JP3221799B2 - 光コネクタフェルール及びその製造方法 - Google Patents

光コネクタフェルール及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光通信において、光ファ
イバを位置決め保持し結合を実現する光コネクタフェル
ール及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2は従来の樹脂成形により形成された
多心光コネクタフェルールの一例の斜視図である。図面
に示すように、樹脂成形により形成された光コネクタフ
ェルールの成形樹脂部1の内部には、2つのガイドピン
穴2と複数の光ファイバ穴3が形成されており、光ファ
イバは上記光ファイバ穴3に高精度に位置決め保持され
る。なお、上記の成形樹脂としては、シリカ粉を充填剤
として80%程度使用した熱硬化性エポキシ樹脂が代表的
である。
【0003】このような光コネクタフェルールを用いて
多心光コネクタの結合を行うには、上記フェルールの光
ファイバ穴3に光ファイバを接着等を用いて固定した
後、2本の高精度加工されたガイドピンを前記ガイドピ
ン穴2に挿入することにより、対向する光コネクタフェ
ルール相互の結合を実現する。図には4心の光コネクタ
フェルールを示したが、心数は1〜80以上と多種ある。
又ガイドピンの直径はφ 0.7mmが代表的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、光コ
ネクタの結合に際しては光コネクタフェルールのガイド
ピン穴にガイドピンを挿入して結合を実現する。この
時、ガイドピン穴とガイドピンとの間のクリアランスが
問題となる。例えばガイドピン穴径が 7.010mm、ガイド
ピン径が 6.990mmとし、相対する2つのフェルールのガ
イドピン穴間隔が完全に等しいとすると、フェルールは
結合時に中心の回りに半径 1.0μmの位置をとりうるこ
とになる。これは相対するフェルール同士だと2μmと
なり、SMファイバの結合損失が0dB→ 0.7dB以上にな
る軸ずれになり、光コネクタとしては許容できない。一
方、ガイドピン穴とガイドピン径が共に 7.000mmとする
と、多数回の抜き差しによるガイドピン穴の摩耗が大き
くなる。フェルールを形成している成形樹脂が摩耗して
くると、削りかすが穴の中に付着してガイドピンが急速
に挿入しにくくなる。又ガイドピン穴内の削りかすの排
出に成功しても、ガイドピン穴にガイドピンを挿入した
ときの偏心が変ってしまう。さらに又ガイドピン径をガ
イドピン穴より大きくすると、ガイドピンをガイドピン
穴に挿入すること自体が困難となる。
【0005】つまり、従来の光コネクタフェルールで
は、通常の使用条件で長期に安定して使用するために
は、必然的にガイドピン穴径>ガイドピン径であるが、
SMファイバを例えば平均 0.2dB以下といった低接続損
失で安定させるためには、ガイドピン穴径をガイドピン
径より 0.1〜 0.5μmの間に選択するといったように、
非常に狹い範囲に収める必要があり、困難を伴った。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の問題点を
解消し、ガイドピン径に対しガイドピン穴径のクリアラ
ンスが大きくても接続損失のばらつきが大きくなること
のない光コネクタフェルールとその製造方法を提供する
もので、その第1の特徴は、光ファイバを位置決め保持
する光ファイバ穴と、フェルール同士を結合するための
ガイドピン穴を有する樹脂成形により形成された光コネ
クタフェルールにおいて、上記ガイドピン穴が長さ方向
にスリットを設けたパイプを成形樹脂により一体化した
ものよりなる光コネクタフェルールにある。
【0007】又本発明の第2の特徴は、光ファイバ穴を
形成する光ファイバ穴用成形ピンと、ガイドピン穴を形
成するガイドピン穴用成形ピンを、金型のキャビティ部
にセットし、このキャビティ内に成形樹脂を注入するこ
とにより製作する光コネクタフェルールの製造方法にお
いて、ガイドピン穴用成形ピンの外周上にスリットを設
けたパイプを嵌着した後、キャビティ部にセットし成形
樹脂を注入する光コネクタフェルールの製造方法にあ
る。
【0008】
【実施例】図1は本発明の実施例の説明図で、図1
(イ)は本発明の光コネクタフェルールの斜視図、図1
(ロ)はガイドピン穴部の要部の縦断面図、図1(ハ)
はスリットを設けたパイプの横断面図である。図面にお
いて、1は成型樹脂部で、該樹脂部1の内部には光ファ
イバを位置決め保持する光ファイバ穴3と、2つのガイ
ドピン穴2が形成されている。上記ガイドピン穴2は長
さ方向にスリット41を設けたセラミックス製又は金属製
のパイプ4を樹脂により一体成形することにより形成さ
れる。この際、成型樹脂1がパイプ4のスリット41部分
の径方向の少くとも一部aには充填されないようにす
る。
【0009】このような光コネクタフェルールの製造
は、従来同様に、光ファイバ穴を形成する光ファイバ穴
用形成ピンと、ガイドピン穴を形成するガイドピン穴用
成形ピンを、金型のキャビティ部にセットし、このキャ
ビティ内に成形樹脂を注入することにより製作される
が、本発明においては、ガイドピン穴用成形ピンの外周
上に、前記スリット41を設けたパイプ4を嵌着した後、
キャビティ部に成形樹脂を注入して一体成形される。
【0010】この場合、ガイドピン穴用成形ピンの外径
はフェルールを結合するのに用いるガイドピンの径より
大きい。又前記スリットを設けたパイプ4の無荷重時の
内径dは上記ガイドピン穴用成形ピンの外径より大き
く、かつ、スリット41分を除いた実質的内周長は結合す
るのに用いるガイドピンの外周長より小さいものを用い
る。
【0011】
【作用】上述した本発明の光コネクタフェルールにおい
ては、ガイドピン穴をスリットを設けたパイプで形成す
るためバネ効果があり、その無荷重時の内径をガイドピ
ン穴用成形ピンの外径より大きくしておくことにより、
パイプの内径に数μmの公差はあっても、樹脂の成形時
の圧力でパイプが成形ピンに押しつけられて、仕上がり
に差が生じなくなる。又ガイドピン穴用成形ピンの径を
実験に基づき適当な値に設定しておけば、ガイドピンの
外径に±1μm程度の公差があっても、パイプのバネ効
果によってガイドピンとガイドピン穴の間にクリアラン
スが発生することがなく、かつ、ガイドピンをガイドピ
ン穴に挿入する力も小さい範囲におさめられる。
【0012】スリットを設けたパイプをセラミックス製
又は金属製とすることにより、従来の成形樹脂で形成さ
れたガイドピン穴より摩耗しにくく、多数回のガイドピ
ンの抜き差しに対して削りかすの発生もなく、安定した
着脱ができる。又スリットの径方向の一部に樹脂を充填
しないようにすることにより、スリットを設けたパイプ
のバネ効果が増大される。さらに、上記パイプの無荷重
時の内径をガイドピン穴用成形ピンの外径より大きくす
ることにより、金型内セット時にガイドピン穴用成形ピ
ンの外周上に容易に嵌着することができる。さらに又、
パイプのスリット分を除いた実質的な内周長をガイドピ
ンの外周長より小さくする。このようにしないと、スリ
ットをゼロにしてもガイドピンとガイドピン穴の間にク
リアランスが発生してしまう。
【0013】
【実験例】図1(ハ)において、内径d=0.7010+0.00
5mm 、スリット幅W=0.02±0.01mm、外径D= 1.2mm、
長さ 8.0+0、− 0.1mmのパイプをジルココアとステン
レスで製作した(スリット幅が上記範囲でスリット部分
の径方向の少くとも一部に成形樹脂が充填されない)。
又ガイドピン穴用成形ピンは0.7005±0.0002mmのものを
用いて本発明の製造方法で図1(イ)のような光コネク
タフェルールを作成した。 得られた光コネクタフェル
ールはMT−4と呼ばれるタイプで、ガイドピン穴間隔
が 4.6mm、前面幅 6.4mm、厚さ 2.5mm、奥行8mmでジル
ココア製を実施例1、ステンレス製を実施例2として各
12個作成した。
【0014】又比較例として、ガイドピン穴用成形ピン
径が0.7015mmと0.7005mmでスリット付きパイプなしの光
コネクタフェルールを同じ金型で各12個作成し、ガイド
ピン穴用成形ピン0.7015mmのものを比較例1、0.7005mm
のものを比較例2とした。
【0015】実験1:上記4種類の光コネクタフェルー
ルについて、ガイドピン径を1μmピッチでふった時の
挿入力(0.7005mmのみ 0.5μmピッチ)(各n= 3.6穴
の平均)を測定した。結果は表1の通りである。
【0016】
【表1】
【0017】表1の結果からもわかるように、比較例で
はガイドピン径とガイドピン穴径のクリアランスが大き
すぎる条件(比較例1のガイドピン径0.6980mmの場
合)、及び比較例ではガイドピン径とガイドピン穴径が
等しいか又はガイドピン径の方が太い条件(比較例2の
ガイドピン径0.7000mm、比較例1のガイドピン径0.7005
mmの場合)になってガイドピンの挿入が困難な条件が生
ずるが、本発明の実施例1,2ではこのようなことが生
じない。又比較例2においてガイドピン径0.7005mmでは
ピンを手で挿入することが不可能であった。
【0018】実験2:ガイドピン径0.6980mmの時の接続
損失のばらつき(それぞれ実験1に用いた径0.6980mmの
n=3を各10回測定したn=3の平均)を測定した。結
果は表2の通りで、クリアランスが大きいと予想される
比較例1では、ばらつきが大きく、これに伴って平均接
続損失も悪かった。
【0019】
【表2】
【0020】実験3:ガイドピン径0.7000mmの時のガイ
ドピンを 500回着脱して、ガイドピン穴の摩耗を挿入力
でみた(各n=1の左右2穴)。結果は表3の通りで、
実施例1,2は殆んど変化ないが、比較例2は 100回以
内に挿入不能となった。これは摩耗によりガイドピン穴
内に樹脂のかすがたまり、ガイドピンの挿入が出来なく
なったためである。又比較例1でも 500回の着脱で挿入
力が変化しており、ガイドピン穴の摩耗がみられる。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ガイドピン穴をスリットを設けたパイプで形成すること
により、そのばね効果で、従来より広い範囲のガイドピ
ン径の変化に対して接続損失のばらつきが大きくなるこ
とがない。又パイプをセラミックスや金属で作成するこ
とにより、ガイドピン径とガイドピン穴のクリアランス
がゼロ、又はピンの方が太い場合でも、繰り返し着脱で
ガイドピン穴が摩耗したり、ガイドピンが挿入不能にな
ることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の説明図で、図1(イ)は本発
明の光コネクタフェルールの斜視図、図1(ロ)はガイ
ドピン穴部の要部の拡大断面図、図1(ハ)はスリット
を設けたパイプの横断面図である。
【図2】従来の樹脂成形により形成された多心光コネク
タフェルールの一例の斜視図である。
【符号の説明】
1 成形樹脂部 2 ガイドピン穴 3 光ファイバ穴 4 スリットパイプ 41 スリット
フロントページの続き (72)発明者 塩田 哲夫 神奈川県横浜市栄区田谷町1番地 住友 電気工業株式会社横浜製作所内 (72)発明者 長沢 真二 東京都千代田区内幸町一丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−214310(JP,A) 特開 昭60−257412(JP,A) 特開 昭64−35509(JP,A) 特開 昭56−114910(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 6/38

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光ファイバを位置決め保持する光ファイ
    バ穴と、フェルール同士を結合するためのガイドピン穴
    を有する樹脂成形により形成された光コネクタフェルー
    ルにおいて、上記ガイドピン穴が長さ方向にスリットを
    設けたパイプを成形樹脂により一体化したものより成
    り、上記スリットを設けたパイプの無荷重時の内径がガ
    イドピン穴を形成するガイドピン穴用成形ピンの外径よ
    り大きく、かつスリット分を除いた実質的内周長がフェ
    ルールを結合するのに用いるガイドピンの外周長より小
    さいものであることを特徴とする光コネクタフェルー
    ル。
  2. 【請求項2】 スリットを設けたパイプがセラミックス
    製又は金属製であることを特徴とする請求項1記載の光
    コネクタフェルール。
  3. 【請求項3】 スリットを設けたパイプのスリット部分
    の径方向の少くとも一部に成形樹脂が充填されていない
    ことを特徴とする請求項1記載の光コネクタフェルー
    ル。
  4. 【請求項4】 光ファイバ穴を形成する光ファイバ穴用
    成形ピンと、ガイドピン穴を形成するガイドピン穴用成
    形ピンを、金型のキャビティ部にセットし、このキャビ
    ティ内に成形樹脂を注入することにより製作する光コネ
    クタフェルールの製造方法において、 ガイドピン穴用成形ピンの外周上に長さ方向にスリット
    を設けたパイプを嵌着した後、キャビティ部にセットし
    成形樹脂を注入すると共に、 前記ガイドピン穴用成形ピンの外径は、フェルールを結
    合するのに用いるガイドピンの径より大きく、 前記パイプは、無荷重時の内径がガイドピン穴用成形ピ
    ンの外径より大きく、かつスリット分を除いた実質的内
    周長がガイドピンの外周長より小さいものを選ぶ ことを
    特徴とする光コネクタフェルールの製造方法。
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JP5667525B2 (ja) * 2011-06-15 2015-02-12 日本航空電子工業株式会社 光コネクタ
CN102218771B (zh) * 2011-06-17 2014-04-02 东莞市翔通光电技术有限公司 氧化锆陶瓷开口套管的制造方法
CN109407218A (zh) * 2017-08-15 2019-03-01 康普技术有限责任公司 套箍组件和光纤光连接系统

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