運転席側前席乗員顔部方向に到達するタイミングと、助手席側センタールーバー41(45)が運転席側後席乗員顔部方向から正面を経て助手席側前席乗員顔部方向に到達するタイミングとが同じになるように制御しても良い。これにより、運転席側空調負荷と助手席側空調負荷とが異なっても、運転席側、助手席側センタールーバー41(45)の作動が揃うため、見栄えが良くなる。
【0142】
また、図30は、運転席側、助手席側センタルーバー41、45のスイングが、そのセンタルーバー41、45に最も隣接する他の空調ゾーン側になるタイミングを同じする場合の制御方法を示したタイムチャートで、例えば運転席側空調負荷>助手席側空調負荷での制御方法を示す。
【0143】
図30では、運転席側空調負荷が助手席側空調負荷よりも大きくても、運転席側センタールーバー41(45)が助手席側後席乗員顔部方向から正面を経て運転席側前席乗員顔部方向に到達するタイミングと、助手席側センタールーバー41(45)が隣接する他の空調ゾーン側になるタイミングが同じになるように制御しても良い。これにより、運転席側空調負荷と助手席側空調負荷とが異なっても、運転席側、助手席側センタールーバー41(45)の作動が揃うため、見栄えが良くなる。すなわち、例えば偏日射時、運転席側センタールーバー41(45)のスイング範囲の日射有り側の乗員側スイング端でのスイング停止時間を増やす等の補正を行った後に、正面日射または日射がなくなった時に、運転席側と助手席側(左右席)でスイング作動がばらばらにならならず、見栄えが良くなる。
【0144】
また、左右独立温度コントロール車においては、例えば運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとの左右独立温度コントロール時に、運転席側センタールーバー41(45)のルーバ方向が最も運転席側前席の乗員方向を向いている時、助手席側センタールーバー41(45)が最も運転席側前席の乗員側にスイングしてくると、運転席側前席の乗員の左半身が、助手席側空調ゾーンの設定温度の影響を非常に受け易くなるが、上記のように、運転席側センタールーバー41(45)の運転席側前席乗員顔部方向に到達するタイミングと、助手席側センタールーバー41(45)が隣接する運転席側空調ゾーン側になるタイミングとを同じにすることで、助手席側センターFACE吹出口31からの空調風を運転席側センターFACE吹出口21からの空調風でエアカーテンを作り、カットすることにより、左右独立温度コントロール性を維持することができる。
【0145】
また、図31(a)は車室内温度と設定温度の差と運転席側乗員顔部停止時間との関係を示した特性図で、図31(b)は車室内温度と設定温度の差と助手席側乗員顔部停止時間との関係を示した特性図である。なお、空調初期車室内温度と設定温度の差が25度以内の例を示す。
【0146】
日射左右比(H)=0.6で、運転席側に日射が当たっていると推定される場合には、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が20度では、運転席側乗員顔部停止時間の方が助手席側乗員顔部停止時間よりも長く設定しても良い。この図31の特性図では、運転席側、助手席側乗員顔部停止時間について説明したが、運転席側、助手席側乗員顔部方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)を車室内温度と設定温度の差に応じて変化させても同様の効果が得られる。
また、図32(a)は車室内温度と設定温度の差と運転席側乗員顔部停止時間との関係を示した特性図で、図32(b)は車室内温度と設定温度の差と助手席側乗員顔部停止時間との関係を示した特性図である。なお、空調初期車室内温度と設定温度の差が15度以内の例を示す。
【0147】
日射左右比(H)=0.6で、運転席側に日射が当たっていると推定される場合には、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が20度では、運転席側乗員顔部停止時間の方が助手席側乗員顔部停止時間よりも長く設定しても良い。この図32の特性図では、運転席側、助手席側乗員顔部停止時間について説明したが、運転席側、助手席側乗員顔部方向でスイングルーバーがゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する角度(度)を車室内温度と設定温度の差に応じて変化させても同様の効果が得られる。
【0148】
そして、図33の特性図のような制御例では、冷房中で、日射左右比(H)=0.65(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が15度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも長くまたは大きくしても良い。例えば7秒間または(×1.0)に固定しても良い。
また、図34の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、冷房熱負荷が大きい程、長くまたは大きくしても良い。
【0149】
そして、図35の特性図のような制御例では、冷房中で、日射左右比(H)=0.6(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が13度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、冷房熱負荷が大きい程、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも長くまたは大きくしても良い。
また、図36の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、冷房熱負荷が大きい程、長くまたは大きくしても良い。
【0150】
そして、図37の特性図のような制御例では、暖房中(乗員上半身への吹出温度35℃以下)で、日射左右比(H)=0.65(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が−15度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも短くまたは小さくしても良い。
また、図38の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、0秒間または(×0)に固定しても良い。
【0151】
そして、図39の特性図のような制御例では、暖房中(乗員上半身への吹出温度35℃以下)で、日射左右比(H)=0.6(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が−13度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも短くまたは小さくしても良い。
また、図40の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、短くまたは小さくしても良い。
【0152】
そして、図41の特性図のような制御例では、暖房中(乗員上半身への吹出温度35℃以上)で、日射左右比(H)=0.65(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が−15度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも短くまたは小さくしても良い。
また、図42の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、短くまたは小さくしても良い。
【0153】
そして、図43の特性図のような制御例では、暖房中(乗員上半身への吹出温度35℃以上)で、日射左右比(H)=0.65(運転席側日射)、初期車室内温度と設定温度の差(TR−TSETDR)が−13度のとき、運転席側センタールーバー41(45)のスイング中の運転席側(前席)乗員顔部停止時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または運転席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、助手席側(前席)乗員顔部方向よりも短くまたは小さくしても良い。
また、図44の特性図のような制御例では、このとき、助手席側センタールーバー41(45)のスイング中の助手席側(前席)乗員顔部停止時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する時間または助手席側(前席)乗員顔部でゆっくり揺動する角度(度)等の固定値の場合、あるいはランダム時間の固定値を補正する場合(固定値に乗算する補正係数)は、暖房熱負荷が大きい程、短くまたは小さくしても良い。
【0154】
〔第2実施形態〕
図45は本発明の第2実施形態を示したもので、エアコン操作パネルを示した図である。
【0155】
本実施形態では、エアコン操作パネル51と一体的に、運転席側空調ゾーンおよび助手席側空調ゾーン内の各FACE吹出口21、22、31、32から吹き出される空調風の吹出状態(センター、サイドルーバー41、45のスイング状態)を操作するためのルーバー操作(SWINGSW)パネル100が設けられている。このルーバー操作パネル100は、MATCHスイッチ101、Drスイッチ102、Paスイッチ103およびスイングモード切替スイッチ104とから構成されている。なお、スイングモード切替スイッチ104は、第1実施形態のスイングモード切替スイッチ69、73と同様に、STOP(スイング停止)、AUTO(オートスイング)、Rr、U−DSWING(上下方向スイング)、R−LSWING(左右方向スイング)の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
【0156】
また、MATCHスイッチ101、Drスイッチ102およびPaスイッチ103は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。MATCHスイッチ101がONされると、運転席側、助手席側センター、サイドルーバー41、45のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。そして、Drスイッチ102がONされると、運転席側センター、サイドルーバー41、45のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。さらに、Paスイッチ103がONされると、助手席側センター、サイドルーバー41、45のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。
【0157】
〔第3実施形態〕
図46および図47は本発明の第3実施形態を示したもので、図46は吹出状態可変装置のルーバー左右方向揺動機構の構成を示した図である。
【0158】
本実施形態のルーバー左右方向揺動機構140は、センター、サイドFACE吹出口121、131を形成する集中拡散スインググリル120、130に設置されている。このルーバー左右方向揺動機構140は、集中拡散スインググリル120、130内において左右方向にスイング可能に取り付けられた複数枚(本例では3枚)の第1〜第3ルーバー141と、これらの第1〜第3ルーバー141を各支点142を中心にして左右方向に所定のスイング範囲にてスイングさせる複数枚(本例では3枚)の第1〜第3リンクプレート143と、これらの第1〜第3リンクプレート143を各支点144を中心にして回動させる平板プレート145と、この平板プレート145を車両の進行方向に対して前後方向に往復運動させるルーバー駆動手段(アクチュエータ)としてのルーバーモータ146とから構成されている。
【0159】
第1〜第3リンクプレート143には、各第1〜第3ルーバー141の上端面に設けられた円柱形状のピン147が係合する長円形状の係合穴148が形成されている。また、平板プレート145には、各リンクプレート143の上端面に設けられた円柱形状のピン149が係合する第1〜第3係合穴151〜153、およびルーバーモータ146側の上端面に設けられたラック154が形成されている。なお、第1〜第3係合穴151〜153の形成順序は、集中拡散スインググリル120と集中拡散スインググリル130とでは逆となる。また、平板プレート145は、集中拡散スインググリル120、130の外壁面に設けられたガイド155およびレール156に案内されて、その外壁面上を車両の前後方向に摺動可能に配されている。ルーバーモータ146は、集中拡散スインググリル120、130の外壁面に取り付けられた取付用台157上に設置されている。また、ルーバーモータ146の出力軸の先端外周には、ラック154と噛合するピニオン159が組み付けられている。
【0160】
本実施形態では、ルーバーモータ146を正回転方向に作動させることにより、図47(a)に示したように、集中拡散スインググリル120、130の外壁面上において平板プレート145が最も車両後方側(乗員に近づく側)に位置すると、第1〜第3ルーバー141が図示左側(乗員方向)に向くことにより、集中拡散スインググリル120、130から吹き出される空調風が空調ゾーン内の乗員の頭胸部に局所的に吹き出すスポット吹出モードに設定される。
【0161】
また、ルーバーモータ146を上記とは逆回転方向に作動させることにより、図47(b)に示したように、集中拡散スインググリル120、130の外壁面上において平板プレート145が最も車両前方側(乗員より遠ざかる側)に位置すると、第1ルーバー141が図示右側(乗員を外す方向)に向き、第2ルーバー141が図示上側(中央方向)に向き、第3ルーバー141が図示左側(乗員方向)に向くことにより、集中拡散スインググリル120、130から吹き出される空調風が空調ゾーン内に拡散的に吹き出すワイド吹出モードに設定される。そして、ルーバーモータ146の正転および逆転を繰り返すことにより、第1〜第3ルーバー141が支点を中心にして揺動運動(スイング)する。
【0162】
そして、本実施形態において、車室内温度(TR)が高い程、集中拡散スインググリル120、130から吹き出される空調風が空調ゾーン内の乗員の頭胸部に集中状態で第1〜第3ルーバー141が停止またはゆっくりと動く。また、日射方向が乗員の右方向からの入射の時、つまり乗員の右半身に日射が当たっている時には、右側の集中拡散スインググリル130の第1〜第3ルーバー141が左側の集中拡散スインググリル120の第1〜第3ルーバー141よりも乗員の頭胸部に集中状態で空調風を吹き出すように停止またはゆっくりと動く。逆に、日射方向が乗員の左方向からの入射の時、つまり乗員の左半身に日射が当たっている時には、左側の集中拡散スインググリル120の第1〜第3ルーバー141が右側の集中拡散スインググリル130の第1〜第3ルーバー141よりも乗員の頭胸部に集中状態で空調風を吹き出すように停止またはゆっくりと動く。
【0163】
〔第4実施形態〕
図48は本発明の第4実施形態を示したもので、図48(a)は車両のインストルメントパネルを示した図で、図48(b)は空調ユニットのフェイスダクトを示した図である。
【0164】
本実施形態では、第1実施形態の空調ダクト2内の仕切り板14を廃止している。そして、前部座席側FACE吹出口として、空調ダクト2の空気下流側端部に連結されたフェイスダクト160の最空気下流側で開口するワイドフローFACE吹出口161が設けられている。ワイドフローFACE吹出口161は、インストルメントパネル40の前面中央で開口する運転席側、助手席側センターFACE吹出口162、163と、インストルメントパネル40の車両幅方向両側、すなわち、車両のサイドウインド近傍で開口する運転席側、助手席側サイドFACE吹出口164、165と、これらのFACE吹出口の間で開口する運転席側、助手席側ミドルFACE吹出口166、167とから構成されている。なお、各FACE吹出口162〜167には、乗員の手動操作により空調風の吹出方向を変更するための複数のルーバーがそれぞれ設けられている。
【0165】
そして、フェイスダクト160には、各FACE吹出口162〜167を開閉するためのFACEドア171が回動自在に取り付けられており、運転席側サイド、ミドルFACE吹出口164、166を開閉するための運転席側ミドルFACEドア172が回動自在に取り付けられており、助手席側サイド、ミドルFACE吹出口165、167を開閉するための助手席側ミドルFACEドア173が回動自在に取り付けられている。なお、運転席側、助手席側ミドルFACEドア172、173は、本発明の吹出状態変更手段に相当するもので、開度に応じてDr、助手席側サイドFACE吹出口164、165およびDr、助手席側ミドルFACE吹出口166、167から各空調ゾーン内に吹き出す空調風の吹出状態(例えばワイド吹出モードとスポット吹出モード)を変更する。
【0166】
本実施形態では、サーボモータ等のアクチュエータによりFACEドア171を開放側に動かし、サーボモータ等のアクチュエータにより運転席側、助手席側ミドルFACEドア172、173を閉塞側に動かす。それによって、運転席側、助手席側センターFACE吹出口162、163および運転席側、助手席側サイドFACE吹出口164、165を開放し、運転席側、助手席側ミドルFACE吹出口166、167を閉塞することにより、ワイドフローFACE吹出口161の開口面積を小さくすることで、ワイドフローFACE吹出口161から吹き出される空調風の吹出範囲を小さくして空調ゾーン内の乗員の頭胸部に局所的に空調風を吹き出す(スポット吹出モード)。
【0167】
また、FACEドア171を開放側に動かし、運転席側、助手席側ミドルFACEドア172、173を中間位置に動かす。それによって、運転席側、助手席側センターFACE吹出口162、163、運転席側、助手席側サイドFACE吹出口164、165および運転席側、助手席側ミドルFACE吹出口166、167を開放することにより、ワイドフローFACE吹出口161の開口面積を大きくすることで、ワイドフローFACE吹出口161から吹き出される空調風の吹出範囲を大きくして空調ゾーン内に拡散的に空調風を吹き出す(ワイド吹出モード)。
なお、フェイスダクト160内にFACEドアを追加して更に細やかな配風量の変更制御を行うようにしても良いし、空調ダクト2およびフェイスダクト160内に仕切り板を1個または2個以上入れて、それぞれの空気通路毎に送風機を配置して、各送風機の送風量を異ならせることで、運転席側、助手席側空調ゾーン内の乗員毎の配風量を変更しても良い。
【0168】
〔第5実施形態〕
図49は本発明の第5実施形態を示したもので、車両用ドラムベンチレータを示した図である。
【0169】
本実施形態の車両用ドラムベンチレータは、自動車のインストルメントパネル201内に、空調ダクトのフェイスダクトに連通する筒形状のケース202が設けられている。このケース202は、内部にFACE吹出口203を形成する。そして、ケース202の空気下流側端部内には、筒形状の配風用ドラム204が回動自在に設けられている。
【0170】
この配風用ドラム204内には、縦ルーバー205が左右回転自在に支持され、この縦ルーバー205と組み合わせて格子を成すように横ルーバー206が設けられている。また、ケース202の空気上流側端部内には、FACE吹出口203から吹き出す空調風の吹出風量を調節するダンパ207が回動自在に支持されている。なお、縦ルーバー205および横ルーバー206は、第1実施形態と同様にして、図示しないリンク機構を介してルーバーモータ等のアクチュエータにより揺動運動が与えられる。ここで、本実施形態の配風用ドラム204は、ケース202の前端部に回動自在に取り付けられた筒形状の第1のドラム211と、この第1のドラム211に内蔵された筒形状の第2のドラム212とから構成されている。
【0171】
本実施形態では、空調風の吹出方向を変更する場合には、第2のドラム212の前面開口の向きを変更すれば良い。例えば、図49に示したように、ケース202、第1のドラム211および第2のドラム212の中心軸を略一致させると、空調風の吹出方向が斜め上向きとなり、空調ゾーン内の乗員の頭部付近に局所的に吹き出す。また、ケース202の中心軸に対して、第1のドラム211および第2のドラム212を反時計回りに回動させることにより、空調風の吹出方向が下向きとなり、空調ゾーン内の乗員の胸部付近に局所的に吹き出す。
【0172】
〔第6実施形態〕
図50は本発明の第6実施形態を示したもので、図50(a)、(b)は空気吹出ルーバーを示した図である。
【0173】
本実施形態の空気吹出ルーバー220は、例えば樹脂材料によって形成された細長い円筒形状で、一方の端面に断面D字状の係合穴221が設けられ、他方の端面に嵌合穴222が設けられている。そして、空気吹出ルーバー220の回転軸心Oと偏心した位置には、空気吹出ルーバー220の軸方向に亘って空気通路223が設けられ、回転軸心Oを挟んで空気通路223の反対側の位置には、軸方向に亘って閉鎖部224が設けられている。すなわち、閉鎖部224は、曲率中心を中心とした回転軸心Oを通る凸円弧面225を有しており、この凸円弧面225と空気吹出ルーバー220の外周面の一部とによって中実に形成され、閉鎖部224の中央部には、軸方向に亘って中空部226が形成されている。そして、空気吹出ルーバー220は、前記曲率中心を中心とする凹円弧面227を有しており、この凹円弧面227と空気吹出ルーバー220の外周面の一部とによってフィン228が形成され、凸円弧面225と凹円弧面227との間に一定幅の円弧状を成す空気通路223が形成されている。さらに、この空気通路223の幅方向の中間には、円弧状の整流フィン229が設けられている。
【0174】
上記のような空気吹出ルーバー220は、空気吹出ダクトの最空気下流側で開口した細長い矩形状の空気吹出口(図示せず)に収納されている。そして、空気吹出ルーバー220の係合穴221にはモータ230の回転軸231に形成された断面D字形状の係合軸部232が係合している。また、嵌合穴222には、空気吹出ダクトの側壁に突設された軸受ピン233が回転自在に嵌合されている。したがって、空気吹出ルーバー220は、モータ230の回転軸231と軸受ピン233とによって2点支持され、回転軸心Oを中心として、上下方向に揺動運動可能に設けられており、空気吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を変更できるように構成されている。
【0175】
〔第7実施形態の構成〕
図51ないし図54は本発明の第7実施形態を示したもので、図51はインストルメントパネルを示した図で、図52は吹出ダクト、支持枠および回転バルブを示した図である。
【0176】
本実施形態では、自動車のインストルメントパネル301の内方下部に、車室内を空調するための空調ユニット302が設置されている。また、インストルメントパネル301の前面には、断面コの字形状で車幅方向に細長い直線状の空気吹出口303を形成する吹出ダクト304が1個取り付けられている。そして、吹出ダクト304の背面には、空調ユニット302からの空調風を空気吹出口303に導く導風ダクト305が接続されている。
【0177】
そして、吹出ダクト304の前面には、ルーバー支持枠306が取り付けられており、このルーバー支持枠306には、空気吹出口303から車室の空調ゾーン内に吹き出される空調風の吹出方向を変更するための縦ルーバー307と横ルーバー309とが格子状に設けられている。そして、ルーバー支持枠306の空気上流側には、空気吹出口303の開口度合を変更して配風量を可変する回転バルブ310が設けられている。
【0178】
回転バルブ310は、その支軸311が吹出ダクト304のスリット312に回動自在に支持されている。そして、回転バルブ310は、その両端に端壁313を有する略半割円筒形状のもので、回転バルブ310の表面形状の空気上流側の一端辺である後端縁314は略直線状に形成され、また、回転バルブ310の表面形状の空気下流側の一端辺である前端縁315は、その中央の水平直線部316と、この水平直線部316の左右側方に形成された略円弧状の湾曲部317とから構成されている。すなわち、回転バルブ310の横断面形状は、水平直線部316では半円形状であり、湾曲部317では左右端に向けて半円形状から略4半円形状に徐々に変化する形状となっている。
【0179】
また、回転バルブ310の支軸311の外端には、回転バルブ310を回動して空調風の吹出状態を調整するための調整ダイヤル319が固着されている。なお、回転バルブ310の支軸311は、第1実施形態と同様にして、図示しないリンク機構を介してバルブモータ等のアクチュエータにより回動運動が与えられる。
【0180】
〔第7実施形態の作用〕
次に、本実施形態の作用を図51ないし図54に基づいて簡単に説明する。ここで、図53(a)〜図53(c)はスポット吹出モード時の回転バルブの回動位置を示した図であり、図54(a)〜図54(c)はワイド吹出モード時の回転バルブの回動位置を示した図である。
【0181】
アクチュエータにより回転バルブ310をスポット吹出モード時の回動位置に駆動すると、空気吹出口303の中央部では、図53(a)に示したように、回転バルブ310により完全に閉じられ、また、空気吹出口303の左右端部では、図53(b)、(c)に示したように、空気吹出口303の左右端に近くなるに従って、徐々に大きく開かれる。これにより、空調ユニット302からの空調風は、空気吹出口303の中央部からは全く吹き出されず、空気吹出口303の左右端に近くなるに従って徐々に多量に吹き出される。その結果、空気吹出口303の左右端部前方においては、空調ゾーン内の乗員に向けて空調風が集中的に多量に吹き出されるスポット吹出モードが行われる。
【0182】
一方、アクチュエータにより回転バルブ310をワイド吹出モード時の回動位置に駆動すると、空気吹出口303は、図54(a)〜(c)に示したように、中央部および左右端部共に略全開となる。これにより、空調ユニット302からの空調風は、空気吹出口303の全長に亘って均一に空調ゾーン内に吹き出されるワイド吹出モードが行われる。
【0183】
〔第8実施形態〕
図55ないし図59は本発明の第8実施形態を示したもので、図55(a)〜図55(e)は回転バルブの変形例を示した図である。
【0184】
図55(a)〜図55(e)の回転バルブ310の各後端縁314はいずれも第7実施形態の後端縁314と同じく直線上に形成されているが、前端縁321〜325の形状は各々異なっている。すなわち、図55(a)の回転バルブ310の前端縁321は、第7実施形態の前端縁の水平直線部316の中央にU字状の凹部326を形成したものであり、スポット吹出モードの時には、空調風は湾曲部317の部分だけでなく、凹部326の部分からも集中的に吹き出される。
【0185】
そして、図55(b)の回転バルブ310の前端縁322は、第7実施形態の右の湾曲部317のみを残して、左の湾曲部をなくしたものであり、空調風は湾曲部317のみから集中的に吹き出される。また、図55(c)の回転バルブ310の前端縁323は、回転バルブ310の全長に亘って逆V字形状に形成され、空調風の吹出風量は中央部から左右端に向かうに従って徐々に増加するものとなっている。そして、図55(d)の回転バルブ310の前端縁324は、図55(c)の回転バルブ310と逆にV字形状に形成され、空調風の吹出風量は左右端から中央部に向かうに従って徐々に増加するものとなっている。また、図55(e)の回転バルブ310の前端縁325は、左端から右端に向けて直線状に徐々に高さが低くなっており、空調風の吹出風量は左端から右端に向かうに従って徐々に増加するものとなっている。
【0186】
次に、運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとをそれぞれ独立して空調できるようにインストルメントパネル301の前面にて吹出ダクト304が左右に2個並設されている場合のスイング停止時の空調風の吹出位置の変更パターンを図56ないし図59に基づいて説明する。
【0187】
例えば図56(a)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左横からの場合には、運転席側、助手席側の回転バルブ310を所定の位置に回転させて運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を、乗員の日射が当たる乗員の左半身に空調風が当たる位置に設定する。また、図56(b)に示したように、日射方向が車両の進行に対して左斜め前方からの場合には、運転席側、助手席側の回転バルブ310を所定の位置に回転させて運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を、乗員の日射が当たる乗員の左半身および左側頭胸部に空調風が当たる位置に設定する。
【0188】
そして、図56(c)に示したように、日射方向が車両の進行に対して真正面または真後ろの場合には、運転席側、助手席側の回転バルブ310を所定の位置に回転させて運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を、乗員の日射が当たる乗員の頭胸部(特に顔部)に空調風が当たる位置に設定する。また、図56(d)、(e)の場合には、図56(b)、(a)とは逆側に設定する。
【0189】
次に、図57(a)に示したように、車室内温度(TR)が31℃の場合には、設定温度が例えば25℃の場合には非常に高い車室内温度であるため、運転席側、助手席側の回転バルブ310を所定の位置に回転させて運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を乗員の頭胸部(特に顔部)に空調風が当たる位置に設定する。そして、図57(b)〜図57(e)に示したように、車室内温度(TR)が30℃、29℃、27℃、26℃と下がるに従って、運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を乗員の左半身または右半身寄りに空調風が当たる位置に設定する。そして、車室内温度(TR)が25℃まで下がると、乗員に空調風を集中させると乗員が寒いと感じて乗員に不快感を与えてしまうため、これを防ぐために、運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を乗員を外す位置に空調風が吹き出すように設定する。
【0190】
次に、図58(a)、(b)は、回転バルブ310のスイング中にスイング停止時間が来たら、冷房熱負荷が低下するに従って乗員の顔部付近から乗員を外す位置に向けて(図58ではA方向として表している)空調風の吹出状態を変えるように、運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を変更する様子を示している。この場合には、冷房熱負荷として車室内温度(TR)のみを利用しても良く、車室内温度(TR)と設定温度(TSET)との温度偏差を利用しても良く、これらに日射量補正を加えても良い。
【0191】
次に、図59(a)、(b)は、回転バルブ310のスイング中にスイング停止時間が来たら、日射方向(乗員に日射が当たる位置)に応じて乗員の顔部付近から乗員を外す位置に向けて(図59ではA方向として表している)空調風の吹出状態を変えるように、運転席側、助手席側の吹出ダクト304から吹き出す空調風の吹出位置を変更する様子を示している。この場合には、冷房熱負荷として日射方向のみを利用している。
【0192】
〔第9実施形態〕
図60および図61は本発明の第9実施形態を示したもので、図60は車両用空調装置の全体構成を示した図で、図61(a)はルーバ左右方向揺動機構の構成を示した図で、図61(b)はルーバ上下方向揺動機構の構成を示した図である。
【0193】
本実施形態のエアコンECU50には、各吹出状態可変装置のセンター、サイドルーバー41、45の現在位置(ルーバ方向または空調風の吹出方向または吹出位置)を検出するポテンショメータ97、98が接続されている。複数個(本例では4個)のポテンショメータ97は、図61(a)に示したように、ルーバー左右方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられ、リンクレバー42と一体的に水平方向に往復移動する可動接点97a、およびこの可動接点97aの移動により分圧比を変える抵抗素子97b等よりなる吹出方向または吹出位置検出手段である。
【0194】
複数個(本例では4個)のポテンショメータ98は、図61(b)に示したように、ルーバー上下方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられ、リンクレバー46と一体的に上下方向に往復移動する可動接点98a、およびこの可動接点98aの移動により分圧比を変える抵抗素子98b等よりなる吹出方向または吹出位置検出手段である。そして、本実施形態では、ステッピングモータの代わりに、吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータとしてルーバモータ(例えばDCサーボモータ)77、78を使用している。
【0195】
〔第10実施形態の構成〕
図62ないし図70は本発明の第10実施形態を示したもので、図62は車室内への空調風のスイング範囲を示した図である。
【0196】
本実施形態のエアコンECU50には、図1に示したように、内気温センサ91、外気温センサ92、日射センサ93、エバ後温度センサ95、冷却水温センサ96等が接続されている。ここで、上記の各実施形態では、日射が強い程、各FACE吹出口21、22、31、32から吹き出す空調風を前席乗員に長く向けて、前席乗員の快適感を向上するように制御している。
【0197】
ところが、日射センサ93の感度には指向性があり、図63のグラフに示したように、夏のような太陽仰角の高い時に日射センサ93の感度を最適な感度特性にチューニングすると、冬のような太陽仰角の低い時の検出日射量が少なくなる。それに伴い、冬の強い低仰角日射がある場合でも、図64のグラフに示したように、各FACE吹出口21、22、31、32から吹き出す空調風が前席乗員に向く時間が短くなるので、前席乗員が暑く感じてしまい、不快となるという不具合が生じる。
【0198】
そこで、本実施形態では、スイングルーバー制御において、冬の強い低仰角日射の時に、図64のグラフに示したように、外気温(TAM)で検出日射量を補正することにより、夏と同様に、長い時間冷風を向けることで、前席乗員の快適感を向上するように制御している。ここで、図64のグラフにおいてt1は前席乗員に向ける一時停止時間(秒)であり、t2は正面に向ける一時停止時間(秒)である。
【0199】
〔第10実施形態の制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU50によるスイングルーバー制御を図65ないし図70に基づいて説明する。ここで、図65はエアコンECU50によるスイングルーバー制御を示したフローチャートである。
【0200】
先ず、図65のルーチンが起動すると、スイングモード/OFFモード切替スイッチによって、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45をスイングさせるスイングモードが選択されているか否かを判定する(ステップS31)。この判定結果がNOの場合には、OFFモードが選択されているので、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のスイング作動を停止する(ステップS32)。その後に、図65のルーチンを抜ける。
【0201】
また、ステップS31の判定結果がYESの場合には、ブロワ4に印加するブロワ制御電圧(ブロワレベル:BLW)が0であるか否かを判定する(ステップS33)。この判定結果がYESの場合には、ステップS32の制御処理を行う。
また、ステップS33の判定結果がNOの場合には、吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードであるか否かを判定する(ステップS34)。この判定結果がNOの場合には、ステップS32の制御処理を行う。
【0202】
また、ステップS33の判定結果がYESの場合には、日射センサ値仰角補正を行う(ステップS35)。具体的には、先ず外気温センサ92にて検出した外気温(TAM)と図66の仰角判定手段を示した特性図とに基づいて仰角の判定を行う。例えば外気温が所定温度(例えば20℃)以上の場合には、高仰角となる夏期であると判定し、外気温が所定温度(例えば15℃)以下の場合には、低仰角となる冬期であると判定する。
【0203】
次に、高仰角となる夏期であると判定した場合には、図67のグラフに示したように、日射センサ93の検出日射量に応じて前席乗員に向ける一時停止時間(t1)を演算(決定)する。また、低仰角となる冬期であると判定した場合には、図67のグラフに示したように、日射センサ93の検出日射量を補正した補正日射量に応じて、運転席側、助手席側センタールーバー41、45の向きを前席乗員に向ける一時停止時間(t1)を演算(決定)する。ここで、図68(a)はスイング停止方向を示した図で、図68(b)は乗員方向および正面方向へのスイングを示したタイムチャートである。
【数17】
t2=7(秒)−t1
【0204】
但し、トータル停止時間が7秒間の場合を示し、トータル停止時間は任意に変更しても良い。また、t2は運転席側、助手席側センタールーバー41、45の向きを、FACE吹出口21、31の正面(車両の後方)に向ける一時停止時間である。ここで、正面日射の場合には、運転席側、助手席側サイドルーバー41、45の作動状態を、運転席側、助手席側センタールーバー41、45と同じように制御しても良い。
【0205】
次に、日射センサ値偏日射補正を行う(ステップS36)。具体的には、図8のフローチャートのステップS19で示したように、車室内に射し込む日射量の左右比(H)を演算(決定)する。
次に、外気温センサ92にて検出した外気温(TAM)、日射センサ93の検出日射量(A)または補正日射量(B)、内気温センサ91にて検出した車室内温度(TR)と設定温度TSET(Dr)、TSET(Pa)との温度偏差に応じて、運転席側、助手席側センタールーバー41、45および運転席側、助手席側サイドルーバー41、45のスイング範囲を設定(算出)する(ステップS37)。
【0206】
次に、Dr、Pa各席の乗員側と正面側でスイング停止時間を振り分ける(ステップS38)。その後に、図65のルーチンを抜ける。具体的には、図8のフローチャートのステップS21で示したように、日射左右比(H)を用いて、トータル停止時間(本例では7秒間)を、運転席側前席乗員側スイング端と正面側(助手席側後席乗員側)スイング端とにどれだけ振り分けるか、および助手席側前席乗員側スイング端と正面側(運転席側後席乗員側)スイング端とにどれだけ振り分けるかを算出(決定)する。
【0207】
〔第10実施形態の効果〕
本実施形態の空調ユニット1におけるスイングルーバー制御(気流制御)において、太陽仰角が低いことを外気温で推定し、少ない検出日射量でも、低仰角により検出日射量が少ないのを補正することで、長く乗員に空調風を当てることができる。具体的には、図66の仰角判定手段から、既存のセンサ値である外気温(TAM)を用いて高仰角であるか低仰角であるかを判定する。次に、判定した仰角と、検出日射量または補正日射量から、図67のグラフより、前席乗員に向ける一時停止時間を演算する。
【0208】
このように、低仰角で検出日射量が少なくなる冬に、夏とは異なる制御特性を適用することにより、指向性の有る日射センサ93の不具合を補い、夏と同じく長い時間、前席乗員に空調風(冷風)を当てることで、図67のグラフに示したように、前席乗員の快適感を夏と同様に向上することができる。ここで、図67のグラフは、外気温が−20℃、日射量が700W/m2 正面方向、仰角が30度の場合の(仰角判定無し)と(仰角判定有り)との快適感の違いを示す。図67のグラフから、(仰角判定無し)ではやや不快であるのに対し、(仰角判定有り)では快適に近いことが分かる。
【0209】
なお、長い時間、後席乗員に空調風(冷風)を当てるようにすれば、後席乗員の快適感も夏と同様に向上することができる。さらに、現在既に設けられている外気温センサ92のセンサ値を用いて仰角判定を行うようにしているので、低コストで、且つ容易に季節を推定することができる。また、冬期に、FACE吹出口21、22、31、32から快適な冷風が吹き出すように、検出日射量の補正と同時に、実際の吹出温度または目標吹出温度(TAO)も補正するようにしても良い。
【0210】
なお、本実施形態では、図69のグラフに示したように、外気温が所定温度(例えば15℃)以下の時に、検出日射量が大きくなる方向に補正した補正日射量を用いたが、図70のグラフに示したように、外気温が低い程、大きくなる方向に補正した補正日射量を用いても良い。すなわち、図69のグラフに示したように、太陽仰角による日射センサ値特性の変更は、図70のグラフに示したように、多段(段階的)に変更するようにしても良いし、リニア(連続的)に変更するようにしても良い。これにより、更にきめ細かい制御が可能となる。
【0211】
〔第11実施形態〕
次に、本実施形態のエアコンECU50による空調制御制御を図71および図72に基づいて説明する。ここで、図71はエアコンECU50による制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0212】
なお、図6のフローチャートと同一の番号は同一の制御処理内容であるため、説明を省略する。すなわち、ステップS3の時定数処理を行った後に、図65のフローチャートのステップS35と同様な日射センサ値仰角補正を行う(ステップS40)。これにより、ステップS4において、図72のグラフに示したように、検出日射量を補正した補正日射量(制御に用いる日射量)を用いることで、乗員が快適と感じる目標吹出温度(TAO)を算出することができる。
【0213】
また、ステップS5におけるブロワ4の印加するブロワ制御電圧演算、ステップS6における吹出口モード決定、ステップS7におけるA/M開度演算も、乗員が快適と感じるブロワ制御電圧(ブロワ4の送風量)、吹出口モード、A/M開度(実際の吹出温度)を算出することができる。
【0214】
〔他の実施形態〕
第1実施形態では、吹出口モードがFOOTモードまたはF/Dモードの時も運転席側サイドFACE吹出口22および助手席側サイドFACE吹出口32から空調風(主に温風)を吹き出すようにしたが、吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードの時のみ運転席側サイドFACE吹出口22および助手席側サイドFACE吹出口32から空調風を吹き出すようにしても良い。また、センター、サイドルーバー41、45のスイングを一時的に停止するスイング一時停止制御や、センター、サイドルーバー41、45のランダムスイング制御を空調状態が車室内を冷房する冷房状態の時だけでなく、空調状態が車室内を暖房する暖房状態の時にも採用しても良い。
【0215】
本実施形態では、運転席側、助手席側センタースインググリル、運転席側、助手席側サイドスインググリルをインストルメントパネル40に固定したが、各センター、サイドスインググリルを左右方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良く、各センター、サイドスインググリルを上下方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良い。この場合には、スインググリル本体を吹出状態可変手段として揺動させるようにしても良い。
【0216】
本実施形態では、吹出口から吹き出す空調風のスイング範囲、吹出方向または吹出位置を変更するスイングルーバー(風向可変ルーバー)または風向可変グリル等の吹出状態可変手段を各FACE吹出口21、22、31、32に設けたが、車室内の車両側面、車室内の中央部(例えばコンソールボックス付近)または車両の天井部に設けた吹出口に風向可変ルーバーまたは風向可変グリル等の吹出状態可変手段を設けても良い。
【0217】
本実施形態では、吹出口から吹き出す空調風のスイング範囲、吹出方向または吹出位置を変更するスイングルーバーとして、各FACE吹出口に左右方向に揺動するセンター、サイドルーバー41、45および上下方向に揺動するセンター、サイドルーバー45の両方を設けたが、スイングルーバーとして、各FACE吹出口に水平方向に揺動するセンター、サイドルーバー41、45または上下方向に揺動するセンター、サイドルーバー41、45のいずれか一方のみを設けても良い。
【0218】
本実施形態では、1個のブロワ4を回転させることにより空調ダクト2の各FACE吹出口21、22、31、32から車室内に空調風を吹き出すように構成したが、2個の送風機を回転させることにより空調ダクト2の運転席側、助手席側FACE吹出口から車室内に空調風を吹き出す配風量を変更可能なように構成しても良く、FACE吹出口の数に対応した個数の送風機を回転させることにより空調ダクト2の各FACE吹出口から車室内に空調風を吹き出す配風量を変更可能なように構成しても良い。また、各FACE吹出口毎、または一方側、他方側吹出口毎に互いに独立して乗員への配風量を変えるようにしても良い。
【0219】
本実施形態では、本発明を運転席(右座席)側空調ゾーンと助手席(左座席)側空調ゾーンとの左右の温度調節を互いに独立して行うことが可能な左右独立温度コントロール方式の空調ユニット1を備えた車両用空調装置に適用したが、本発明を車室内の前部座席側空調ゾーンと後部座席側空調ゾーンとの前後の温度調節を互いに独立して行うことが可能な前後独立温度コントロール方式の空調ユニットを備えた車両用空調装置に適用しても良い。また、本発明を車室内の温度調節を1つの吹出温度可変手段により行うことが可能な空調ユニットを備えた車両用空調装置に適用しても良い。
本実施形態の各機能は、マルチディスプレイ等の操作によりON、OFFを乗員が選択できることが望ましい。
【0220】
本実施形態では、空調負荷検出手段として日射強度検知手段を有する日射センサ93を設けたが、日射強度検知手段、日射方向検知手段および日射高度検知手段を有する日射センサを設けても良い。また、日射センサとして、カーナビゲーションシステムのマイクロコンピュータにその日時の太陽高度や車両の現在位置に対する日射方向を記憶させている場合には、そのカーナビゲーションシステムの出力信号を日射センサ信号としてエアコンECUに読み込むようにしても良い。
【0221】
そして、日射センサ93としては、運転席側、助手席側空調ゾーン内に照射される日射量(日射強度)を検知する日射強度検知手段(例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、太陽電池)、太陽光の照射方向(日射方向、日射方位角)を検知する日射方向検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)、および太陽光の高度(日射仰角、日射高度、太陽仰角)を検知する日射高度検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)を有するものを利用しても良い。
【0222】
なお、車室内の空調負荷(車室内熱負荷)を検出する空調負荷検出手段としては、日射量の他に、車室内温度、設定温度と車室内温度との温度偏差、外気温、エバ後温度、冷却水温、車速、送風量または乗員数等が考えられ、これらの値を検出するセンサや、温度を設定する温度設定手段をも空調負荷検出手段として使用できる。ここで、内気温センサ91を2個使用して、運転席側空調ゾーン内および助手席側空調ゾーン内にそれぞれ設置しても良い。
【0223】
そして、少なくとも1つ以上の空調ゾーンで互いに独立して、センター、サイドルーバー41、45のスイングを一時的に停止するスイング一時停止制御を行うようにしても良い。また、運転席側センターFACE吹出口21のセンタールーバー41、45または運転席側サイドFACE吹出口22のサイドルーバー41、45のスイングを一時的に停止するスイング一時停止制御を互いに独立して行うようにしても良い。同様に、助手席側センターFACE吹出口31のセンタールーバー41、45または助手席側サイドFACE吹出口32のサイドルーバー41、45のスイングを一時的に停止するスイング一時停止制御を互いに独立して行うようにしても良い。
【0224】
本実施形態では、吹出状態可変手段の作動位置を検出する方法として、ステッピングモータ44、48に送るパルスをカウントする方法や、ポテンショメータを用いて吹出状態可変手段の作動位置を検出するようにしているが、ポテンショメータを持たないサーボモータにおいて電機子ノイズをカウントすることで、ステッピングモータ44、48のように作動角を演算して吹出状態可変手段の作動位置を検出するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用空調装置の全体構成を示した構成図である(第1実施形態)。
【図2】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第1実施形態)。
【図3】エアコン操作パネルを示した正面図である(第1実施形態)。
【図4】吹出状態可変装置の全体構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図5】(a)はルーバー左右方向揺動機構の構成を示した概略図で、(b)はルーバー上下方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図6】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図7】(a)は目標吹出温度に対するブロワ制御電圧特性を示した特性図で、(b)は目標吹出温度に対する吹出口モード特性を示した特性図である(第1実施形態)。
【図8】エアコンECUによるスイングルーバー制御を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図9】(a)はルーバー原点補正方向を示した説明図で、(b)は前席シートポジションとスイング範囲との関係を示した特性図である(第1実施形態)。
【図10】(a)は車室内への空調風のスイング範囲を示した説明図で、(b)はセンター、サイドルーバーのスイング高さを示した模式図である(第1実施形態)。
【図11】(a)は運転席側、助手席側の日射方向、日射強度に対するルーバーのスイング範囲特性を示した特性図で、(b)は車室内温度に対する補正角度特性を示した特性図である(第1実施形態)。
【図12】日射左右比に対するスイング範囲の補正係数を示した特性図である(第1実施形態)。
【図13】(a)はランダムスイングの作動パターンを示したタイムチャートで、(b)はOFF時間列を示した図である(第1実施形態)。
【図14】各空調負荷とトータル停止時間との関係を示した特性図である(第1実施形態)。
【図15】(a)は日射量とスイング停止方向との関係を示した特性図で、(b)は車室内温度と設定温度の差および車室内温度とスイング停止方向との関係を示した特性図である(第1実施形態)。
【図16】スイング停止方向の変化幅を示した説明図である(第1実施形態)。
【図17】(a)〜(e)は日射方向とスイング停止方向との関係を示した作動説明図である(第1実施形態)。
【図18】日射方向および日射量とスイング停止方向との関係を示した特性図である(第1実施形態)。
【図19】(a)〜(e)は日射方向とスイング停止方向との関係を示した作動説明図である(第1実施形態)。
【図20】各空調負荷に対する前席乗員顔部停止時間割合と後席乗員顔部停止時間割合を示した特性図である(第1実施形態)。
【図21】各空調負荷に対する前席乗員顔部停止時間割合と後席乗員顔部停止時間割合を示した特性図である(第1実施形態)。
【図22】各空調負荷に対する前席乗員顔部停止時間割合と後席乗員顔部停止時間割合を示した特性図である(第1実施形態)。
【図23】日射量および車室内温度に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図24】日射量および車室内温度と設定温度の偏差に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図25】日射量および外気温に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図26】ブロワ制御電圧および車室内温度に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図27】ブロワ制御電圧および車室内温度と設定温度の差に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図28】ブロワ制御電圧および外気温に対する前席乗員方向でのスイング停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図29】最も近傍の乗員側になるタイミングを同じにする場合の運転席側、助手席側センタールーバーの制御方法を示したタイムチャートである(第1実施形態)。
【図30】最も隣接する他の空調ゾーン側になるタイミングを同じにする場合の運転席側、助手席側センタールーバーの制御方法を示したタイムチャートである(第1実施形態)。
【図31】(a)は車室内温度と設定温度の差に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図で、(b)は車室内温度と設定温度の差に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図32】(a)は車室内温度と設定温度の差に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図で、(b)は車室内温度と設定温度の差に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図33】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図34】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図35】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図36】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図37】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図38】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図39】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図40】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図41】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図42】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図43】各空調負荷に対する運転席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図44】各空調負荷に対する助手席側乗員顔部停止時間を示した特性図である(第1実施形態)。
【図45】エアコン操作パネルを示した正面図である(第2実施形態)。
【図46】ルーバー左右方向揺動機構の構成を示した斜視図である(第3実施形態)。
【図47】(a)は集中拡散スインググリルからの吹出状態がスポット吹出モードの場合を示した説明図で、(b)は集中拡散スインググリルからの吹出状態がワイド吹出モードの場合を示した説明図である(第3実施形態)。
【図48】(a)は車両のインストルメントパネルを示した正面図で、(b)は空調ユニットのフェイスダクトを示した概略図である(第4実施形態)。
【図49】車両用ドラムベンチレータを示した断面図である(第5実施形態)。
【図50】(a)は空気吹出ルーバーを示した斜視図で、(b)は空気吹出ルーバーを示した断面図である(第6実施形態)。
【図51】インストルメントパネルを示した正面図である(第7実施形態)。
【図52】吹出ダクト、支持枠および回転バルブを示した図である(第7実施形態)。
【図53】(a)〜(c)はスポット吹出モード時の回転バルブの回動位置を示した断面図である(第7実施形態)。
【図54】(a)〜(c)はワイド吹出モード時の回転バルブの回動位置を示した断面図である(第7実施形態)。
【図55】(a)〜(e)は回転バルブの変形例を示した斜視図である(第8実施形態)。
【図56】(a)〜(e)は日射方向に対するスイング停止時の吹出位置を示した作動説明図である(第8実施形態)。
【図57】(a)〜(f)は車室内温度に対するスイング停止時の吹出位置を示した作動説明図である(第8実施形態)。
【図58】(a)はスイング停止時の吹出位置変更方法を示した作動説明図で、(b)は車室内温度や車室内温度と設定温度の差とスイング停止時の吹出位置との関係を示した特性図である(第8実施形態)。
【図59】(a)はスイング停止時の吹出位置変更方法を示した作動説明図で、(b)は日射方向とスイング停止時の吹出位置との関係を示した特性図である(第8実施形態)。
【図60】車両用空調装置の全体構成を示した構成図である(第9実施形態)。
【図61】(a)はルーバー左右方向揺動機構の構成を示した概略図で、(b)はルーバー上下方向揺動機構の構成を示した概略図である(第9実施形態)。
【図62】車室内への空調風のスイング範囲を示した模式図である(第10実施形態)。
【図63】太陽仰角と日射センサの相対感度との関係を示したグラフである(第10実施形態)。
【図64】検出日射量に対する前席乗員に向ける一時停止時間を示したグラフである(第10実施形態)。
【図65】エアコンECUによるスイングルーバー制御を示したフローチャートである(第10実施形態)。
【図66】仰角判定手段を示した特性図である(第10実施形態)。
【図67】高仰角時の検出日射量および低仰角時の補正日射量に対する乗員に向ける一時停止時間を示したグラフである(第10実施形態)。
【図68】(a)はスイング停止方向を示した模式図で、(b)は乗員方向および正面方向へのスイングを示したタイムチャートである(第10実施形態)。
【図69】乗員の快適感を示したグラフである(第10実施形態)。
【図70】検出日射量と乗員に向ける一時停止時間との関係を示したグラフである(第10実施形態)。
【図71】エアコンECUによる制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第11実施形態)。
【図72】検出日射量と制御に用いる日射量(補正日射量)との関係を示したグラフである(第11実施形態)。
【符号の説明】
1 空調ユニット
2 空調ダクト
21 運転席側センターFACE吹出口
22 運転席側サイドFACE吹出口
31 助手席側センターFACE吹出口
32 助手席側サイドFACE吹出口
41 運転席側、助手席側センタールーバー(吹出状態可変手段)
41 運転席側、助手席側サイドルーバー(吹出状態可変手段)
44 ステッピングモータ(アクチュエータ)
45 運転席側、助手席側センタールーバー(吹出状態可変手段)
45 運転席側、助手席側サイドルーバー(吹出状態可変手段)
48 ステッピングモータ(アクチュエータ)
50 エアコンECU(吹出状態制御手段)
93 日射センサ(空調負荷検出手段、日射情報検出手段)
Claims (23)
- (a)空調ゾーン内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットと、 (b)前記吹出口から吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータと、
(d)空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段と、
(e)この空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、所定時間、前記吹出状態可変手段の揺動を、乗員方向で停止またはゆっくり揺動するように前記アクチュエータを制御する、
あるいは前記空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が大きい程、前記吹出状態可変手段の揺動を乗員方向で、停止またはゆっくり揺動する時間が長くなる、あるいはゆっくり揺動する範囲が広くなるように前記アクチュエータを制御する吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置において、
前記空調負荷検出手段は、日射方向を検知または演算する日射方向検知手段と、日射強度を検知または演算する日射強度検知手段と、車室内温度を検出する内気温検出手段とを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射方向に基づいて、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する方向または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する方向を決定すると共に、
前記日射強度と前記車室内温度とから、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記乗員方向とは、前席乗員方向であることを特徴とする車両用空調装置。 - (a)空調ゾーン内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットと、 (b)前記吹出口から吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータと、
(d)空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段と、
(e)この空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以下の時に、空調負荷が所定値以上大きい時よりも、乗員方向から外れる方向で、所定時間、前記吹出状態可変手段の揺動を停止またはゆっくり揺動するように前記アクチュエータを制御する、
あるいは前記空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が小さい程、前記吹出状態可変手段の揺動を前席乗員方向から外れる方向または後席乗員方向で、停止またはゆっくり揺動する時間が長くなる、あるいはゆっくり揺動する範囲が広くなるように前記アクチュエータを制御する吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置において、
前記空調負荷検出手段は、日射方向を検知または演算する日射方向検知手段と、日射強度を検知または演算する日射強度検知手段と、車室内温度を検出する内気温検出手段とを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射方向に基づいて、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する方向または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する方向を決定すると共に、
前記日射強度と前記車室内温度とから、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記乗員方向とは、前席乗員方向であることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項3または請求項4に記載の車両用空調装置において、
前記乗員方向から外れる方向とは、後席乗員方向であることを特徴とする車両用空調装置。 - (a)空調ゾーン内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットと、 (b)前記吹出口から吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータと、
(d)空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段と、
(e)この空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、所定時間、前記吹出状態可変手段の揺動を、乗員方向で停止またはゆっくり揺動するように前記アクチュエータを制御する吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置において、
前記空調負荷検出手段は、日射量を検出する日射情報検出手段と、車室内温度を検出する内気温検出手段とを備え、
前記空調ユニットは、空気流を発生させるブロワを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射量を用いてブロワ風量を決定すると共に、
前記ブロワ風量と前記車室内温度とから、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定することを特徴とする車両用空調装置。 - (a)空調ゾーン内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットと、 (b)前記吹出口から吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータと、
(d)空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段と、
(e)この空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、所定時間、前記吹出状態可変手段の揺動を、乗員方向で停止またはゆっくり揺動するように前記アクチュエータを制御する吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置において、
前記車両用空調装置は、空調ゾーンの設定温度を設定する温度設定手段を備え、
前記空調負荷検出手段は、日射量を検出する日射情報検出手段と、車室内温度を検出する内気温検出手段とを備え、
前記空調ユニットは、空気流を発生させるブロワを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射量を用いてブロワ風量を決定すると共に、
前記ブロワ風量と前記車室内温度と前記設定温度との温度偏差とから、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定することを特徴とする車両用空調装置。 - (a)空調ゾーン内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットと、 (b)前記吹出口から吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段に揺動運動を与えるアクチュエータと、
(d)空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段と、
(e)この空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、所定時間、前記吹出状態可変手段の揺動を、乗員方向で停止またはゆっくり揺動するように前記アクチュエータを制御する吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置において、
前記空調負荷検出手段は、日射量を検出する日射情報検出手段と、車室内温度を検出す る内気温検出手段と、外気温を検出する外気温検出手段とを備え、
前記空調ユニットは、空気流を発生させるブロワを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射量を用いてブロワ風量を決定すると共に、
前記ブロワ風量と前記外気温とから、前記吹出状態可変手段の揺動を停止する時間または前記吹出状態可変手段がゆっくり揺動する時間を決定することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記吹出口は、センターフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口を有し、
前記吹出状態可変手段は、前記センターフェイス吹出口に設置されたセンタールーバー、および前記サイドフェイス吹出口に設置されたサイドルーバーであって、
前記吹出状態制御手段は、前記日射方向が車両の進行方向左横からの場合には、前記センタールーバーおよび前記サイドルーバーの向きを乗員の左半身付近に空調風が集中するように、停止またはゆっくり揺動させる、
あるいは前記日射方向が車両の進行方向に対して左斜め前方からの場合には、前記サイドルーバーのみの向きを乗員の左半身付近とし、停止またはゆっくり揺動させる、
あるいは前記日射方向が車両の進行方向に対して真正面または真後ろの場合には、前記センタールーバーおよび前記サイドルーバーの向きを乗員の頭胸部付近とし、停止またはゆっくり揺動させることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ゾーンは、複数の空調ゾーンよりなり、
前記吹出口は、前記複数の空調ゾーンに向けて空調風をそれぞれ吹き出すための複数の吹出口よりなり、
前記吹出状態可変手段は、前記複数の吹出口から吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記アクチュエータは、前記複数の吹出状態可変手段の各々に揺動運動を与えるアクチュエータであって、
前記吹出状態制御手段は、前記複数の吹出状態可変手段の揺動時に、最も隣接する空調ゾーンに近づくタイミングがほぼ同じになるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ゾーンは、複数の空調ゾーンよりなり、
前記吹出口は、前記複数の空調ゾーンに向けて空調風をそれぞれ吹き出すための複数の吹出口よりなり、
前記吹出状態可変手段は、前記複数の吹出口から吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記アクチュエータは、前記複数の吹出状態可変手段の各々に揺動運動を与えるアクチュエータであって、
前記吹出状態制御手段は、前記複数の吹出状態可変手段の揺動時に、最も近傍の乗員に近づくタイミングがほぼ同じになるか、あるいは最も近傍の乗員から離れるタイミングがほぼ同じになるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ゾーンは、複数の空調ゾーンよりなり、
前記吹出口は、前記複数の空調ゾーンに向けて空調風をそれぞれ吹き出すための複数の吹出口よりなり、
前記吹出状態可変手段は、前記複数の吹出口から吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記アクチュエータは、前記複数の吹出状態可変手段の各々に揺動運動を与えるアクチュエータであって、
前記吹出状態制御手段は、前記複数の吹出状態可変手段の揺動中に、乗員方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または乗員集中吹出時間と、乗員方向から外れる方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または車室内拡散吹出時間との合計が、異なる空調ゾーンでほぼ等しくなるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ゾーンは、複数の空調ゾーンよりなり、
前記吹出口は、前記複数の空調ゾーンに向けて空調風をそれぞれ吹き出すための複数の吹出口よりなり、
前記吹出状態可変手段は、前記複数の吹出口から吹き出す空調風の吹出状態をそれぞれ変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記アクチュエータは、前記複数の吹出状態可変手段の各々に揺動運動を与えるアクチュエータであって、
前記吹出状態制御手段は、前記複数の吹出状態可変手段の揺動中に、前席乗員方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または前席乗員集中吹出時間と、後席乗員方向での停止またはゆっくり揺動する時間またはゆっくり揺動する範囲または車室内拡散吹出時間との合計が、異なる空調ゾーンでほぼ等しくなるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調負荷検出手段は、前記複数の空調ゾーン内の空調負荷を検出する空調負荷検出手段であることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態可変手段は、複数の吹出口から複数の空調ゾーン内にそれぞれ吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記吹出状態制御手段は、前記空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、異なる空調ゾーン間の空調負荷に差がある時でも、前記複数の吹出状態可変手段の制御がほぼ等しくなるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態可変手段は、複数の吹出口から複数の空調ゾーン内にそれぞれ吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記吹出状態制御手段は、前記空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が所定値以上の時に、異なる空調ゾーン間の空調負荷に差がある時でも、空調負荷が所定値以下の時に比べて、前記複数の吹出状態可変手段の制御に差をつけないように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態可変手段は、複数の吹出口から複数の空調ゾーン内にそれぞれ吹き出す空調風の吹出状態を変更することが可能な複数の吹出状態可変手段よりなり、
前記吹出状態制御手段は、前記空調負荷検出手段にて検出した空調負荷が大きい程、異なる空調ゾーン間の空調負荷に差がある時でも、前記複数の吹出状態可変手段の制御に差をつけないように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の車両用空調装置において、
少なくとも1つ以上の空調ゾーンで互いに独立に行えることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の車両用空調装置において、
少なくとも1つ以上の吹出状態変更手段で互いに独立に行えることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項19のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ユニットは、車両の車室内に向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ユニットであって、
前記空調負荷検出手段は、日射量を検出する日射情報検出手段と、外気温を検出する外気温検出手段とを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射情報検出手段にて検出された検出日射量を、前記外気温検出手段にて検出された外気温に応じて補正すると共に、
その補正した日射量に応じて前記吹出状態可変手段の作動状態を変更するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項19のいずれかに記載の車両用空調装置において、
前記空調ユニットは、車両の車室内を空調する空調ユニットであって、
前記空調負荷検出手段は、日射量を検出する日射量検出手段と、外気温を検出する外気温検出手段とを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記日射量検出手段にて検出された検出日射量を、前記外気温検出手段にて検出された外気温に応じて補正すると共に、
その補正した日射量に応じて送風量、目標吹出温度、吹出風量、吹出温度、吹出口モードまたは吹出状態を変更することを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項20または請求項21に記載の車両用空調装置において、
前記検出日射量は、前記外気温検出手段にて検出された外気温が所定温度以下の時に、大きくなる方向に補正されることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項20または請求項21に記載の車両用空調装置において、
前記検出日射量は、前記外気温検出手段にて検出された外気温が低い程、大きくなる方向に補正されることを特徴とする車両用空調装置。
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