JP3997710B2 - 光コネクタ用フェルール、その成形用金型、光コネクタ用フェルールの製造方法、及び光コネクタ用フェルールの検査方法 - Google Patents

光コネクタ用フェルール、その成形用金型、光コネクタ用フェルールの製造方法、及び光コネクタ用フェルールの検査方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、光ファイバ心線の接続に用いられる光コネクタの一構成部品となる光コネクタ用フェルール、フェルール成形用金型、光コネクタ用フェルールを製造する方法、および光コネクタ用フェルールを検査する方法に関する。
背景技術
図18及び図19は、MTコネクタと呼ばれている一対の光コネクタCgを示す。それぞれの光コネクタCgは、光コネクタ用のフェルール81B、および光ファイバ心線82を有する。フェルール81Bは、成形樹脂で形成され、光ファイバ心線82の端部に取り付けられている。フェルール81Bは、一対のガイド孔92およびファイバ配列孔93を有する。接続されるべき光コネクタCgと対面する接端面91には、一対のガイド孔92およびファイバ配列孔93の開口部が現れている。ファイバ配列孔93には、光ファイバ心線82に含まれる光ファイバがそれぞれ配列される。一対のガイド孔92は、接端面91から反対側の端面までフェルール81B内を貫通している。一対の孔92の各々には、ステンレス製のガイドピン83が挿入される。一対の光コネクタCgは、ガイド孔92にガイドピン83が挿入されて位置決めされた後に、図19に示されるように接続される。その接続は、クランプスプリング85を用いて保持される。このタイプの光コネクタの詳細は、JIS C 5981に記載されている。
発明の開示
発明者は、このような光コネクタを検討した結果、以下のような課題を発見した。
光コネクタCgは、金属製ガイドピン83と樹脂製フェルール81Bとを有している。ガイドピン83の熱膨張係数とフェルール81Bの熱膨張係数とが異なるので、温度が変化するとガイドピン83とガイド孔92との間に応力が生じる。この応力に起因して、一方の光コネクタCgに保持された光ファイバの位置が、他方の光コネクタCgに保持された光ファイバの位置に対してシフトすることが考えられる。このようなシフトは、接続損失の増大につながると、発明者は考えている。
特開平6−138344号公報は、光コネクタに関する技術を開示している。この光コネクタは、樹脂製フェルール内に別個のガイド部材を含んでいる。一方の種類のガイド部材は、光ファイバを固定するためのファイバ固定溝およびガイド凸部を含む。別の種類のガイド部材は、光ファイバを固定するためのファイバ固定溝およびガイド凹部を含む。これらのガイド部材は、インバー合金で一体に形成されている。ファイバ固定溝は、底面および2側面を有する矩形断面の溝である。ガイド凸部は、矩形断面を有する。ガイド凹部は、挿入されたガイド凸部を、対向する2側面によってガイドする。
上記の文献に記載された光コネクタについて考察した結果、発明者は以下の点に着目した。
ファイバ固定溝が底面および2側面を有する溝であるので、固定された光ファイバは、インバ合金の3面と、これと異なる材料の一面に囲まれる。ガイド凹部は、挿入されたガイド凸部を、対向する2側面でガイドする。このため、ガイド凸部は、同一材料で形成された2側面と、異なる材料で形成された2側面とによって囲まれる。収納されている光ファイバ、ガイド凸部、およびガイド凹部は、複数の材料で周囲を囲まれているので、温度変化に際して、接触する材料に依存した熱応力を受ける。このような熱応力は、更に高速の伝送の達成することを阻害すると、発明者は考えている。
したがって、本発明の目的は、良好な伝送特性を有する光コネクタを形成することを可能にする光コネクタ用フェルール、このフェルールの成形に適した成形金型、このフェルールを製造する方法、このフェルールを検査する方法を提供することにある。
本発明に係わる光コネクタ用フェルールは、1または複数の光ファイバ収納孔と、コネクタ面と、第1のガイド突起と、ガイド係合部とを備える。光ファイバ収納孔は、内側面および一端部を有する。内側面は、所定の軸に沿って伸び樹脂で形成されている。内側面は、光ファイバが挿入されると、光ファイバの側面に対面するように設けられている。コネクタ面には、光ファイバ収納孔が開口している。第1のガイド突起およびガイド係合部は、接続されるべきコネクタとの位置合わせに利用されるように、所定の軸に沿ってコネクタ面から連続的に伸びている。光ファイバ収納孔、コネクタ面、第1のガイド突起、およびガイド係合部は、同一の樹脂で一体に形成されている。
光ファイバ収納孔、第1のガイド突起、およびガイド係合部は、同一の材料で一体の部品として形成されているので、金属製ガイドピンといった異なる材料の位置合わせ部品が不要になる。異なる材料の追加部品が位置決めのために必要ないので、温度変化に起因する応力がフェルールの特定の部分に集中することがない。また、応力は一体の樹脂を通してフェルール全体に分散されるので、この応力に起因するフェルールの変形もフェルールの特定部分にのみで生じることはない。故に、温度変化に起因する光コネクタ収納孔の位置ずれが低減される。この結果、接続されるべき一対のコネクタの各々が備えるフェルール間の位置合わせ精度が改善される。
本発明に係わるフェルールでは、光ファイバ収納孔は、第1のガイド突起とガイド係合部との間に設けられることができる。このため、光ファイバ収納孔の位置の検査が容易になる。また、光学的に結合されるべき光ファイバが収納される光ファイバ収納孔の両側にガイド突起およびガイド係合部を設けるので、ガイド突起とガイド係合部との変形に関する位置ズレが補償される。ガイド係合部は、第2のガイド突起またはガイド孔であることができる。
本発明に係わるフェルールでは、ガイド係合部は、コネクタ面から所定の軸に沿って連続的に伸び樹脂で形成された第2のガイド突起を含むことができる。第1および第2のガイド突起は、同一材料で形成され、また所定に軸に沿ってコネクタ面から連続的に伸びている。この結果、温度変化に起因する光コネクタ収納孔の位置合わせ精度がさらに改善される。
本発明に係わるフェルールでは、第1および第2のガイド突起の断面積は、それぞれのガイド突起の根本部において、コネクタ面へ向かう所定の軸に沿って徐々に大きくなることができる。断面積を大きくすると、着脱に際して力が集中しやすい各ガイド突起の根元部における機械的な強度が大きくなる。
本発明に係わるフェルールでは、第1および第2のガイド突起の各々は、所定の軸に交差する平面において円形断面を有することができる。断面形状の対称性が高いと、樹脂でガイド突起を形成する場合にもこの突起の直線性を保つために有利である。これによって、光コネクタ収納孔の位置合わせ精度がさらに改善される。
また、本発明に係わるフェルールでは、ガイド係合部は、所定の軸に沿って伸びる樹脂で形成された内側面および樹脂で形成された底面を有するガイド孔を含むことができる。
フェルールは、所定に軸に沿って伸びるガイド突起およびガイド孔を備えるので、接続されるべき一対のコネクタに同一種類のフェルールを適用することができる。つまり、一方のフェルールのガイド突起は、他方のフェルールのガイド孔にそれぞれ挿入される。ガイド突起は同一の材料で形成されたガイド孔に挿入されるので、温度の変化による変形に関して、ガイド突起およびガイド孔は同一の振る舞いを示す。この結果、光コネクタ収納孔の位置合わせ精度が改善される。
本発明に係わるフェルールでは、第1のガイド突起の断面積は、その根本部において、コネクタ面へ向かう所定の軸の沿って順に大きくなることができる。また、本発明に係わるフェルールでは、第1のガイド突起は、所定の軸に交差する平面において円形断面を有することができる。
本発明に係わるフェルールでは、ガイド孔の内側面は、所定の軸に沿って伸び側面に対して傾斜された第1のテーパ面をガイド突起の開口端部に含むことができる。第1のテーパ面は、ガイド突起がガイド孔へ滑らかに挿入されることを可能にする。
本発明に係わるフェルールでは、ガイド孔は、所定に軸に交差する平面において円形断面を有することができる。ガイド孔は、断面形状に関して高い幾何学的な対称性を有するので、ガイド孔が熱膨張または収縮しても、位置合わせ精度を確保することができる。
本発明に係わるフェルールでは、第1のガイド突起は、その先端部に、所定の軸に対して傾斜された第2のテーパ面を有することができる。このため、挿入されるべきガイド孔に対する位置合わせが容易になる。
本発明に係わるフェルールでは、ガイド孔の内側面は、その開口部に、所定の軸に沿って伸び内側面に対して傾斜された第3のテーパ面を有することができる。また、第1のガイド突起は、その先端部に、所定の軸に対して傾斜された第4のテーパ面を有することができる。第3のテーパ面の傾斜角は、第4のテーパ面の傾斜角と関連付けられている。
第4のテーパ面はガイド突起の根元部の強度を増強することを可能にし、且つ第3のテーパ面は、強度の増強されたガイド突起をガイド孔に収納することを確実にする。また、ガイド突起の第4のテーパ面と、これを受けるガイド孔の第3のテーパ面とは同一の材料で形成されているので、コネクタ面の近傍において、ガイド突起およびガイド孔は熱膨張収縮に関して同様の振る舞いを示す。この振る舞いによって、光コネクタ収納孔の位置合わせ精度が改善される。
このようなフェルールは、射出成形法を適用して成形することができる。この方法によって、成形サイクルを短くして生産効率を向上させることができる。
本発明に係わるフェルールでは、このフェルールを一体に形成するための樹脂材料は、シリカ粒子充填剤39〜65重量%及び珪酸塩ウィスカー充填剤26〜35重量%を含有し、かつ、シリカ粒子充填剤と珪酸塩ウィスカー充填剤との合計含有量が65〜85重量%であるPPS樹脂を含むことが好ましい。
この樹脂を採用すると、成形寸法の精度及び成形品の強度を確保でき、また、成形品の寸法の経時変化を抑止することができる。この樹脂は熱可塑性樹脂であるので、成形用金型からの離型性も良く、離型の際に起こりうるガイド突起の破損も抑止できる。
本発明に係わるフェルールを成形するために好適な成形金型は、フェルールを形成するためのキャビティを規定する第一、第二、第三、および第四の金型ユニットを備える。第一および第二の金型ユニットは、キャビティを規定するように位置合わせされると、第三および第四の金型ユニットを所定の軸の方向から収容する収容部を提供する。第三および第四の金型ユニットは、それぞれ、所定の軸に沿って移動され収容部に収容される。第三および第四の金型ユニットは、それぞれ、組み合わされた第一および第二の金型ユニットに対して相対的に移動可能である。
本発明に係わるフェルールを成形するために好適な成形金型では、第三の金型ユニットは、ガイド突起形成部と、少なくとも1本のピンと、係合形成部とを有することができる。ガイド突起形成部は、ガイド突起を形成するように所定の軸の方向に伸びる内側面および底面を有する。ピンは、ファイバ収納部を提供するように所定の軸の方向に伸びる。係合形成部は、係合部を形成するように設けられ所定の軸の方向に伸びる。第三の金型ユニットのピンは、テーパが形成された先端部を有することができる。
また、本発明に係わるフェルールを成形するために好適な成形金型では、第三の金型ユニットは、一対のガイド突起形成部と、1または複数のピンとを有することができる。これらのピンは、一対のガイド突起形成部の間に設けられることができる。
さらに、本発明に係わるフェルールを成形するために好適な成形金型では、第三の金型ユニットは、ガイド突起形成部、突起部、および1または複数のピンを有する。突起部は、ガイド孔を提供するように所定の軸の方向に伸びる側面を有する。これらのピンは、ガイド突起形成部および突起部の間に設けられることができる。
このような成形金型は、フェルールを形成するためのキャビティを規定する第一、第二、第三、および第四の金型ユニットを備えるので、一体的に成形された樹脂製フェルールを成形することができる。このため、上述したように優れた利点を有する光コネクタ用フェルールを容易かつ確実に製造することができる。
第三および第四の金型ユニットは、第一および第二の金型ユニットに対して所定の軸の方向に相対的に移動可能であるので、フェルール収納孔に対して高精度に位置決めされたガイド係合部、ガイド突起、およびガイド孔を備えたフェルールを製造することができる。
本発明に係わるフェルールを成形するために好適な成形金型では、第三の金型ユニットは、ガイド突起形成部の底面および内側面の少なくともいずれかから第三の金型ユニットの表面に到達する通気孔を有することができる。この通気孔は、樹脂流動体がガイド突起形成部に流入する際にガス抜き孔として役立つので、ガイド突起形成部へ樹脂を容易に流入させる。樹脂流は、底面に向かって流入するので、通気孔は底面に設けられることが好ましい。樹脂流の流出を防止しつつ、ガスを効率的に抜くためには、通気孔の直径は0.1mm以上0.2mm以下が望ましい。
ガイド突起形成部の内側面および底部には、窒化クロムコーティングを施すことができる。この窒化クロムコーティング層は、成形後のフェルールを離型させるときに、突起形成部の離型性を向上させ、離型の際にガイド突起が破損されることを抑止するために有効である。また、破損しない場合にも、ガイド突起の寸法精度を高く維持するために役立つ。この結果、良好な伝送特性を実現するフェルールを製造することができる。
本発明に係わる光コネクタ用フェルールを好適に製造する方法は、以下のステップを備える:(1)本明細書に記載された成形金型のいずれかを準備し、(2)成形金型に成形樹脂を導入してフェルールを形成し、(3)フェルールのガイド突起またはガイド孔に対するファイバ収納孔の位置の検査を行い、検査に合格した樹脂形成物と検査に不合格の前記樹脂形成物とを選別する。
このようなフェルールを製造する方法にあっては、以下に説明する検査方法を適用することができる。
本発明に係わる光コネクタ用フェルールの検査方法は、既に説明したようなフェルールのガイド突起に対するファイバ収納孔の位置を検査することを可能にする。
この方法は、以下のステップを備える:(4)第1および第2のガイド突起を挿入するように設けられ第1の面から第2の面に貫通する一対の位置決め孔を備える治具を準備し、(5)治具の一対の位置決め孔を通過した光を受け、受けた光に基づいて治具の位置決め孔の位置を決定し、(6)位置決め孔にフェルールの第1および第2のガイド突起を挿入し、(7)ファイバ収納孔を通過した光を受け、受けた光に基づいてファイバ収納孔の位置を決定し、(8)決定された位置決め孔の位置と決定されたファイバ収納孔の位置とから、一対のガイド突起に対するファイバ収納孔の位置を検査する。
本発明に係わる光コネクタ用フェルールの検査方法は、以下のステップを備える:(9)第1のガイド突起を挿入するように設けられ第1の面から第2の面に貫通する一対の位置決め孔を備える第1の治具を準備し、(10)第1の治具の一対の位置決め孔を通過した光を受け、受けた光に基づいて第1の治具の位置決め孔の位置を決定し、(11)第1のガイド孔に挿入するように設けられた位置決め突起を備える第2の治具を準備し、この第2の治具の位置決め突起を一対の位置決め孔の一方に挿入し、(12)他方の位置決め孔にフェルールのガイド突起を挿入し、且つ位置決め突起をフェルールのガイド孔に挿入し、(13)ファイバ収納孔を通過した光を受け、受けた光の基づいてファイバ収納孔の位置を決定し、(14)位置決め孔の決定された位置と、前記ファイバ収納孔の決定された位置とから、一対のガイド突起に対するファイバ収納孔の位置を検査する。
ガイド突起に合わせて位置決めされた位置決め孔を備える治具を準備する。この位置決め孔の位置および光ファイバ収納孔の位置を光学的に測定しこの一方の位置データを基準にして、他方の位置を決定するようにしている。このため、ガイド突起およびガイド孔を含み一体の樹脂体からなるフェルールに対して、ガイド突起およびガイド孔に対するファイバ収納孔の位置を正確に検査することができる。
発明を実施するための最良の形態
理解を容易にするように、図面に共通した同一および類似の要素を指し示すために、可能な場合には、同一の参照符号を付す。これによって、重複する説明を省略する。
図1及び図2を参照しながら、本発明の光コネクタ用フェルールの実施の形態について説明する。図2は、図1のI−I断面における断面図である。
光コネクタCaは、フェルール1Aと、フェルール1Aの一端面16から伸びる光ファイバ心線2とを備える。フェルール1Aは、この一端面16に対向するように設けられたコネクタ面11を有する。コネクタ面11は、接続されるべき光コネクタCbのコネクタ面21に対面している。コネクタ面11には、光コネクタCbのガイド孔20に挿入されるべき一対のガイド突起10が設けられている。
光コネクタCbは、フェルール1Bと、フェルール1Bの一端から伸びる光ファイバ心線2とを備える。フェルール1Bは、この一端に対向するように設けられたコネクタ面21を有する。コネクタ面21は、接続されるべき光コネクタCaのコネクタ面11に対面している。コネクタ面21には、一対のガイド突起10が挿入されるべき一対のガイド孔20が設けられている。一対のガイド孔20は、それぞれ、所定の軸6に沿って、コネクタ面21に対向する面まで貫通している。コネクタCbに使用されるフェルール1Bは、樹脂で一体に形成されたコネクタCb用の部品である。これによって、ガイド孔20の各々は、樹脂で形成された内側面を有する。
コネクタCaでは、一対のガイド突起10は、所定の軸6に沿ってフェルール1Aのコネクタ面11から連続的に伸びる。このため、フェルール1Aと一対のガイド突起10とは同一の材料で形成されている。ガイド突起10は、例えば、円柱状の形状を有するピンであることができる。ガイド突起は、所定の軸6に関してコネクタ面11から順に設けられた第1の部分10bおよび第2の部分10cを有する。第1の部分10bでは、一定の形状の断面領域を有することができ、第2の部分10cでは、所定に軸6に交差する平面における断面において、先端に向って順次に小さく断面積を有することができる。このため、ガイド突起10は、その先端部10cに、それぞれのガイド突起10が伸びる方向に関して傾斜されたテーパ面10aを備えることができる。
第2の部分10cは、一対のガイド突起10を、対応する一対のガイド孔21に容易に挿入することを可能にしている。第1の部分10bは、ガイド突起10をガイド孔20に挿入したときに、両コネクタCa、Cbが備える光ファイバの正確な位置合わせを可能にする。
ガイド突起10の長さは、ガイド突起10の直径の2倍以上、5倍以下の範囲であることが好ましい。この範囲が好適な理由を発明者は以下のように考えている。安定な結合を得るためには、例えばガイド突起を直径0.7mmの場合には2倍の1.4mmは必要である。ガイド突起10の長さが直径の2倍未満であると、コネクタが外れやすくなり、またガイド機能も十分に発揮されない。ガイド突起10の長さが直径の5倍を越えると、成形することが難しくなる。また、ガイド孔20への挿入中にわずかな挿入角の変化に伴ってガイド突起1に力が加わりやすくなり、必ずしも十分な機械的な強度が得られない。
フェルール1Aのコネクタ面11には、光ファイバ心線2内の光ファイバを配置する光ファイバ収納孔13の開口が設けられている。
また、コネクタ面11に対向する面16からは、導入孔15が、光ファイバ心線2を導入するように所定の軸6に沿って伸びている。挿入孔15には、光ファイバ心線2の先端に露出された光ファイバ2aがフェルール1Aに対して挿入される。
フェルール1Aは、1または複数の光ファイバを支持するための光ファイバ収納孔13を備えることができる。図1に示された光コネクタCaでは、光ファイバ心線2は4本の光ファイバ2aを備えている。これらの光ファイバを支持するために、フェルール1Aは、平行に配列された四つのファイバ収納孔13を備える。ファイバ収納孔13は、コネクタ面11から所定の軸6に沿ってフェルール1Aの内部を伸び導入孔15に出会う。
光ファイバ心線2は、それぞれの光ファイバがコネクタ面11に到達するように先端部が露出される。光ファイバ心線2がフェルール1Aの一端面16から導入孔15に差し込まれ、露出された光ファイバは、ファイバ収納孔13に挿入される。各光ファイバは、対応する光ファイバ収納孔13に収納される。光ファイバ導入孔15には、ブーツ4が嵌められる。
フェルール1Aの上面には、開口部14が設けられている。開口部14は、所定に軸6に直交する方向に伸びて、ファイバ収納孔13及びファイバ挿入孔15につながっている。開口部14には、光ファイバ2aを光ファイバ収納孔13に配置した後に、接着剤が充填される。開口部14から接着剤を充填させることにより、ファイバ配列孔13内の光ファイバ、光ファイバ心線2、およびブーツ4がフェルール1Aに対して固定され光コネクタCaが形成される。
フェルール1Aのコネクタ面11には一対のガイド突起10が設けられているので、光ファイバ収納孔に配置された光ファイバの端面を研磨するために、コネクタ面11を研磨することは困難である。このため、光ファイバ心線2の先端を露出した後に、フェルール1Aへの組立に先立って、各光ファイバの端部を放電研磨することが好適である。
光コネクタCaを光コネクタCbと良好な接続を達成するために、コネクタ面11に屈折率を整合するためのグリスを塗布することによって接続部での反射戻り光および接続損失を減少させることができ、また光ファイバの端部をPC(Physical Contact)接続することによって接続部での反射戻り光および接続損失を減少させることもできる。
フェルール1Aは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂といった形成用樹脂を用いて、射出成形法といった成形方法により成形されることができる。成型用樹脂による製造は、ガイド突起10およびガイド孔20を含むような複雑な形状を有するフェルール1A、1Bを一体の部品として形成することを可能にする。この樹脂は、好ましくは、シリカ粒子充填剤39〜65重量%及び珪酸塩ウィスカー充填剤26〜35重量%を含有し、かつ、シリカ粒子充填剤と珪酸塩ウィスカー充填剤との合計含有量が65〜85重量%である。
PPS樹脂を用いと、寸法安定性、クリープ特性及び成形性に関して良好な特性が得られる。シリカ粒子充填剤を用いると、フェルール1Aの寸法安定性が向上する。珪酸塩ウィスカー充填剤を用いると、機械的強度が向上する。
シリカ粒子を含有すると、シリカ粒子の線膨張係数が小さくかつ異方性も小さいので、フェルール1Aの寸法精度が向上する。シリカ粒子充填剤は、39重量%以上であることが好まし、また65重量%以下の割合で含有されることが好ましい。39重量%未満であると、成形後のフェルール1Aの線膨張係数及び異方性が大きくなって寸法精度が悪化してしまう。65重量%を超えると、成形時のPPS樹脂の流動性を悪化させて成形不良が発生することがあり、寸法精度が悪化することがある。
珪酸塩ウィスカーを含有すると、フェルール1Aの寸法精度を向上させることができると共に、機械的強度を向上させることができる。これは、珪酸塩ウィスカーの熱膨張率は低く寸法安定性に優れ、また、その表面が不活性で充填量を増やしても粘性が上がらず補強効果が大きいからである。珪酸塩ウィスカー充填剤は、26重量%以上であることが好ましく、また35重量%以下の割合で含有されることが好ましい。26重量%未満であると、成形後のフェルール1Aの機械的強度が不足してしまう。35重量%を超えると、成形時のフェルール1Aの異方性が大きくなって寸法精度を悪化させることがある。
シリカ粒子充填剤と珪酸塩ウィスカー充填剤との合計含有量は65重量%以上であることが好ましく、また85重量%以下の割合であることが好ましい。65重量%未満であると、充填剤の効果が十分に現れず、成形後のフェルール1Aの寸法精度が悪化してしまう。85重量%を超えると、充填剤が多くなりすぎて成形時のPPS樹脂の流動性を悪化させて成形不良を発生させることがあり、寸法精度を悪化させることがある。
フェルール1Aを上述した樹脂を用いると、射出成形法を採用することができるだけでなく、成型品の寸法精度及び強度を確保し、かつ、寸法変化を低減することができる。これまでのエポキシ樹脂を用いてトランスファー成形法により成形する場合に比べて、射出成形法で成形する場合には成形サイクルを短縮することができる。故に、フェルール1Aの生産性を向上させることができる。上述した樹脂は熱可塑性樹脂であるので、成形用金型からの離型性も良く、離型時のガイド突起10の破損も抑止できる。
図2に示されるように、フェルール1Aは、一対のガイド突起10も含めて一体的に形成されている。フェルール1Aを備える光コネクタCaは、フェルール1Bを備える光コネクタCbと接続される。接続に際して、光コネクタCa,Cbのガイド突起10とガイド孔20とを合わせると、光ファイバ収納孔13、23の位置が合う。
フェルール1A,1Bは、共に合成樹脂で形成されるので、挿入に際して、および挿入された後にも、ガイド突起10およびガイド孔20は、同一の熱膨張係数に基づいて変形する。このため、温度変化による寸法変化の影響を受けることなく、ガイド孔20がガイド突起10をしっかり保持するので、安定した接続特性を得ることができる。
また、フェルール1A,1Bは共に合成樹脂により形成されているので、経時的な寸法変化もほとんど同一となる。このため、経時的な寸法変化の影響を受けることなく、安定した接続特性を維持することができる。
フェルール1A,1Bは実質的に同一の硬度を有するので、挿入に際して、および挿入された後にも、ガイド突起10がガイド孔20の周囲に大きな力を加えることは抑止される。このため、ガイド孔20がガイド突起10をしっかり保持するので、安定した接続特性を得ることができる。
ガイド孔と実質的に同一の硬度のガイド突起10を用いると、コネクタCa、Cbを繰り返し使用した場合であっても、ガイド突起10およびガイド孔20の摩耗が抑えられる。このため、コネクタCa、Cbを繰り返し使用した場合であっても、安定した伝送特性を維持することができる。
ガイド突起10がフェルール1Aと一体的に形成されているので、ガイドピン(図18中の83)といった追加の部品が存在しない。このため、光コネクタCa,Cbの接続が簡単になる。また、接続の際に、ガイドピンの挿入作業をする必要が無くなる。これによって、接続を行い易くなるという利点もある。また、接続に際して追加の部品を使う必要もなくなり、接続部品の点数も少なくなることので、保守管理が容易となる。金属部品を使用せず樹脂により一体的に成形するので、製造コストが低減される。
ガイド突起10が円柱状の形状を有すると、ガイド孔20に対して挿入し易くなる。故に、フェルール1A,1Bのガイド突起10およびガイド孔20の内面の摩耗を低減することができる。この結果、安定した伝送特性を得ることができる。
ガイド突起10を円柱形状にすると、ガイド突起10の寸法精度を確保し易い。このため、コネクタCaをコネクタCbに接続するときに、互いの光ファイバ同士の端面をより正確に対向させることができ、これによって接続損失を低減させることができる。
また、ガイド突起10の先端部にテーパ面10aが形成されているので、光コネクタCbのガイド孔20に対してガイド突起10をより一層挿入させ易くなる。ガイド20の開口端およびガイド突起10の摩耗をより効果的に低減することができる。この結果、安定した接続特性をより確実に維持することができる。
図3Aは、光コネクタの別の実施の形態を示す図面である。図3Bは、図3AのII−II断面におけるフェルールの図面である。
光コネクタCcは、フェルール1Cと、フェルール1Cの一端から伸びる光ファイバ心線2と、光ファイバ心線2に取り付けられたブーツ4とを備える。コネクタ面11には、光コネクタCdのガイド孔40に挿入されるべき一対のガイド突起30が設けられている。
光コネクタCdは、フェルール1Dと、フェルール1Dの一端から伸びる光ファイバ心線2と、光ファイバ心線2に取り付けられたブーツ4とを備える。フェルール1Dは、コネクタ面21に、一対のガイド突起30が挿入されるべき一対のガイド孔40が設けられている。一対のガイド孔40は、それぞれ、所定の軸36a、36bに沿って、コネクタ面21に対向する面まで貫通している。フェルール1Dは、樹脂で一体に形成されたコネクタCd用の部品である。これによって、ガイド孔40の各々は、樹脂で形成された内側面40bを有する。それぞれのガイド孔40の内側面40bは、対応するガイド突起30の側面に対面するように設けられている。ガイド孔40に挿入されたガイド突起30は、内側面40bに沿って進むので、ガイド孔40は、ガイド突起30が挿入されるべき方向を規定している。ガイド孔40は、その開口部にテーパ面40aを有する。テーパ面40aを備えると、ガイド孔40は、それが伸びる方向に沿ってコネクタ面21に近づくににつれて徐々に断面積が大きくなる。
コネクタCcでは、一対のガイド突起30は、所定の軸36aおよび36bに沿ってコネクタ面11から連続的に伸びる。例えば、ガイド突起30は、円柱状の形状を有するピンであることができる。ガイド突起30は、所定の軸36a、36bに関して、コネクタ面11から順に設けられた第1の部分30c、第2の部分30d、および第3の部分30eを有する。第2の部分30dでは、一定の断面領域を有することができ、第3の部分30eでは、所定に軸36a、36bに交差する平面における断面領域が、先端に向って順次に小さくなることができ、第1の部分30cでは、所定に軸36a、36bに交差する平面における断面領域において、根元に向って順次に大きくなることができる。このため、ガイド突起30は、その先端部30eに、それぞれのガイド突起30が伸びる方向に関して傾斜されたテーパ面30aを備えることができる。ガイド突起30は、その根元部30cに、それぞれのガイド突起30が伸びる方向に関して傾斜されたテーパ面30bを備えることができる。テーパ面30bの曲率半径は、0.5mm未満であることが好ましい。テーパ面30bをMTコネクタに適用することを考慮すると、曲率半径は0.55mm以下である。
第3の部分30eは、対応する一対のガイド孔40に一対のガイド突起30を容易に挿入することを可能にする。第2の部分30dは、ガイド突起30をガイド孔40に挿入したときに、両コネクタCc、Cdの位置合わせを可能にする。第1の部分30cは、一対のガイド突起30に加わる力が集中し易い突起の根元部を強化することを可能にする。
図3Bに示すように、ガイド突起30のテーパ面30bの傾斜は、ガイド孔40のテーパ面40aの傾斜と関連づけられている。このため、ガイド突起30のテーパ部30cはガイド孔40内に収納される。
一対のガイド突起30は、1または複数の光ファイバ収納孔13を両側から挟むように設けられている。図3Aに示される例では、一対のガイド突起30および光ファイア収納孔13は、一列に並んでいる。
コネクタCa、Cbに関する記述は、同様にコネクタCc、Cdに対しても適用される。同様に、コネクタCc、Cdに関する記述は、コネクタCa、Cbに対しても適用される。
図4Aは、光コネクタの別の実施の形態を示す図面である。図4Bは、図4AのIII−III断面におけるフェルールの図面である。
光コネクタCeおよびCfは、フェルール1Eと、フェルール1Eの一端から伸びる光ファイバ心線2と、光ファイバ心線2に取り付けられたブーツ4とを備える。本実施の形態では、コネクタCeおよびCfは、同等のフェルール1Eを用いる。一方のコネクタCeのフェルール1Eのコネクタ面11には、他方の光コネクタCfのフェルール1Eのガイド孔52に挿入されるべきガイド突起50と、他方の光コネクタCfのガイド突起50が挿入されるべきガイド孔52が設けられている。
光コネクタCe、Cfのガイド孔52は、それぞれ、所定の軸56a、56bに沿って、コネクタ面11から、この面11に対向する面16まで貫通している。例えば、ガイド孔52は、円柱形状の突起収納領域を有することができる。フェルール1Eは、樹脂で一体に形成されたコネクタCe、Cf用の部品である。ガイド孔52は、樹脂で形成された内側面52bを有する。ガイド孔52の内側面52bは、ガイド突起50が挿入されたとき、ガイド突起50の側面に対面するように設けられている。ガイド突起50がガイド孔52に挿入されると内側面52bに沿って進む。このため、ガイド孔52は、ガイド突起50が挿入されるべき方向を規定している。ガイド孔52は、その開口部にテーパ面52aを有する。テーパ面52aを備えると、ガイド孔52の断面領域は、ガイド孔52が伸びる方向に関してコネクタ面11に近づくにつれて徐々に大きくなる。
コネクタCe、Cfのガイド突起50は、それぞれ、所定の軸56a、56bに沿ってコネクタ面11から連続的に伸びる。例えば、ガイド突起50は、円柱状の形状を有するピンであることができる。コネクタCe、Cfのガイド突起50は、所定の軸56a、56bに関して、コネクタ面11から順に設けられた第1の部分50c、第2の部分50d、および第3の部分50eを有する。第1の部分50cおよび第3の部分50eには、図3Aに示されたフェルール1C、1Dと同様に、それぞれ、テーパ面50bおよびテーパ面50aを備えることができる。光コネクタCe、Cfが接続されると、図4Bに破線で示されるように、テーパ面52aおよびテーパ面50bは対面する。このため、ガイド突起50のテーパ部50cはガイド孔52内に収納される。
ガイド突起50およびガイド孔52は、1または複数の光ファイバ収納孔13を両側から挟むように設けられている。図4Aに示される例では、ガイド突起50、ガイド孔52および光ファイア収納孔13は、一列に並んでいる。
コネクタCe、Cfに関する記述は、同様にコネクタCa、Cb、Cc、Cdに対しても適用される。同様に、コネクタCa、Cb、Cc、Cdに関する記述は、コネクタCe、Cfに対しても適用される。
図1および図2に示されたフェルール1Aは、図5に示される成形用金型を用いて成形される。
成形用金型100Aは、第一の金型ユニット108、第二の金型ユニット109、第三の金型ユニット110、および第四の金型ユニット111を備える。これらの金型ユニット108,109、110、111は、フェルール1Aを成形するように設けられたキャビティを規定する。
第三の金型ユニット110は、第一保持部材103と第二保持部材104とを有する。第三の金型ユニット110は、収納孔形成ピン102を備える。収納孔形成ピン102は、その一端部が第一保持部材103と第二保持部材104との間に挟まれることによって固定されている。第三の金型ユニット110は、金型108,109に対して相対的に所定の軸方向に関してスライド可能なように設けられ、四本の収納孔形成ピン102を含んでいる。
第一保持部材103は、2側面130a、130bを有するV溝130といった溝を有する。第二保持部材104は、底面140aおよび2側面140b、140cを有する矩形溝140といった溝を有する。一対の筒部101は、第一保持部材103と第二保持部材104との間に把持されている。図5に示される例では、筒部101の各々は、これらを正確に位置決めするために、第一保持部材103の矩形溝140の底面140a、第二保持部材104のV溝130の2側面130a、130bから成る3面によって支持されている。
筒部101は、ガイド突起10の側面に対面するように設けられた内壁面と、ガイド突起10の底面に対面するように設けられた底面とを有している。その内壁面および底面には、窒化クロムのコーティングが施されている。筒部101は所定の軸方向に沿って伸び、この軸に直交する平面において、ガイド突起10の断面形状に対応した形状を有する。
図5に示されるように、一対の筒部101の間には、成形後のフェルール1Aにおけるファイバ収納孔13の内径にほぼ等しい外径を有する収納孔形成ピン102が四本配設されている。収納孔形成ピン102は、また一端部および先端部を有する。収納孔形成ピン102の一端部の各々は、第一保持部材103と第二保持部材104とにより挟まれている。収納孔形成ピン102は、収納孔形成ピン102を正確に位置決めするために、第一保持部材103のV溝131の二側面および第二保持部材104の一平面からなる3面によって支持されている。
図6を参照すると、筒部101は、所定に軸に沿って開口部から順に第1の部分101b、第2の部分101c、および第3の部分101dを有する。第1の部分101bでは、一定の断面形状を有し、第2の部分101cでは、内径といった断面形状を表す数字が底部に向けて連続的に小さくなっている。このため、フェルール1Aのガイド突起10に対して、抜きテーパ角αが確保されている。このようにすれば、フェルール1Aを金型から取り出す際に、第三の金型ユニットをスライドさせるときにガイド突起10を抜き易くなる。この結果、フェルール1Aを破損させずに金型から取り出すことができる。抜きテーパ角αは、筒部101が伸びる方向に関して1°〜2°程度であることが好ましい。第3の部分101dには、ガイド突起10の先端にテーパ面10aを形成するために設けられたテーパ形成部101dが設けられている。抜きテーパ角αは、ガイド突起10の先端に設けられたテーパ面10aとは、別個の値であり、テーパ面10aの成す角度より小さい。
図6に示されるように、筒部101内表面には、エアベントとしての通気口101aが設けられている。通気孔101dは、第三の金型ユニット110の表面まで伸びることができる。通気孔101は、筒部101に溶融した成形樹脂を充填し易くし、かつ、成形後の位置決め凸部10を抜き易くする。
筒部101及び収納孔形成ピン102との周囲に形成される隙間には、シーリング剤112が充填されている。これによって、成形の際に、この隙間に樹脂が流入すること防止している。
図5を参照すると、第四の金型ユニット111は、収納孔形成ピン102に対面するように設けられた円筒体170を備える。第四の金型ユニット111は、第一および第二の金型ユニット108、109に対して、所定の軸方向に沿って相対的にスライド可能に設けられている。このため、第三および第四の金型ユニット110、111の第一および第二の金型ユニット108、109に対して相対的に移動すると、円筒体170の先端は収納孔形成ピン102の先端を受ける。これによって、光ファイバ収納孔13はコネクタ面11から導入孔15まで到達する。四つの円筒体170の各々は、長手方向に沿って第1の部分、第2の部分、第3の部分を有する。各円筒体170は、第1の部分において、第三保持部材105と第四保持部材106との間に挟まれている。これによって、円筒体170は、第三保持部材105と第四保持部材106とに対して固定されている。各円筒体170の第2の部分は、矩形部171内を貫通している。各円筒体170の第3の部分では、各円筒体171の上半分が露出され、矩形部171から伸び出した支持部によって下半分が覆われている。
各円筒体170の内径は、収納孔形成ピン102の外径にほぼ等しい。円筒体170は、挿入された収納孔形成ピン102の先端を保持して位置決めする。円筒体170は、その先端部にのみ、収納孔形成ピン102の先端を受け入れるために凹部を有することができる。また、この凹部に代えて、円筒体170は、長手方向に伸びる貫通孔を有することができる。これによって、収納孔形成ピン102が挿入されるときに内部の空気が抜けるので、配列孔形成ピン102が挿入され易くなる。各円筒体170は、第四保持部材106の矩形溝160の底面160aと、第三保持部材105のV溝150の2側面150a、150bとによって正確に位置決めされている。
第一の金型ユニット108及び第二の金型ユニット109の内面には、フェルール1Aを形成させるためのキャビティ180が形成されている。第一の金型ユニット108には、開口部14を形成するように設けられた凸部182がキャビティ180に突出している。第一〜第四の金型ユニット108,109、110、111が組み上げられると、矩形部171の底面171aは凸部182の上面182aに接触する。第一の金型ユニット108及び第二の金型ユニット109は、それぞれ第三の金型ユニット120を所定の軸に沿って移動可能にするために、第三の金型ユニット110に対面する面に、矩形部171が通過可能に設けられた矩形状の切り欠き部181,190を有している。
図3に示されたフェルール1Cは、図7および図8A〜Dに示される成形用金型を用いて成形される。
成形用金型100Bは、第一の金型ユニット108、第二の金型ユニット109、第三の金型ユニット113、および第四の金型ユニット111を備える。これらの金型ユニット108,109、113、111は、フェルール1Cを成形するように設けられたキャビティを規定する。図7において、第二の金型ユニット109はC方向へ移動し、第三の金型ユニット113はB方向に移動し、第四の金型ユニット111はA方向へ移動する。
第三の金型ユニット113は、第五保持部材114と、第六保持部材115とを有する。第三の金型ユニット113は、所定の軸に沿って伸びる収納孔形成ピン102を備える。第五保持部材114は、一対の矩形平面を有する板状部材である。板状部材に設けられる下記の孔の形成には、ワイヤ放電加工が適用されるので、板状部材は、この加工に適した厚みを有することが好ましい。第五保持部材114は、図8Dに示されるように、一対の矩形平面の一方から他方へ貫通する4つの孔117を有する。この孔117には、収納孔形成ピン102が差し込まれている。第五保持部材114は、図8Bおよび図8Cに示されるように、収納孔形成ピン102と同一方向に伸びる一対の貫通孔116を有する。貫通孔116は、一方の矩形平面114aに近づくにつれて広がったテーパ面116aと、断面が円形の内壁面116bとを有する。テーパ面116aは、ガイド突起30の根元に形成されるべきテーパ面30bを規定する。第六保持部材115は、収納孔形成ピン116と同じ方向に伸びる一対の孔115aを有する。第六保持部材115の一対に孔115aは、第五保持部材114の貫通孔116に位置が合わされるように設けられている。第五保持部材114および第六保持部材115は、一対の孔116と一対の孔115aとが一致する位置に合わせされて固定される。
図8Aを参照すると、貫通孔116、115aの内部には、第六保持部材115の一開口端から貫通孔116、115aの内径と同一の外径の棒118が挿入されている。棒118の長さは、ガイド突起30の長さを規定するように決定される。棒118の一端には、ガイド突起30の先端に形成されるべきテーパ面30aを規定するように設けられた凹部116cを有する。凹部116cの底面116dには、棒118の他端まで伸びる通気孔118aが形成されている。通気孔118aは、孔116への樹脂の流入、および孔116からのガイド突起30の抜き取りを容易にする。
図4に示されたフェルール1Eは、図9に示される成形用金型を用いて成形される。
成形用金型100Cは、第一の金型ユニット128、第二の金型ユニット129、第三の金型ユニット123、および第四の金型ユニット121を備える。これらの金型ユニット128、129、123、121は、フェルール1Eを成形するように設けられたキャビティを規定する。第二の金型ユニット129はF方向へ移動し、第三の金型ユニット123はE方向へ移動し、第四の金型ユニット121はD方向へ移動する。
第三の金型ユニット123は、所定の軸に沿って伸びる収納孔形成ピン102を備える。
第三の金型ユニット123は、第七保持部材124と第八保持部材125とを有する。第七保持部材124は、一対の矩形平面を有する板状部材である。第七保持部材124は、一対の矩形平面の一方から他方へ貫通する4つの孔117を有する。孔117には、収納孔形成ピン102が差し込まれている。第七保持部材124は、図8Cに示されるように、収納孔形成ピン102と同一方向に伸びる単一の貫通孔116を有する。
第三の金型ユニット123は、また所定の軸に沿って伸びるガイド孔形成部126を備える。ガイド孔形成部126は、収納孔形成ピン102が設けられている面に設けられている。所定に軸に直交する平面におけるガイド孔形成部126の断面の形状は、貫通孔116の断面の形状に対応している。ガイド孔形成部126は、例えば、貫通孔116の断面形状が円形であるときは、これと実質的に同一の直径を有する円形断面を有する。
ガイド孔形成部126を受けるために、第一の金型ユニット128および第二の金型ユニット129は、ガイド形成部126の形状に応じた切り欠き部128a、129aを有する。図9に示される金型100Cでは、円柱状のガイド孔形成部126に対応して、切り欠き部128a、129aは、それぞれ半円形状である。第三の金型ユニット123は、フェルール1Eの成形に際して、ガイド形成部126が、成形されたフェルール1Eから引き抜かれるために十分な距離だけ移動する。
図10〜図12を参照しながら、上記の金型を用いてフェルール1Aを製造する方法について説明する。
図10に示すように、上述した金型によりフェルール1Aを成形する際には、キャビティを形成するように第一〜第四の金型ユニットを配置する。例えば、第一の金型ユニット108と第二の金型ユニット109とを閉じる。
次いで、第一および第二の金型ユニット108、109の間に収納孔形成ピン102及び円筒体170をスライドさせて、これらを金型ユニット108上に配置する。矩形部171は、矩形形状の切欠部181,190を介しての金型ユニット108,109内に導入され、その下面171aが凸部182の上面182aと面接される。収納孔形成ピン102の先端は円筒体170内に挿入されて位置決めされる。
あるいは、第一の金型ユニット108上に収納孔形成ピン102及び円筒体170をスライドさせて配置する。次いで、第一の金型ユニット108に対して第二の金型ユニット109を閉じる。
図11に示すように、キャビティを規定した後に、図示されないゲートから金型ユニット108,109、110、111内に溶融樹脂を充填する。その後、樹脂を冷却し固化させる。筒部101においてガイド突起10が形成され、収納孔形成ピン102によってファイバ収納孔13が形成される。凸部182及び矩形部171により開口部14及びファイバ導入孔15が形成される。
金型ユニット108,109、110、111内の樹脂が固化したら、第三の金型ユニット110及び第四の金型ユニット111を所定に軸の沿ってスライドさせる(図12の方向G、H)。金型ユニット108,109の内部から収納孔形成ピン102を引き抜くと共に、ガイド突起10を第四の金型ユニット110から引き抜く。次いで、図12に示すように、第一の金型ユニット108及び第二の金型ユニット109を開き(図12のJ方向)、成形されたフェルール1Aを取り出す。
筒部101の内表面に窒化クロムコーティングが施されていると共に抜きテーパ角αが確保されているので、第三の金型ユニット110を所定に軸に沿ってスライドさせる際には、成形されたガイド突起10を破損することなく筒部101から離型される。ガイド突起10の先端のテーパ面10aも筒部101の内面形状を反映して形成される。テーパ面10aを形成させれば、ガイド突起10をより離型させ易くなる。
ただし、ガイド突起10は、その外径が細く且つ全長が長いと、離型時に破損し易くなるので、離型性を考慮して外径及び全長が決定されるのが好ましい。全長はガイド突起10の2倍以上であることが好ましく、また5倍以下であることが好ましい。例えば、典型的な外径の値は、約0.6990mmである。
これまで説明してきた成形用金型を用いたフェルール製造方法によれば、ガイド突起10をも含めて合成樹脂により一体的に成形されたフェルール1Aを容易に製造することができる。それぞれの成形金型100B、100Cを用いて、フェルール1C、1Eについても同様に製造できる。この場合においても、成形金型100Aを用いた場合と同様の利点を享有しうるので、上述したように優れた利点を有する光コネクタ用フェルールを容易かつ確実に製造することができる。
上述した成形用金型により成形されたフェルール1A、1Bおよびフェルール1Cの寸法精度を検査する検査方法について説明する。
フェルール1Aおよびフェルール1Bでは、それぞれ、光ファイバがファイバ収納孔13に配置される。フェルール1Aは、ガイド突起10によりフェルール1Bと位置合わせされる。これによって、フェルール1A、1Bのそれぞれに収納された光ファイバの端面が、互いに精密に対面する。しかしながら、ファイバ収納孔13がガイド突起10の位置に対して正しい位置に設けられていないと、接続損失が増加する。例えば、成形後の温度変化によって、成形部品が収縮したり、歪んだりすることも考えられる。接続損失の増加を防止するために、成形部品に対して、ガイド突起10の位置に対するファイバ収納孔13の位置を検査する方法が求められている。このような方法は、短時間で行うことができ、且つ検査結果が正確であることが必要である。
図13は、フェルール1Aの検査に使用することができる検査用システムを示す。検査用システム200Aは、ステージ201と、治具202と、光源203と、CCDカメラ204といった撮像手段と、画像処理手段205とを備える。
治具202は、フェルール1Aのコネクタ面11が対面する基準面202aを有する平板状の位置決め部202bを有する。位置決め部202bは、一対の支持部202dを介してステージ201に固定されている。位置決め部202bには、一対の位置決め孔220が設けられ、一対の位置決め孔220は、基準面202aからこれに対向する面202cに伸びる。一対の位置決め孔220は、一対のガイド突起10の位置に対応するように決定された間隔および直径で設けられている。一対の位置決め孔220の間には、矩形の窓221が形成されている。窓221の位置は、治具201の位置決め孔220にフェルール1Aのガイド突起10を挿入し、基準面202aにコネクト面11を対面させたときに、窓221に光ファイバ収納孔13が現れるように規定されている。
検査用システム200Aは、また基準面202aに対面するように配置された光源203を有する。基準面202aに関して光源203の反対側には、CCDカメラ204といった画像取得手段が設けられ、画像取得手段は光源203からの光を検知する。光源203は、ステージ201と位置決め部202aとの間に配置することができる。また、光源203は、ステージ210に関して位置決め部202aの反対側に配置することができる。この場合には、ガラス等により形成された透光性のステージ201を用いることが好ましい。CCDカメラ204によって撮影された画像は、画像処理部205で処理されモニタに表示される。CCDカメラ204に代えて、またはカメラ204に加えて、光学顕微鏡を利用することができる。
検査用システム200Aを用いて検査を行う手順を説明する。
治具202にフェルール1Aを取り付ける前に、CCDカメラ204を介して、予め位置決め孔220の位置データを取得する。位置決め孔220の位置データの取得は、図13に示されるように、光源203を用いて基準面202aに光を投射して、一対の位置決め孔220および窓221を通過した光をCCDカメラ204で撮影する。この画像を処理して、画像処理手段205内に、一対の位置決め孔220の位置データを記憶する。
ガイド突起10を位置決め孔220に挿入して、治具202にフェルール1Aを固定する。この結果、位置決め孔220の位置に、一対のガイド突起10が位置する。このため、位置決め孔220には、もはや光は通過しない。ファイバ配列孔13の位置データを取得する。ファイバ配列孔13の位置データの取得は、図14に示されるように、光源203からフェルール1Aに光を照射する。照射された光は、光ファイバ収納孔13を通過してコネクタ面11に到達する。到達した光は、窓221を介してCCDカメラ204で取得される。受けた画像から画像処理手段205によって、光ファイバ収納孔の数およびそれら位置の関するデータが計算される。この画像データはモニタ205上に映し出され、位置決め孔220の位置と、光ファイバ収納孔13の位置とが重ね合わされた状態で表示される。図14では、ガイド突起10の位置を破線で描いている。
位置決め孔220およびファイバ収納孔13の位置は、CCDカメラ204により取得された画像に演算処理を施してエッジ検出し、座標に変換することができ、あるいは、モニタ205上に表示された各々の距離を測定することもできる。
取得された位置決め孔220の位置、即ち、ガイド突起10の位置と、取得されたファイバ収納孔13の位置とに基づいて、ガイド突起10の位置に対してファイバ配列孔13の位置が正確に形成されている否かを判定する。
図16は、フェルール1Cの検査に使用することができる検査用システムを示す。検査用システム200Bは、検査用システム200Aに加えて、補助治具206を備えている。このほかの構成要素に関しては、検査用システム200Aと同じである。
補助治具206は、矩形状の基準面206aを備える。補助治具206は、治具202の基準面202aに対向する面202cに基準面206aが対面するように、治具202に取り付けられる。補助治具206は、基準面206aに、位置決め突起223と、この位置決め突起223と同じ方向に伸びる位置決め孔222と、位置決め突起223と位置決め孔222との間に設けられた窓224とを備える。位置決め突起223は、一対の位置決め孔220の一方に挿入されると、組み合わされた治具202、206に対してフェルール1Cのガイド孔52を位置決めする機能を有する。窓224は、治具206が治具202と組み合わされたときに、窓221と重なるように設けられている。
組み合わされた治具202、206において、フェルール1Cのガイド突起50は、位置決め孔220、222に挿入され、フェルール1Cのガイド孔52には、位置決め突起223が挿入される。この結果、フェルール1Cは、組み合わされた治具202、206に対して位置決めされる。
検査用システム200Bを用いて検査を行う手順を説明する。
図16に示された検査システム200Bにおいて、フェルール1Aの場合と同様に、治具206およびフェルール1Cを治具202に取り付ける前に、図15に示すように、CCDカメラ204を介して、予め位置決め孔220の位置データを取得する。
次いで、追加治具206の位置決め突起223を一対の位置決め孔220の一方に挿入して、窓224が窓221と重なり、且つ位置決め孔222が位置決め孔220に重なるように、補助治具206を治具202に取り付ける。組み合わされた治具202、206の位置決め孔220、222および位置決め突起223は、フェルール1Cのガイド突起50およびガイド孔52を位置決めするために役立つ。
図17に示すように、ガイド突起50を位置決め孔220、222に挿入すると共に、ガイド孔52に位置決め突起223を挿入することによって、治具202、206にフェルール1Cを固定する。この結果、位置決め孔220およびガイド突起223の位置に、フェルール1Cのガイド突起50およびガイド孔52が位置する。
ファイバ配列孔13の位置データを取得する。ファイバ配列孔13の位置データの取得は、図17に示されるように、光源203からフェルール1Cに光を照射する。照射された光は、光ファイバ収納孔13を通過してコネクタ面11に到達する。到達した光は、窓221を介してCCDカメラ204で取得される。受けた画像は、検査システム200Aと同様に処理され、この結果に基づいて、ガイド突起50の位置に対してファイバ配列孔13の位置が正確に形成されている否かを判定する。図17では、ガイド突起50およびガイド孔52の位置を破線で描いている。
上述した検査方法によれば、フェルール1Aのガイド突起10に対する光ファイバ収納孔13の位置データ、並びにフェルール1Cのガイド突起50およびガイド孔52に対するファイバ収納孔13の位置データを正確に求めることができる。この位置データに基づいて、成形品の良否を判断すれば、良好な伝送特性を達成するフェルール1A、1Cのみを選別できる。この検査は、短時間で判定結果が得られるので、成形されたすべての形成品に対して適用することもできる。また、品質管理上適切なサンプル数としてロット毎に抽出したサンプルに対してのみ行うことができる。
本発明のフェルール及びその成形用金型は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態のフェルール1Aは、いわゆるMTコネクタを形成させるものであったが、そのままMPOコネクタ内に内蔵されてプッシュ・プルタイプのMPOコネクタを構成する一部品として用いることもできる。フェルール1Aは、上述した成形樹脂を用いて射出成形法により成形されたが、当然のことながら、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形法によって成形することもできる。
また、離型性に関する問題が生じなければ、先端部および根本部にテーパ面を備えないガイド突起10を採用することもできる。実施形態においては、筒部116の内壁面に窒化クロムコーティングを施すと共に抜きテーパ角αを適用したけれども、ガイド突起10の離型性に関して問題が生じないのであれば、窒化クロムコーティングのみを適用することもでき、あるいは、窒化クロムコーティングなしに抜きテーパ角αのみを適用することもできる。
上述した検査方法についても、実施形態に限定されることはない。例えば、実施形態において、透過光によって予め位置決め孔220の位置(ガイド突起10の位置)データを取得した後に、ファイバ収納孔13の位置データを取得した。しかしながら、透過光によって予めファイバ収納孔13の位置データを取得した後に、位置決め孔220の位置データを取得することもできる。検査結果は、位置決め孔220およびファイバ収納孔13の位置データの取得の順序に依存しない。さらに、治具202とCCDカメラ204の位置が固定されていれば、位置決め孔220の位置データの取得は、各フェルール毎に行う必要はない。故に、本実施の形態では、透過光を用いて位置決め孔の位置とファイバ配列孔の位置とを別々に測定した後、位置決め孔に対するファイバ配列孔の位置を検査している。
さらに、発明者は、図18および図19に示された光コネクタを検討した結果、以下のような課題を発見した。発明者は、ガイドピン83を孔92に挿入する時および挿入した後に、ガイドピン83によって孔92の開口部の周囲に接触することに着目した。樹脂製のフェルール81Bを用いる場合、ガイドピン83の硬度がフェルール81Bの硬度よりも高い。硬度が大きく異なるガイドピン83と孔92とが接触するので、繰り返し脱着により孔92の開口部が摩耗し易いことを発見した。仮に、繰り返し脱着によって位置合わせ精度が徐々に低下したとすると、更に高速な伝送特性を阻害することになり得る。
発明者は、また、図18及び図19に示されたMTコネクタに限らず、ガイドピンにより位置決めを行うMPOコネクタといった光コネクタにおいても、金属製ガイドピンによるフェルールの摩耗が生じうると考えた。
また、経時的な寸法変化も、異材質のガイドピン83とフェルール1Bとでは異なるため、経時的寸法変化によってガイドピン83とピン孔92との間に隙が生じ、伝送特性が悪化するという問題もあった。更に、ガイドピン83をピン孔92に挿入する作業は行い難く、その際にはフェルール1Bに欠損を生じさせないように細心の注意を払う必要もあり、迅速な作業遂行上改善が望まれていた。
既に説明したフェルールでは、このような課題をも解決している。また、以下の示される追加の利点を有する。
本発明に係わるフェルールの製造方法によれば、ガイド突起を形成させる筒部の内表面に窒化クロムコーティングを施してあるので、成形後のフェルールを離型させるときに、位置決め凸部の離型性が向上され、離型時の位置決め凸部の破損を抑止することができる。また、破損しなくても、位置決め凸部の寸法精度を高く維持するためにも寄与するので、良好な接続特性を実現するフェルールを製造することができる。
以上詳細に説明したように、ガイド突起およびガイド孔がフェルールと一体に形成されているので、ガイド突起およびガイド孔によって接続精度が規定される。ガイド突起およびガイド孔と、光ファイバ収納孔との位置のずれを検査によって所定値未満に抑えれば、一体成形フェルールを光コネクタに組み立てても、この精度は維持される。つまり、光コネクタの結合の精度は、光コネクタの組立などによって規定されることなく、フェルールそのものの成形精度によって決定される。故に、本発明に係わるフェルールでは、フェルールを精密に成形すれば、光コネクタの結合の精度も向上するという従来にない特徴を有する。
産業上の利用可能性
本発明に係わる光コネクタ用フェルールによれば、ガイド突起およびガイド係合部は、接続されるべき光コネクタとの位置合わせに利用されるように、所定の軸に沿ってフェルールのコネクタ面から連続的に伸びている。また、光ファイバ収納孔、第1のガイド突起、およびガイド係合部は、同一の材料で一体の部品として形成されているので、このフェルールを用いた光コネクタは金属製ガイドピンといった異なる材料の部品を含まない。このため、温度変化に起因する応力がフェルールの特定の部分に集中することがない。また、温度変化によって生じた応力はフェルール全体に分散される。
フェルールは一体の樹脂部品であるので、フェルールの各部分は、同一の熱膨張係数を有する。故に、温度変化に起因する光コネクタ収納孔の位置合わせ精度が改善される。
したがって、良好な伝送特性を有する光コネクタを形成することを可能にする光コネクタ用フェルールが提供された。加えて、フェルールの低コスト化が達成される。また、光コネクタへの組立が簡素化される。
本発明に係わる成形用金型によれば、一対のガイド突起並びにガイド突起およびガイド孔を含む樹脂製フェルールを一体的に成形することができる。
本発明に係わるフェルールの製造方法によれば、ガイド突起およびガイド係合部に対して正確に位置合わせされた光ファイバ収納孔を有する樹脂製フェルールを一体的に成形し、また選別することを可能にする。
本発明に係わるフェルールの検査方法によれば、一対のガイド突起並びにガイド突起およびガイド孔を含めて樹脂により一体的に成形されたフェルールにおいて、一対のガイド突起並びにガイド突起およびガイド孔に対するファイバ収納孔の位置を正確に検査することができる。この結果、良好な伝送特性を有するフェルールのみを選別できる。
【図面の簡単な説明】
本発明の実施の形態は、添付図面を参照しながら例示として記述される。
図1は、本実施の形態に係わる光コネクタ用フェルールを示す斜視図である。
図2は、光コネクタ用フェルールの図1のI−I断面における図面である。
図3Aは、別の実施の形態に係わる一対の光コネクタ用フェルールを示す斜視図であり、図3Bは、光コネクタ用フェルールの図3AのII−II断面における図面である。
図4Aは、別の実施の形態に係わる一対の光コネクタ用フェルールを示す斜視図であり、図4Bは、光コネクタ用フェルールの図4AのIII−III断面における図面である。
図5は、図1に示されるフェルールを成形するための成形用金型を示す斜視図である。
図6は、図5に示される成形用金型における筒部の部分的な断面図である。
図7は、図3Aに示されるフェルールを成形する成形用金型を示す斜視図である。
図8Aは、図7のIV−IV断面における図面であり、図8Bは、補助部材を示す図面であり、図8Gは、図8BのV−V断面における図面であり、図8Dは、図8BのVI−VI断面における図面である。
図9は、図4Aに示されるフェルールを成形する成形用金型を示す斜視図である。
図10は、図1に示されたフェルールの製造工程を示す図面である。
図11は、図1に示されたフェルールの製造工程を示す図面である。
図12は、図1に示されたフェルールの製造工程を示す図面である。
図13は、図1に示されるフェルールの検査工程を示す図面である。
図14は、図1に示されるフェルールの検査工程を示す図面である。
図15は、図4Aに示されるフェルールの検査工程を示す図面である。
図16は、図4Aに示されるフェルールの検査工程を示す図面である。
図17は、図4Aに示されるフェルールの検査工程を示す図面である。
図18は、一対の光コネクタ用フェルールを示す図面である。
図19は、接続された光コネクタ用フェルールを示す斜視図である。

Claims (24)

  1. 光コネクタ用フェルールであって、
    樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、
    前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、
    前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、
    を備え
    前記第1のガイド突起の根本部は、その断面が前記コネクタ面へ向かう前記所定の軸に関して大きくなり、傾斜されたテーパ面を有する、フェルール。
  2. 前記ガイド係合部は、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸びた根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第2のガイド突起を含
    前記第2のガイド突起の根本部は、その断面が前記コネクタ面へ向かう前記所定の軸に関して大きくなり、傾斜されたテーパ面を有する、請求項1に記載のフェルール。
  3. 前記第1および第2のガイド突起の各々は略円形の断面を有する、請求項2に記載のフェルール。
  4. 前記第1および第2のガイド突起は、前記先端部に前記所定の軸に対して傾斜されたテーパ面を有する、請求項2または請求項3に記載のフェルール。
  5. 前記ガイド係合部は、前記コネクタ面に設けられた開口部および前記樹脂で形成された内側面を有し前記所定の軸に沿って伸びるガイド孔を含
    前記ガイド孔の内側面は、前記ガイド孔の開口部に設けられ前記所定の軸に沿って傾斜されたテーパ面を含む、請求項1に記載のフェルール。
  6. 前記ガイド孔は略円形の断面を有する、請求項5に記載のフェルール。
  7. 前記第1のガイド突起は、前記先端部に前記所定の軸に対して傾斜されたテーパ面を有する、請求項5または請求項6に記載のフェルール。
  8. 前記ガイド孔の前記開口部に設けられた前記テーパ面の傾斜角は、前記第1のガイド突起の前記根本部に設けられた前記テーパ面の傾斜角と関連付けられている、請求項5に記載のフェルール。
  9. 前記第1のガイド突起は略円形の断面を有する、請求項5請求項8のいずれかに記載のフェルール。
  10. 前記樹脂は、シリカ粒子充填剤39〜65重量%及び珪酸塩ウィスカー充填剤26〜35重量%を含有し、かつ、シリカ粒子充填剤と珪酸塩ウィスカー充填剤との合計含有量が65〜85重量%であるPPS樹脂を含む、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のフェルール。
  11. 前記光ファイバ収納孔は、前記第1の突起と前記係合部との間に設けられている、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のフェルール。
  12. 前記所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面を有する1または複数の別個の光ファイバ収納孔を、更に備える請求項1〜請求項11のいずれかに記載のフェルール。
  13. 光コネクタ用フェルールを提供する成形金型であって、
    前記光コネクタ用フェルールは、樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、を備えており、
    当該成形金型は、前記フェルールを形成するためのキャビティを規定する第一、第二、第三、および第四の金型ユニットを備え、
    前記第一および第二の金型ユニットは、前記キャビティを規定するように位置合わせされ、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットは、前記第三および第四の金型ユニットの各々を収容する収容部を提供するように前記所定の軸に向けて開口し、
    前記第三および第四の金型ユニットは、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットに対して前記所定の軸の方向に移動可能な状態で、前記収容部に収容され、
    前記第三の金型ユニットは、前記所定の軸の方向に伸びる内側面および底面を有するガイド突起形成部と、前記所定の軸の方向に伸びる少なくとも1本のピンと、前記係合部を形成するように設けられ前記所定の軸の方向に伸びる係合形成部とを有する、成形金型。
  14. 光コネクタ用フェルールを提供する成形金型であって、
    前記光コネクタ用フェルールは、樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、を備え、前記ガイド係合部は、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸びた根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第2のガイド突起を含んでおり、
    当該成形金型は、前記フェルールを形成するためのキャビティを規定する第一、第二、第三、および第四の金型ユニットを備え、
    前記第一および第二の金型ユニットは、前記キャブティを規定するように位置合わせされ、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットは、前記第三および第四の金型ユニットの各々を収容する収容部を提供するように前記所定の軸に向けて開口し、
    前記第三および第四の金型ユニットは、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットに対して前記所定の軸の方向に移動可能な状態で、前記収容部に収容され、
    前記第三の金型ユニットは、前記所定の軸の方向に伸びる内側面および底面を有する一対のガイド突起形成部と、前記所定の軸の方向に伸びる少なくとも1本のピンとを有する、成形金型。
  15. 光コネクタ用フェルールを提供する成形金型であって、
    前記光コネクタ用フェルールは、樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、を備え、前記ガイド係合部は、前記コネクタ面に設けられた開口部および前記樹脂で形成された内側面を有し前記所定の軸に沿って伸びるガイド孔を含んでおり、
    当該成形金型は、前記フェルールを形成するように設けられたキャビティを規定する第一、第二第三、および第四の金型ユニットを備え、
    前記第一および第二の金型ユニットは、前記キャブティを規定するように位置合わせされ、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットは、前記第三および第四の金型ユニットの各々を収容する収容部を提供するように前記所定の軸に向けて開口し、
    前記第三および第四の金型ユニットは、位置合わせされた前記第一および第二の金型ユニットに対して前記所定の軸の方向に移動可能な状態で、前記収容部に収容され、
    前記第三の金型ユニットは、前記所定の軸の方向に伸びる内側面および底面を有するガイド突起形成部、前記所定の軸の方向に伸びる側面を有する突起部、並びに前記所定の軸の方向に伸びる少なくとも1本のピンを有する、成形金型。
  16. 前記第三の金型ユニットは、前記ガイド突起形成部の底面および内側面の少なくともいずれかから前記第三の金型ユニットの表面に到達する通気孔を有する、請求項13または請求項15に記載の成形金型。
  17. 前記第三の金型ユニットは、前記一対のガイド突起形成部の各々における底面および内側面の少なくともいずれかから前記第三の金型ユニットの表面に到達する通気孔を有する、請求項16に記載の成形金型。
  18. 前記第三の金型ユニットの前記ピンは、テーパが形成された先端部を有する、請求項13請求項17のいずれかに記載の成形金型。
  19. 前記ガイド突起形成部の前記内側面および前記底部は、窒化クロムコーティング層を有する、請求項13または請求項15に記載の成形用金型。
  20. 光コネクタ用フェルールを製造する方法であって、請求項13に記載の成形金型を準備し、
    前記成形金型に成形樹脂を導入して前記フェルールを形成し、 前記フェルールの前記第1のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置の検査を行い、前記検査に合格した前記フェルールと前記検査に不合格の前記フェルールとを選別する、方法。
  21. 光コネクタ用フェルールを製造する方法であって、
    請求項14に記載の成形金型を準備し、
    前記成形金型に成形樹脂を導入して前記フェルールを形成し、
    前記フェルールの前記第1のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置の検査を行い、前記検査に合格した前記フェルールと前記検査に不合格の前記フェルールとを選別する、方法。
  22. 光コネクタ用フェルールを製造する方法であって、
    請求項15に記載の成形金型を準備し、
    前記成形金型に成形樹脂を導入して前記フェルールを形成し、
    前記フェルールの前記第1のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置の検査を行い、前記検査に合格した前記フェルールと前記検査に不合格の前記フェルールとを選別する、方法。
  23. 光コネクタ用フェルールの検査方法であって、
    前記光コネクタ用フェルールは、樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、を備え、前記ガイド係合部は、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸びた根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第2のガイド突起を含んでおり、
    当該検査方法は、前記第1のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置を検査するものであり、
    前記フェルールの前記第1および第2のガイド突起を挿入するように設けられた一対の位置決め孔を備える治具を準備し、
    前記治具の前記一対の位置決め孔を通過してくる光を受け、受けた光に基づいて前記治具の前記位置決め孔の位置を決定し、
    前記第1および第2のガイド突起を前記位置決め孔に挿入し、
    前記ファイバ収納孔を通過してくる光を受け、受けた光に基づいて前記ファイバ収納孔の位置を決定し、
    決定された前記位置決め孔の位置と決定された前記ファイバ収納孔の位置とから、前記第1および第2のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置を検査する、光コネクタ用フェルールの検査方法。
  24. 光コネクタ用フェルールの検査方法であって、
    前記光コネクタ用フェルールは、樹脂で形成されたコネクタ面と、所定の軸に沿って伸び前記樹脂で形成された内側面、および前記コネクタ面に到達する一端部を有する光ファイバ収納孔と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び根本部および先端部を有し前記樹脂で形成された第1のガイド突起と、前記所定の軸に沿って前記コネクタ面から連続的に伸び前記樹脂で形成されたガイド係合部と、を備え、前記ガイド係合部は、前記コネクタ面に設けられた開口部および前記樹脂で形成された内側面を有し前記所定の軸に沿って伸びるガイド孔を含んでおり、
    当該検査方法は、前記第1のガイド突起に対する前記ファイバ収納孔の位置を検査するものであり、
    前記フェルールの前記突起部を挿入するように設けられた一対の位置決め孔を備える第1の治具を準備し、
    前記治具の前記一対の位置決め孔を通過してくる光を受け、受けた光に基づいて前記治具の前記位置決め孔の位置を決定し、
    前記フェルールの前記第1のガイド孔に挿入するように設けられた位置決め突起を備える第2の治具を準備し、前記第2の治具の前記位置決め突起を前記一対の位置決め孔の一方に挿入し、
    前記一対の位置決め孔の他方に前記フェルールの前記第1のガイド突起を挿入し、且つ前記位置決め突起を前記フェルールの前記ガイド孔に挿入し、
    前記ファイバ収納孔を通過してくる光を受け、受けた光の基づいて前記ファイバ収納孔の位置を決定し、
    決定された前記位置決め孔の位置と、決定された前記ファイバ収納孔の位置とから、前記第1のガイド突起および前記ガイド孔に対する前記ファイバ収納孔の位置を検査する、光コネクタ用フェルールの検査方法。
JP2000564080A 1998-08-07 1999-08-06 光コネクタ用フェルール、その成形用金型、光コネクタ用フェルールの製造方法、及び光コネクタ用フェルールの検査方法 Expired - Fee Related JP3997710B2 (ja)

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